活況を呈する ロシア経済 国 際 労 働 運 動

活況を呈する
ロシア経済
国
際
労
働
運
動
物
価
高
に
見
合
っ
た
賃
金
の
引
き
上
げ
が
活
動
の
重
点
課
題
11月15∼16日、モスクワで、ロシア通信
労組100周年記念式典と全国大会が開催され、
ロシア通信労組100周年記念式典に出席
し、
祝辞を述べる吉澤NTT労組事務局長
なっては、それが名誉となっているわけだから、
歴史とは分からないものである。
情報労連NTT労組から吉澤事務局長、野村情
自由で民主的な組合としての実際の出発は
宣部長が参加し、祝辞と激励のスピーチを行っ
1991年だった。当時はハイパーインフレ、給
た。私も同行する機会を得たので、現在のロシ
料の未払い、体制転換に伴う混乱と、組合を取
ア労働組合事情をリポートしよう。
り巻く状況は大変厳しいものであった。1992
年ナゼイキン氏が委員長の座を射止める。私は
活性化する経済■
私がロシアを訪れたのは実に6年ぶり。モス
クワに降り立って、まず交通渋滞のひどさに舌
当時からナゼイキン委員長を知っているが、西
側の労働組合の経験を学ぶことに必死であっ
た。
を巻いた。しかも走っている車のほとんどが外
当時、全電通を含め、各国の組合が「自由で
車である。市内に入ると、以前の灰色の印象は
民主的な組合とは何か」のテーマでセミナーを
消え、明るい看板が溢れている。携帯ショップ、
開催。団体交渉や労働協約など、基本的な仕組
スーパーマーケット、美容院、カジノ等々。
みや運動の経験を伝達した。日本の経験がどの
ほんの15年前、モノ不足の中、極寒であっ
程度役に立ったのかは分からないが、NTT労
ても人々は列を作って店の前に並んでいたこと
組が持つテレコム民営化の経験が役に立ったこ
など、嘘のような話だ。モスクワは全く普通の
とは確実である。
都市になった。原油高も手伝って経済成長は続
き、2004年は7.1%の成長率だ。しかし、物
ロシア通信労組の歩み■
価の高さにも舌を巻いた。国際基準のホテルは
ロシアのテレコム事業も、規制体と運営体の
200ドルから。社会主義時代、タダのような
分離、持株会社「スヴャジインヴェスト」の設
値段だった本が、今では日本と変わらない値段
立、長距離通信事業者「ロステレコム」と88
となってきた。レストランの値段も日本と同じ。
の固定系地域会社への分割、その後88から7
高級百貨店には、ブランド品が並び、経済は今、
地域会社への再々編を経験するが、激動の中よ
ブームの様相を呈している。
く雇用を守ってきた。現在のテレコム部門の組
平均賃金が300ドルから500ドルという中
合員数は35万人である。2000年にはUNIに
で、この物価高の中、どのように生活するのか
加盟している。現在ロシア通信労組は、中東欧
と問うと、ふたつの仕事をかけ持ったり、
「封
圏のUNI加盟組合の中で最大であることはもち
筒」という名のヤミ給与が支払われたりするそ
ろん、最もしっかりした組合に成長した。
うだ。そうでなければ、この物価高を生き抜く
折からプーチン大統領の訪日と重なったが、
ことは不可能である。労働組合の活動の重点も
日本にとってロシアもまた重要な隣国である。
賃金引き上げに置かれている。
経済発展が続けば、日本との経済関係が深化す
ロシア通信労組結成100周年といっても、
ることは必至である。吉澤事務局長も「UNIを
1905∼1917年は形成期、1917年以降は共
通じた交流」を強調したが、労働組合間の関係
産主義の時代である。ロシア革命期の通信労働
作りも避けて通れない課題であろう。
者は、共産主義者とは一線を画していた。今と
伊藤栄一
UNI−Apro
東京事務所所長
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REPORT 2005.12