BIZ REPORT - 株式会社シンカナビ

BIZ REPORT
ビズレポート
株式会社シンカナビ
ビジネスコンサルティング事業部
Yes!
読めばきっと何かが変わる。
道が拓ける。ビジネスステージが上がる。
Good
Idea
今だからこそ読んでおきたい
古典・名著
Yes!
■読書家、ファーストリテイリングの
CEO柳井正さんは
「著者と対話するように」
読む
Good
Idea
■
「もしドラ」
で若い世代に浸透した
経営学の発明者
ピーター・F・ドラッカー
一般に名経営者と呼ばれる人たちは、おしなべて読書
家です。しかも古典や名著と呼ばれる本などを、何度も
繰り返し読みながら、経営の奥義や人生の奥義を学び、
日々の事業活動に活かしているようです。
たとえばユニクロブランドで知られるファーストリテ
ドラッカーと言えば、最近では
「もしドラ」
の愛称で大
イリングCEOの柳井正さん。柳井さんは、ユニクロがま
ブームを起こした
『もし高校野球の女子マネージャーが
だユニクロの名前もない衣料品店の若店主だった頃か
ドラッカーの
『マネジメント』を読んだら』という小説の
ら
「ひょっとしたら1兆円企業になるかもしれない」
と信
題材としても知られるところです。
じ、現場で経営を体験しながら、膨大な読書量でその夢
もしドラは、主人公が女子高校生、しかも甲子園を目
を実現してきました。
指す高校野球チームのマネージャーという意外性が受
経営に関わる本を中心に読んだようですが、その読み
け、活字離れが語られる昨今にしては異例の250万部以
方は独特で、本田宗一郎や松下幸之助、マクドナルド創
上の大ベストセラーとなりました。版元のダイヤモンド
業者のレイ・ロックなど、すでに功成り名遂げていた当
社では、創業以来初のミリオンセラーとなったそうです。
時の経営者の著した本や伝記などを
「書いた人と対話す
数多くビジネス書を手がけてきた同社としては、意外な
るように」
読んだといいます。
気がしますが、企画もさることながら、やはり経営学者
柳井さんは、いまでも読書時間を確保するためにほと
ドラッカーの偉大さを感じざるを得ません。
んど付き合いの会食などはせず、夕方には会社から自宅
ドラッカーに限らず、影響力のある本は時代を超えて
に直行し、ひたすら読書をするのだそうです。メンター
読み返され、その解説書や副読本などが多く出版されて
(優れた指導者、よき助言者)という言葉がありますが、
います。ドラッカーの場合、それだけでなく、その思想
柳井さんにとっては、本の書き手が自分のメンターなの
と理論を経営に取り入れ、深化、発展を図る
「ドラッカー
かもしれません。
学会」
という学術団体もできているのです。
そんな柳井さんが、ビジネスマンに勧めているのが、
会員は財界・学会約800人から成り、トヨタ自動車の
ピーター・フェルナンド・ドラッカーの本です。
名誉会長豊田章一郎さんやセブン & アイホールディン
1
グスの名誉会長伊藤雅俊さん、ファーストリテイリング
ない。企業の目的は、それぞれ企業の外にある。企業は
CEOの柳井さん、ドラッカー学会の創設者であるものづ
社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的
くり大学名誉教授上田惇生さん、日本企業における暗黙
の定義は1つしかない。それは、顧客を創造することで
知の重要性を説いた一橋大学名誉教授の野中郁次郎さん
ある」
と。
など、陰の経団連といえるほどの錚々たる顔ぶれが参加
そして、その顧客を
しています。
創造する活動がやがて
市場を形成していくの
■
「企業の目的は顧客の創造である」
です。
「 市 場 を つ く る の は、
ドラッカーの代表作は多数ありますが、
「もしドラ」
の
神や自然や経済的な力
主人公の女子高校生が偶然手にした本、
『マネジメント』
ではなく企業である。
は、まさにドラッカーの真髄。経営のエッセンスが凝縮
企業はすでに欲求が感
されています。明快なその言葉の響きは何年経っても新
じられているところ
鮮です。
へ、その欲求を満足さ
たとえばドラッカーは、現代企業についてこう喝破し
せる手段を提供する。それは、飢饉における食物への欲
ています。
求のように、生活全体を支配し、人にそのことばかり考
「企業は何かと聞けば、ほとんどの人が営利組織と答え
えさせるような欲求かもしれない。しかしそれでも、そ
る。経済学者もそう答える。だがその答えは間違ってい
れは有効需要に変えられるまでは潜在的な欲求であるに
るだけでなく、的外れである。経済学は利益を云々する
すぎない。有効需要に変えられて初めて市場が誕生する」
が、目的としての利益は
「安く買って高く売る」
との昔か
のだと。
らの言葉を難しく言いなおしたに過ぎない。それは企業
しかしながら日本に限らず、現代社会ではその潜在的
のいかなる活動も説明しない。活動のあり方についても
な欲求を消費者自身が察知できないことも増えていま
説明しない。
す。ドラッカーは答えます。
利潤動機には意味がない。利潤動機なるものには利益
「欲求が感じられていないこともある。コピー機やコ
そのものの意義さえまちがって神格化する危険がある。
ンピュータへの欲求はそれが手に入るようになって初め
利益は、個々の企業にとっても、社会にとっても必要で
て生まれた。イノベーション、広告、セールスによって
ある。しかしそれは企業や企業活動にとっても必要であ
欲求を創造するまで、欲求は存在しなかった」
る。しかしそれは企業や企業活動にとって、目的ではな
「顧客が価値を認め購入するものは、財やサービスそ
く条件である」
のものではない。財やサービスが提供するもの、すなわ
ここまで明快に語ら
ち効用である」
れると気持ちがよくな
■
「企業は2つだけの基本機能を持つ。
それはマーケティングと
イノベーションである」
ります。
では企業とは何で
しょうか。ドラッカー
は続けます。
そしてさらにこう語ります。
「企業とは何かを知る
ためには、企業の目的
「企業の目的は、顧客の創造である。したがって企業
から考えなければなら
は2つの、2つだけの基本的機能を持つ。それがマー
2
ケティングとイノベー
MBAのバイブルと言われる
『エクセレントカンパニー』
。
ションである。マーケ
その著者の1人、トム・ピーターズが、ドラッカーの
『現
ティングとイノベー
代の経営』
について、
「私たちの書いたことは、すべて
『現
ションだけが成果をも
代の経営』
に書かれている」
と言っているほどです。
たらす」
と。
ドラッカーの信奉者ユニクロの柳井さんも、数ある本
まるで曇天続きの空
のなかでこの
『現代の経営』
を推しています。柳井さんは
にパーッと光が差し込
ほかにドラッカーの著書では、
『プロフェッショナルの
むような明快さがあり
条件』
を勧めています。
ます。実はドラッカー
プロフェッショナルの条件には、現代のような知識集
を一躍有名にしたのは、
約型社会におけるプロフェッショナルのあり方が、マネ
『マネジメント』ではありません。
『新訳・現代の経営=
ジメント視点から凝縮されています。ドラッカーのすば
The Practice of Management』
。直訳するとマネジメン
らしいところは、その論の背骨が個人のあり方まで一貫
トの実践です。
して繋がっていることです。彼が開発した
「マネジメン
新訳・現代の経営の日本語版は1954年に発行され、
ト」が、自己のマネジメントに対しても適用されている
上下巻合わせて600ページを超える、かなりのボリュー
のです。
ムの本ですが、日本で100万部が売れました。世界では
プロフェッショナルは、
500万部のベストセラーとなりました。その内容は多く
目的に向って常に自己変
の経営者、学者に影響を与えています。
革し、生産性を高めていく
「ある大企業の幹部は、民間企業に入ったあと、大学
存在であり、そのために自
に残って学問の道に進むべきだったか、役所に入って国
らをマネジメントしなけ
のために働くべきだったか悩んでいたという。そのとき、
ればならないと説いてい
世界で500万部、日本だけで100万部の大ベストセラー
ます。
となった経営学の古典
『現代の経営』の冒頭の言葉、
『経
ドラッカーがいう自己
営管理者は事業に息を吹き込むダイナミックな存在であ
変革とは、
る。彼らのリーダーシップなくしては、生産資源は資源
① 目標とビジョンを持つ
にとどまり、生産はなされない』を読み、自分の選択は
② 仕事に真摯さを重視し、完全を求める
正しかったと勇気百倍したという」
(
『ドラッカー入門』
③ 生活に継続学習を組み込む
④ 自らの仕事ぶりの評価を、仕事そのものの中に組み
[上田惇生]
)
。
込むこと
■世界中の経営コンサルタントから
「コンサルタントの師」
と仰がれる
ドラッカー
⑤ 行動や意思決定についての期待を記録し、検証する
ことで、自らの強みを知る
⑥ 新しい仕事が要求するものについて徹底的に考える
ことだとしています。
そればかりか、ドラッカーは名だたるコンサルタント
自分の仕事ぶりを客観視し、強み、弱みを知って、学
からも尊敬されており、
「コンサルタントの師」
とも言わ
習時間を取って、新しい仕事に求められているものを徹
れています。
底的に追求するのがプロフェッショナルなのです。
世界的経営コンサルティグ会社であるマッキンゼー・
ユニクロの柳井さんの生活ぶりは、まさにこのプロ
アンド・カンパニーのコンサルタントたちが著した、
フェッショナルを具現化しているようです。
3
■サイバーエージェントの藤田晋さんが
受けた衝撃
が覆されたのです。一流だと言われたり、すばらしい
と誰もが賞賛する会社が、すべてにおいて優れているわ
けではなく、偉大な指導者が要るわけでもなく、また共
「渋谷で働く社長のブログ」
をはじめいくつもの著書を
通したすばらしい基本価値があるわけではないことがわ
発表している、サイバーエージェントの社長の藤田晋さ
かったのです。ちょっと脱力してしまいそうな結果です
んもかなりの読書家です。多忙な合間を縫って月10冊
が、逆にこれから起業しようと思っている人にとっては、
は読むと言います。ネット長者などともてはやされ、順
ハードルが低くなったように思えるでしょう。
風満帆の成功者に見えますが、藤田さんはこれまで膨大
ではビジョナリーカンパニーをつくりあげるには、ど
な本を読んでは自答し、と
のような信念、仕組みをもち、続けていけばいいのでしょ
きに懊悩しながら業容を拡
うか。
大してきました。その彼が
それはたとえば、②のような偉大なカリスマは不要で、
起業家を目指すきっかけと
長期的な展望に立った長く続く組織づくりを考えるリー
なった本が、ジェームズ・
ダーが求められ、⑤のように変わり続けることが重要で
C・コリンズ
『ビジョナリー
はなく、むしろ闇雲に変えず、戦術は変えても基本的価
カンパニー』
です。
値観は変えてはいけないこと、⑧の綿密で複雑な戦略を
『ビジョナリーカンパニー』
立てるのではなく、柔軟性をもって多くのチャレンジを
の発行は1994年ですから、
して、そのなかから残った数少ない成功例を柱として事
古典というにはだいぶ若い本ですが、藤田さんが
「衝撃
業を組み立てていくことが重要であったりするのです。
を受けた」と語っているように、その内容は世の中の経
このなかでとくに強調されているのは、一貫性です。
営者に衝撃を与えました。なぜなら先に話題となった
『エ
企業の基本価値や理念はさまざまで、企業によっては正
クセレントカンパニー』の条件を否定するものだったの
反対なものもあります。しかし重要なことは、理念や基
です。
本価値が企業の細かいところまで深く浸透しているから
従来、優れた会社には、
であり、それをもとにそれぞれの仕事の現場で実践され
① すばらしいアイデアが必要である
ているかなのです。
② ビジョンをもった偉大なカリスマ的指導者が必要で
もう一つ特徴的なことは、すばらしい会社は、競争相
ある
手より自分自身との競争に勝つことを最重要視している
③ 利益の追求を最大の目的としている
ことです。よってリーディングカンパニーがいかに他社
④ 共通した正しい基本価値がある
を引き離しても、満足できる最終地点はないのだと述べ
⑤ 変わらない点は、変わり続けることである
ています。まるでトップアスリートの精神世界のようで
⑥ 危険をおかさない
すが、とにかく同じ業界では他社の戦略や商品が気にな
⑦ 誰にとってもすばらしい職場である
るものであり、他社が成功したからといって、同じ戦略
⑧ 綿密で複雑な戦略を立て、最善の選択をとる
をとったり、似た商品やサービスを提供してもうまくい
⑨根本的変化をもたらすには社外からCEOを迎えるこ
くとは限らないということです。
とだ
■伊藤忠の中興の祖が読む愛読書
といった“神話”があり、これを実践しているからこそ
ビジョナリーカンパニー、すなわち優れた会社となった
のだとされていました。
元伊藤忠商事の社長で、中国大使を務めた丹羽宇一郎
しかし、コリンズらの長期に渡る調査の結果、これら
さんも読書家と知られています。丹羽さんは社長時代、
4
同社の約4000億円不良債
は非常に多く、ソニーの創業者の盛田昭夫さん、ソフト
権に大鉈を振るい、低迷
バンク創業者の孫正義さん、マイクロソフトの創業者の
した業績を立て直した名
ビル・ゲイツさんなど、世界中の経営者を唸らせました。
経営者として知られてい
孫子は今から約2500年前の、紀元前5世紀後半から
ます。
4世紀にかけて孫武という思想家によって著された戦争
社長時代、忙しい合間
の総合書です。
を縫って年間60冊は読ん
そのなかの一節、
「彼を知り己を知れば百戦殆うから
だと言います。数だけで
ず」という教えはあまりにも有名ですが、まるで現代の
言えばもっと読んでいる
ビッグデータ時代を予見するように情報と戦略の重要性
人はいるかもしれませんが、丹羽さんの凄いところは、
を説いていることは、まさに時代を超越した先人の慧眼
英語の原書でも読むことです。これは自身が米国赴任時
と言えるでしょう。
代にニューヨークの本屋で
「これは」
と思う本を読み漁っ
孫子は他のビジネス名著と同様に、多くの関連書や解
た経験があるからだそうです。総合商社、そして米国経
説書が生まれています。現代語訳ということではなく、
済の中心地でグローバルビジネスの最先端を日々体験
その後世になってからもいくつもの関連書が生まれてい
し、その背骨を貫くビジネス理論・知識を書物で学んだ
るのです。
経験があったからこそ、その後トップとして優れた手腕
宋の時代には、当時の
を発揮できたのだと思われます。
戦術家・思想家11人の注
その原点はなんとカール・マルクスの
『資本論』
だと言
釈を集めた
『十一家注孫
います。資本論は学生運動が華やかりし頃、多くの若者
子』や、孫子の兵法の実
に読まれたようですが、分厚く難解で、またマルクスが
践に必要なことが書かれ
望んだ社会主義国家が誕生しないこともあって、その存
た
『行軍須知』
、その戦法
在すら知らない若者が増えているようです。しかし世界
の具体例を著した
『百戦
一小さいギアをつくった樹研工業社長の松浦元男さんの
戦法』
、内容を要約して
ように、業績を伸ばしている中小企業経営者のなかには、
解釈を添えた
『虎鈴経』な
資本論を丁寧に読み込むことで、資本主義の構造を見抜
どが生まれ、時代が下った明の時代には注釈をつけた
『孫
き、経営に活かしている人もいるようです。
子参同』
『握機緯』
、さらに清の時代になっても孫子に注
共産主義の原点である資本論。そして資本主義・グロー
釈を加えた
『孫子彙征』
『兵鏡』など、多くの解説書、注
バル経済の中心地アメリカ。この2つを深く知っている
釈書が誕生しているのです。
丹羽さんだからこそ、前例や過去にとらわれない大胆な
もともと中国は大国と小国が争いを繰り返してきた
経営ができたのかもしれません。
歴史があり、それゆえ多くの戦術書や兵法書が生まれ
ています。そのなかでも孫子は群を抜く存在感を示し
ています。
■2500年の時を経て読み継がれる
戦略・戦術論
その構成は、序論の
「計」編に始まり、準備計画の
「作
戦編」
、準備計画について述べた
「作戦」編、戦わずに勝
利を収める方法について述べた
「謀攻」
編、攻撃と守備の
ドラッカーのマネジメントは、現代経営の古典ですが、
形について述べた
「形」編、態勢と軍勢について述べた
もっと昔、悠久の時を超えて読み継がれる古典もありま
「勢」
編、戦争における主導性の発揮の仕方について述べ
た
「虚実」
編、敵の機先の制し方について述べた
「軍争」
編、
す。中国の兵法書
『孫子』
はその代表格でしょう。愛読者
5
戦局の変化への対応の仕方を述べた
「九変」
編、軍を進め
次の言葉が続きます。
る上での注意事項について述べた
「行軍」
編、地形による
「彼を知らずして己を知らば、一勝一負す。彼を知らず
戦術の違いを述べた
「地形」
編、さらに火攻めの戦術につ
己を知らざれば、戦うごとに必ず殆うし」
いて書かれた
「火攻」
編、9種類の地勢について書かれた
つまり、自分をしっかり理解し、足元をしっかり見て、
「九地」
編、そして諜報活動について書いた
「間」
編の13の
敵を知ることだと。ここで言う敵とは、ライバル会社で
編に分かれて、細かに書かれています。
はありません。目に見えているライバル会社は情報もま
特筆すべきは序論の
「計」
編です。いわゆるまえがきで
だ取りやすく、戦略も見えやすいでしょう。むしろこれ
はなく、戦争を決断する前に考慮すべきことを述べてい
から重要になってくるのは、見えない敵です。それはま
るのです。
だ見えていない潜在的なライバル会社であり、潜在的顧
経営を生き残りをかけた戦争になぞらえれば、日々繰
客であるということなのです。
り広げられる事業活動は戦いの繰り返しと読み取れま
■
「敵」
がどこにあるかを知る重要性
『イノベーションのジレンマ』
す。それゆえその戦いが戦う価値がある戦いなのかを考
えることは重要になってきます。
現代は変化の激しい時代です。やってみなければわか
らないことが、たくさんあるでしょう。しかし孫子の時
その点からすると、近代経営学において大きなインパ
代は下手に戦いに参戦して、負けてしまえば、国家その
クトを与えた、
『イノベーションのジレンマ』の内容は、
ものが簡単に消滅する危険がありました。だからこそ軍
孫子のこの指摘を引き継いでいるかもしれません。
師やトップは全知全霊をかけて戦いを学び、分析し、シ
イノベーションのジレ
ミュレーションをかけるのです。
ンマは、ハーバード大学
孫子の計編にはこうあります。
「勝を知るには五有り。
のクレイトン・クリステ
此の五者は勝を知るの道なり。
」
と。つまり勝つためには
ンセンの著で、なぜ既存
5つの力を見極める必要があると。5つの力とは、
のリーダー企業が技術革
①戦う時と戦わない時の見極め。
新で負けていくのかを分
②大部隊と小部隊の任用、運用法の違いを知ること。
析し、まとめた本です。
③上の者と下の者が一体となっていること。
かつてハードディスク業
④事前の準備が万全で、敵のスキをつけること。
界では、ディスクサイズ
⑤将軍が有能で、君主が過剰な口出しをしないこと。
がダウンサイジングされ
るたびに、既存の優良企業が負けていくことが起こりま
これを現代に言い換えると
「知識」
「判断力」
「統率力」
すが、この様子を分析したのです。
「企画力」
「権限移譲」この5つが揃って初めて戦えると
この本も多くの経営者に読み継がれ、アマゾンドット
いうことになります。その際大事なことは、戦わないと
コムの創業者、ジェフ・ベソスが愛読書となっています。
いう判断ができるかということです。間違ってはいけな
クリステンセンの分析によれば、既存の優良企業は、
いのは、戦争書だからと言ってすべてが整ったら開戦で
既存客に対して品質を高め機能を改善することを是と
はないということです。むしろ戦わないことの見極めこ
して改良改善を続けるが、あるとき突然、品質が劣っ
そが経営には重要なのです。
ているものの、単機能低価格な新しい製品をつくる新
加えて言えば戦う相手は、必ずしも競合だけとは限り
たな技術の登場で、市場が一掃され、撤退を余儀なく
ません。
されたのです。
先の
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の後には、
クリステンセンは、イノベーションのジレンマが起き
6
る原因として次の3つを指摘しています。
③重要事項を優先する
①破壊的製品が低価格で利益率が低いこと
④Win-Winを考える
②破壊的製品のマーケットが小さいこと
⑤理解してから理解される
③優良企業にとって収益性の高い顧客が破壊的技術を求
⑥相乗効果を発揮する
めないこと
⑦刃を研ぐ
こうしたポイントを大手の優良企業に求めることは難
いずれも、言われてみれば
「な〜んだ」
と思うことばか
しいかもしれません。それゆえ、こうした市場を狙って
りかもしれませんが、知っていても、思っていてもでき
ベンチャー企業が生まれ、市場が活性化していくのだと
ないからこそ、この7つの習慣が受けたのだと考えられ
思われます。確かに起業家に支持されそうな内容でもあ
ます。
ります。
7つの習慣では第1の習慣の前に、70ページほどの前
書きがあります。そこには
「真の成功とは何か」という、
■世界で3000万部を売り上げた
『7つの習慣』
とは
到達点について述べられています。
そこでコヴィーは
「人の成長も人間関係も自然のシス
テムであり、農場の法則が支配している」と説いていま
世界の経営者に大きな影
す。農場の法則とは、場当たり的な詰め込み主義で作業
響 を 与 え て い る の は、 ド
せずに、春にきちんと種まきをし、夏に遊び呆けず、き
ラッカー以外にもいます。
ちんと世話をして、秋に収穫をするということ。
『7つの習慣』を著したス
「必要な務めを果たし、作業を行わなければならない。
ティーブン・R・コヴィー
蒔いたものしか刈り取ることができない。そこ
(真の成
もその1人です。
功)
に近道はない」
ということです。
『7つの習慣』
は、1989年
習慣ということを3つの要素に分解していることも特
にアメリカで出版され、翌
徴です。3つの要素とは、
「知識」
「スキル」
「やる気」
です。
年には翻訳本が各国で発行
「知識は、なぜするのか、何をするのかという2つの質
されて、世界44カ国で約3000万部売れた大ベストセラー
問に答えてくれる。スキルはどうやってするか」を示す
です。日本では少し遅れて1996年に出版され、こちら
ものである。やる気は動機であり、
「それを実行したい」
も150万部の大ヒットとなりました。アメリカのビジネ
という気持ちである。生活のなかで習慣を確立させるた
ス誌フォーブスは
「最も影響を与えたマネジメント部門
めには、この3つの要素がどれも必要である」と説いて
の書籍」のベスト10に挙げ、また日本では雑誌プレジデ
います。
ントが行なった
「どの本どの著者が1番役に立つか」
アン
習慣というと、とにかく無意識に行なっているものと
ケートで1位となっています。
思いがちですが、習慣化していくためには、やる気だけ
愛読者も多く、アメリカ元大統領ビル・クリントンさ
でも、知識だけでも身についていかないものだというこ
んをはじめ、P&G社長のジョン・ペッパーさん、アメリ
とを。コヴィーは教えています。
カ国家航空宇宙局局長のジェームズ・C・フレッチャー
■世界の経営学者に影響を与えた
野中郁次郎の
「知識創造企業」
さん、トヨタ自動車の元会長奥田碩さんなど東西の政財
界要人、学者に影響を与えています。
コヴィーが掲げる7つの習慣とは、次の7つです。
①主体性を発揮する
日本人の中にもドラッカーと同様に世界の経営者に
②目的を持って始める
大きな影響を与えた人はいます。その1人に知識経営
7
を広めた野中郁次郎がいま
ない。善悪や賢愚を問わず、みな受け入れていくだけの、
す。 代 表 的 作
『知識創造企
包容力を持ちたい」
業』
(竹内弘高との共著)は、
「人が世の中を生きてゆく
英文で書かれ、知識をベー
時は、自分から一歩譲る
スにした経営、
「ナレッジマ
ことがより優れた道であ
ネジメント」という言葉を生
る。この一歩を譲ること
み、世界に広めています。
が、次の一歩を進める根
企業の成長の源泉はプロ
本となる」
フェッショナルな人々が創
などなど、噛みしめた
い言葉が並んでいます。
造する新しい知識にありますが、この知識には明文化で
きる知識
(形式知)
とそうでない知識
(暗黙知)
があり、前
■ニーチェも愛読。
ヨーロッパ人の処世バイブル、
バルタサル・グラシアンの
『賢人の知恵』
者が欧米文化で重視され、東洋では後者が重視されてき
ました。成長する日本企業は形式知と暗黙知をダイナ
ミックに連動させてマネジメントするところにあると
し、暗黙知の共有と形式知化が大きなカギを握っている
というものです。
グローバル化、国際化が進むビジネスの現場では、ま
同様にヨーロッパでは中世のスペインで活躍した神学
すます重要な経営思想となっていくでしょう。
者、バルタサル・グラシアンの
『賢人の知恵』
が知られて
います。その傾倒者は数多く、ニーチェやショーペンハ
■政治家、名監督、名経営者のバイブル、
『菜根譚』
ウエルといった哲学の巨人、日本の森鴎外などが激賞し
たとされています。
もっとも章を割いている
「人とのかかわりについて」
で
古典・名著と言われる本には、リーダーとしてのあり
は、
「相手の欠点を受け入れる」
「他人のあら探しをしな
方、人生の生き抜き方のコツをまとめたものも多いよう
い」
「優れた人とつきあう」といった言葉がある一方で、
「人の不幸に同調しない」
「相手の短所に目をつぶらな
です。
中国の明の時代に書かれた
『菜根譚』
もその1つ。いわ
い」
「運のいい人を見極める」
「平凡な人とつきあう」
「自
ゆる処世訓の集大成ですが、古今東西のリーダーたちに
分の対極にある人とつきあう」
「八方美人になる」
といっ
親しまれた名著です。
た、ちょっと二律背反的では?と思えるような言葉も出
日本では、首相となった田中角栄さん、東急グループ
ています。また成功につ
の創業者五島慶太さん、小説家の吉川英治さん、プロ野
いての章では、
「逆境に備
球巨人軍の監督で黄金期を築いた川上哲治さん、名将・
える」
「競争を避ける」
「絶
知略家監督と知られる野村克也さんなど、その道のカリ
頂期を見極める」といった
スマたちが愛読書としていたと言われています。
深い言葉が並びます。
「仮に悪事を働いたとしても、人に知られることを恐れ
時にシニカルにすら思
ているなら、まだ見どころがある。せっかく善行を積ん
える言葉は、まさに
「賢者
でも早く人に知られたいと願うようでは、すでに悪の芽
の知恵」の面目躍如といっ
を宿している」
たところでしょうか。
「人間関係では好き嫌いの感情を表に出しすぎてはなら
8
■累計500万部。経営の神様、
松下幸之助の
「道をひらく」
風です。日本人で経営者に読
まれる人物としては、東洋思
想家や宗教家なども多いよう
名経営者が著した本も時代を超え、ジャンルを超えて
ですが、中村もその1人。松
読み継がれることが多いようです。なかでも経営の神様
下幸之助のほか、現代の経営
と呼ばれたパナソニックの創業者、松下幸之助の本は多
のカリスマ稲盛和夫さん、元
くの商売人のバイブルとなっています。京都大学出のイ
首相の原敬さん、元プロ野球
ンテリ芸人として知られる宇治原史規さんは幸之助が残
ヤクルト監督を務めた広岡達
した
「若さに贈る」
を、お笑い芸人の学校に行きだした時
朗さん、往年の名横綱双葉山
に読みたかったと漏らしているほど、若いビジネスパー
定次さんらが私淑していた
ソンにとっては打つものが詰まっているようです。
と言います。
松下幸之助の本もドラッカー同様にたくさん出版され
中村の思想のベースには、
ていますが、なかでも有名なのが
『道をひらく』
。自身が
人間は生まれ持って成長し
立ち上げたPHP研究所の機関誌に書き綴ったなかから抜
進化していく、偉大で尊厳
粋したもので、これも日本中の企業経営者の圧倒的な支
な
「宇宙原則」があり、その
持を得ています。累積部数は約500万部。
法則を活かした
「一身独立」
このなかで一貫して述べていることは、愚直に前向き
の人間となることを望んで
に仕事に取り組む姿勢です。本の冒頭にはこんな言葉が
いました。自然の法則に則っ
た、その人それぞれの特性を活かした成長が豊かな社会
載っています。
を育むという視点は、まさに松下幸之助の
『道をひらく』
「雨がふれば、人はなにげなく傘
をひらく。この自然な心の働きに、
に通じています。
この素直さに私たちは、日ごろあ
このほか、禅の研究で知られる明治時代の仏教家で
まり気づいてはいない。だがこの
東洋哲学者の鈴木大拙、日
素直な心、自然な心のなかにこそ、
本における帝王学の祖と言
物事のありのままの姿、真実をつ
われ、歴代の総理の相談役
かむ偉大な力があることを学びた
だった東洋思想家の安岡正
い。何ものにもとらわれない伸びやかな心でこの姿と自
篤などの著書もよく読まれ
分の仕事をかえりみるとき、人間としてなすべきこと、
ています。
国としてとるべき道が、そこにおのずから明らかになる
海外では、自己啓発哲学
であろう」
者のデール・カーネギー、
幸之助は、与えられた仕事、自分の道を極めていくこ
ナポレオン・ヒルなども経
とで、日本人一人一人が成長し、日本という国が世界に
営者、ビジネスパーソンの支持を集めています。
誇れる国に成長できると信じてやまなかったのです。
■経営者が惹かれる三大小説家、
司馬遼太郎、池波正太郎、藤沢周平
■松下幸之助が師と仰いだ東洋思想家、
中村天風
優れた経営者は、経営書以外でも、小説や詩、書画な
その松下幸之助が信奉していた人物の1人が、中村天
どから多くを感じとって学んでいる人が多いようです。
9
なかでもよく読まれてい
不条理や非常と闘いながらもつつましく生きる姿を描
るのが司馬遼太郎、池波正
き、世代を越えた多くのファンを獲得しています。経営
太郎、藤沢周平などの時代
者ももちろん、そのファンにはジャーナリストの田原総
小 説。 司 馬 は、
『竜馬がゆ
一朗さん、元プロ野球選手の江夏豊さん、企業小説の第
く』で竜馬ブームを起こし、
一人者城山三郎さんなど、各界を代表する人たちが傾倒
そこで描かれた竜馬の生き
しています。
様は若い起業家のシンボル
■多くの経営者を救った相田みつを
「にんげんだもの」
として称えられるようにな
りました。竜馬ファンは歌
手で俳優の武田鉄矢さんの熱狂的ぶりで知られています
が、ほかにもソフトバンクの創業者、孫正義さんがファ
書家では相田みつをが人気があります。その独特の
ンとして知られ、NHKの大河ドラマでは、その内容に“史
字体は観る人を惹きつけ、その言葉を拳拳服膺する経
実と違う”とクレームをつけたほど傾倒しています。
営者も少なくありません。イエローハットの創業者の
このほか司馬作品では日本が欧米列強に追いつこうと
鍵山秀三郎さんや、大塚商会の社長大塚裕司さん、元
強烈な情熱と知識欲、行動で近代化を推し進めた明治人
大阪ガスの社長大西正文さんなどがファンとして知ら
たちの姿を描いた
『坂の上の雲』
がありますが、司馬作品
れています。
を愛読する経営者、ビジネスマンのなかでは
『竜馬がゆ
もともと相田は書道界の最高峰の1つと数えられる毎
く』
以上に圧倒的支持を得ています。
日書道展に7年連続入賞するなど実力派の書家でした。
池波は
『鬼平犯科帳』
の鬼平こと長谷川平蔵の作者で知
しかし詩人でもあった彼は、人に思いを伝えるためには
られます。
旧来の書では敷居が高すぎると思い、より親しみやすい、
長谷川平蔵は江戸時代に実在した幕臣で、火付盗賊改
人間味あふれる手法がないかと、書と詩の融合を図った
役など江戸の治安を守っていた人物。いわば、今でいう
のです。その1つの形が1984年に出版した
『にんげんだ
警視総監のような立場です。
もの』でした。親しみやすさと人間らしさを追求した独
平蔵は若い時には悪い仲間と遊び歩いていた時代が
特の書体で書かれた、ごくありふれた感情、日常の機微
あったものの、父親の急死に心を入れ替え、江戸の治安
を写した言葉が、多くの人の心を捉え、累計100万部の
のためにその能力を発揮していきます。悪を憎んで人を
ベストセラーとなっています。
憎まずという信念を貫き、清濁併せ呑む鷹揚さで部下を
経営者やビジネスマンはこの相田の文字をみて、衝撃
思いやる姿勢は、理想の経営者、リーダー像として多く
を受け、次に初めてホッとしたという人も多いようです。
のビジネスマンの支持を集めています。池波はほかにも
相田が紡ぎ出す言葉は、単に人間味に溢れ、やさしく語
『剣客商売』の無勝手流の剣
りかけるだけではありません。相田は禅宗の僧について
士、秋山小兵衛を老練で陽
修行を積んだこともある熱心な仏教人でもあります。ま
気なリーダーとして登場さ
た、実力はありながら、そのスタイルを確立するまで
せていますが、リーダー像
仕事に妥協したかったために、長いあいだ不遇の時代も
としては鬼平を語る人が多
あったようです。そうした経験が時に厳しく人間の本質
いようです。
を突いた言葉となって現れます。
また藤沢は
『武士の一分』
相田の詩には
「じぶん」や
「わたし」がよく出てきます
『蝉しぐれ』など、江戸時代
が、経営者やビジネスマンが打たれるのは、相田の人間
の庶民や下級武士が日常の
としての凄さなのでしょうか。それとも私たちの、どう
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ハーバード白熱教室も大学の公開講座という内容ながら
しようもない至らなさから来るものなのでしょうか。
好視聴率をあげ、ハーバード以外でも「◯◯白熱教室」と
■世界の経営者に影響を与える
知的エリート集団ハーバード大学
いった二匹目のドジョウを狙った企画も現れたほどです。
サンデルが人気を集めたのは、その魅力あふれる講義
パフォーマンスだけではもちろんありません。彼が問題
古典や名著は、類まれなる才能をもった経営者や学者、
としたのは、市場主義経済がどれほど進化しても解決で
あるいは小説家という個人が著していくものですが、影
きない
「合理性」
があることでした。
響力のある著作物を出し続ける組織も少なくありません。
たとえば
「1人殺せば5人が助かるとしたら、その1
その1つにハーバード大学があります。
人を殺すべきなのか」
「金持ちに高い税金を課して、貧
近年は経営を実践的に学んだいわゆるMBAを持つ人た
しい人々に再配分することは公正なことなのだろうか」
ちが増えるようになってから、大学のビジネススクール
「前世代が犯した過ちについ
が脚光を浴びるようになってきています。 て、後世の人は償う義務が
とくにアメリカのIVYリーグと言われる名門大学のビ
あるのだろうか」といった、
ジネススクール出身者の活躍は、日本はもとより世界中
すぐには判断できない、ま
のビジネスに影響を与えていると言っても過言ではない
た正悪の判断も人によって
でしょう。そのなかでもハーバード大学のビジネスス
分かれるであろうものです。
クールの影響力は大きく、ここで教鞭をとる学者が著し
市場主義経済の進化とグ
た本の多くが世界的ベストセラーとなっています。また
ローバル化で、世界はどん
ここで学んだ人が
「ハーバード流」
とつけて本を書くこと
どん小さくなります。これ
も多く、もはやハーバードは1つのベストセラーブラン
まで想定していなかった価
ドとなっているようです。
値の衝突や齟齬が生まれてくるでしょう。企業は以前に
実際その教壇に立つ人材はそのネームバリューに違わ
もまして社会的責任が問われるようになりました。企業
ず、魅力に溢れ、明快で飽きさせない講義をする人ばか
や経営者の行為が、市場や社会とぶつかった時、いった
りのようです。
い何を基準に判断すればいいのでしょうか。何が正しさ
の基準となってくるのでしょうか。そこをサンデルは問
■ハーバードの人気哲学者
マイケル・サンデルが
市場主義経済の正義を突いた
『これから
『正義』
の話をしよう』
うているのです。
確かにいまはビッグデータの時代ですから、さまざま
なデータはあっという間に集まるかもしれません。精緻
な分析も可能でしょう。しかし最終的な判断はあくまで
人間としての経営者です。その判断の基準を考える時に
哲学者のマイケル・サンデルもその1人です。彼が著
サンデルのこの本は役に立ってくるのだろうと思います。
した
『これから
『正義』の話をしよう
(英文名
『JUSTICE What's the Right thing to do?』
)
』は、硬い哲学を題材に
した本でありながら日本でもベストセラーとなりまし
た。またその講義の内容は、テレビの公開番組
「ハーバー
ド白熱教室」というタイトルで幾度なく放映されていま
■ハーバードがなぜビジネスを
学ぶに値する場所なのかがわかる
デイジー・ウェイドマンの
「ハーバードからの贈り物」
す。同日通訳を介しながらもその魅力あふれる講義に、
引きこまれた人も多かったのではないでしょうか。この
サンデルの講義は立ち見が出るほどの人気があるそう
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ですが、こうした魅力的な講義のなかでとくに人気があ
なるほど、ハーバード
るのが、ハーバードビジネススクールで卒業前の学生に
大学はビジネスを学ぶに
贈る
「最終講義」
だと言われています。
ふさわしいすばらしい大
その講義を集めた本にデイジー・ウェイドマンの
「ハー
学であることが分かる気
バードからの贈り物」があります。そこで語られる内容
がします。
は、学問の集大成ではなく、人間としていかに有意義な
人生を送るかという餞の言葉が、時にユーモラスに、時
まだまだ紹介しきれな
にセンチメンタルに語られています。合理的で冷徹に生
い古典や名著があります。
産管理を説く学者が、登山で滑落して受けた無償の、か
読み継がれる本には読み
つ命がけの救助への問いかけ。成績優秀者に行なった卒
継がれるだけの理由があ
業後の調査で、成績に応じて業績が上がっていくことは
ります。活字離れが語られる現代だからこそ、じっくり
なかったと報告する財務・法律の学者、などなど…。
本と向き合いたいものです。 B
「人生や経営は、どれだけしっかり学んでも思い通り
参考文献:
にはならない。だから困難に打ち勝つ、忍耐力と落ち込
●文中の各出版物。
●出版社公式サイト。
んでもゴムマリのように跳ね返るポジティブな意志こそ
●
「ダイヤモンドオンライン」
●
「プレジデント社」
公式サイト
が、成功にたどり着くのだ―」
●
「相田みつを美術館」
公式サイト ほか。
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ポイント
◆経営書は、「対話するように読む」柳井正さん
◆世界のコンサルタント、経営学者が師と仰ぐドラッカーの『マネジメント』『現代の経営』
『プロフェッショナルの条件』
◆優れた経営を分析したトム・ピーターズの『エクセレントカンパニー』
◆そのエクセレントカンパニーがなぜ失敗していったかを説いたジェームズ・C・コリンズ
『ビジョナリーカンパニー』
◆優れた技術、品質力を持つ優良企業がなぜ、品質の悪い後発企業の負けてしまうかを説いた
『イノベーションのジレンマ』
◆累計500万部、経営の神様松下幸之助の『道をひらく』、お笑い芸人ロザン宇治原史規さんが
熱望した
『若さに贈る』
◆松下幸之助が信奉した中村天風
◆歴代の総理の相談を受けた安岡正篤
◆世界に禅を広めた鈴木大拙
◆2500年以上の時を経て、ビル・ゲイツにも愛読される『孫子』
◆ユニーク経営、大胆経営の陰にマルクスの『資本論』あり
◆経営者に人気の三大小説家「司馬遼太郎」「池波正太郎」「藤沢周平」
◆経営者に抜群の人気司馬遼太郎の『坂の上の雲』
◆悪を憎み人を憎まず―現代のリーダーシップ像が描かれた池波正太郎「鬼平犯科帳』
◆非業や理不尽が織りなす日々のなかで、慎ましやかにたくましく生きる江戸の庶民を描いた
藤沢周平
◆まっすぐに人間をとらえ書にしたためた相田みつをの『にんげんだもの』
◆ニーチェ、ショーペンハウエルも激賞、ヨーロッパの処世訓のバイブル、
バルタサル・グラシアンの
『賢人の知恵』
◆中国の処世訓の王道『菜根譚』
◆「どの本どの著者が1番役に立つか」のアンケートで1位となったスティーブン・R・コヴィーの
『7つの習慣』
◆自己啓発の巨人、デール・カーネギー、ナポレオン・ヒル
◆世界の経営者に知識経営の重要性を説いた野中郁次郎の『知識創造経営』
◆市場原理主義経済のグローバル化において、正義の判断基準を説いたマイケル・サンデルの
『これから
『正義』
の話をしよう』
◆ハーバードがなぜビジネスを学ぶに値する場所かがわかるデイジー・ウェイドマンの
『ハーバードからの贈り物』
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