初期免震建築物の振動特性の検証

初期免震建築物の振動特性の検証
モード 形状 振幅依存性 捩れ
振動特性
免震装置
地震観測
正会員 ○真川 公男 常時微動
固有振動数
はじめに
多田
同
篠崎 祐三 の壁剛性の影響が上部構造に影響を与えないように 地下
東京理科大学神楽坂校舎 号館 以下 号館 は 年
1階の壁の頂部全体に開口を設けることで表現した
竣工の初期免震建物である 我々は 年 月以来 号館
ボックス型鉄骨柱
ボックス型鉄骨柱
で地震観測 微動観測を行ない 様々な振動特性を検出する
弾性バネ
とともに 構造計算書等を基に解析ソフトにより 号
館の構造モデルを作成し 動的フレーム解析により振動特
鉄筋ダンパー
性を再現 検証することを試みてきた
中空鉄筋コンクリート
本報は 号館の振動特性について微動 地震観測を通じ
これらを検証したものである
構造概要
長辺方向 短辺方向 の鉄骨鉄筋コンクリート
造の建物である 平面形状は各階とも 図
に例として示
した 階と同様で 長方形に近い 構造上の特徴は地下 階
柱で免震装置を形成していることである
C
便所
(女)
郵便室
管財一課
8700
便所
(男)
広報室
防災
センター
E.V.
E.V.
ホール
UP
3100
19400
給湯室
倉庫
B
ロッカー室
エントランス
ホール
入学課
経理課
7600
E.V.
応接室
A
張間方向
4300
"
"
"
"
45120
385
1
2
3
4
図
5
6
図
免震装置
実測で得られた地下 階の加速度応答波形を解析用モデル
号館は 地下 階 地上 階 塔屋 階 最高高さ 印刷室
弾性バネ
構造モデル
実物
て新たな知見を得るとともに 動的フレーム解析によって
卓 同
"
"
4300
"
5650
桁行方向
7
8
9
10
11
階平面図
解析用モデル概要
の地下
微動
階に入力し 動的フレーム解析を行なった
地震観測概要
年 月 日 号館で 回の微動観測 順に観測 と呼ぶ を行なった.図 に微動 地震観測に用いた地震
計 強震計の配置図を示す.観測 は 号館の固有振動時
のモード 形状を検出することが目的で 地震計を地下 階
階 屋上に
台ずつ 計 か所設置した.
観測 は 屋上での微動観測で検出された捩れ振動が 建物
全体としてはどのような捩れ形状を示しているかを検出す
ることを目的として 地震計を地下 階 階 階 屋上に
台ずつ 計 つの階の か所に設置した.両観測とも地
下 階の免震装置の影響を考え 地震計設置位置は主に低
層階に重点を置いている
地震観測用の強震計は地下 階 階 階 屋上の計 か所に設置され 年 月観測開始以来 回 年
月 日現在 最大震度 弱までの地震を観測している.
解析用の構造モデルは 後述の微動観測で得られた固有
#1
振動数とモード 形状をできるだけ精度よく再現するように RF
既往の構造モデル を修正 改善することにより作成した
15F
号館の地下 階柱は コンクリートを充填したボックス
型鉄骨柱を内側に 上部を切断して鉄筋ダンパーを設置し
た中空鉄筋コンクリート柱を外側に配置して 重柱を構成
している 図 解析用モデルでは 重柱の内側の柱
だけを表現し 外側の柱を省略する一方 柱頭部に新たに弾
性バネを設置することで免震柱を表現した 図 弾性
#2
#3
最高高さ 63.1m
地震計(観測1)
12F
10F
8F
7F
地震計(観測2)
5F
強震計
3F
2F
1F
B1F
張間方向 19.4m
桁行方向 45.1m
バネを設けたのは 後述の微動観測時のモード 形状 図 より 免震層が他の層に比べて特段低剛性となっていない
と推測されたからである 免震クリアランスは 地下1階
図
! "#$!% "!%&
' (% ) *)!% +)% % , '
地震計
※#1,#2,#3は各階の
地震計の番号を示す
強震計配置図
*-*.*/* 0 !
捩れ固有振動数に対応するのではないかという推測のもと 回の微動観測において 屋上1 で得られた加速度パ
ワースペクトルのピークより推定した 号館の 次固有振
動数 実測 の平均値を 解析値と対比して表 に示す
表
次固有振動数
方向
実測
解析
張間
23
23
桁行
23
23
ともに 各観測点間の振動の位相関係を調べた結果 地下
階を除く屋上 階
階がいずれも全体として剛体的に回
転する動き つまり捩れ振動を起こしていることが確認さ
れた
Displacement
各観測点の変位パーティクルモーション 図 を求めると
#30
#29
0.6
0.6
0.4
0.4
0.4
0.2
0.2
0.2
0
-0.2
次 次固有振動の
-0.4
-0.2
0
0.2
Displacement
モード 形状を解析結果とあわせて図 に示す 実測で
屋上
0.4
-0.6
-0.6
0.6
-0.4
-0.4
Displacement
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0.2
Displacement
Displacement
0.2
0
0
-0.2
-0.4
階 0.2
0.4
-0.6
-0.6
0.6
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
-1 -0.5 0
次
図
0.5 1
解析
微動時のモード 形状 実測
振幅依存性
0.2
0.2
0.2
0
0
-0.2
階 0.4
0.6
-0.6
-0.6
0.6
0.2
0
-0.2
-0.4
0.2
0
#24
0.4
0
0.4
#21
0.6
-0.2
0.6
-0.2
Displacement
0.4
-0.4
-0.4
0.6
-0.4
-0.4
Displacement
階 -0.2
0
0.2
0.4
0.6
-0.6
-0.6
-0.4
Displacement
階 -0.2
0
0.2
Displacement
図
各階の変位パーティクルモーション 単位μ 実測
しかし 解析においては捩れ振動を再現することができ
なかった 地下
図 は 回の微動観測および 回の地震観測で実測さ
次固有振動数
との関係を示す 両方向とも右下がりの図になり 揺れの
振幅が大きくなるほど
次固有振動数が低下するという
いわゆる振幅依存性が見られた なお 観測された最大レ
ベルの地震に対し 張間 桁行各方向における
次固有振
動数の低減率はそれぞれ % %程度となった
1.4
1.4
○:地震観測
▲:微動観測
1.35
1.35
1.3
Frequency(Hz)
1.3
Frequency(Hz)
-0.6
-0.6
0.6
0.4
解析
0.4
0.6
-0.6
-0.6
0.5 1
0.2
階各点における入力間の位相差や 風の
影響を解析で無視したことが可能な原因として考えられる
れた張間 桁行各方向の屋上最大加速度と
1.25
1.2
1.15
1.25
1.2
1.15
1.1
1.1
1.05
1.05
1
○:地震観測
▲:微動観測
1
1
10
Peak acceleration(gal)
図
-0.4
-1 -0.5 0
0
Displacement
-0.2
次
階 -0.2
#23
実測
0.4
0
-0.4
-0.4
Displacement
解析
実測
階 0.2
-0.2
-0.4
0.6
0
#26
0.2
0
0.4
#25
0.4
-0.2
-0.2
Displacement
0.6
-0.4
-0.4
屋上
0.4
張間方向
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-0.6
-0.6
0.6
0.6
Displacement
解析
実測
桁行方向
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
0.4
0.4
-0.2
Displacement
解析
実測
張間方向
Floor
Floor
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
0.2
屋上
Displacement
桁行方向
0
0.6
-0.6
-0.6
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
-0.2
#27
0
-0.2
-0.4
-0.6
-0.6
次
次固有振動時ともに地下 階と 階の層間変位が他の層
間に比べて特に大きいと認められないことから 微動時に
は免震装置が働いていないと推測される 震度 弱までの
地震時のモード 形状に関してもほぼ同様の結果が得られた
0
-0.2
-0.4
微動観測 観測 により検出した
#28
0.6
Displacement
モード 形状
Displacement
Displacement
固有振動数
100
1
10
100
Peak acceleration(gal)
張間方向
桁行方向
屋上最大加速度と 次固有振動数の関係
微動時の捩れ振動
微動観測 において各階で得られた張間方向の加速度パ
ワースペクトルには 中心付近の1 を除く両端の1 1
においてのみ 23 の位置にピークが見られた これは
½ 東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻
¾
東京理科大学工学部建築学科 助手・理博
¿ 東京理科大学工学部建築学科 教授・工博
が 正確な理由は未詳である
まとめ
本研究では微動 地震観測によって
号館の振動特性に
ついて以下の新たな知見を得るとともに 動的フレーム解
析によってこれらを検証する試みを行った
モード 形状より 微動および震度 弱までの地震時には
免震装置が働いている徴候が見られなかった
次固有振動数が微動時 小地震時に対して大地震時に
低下するという振幅依存性が見られた
微動時の 号館の地上階全体の捩れ振動を検出した
謝辞
本研究を進めるにあたり ご協力頂いた小野 格三郎氏に謝意を表しま
す
参考文献
徳永 健人 他 初期免震建築物の振動特性その 日本建築学会大会
学術講演梗概集 小野 格三郎 他 初期免震建築物の振動特性その 日本建築学会大
会学術講演梗概集 米田 裕 他 三次元フレーム解析による初期免震建築物の振動特性の
検証その 日本建築学会大会学術講演梗概集 真川 公男 他 三次元フレーム解析による初期免震建築物の振動特
性の検証その 日本建築学会大会学術講演梗概集