第2章 2−1 廃自動車の処理・リサイクルフローの定量的解明(一部使用段階を含む) 既存の調査研究…定性的フロー 毎年 500 万台以上もの使用済み自動車が処分されていると推定されるが、その廃車処理 は経済原則に従ってシステム化された工程で行われている。1) すでに研究されている廃自動車処理フローは、図2−1・図2−2のとおりである。 <自動車の処理フロー> 使用済み自動車はユーザーの手から直接持ち込まれたり路上放置車から回収されるもの も一部あるが、大部分は新車販売店・中古車業者等を経て解体業者の手に渡る。 解体業者は廃自動車からエンジンや触媒コンバーター、各種リサイクルパーツなど再販 価値の高い部品を取り外し、それぞれ売却する。 有用部品を取り除かれた残りのボディ−は(プレス業者によってプレス機で押しつぶさ れた後)シュレッダー業者の手に渡る。 シュレッダー業者はそれをシュレッダーで粉砕し、鉄・非鉄金属を回収してそれぞれ売却 する。 残りの部分(シュレッダーダスト)は産廃業者によって埋立て処分される。 <回収された部品・素材のリサイクルフロー>1) リサイクルパーツ:自動車修理業者によって中古パーツとして利用される。 エンジン :エンジン解体業者によってアルミと鉄が選別回収され、アルミ再生業 者・鉄くず回収業者の手に渡り再利用される。一部は中古エンジンとし て部品売りされる。 足回り :鉄くず処理業者によって鉄くずが回収され、電炉メーカーの手に渡り 再利用される。 触媒コンバーター:触媒回収業者が回収し、貴金属抽出メーカーによって貴金属が抽出・回 収される。 タイヤ :タイヤ回収業者によって回収され、再利用業者によって再生タイヤや 燃焼エネルギーとして利用される。 バッテリー :再生業者と電池メーカーによって鉛が再生利用される。プラスチック も分別回収される。 鉄 :電炉メーカーによって再び溶かされて新しい車の材料や建築部材など に再生される。2) 非鉄金属 :非鉄くず業者から精錬メーカーに渡り再利用される。 5 2−2 フローの定量的検討 5 自 ユ 動 タイヤ タイヤ回収業者 各種リサイクル 車 整 ー 備 回収業者 再生業者 バッテリー 回収業者 再生業者 自動車メーカ バンパーなど 業 ザ バンパー ・ 各 種 ー プラスチック 販 売 図 2−3 鉛 リサイクルパーツ 使用段階の処理・リサイクルフロー 5 電池メーカ ? バッテリー リサイクルパーツ モータース エンジン 中古車専業者 解 ユ 足回り アルミ アルミ再生業者 リサイクル 鉄 鉄くず回収業者 リサイクル エンジン解体業者 鉄くず回収業者 電炉メーカ・鉄鋼メーカ リサイクル 処分 ー 体 廃油 再利用 貴金属 触媒コンバータ 触媒コンバータ 貴金属抽出メーカ 焼き物の増量材 アルミナ・コージライト 業 ザ 放置車 中間処理業者 タイヤ タイヤ回収業者 処分 各種リサイクル 者 ー 鉛 地方自治 バッテリー 電池メーカ バッテリー 再生業者 プラスチック 鉄 ディーラー ? 電炉・鉄鋼メーカ 自動車の一部など (新車販売店) ボディー シュレッダー会社 非鉄金属 電炉・鉄鋼メーカ シュレッダーダスト 埋立て処分 (リサイクル) 図2−4 廃自動車の処理・リサイクルフロー 6 リサイクル 図2‐3・図2‐4は、既存の研究にあるフロー図をもとに、服部が、集めた情報を含めて作成したもので ある。これらの図を基本として、これらの図を定量的にする方向で調査した。 2-2-1 ユーザーから解体業者にかけての廃自動車フロー 中古車専業者 ー ⑧? 体 ②233,290 台 廃油 解 ユ モータース* 触媒コンバータ ザ ③16,663 台 ⑨? 業 ー ︵廃自動車発生量①︶ 放置車 タイヤ 地方自治体 ⑩9,358t 者 ④2,860 台 ⑤2,729 台 バッテリー ⑨ ⑪? ディーラー ボディ− ⑥83,318 台 ⑫176,400t ⑫’272,344t 県内:①312,000 台 ⑦336,000 台 県外:①’24,000 台 ⑦’518,750 台 *モータース:自動車整備業者 図2−3 発生量A 愛知県の1年間の廃自動車発生量は①312,000 台で、解体業者による1年間の解体台数は⑦336,000 台であ る。4) 実際には愛知県内で発生した廃自動車が他県で解体されることもあったり、廃車発生台数・解体台数にもず れがあるだろうが、ここでは愛知県で解体される自動車のうち①’24,000 台は県外で発生したものであると推 測した。 (県外の発生量)=(解体台数)−(愛知県の発生台数) =336,000‐312,000 =24,000 −①’ ④,⑤の放置車の数と地方自治体から解体業者へ行く数は愛知県庁の担当の方にお聞きした。④2,860 台は 1 年間に発見されて放置車だと確認された数である。⑤2,729 台というのは前年から繰り越されていた自動車も 含め処理・処分された車の台数である。だから、差の 131 台以上の自動車は次の年に繰り越され、処理・処分さ れることとなる。 ②,③,⑥の発生台数は、解体業者へ流れる廃自動車のうち、70%がモータース・中古車業者から、5%が個人 から、25%がディーラーからのものであるので、2)3)モータースからの発生台数②233,290 台、個人からの発 5 生台数③16,663 台、ディーラーからの発生台数⑥83,318 台は、以下のように算出した。 (モータースからの発生台数)=(解体台数−放置車の処理台数)・(70%) =(336,000‐2,729)・0.7 =333,271・0.7 =233,290 −② 同様に (個人からの発生台数)=333,271・0.05 =16,663 −③ (ディーラーからの発生台数)=333,271・0.25 =83,318 −⑥ 解体業者から発生するもののうち、⑧の廃油の数量については廃油処理業者の方に聞いてみたが、質問を断 られた。⑨の触媒の数量については、触媒処理業者の方に聞いてみたが分からなかった(データがないためだと 推測)。 ⑪のバッテリーの数量も、電池工業会の方に送っていただいた資料だけでは、鉛についての値しかわからな かった。解体前にしっかりと取り外されていれば、バッテリーは廃自動車の数だけあることになると推測され る。 廃車解体時に発生する廃タイヤの発生量は、⑩9,358tである。これは、全国の割合を愛知県も同じである ものと考え、以下のように算出した。5) (愛知県の廃車解体時の廃タイヤ発生量) =(愛知県の廃タイヤ総発生量)・(全国の廃車時における廃タイヤ発生量)/(全国の廃 車時+使用時における廃タイヤ発生量) =45,960・192,000/(192,000+751,000) =9,358 −⑩ ボディーの発生量は⑫176,400tである。 (ボディー発生量)=(ボディー1 台あたりの重量)6)・(解体台数) =525・336,000 =176,400 −⑫ もうひとつのボディーの発生量⑫’272,344tと解体台数⑦’は、以下のように算出した。 (解体台数’)=(愛知県シュレッダー業者からの年間廃棄物埋立量)/(シュレッダー ダスト1台あたりの発生量)6) =83,000/160 =518,750 −⑦’ (ボディー発生量’)=(解体台数’)・(ボディー1台あたりの重量) =518,750・525 =272,344 −⑫’ 2-2-2 リサイクルパーツ・エンジン・足回りのフロー リサイクルパーツ・エンジン・足回りについては調べていないため、従来の研究そのままであるが、リサイク ルパーツは解体業者の手によって取り外された後、またユーザーに使用される。エンジンからは、アルミと鉄 6 が回収され、それぞれマテリアルリサイクルされる。エンジンの中には、リサイクルパーツとして再使用され るものもある。足回りからは、鉄が回収され、マテリアルリサイクルされる。 2-2-3 廃油・触媒コンバータのリサイクルフロー及び発生量 中間処理業者によって回収されたエンジン油、作動油冷却液、ウィンドウォッシャ液は吸着添加による方法 と蒸留による方法により再生処理し、燃料としてサーマルリサイクルするが、ほとんどの部分は処分される。 貴金属抽出業者によって回収された触媒コンバーターからは、まず、オイル・異物が除去され、抽出工程、 分離精製工程を経て希少金属である白金・パラジウム・ロジウムが回収され、触媒に再利用される。その他のア ルミナ・コージライトなどは、焼き物の増量材などとしてリサイクルされることもあるが、ほとんどが処分さ れる。 廃 中間処理業者 中間処理 サーマルリサイクル 油 処分 7 貴金属 触媒コ ンバ ー タ ①0.1?% 貴金属抽出メーカ 白金 パラジウム 触媒 ロジウム アルミナ・ 焼き物の増量材 コージライト 処分 図2−4 廃油・触媒コンバータの処理・リサイクルフロー 廃油・触媒コンバータについてはそれぞれ、中間処理業者・貴金属抽出メーカーに聞き取りをしたが、数値に ついては2-2-1で述べたように分からなかった。 廃油は中間処理業者の手によって、サーマルリサイクルなどとして再利用されるものもあるが、ほとんどが 焼却処理される。リサイクルを中心に行っているというよりは、有害なものを無害に処理して処分することが 目的であると考えられる。 触媒コンバータは貴金属抽出メーカの手によって白金・パラジウム・ロジウムなどの希少金属が回収され、触 媒の原料として再利用される。回収された希少金属は重さで触媒コンバータの 0.1?%だということである。希 少金属は高価なため回収するということである。 残りのアルミナ・コージライトなどは焼き物の増量材などとしてリサイクルされるものもあるが、ほとんど が処分されている。 現在、愛知県で発生する廃自動車触媒の多くは秋田県で再生処理されているそうである。秋田県のその企業 には全国から自動車触媒が集まっているということである。 2-2-4 廃タイヤのリサイクルフロー及び発生量 廃タイヤは、廃自動車の解体時にも使用段階におけるタイヤの取替時にも発生する。タイヤは回収業者によ って回収され、各種リサイクルにまわされる1。この前段階として、タイヤを細かくカットして再利用しやすく してからリサイクル先へ運ばれることもある。 原形又は加工利用分 自治体 収 集 * ④5,361t 再生ゴム用 タイヤチューブ用 ゴム粉 ⑦2,729t 運 タイヤ販売店 ⑤1,267t タイヤチューブ以外⑥1,706t ・ タ 更生タイヤ台用 搬 タイヤ取替 タイヤ代理店 輸出用 国内 ⑧4,094t イ 我々が日常目にする「タイヤの不法投棄」については、今回は特に調べていないので記載していない。 ・ 1 処分 ヤ 8 業 国外 タクシー・ セメント焼成用 熱利用分 ②36,602t ⑨1,803t トラック・ バス等 ⑩13,403t 中小型ボイラー用 ⑪6,141t 金属精錬・製紙用 廃車 ⑫3,071t タイヤメーカー工場用 自動車解体業者 ⑬1,560t ③9,358t 不明(埋立て分含む) ①45,960t ⑭3,412t *業界斡旋 図2−5 タイヤのリサイクルフロー タイヤについては日本自動車タイヤ協会に聞き取りをした。 ①,③の廃タイヤ発生量の算出方法は2-2-2で述べたとおりである。使用段階における取替時の廃タイヤの 発生量②36,602tも同様にして算出した。 ④∼⑬の再利用先と⑭の不明分の割合は全国の廃タイヤの発生量 943,000tと、愛知県の発生量①45,960t から、全国における愛知県の割合を出し、全国の 95 年のリサイクルの重量5)をもとに算出した。 (全国における愛知県の割合)=(愛知県の発生量)/(全国の発生量) =45,960/943,000 =0.0487≒0.049 原形又は加工利用分の不明分は大変少なかったため削除した。合計に多少ずれがあるのはそのためである。 輸出用とは、中古車が輸出されているため、外国で中古タイヤとして使われる。 再生ゴム用とは、ゴムとしてもう一度リサイクルするということである。再生ゴムの原料としては、天然ゴ ムの比率が高く再生に適しているため、主として、トラック及びバス用のタイヤのトレッド(踏面部)が利用さ れる。現在日本では年間 2∼3 万tの再生ゴムが作られているが、近年減少傾向にある。 ゴム粉とはタイヤのゴム分を粉砕して粒状、粉状にしたものの総称である。 従来から、あまり高性能を要求されない自動車のタイヤのゴム配合物の一部として用いられてきたが、ラジア ルタイヤの拡大ならびに軽量化、低燃費化、長寿命化等性能への要求が過酷になるにつれて使われなくなって いる。タイヤ以外の利用先としては、タイヤ以外のゴム配合物の一部・プラスチック系バインダーと併用・ア スファルト舗装材等、様々なことに用いられている。 更正タイヤ台用とは、すり減った踏面のゴム(トレッド)を張り替えて製品化したものである。84 年から 92 年まではラジアル化の進展とそれに伴う性能、コストが追随できず減少してきたが、95 年までは対前年比増加 に転じている。この傾向は更正タイヤの性能コストの改善や、環境問題に対するユーザーの使い捨てから再利 用へという意識変化にあるものと思われるとある。 セメント焼成用とは、タイヤを焼却することによって、ゴムやコードが燃料となり、スチールや硫黄がセメ ントの原料として利用される。 中小型ボイラー用は、農業用のハウス、養鶏場、温水プールなどに利用されている。 9 金属精錬・製紙用とは、金属などを溶かすための助燃材として利用されている。 タイヤメーカー工場用は、タイヤメーカーの自家発電に利用されている。 不明分とは統計上の総発生量とタイヤリサイクルの差異で、ストック・焼却・埋立・目的・用途が判明していな いもの等が含まれる。日本自動車タイヤ協会の人の話では、タイヤを本数で数えたものを重量に直したりする ので、誤差が生じるということであった。 このほかタイヤそのものが、公園の遊具や、土止めや、漁礁などに利用されている。 2-2-5 バッテリーのリサイクル・処理フローと鉛の値8) 廃バッテリーも廃車時・使用時ともに発生する。 調べたところ使用段階におけるリサイクルについてしか分からなかったが、自動車から取り外された後は、 廃車時・使用時とも同じ経路であろうと推測した。 再生業者によってバッテリーから鉛が回収され再生される。再生された鉛は、電池メーカーの手に渡り、再 びバッテリーに利用される。鉛が取り外された残りのプラスチック部分も分別回収しているようだが、調べて いないため不明である。 業 者 リ 再 生 テ 業 者 ッ プラスチック 電池メーカ バッテリー ③7,746t ? ー 販売店 回 収 バ 解体業者 ②7,867t 鉛 ①8,283 図2−6 バッテリーのリサイクルフロー バッテリーについては電池工業会の方に送っていただいた資料8)をもとに調べた。 鉛の回収量②7,867tと再利用量③7,746tは、以下のように算出した。(日本の年間廃車台数を 500 万台と する) (鉛の回収量)=(鉛蓄電池の総回収量)・(自動車用鉛蓄電池の出荷量/鉛蓄電池の総 出荷量)・(愛知県の解体台数/全国の廃車台数) =153,125・207,678/271,631・336,000/5,000,000 =7,867 −② 同様にして、 (鉛の再利用量)=150,767・207,678/271,631・336,000/5,000,000 10 =7746 −③ バッテリーのリサイクルは、有害物質である鉛の回収と再利用を目的としていると推測され、バッテリー自 体の回収量など、鉛以外の数値については資料に載っていないため分からなかった。 バッテリーの回収システムについては第 3 章で詳しく述べたい。 2-2-6 ボディーのリサイクル・処理フロー及び発生量 ボディーは解体業者で有用な部品が回収された後の残りの部分のことである。不用品まで詰め込まれたボデ ィーはシュレッダー会社へ行き、シュレッダーにかけられて、鉄・非鉄金属が回収される。これらは鉄鋼業者 や電炉メーカーのところへ渡り、再生された後、自動車部品や機械類、建設骨材などとしてリサイクルされる。 残りのシュレッダーダストは管理型処分場へ埋立処分される。 ︱ 非鉄金属 ダ ー ィ ッ デ シ ュ レ ボ ②119,616t ③3,024t 鉄 鉄鋼会社 リサイクル ②’184,675t ②”184,505t 精錬メーカ・自動車メーカ ③’4,669t 会 ガラス・陶磁器くず リサイクル ③”4,626t 産廃業者 ④1,000t 埋立て ⑤1,000t 社 シュレッダーダスト 産廃業者 ⑥82,000t 埋立て ⑦82,000t (県内 100%) ①176,400t ①’272,344t 図2−7 ボディーのフローと発生量 鉄の発生量は②119,616tである。解体台数である 336,000 台がそのままシュレッダー会社にわたるとして 以下のように算出した。 (鉄の回収量)=(ボディー1台あたりの鉄の回収量)6)・(解体台数) =356・336,000 =119,616 −② 鉄の発生量②’184,675tは、解体台数を 518,750 台として同じように算出した。 (鉄の回収量’)=356・518,750 =184,675 −②’ 非鉄金属の発生量は③3,024tである。 (非鉄の回収量)=(ボディー1台あたりの非鉄の回収量)6)・(解体台数) 11 =9・336,000 =3,024 −③ 非鉄の発生量②’4,669tは解体台数を 518,750 台として同じように算出した。 (非鉄の回収量’)=9・518,750 =4,669 −③’ 鉄の回収量②”184,505tと非鉄の回収量③”4,626tは、愛知県のシュレッダー会社におけるガラス・陶磁器く ずの発生量④1,000tと埋立て量⑤1,000t、シュレッダーダストの発生量⑥82,000tと埋立て量⑦82,000tと いう値と、シュレッダー会社の回収組成は鉄が 67.8%、非鉄金属が 1.7%、ダストが 30.5%6)であることから、 以下のように算出した。 (鉄の回収量”)=(埋立て量⑤+埋立て量⑦)/(シュレッダー会社の回収組成におけ るダストの割合)・(回収組成における鉄の割合) =(82,000+1,000)/0.305・0.678 =184,505 −②” 同様にして (非鉄の回収量”)=(埋立て量⑤+⑦)/(ダストの割合)・(非鉄の割合) =(82,000+1,000)/0.305・0.017 =4,626 −③” 2-2-7 シュレッダーダストのリサイクル 12 鉄鋼メーカ シ ュ レ アルミニウム 再生メーカ 銅 自動車メーカ ッ 発泡ウレタン 自動車メーカ 繊維 自動車メーカ ガラス タイルメーカ 樹脂 燃料 ゴム 燃料 ダ ー 鉄 ダ ス ト ゴム系ダストの一部 鉛・ほこり 23,040t 埋立て 溶融固化 5,760t 埋立て ⑬288,000t 図2−8 シュレッダーダストのリサイクルフローと発生量 トヨタ自動車の関連会社である豊田メタルでは 98 年 8 月からシュレッダーダストのリサイクルを行ってい る。ここではシュレッダーダストを風力や磁石による分別機などにかけ、鉄、アルミニウム、銅、発泡ウレタ ン、繊維、ガラス、樹脂、ゴムなどを取り出す。 鉄・アルミニウムはマテリアルリサイクルされる。 銅・発泡ウレタン・繊維は自動車メーカに戻り、防音材など自動車の一部として再利用される。 ガラスはタイル原料に添加される。 樹脂・ゴムは燃料としてサーマルリサイクルされる。 鉛・ほこりは溶融固化される。これは、有害物質の溶出の防止と減容のためだと思われる。 このリサイクルによって埋立て分は 5 分の1になるということなので、9)もし愛知県で発生するシュレッダ ーダストがすべてリサイクルされるとしたらどうなるか計算してみた。 埋立て分は、愛知県のシュレッダー会社から排出される最終処分量 288,000tの1/5である②5,760tとなり、 リサイクル分は4/5である①23,040tとなる。 ただし、5 分の1となるのは体積比でなので、実際の重さは算出したものより重たくなるはずである。 2-2-8 バンパーのリサイクルフロー バンパーは回収業者によって回収された後、再生業者によって原料に再生され、自動車メーカーによって、 バンパーやその他自動車の内装部品として再利用される。主に、使用段階のバンパー取替時に発生するものが リサイクルされており、廃棄段階ではどうなっているのか調べていない。 数値についてはバンパーは自動車メーカーが中心となってリサイクルしているのだが、インターネットと手 元にある資料 10)だけでは、一部のメーカーのものしか分からなかったため算出しなかった。 13 バンパーのリサイクルシステムについては第3章で述べる。 2−3 まとめと課題 ひとまとめに処理・リサイクルといっても、そのパーツを回収・再生利用する目的や中心となって取り組む組 織がそれぞれのパーツごとに違っていることがわかった。 廃油・触媒コンバータ・ボディーはそれぞれの処理先が中心となって、主に経済的な目的で再生利用が行われ ている。ところが、不法投棄が問題になったタイヤは、日本自動車タイヤ協会が中心となってはじめからリサ イクルを目的とした再生利用が行われている。また、有害物質である鉛を含むバッテリーは電池工業会が中心 となって、鉛の回収と再生利用を目的として行われている。バンパーは自動車メーカーがリサイクルを目的に 回収している。 それから、数値を出してみてわかったことは、それぞれの中心となっているところでも,自分たちの目的であ ること以外のことはあまり調べていないということである。廃油では、再生工場に入ってきている全体の廃油 の量は把握しているかもしれないが、自動車の廃油の数値とか細かいことはわからなかったし、バッテリーに 関しては鉛以外の部分についてはわからなかった。 課題としては、フロー図の中で何箇所か数字が複数出ているところがあるが、そのうちどれが最も現実的で あるかということの調査や、聞いていないため数値なしになっているところについても、今後調べる必要があ る。また、一般的に数値には誤差があると考えられるので、感度解析を行う必要がある。 それから、よく把握している各リサイクルの中心となるところだけでなく、それぞれの現状を見学したり聞 いたりして調べると、結果がより現実的になると考えられる。 参考文献 1)クリーン・ジャパン・センター編:リサイクルキーワード 第3版、76,156 ページ 2)ホンダインターネットホームページ http://www.honda.co.jp/home/esg/kankyo/72/72.html 3)日産インターネットホームページ http://www.wnn.or.jp/wnn-tokyo/eco2/nissan/nissan3.html 4)廃棄物新聞 98 年 8 月 24 日 5)日本自動車タイヤ協会:タイヤリサイクルハンドブック、12−14 ページ 6)トヨタメタル資料 7)愛知県環境部:平成 7 年度愛知県産業廃棄物実態調査報告書(平成6年度実績) 8)井上 孝:使用済み鉛蓄電池のリサイクルについて、1998 年鉛年間大会講演集 平成 10 年 11 月 6 日、13,14 ページ 9)98 年 11 月 25 日 日経新聞・中日新聞 10)トヨタ自動車株式会社:自動車と環境、21−32 ページ 14
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