14 きゆな牧場 喜友名 慶子 「夏が大好き」の子供時代、夏になると私は海に呼ば ていったのだろうか‥体験に来る子どもの中に靴の紐を れた。早朝、一人でバスに乗って近くのビーチまで泳ぎ 結べない上級生もいる。子供が紐を結ぶのにてこずって に行っては、一日中海につかって、どこまでも続く空を いると、先生は叱りながらも、差し出された子供の靴紐 ボーと眺めたり、海中の魚が体のそばから通り抜けたり を結んだ。子供は当たり前のようにじーとしている。靴 するのを楽しんだ。色はいつも真っ黒で一夏に何枚も皮 の紐を結べない子供に何の責任があろうか。今の世の中、 がむけた中学時代、怖い思いも何度かした。ビーチのイ 紐を結べないからといって不自由は感じないのだろう。 何度とあったチャンスを知らず知らずに通り過ぎて、親 も気づかずに大人になっていく子。何かさみしい。大人 は子供に何を期待して子育てをがんばっているのだろう。 いったいどんな人間に育って欲しいのだろう。何か大事 なものを忘れている様な気がする。母親ばかりに教育を 任せないで、父親も家族も周りの大人達も、もう1度、子 供たちのことを考えてあげないといけないと思う。これ から赤ちゃんが産まれる女性の方は、赤ん坊を腕に抱い ●シーサーの魚を猫がよこどり カダの上から飛び込みをやって、タイミングが悪く、イ カダの真下に沈み逃げ出せなくなり、友に髪の毛を引っ て授乳しているときの、何ともいえない幸せを感じる 「女性の特権」を十分に味わって下さい。その時からもう 育児が始まっているのですから…。 ぱり出され、助けてもらった事もある。波が荒い日にお よいでは大波に引き込まれ、自分の力ではどうにもなら ない海の怖さもあじわった。いつの日か、子供だけで海 に行った事がばれて、母にこっぴどくしかられた。そう、 私の中で海は自然の先生、海の怖さや暖かさを体に記憶 させてくれた。親となった今、私は海の中にいる子ども 達から目を離せない。自分で助け出せる範囲にいて、子 ども達を監視している。幼い時に得た教訓は、大人にな っても生きている。海水のしょっぱいこと、浮力の心地 よさ、そして、川の流れがこんなにも早く、冷やりとし て気持ちのいいものか、温かいプールでは、いっしょう ●菱沼 俊と美園と琴美 都会に住んでいるときは時間に追われて、見過ごして けんめい手足を動かさないと沈んでしまう、等々、いろ いた自然の移り変わりを、肌で感じるようになった山原 んな体験を通して覚えている。命に関する体験をどれく での生活、つくづく「牛飼い」で良かったと思う。しか らい、今の子供たちは経験しているのだろうか。いろん し又、牛飼いの難しさも感じている。北海道から来た導 なメデアがありすぎて忙しすぎる子供たち。そして、親 入牛の、初夏対策に気を使う今日この頃、がんばってい も、いつのまにか、子どもの行動をセーブし過ぎて、子 るけど報われない環境の変化の落とし穴があった。 「遠い 供の「ぼうけん旅行」をつぶしていたかもしれない。そ 所からようこそ」と旅の疲れをいたわりながらの対策も、 れとも、平面ばかりの生活習慣が子ども達の意識を変え 結果的にはうまくいかない。それでもめげずに頑張って 23 仕事をつづけられるのは子供達と夢を実現したいから。 すんでいくように、みんなして協力して行くことだと思 いつの日も太陽が上る、がんばった事がいつかきっと実 う。そして頑張っている農家をはげまして、生きるため を結ぶ、今は試練の時だと、心に刻む。我が家にきた北 に必要な食物たくさんつくる気力を与える事だと思いま 海道の牛と、母親になった瞬間に訪れる体調の変化に悩 せんか‥。 まされた自分が、オーバーラップしてしまう。船旅に強 どうか、パパイヤよ、秋には沢山の実をつけておくれ。 い私はお腹に子が宿る共に、車に乗るだけでも酔い、気 青い実は野菜、熟れたら果実、ビタミン豊富な食物、‥ 分が悪くなる。人間も牛も妊娠期間は10ヶ月、だいじな そういえば授乳の時、母乳の出が悪くなると、母は魚と 時期。数百頭の牛が北海道からトラックに揺られて3日間、 パパイヤのお汁をつくってくれた。たしかに母乳の出が 船に乗せられて丸1日、そして又トラックで沖縄の牧場へ 良くなった。‥そんなパパイヤは♂と♀、両性がある。 運ばれるらしい。牛はどんなに疲れるだろう。母体は汚 もちろん♀と両性にしか実は出来ないんだよ。知ってい れ、異臭を放つ。痩せてしまった牛もいる。直ぐさま県 た?秋になれば実が収穫出来るでしょう。頃一報下され 酪の職員が牛の状態の確認と指導に来る。1頭60万ともな ば、お分けできるかも…。台風が来ないように祈ってく れば大きな投資である。新しい環境で食い込みが落ちた ださい。 導入牛に比べ、育成牛のよく食う事。13頭後継牛が娘た 沖縄では古くから食されているニガウリ、ヨモギ、ハ ちの宝ものだ。娘達は出来る限りの牛の世話に頑張って ンダマ、ニガナなど、亜熱帯での自然が育んだ健康にな いる。困難な事にぶつかりながらも、そのつど学習して る野菜があります。皆、健康に役立つものばかりで、最 成長していくだろう。1つのハードルを越えたからといっ 近、見直されつつあり、そ て、次のハードルが前にある。ゴールはまだ遠いが、そ んな素材を使った長寿食に れを共に走ってくれる家族といる事を幸せに思う。近い 人気が高まっているんです。 将来、彼女達の自主的な運営が伴えば、私の仕事が成功 南国の野菜の秘密とは‥ したと言えるだろう。私にとって、 「酪農」は人間育ての 「植物と人とは深い関係にあ 「目的」に他ならない。もちろん夫の生き甲斐さがしの道 る。人間は酸素を吸い二酸 でもある。サンシン(三味線)は本業、酪農は趣味など 化炭素を吐く。逆に植物は と息巻いている夫が、最近パパイヤに目覚めた。 二酸化炭素を必要とする。 五月の末、 ●パパイヤの♂と♀はいつも仲良し ゴーヤー 植物は有害である酸素と戦 暑い最中、1 って生きるためにつくるのが、抗酸化物質である。人は 人の中年と2 酸素を体内に取り入れると活性酸素ができ、活性酸素は 人の若もの さまざまな病気を引き起こす要因になる。そこで活性化 が、400本の 酸素を消去するのが抗酸化物質だ。沖縄の灼熱の太陽の パパイヤを植 下で育つ植物に、抗酸化物質が多く含まれるという。 」あ えた。路地上 らためて沖縄の食材を見直すと共に、最近、にがくない なので風当た ニガウリを発見しました。新しい品種なのか、産地の違 りの弱い場所 いか、幼い頃から食しているゴーヤー(ニガウリ)は苦 に植えたつも くて、生でかじるなどとんでもない。いつも食べさせら りが、この前 れていたからこそ、あの苦さに慣らされていったのでは の台風で傾い なかろうかと思う。ちなみにゴーヤーは夏の食物であり、 てしまった。 夏負け防止にいいそうです。食べ物には旬の法則がある 根がむき出しになり惨めな姿!倒れたパパイヤの根に土 ことを、忘れてはいませんか…。本土で初めて「納豆」 をかぶせる。台風がこなければいいのに…。一畝進んだ を食べた時、日本人の味覚を疑った。でも、今は、おい だけで3リットルもの汗がしたたり落ちた気がする。野菜 しい。だからあなたも、一度はゴーヤーを食べてごらん。 農家の苦労が身にしみる。自然界の事とはいえ、一瞬に 「泣く子も黙る」とっておきの味だから…。 してすべてを失う事のやるせなさ、何の保証もない農家 の仕事を軽々しく論じてはくれるな畑違いの人達よ。今 のあなた達に出来ることは日本の農業が明るい方向にす ※北海道のトーシ、元気で夢に生きているかい? 2004/7/27 きゆな牧場より 24
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