岡田 定 貧血をみた場合のアプローチ方法のポイント

デキ
レジ
聖路加国際病院血液内科部長
聖路加国際病院内科チーフレジデント
岡田 定
西﨑祐史
津川友介
野村征太郎
森 信好
聖 路 加 チ ーフレジ デントが
あなたをデキるレジデントにします
連 載
第 15 回
チーレジ:聖路加国際
病院の内科チーフレジデ
ント。診療で忙しい合間
をぬって後輩の指導に
励む日々を送っている。
デキレジ:研修 1 年目
レジデント。知識豊富
で応用力抜群。臨機応
変な対応で周囲からの
評価が高い。
ヤバレジ:研修 1 年目
レジデント。教科書的
な 知 識 は 一 応 あ る が,
うまく実践に応用でき
ていない。
「貧血をみたらReticulocyteとMCVに注目する!」
西﨑祐史(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻)
貧血をみた場合のアプローチ方法のポイント
① Reticulocyte(網状赤血球)の絶対値に注目し,Ret の
② 出 血 や 溶 血 が 除 外 さ れ た 場 合 に は,MCV(mean
絶対値が 10 万 / μ l 以上であれば出血や溶血を疑う。
絶対値 Ret =% Ret × RBC 数 / μ l
corpuscular volume)に注目し貧血の鑑別を行う。
③ 臨床現場で遭遇しやすい貧血の原因は 表 1 のとおり。
絶対値 Ret > 10 × 104/ μ l(10 万 / μ l)は正常に反応してい
ると評価できる 2)。
表 1 MCV による貧血の鑑別(文献 1) より一部改変)
小球性貧血
正球性貧血
大球性貧血
鉄欠乏性貧血
急性出血(Ret 上昇)
巨赤芽球性貧血
2 次性貧血
溶血(Ret 上昇)
骨髄異形成症候群
サラセミア
再生不良性貧血
肝硬変,脾機能亢進
2 次性貧血
甲状腺機能低下症
腎性貧血
網状赤血球高度増加(高度出血・溶血)
小球性:MCV 80 fl以下,正球性:MCV 81 ~ 100 fl,大球性:MCV 101 fl 以上
104 レジデント 2009/6 Vol.2 No.6
デキ
第 15 回
「貧血をみたら Reticulocyte と MCV に注目する!」 レ ジ
貧血:実際の鑑別方法
実際の鑑別方法
Hb 低下のみである場合には Ret の
Hb低下以外に,
WBCやPLTの異常
を伴うか?
反 応 を み る。Absolute reticulocyte
Yes
count(Ret 絶対値)が 10 万 / μ l 以
No
血球減少を除外
・白血病
・再生不良性貧血
・骨髄異形成症候群
・骨髄線維症
・巨赤芽球性貧血
などが疑われれば骨髄検査
上であれば,溶血か出血を考える。血
適切なReticulocyte(網状赤血球)
の反応はあるか?
・薬剤や重症感染症に伴う
液検査で溶血を示唆する所見(LDH
Yes
No
溶血の所見はあるか?
Bil↑,
LDH↑,
Hpt↓,
尿中ヘモジデリン
MCVは?
Yes
No
上昇や Hpt 低下など)の有無に注目
す る。Ret の 反 応 が 悪 い 場 合 に は,
MCV > 100
MCV < 80
MCV に注目して貧血の鑑別を行う。
MCV 80∼100
溶血の原因
の評価
出血の原因
の評価
小球性貧血
の評価
正球性貧血
の評価
大球性貧血
の評価
(文献2)より一部改変)
正球性貧血の鑑別
小球性貧血の鑑別
網状赤血球数(Ret)
上昇なし
網状赤血球数(Ret)
低値/正常
血清鉄
↓
TIBC
↑
フェリチン ↓
血清鉄
↓
TIBC
→∼↓
フェリチン →∼↑
血清鉄
正常
TIBC
正常
フェリチン 正常
血清鉄
↑
TIBC
正常
フェリチン ↑
電気泳動
骨髄穿刺
血液検査で肝機能,
腎機能,
甲状腺機能を評価
異常あり
異常なし
血清鉄
正常/高値
低値
骨髄穿刺
CRP↑などの炎症
反応↑所見あり
鉄欠乏性貧血
サラセミアなど
慢性疾患に伴う2次性貧血
・肝疾患に伴う貧血
・腎性貧血
・甲状腺機能低下症
鉄芽球性貧血
・浸潤性疾患
(白血病,
悪性リン
パ腫,
癌の骨転移など)
・赤芽球ろう
・骨髄異形成症候群 など
・慢性疾患に伴う2次性貧血
・鉄欠乏性貧血
(文献2)より一部改変)
(文献2)より一部改変)
大球性貧血の鑑別
末梢血のスメアで,
過分葉好中球,
楕円形の大赤血球などの形態異常を認める
Yes
No
巨赤芽球性
貧血以外
巨赤芽球性貧血を考えて,
葉酸値の測定,
Vi
tB12,
必要に応じて骨髄穿刺
Ret
VitB12 欠乏
葉酸欠乏
Ret↑
・偏食
・小腸切除の既往
・薬剤に伴う吸収障害
・妊娠や慢性的な溶血での
葉酸の需要の増加 など
溶血 or 出血
Ret→or↓
正常
・悪性貧血
・胃切除
・小腸切除の既往
・腸管内に条虫類が寄生
・薬剤に伴う吸収障害 など
DNA合成異常
(遺伝性,
薬剤性)
・アルコール性肝障害
・甲状腺機能低下症
・肝硬変
・腎性貧血など
上記疾患に該当
しない場合には
骨髄穿刺を検討
・骨髄異形成症候群
・赤芽球ろう
・後天性鉄芽球性貧血
など
(文献2)より一部改変)
Vol.2 No.6 2009/6 レジデント 105