3. 下諏訪町の環境の現状と課題

下諏訪町の環境の現状と課題
1. 自然環境
1)
地形・地質
◇ 下諏訪町の地形・地質
町は南北に細長く、総面積の約 80%は森林です。山間部には、カラマツなどの針葉樹林だけでなく、学術的にも貴
重な八島ヶ原高層湿原や観音沢などの美しい渓谷を擁しています。平坦地は諏訪湖に面する扇状地のみでその面積
は小さく、既に大半が市街地として利用されていますが、社寺林など多様な自然を点在させながら、山間部と諏訪湖を
つないでいます。
町は、町域の中に多様な地形を持つことを大きな特徴としています。
また、地質についてみると、砥川により形成された平坦地(扇状地)は、泥、砂、礫層を新規ローム層が覆っていま
す。町の大半を占める山間部は石英閃緑岩、緑色凝灰角礫岩(ぎょうかいかくれきがん)、火山角礫岩、砂泥層等
からなっています。
◇ 八島高原
八島高原は、八ヶ岳中信高原国定公園霧ヶ峰の北西に位置し、標高 1630m 前後の八島ヶ原高層湿原を中心
に鷲ヶ峰(1798m)、大笹峰(1807m)蝶々深山(1836m)に囲まれた一帯とされています。
この高原は霧ヶ峰の主峰、車山(1925m)の第四紀(60~100 万年前)火山活動に始まり、流動性に富ん
だアルカリ性溶岩(石英閃緑岩)を流出し、わが国では珍しいアスピーデ火山の溶岩台地を形成、なだらかで広々と
した高原となっています。
八島高原の中心を形成する八島ヶ原高層湿原は南北約 1km、東西約 800m の二等辺三角形(ハート形)を
していて、西側に八島ヶ池、東側に鎌ヶ池、その中間に鬼ヶ泉水があります。
八島ヶ原高層湿原は、尾瀬ヶ原の高層湿原より小規模ですが、比較的古く、現在の姿になるまでにおよそ 1 万
2000 年あまりかかっています。
八島ヶ原高層湿原はわが国における高層湿原注の南限に位置し、標高の高いこと、泥炭層が 8.0m 以上におよぶ
(1 年に約 1mm の速度で発達する)ことなどで、学術的にも貴重なものとなっており、国の天然記念物に指定されて
います。堆積した泥炭層の内部に存在する花粉によって、過去にどんな植物が生育していたか、また、堆積状態から、
過去の気候の周期的変化の状態も知ることが出来ます。
※ 現地「あざみ館」に八島ヶ原高層湿原の成り立ちのパネル展示があります。
注)高層湿原は、標高 1000m以上の場所や高緯度地方に見られ、年間を通じて冷涼な気候のため、多様な植物が、
枯れても腐植土にならずに堆積、泥炭化し、植物が上へ上へと生長して全体が水面よりも高く盛り上がったものです。
11
◇
諏訪湖
長野県最大の湖、諏訪湖は 13.3km2 の面積を持ち、大きさでは日本全国で 22 番目の湖となっています。
諏訪湖の概況
項 目
参
759m
湖面標高
考
長野市の標高 362m
7
5
松本市の標高 592m
8
※覚え方「名古屋より 1m 高い」
琵琶湖 670.25km2
湖面積
13.3km2
貯水量
63,023,000m3
※13.3km2×4.7m=62,510,000 m3
531.2km2
集水域面積/湖面積の比率 諏訪湖 40 倍
富士見町の一部を除き、諏訪全域が該当
琵琶湖 4.7 倍(流域 3,174 km2)
します。
霞ヶ浦 9.8 倍(流域 2,156.7 km2)
流域面積
外周
15.9km
深度
最大 7.2m 平均 4.7m
滞留時間
39 日
霞ヶ浦 220 km2
琵琶湖 2,000 日
霞ヶ浦
200 日
町の河川
一級河川
31 河川
流入河川
(一級河川 15、準用河川 5、普通河川
等 11)
砥川(福沢川、東俣川)、十四瀬川、承知川
普通河川
新川、古川、大沢川、宇津木川、所沢川、湯沢川、
立汐川、御手洗川など
流出河川
1 河川
出典:21 世紀の美しい諏訪湖をめざして 他
天竜川
12
2)
植生
◇ 下諏訪町の森林における植生の現状
町の約 80%を占める森林には、針葉樹からなる人工林、ナラの木等からなる二次林注、自然林(天然林)が存
在しています。
町の森林は明治以前には、落葉広葉樹が占めていました。ところが、昭和 29 年から約 20 年間続く高度経済成長
期に炭坑、港湾事業、大型建設事業等においてカラマツの需要が拡大しました。このカラマツは早生であり、回転率が
高かったことから、さかんに植林が進められました。しかし、その後、木材の輸入が自由化され、海外の安い木材が大量
に供給されるようになると、国産材の価格は低下し、林業の経営状況は悪化しました。
森林の整備は公有林、財産区有林などの団体有林を中心に進んでいますが、個人有林においては、経営規模が
小さいことや国産材の価格低迷、ニホンジカなどによる森林被害の増加もあって、林業参画意欲が減退し、整備の遅
れが目立っています。そのうえ、林業就労者は、高齢化とともに減少しています。
また、生態系の保全や二酸化炭素などの排出による地球温暖化などの環境対策として、森林に求められる機能も
多くなってきていることから、環境保全を考慮した森づくりが必要とされています。
注)二次林:
薪炭採取などの持続的利用を
目的として、人間の手によって
管理されることで作られ維持さ
れている森林植生。里山、雑
木林とよばれることもあります。
自然環境としては人為的である
として軽視される傾向にありまし
たが、より自然度の高い森林の
前哨地域としての豊かな生態
系が再認識され、各地で保全
活動に取り組むようになってきて
います。
(人)
45
40
40
31
35
34
30
25
19
20
14
15
6
10
6
5
0
S50年
S55年
S60年
H2年
H7年
H12年
H17年 年度
出典:国勢調査(各年 10 月 1 日現在)
15 歳以上林業就業人口の推移
外国資本などによる日本の水源地の買収の動き
長野県を含む全国各地の水源に近い山林を、外国資本が買収しようとする動きがあり、目的不明な土地
取引による水道水等の渇水などが懸念されています。
長野県では、法律及び条例の規制がない水資源や水源林等について、既存の法律条例等の活用及び
新たな制度の創設も視野に持続的な保全を図ることとしています。
参考:「水源林・水源・地下水保全対策部会」報告書 長野県
13
◇ 八島高原の植物
八島ヶ原高層湿原と周辺に開けた八島高原の草原の四季は、日本海側と太平洋側の双方の影響を受けてシベリ
アによく似た大陸的な気候です。植物は高山性をおび、湿原特有の植物相と草原を合わせて約 400 種の豊富な植
物が生育しています。この多様な植物相はまた、植物に依存する昆虫を主とした動物種の多様さを示唆するものです。
しかし、近年、草原への樹木の侵入や既存樹林の拡大により草原景観に変化がみられるほか、さらに、シカによるニ
ッコウキスゲなどの草原植物の食害がみられるようになりました。
そのため、霧ケ峰に係わる団体、機関から構成される霧ケ峰自然環境保全協議会が、林野庁の支援を受け、八島
ヶ原湿原の植生をシカによる踏み荒しや食害などの被害から守るため、平成 22 年度から平成 23 年度にかけて、湿原
の周囲を囲む防鹿柵を設置しました。
◇ 諏訪湖の植物
水生植物は、その生活形態によって大きく 4 つのグループに分けられます。一般的に湖心方向に向かって、横断的に
湿生植物、抽水植物、浮葉植物、沈水植物の順に分布しています。
かつては諏訪湖においても豊富な水際・水生植物が見られましたが、湖を取り巻く環境及び水質の変化、また、コン
クリート護岸などによる人為的な影響により、現在は一部に分布が見られるものの、植物の生息面積や種の数は減少
しています。
諏訪湖の植物
抽水植物
オモダカ、ガマ、キショウブ、ツルヨシ、ホテイアオイ、マコモ、ミクリ、ヨシ、(コウホネ、ミズアオイ)
浮葉植物
アサザ、ウキクサ、ヒシ、ヒルムシロ
沈水植物
イトモ、オオカナダモ、クロモ、コカナダモ、ササバモ、セキショウモ、センニンモ、ハゴロモモ、
ヒロハノエビモ、ホソバミズヒキモ、(コウガイモ、マツモ)
( )内は流入河川のみで見られた植物
出典:長野県水産試験場 平成 11 年度 漁場富栄養化対策事業報告書
草原植物等の食害で問題となっているシカ
14
動物・昆虫
3)
◇ 八島高原の動物・昆虫
霧ヶ峰側は樹木が少ないため鳥獣類は少なく、ネズミ、リス、イタチ、タヌキ、ウサギ、アナグマなどで、草原の周囲にあ
る林地に生息しており、あまり大型のものはみられません。
鳥類はヒバリ、ノビタキ、アカハラ、アオジ、コヨシキリなど、蝶類はヒメシジミ、ウラギンヒョウモン、エルタテハなど 100 種
以上を数えます。
また、八島ヶ原湿原に生息するシュレーゲルアオガエルは、「残したい日本の音風景 100 選(環境庁)」に「八島湿
あ め い
原の蛙鳴」として指定されています。
※残したい日本の音風景 100 選:
全国各地で人々が地域のシンボルとして大切にし、将来に残していきたいと願っている音の聞こえる環境
(音風景)を広く公募し、音環境を保全する上で特に意義があると認められるものを平成8年に環境庁が
認定しました。ほかに長野県では、岡谷・塩尻市「塩嶺の小鳥のさえずり」、長野市「善光寺の鐘」が認定され
ています。
◇ 諏訪地方の動物
諏訪地方の自然は変化に富んでいるため、本州で見られる北方系の動物と南方系の動物の多くをいずれも見ること
ができます。
諏訪地方の哺乳類
主な生息場所
種
市
街
地
イタチ、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミなど
耕
作
地
アカネズミ、アズマモグラ、ジネズミなど
山 林(低山帯)
山 林(高山帯)
類
アナグマ、イノシシ、ウサギコウモリ、タヌキ、ツキノワグマ、
ニホンザル、ニホンカモシカ、ノウサギ、ハクビシン、ハタネズミ、ムササビなど
オコジョ、キツネ、テン、トガリネズミ、ホンシュウジカ、ヒミズ、ヒメネズミ、モモンガ
ヤマコウモリ、ヤマネなど
出典:諏訪教育会 諏訪の動物たち など
15
◇ 諏訪湖の鳥と昆虫
諏訪湖は水深が浅く、水温が上がりやすい湖です。また、流入河川が多いことから、鳥や魚のえさになるものも多く流
れ込むので、多くの種類の鳥が集まってきます。
諏訪湖周辺には、トビ、カラス、ムクドリ、スズメ、ホオジロ、セグロセキレイ、ツバメなど陸地の鳥のほかに、水面にはコ
ハクチョウ、カモ類、カイツブリ、アジサシ等、岸の浅瀬や浜にはオオヨシキリ、コサギ、ヨシゴイ、イソシギ、コチドリ、バン、ヒ
クイナ等が見られます。
かつて、「渋のエゴ」と呼ばれていた入り江が湖の南東にあり、水生植物の宝庫であったことから水鳥たちのよい繁殖
場所になっていました。しかし、今では下水道の終末処理場が建てられ、豊田地先(葭鼻)沖の「渋のエゴ」が一部
残るのみとなりました。他地域の「エゴ」も湖周道路等に姿を変え、「エゴ」の衰退と共に生息環境は劣化しましたが、現
在徐々に修復が図られています。
現在、全国的にカワウ等の魚食性鳥類が分布を広げています。環境省が 1970 年代後半と 1990 年後半から
2000 年に行った 2 度の鳥類繁殖分布調査では、カワウは 12.4 倍に増加しています。また、諏訪湖にだけ特異的に
増加しているのが、カワウと同じ魚食性のカワアイサです。1990 年ごろまではわずかしか渡ってきていませんでしたが、
2004 年以降に急増しています。
このような魚食性鳥類の増加により、漁業被害や、営巣地周辺ではにおいや騒音の被害が発生していますが、追い
払い等の成果があまりあがっていないのが現状です。
諏訪湖の鳥と昆虫
鳥 類
昆 虫
アマサギ、オオヨシキリ、カイツブリ、コハクチョウ、ゴイサギ、オオヨシキリ、ササゴイ、ハシビロガモ
バン、ヒドリガモ、マガモ、ムナグロ など
ウチワヤンマ、オハグロトンボ、シオカラトンボ、メガネサナエ など
◇ 諏訪湖の水生生物・魚介類
諏訪湖の主な水生生物、魚介類は以下のとおりですが、しゅんせつや埋め立てにより水草帯が減少したことで、浅瀬
や水草を必要とする沿岸性の強い種は減少しています。
諏訪湖の水生生物・魚介類
魚類
アマゴ、アユ、ウキゴリ、ウグイ、オイカワ、オオクチバス、カマツカ、コイ、ジュズカケハゼ、タイリクバラタナゴ
ドジョウ、ナマズ、ニゴイ、ヒガイ、フナ、ブルーギル、メダカ、モツゴ、モロコ、ヨシノボリ、ワカサギ
貝 類
イシガイ、カラスガイ、カワニナ、サカマキガイ、タニシ、ドブガイ、ヒメタニシ
甲殻類
アメリカザリガニ、スジエビ、テナガエビ、ヌカエビ
出典:長野県水産試験場 HP(http://www.pref.nagano.jp/xnousei/suishi/)
:長野県水産試験場 平成 11 年度 漁場富栄養化対策事業報告書
※ 平成 11 年 2 月、諏訪湖の「スワモロコ」は絶滅が確認されました。
16
4)
生態系
◇ 生物多様性の保全
日本は世界に 34 箇所ある生物多様性ホットスポット注のうちのひとつです。日本の生物相は世界的にみて固有性が
高く、しかもその環境の存続が懸念されています。長野県環境保全研究所が発表した「長野県生物多様性概況報
告書」によれば、長野県は、この日本のなかでも固有性の高い生物の分布域を多く含む地域としています。絶滅危惧・
準絶滅危惧にランクされる種数が県内に分布する種の数に占める割合は、維管束植物で 29.6%、哺乳類で
32.7%、鳥類で 14.5%、爬虫類で 7.7%、両生類で 35.0%、魚類 40.6%を占めています。
平成 20 年 6 月には「生物多様性基本法」が制定・施行されました。これにより「地域戦略」策定の動きが広がって
おり、県でも「生物多様性長野県戦略策定委員会」を平成 22 年に設置し、平成 23 年度中に策定する見込みで
す。
注)生物多様性ホットスポット:地域固有の種が集中して分布し、その生息環境が特に危険にさらされている場所です。
国内の生物多様性の要因別危機
危機の要因
第 1 の危機
内容
人間活動や開発による危機
開発や工事による影響、乱獲・盗掘・狩猟による影響、踏みつ
けによる影響がある。
森林・草地・農耕地の利用衰退による影響に加えて、これから
第 2 の危機
人間活動の縮小による危機
派生する問題として中・大型哺乳類、なかでもシカの分布拡大
による影響が深刻となっている。
第 3 の危機
人間により持ち込まれたものによる危機
地球温暖化
特定外来生物をはじめとするさまざまな外来生物の分布拡大
が県内でも顕在化している。
高山帯の生物多様性に深刻な打撃をもたらす可能性がある。
◇ 外来生物による影響
町では人間により持ち込まれた外来生物の存在が生態系への大きな脅威となっています。諏訪湖周辺ではアレチウ
リが繁茂し、在来種の生育場所を奪っています。諏訪湖では増加したブラックバスやブルーギルが在来種を捕食したり、
餌や生息域をめぐり競合しているため、在来種が減少しています。
長野県で確認されている特定外来生物注指定種
アライグマ、アメリカミンク、ガビチョウ、ソウシチョウ、カミツキガメ、ウシガエル、カダヤシ、ブルーギル、コクチバス、オオクチバス
ウチダザリガニ、セイヨウオオマルハナバチ、オオキンケイギク、オオハンゴンソウ、オオカワヂシャ、アレチウリ、オオフサモ
アゾラ・クリスタータ
注)特定外来生物:外来生物(移入種)のうち、特に生態系への被害が認められる生物です。
17
2. 生活環境
1)
大気汚染
大気の常時監視測定
町では大気汚染物質の大規模な発生源が少なく、二酸化硫黄、浮遊粒子状物質 注、二酸化窒素など各項目と
も、環境基準に適合していますが、主に車社会の負荷による、大気を介した水系への影響のおそれが新たに指摘され
るようにもなっています。そのため、町屋敷地区に県の移動コンテナ局を設置して、大気の状況の監視を実施しており、
平成 24 年度からは、移動測定車に変更し、より確実な測定を行う予定です。
ダイオキシン等の有害化学物質の問題も含め、科学的知見の集積をしながら今後も大気の動向には注意をしてい
く必要があります。
注)浮遊粒子状物質(SPM):大気中を浮遊する 10μm(1cm の1万分の1)以下の微粒子。自動車の排気ガスや
火山の噴煙、道路の粉じんなどが主な発生源。気道や肺に入り込むと喘息などの原因となります。
(ppm)
(mg/m3)
二酸化硫黄
0.010
0.02
0.005
0.0032
0.0028
0.0024
H21年
H22年
0.0260
0.0267
0.0223
0.01
0.000
0.00
H20年
(ppm)
年度
H20年
(ppm)
一酸化窒素
0.010
0.005
浮遊粒子状物質
0.03
H21年
H22年
年度
二酸化窒素
0.010
0.0044
0.0088
0.0080
0.0077
H20年
H21年
0.005
0.0031
0.0020
0.000
0.000
H20年
H21年
H22年
年度
H22年
二酸化硫黄、浮遊粒子状物質、一酸化窒素及び二酸化窒素の年平均値の推移
大気の汚染に係る環境基準(参考)
物質
環境上の条件
二酸化硫黄
1時間値の1日平均
値が 0.04ppm 以下で
あり、かつ1時間値が
0.1ppm 以下であるこ
と。
浮遊粒子状物質
1時間値の1日平均
値が 0.10mg/㎥以下
であり、かつ1時間値が
0.20mg/ ㎥ 以 下 で あ
ること。
注)移動コンテナ局で測定している 3 項目について、環境基準を掲載
18
二酸化窒素
1時間値の1日平均
値 が 0.04ppm か ら
0.06ppm までのゾーン
内又はそれ以下であるこ
と。
年度
2)
水質汚濁
◇ 河川の水質
町には、東俣川、砥川、古川、
(mg/L)
承知川などの河川があります。河川
2.5
の水質汚濁に係る環境基準「類型
2.0
A」と比較してみると、町内主要河
川(東俣川、砥川、古川)のう
1.5
ち、東俣川はこの基準を満たしてい
1.0
ますが、その他の河川では大腸菌
0.5
群が基準を超過している年が見受
0.0
けられます。
H18年
(町内では砥川だけが「類型 A」
H19年
東俣川
H20年
砥川
H21年
古川
H22年
年度
環境基準
に指定されています。)
町内主要河川における BOD の経年変化
砥川の水質汚濁に係る環境基準(生活環境項目)抜粋
類型 利用目的の適応性
pH:
水素イオン
濃 度
DO:
溶存酸素
BOD:
生物化学的酸素
要求量
SS:
浮遊物重量
大腸菌群
6.5以上
7.5以上
2以下
25以下
1000以下
8.5以下
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(MPN/100mL)
水道2級、水産1
: 級、水浴および;以
下の欄に掲げるもの
近隣の類型:の主な河川 砥川、上川、横河川、天竜川(伊那市以南)、千曲川、犀川など主要河川本流
◇ 諏訪湖の水質汚濁
諏訪湖は、昭和 30 年代前半までは良好な水質を保持し、水浴が行われていました。しかし、昭和 30 年代後半か
ら水質汚濁が目立ちはじめ、昭和 38 年5月にはアオコの異常発生がありました。
このような状況に対して、長野県では、流域下水道の整備、底泥のしゅんせつ注 1、事業場への上乗せ排水基準の
設定、COD(化学的酸素要求量)、窒素、燐に係る汚濁負荷量規制などの施策を実施してきました。
この結果、下水処理場ができておよそ 20 年後の平成 11 年から、アオコがほとんどみられなくなりました。平成 18 年
度には全窒素について水質目標値が、全燐については水質目標値と環境基準が達成されました。ただ、諏訪湖の水
質は少しずつ改善しているものの、COD の水質目標値及び COD と全窒素の環境基準は達成されていません。
諏訪湖は天竜川が唯一の流出河川注
2
になりますが、天竜川水系には流域全体で約 150 万人が生活していま
す。これほど多くの人が一つの水系に寄り添っているのです。このことからも、諏訪湖浄化の問題は諏訪湖沿岸地域の
局所的問題ではなく、広域的に捉えるべき問題であるといえます。
注 1)しゅんせつ(浚渫):水底をさらって土砂などを取り除くことをいいます。
注 2)流入河川の本数に拘わらず、流出は通常一河川に収束します。
19
(mg/L)
(mg/L)
10
1.0
5.7
6.1
5.8
5.5
0.77
0.75
0.73
0.037
0.045
0.042
0.035
H19年
H20年
H21年
H22年
0.70
0.72
0.038
H18年
4.9
5
0.5
0.0
0
H18年
H19年
H20年
COD
H21年
H22年
年度
環境基準
全窒素
年度
全燐
諏訪湖湖心における COD、全窒素及び全燐の経年変化
諏訪湖(天然湖沼及び貯水量 1000m3 以上の人工湖)の水質汚濁に係る環境基準(生活環境項目)抜粋
類型 利用目的の適応性
水道2、3級、水産2
: 級、水浴及びB以下
の項目に掲げるもの
類型:の主な湖沼
pH:
水素イオン濃度
DO:
溶存酸素
COD:
化学的酸素
要求量
SS:
浮遊物重量
大腸菌群
6.5以上、
7.5以上
3以下
5以下
1000以下
8.5以下
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(MPN/100mL)
諏訪湖、白樺湖、蓼科湖、みどり湖、女神湖、河口湖、霞ヶ浦
20
水質に関する主な指標
用 語
解
説
溶液中の水素イオン濃度[H+]を示す尺度で、pH 値が 7 のときは中性、これより数値が大きい場合はアルカ
pH
リ性、小さい場合は酸性を示します。酸性雨は、pH5.6 以下をいいます。空気中の炭酸ガスの影響で通常
酸性を示すことによります。
DO
(mg/L)
BOD
(mg/L)
COD
(mg/L)
SS
(mg/L)
溶存酸素(Dissolved Oxygen)。水中に溶け込んでいる酸素の量のことを指します。水の自浄作用に
重要な役割を果たす水中微生物には欠くことのできないもので、きれいな河川水中では通常 1 リットル中に 7
~14mg 程度ですが、有機物の流入量が多くなり、汚濁が進行すると微生物により消費され、減少します。
生物化学的酸素要求量(Biochemical Oxygen Demand)。河川水などの有機物による汚濁の程
度を示すもので、水中に含まれている有機物質が一定時間、一定温度のもとで微生物によって酸化分解さ
れるときに消費される酸素の量をいい、数値が高いほど有機物の量が多く、汚れが大きいことを示しています。
化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand)。湖沼などの有機物による汚濁の程度を示すもの
で、水中の汚濁物質を酸化剤によって酸化するときに消費される酸素の量をいいます。数値が高いほど有機
物の量が多く、汚れが大きいことを示しています。
浮遊物質(Suspended Solids)。粒径 2mm 以下の水に溶けない懸濁性の物質をいいます。水の濁り
の原因となるもので浮遊物が有機物である場合には、腐敗し水質の悪化を招きます。
大腸菌群数は、人間または動物の排泄物による水の汚染指標として用いられています。大腸菌には、腸内
大腸菌群
に生存しているもののほか、草原や畑などの土中に生存しているものも含まれますが、一括して大腸菌群とし
て測定しています。
◇ 諏訪湖及び天竜川上流部の水環境保全
長野県では、平成 20 年 3 月に「第 5 期諏訪湖水質保全計画」を策定しました。諏訪湖では、今後も引き続き水
質浄化に取り組む必要があることから、下水道整備など従来からある事業の継続と上川、宮川流域における流出水
対策の重点的な実施など新たな事業を盛り込み、水質保全対策を総合的に推進しています。
昭和 49 年 1 月に「天竜川水系水質保全連絡協議会」が設立され、天竜川水系の河川及び水路に係る水質保
全に関する各関係期間相互の連絡調整を図ることを目的とし、水質事故対策や水質事故対策訓練など様々な活
動を行っています。
◇ 諏訪湖の護岸と自然浄化作用
諏訪湖の水質汚濁の原因として、自然浄化能力の低下が指摘されています。
水際域の役割注や湖岸の多自然化の重要性が重視されてきたのは 90 年代に入ってからのことです。それまでは、度
重なる水害の経験から、天竜川下流域も含め諏訪湖流域住民の悲願ともいうべき治水対策が第一義的に考えられ
てきました。当時は湖の環境における水草等の持つ役割などが必ずしも正確に認識されていなかったこともあり、コンクリ
ート護岸が諏訪湖全周に施され、新たな交通事情への対応として湖周道路の敷設のための埋め立てやしゅんせつも行
われました。こうした変化により、水際域に棲む生物による浄化や、水が礫や木の間を行き来することによる浄化(礫
浄化)ができなくなったことも水質汚濁の原因のひとつとなっているといわれています。
21
この点について、県を中心に進められている「諏訪湖の水辺整備マスタープラン」により、現在のコンクリート護岸のうえ
に、土砂を被せて人工なぎさを造る等湖環境も視野に入れた工法を採用し、整備が進められています。既に完成した
地区では、オオヨシキリのさえずりが戻ったり、カルガモの営巣、抱卵が観察されるなど、自然との共生場面が広がってい
ます。
注)水際域の役割:河川や湖の岸辺の土地は、水辺に特有の水生植物や湿地性植物が生育し、独特の植物相により、
特有の生物相と、水域と一体化した共通の生態系を持っています。
例えば、ゲンジボタルは、幼虫時代を水中で過ごし、蛹化するために岸辺の土地に上陸します。成虫は水辺の草むら
を住み処として配偶者を見つけ、水辺に産卵して子孫を残します。ゲンジボタルの生活史においては水域と水辺の陸域
を切り離して考えることはできません。
◇ 下諏訪町の都市化と流入河川の水質
直線の河川よりは、蛇行した河川の方が当然地形的変化は大きくなります。淵があり、澱みがあり、瀬には樹木が
影を落とし、流下速度も変化に富む河川は、多様な自然地形を生み、そこに豊かな植生が出現し、その植生(地
形、土壌も含み)に支えられた動物の生態系もまた多様なものになります。
しかし、平坦部が極度に不足している町では、蛇行河川がいかに環境面から見て望ましいとしても可住地は既に住
宅等が立ち並んでおり、現在の河川を環境面から改良する流路変更も面積的な拡大も現実的には困難です。
つまり、町の河川は可住地確保のための管理下におかれ、降雨を速やかに諏訪湖に運ぶための流路としての役目を
主に負わされて改修の歴史を繰り返してきたといえます。また、住宅地の増加は当然、道路、駐車場、住居の屋根、そ
の他人間生活に付随する舗装面積の拡大を意味します。かつては雨を地中に呼び込んでいた土地が今は、雨を拒否
し、側溝へと流し込んでいます。それを受けた側溝は U 字溝化されていますから、一気に雨を諏訪湖へと走らせます。そ
して、住環境の水防の役割を一手に負わされた河川は、直線的に諏訪湖に向かいます。舗装面の汚れ(面源汚
染)を洗い落とした雨は、その汚れを含んだまま諏訪湖に流れ込むわけです。
◇ 諏訪湖が抱える新たな問題
諏訪湖では、最近まで水質の悪化に比較的強いとされる沈水植物のエビモが多くみられました。しかし、近年水質浄化と
対応して、浮葉植物のヒシが大量に繁茂するようになりました。
ヒシは大量に繁茂することで、湖内への光をさえぎり、他の水草の生育を阻害したり、枯れて沈降した際に湖内に栄養塩を
放出するといった環境面への影響のほか、腐敗した際の悪臭や景観悪化による観光や住民への影響、漁船の操縦に支障
をきたすなど様々な問題が生じています。
また、以前より、夏季に湖の深層で溶存酸素量が低下する現象が観測されていましたが、最近では深層の溶存酸
素量の低い地域が拡大し、さらに期間も長期化する傾向がみられます。そのため、湖底に生息する魚介類だけでなく、
遊泳性のワカサギなどにも影響を与えています。
22
3)
騒音・振動
国道 142 号、国道 20 号と県道岡谷下諏訪線で騒音及び振動の調査を実施しています。平成 22 年度は、いず
れの地点も騒音の環境基準と振動の要請限度を達成しました。
平成 16 年 3 月の国道 142 号バイパス湖北トンネルの開通により、国道 142 号沿線の秋宮周辺、国道 20 号
沿線の矢木町では、交通量が緩和され、騒音の環境基準に適合していますが県道岡谷下諏訪線では、一時的に環
境基準を超過することがあり、継続して観測をしていく必要があります。
今後、国道 20 号バイパスの建設が予定されており、市街地における交通量の低減や渋滞緩和による騒音及び振
動の軽減が期待されます。
4)
ごみ・廃棄物の処理
◇ ごみ・資源の収集
町内には約 500 ヶ所のごみ収集場所があります。ごみはここを拠点として焼却ごみは週 2 回、資源物は週 1 回、
埋立てゴミは月 1 回収集しています。焼却ごみと資源物の分別は平成 5 年 9 月に採用した指定袋の利用をとおして
徹底されてきています。また、平成 10 年 4 月の缶・ビンの完全分別収集による資源化を経て、平成 12 年 4 月から
はごみのより高度な資源化を目指して週例収集品目をプラスチックの一部を含む 13 分別に移行しました。古紙・古布
等は月 1 回の月例資源物収集が定着しています。白色トレー、アルミ缶、牛乳パック等は各種団体の資源物回収や
スーパー等の店頭回収を通じての資源化も進んできています。また、平成 23 年 4 月より、家庭ごみの一部有料化に
伴い減量化も進んでいます。
こうした、ごみの減量を目指した従来からの取り組みと、整備が進むリサイクル法等に代表される循環型社会の形成
を目指すため、指定袋への記名、資源物としての処理の大前提となる正確な分別の徹底、利用者による収集場所の
自主的管理など、衛生自治会連合会、保健補導委員会連合会を両輪とした意識浸透のための努力と、住民による
自主的行動が継続されています。
しかし、焼却ごみのなかに資源物が混入しているなど、ルールを守らずにごみを出すケースも見受けられ、課題も多く
存在します。制度の安定した定着のためには個人の高い自覚も求められます。各地区での取り組み実績、家庭、学
校で日常生活に組み込まれた環境教育等を通じ、循環型社会の構築と継承を目指していくことが求められます。
◇ 生ごみの堆肥化
町では、家庭での生ごみの減量化と資源化を目的として、住民を対象に生ごみ処理機の購入に対する補助を行っ
ています。また、民公協働事業として展開している「家庭生ごみ減容リサイクル事業」では、家庭や公共施設から発生
する生ごみを回収し、リサイクルセンター 注で処理し、堆肥化を行っています。作られた堆肥は、土壌改良材として、参
加者に還元し、家庭菜園等に利用されています。今後は、堆肥化による生ごみの発生抑制とともに、利用範囲を拡
大し、良好な土壌づくりや、さらには土壌の浄化能力を利用して、良好な水環境の形成に寄与することを目指すことが
重要と思われます。
注)町では、「生ごみ循環システム」の構築を目指し、平成 17 年 12 月に赤砂崎に「下諏訪町生ごみ減容リサイクルセンタ
ー」を開設しました。
23
(世帯)
2000
1518
1000
1203
1066
942
764
0
H18年
H19年
H20年
H21年
H22年 (年度)
生ごみ減容リサイクル事業参加世帯数の推移
◇ ごみの処理
現在収集されたごみは清掃センターに
搬入され、焼却ごみはダイオキシン類等
の発生を極力抑えながら焼却処理し、
焼却灰は町外で埋立処理しています。
(t)
10,000
資源物は処理場で資源化され業者に
売却されるなど活用されています。
8,043
8,000
ごみの処理量は、総量としては減少傾
6,000
向にあります。住民のごみ減量意識の高
4,000
まりとともに、平成 27 年稼動を目指して
いる湖周ごみ処理施設(岡谷市、諏訪
市及び町が共同で運営)の規模に見
合うごみの処理目標量(5,630t)に
2,000
7,869
1,255
121
7,655
1,199
108
7,381
7,118
7,085
6,642
1,193
1,177
1,108
1,201
1,287
89
74
62
66
70
6,887
1,410
117
0
H15年 H16年 H17年 H18年 H19年 H20年 H21年 H22年
焼却ごみ
資源物
埋立ごみ
近づいてきており、平成 23 年度は処理
目標量を達成できる見込みです。
(年度)
ごみの処理量の推移
また、岡谷市、諏訪市及び町のごみ処理を広域的に共同で行うことにより、ごみ処理の効率化を図り、環境に配慮
した循環型社会を目指そうと、平成 17 年 3 月から「湖周ごみ処理整備事業」がスタートしています。平成 23 年 9 月
には事業主体となる湖周行政事務組合が発足し、新しいごみ処理施設の平成 27 年度稼動を目指して推進してい
ます。
24
◇ 産業廃棄物の処理
過去に実施した事業所アンケートによれば、町の事業所の 50%が、発生した廃棄物を産業廃棄物として処理して
います。
産業廃棄物として処理をしている事業者の内数として、産業廃棄物の処理の委託にあたっては 35%の事業所が委
託先処理事業者の許可証を確認しており、18%がマニュフェスト注で廃棄物の行き先を確認していますが、35%は特
に確認していないと回答しています。
産業廃棄物が発生する事業所の 46%が処理費用の高さをあげており、経済的に裏付けられた循環システムの成
熟が待たれています。
注)排出事業者が産業廃棄物の処理を委託するときに、産業廃棄物の移動、処理などの状況を把握・管理するための管
理票。
◇ ごみの散乱・ポイ捨て
諏訪湖周辺を対象範囲として、下諏訪町諏訪湖浄化推進連絡協議会(湖浄連)が、月に1回の清掃活動を
実施しています。この活動は自由参加で実施されており、毎回 100 人前後の方が参加しています。また、衛生自治会
連合会も町内で独自の活動を実施するなど、ごみの散乱・不法投棄に対しては住民が各種の活動に参加していま
す。
しかし、諏訪湖岸などに見られる空き缶やビンの散乱はなくならず、国道 142 号線や沿って流れる砥川では、いわゆ
るポイ捨てや、廃家電、自動車などの不法投棄がみられます。
このようなごみの散乱や不法投棄については、住民だけでなく、来訪者、通過者にも原因の一端があると考えられま
す。したがって、ごみの散乱・不法投棄問題の解決にあたっては、住民の意識向上だけでなく、来訪者等も含めた施策
が必要となります。
諏訪湖における清掃活動(クリーン祭り)
25
5)
下水道
◇ 諏訪湖の水質と下水道
諏訪湖周辺地域の生活環境の向上と諏訪湖や流入河川の水質保全を目的として、諏訪湖周辺の流域関連市
町村(現在諏訪地方の全市町村が参入しています。)と県による流域下水道の建設が昭和 46 年から始まりまし
た。
町では昭和 49 年から下水道事業に着手し、昭和 54 年度に供用が開始されて以来、整備は順調に進み現在で
はほぼ全町に普及しました(平成 22 年度末時点で、下水道普及率 99.9%、下水道への接続率は 97.0%に達し
ています)。
これにともない、諏訪湖に流入する河川の水質は向上しています。古川の水質をみると、下水道供用以前の昭和
53 年には BOD は 29mg/L でしたが、下水道普及率が 100%となった平成 8 年度には 1.8mg/L、平成 22 年度
には 1.0mg/L と大きく改善しています。
しかし、湖の浄化という意味では当初期待されたほどの効果は上がっていません。諏訪湖の浄化には生活排水など
の特定できる汚染源に対する対策(点源対策)だけでなく、汚濁物質の排出ポイントが特定しにくく、面的な広がりを
有する市街地や農地、森林などの非特定汚染源からの負荷軽減の検討、対策も必要となっています。
6)
放射能
平成 23 年 3 月 11 日、東日本大震災に続く福島第一原子力発電所事故により、大量の放射性物質が外部に
漏れ、これにより周辺地域への放射性物質による影響が懸念されています。町では、空間放射線量測定器(簡易)
シンチレーションサーベイメータにより、町内にある学校、保育園及び公共施設周辺において定期的に空間放射線量を
測定しています。
国際放射線防護委員会(ICRP)注 1 は、平常時では、一般人の被ばくは年間 1mSv
下に抑えるようにと勧告しています。この放射線量は、1 時間あたりになおすと、0.19Sv
注2
(ミリシーベルト)以
注3
(マイクロシーベルト)に
相当しますが、町ではこの放射線量を超える値は観測されていません。
また、県内では環境保全研究所において、空間放射線量の常時監視を行っていますが、福島第一原子力発電所
事故前の水準と同程度であり、健康への影響は心配ありません。また、県では諏訪合同庁舎を含め、県下 6 箇所に
モニタリングポスト(固定式の常時監視装置)を増設し、平成 23 年度中の空間放射線量の常時監視測定体制の
整備を目指しています。
注 1)国際放射線防護委員会:放射線から人や環境を守る仕組みを専門家の立場で勧告する国際学術組織
注 2)Sv(シーベルト):放射線による人体への影響度合いを表す単位
注 3)1 日のうち 8 時間を屋外で、16 時間を屋内で生活すると仮定して、年間 1mSv を 1 時間当たりに割り返して算出
26
3. 快適環境
1)
公園・緑地
市街地周辺部は森林、水辺に恵まれた、自然公園的要素などがあります。平成 23 年 4 月現在、都市公園の開
設面積は、54.20ha で、人口 1 人あたりの公園面積は 25.1m2 です。他市町村と比べると、非常に高い整備水準
にあり、「緑のマスタープラン」の都市整備計画による公園面積の目標(人口 1 人あたり 20.0m2)を達成していま
す。しかし、市街地の緑は比較的少なく、都市化の進行とともに緑地や田畑の空間は減少しています。
市街地については子供の遊び場などの施設が少ない状況が続いていましたが、平成 23 年 3 月、あすなろ公園に複
合遊具を設置しました。
2)
水辺環境
◇ 親水環境
町の市街地は、砥川、承知川の扇状地として形成されました。特に砥川は地形上、市街地のほとんどで天井川とな
るため生活排水の流入が少なく、諏訪湖に流入する 31 河川中唯一河口までカジカが生息する貴重な清流とされてい
ます。またカワガラス、カワセミが河口付近で観察されていることも良好な環境を示しているものといえます。
しかし、治水のため堤は高く、河原まで下りて水と親しむ環境には恵まれていません。また、水田をつなぎ、もっとも子
供の身近にあった「汐(せぎ)注」も宅地化と共に整備が進み、メダカ、ドジョウ等の泳いだかつての賑わいはなく、子供
への魅力は減っているものと思われます。水辺の減少は、子供たちの遊びの文化を変えつつあるのかもしれません。
一方、50 年ほど前には、横断水泳大会も開催されていた諏訪湖では、汚濁の進行と共に水遊びの歓声は薄れて
いました。しかし、平成 12 年 7 月に諏訪環境まちづくり懇談会主催の「諏訪湖で泳ごう 2000」が諏訪市の初島で開
催され、湖中遊泳が復活するなど新しい動きが芽生え始めています。また、南小学校ではエビの放流、諏訪湖清掃な
どが、北小学校では、アマゴの飼育及び放流、ホタルの確認などが行われています。加えて、日常生活の中で水辺に接
する機会を増やすため親水水路、なかよし川辺、ひょうたん池などの整備も進められてきました。こうした試みをきっかけと
して、一時的な催しとしてではなく、汐を含めた町内河川との新しい関わり方が定着することが期待されます。そして、水
にふれる日常生活からすばらしい自然が残されている東俣川、渓流を支えている森林へとふれあう対象が広がることで
町の自然に対する当事者意識が育つのではないでしょうか。
注)農業用水などを目的とした人工的な小川。水田と共にメダカ、ホタル、ドジョウ、トノサマガエルなどの生息に欠かせない
環境を提供していました。水田のみでは、これらの小動物の繁殖は成立しないことが解明されつつあります。人工的とは
言っても管理された半自然の水路であり、岸の植生も含め重要な環境要素でした。コンクリート化することで水田と結ば
れていた生態系が断絶してしまうことが知られています。
27
◇ 諏訪湖の水辺整備
諏訪湖の整備は治水面だけでなく、親水レクリエーション的な利用や景観、自然環境にも配慮していくことが必要で
あることから、県では、美しく、かつ、うるおいあふれ、自然豊かな水辺の再生のための「諏訪湖の水辺整備マスタープラ
ン」を策定しています。この計画では「新たな諏訪湖の風景・自然そして文化を育む湖畔づくり-昭和 30 年当時の諏訪
湖を原風景とした湖畔環境の再生と創造-」を掲げ、事業が進められています。
この諏訪湖水辺整備マスタープランでは、諏訪市、岡谷市、下諏訪町で囲む諏訪湖畔を A~H までの 8 つのゾーン
に分け、それぞれに個性ある水辺づくりが整備されています。
◇ 赤砂崎公園の整備
諏訪湖の北岸中央部に位置する赤砂崎は、南に八ヶ岳、富士山が望める諏訪湖の中でも有数の景勝地です。赤
砂崎用地の活用については、赤砂崎公園の面積を 7.3ha に拡大し、諏訪湖に面した良好な環境の一団の土地が確
保できる立地条件を活かして、多機能で憩いと潤いのある公園に整備されます。
また、東海地震に係る地震防災強化地域の指定を受けたことから、近い将来予想される地震災害に備え、防災ヘ
リポートなど防災機能を有した施設の整備により、地域防災拠点として広域的に諏訪湖周辺地域の防災機能の向上
を図るため、平成 23 年 1 月、公園区域の変更を行いました。安全・安心のまちづくりの視点から地域防災の拠点とし
ての機能を備えつつ、親水性のある観光資源としての活用など多目的な整備活用を目指します。
整備活用構想
1.防災機能(ヘリポート、防災倉庫、避難場所)
2.イベント活用と駐車場機能(多目的広場)
3.健康増進(ジョギングコース)
4.観光資源としての活用(湖岸環境整備と親水性、果樹公園等)
5.憩いの広場(子ども広場、オートキャンプ、ピクニック広場、スポーツ広場等)
28
3)
観光
◇ 下諏訪観光の現状
町の観光は「諏訪大社」「下諏訪温泉・諏訪湖」と「八島高原」に大別されますが、その年間利用者数は、下諏訪
温泉・諏訪湖は年間利用者数 36 万人、諏訪大社は同約 63 万人、八島高原は同約 80 万人程です(平成 21
年度実績)。諏訪地域の人口約 20 万人のおよそ 9 倍の観光客が町を訪れています。
町の観光の基盤は、中山道、大社通り、諏訪大社の周囲を中心とした宿場町と温泉であり、古い街なみが魅力と
なっています。また、八島の手つかずの自然も魅力が高いようです。今後もこのような観光資源を保存・活用していくこと
が課題となります。
また、観光客が町の観光に今後期待することとして「観光コースや体験メニューの整備充実」「案内板の設置・増設」
「ガイドブックの作成・配布」などがあげられており、観光客が町の豊かな観光資源に気軽に接しながら、まち歩きを楽し
める「おもてなし」の整備が求められています。
(万人)
250
200
98.9
150
100
84.4
83.7
79.9
72.9
80.0
51.0
49.0
53.0
H18年
H19年
80.6
70.3
50
0
H17年
下諏訪温泉・諏訪湖
諏訪大社
79.9
63.4
47.3
36.3
H20年
H21年
八島高原
年度
観光客数の推移
夏の八島ヶ原湿原
29
4. 歴史的・文化的環境
1)
景観・歴史的遺産
◇ まちの景観
個性的で魅力ある景観は、地域の自然、歴史、文化などと人々の生活、経済活動などの調和により形成されま
す。町は中山道、甲州道中が合流する交通の要衝で、江戸時代には中山道随一の温泉宿場町として栄えた歴史
文化の豊かな町であり、現在でも数多くの指定文化財を含め景観資源に恵まれています。
しかし、近年、様々な要因によって、永らく受け継がれてきた街なみが失われていく事例が増えつつあります。町では
平成 22 年に景観計画策定検討委員会を設置し、まちの景観のあるべき姿について検討を重ねてきました。検討結
果を踏まえ、景観計画では、景観の構造に即して景観の特性と課題を明らかにし、良好な景観形成のための基本目
標及び方針を定めるとともに、これらを達成するために必要な行為の制限に関する基準や、景観上重要となる建築物
等の指定制度に関する事項等を定めます。
また、歴史的な街なみ環境を良好に維持し、うるおいある住環境を整備し、その波及効果により諏訪大社の活性
化を図るため、「下諏訪町歴史的風致維持向上計画(平成 21 年 3 月)」に基づき「街なみ環境整備事業」を導
入し、まちづくり協議会等を主体とした道路や公共施設などの整備を進めています。
◇ 文化財
町の発祥は旧石器・縄文時代にさかのぼることができ、多くの遺跡から土器や狩猟用の鏃などが出土しています。ま
た、町は中山道随一の温泉宿場町として賑わい、全国に一万余の分社、末社を持つ諏訪神社の総本社としても栄え
ました。
特に市街地部分、中央本線の北側の中山道、大社通りは、諏訪大社を中心とした宿場の風情が色濃く残されて
おり、諏訪湖に面し、水田地帯から住宅地へと大きな変貌を遂げた線路南側地域とは明瞭に区別されます。
宿場町の景観をはじめとする有形無形の貴重な歴史的・文化的遺産は町の観光の基盤といえるものであり、適切
に保護し、次世代に伝えていくことが課題となっています。
2)
住民運動
町では、諏訪湖や自然風土、歴史文化などを守ろうという意識から、住民運動が継続されています。中でも昭和
55 年の発足以来、30 年以上にわたって活動を続けている下諏訪町諏訪湖浄化推進連絡協議会(湖浄連)は代
表的存在であり、現在では 73 団体が加盟する大きな協議会組織となりました。諏訪湖の浄化を中心とした活動は、
町が目指す「民公協働のまちづくり」のお手本となっています。
諏訪湖の浄化には町単独でなく、住民運動も含め諏訪市、岡谷市など湖周地域をはじめ、広く天竜川水系におけ
る当事者意識の共有と連携が必要です。
また、湖浄連への参画を問わず、町内の数多くの団体はそれぞれ独自の環境保全の活動を展開しています。「街な
み環境整備事業」では、「下諏訪宿横町木の下まちづくり協議会」および「湯田町まちづくり協議会」が整備事業の主
体となり、公共施設整備の方針などを策定しました。こうした各団体の活動が広域的に連携し、個々の団体活動に活
かされることで、より効果的な住民運動が創り出されることが期待されます。
30
3)
環境教育
◇ 学校教育
町の小中学校では、近隣の自然等を利用した環境教育が行われています。その内容も、一時的な行事・活動への
参加だけにとどまらず、自然環境に対する愛着や、生物が生息するために必要な環境について児童、生徒自らが考
え、その保全を実施していく姿勢を継続して育てています。
新しい学習指導要領では、子どもたちの現状を踏まえ、「生きる力」を育むという理念のもと、知識や技能の習得とと
もに思考力・判断力・表現力などの育成を重視しています。また、環境教育に係わる目標を環境の保全に貢献し未来
を拓く主体性のある日本人を育成するため、その基盤としての道徳性を養うとしています。
従来から、生命を通じて環境を考えるという観点からアマゴの飼育、放流を行っている北小学校をはじめとする町の
小中学校は、環境教育を通じて新しい指導要領を先取りしてきたといえそうです。「総合的な学習の時間」においても
環境教育の時間を積極的に設けるなどしています。また、教育課程として明確に位置づけることで、環境教育の水準
を高め、かつ継続的にその活動を記録、蓄積して継承することを目指しています。
小中学校で実施されている環境教育
清
掃
活
動
緑
化
活
動
活動内容
空き缶拾い
諏訪湖湖岸清掃
地域奉仕活動
町内のごみ拾い
ごみの分別、リサイクル学習
諏訪湖清掃
アルミ缶集め
ごみの分別・リサイクルの学習
砥川学習、清掃活動
アルミ缶およびエコキャップ集め
ごみ分別活動
プランター作り
公共施設への花飾
みどりの少年団事業参加
個別テーマによる学習
八島湿原の植物観察
自
然
観
察
諏訪湖の魚類や植物の学習
アマゴ稚魚の飼育と放流
八島湿原の植物観察
春宮周辺の自然観察
歴
の 史
学 、 御柱に係る歴史等の学習
習 文
化
活動概要
アルミ缶のリサイクル、リサイクル還元金の文化祭への活用
砥川清掃への参加
地区のごみ拾いの実施
町内のごみ拾いの実施
ごみ収集のための小屋の設置(平成 23 年度のみ実施)
諏訪湖清掃への参加
東日本大震災の義援金にとしてのアルミ缶の収集
各クラスへの紙リサイクル BOX 設置による紙の分別
年 1 回有志による町の砥川清掃への参加
アルミ缶およびエコキャップ集めの実施
清掃時の燃えるごみと紙資源物との分別
プランター作りおよび町内 9 か所への設置管理
諏訪湖畔の花壇づくりおよび公共施設へ花を送る活動
森林(もり)づくりの集いへの参加
(諏訪みどりの少年団交流集会)
承知川での川遊びおよび生き物についての学習
八島湿原の動植物との触れ合い活動
魚類や植物の観察、捕まえた生き物の飼育、
ブラックバスやブルーギルの解剖、投網の実演、ヒシの観察
アマゴの卵のふ化、育てた稚魚の砥川への放流
インタープリターの案内による八島湿原の高山動植物の学習
外部講師による、砥川に生息する水生生物についての学習
御柱に係る歴史等の学習
注)各学校へ配布した質問票の回答を基に作成
31
学校名
社中学校
社中学校
社中学校
下諏訪中学校
下諏訪中学校
南小学校
南小学校
南小学校
北小学校
北小学校
北小学校
社中学校
南小学校
北小学校
南小学校
南小学校
南小学校
北小学校
北小学校
北小学校
社中学校
◇ 生涯学習
生涯学習では「町民ひとり一生涯学習」を目標に、自分のスタイルで自主的、自発的に取り組み、継続性のある学
習の機会を提供できるよう、活動を拡充しています。
生涯学習の拠点である公民館事業では、勤労青少年ホーム事業と連携し、地域公民館などに身近な講師の紹
介を行い、生涯学習の拠点として住民に利用いいただけるよう努めています。また、利用者の年代層に応じた生きがい
活動につながる各種学級、講座を開講するとともに、多くの住民の皆さんが気軽に参加・利用いただけるよう努めていま
す。
環境の現状を理解し、その正しい保全の方法を身に付けることや、当事者意識の育成のために環境教育は不可欠
ですが、町には拠点となりうる施設等がいくつかあります。しかし、展示物だけでなく、自然環境に直接ふれ、感じるという
観察・体験から生まれる感動を、現在や次世代の住民に広く伝えるために、環境学習を充実させることが課題です。
環境教育の拠点
施
設
展 示 ・ サ ー ビ ス 等
あ ざ み 館
八島湿原の自然模型(生い立ち)、動植物の紹介、自然を紹介するビデオ放映
自然と人とのつながり(歴史・文学)
諏訪湖博物館
諏訪湖の自然と生活(漁具、漁法)の歴史に関する常設展
図
湖浄連による環境コーナー設置(書籍 196 冊、DVD16 枚、ビデオ 12 本)
書
館
下諏訪町役場
(住民環境課)
公
民
館
魚介類・プランクトンの写真パネルの貸出、環境関連ビデオの貸出
各種講座、イベントの開催、講師の紹介
32
5. 地球環境
地球環境問題
1)
地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨による森林・湖沼の被害、熱帯林の減少、野生生物種の減少、砂漠化、
海洋汚染、有害廃棄物の越境移動など、地球環境汚染の深刻な問題として数多くの課題が取り上げられるようにな
りました。
地球環境問題はその被害が一国にとどまらず影響が広範囲に及ぶとともに、次世代にもその被害が及ぶことが懸念
され、解決に向けての対策も一地域または一国だけでは不可能であり、全地球的規模での対応が必要となります。
確かに、自らが地球環境に与える影響を実感することは難しいことです。しかし地球環境は地域環境の集合です。
水系を例にあげれば、身近な町内河川の環境負荷が諏訪湖、諏訪湖から天竜川水系と、最終的には地球環境に
影響します。つまり、地球環境保全を根底で支えるのは、地域での当事者意識であるといえるでしょう。
町としても、国際的な貢献を意識しつつ、地域で対応できることを積み重ねていきたいと考えます。そのためには地球
規模で考え、地域で行動することが重要であり、そのための基盤として、まず天竜川水系など地域的な課題に対する当
事者意識を育てることが重要となります。
当事者意識を持って主体的に行動を起こすことが重要と思われる代表的な地球環境問題
人間活動の拡大に伴う温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素等)の排出量の増大に
地球温暖化
より、全地球的に気候の自然な変動を超えて気温の上昇が生じ、それに伴う海面上昇や、異常気象
の頻発などにより、人類の生存基盤に大きな影響が現れる問題。
人為的に排出され成層圏に到達したフロン類(炭化水素の水素をフッ素、塩素等で置換した化合
物)がオゾン層を破壊し、有害紫外線の地上到達量が増大し、皮膚がん、免疫機能低下などの人体
オゾン層 破 壊
影響や、湖沼・森林の破壊などの生態系への影響が生ずる問題。オゾン層の大きさの変化を長期的に
みると、1980 年代から 1990 年代にかけて急激に拡大したが、その後、拡大はみられない。
(1%のオゾン濃度減少で、約 2%の紫外線;増加があり、その結果 3~6%の皮膚癌が増加すると
予測される。「日本皮膚科学会誌 10,6,1996」)
主に化石燃料の燃焼により生じる SOx(いおう酸化物)、NOx(窒素酸化物)などを原因とする
酸
性
雨 酸性度の高い雨により、生態系や文化財などに被害が生ずる問題。水は、通常 pH7で中性である
が、雨は大気中の炭酸ガスと反応し、それ自体酸性を示すことから、pH 5.6 以下を酸性雨としている。
非伝統的な焼畑移動耕作等により、途上国の熱帯林が急激に減少し、多くの野生生物種が絶滅
熱帯林の減少 に瀕する恐れがあることに加え、大量の CO2 排出に繋がり地球温暖化を加速させることが懸念される問
題。CO2 吸収源としての森林破壊も同時に問題となる。
野生生物種の
減
近年の人類の活動に起因する急速な種の絶滅の進行により、生物資源の直接的、間接的な利用
価値が失われていく問題。再現不可能。
少
干ばつなどの自然現象、家畜の過放牧、過度の耕作、木材の過剰採取、不適切な灌漑(かんが
砂
漠
化 い)による塩分の集積により、乾燥化のみではなく、土壌の浸食や塩害、自然植生の種類減少など土
地が劣化する問題。
海洋資源に対する依存度の増加や人間活動に伴う各種の汚染の拡大等に伴い、海洋の環境が悪
海 洋 汚 染 化する問題。具体的には、プラスチック廃棄物の漂流や、重金属、化学物質による汚染、タンカー等か
らの油の流出が問題となっている。
有害廃棄物の
越境移動
人間の活動に伴い発生する有害廃棄物については、特にそれが、国境を越えて移動し、受入先にお
いて適正な処分が行われず、人体への健康被害や生態系への悪影響などの環境汚染を招くことが大き
な問題となっている。
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2)
地球温暖化に向けた行動
◇ 地球温暖化の現状
地球温暖化の影響
温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素
等)の排出量の増大により、地上の気温は世界的に上
○海面水位の上昇による土地の喪失
昇しています。世界の平均気温は、過去 100 年間
○豪雨、台風の大型化や干ばつなどの異
(1906~2005 年)で約 0.74℃上昇しました。近年
常気象の増加
では、気温の上昇が急で、上昇のスピードが加速してい
○砂漠化の進行
ます。一方、日本では、各地にある 17 の気象台の観測
○農業生産や水資源への影響
によると、気温は 1898 年以降、100 年で 1.07℃上
○マラリア等の熱帯性感染症発生の増加
昇しています。
◇ 地球温暖化への取り組み
国を越えた様々な地域で長期間継続的に蓄積されたデータを検討したところ、18 世紀後半の産業革命以降、地
球全体としての平均気温は急激に上昇しており、地球温暖化は確実に進行していることがわかってきています。日本で
は、省エネや再生エネルギーの推進で自主的な排出削減に努め、「気候変動分野での国際協力に積極的に貢献す
る」という考えを示しています。
地球温暖化防止は各国共通の目標ですが、それに向けた行動は地域的なものになります。そして、地球温暖化に
対する認識が多くを主観に依るということは、世界中のいかなる地域にも共通していえることです。あらゆる地域で取り組
みを起こし、積み重ねていくことが、地球規模の問題の解決に向けた最大の貢献であると考えられます。
まず自らの地域を継続して観察し、他地域と連携することで、地球温暖化に対する理解を深めることが、地域の行
動として重要な意味を持つと思われます。
また、福島第一原子力発電所事故を契機に、原子力に頼らない社会を作り上げることが求められています。そうした
中、必要な電力をいかに確保していくのか、地球温暖化防止をどのように達成していくのか、という 2 つの課題への対応
が求められています。今以上の節電を心掛けるとともに、工場や事業所、家庭における省エネルギー設備への投資が必
要となります。また、平成 23 年 11 月に、諏訪地域において民公協働による自然エネルギー普及に向けた総合的な調
整を行う組織として「自然エネルギー信州ネット SUWA」が設立され、活動を開始しています。太陽光発電やバイオマ
スエネルギーなど、再生可能エネルギーや未利用のエネルギーの利用拡大を目指し、住民、事業者と行政が連携して
取り組む必要があります。
各国の二酸化炭素削減目標について
地球温暖化対策についての話し合う国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)が平成
23 年 11 月に開かれ、平成 32 年(2020 年)には、二酸化炭素の排出量が 1、2 位で、世界の約 4 割を
占める中国とアメリカが法的枠組みに加わることに同意しました。
しかし、平成 25 年(2013 年)以降、日本、ロシア、カナダは削減義務を負わず、EU など一部の国のみが
削減義務を負うことになりました。主要排出国が削減義務を負わないため、地球温暖化対策が遅れることが心
配されます。
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地球温暖化のメカニズム
地球温暖化とは、大気中の温室効果ガスの濃度が高くなることにより、地球の気温が上昇すること
です。20 世紀後半以降にみられる地球規模の気温の上昇の主な原因は、人間活動にともなって発
生する温室効果ガスの増加によるものであることが確実視されています。
地球の気温は、宇宙から入ってくる太陽の熱と地球から宇宙に出ていく熱とのバランスによって保た
れています。温室効果ガスの濃度が高くなると、地球から放射された熱が大気中でより多く吸収される
ようになり、宇宙に出ていく熱の量が少なくなり、地表の温度が上昇します。
出典:全国地球温暖化防止活動推進センターHP(http://www.jccca.org/)
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