搾乳ロボット視察レポート 写真3 マルチボックス 1 レポート GEAオリオンファームテクノロジーズ株式会社 「MIone(エムアイワン)」 レポーター/北海道支店 冨田隆行 マルチボックスシステム GEA オリオンファームテクノロジーズ株式会社 の搾乳ロボット「MIone(エムアイワン) 」の大き な特徴の1つとして、 「マルチボックスシステム」 き、約 250 頭までの搾乳が可能となる。規模拡大 がある。これは、牛の搾乳を行うボックスが複数で の際にはボックスのみを増設すればよいため、ボッ あっても装着ロボットは1台で済むというシステム クスが多ければ多いほど経済的なシステムと言うこ である。つまり、ボックス内で待っている牛の所へ とができる。 ロボットアームが移動してミルカーを装着するとい さらに、次のような特徴も備えている。 うことだ。 ■分房ごとの乳検知機能 このマルチボックスシステムによって、規模拡大 分房ごとの乳量を検知でき、1つの乳房から乳の による増設にも柔軟に対応することができる。1台 流れが止まると、自動的にカップが離脱する。これ の装着ロボットにつき、最大5ボックスまで拡張で により、過搾乳を防ぐことができる。さらに、乳の 飼槽 写真1 「MIone」の全体 13 Fa r m e rs' E yes 写真2 「MIone」の搾乳室 W I N T E R 2 015 特 集「5年後の酪農」を考える 電気伝導率を検知することと、カラーセンサーで異 写真5 牛群管理システム 常乳を判別し、 異常乳を廃棄することも可能となる。 なお、異常乳の廃棄は分房ごとに(2分房まで)行 われるため、廃棄乳量は最小限に抑えることができ る。 ■カップ洗浄機能 ティートカップは搾乳の度に洗浄されるが、この 際、殺菌剤入りの水流でバックフラッシュ洗浄が行 われる。これは、乳房炎や疾病の予防の観点から非 常に有効であり、特に大規模な牛群管理には不可欠 なシステムである。 また、 1日2回のシステム全体の洗浄 (約 30 分間) や、オプション設定での「ショート洗浄」により機 器を常に清潔な状態に保つ。 写真6 自動選別ゲート 搾乳行程 「MIone」 による搾乳には、 次の5つの行程がある。 ❶個体情報の判別 写真4 洗浄システム ボックス内に牛を誘導し、牛の首または足に付け た発信機によって個体情報を判別する。その情報に ■ 24時間サポート機能 基づいてボックス内の飼槽の位置が調節され、カッ 「ファームビュー」という管理ソフトが搭載され プ装着に適した位置に牛を立たせることができる。 ており、リアルタイムで搾乳ロボットの状態や牛群 ❷3D カメラによる乳頭位置の検知 情報をメーカーの技術者と共有できる。そのため、 カップの装着は、GEA ファームテクノロジーズ 万が一トラブルが発生した場合でも、技術担当者が 株式会社独自の技術である3D カメラによって乳 遠隔操作によって 24 時間点検を行うことが可能で 頭の位置を検知することで行われる。カメラが捉 ある。 えた画像イメージが写真8(P.15)だが、使用者は また GEA ファームテクノロジーズ株式会社で 「MIone」の操作中にこの画像を見ることができな は、牛群全体の飼養管理に要点を置いた、ミルキン い。色調の違いは距離の違いを示しており、このカ グセンターというコンセプトに基づいた牛群管理シ メラで乳房とティートカップの位置関係を立体的に ステムを導入している。このシステムにより、搾乳 捉えることによって、カップの正確な取り付けを実 準備ができている牛のみを搾乳ロボットに誘導し、 現している。この技術により、乳頭配置が悪い牛や 要注意牛の分離を個体ごとに行うことができる。 乳頭が3本しかないような牛にも対応することが可 能であり、カップ装着率は非常に高くなる。 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 14 写真7 写真9 3Dカメラ 搾乳イメージ ディッピングノズル 写真8 写真10 ディッピングノズル 3Dカメラ画像 また、このカメラ の 正 確 な 乳 頭 検 知 に より、 「ティーチング(ロボットに対して牛の乳房・乳頭 剤を噴きつけることで乳頭の保護を行う。 ❺洗浄 位置を教え込ませる作業) 」をする必要が原則とし 前述したように、搾乳するごとにティートカップ てなくなり、新規導入牛でもスムーズにロボットに をバックフラッシュ洗浄する。 導入できる。 さらに、 「MIone」では手動でミルカーを装着す ることもできるため、ボックス内でどうしても動い 視察を終えて てしまうなど、従来はロボット搾乳に不向きと考え 搾乳ロボットは「導入するだけで省力化を図れる られてきた牛にも対応できる。原則、いわゆる「別 夢の機械」ではなく、清潔な牛舎や牛群の正確な把 搾り」をしなくて良いということであり、作業の省 握といった丁寧な牧場管理が基盤にあってこそ、そ 力化を図ることができる。 の効果を最大限発揮できるというお話も、今回の視 ❸カップ装着及び搾乳 察で伺った。そのことを踏まえても計画的な酪農経 「MIone」の特徴として、1つのティートカップ 営を行っている酪農家の皆様にとって、搾乳ロボッ で、乳頭洗浄→前搾り→マッサージ→搾乳の行程を トの導入は作業効率の見直しや規模拡大を図る上で 全て行ってくれるという点が挙げられる。これによ の手助けとなってくれるのではないだろうか。 り、搾乳時間はもちろん、乳牛の拘束時間をも短縮 最後に、お忙しい中ご協力くださいました GEA できる。なお、前搾りの乳は別容器へ分離されるよ オリオンファームテクノロジーズ株式会社の松井 うになっている。 様、北海道オリオン株式会社の白方様に、この場を ❹ディッピング 借りて御礼申しあげます。 搾乳終了後には、床下のノズルからディッピング 15 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 特 集「5年後の酪農」を考える レポート 2 デラバル株式会社 「VMS」 レポーター/北海道支店札幌営業所 高田玲奈 「VMS」の特徴 デラバル株式会社は、 「VMS」 「VMS スープラ」 「VMS スープラ プラス」と3種類の搾乳ロボット を開発している(図) 。 「VMS スープラ」 「VMS スー 写真2 4段階に動く飼槽 プラプラス」では「ただ搾るだけではない」仕様と なっており、より高度な牛群管理を可能にする。 今回は標準仕様である「VMS」についてレポー トし、 ほかの2種類に関しては表に特徴をまとめた。 まず、 「VMS」の特徴を紹介しよう。分房別に乳 量・流量・血乳・電気伝導度を測定することができる。 計測された牛乳はまず個体ごとにレシーバージャー にまとめられ、異常があればリアルタイムで分離で き、 異常乳の混入を防ぐ。また、 搾乳ロボットであっ ても手動での搾乳が可能な設計になっている。さら に搾乳ロボットに付属しているタッチパネル操作で データにアクセスできるのでパソコンのある部屋ま で移動せずに、その場で操作して搾乳ロボットに蓄 積されたデータを確認することができる。 写真1 「VMS」外観 図 表 「VMS スープラ」「VMS スープラ プラス」の特徴 搭載設備 MDI:乳房健康指数 OCC:オンラインセルカウンター HN:ハードナビゲーター 特 徴 VMSスープラ VMSスープラ プラス 体細胞測定装置 最先端繁殖管理システム OCC オンラインセルカウンター HN ハードナビゲーター 体細胞数をリアルタイムで ホルモン、酵 素、BHB、尿 測定可能。設定基準に満 素のモニタリングにより、 さ たない牛乳は自動で分離 らに進んだ問題の早期/ される。 また対象牛をゲート 適時発見と対応が可能。 で分別して乳房炎などの (例) 早期対応につなげること プロゲステロンをモニタリン ができる。 グ→繁殖&発情管理 LDHをモニタリング→乳房 炎発見 BHB、尿素をモニタリング →給餌問題発見 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 16 写真3 ロボット内後部に ある糞尿プレート 写真5 カメラとレーザー 搾乳用 前搾り用 写真6 写真4 前搾り用カップ ティートカップ 続いて搾乳行程だが、これは次の6段階に分けら れる。 ❶最適な位置調整 牛がロボット内に入ると、その牛の大きさに合わ せて飼槽が4段階で動き、牛を自然に搾乳に最適な 位置へ導く。後部には糞尿プレートが配置してあ り、糞尿は搾乳ボックスの外へ排出され、搾乳ボッ クス内を清潔に保つ。また、この糞尿プレートの動 写真7 ミルクチューブ保持 きはミルカーを装着するロボットアームと連動して おり、正確なミルカー装着にも一役買っている。 れば装着可能である。 ❷ロボットアームによるティートカップ装着 ❸乳頭洗浄~前搾り~搾乳刺激~乳頭乾燥 前搾り用カップと搾乳用カップの2種類のカップ 前搾り用の専用カップで行われる。水+圧縮空 が用意されている。乳頭位置は、事前に入力する座 気の渦巻きで洗浄→前搾り→乳頭刺激を行い、バ 標と2本のレーザーが出す赤い光をカメラで見て認 キュームをかけながらカップを外すことで、乳頭乾 識する。また、このロボットアームによる装着は不 燥まで行う。また、この前搾り用のラインは搾乳ラ 適合乳頭が少なく、広い許容範囲を持っている。例 インとは完全に分離されているため、搾乳ラインへ えば、内向きの乳頭でも乳頭間が 15mm 離れてい 汚れなどの混入の心配がない。搾乳時における乳房 17 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 特 集「5年後の酪農」を考える ディッピングノズル 分房別のライン 写真10 分房別のライン ○分間以上牛が来なければ洗浄を開始する」という 写真8 ディッピング ように、任意に設定することも可能である。 なお、定期メンテナンスは年3回で、エラーが出 炎や疾病の蔓延を防ぐことができる。 た場合などには電話で対応・アドバイスが受けられ ❹搾乳 る。もちろん、訪問対応もある。また、指定の高額 搾乳用の専用カップで行われる。搾乳中はロボッ 部品に対しての保証を3年間に延長するプログラム トアームがミルクチューブの保持機能を担う。乳頭 も用意されている。 洗浄から搾乳用ティートカップ装着までは約2分間 かかるが、乳頭刺激によるオキシトシンの分泌時間 を考えると、搾乳効率はむしろ良くなる。 カウトラフィックの考え方 ❺ディッピング 搾乳ロボットの一般的な呼称は「AMS(Automated ポストディッピングはアームの先端から乳頭に向 Milking System 自動搾乳システム) 」だが、デラ かって W 字に吹き付けられる。 バル株式会社の搾乳ロボットは「VMS(Voluntary ❻洗浄 Milking System 自発的搾乳システム) 」と呼ぶ。 搾乳が終わるごとに、ティートカップは外側も内 VMS という名称が示しているように、デラバル株 側も洗浄される。 さらに、 床も水で洗浄される。 また、 式会社では動機づけによる牛の自発的な行動を促す システム全体の洗浄は1日3回定期洗浄に加え、 「○ システムを、積極的に取り入れている。 牛の「濃厚飼料を食べたい」という欲求を利用し、 牛を搾乳ロボットへスムーズに向かわせるようにす るシステムである。それには、 カウトラフィック (牛 の交通)の制御の仕方が深くかかわってくる。デラ バル株式会社では、フリーカウトラフィック、ミル クファースト、フィードファーストの3種類のトラ フィック方式を備えた牛舎を提案している。3方式 の特徴を次に示す。 床洗浄システム ❶フリーカウトラフィック牛舎 牛の通行制御用の柵やゲートがない牛舎。一般的 なフリーストール牛舎などのように、牛は飼槽や休 写真9 床洗浄 憩場所(ストールやバーン) 、搾乳ロボットなどへ Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 18 自由にアクセスできる。 ファーストトラフィック牛舎とフィードファースト ❷ミルクファーストトラフィック牛舎 トラフィック牛舎では、ロボットと給餌が 24 時間 休憩場所や飼槽、搾乳ロボットの間に通行制御用 稼働するので、場所が混み合わずに頭数増加にも対 の柵やゲートを設けてネックタグによりゲートの開 応できるようになる。そのため、他の方式の牛舎で 閉をコントロールする牛舎。搾乳された後に高濃度 は考えられない多頭数、3ロウ*、4ロウでの飼養 PMR(Partly Mixed Ration)を採食したいという も可能となる。なお、最適なカウトラフィックは各 欲求が、 牛の行動を促す動機となる。 牛の通行はゲー 牧場の給餌方法や労働力、予算や考え方などにより トによって一方に制御され、休憩場所→(ゲート) 選択していくことになる。 →搾乳ロボット(少量の濃厚飼料)→(ゲート)→ 飼槽(たくさんの高濃度 PMR)→(ゲート)→休 憩場所の順で進む。 *ロウ……row。牛舎内のストールの並びを数えるのに用いる呼称。 ストールの並び1つが1ロウであるため、3ロウとはストール3 つ、4ロウとはストール4つの並びを指す。 ❸フィードファーストトラフィック牛舎 ミルクファーストトラフィック牛舎と同様、通行 視察を終えて 制御用の柵やゲートを設置し、ネックタグによって ゲートの開閉をコントロールする。牛の行動を促 搾乳ロボットは日々進化しているが、デラバル株 すのは、飼槽で低濃度の PMR を採食した後に搾乳 式会社ではロボットのシステムアップデートが可能 ロボット内で濃厚飼料を多く食べようとする欲求 である。2000 年に導入し、最新のシステムにアッ で、搾乳ロボット内に食べられる濃厚飼料はミルク プデートしながら現在も使用している酪農家もいる ファーストトラフィック牛舎より多い。牛の通行が という。乳頭位置を見るカメラのような部品も、新 ゲートにより一方に制御される点もミルクファース しいものに交換できる。乳量・流量・血乳・電気伝 トトラフィック牛舎と同じだが、通行の順序は異な 導度、牛の活動量などさまざまなデータは、牛の個 り、休憩場所→(ゲート)→飼槽(たくさんの低濃 体ごとに DelPro(管理ソフト)に蓄積される。こ 度PMR)→(ゲート)→搾乳ロボット(多めの濃 れを分析することで、飼養管理・繁殖管理などの精 厚飼料)→(ゲート)→休憩場所である。 度向上につながる。 フリーカウトラフィック牛舎では多少牛を追って 牛を健康に飼うことが、酪農経営の最大の要点で 搾乳ロボットに誘導する必要が生じるが、通行制御 あると言える。ロボット 1 台で牛舎全体を管理する があるミルクファーストトラフィック牛舎とフィー ことができるのも、搾乳ロボットを導入する大きな ドファーストトラフィック牛舎の場合はほとんど人 メリットであると考えられる。 が牛を追う必要がなくなり、さらなる省力化を図れ 最後に、お忙しい中ご協力くださった、デラバル る。カウトラフィックを制御することにより、牛が 株式会社の有吉様、佐々木様、及川様にこの場を借 自発的に搾乳ロボットへ向かい、搾乳回数が増え、 りて御礼申し上げます。 それに従って乳量増加が期待される。また、ミルク 健康な乳牛づくりをお手伝いする森永のビタミン・ミネラル剤 特 徴 森永VM スタンダード 19 Fa r m e rs' E yes ◉NRC2001及び日本飼養標準の推奨量を充足するビタミン A、D3、E、及び微量ミネラルをバランスよく配合しました。 ◉NRC2001の推奨量まで無機ミネラルを配合し、推奨量を 超えるレベルを有機ミネラルで強化しました。 ◉マッシュとベレットを用意しました。 W I N T E R 2 015 森永VM スペシャル 特 集「5年後の酪農」を考える 特集の終わりに 新年明けて2015年、日本のあらゆる産業は引き 専門メーカーとして世界展開をしているキーナン社 続き厳しい環境にさらされ続けてゆくことが予想さ は、新たな酪農経営の在り方を、新たな技術で目指 れます。一方で、時代は着実に進歩してゆきます。 しています。それは、これまでにはない機械構造 特集の冒頭でご紹介した50年ごとの時代の変遷の をもつミキサーによりTMR飼料を混合し、仕上が 仮説は、実は酪農乳業に限らないことに気がつかさ りが「鳥の巣」状態(粗飼料の物理性により立体 れます。昨年は東京オリンピック開催から50年が経 性を持つ形態)とすることで、飼料効率FE(Feed ち、再び2020年に開催されることが決まっていま Efficiency)を高めて、飼料コストと堆肥の量の減 す。当時一斉に建造された高速道路や架橋などのイ 少を目指す技術です。加えて、ミキサーに設置した ンフラ設備が耐用年数を迎えており、大きな社会問 機器を通じてインターネットと連動し、フィード 題になっています。 バックして経営改善に繋いでゆくことも目指しま 東京駅も開業100年を迎えました。新幹線も開業 す。 50年です。このように、実は日本社会の同じ趨勢の 私たち森永酪農販売株式会社は、このような高い 中で、日本の酪農乳業も50年を節目とした第三世代 可能性を秘めた技術の提供を受けながら今年も日々 へ入りつつあるのです。新幹線も東京駅も50年を経 活動させていただき、今後も力強く取り組まれる経 て、技術の進歩に伴い間違いなく進化しています。 営向上のお役にたち、皆様とともに明るい「第三世 オリンピックも、インフラ問題も、著しく進化した 代」の酪農を創ることに貢献させていただきたい、 最新の技術で運営され、あるいは解決されてゆくは そう考えています。 ずです。酪農産業も然りです。新たな技術が生まれ、 このように決意すると、日本の酪農の未来も明る 今まさに進化しつつあるのです。 く輝いて見えてきます。本年もなにとぞよろしくお アイルランドに本社を置き酪農用飼料ミキサーの 願い申しあげます。 新バイオティクス技術に基づいた森永育成飼料 育成を支える 3 つの成分 1 森永乳業(株)が開発したプロバイ オティクス、ビフィズス菌 M- 602 と乳酸菌 LAC-300 を配合 森永 らくらくガード 規格 ● 500g / 50g 2 ビフィズス菌の栄養源となるプレバ 3 抗菌作用に優れた新バイオティクス、 イオティクス、ラクチュロースを配合 森永ラクトフェリンを配合 森永 わくわくミルク Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 20 記事広告 キーナンのT M Rミキサー は「物 栄養学的にバランスのとれた設計 の TMR であっても、ルーメン醗酵 が悪ければ、無駄が生じます。 物性を整える事で、TMR のルー メン醗酵を高め、生産性の向上と牛 群の健康に貢献することが、キーナ ンの提唱する「物理的栄養」の考え 方です。 キーナンのミキサーが作るTMRの3つの大きな特徴 特 徴 1 特 徴 2 特 徴 3 粗飼料を鋭利に、そしてほぼ一定の長さに切断 粗飼料の鋭利な切断面は、ルーメン壁への刺激効果を増し、反芻を促進します。その結果、TMRの醗酵 が改善され、更には、ルーメン内のpHが中性に近くなるよう貢献します。 均一な混合 ミキサーの構造上の特性から、TMRの撒き始めと撒き終わりの飼料のバラツキが、1%以内に収まりま す。配合飼料の選り食いもなく、設計通りの摂取を可能とします。 鳥の巣状のフワッとした仕上り 撹拌中の圧力を軽減し、TMRがフワッとした鳥の巣状に仕上がるので、ルーメン液がルーメン内で均質 に行きわたり、醗酵・分解を促進します。 これ等の特徴によって、TMR の醗酵・分解が増 が中性に近くなることで、ルーメンの健康、牛群の 加して、より有効的に活用されるため、飼料代の節 健康増進にも貢献します。 約や、乳量の増加に直結し、又、ルーメン内の pH 多機能管理システム PACE キーナンのミキサーは、PACE(ペース)と合わ 1. PACE に 100 通りの TMR 設計メニューを記 せて使っていただくことで、その性能をフルに発揮 憶させることが出来るので、TMR 作りに際し します。PACE はミキサーに装着する計量ユニッ て、希望のメニューと給餌頭数をインプットす トですが、計量だけでなく IT 技術を応用した多機 れば、原料投入の順番、量、撹拌時間を自動的 能な管理システムになっています。 に表示し、無駄の無い最適な物性の TMR 作り 21 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 理的栄養」を皆様にお届けします 表1 キーナンと縦型オーガーミキサーの比較 乳 量 乾物摂取量 飼料効率 (FE) (乳量/乾物摂取量) タンパク質 乳脂肪 ルーメン内pHが 6以下の時間数 キーナン 30.9kg 20.7kg 1.49 3.57% 3.87% 5.3 縦型オーガー 28.5kg 22.9kg 1.25 3.26% 3.82% 7.3 8.4% △9.6% 変化量 表2 スコットランドの大規模農家で、 キーナンのミキサーと縦型オーガ ーミキサーの成績を比較したも の。乳 量が28.5kgから30.9kg に8%以上増える一方で、乾物 摂 取 量は22.9kgから20.7kgへ 9%以上減っています。また、ル ーメン内pHが6.0以下の持続時 間が7.3時 間から5.3時 間に減 少することが報告されています 機種 機種名 容量(㎥) 必要馬力 給餌頭数目安(酪農) MF300 MF320 MF340 MF360 MF400 12 14 16 20 28 80馬力 80馬力 90馬力 110馬力 120馬力 40頭 60頭 80頭 120頭 160頭 を可能にします。 2. 毎回の TMR 作りの内容は PACE によって記 機種は容量に応じ て5機 種あり、各 機種にロール裁断 機 搭 載のオプショ ンがあります。また、 お客様のご要望に 応じた特別仕様も 可能です。 ロール裁断機(オプション) 有効な経営指標として、比較分析、成績履歴の 追跡や今後の改善に役立てることができます。 録されるので、PACE をパソコンに接続し、デー タを写し取れば、 パソコン上に TMR の生産デー タが蓄積されて行きます。予め原料原価をイン プットしておけば、TMR のコスト管理も可能 です。 3. パソコンに写し取られた TMR の生産情報は、 搾乳量などの生産データと日付毎にリンクさ れ、PACE が飼料効率を自動計算し、記録とし PACE (ペース) て蓄積して行きます。この飼料効率の推移は、 「物理的栄養」で実現する画期的なアプローチ キーナンの TMR ミキサーは、 「物理的栄養」に 内容です。間接的にも、牛群の健康増進や、メタン よって、反芻動物の栄養学に対する画期的なアプ ガスの発生を抑制する等の環境保全の面での大きな ローチを実現します。飼料の物理的構造に焦点を当 メリットもあります。 て、分解・吸収率を改善することで、飼料の利用度 厳しい経営環境の中、将来に向けて持続可能な畜 高めます。飼料代の節約を可能にすると同時に、酪 産経営のためのソリューションとして、ぜひキーナ 農では乳量の増加を、肉牛生産では増体の促進に貢 ンの TMR ミキサーをご検討ください。 献します。これ等の結果はいずれも経営に直結する キーナンのTMRミキサーの詳細は、 最寄りの森永酪農販売㈱支店・営業所へお気軽にお問い合わせください。 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 22 実 況 徳島酪農セミナー 暑熱ストレスと跛行への対策 2014年6月5日 (木) 、 ジンプロアニマルニュート リション (ジャパン) インク (以下、 ジンプロ社)の協賛 のもと、森永酪農販売㈱は酪農セミナーを徳島県名 西郡石井町の防災センターで開催し、 ジンプロ社の ダナ・トムリンソン博士に 「暑熱ストレスと跛行対策」 ジンプロコーポレーション 飼料栄養研究員 ダナ・トムリンソン博士 について講演していただいた。講演後には、約30名 の参加者とトムリンソン博士とが活発な質疑応答を 行った。 当日の様子をレポートする。 講 演 概 要 暑熱ストレスを 最小限に抑えるポイント 当て気化熱で牛体の熱を奪う ❷ 牛舎内の空気自体を冷やす ❸ 牛舎内の空気の流れを良くする 暑熱ストレスを最小限にするためのポイントとし ❹ 十分な飲水量・飲水スペースを確保する ては、大きく次の5点が挙げられます。 ❺ 牛床のカウコンフォート(乳牛の快適性)を良 ❶ 牛体の皮膚が濡れるまで水で十分に濡らし風を くする 牛を冷却するには2つの 図1 換気扇についての指針 方法があります。換気扇と 細霧機による牛舎内の空気 冷却、換気扇とソーカーに よる牛体冷却の方法です。 暑熱ストレスを最小限にす るために特に注意が必要な のは乳牛の牛体をいかに冷 やすかということで、ソー カーなどで牛体の皮膚が濡 れるまで十分に濡らすこと をお勧めします。 また、換気扇については (羽根径1m の場合)高さ 2.4 m に 5 〜 7.5m 間 隔 で 23 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 図2 換気扇の風量が体温に及ぼす影響 a 図4 暑熱ストレスによる生産成績への影響 体熱を放散するために 息が荒くなる 呼吸性アルカローシス(CO2) 尿中への重炭酸塩の流出 よだれを出すことにより 唾液が失われる ルーメン内のpH 代謝性アシドーシス 図3 環境性のストレスと心理的ストレスが 腸の形態に及ぼす影響 末梢の血管収縮/拡張 湿気の高い環境 牛体冷却システム 蹄の弱体化 蹄を支持する結合組織 の破壊 排泄物の蓄積 泥状の床面 劣化した角質の形成 心理的ストレス 心理的ストレス? 肉体的、環境性ストレス 蹄がやわらかく なることで 過剰に摩耗する 跛行 取付け(図1) 、風速 10km /時以上で牛体に最も で、反芻時間が1日 200 分間減るとすればルーメ 風が多く当たるように設置することが大事です。換 ンに入る唾液中の重炭酸塩量が1日に 143g 減るこ 気扇の風量が体温に与える影響としては、換気扇な とになります。これは、 重曹(炭酸水素ナトリウム) しで直腸温度が 40℃を超える場合でも風速 10.8km 196g に相当します。 /時(5分間隔での稼働)により牛体冷却した時で また、暑熱によるストレスは腸内にも影響を及ぼ は直腸温度が 38.8℃付近まで下がります(図2) 。 します(図3) 。適温環境下でも、飼料給与が制限 牛体の冷却が呼吸速度に及ぼす影響として、1分 されることによるストレスによって、腸の健全性が 間当たりの呼吸数の減少を確認できます。 低下し機能障害などを起こしますが、ジンプロ社の 夏場に乳牛の呼吸が荒くなることで、反芻回数の 微量ミネラル「アベイラ亜鉛」の給与により腸管粘 減少から唾液生成量が減少し、唾液による緩衝機能 膜を保護する働きが分かりました。そのほかにも微 の低下をきたしてルーメン内の pH が低下する、負 量ミネラルは、暑熱ストレスなどによって引き起こ のスパイラルを引き起こしかねません。 される免疫力の低下による乳房炎、繁殖障害、跛行 唾液1ℓ中には 5.9g の重炭酸塩が含まれますの などの問題を解決する鍵を握っています(図4) 。 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 24 図5 跛行の兆候を 早期に見つけるために 観察眼を鍛える 跛行対策では、 「フットシグナル」 と 「ロコモーショ ンスコア」によって早期に跛行の兆候を見つけるこ とが大切です。 「フットシグナル」を確認するため に乳牛を歩かせる必要はなく、繋留牛舎でも跛行観 察ができます(図5) 。 跛行の状態を確認するポイントを見ていきましょ う。 「フットシグナル」では、乳牛が肢を地面にど のように着いているか、そのバランスをしっかり観 ることが重要です。ヘッドロックして乳牛を後ろか ら観察すると、 より正確にチェックできるでしょう。 ランスです。 「ロコモーションスコア」では、確認していただ 今日の私のお話で、乳牛において暑熱ストレスに きたいポイントが2つあります。 1つは、 乳牛が立っ よるさまざまな影響を緩和することが重要であるこ ている時の背線の曲り具合。もう1つは、乳牛が歩 とがお分かりいただけたと思います。 いている時の背線の曲り具合と頭の動きの両方のバ 質 疑 応 答 ◉水を用いた牛体冷却について Q A ペイントローラーを使う場合、濡らすのは トルを吊り下げて牛の背に水を垂らしている農家を 見たことがありますが、それでは不十分でしょう か? どの部分が良いでしょうか? 頸部と肩、腹と背中を重点的に濡らすこと A 暑熱対策には費用がかかりすぎると考える 生産者の方にはまず、暑熱ストレスによる をお奨めします。頭も濡らすことができれ 乳量の減少、繁殖成績の低下、体細胞数の増加が農 ばとても効果的であると思われますが、残念ながら 場の利益にもたらす影響の大きさを把握していただ 牛は顔を濡らされることを好まないようです。 また、 きたいと考えます。また、暑熱対策のために今まで 水が耳に入り込んだ場合に問題を引き起こすことが に導入した設備や器具が適切に運用・維持管理され ありますので、ペイントローラーを利用した場合は ていないために、効果があまり出ていないというこ まず起こることはないと思われますが、十分にご注 とも考えられます。しかし、そこで牛体冷却を行う 意ください。背の尾根の部分と腹をペイントロー 正しい方法を指導するということを諦めてしまって ラーで濡らしてあげることで、非常に有効に気化熱 はいけません。呼吸回数を観察して問題の大きさを を利用して牛体冷却を行うことが可能です。 認識し、牛体冷却の効果を評価してください。 ペットボトルを使用した牛体冷却を行っている生 産者の方は、気化熱で体温を奪って牛体冷却を行う Q 25 新しくスプリンクラーなどを設置する場 ことが効果的であることを理解して牛に水をかけて 合、初期投資が大きくなります。ペットボ いるということです。牛に水をかけるためにペット Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 ボトルを用いることも素晴らしいアイデアだと思い ます。皮膚まで十分にずぶ濡れになっているかどう A 乳房は傘のような構造をしているため、牛 の背に向けて上方から水をかけた場合、そ かを確認してみてください。生産者の方々と、この の水が体を伝って乳房を濡らすことはほとんどあり ように牛を濡らして効果的に牛体の熱を奪う方法に ません。写真の牛も背から腹にかけてずぶ濡れに ついての現場に則したアイデアを引き出すようにし なっているにも関わらず、乳房は水で濡れていない てください。牛体冷却を行うことで、牛はより餌を ことがお分かりいただけるかと思われます。 従って、 食べるようになり、乳量が上がり、繁殖成績が上が 乳頭も濡れることはほとんどありませんので、搾乳 るという結果が見られるようになると考えられま 後にディップ剤が水で流れ落ちる危険性はほとんど す。 ないと思われます。しかし、夏の乳房炎対策のため にも、搾乳時にしっかりとディップを行って乳頭を 保護することは非常に重要です。牛体冷却に水を用 Q 牛を濡らし過ぎて調子が悪くなるというこ いると飼養環境中の水分が増加することは避けられ とはありませんか? ませんので、搾乳後の乳頭ディップの重要性はさら に高くなります。 A 牛にとって快適な温度は5〜 20℃であり、 人間に比べて非常に低いことをご理解くだ さい。牛の体を濡らすことで体調が悪くなることは なく、実際には反対の効果が得られます。牛体冷却 Q 牛体冷却に水を用いる場合、水温にも注意 A 牛に水をかける場合には、冷たい水の方が すべきでしょうか? を行うことで、体の維持のために用いるエネルギー (この場合は、体を冷やすためのエネルギー)が減 少するため、免疫機能が向上し、消化器系の機能も 冷却効果は高いと思われます。しかし、フ 向上します。 その結果、 生産活動に用いるエネルギー ロリダ州などで積極的に水を牛にかけて牛体冷却を の量が増加します。 行っている農場では、水温は外気温に近い場合もあ りますが、冷却効果は十分です。この場合重要なの は牛体を「濡らす⇄換気扇の風で乾かす」頻度を高 Q 戻り通路で牛に水をかけると、ディップ剤 めることで、水温を下げるために特別な費用をかけ が水で流れ落ちてしまうのではないでしょ る必要性はないでしょう。暑熱対策に用いる水を考 うか? えた時に、水温に気をつけなければいけないのは飲 用水です。あまり牛は冷たすぎる水を飲むことを好 みませんので、飲用水の温度は 25 〜 30℃程度に保 つようご注意ください。 毛先ではなく皮膚まで十分に濡らすことが重要 牛体冷却について説明するトムリンソン博士 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 26 Q 牛体冷却に水を用いた場合、廃水はどのよ また、削蹄手技として負面の大きさを確保するこ うに処理しているのですか? とも重要ですが、何よりも内蹄と外蹄のバランスを 合わせることに重点を置いてください。通常、外蹄 牛体冷却に水を用いた場合、水の使用量と に負重がかかりやすいために内外蹄の成長バランス 糞尿処理施設に溜まる水の量はやや増加し は異なることが多いため、削蹄時に高さを合わせて ますが、ご想像されているほどではありません。牛 削ることで、歩様の回復や蹄病の予防を期待するこ に水をかけることで、牛の飲水量が減少します。暑 とができます。 A 熱ストレスの度合いによって、牛の飲水量は2割か ら2倍増加します。摂取した水のいくらかは汗や呼 吸によって排出されますが、大部分は尿として排出 されます。そのため、農場において牛に水をかけた Q 子牛も水で濡らす必要がありますか? としても、飲ませたとしても、飼養環境中に排出さ れて糞尿処理施設へと流入する水の量はどちらにせ よ増加します。 A ほとんどの場合、子牛の暑熱対策は換気扇 の適切な利用で十分であると思われます。 増加した分の廃水の処理は、通常糞尿処理施設に 子牛は代謝熱の産生量が少ないので、暑熱ストレス 流れ込んだ水と同じように、固型もしくは液の糞尿 を受けにくいためです。しかし、しっかりと呼吸回 と共に処理してください。確かに廃水の増加による 数の観察を行いましょう。酷い暑熱ストレスを受け 処理費用は増加しますが、この費用は乳量の増加や ている状態であれば、成牛と同様の冷却措置を行っ 繁殖成績の向上、免疫機能の向上による牛群の生産 てください。 寿命の延長による利益の増加によって賄うことがで きます。牛体冷却を行うことと、廃水処理は経営管 理上、別の問題であることをご理解ください。 Q 乾乳牛を昼に運動場に放していますが、水 で濡らすことができる場合は1日中舎飼い にした方が暑熱ストレスは少ないのでしょうか? Q 待機場所で水を用いて牛体冷却を行うと、 床面が滑って転倒する牛が出てきません か? また、転倒防止のためにも、蹄の負面を広く 確保すべきでしょうか? A 外の気温と湿度、即ち THI によります。樹木 による日陰がある場合は、木による気化熱によっ て多少は空気が冷やされており、その冷涼な空気の下、 牛は快適に過ごすことができると考えられます。さらに、 確かに散水を行うことによって床面が滑り 一般的に日中は湿度が低いため、対流によって体表面 やすくなることはあり得ます。しかし、待 から蒸発する気化熱で牛も周囲に熱の放散を行うことが 機場所はもともと大量の糞尿で濡れた状態であるこ できていると思われます。運動場に放す前に牛を皮膚ま とが多く、散水によって危険性があまりにも高くな でずぶ濡れにすることで、さらに気化熱を生むことができ るということはないと思われます。何よりも、牛が ますので、より牛にとっては快適に過ごすことができると 転倒する危険性の増加以上に、水による牛体冷却の 考えられます。 A 効果が大きいことをご理解ください。転倒の危険性 がどうしても気になる場合は、まず牛の扱いをゆっ くり優しく行って、牛を驚かせたり突然走らせたり しないことや、床面へのオガクズの撒布で滑り止め 効果を持たせること、他にラバーマットの敷設など の転倒予防措置を行いましょう。 27 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 ◉牛舎の暑熱対策について Q 牛舎の軒高が高いほど暑熱の影響は低くな ると思いますが、博士が推奨される高さが 発泡断熱材をスプレーした屋根 断熱材がない場合(左)とある場合(右)の屋根の温度比較(外気温はともに28℃) あれば教えてください。また、屋根の温度を下げる るようにタイマーを設定するとより効率的です。水 有効な対策はありますか? を再利用できる場合は、屋根が濡れて冷えている状 態を維持できるようにタイマーを調整しましょう。 A フリーストールを始めとする牛舎を新設す ほかに、屋根の裏側に断熱材をスプレーで噴射す る場合、軒高は 3.5 〜 4.25m が推奨されて ることも効果的です。 います。この高さは横壁に十分な開放部を設置する ことができ、建物の中の換気を考慮する際に有効で す。 屋根の放射熱を下げるために、散水は非常に効果 的です。ドリップラインや灌漑用の散水機を用いて 放水することができます。軒には雨樋や溝を設けて 流れ落ちる水を集めて、また循環させる水の再利用 ◉ジンプロミネラルについて Q 微量ミネラルの効果的な給与方法を教えて ください。また、ビタミンとの同時給与に よってどのような効果がありますか? システムを設置することが推奨されます。散水する 際に、水の粒の細かい細霧を利用すると、屋根に水 が当たる前に蒸発してしまうために水が無駄になっ A ジンプロミネラルをビタミンと併せて給与 することはアメリカでも一般的に行われて てしまいますので、お奨めできません。屋根で水分 います。ジンプロミネラルは無機のミネラルと異 が蒸発するのにかかる時間に合わせて散水が行われ なった吸収経路から体内に取り込まれるため、ビタ Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 28 ミンのような他の栄養素にとっても拮抗ストレスが 抑えられるため、ジンプロミネラルとビタミンの同 時添加によってミネラルとビタミンの生体内利用率 が向上すると考えられます。ジンプロミネラルは給 与前に貯蔵している間もビタミンの酸化を抑える効 果があります。ミネラルの給与は配合飼料に混合、 ミネラルのプレミックス、トップドレス、TMR に 投入することで行われます。ジンプロミネラルの給 与による副作用は認められていません。ミネラルの 過剰摂取の悪影響としてあり得るのは銅の多給です が、通常1日1頭当り 10g の「アベイラ4」を給 与している場合はほとんど起こることはなく、推奨 量の5〜 10 倍量を毎日摂取すると生産性が低下す 牛体冷却を強く勧めるトムリンソン博士 る場合があります。 ために、ストレス期や栄養要求量が上がった時にさ らに促進されます。細胞単位で見ても、ジンプロミ Q 暑熱期の微量ミネラルの給与の有効性は理 ネラルは無機ミネラルに比べて細胞機能をさらに高 解しましたが、ビタミン類の有効な給与方 めます。この結果、免疫機能の向上や成長の促進、 法はありますか? A 生産成績の向上を得ることができます。 配合飼料やミネラルプレミックスで日常的 にビタミン A、D、E を給与するべきであ ると考えます。ジンプロミネラルを含む配合飼料や ミネラルプレミックスを給与することが理想的で す。 森永デーリィシリーズや森永ドライフレッシュ、 育成飼料はジンプロミネラルを配合しています。 ◉削蹄について Q 夏明けに蹄病が増えるのですが、適切な削 A 初夏から真夏に適切な蹄形を保つことで蹄 蹄のタイミングはありますか? 底潰瘍を予防する効果は十分に期待できま す。蹄底潰瘍は、蹄が伸びることで蹄の角度が浅く なり、蹄の内部で蹄骨の角度が変わり、真皮を圧迫 することが主な形成の原因になります。暑熱下にお Q 有機微量ミネラルと無機微量ミネラルは、 いては、起立時間の延長や、ルーメンアシドーシス なぜ効果が違うのでしょうか? などの影響で健康な角質の生成が起こり難いことも あり、蹄底潰瘍の好発部位にかかる衝撃はより大き A ジンプロミネラルは無機の微量ミネラルと なものになります。初夏から真夏に予防的に適切な 異なった吸収、代謝が行われるために、特 手技で削蹄を行うことと、夏から秋にかけて削蹄師 に効果に違いがあります。動物がストレスを受けた の訪問頻度を高めてもらって跛行牛の検査と治療、 ときやミネラルの吸収が鉄やカルシウムといった他 蹄の矯正を早期に行うことが、暑熱ストレスによっ のミネラルの拮抗作用によって阻害された場合、無 てもたらされる跛行による損失を最小限に抑える管 機ミネラルの吸収量は低下してしまいます。 しかし、 理と言えると思われます。 ジンプロミネラルはアミノ酸受容体から吸収される 29 Fa r m e rs' E yes W I N T E R 2 015 (取材/関西支店徳島営業所 浅野亮紘)
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