GTEC 通信 ㈱ベネッセコーポレーション 39 vol. 【企業からのメッセージ】 GTEC for STUDENTS 事業推進課 http://gtec.for-students.jp/ <実践事例レポート> 企業での英語リアリティーに迫る ② パナソニックグループ ㈱エクセルインターナショナル 水野 茂 常務取締役 のお話から ◆会社概要 パナソニックグループ会社である㈱エクセルインターナ ショナル国際研修グループの水野茂さんにお話を伺いまし た。同グループはパナソニックグループ向け社員語学研修 と海外赴任前研修を担当しています。 【パナソニックグループ】 社員数はグローバルで約 30 万人、内訳は日本人が 10 万 人、中国人が 10 万人、そして残り 10 万人が欧米やアジア・ 新興国等の社員です。 パナソニック 国内:国外の売上げ構成比 国外 国内 50% 50% パナソニックグループの国内と海外の売上げ比率は、 1:1で、電機業界の中ではまだまだ国内構成比が高いの ですが、今後はグローバル化が一層加速する中で、海外売 上げ構成比が国内を大きく上回る事業展開が見込まれます。 また電機業界の技術革新は想像以上に変化が速く、厳し い競争の世界です。パソコンを例に取ると、モデルによっ ては3ヵ月に一回は新しいデザイン、新しい機能の商品を 発売、しかも、グローバルな消費者のニーズや要望が反映 されなければ一気にシェアーを失います。しかも競合相手 は日本国内だけでなく、欧米諸国に加え、台湾、韓国や中 国といった新興国のメーカーが追い上げてきています。 パナソニックグループは一言でどんな会社ですか?と尋 ねたところ、 「電気製品をつくる会社であると同時に 人も つくっています」という松下幸之助創業者の言葉が返って きました。「ものをつくる前に人をつくる」会社とし て、 People before product の考え方が脈々と生きてい る会社という印象を受けました。エレクトロ二クス分野の 製品は勿論、グローバルに人を育成している会社であるこ とをこの時改めて感じました。 GTEC 通信 September 2008 ◆ 企業のグローバル化と人材ニーズ 図1 過 去 現 在 事業形態の変化 外国語力 異文化経営力 利益の源泉 均質集団 多様性集団 市場の変化 日本発信 世界同時発信 企業がグローバル化すると求められる人材ニーズが変わ ります。これを図1にまとめました。日本から商品を輸出 する時代は外国語の専門家が必要でした。しかし今は研究 開発や生産、販売の会社が数多く現地で設立され、海外の 異なる経営環境や異文化の下で経営をする力が求められて います。 また、大量生産・大量販売の画一的商品から消費者のき め細かいニーズに対応した商品をつくるには金太郎飴の 「均質的な集団」からグローバルに知恵を活用できる「多 様性のある集団」への変身が必要です。 また、市場は「日本発」が中心ではなくグローバルに「世 界同時発信」という時代に仕事が出来る人材が求められて います。 そこで、企業がグローバル化するという意味ですが、 「一 つの国に限定されることなく、物を考える能力やビジネス の機会を持ち、グローバルに経営資源を活用できる事」と いうことだそうです。 経営資源の中で、人材の確保・育成と登用は日本と日本 人が中心ではなく、グローバルレベルで推進ができるよう 考え方や制度・仕組みが導入されています。特に、日本人 社員がグループの海外会社社員と相互に知恵を活用し協働 を推進する為に、英語によるコミュニケーション能力を強 化する取り組みが極めて重要になっています。 ◆グローバル時代に求められる語学力のイメージ 図2はグローバル時代に求められる語学力をどう考える かのイメージです。 図3 図2 協働力 海外勤務者 マネジメント層 内なる国際化 ビジネスコミュニケーション力(アプリ) 知恵を交換 話す・書 く 読 む ・ 聞 く 語 学 基 礎 体 力 (OS) これをパソコンの機能に喩えると、語学基礎体力がパソ コンのOS(Operating System)に相当します。語彙力、作 文力や文法力等がその内容です。この基礎語学力を強化し、 社員の語学力を幅広く底上げすることがまず必要で、その ために、パナソニックグループでは英語検定試験スコアを社 員の昇格基準として設定しています。 そして、このOS(語学基礎体力)が強化されないと、そ の上にあるビジネスコミュニケーション力、即ちアプリ (Application)が有効に機能しません。語学力抜きに海外 勤務はできません。日本で勤務するマネジャー層は経営の グローバル化で語学力は必須です。また、日本の職場では 海外会社社員の日本勤務が推進され、 「内なる国際化」は待 ったなしの状況です。 ◆経営のグローバル化が求めるビジネスコミュニケーショ ン力(アプリ)の強化が日本企業の課題 経営がグローバル化するとグローバルなお客様やグルー プ海外会社との間でビジネスコミュニケーションが日常茶 飯事に発生します。これにはまず「読む、聞くという受信 能力」を通じて相手の要望や思いを掴むことができます。 次に、こちら側のアイディア、提案や思いを「書く、話す という発信能力」を通じて伝えることになります。これが 語学の基本4技能になりますが、実際のビジネスコミュニ ケーションではこれだけで十分ではありません。 「受信」 「発 信」に加えて、もう一段高いレベルの知識や知恵を交換す るという「協働する力」がビジネスコミュニケーションに 求められるのです。 図3をご覧ください。経営のグローバル化に伴い、コミ ュニケーション能力がどう進化するかをイメージ化してい ます。単なる英会話や語学を学ぶという従来型の研修に加 えて、ビジネスを展開する上で「受信」 「発信」から「協働」 につながるコミュニケーション能力をいかに企業内に構築 するかが、大きな課題です。英語「を」勉強すると言うよ りも英語「で」仕事をするということ、つまりツールとし ての語学の位置付けです。 GTEC 通信 September 2008 発信力 受信力 パナソニックグループでは上記の考え方に基づき、特に 協働力につながるビジネスコミュニケーション力を強化す る目的で新たな語学研修を研究・試行しています。プログ ラムの詳細は紙面の都合で割愛させていただきますが、こ の試みの中で注目しているのが社会人版GTECです。 社会人版GTECは英語によるビジネスコミュニケーシ ョン力が「受信力」と「発信力」だけでなく、 「協働力」と いう領域でまでどのレベルまで確保できているかを「測定」 できる極めて優れた特徴があります。 この「測定」をしたデータをベースにお客様のニーズに 対応した研修を「診断と処方」という考え方で独自の研修 内容を企画し、お客様にソリューションとして提供してい ます。 ◆高校生へのメッセージ 水野さんから高校生へのメッセージを頂戴しました。 「皆 さんが社会に出る頃は、英語を話すから英語で仕事をする 時代に本格的に突入していると思います。日本から商品を 輸出する時代は語学の専門家が必要でした。語学の専門家 に松下流の仕事のやり方を習得させました。ところが、現 在では語学の専門家というよりは仕事ができる人に語学を 教えるという時代に大きく舵を切っています。海外の会社 で松下流の経営ができることが求められているからです。 語学を勉強するのが目的ではなく、仕事をするための手 段として英語を勉強するのです。語学はコミュニケーショ ンの手段です。英語「を」でなく、英語「で」という発想 です。ビジネスには明確な目的があります。その目的を達 成するためにコミュニケーションが必要です。その手段が 語学です。Good English より Good Communication と発想 を変える方がよくご理解いただけると思います。若い高校 生の皆さんには英語学習でご苦労が多いと思いますが、高 校卒業までに GTEC for STUDENTS で 550 スコアを獲得でき れば理想ではないでしょうか。頑張ってください。 」 (東京本部 GTEC 事業推進課 五十嵐 俊也)
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