ImageJを使用した組織立体構築

Image-J を使用した連続薄切標本からの組織立体構築
Image-J は JAVA ベースで作られた画像処理ソフトであり、もともと医療画像解析を主目的に開発されてきた経緯から、
ソフトウェアの演算処理過程が簡易・明確であり多方面の科学研究に使用されている。ここでは、Image-J を用いた組織
立体構築法の基本操作について説明する。
1. Image-J 使用可能な OS 環境
 ImageJ は、Windows、Mac OS X, Mac OS, Linux で使用できる。
・なお、多数枚の連続標本の画像処理には大きなメモリ容量と高性能のPCの使用が推奨される。Windowsであれば64bit
のOSを選択(32bitでは1アプリケーションでメモリ2GBが上限)することが望ましい。
2. Image-J のインストール
 “Image-J Web サイト:http://rsb.info.nih.gov/ij/index.html”の“download”を選んで、使用するPCの OS 環境に適
した Image-J バージョンをダウンロードする。
・インストール後には、インターネットに接続して“Update Image-J”コマンドを実行することで、自動的にソフトウェ
アとプラグインを更新できる。
3. 組織立体構築に必要なプラグイン
 Image-J の特徴として、
“プラグイン”という拡張プログラムファイルをダウンロードすることで、目的に適した機能
システムを設計できる。
 組織立体構築操作に最小必要なプラグインは、 “ImageJ 3D Viewer”、“StackReg”、“TurboReg”、“Color Deconvolution”
の 4 種類である(http://rsb.info.nih.gov/ij/plugins/index.html)
 ダウンロードしたプラグインファイルは、いずれも圧縮されているので解凍する。解凍処理によって作成されたフォル
ダを Image-J フォルダ内の“piugins”フォルダに移動することでプラグイン操作は完了する。
4. 立体構築に用いる原図情報の準備
・Image-Jで扱えるファイル形式は、生物系顕微鏡のファイル形式(TIFF, GIF, JPEG, DICOM, BMP, PGM, FITS)形
式を網羅している。
 組織立体構築に先立って、原図ファイル(CCD カメラで撮影された顕微鏡画像, バーチャルスライドによるデジタル画
像、共焦点顕微鏡像など)を単一のフォルダに保存して、A001、A002・・・のように桁数を揃えた連番号(画像スタ
ック)で個別の画像レコードに名称をつける。
<以下の項目では、われわれが日常的に実行している Cytokeratin 抗体/DAB 発色と
Ki-67 抗体/Vector SG 発色による二重免疫染色画像を例として、組織立体構築の手順を
説明する>
5. Image-J で画像スタックを開く
1. 「File」→「Import」→「Image Sequence」を選択。
2. 画像スタックが収納されているフォルダを指定し、フォルダにある画像の一つをク
リックして選択すると “Sequence Option”ダイアログボックスが表示される。
Number of images:積層する画像数を入力
Starting image: 何番目の画像から始めるのかを指定
Increment: 入力した数値毎にイメージを呼び出す
Scale mages: 呼び出す画像サイズを設定
File name contains: 入力した文字列を含むファイルを読み込む
Copyright© 2012 Nippon Dental University, Dept. of Pathology
Sort names numerically:番号順に読み込み
(or enter pattern、Convert to RGB、Use virtual stack
は空欄のまま残す)
3. 「OK」をクリックすると画像スタックが読み込まれる。
4. ウインドウ下部のスライダーを動かすと、積層された画像を閲覧で
きる。
4. ボリューム情報の入力
空間座標を設定するために数値(薄切標本の厚さと単位ピクセル長さ)を入力。
1. 「Image」→「Properties」を選択すると右図のダイアログボックスが表示される。
Channels: ImageJ で開いているイメージスタックのチャンネル数
Slices:積層表示している画像枚数
Frames: 空欄のまま????
不明
Use of Length:長さの単位を入力( “nm”, “um”, “mm”など)
Pixel Width, Pixel Height: 単位ピクセル長さ
Voxel Depth: 厚さ
Frame Interval: タイムラプス画像スタックにおいて、フレーム数/秒を設定
Origin: 画像座標系の基準点を設定
Global:チェックを入れると、現在の作業中に開いた全ての画像スタックに対して同一条
件を付与
2. 「OK」をクリックする。
3. ここで設定した空間情報は保存されないので、画像スタックを開くたびに設定する必要がある。
5.積層画像の自動位置合わせ
1. 「Plugins」→「StackReg」を選択すると右図のダイアログボックスが表示される。
2. Transfomation: Translation (平行移動)
Rigid Body (平行移動+回転)
Scaled Rotation (平行移動+回転+均等拡大)
Affine (平行移動+回転+縦横方向への不当拡大)
通常の連続標本の積層では、Rigid Body を選択して「OK」をクリックする。
“Scaled Rotation”や“Affine”では、標本の歪みを補正するため画像の拡大変形を加える。実際上は、良好な位
置合わせ結果は得られない。
4. 位置合わせが完了した後、
「File」→「Save as」→「Image Sequence」で保存する。
Copyright© 2012 Nippon Dental University, Dept. of Pathology
6. 色調抽出(免疫標識に基づく組織要素の分画)
1. 「Plugins」→「Color Decomvolution」を選択すると右図のダイアログボックスが
表示される。
2. 「Vectors」内に頻用される染色法について、その色調抽出条件が与えられている。
例)H&E→ヘマトキシリン・エオジン染色
H DAB→免疫染色(DAB 発色)+ ヘマトキシリン核染色
3. 任意の染色条件を用いた場合(ここでは DAB と Vector SG の二重染色)には、“From
ROI”機能を使用して、色調幅を任意で設定する。“From ROI”では、組織画像か
ら 3 つの色調幅条件を設定する必要がある。
4. 「From ROI」を選択して「OK」をクリックすると右図のメッセージが表示される。
「OK」ボタンをクリックして、最初に DAB の色調幅を設定する。設定方法は、画像内
の DAB 発色領域を矩形でドラッグ選択する。複数の領域を同時設定することも可能。
設定完了後にマウスの右ボタンをクリックすると設定が完了する。同様の操作を繰り
返して、次に Vector SG の発色領域を同様に設定する。今回の染色条件では、設定す
べき 3 番目の色調が存在しないので、背景色を選択しておく。
5. 3 つの色調設定が完了すると、自動的に演算が開始されるので、結果画面が表示されるまで待つ。
6. 色調抽出の結果として、新たに 3 つのウインドウが表示される。
この結果画面を使用して、後述する “Binary”処理を施すと DAB 染色要素と Vector SG 染色要素とが分画できる。
DAB
Vector SG
背景
7. 色抽出結果の画像スタックを「File」→「Save as」→「Image Sequence」で保存する。
7. 色抽出結果された画像スタックの 2 値化処理
1. DAB 色調の抽出結果ウインドウをクリックして選択する。
2. 「Process」→「Binary」→「Make Binary」を選択すると、DAB 標識の癌実質が分画される。
3. Vector SG 色調抽出結果ウインドウにつても同様の作業を繰り返して、Vector SG 標識の Ki-67 陽性核を分画する
Copyright© 2012 Nippon Dental University, Dept. of Pathology
4. 2 値化処理で得られた画像スタックについても、
「File」→「Save as」→「Image Sequence」で保存する。
8. 論理演算処理による組織要素の分画操作
Vector SG の色調で抽出・2 値化された Ki-67 陽性核を “実質空間に帰属する核質”と“間質空間に帰属する核質”とに
分画する。
1. 癌実質データを反転して間質空間を分画する。2 値化処理で分画された実質ウインドウを選択して「Edit」→「Invert」
を選択する。
2. 実 質 / 間 質 空 間 に 帰 属 す る Ki-67 陽 性 核 を 分 画 す る 。「 Process 」 → 「 Image
Calculator」を選択する。「Image 1」と「Image 2」で論理演算対象とするデータ
を選択、「Operation」で実行
する演算処理を選び、
「OK」を
クリック。
3. 「File」→「Save as」→「Image Sequence」で演算結果を保存する。
Copyright© 2012 Nippon Dental University, Dept. of Pathology
9. 癌実質データの細線化処理
図形の特徴を保持した状態で、立体構築像の最外側の組織要素を 1 ピクセル幅に細線化して透過表示することで、内部構
造を直視することができる。
1. 癌実質ウインドウを選択、
「Process」→「Binary」→「Outline」を実行する。
2. 「File」→「Save as」→「Image Sequence」で演算結果を保存する。
10.抽出・分画要素(癌実質、癌実質 outline、間質、実質 Ki67 陽性核、間質 Ki67 陽性核)の立体表示
1. 立体表示に必要な抽出・分画要素以外の画像スタックウインドウをすべて閉じる。
2. 癌実質要素の画像スタックウインドウを選択し、
「Plugins」→「3D Viewer」→「ImageJ
3D Viewer」を実行すると右図のダイアログパネルが表示される。
Image:立体表示するデータの選択
Name:3D Viewer 上で表示され組織要素の名称
Display as:投影方法(ボクセルモデルかサーフェイスモデルを選択)
Color:疑似カラーの選択。後で任意の疑似カラーに設定できる。
Threshold:不明
Resampling factor:不明
Channels:不明
3. 「OK」をクリックすると 3 次元投影ウインドウが開く。
マウスのドラッグ操作で任意方からの観察が可能。
立体画像の拡大・縮小はマウスのホイール操作で可能。
組織要素の追加
1. 「ImageJ 3D Viewer」ウインドウの「File」→「Add content」を選択。前述のダイアログパネルが表示されるので、
3 次元投影するデータを選択する。
2. この操作を繰り返すことにより、すべての組織要素を 3 次元空間に投影・表示できる。
疑似カラーの設定
1. 「ImageJ 3D Viewer」ウインドウの「Select」メニューで対象とする組織要素を選択する。
2. 「ImageJ 3D Viewer」ウインドウの「File」→「Edit」→「Attribute」→「Change Color」を選択。R, G, B のスラ
イダーを調整して任意の疑似カラーを適応できる。
組織要素の透過度
1. 「ImageJ 3D Viewer」ウインドウの「Select」メニューで対象とする組織要素を選択する。
2. 「ImageJ 3D Viewer」ウインドウの「File」→「Edit」→「Attribute」→「Change Transparency」を選択。スライ
Copyright© 2012 Nippon Dental University, Dept. of Pathology
ドを調整して適応させる。
立体表示の ON, OFF
1. 「ImageJ 3D Viewer」ウインドウの「Select」メニューで対象とする組織要素を選択する。
2. 「ImageJ 3D Viewer」ウインドウの「File」→「Edit」→「Hide/Show」→「Show Content」の「On/Off」を切り替
える。
動画作成
「ImageJ 3D Viewer」には回転動画作成ツールが格納されている。
1.
「ImageJ 3D Viewer」ウインドウの「View」→「Record 360 deg rotation」を選択すると、立体画像が 360 度回転
して新しいウインドウ(動画ウインドウ)が作成される。
2.
新しく作成された動画ウインドウを選択して、「ImageJ」メニューの「File」→「Save as」→「AVI(動画ファイル
フォーマット)」を選択・保存すると動画ファイルが保存できる。
なお、
「ImageJ 3D Viewer」で投影させた 3D 情報については保存することができない。
Copyright© 2012 Nippon Dental University, Dept. of Pathology