福祉・介護サービス従事者の 職務階層ごとに求められる機能と研修体系 ~キャリアパスに対応した生涯研修体系構築を目指して~ 「福祉・介護サービス従事者のキャリアパスに対応した 生涯研修体系構築検討委員会」 報告書 平成22年3月 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 はじめに 平成 19 年 8 月、「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関す る基本的な指針(以下、「福祉人材確保指針」とする)」が改定、告示された。 新たな福祉人材確保指針は、少子高齢化の進行や世帯構成、国民のライフスタ イルの変容等の社会情勢の変化や、福祉・介護サービスを供給する各種制度の 見直し等が進むなかで、平成 5 年に告示された旧福祉人材確保指針について必 要な見直しを次のように行ったものである。 「福祉・介護サービスが少子高齢社会を支える働きがいのある、魅力ある職 業として社会的に認知され、今後さらに拡大する福祉・介護ニーズに対応でき る質の高い人材を安定的に確保していくことは、今や国民生活に関わる喫緊の 課題」である。今後も生産年齢人口及び労働力人口の減少が見込まれるなか、 また、昨今の福祉・介護サービス分野における人手不足や高い離職率の指摘等 を受けて、福祉人材確保指針では、 「福祉・介護人材を安定的に確保していくた めの措置」のひとつに「キャリアアップの仕組みの構築」を掲げ、 「福祉・介護 サービス分野におけるキャリアパスに対応した生涯を通じた研修体系の構築を 図るとともに、施設長や従事者に対する研修等の充実を図ること」を提言して いる。 この提言を受けて、全国社会福祉協議会では、 「福祉・介護サービス従事者の キャリアパスに対応した生涯を通じた研修体系の構築」を目指して検討委員会 を設置し、厚生労働省・社会福祉推進事業により検討を行ってきた。 今年度委員会では、平成 20 年度報告書において示した「体系的な外部研修に よる段階的継続教育」や「キャリア形成に資するシステム」といった基本的考 え方をふまえつつ、さらなる調査研究やその結果に基づく協議により、「福祉・ 介護サービス従事者の職務階層ごとに求められる機能と研修体系」の検討を行 った。本報告書は、その成果をまとめたものである。 本報告書において「キャリアパス(career path)」は、 「仕事の経験歴を通じ、 昇進・昇格へと進む経路」と定義する。本委員会では、同一職場内における昇 進・昇格といった「縦軸」の要素に加えて、福祉・介護サービス従事者が、異 動や転職等により勤務先施設・事業所を移りながら自らのキャリアを構築して いく「横軸」の要素も考慮しながら議論を行ってきた。そこで、本報告書にお いては、「キャリアアップ(の仕組み)」の意味を含めつつ、可能な限り「キャ リアパス」に用語、表現を統一している。 今後は、本報告書において提案した新たな研修体系に基づく研修プログラム の基本構想を全社協の使命に即してより具体化するとともに、着実な推進や周 知に向けて実施方法等のあり方についても検討を必要とする。そのためにも、 まずは、本報告内容について福祉現場や関連行政、学識経験者の方々から多く のご意見やご批判をお寄せいただきたい。 なお、本報告書の作成にあたり、業務多忙な中ヒアリング調査にご協力いた だき、それぞれの考え方や職員教育・研修の仕組み、ノウハウ等について貴重 な情報をご提供いただいた関係者の皆様に心よりお礼を申しあげたい。 平成22年3月31日 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 福祉・介護サービス従事者のキャリアパスに対応した 生涯研修体系構築検討委員会 委員長 山 崎 美貴子 目 次 はじめに Ⅰ 検討の背景と経過 1 福祉・介護人材の育成をめぐる環境··················································· 2 2 『福祉・介護サービス分野(資格職)のキャリアパスに対応した 研修体系モデル』 (平成 20 年度報告書)の概要 ·································· 10 3 平成 21 年度「福祉・介護サービス従事者のキャリアパスに対応 した生涯研修体系構築検討委員会」の検討課題等 ································ 12 Ⅱ 福祉・介護サービス従事者の職務階層ごとに求められる機能と研修体系 1 福祉・介護サービス従事者の職務階層と機能に係る基本的な考え方 ········ 14 2 福祉・介護サービス従事者の職務階層に対応した新たな研修体系 ··········· 19 3 新たな研修体系に基づく設定科目の目的・ねらい・到達目標等 ·············· 25 Ⅲ 研修実施機関の階層別研修および専門職団体等の生涯研修制度の状況 1 都道府県・指定都市研修実施機関の階層別研修の実施状況 ···················· 34 2 専門職団体等による生涯研修制度等の状況 ········································· 36 Ⅳ ヒアリング調査の実施結果 1 ヒアリング調査の概要 ··································································· 40 2 ヒアリング調査の結果(調査先別まとめ) ········································· 42 Ⅴ 研修プログラムの開発・実施に向けた道筋と今後の課題 1 新たな研修体系に基づく研修プログラムの開発と実施に向けて ·············· 64 2 活用・定着に向けた方策と課題 ······················································· 66 資料 1 協議経過 ····················································································· 68 2 委員名簿 ····················································································· 70 Ⅰ 検討の背景と経過 1.福祉・介護人材の育成をめぐる環境 (1) 質の高いサービスに対する国民からの要請 (ア) 高齢者福祉・介護分野においては認知症ケアやケア単位の小規模化、 多機能化など、障害児・者分野においては地域生活支援や就労移行支 援など、子ども家庭福祉分野においては児童虐待への対応や子育て家 庭の支援など、提供すべきサービスについて多様化・複雑化・高度化 が進んでいる。 (イ) 国民の安心な暮らしに資するべく、福祉・介護サービス従事者は、高 度な価値観や倫理観、知識、技術をもって、一層のサービスの質の向 上に努めなければならない。 (2) 国家資格の定着 (ア) 福祉・介護サービス従事者をめぐっては、職種や業務内容に応じてさ まざまな資格制度や任用をめぐる要件が存在する。ここでは、社会福 祉士、介護福祉士、精神保健福祉士、保育士、介護支援専門員を取り 上げてその状況等について概説する。 (イ) 社会福祉士及び介護福祉士は昭和 62(1987)年、精神保健福祉士は 平成 9(1997)年にそれぞれの根拠法の制定を受けて制度化された、 厚生労働大臣の登録を受ける名称独占の国家資格である。それぞれの 資格の登録者数は年々増加しており、過去 10 年間の登録者数の推移 は<表 1-1>のとおりである。(1) <表 1-1 資格種類別・年度別登録者数の推移>(人) 11 年度 12 年度 13 年度 14 年度 15 年度 16 年度 17 年度 18 年度 19 年度 20 年度 社会福祉士 18,517 24,189 30,174 38,405 48,736 59,292 71,326 83,425 95,590 109,233 介護福祉士 175,676 223,169 273,805 317,117 368,716 427,573 486,297 564,806 655,796 742,931 4,169 6,655 9,332 12,666 18,321 21,911 25,950 30,326 34,768 39,131 精神保健福祉士 (財)社会福祉振興・試験センターホームページ「登録者の資格種類別-年度別の推移」から作成(2010) (1) (財)社会福祉振興・試験センター「登録者の資格種類別-年度別の推移」 -2- (ウ) 保育士は平成 13(2001)年に児童福祉法に位置づけられたことによ り、都道府県知事の登録を受ける名称独占の国家資格となった。平成 20(2008)年 10 月 1 日現在の登録者総数は 903,084 人である。 (エ) 介護支援専門員は国家資格ではないが、平成 9(1997)年の介護保険 法制定とともに創設され、試験制度や登録制度など、他の国家資格と 同様の性格をも有している。他の資格との相違点は、介護支援専門員 証の交付を受けるにあたり研修受講が要件とされていることや、専門 員証の有効期間が 5 年と定められ、更新のための研修受講が義務付け られていることである。介護保険制度の成熟に従って介護支援専門員 の人数も増加しており、のべ 12 回の介護支援専門員実務研修受講試 験の合格者数累計は、491,135 人となっている。(2) (オ) 昨年度行った調査結果から、福祉・介護職場における施設種別・役職 別にこれらの国家資格の保有状況をみると、高齢者福祉施設では「主 任クラス」の 65.0%、 「チームリーダークラス」の 55.6%が介護福祉 士を保有し、さらに、「主任クラス」の 55.0%、「チームリーダーク ラス」の 16.7%が介護支援専門員を有している。障害者福祉施設で は「主任クラス」の 50.0%、 「チームリーダークラス」の 59.1%が介 護福祉士を有し、 「主任クラス」の 19.6%が介護支援専門員を有して いる。児童福祉施設では「主任クラス」の 91.3%、「チームリーダー クラス」の 88.2%が保育士資格を保有している。社会福祉協議会の 「主任クラス」では、介護支援専門員を 45.5%、社会福祉士を 36.4%、 介護福祉士を 13.6%、精神保健福祉士を 9.1%が有している。( 3) (カ) 上記調査結果から、チームリーダー以上の役職に就く者、とりわけ「主 任クラス」の多くが何らかの国家資格を取得していることからも、国 家資格が福祉・介護現場に定着しつつあることが伺える。 (キ) 一方で、平成 21(2009)年度の介護報酬及び障害福祉サービス報酬 の改定において、介護福祉士が一定割合以上の事業所に加算が行われ るなど、資格を基本とした福祉・介護職場の専門性を評価する仕組み が作られつつある。また、平成 21(2009)年度補正予算において設 (2) 厚生労働省「第 12 回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」同省ホームページより (3)(福)全国社会福祉協議会『福祉・介護サービス分野(資格職)のキャリアパスに対応した研修体系モ デル-「社会福祉事業に従事する者のキャリアパスに対応した生涯研修体系構築検討委員会」報告書』 (2009) -3- けられた介護職員処遇改善交付金のキャリアパスに関する要件につ いても、制度の動向として理解しておく必要がある。 (ク) なお、福祉・介護職場には、従事者の全体数から見れば少数であるも のの、医師や看護師、理学療法士や作業療法士、栄養士といった医療 保健等の隣接領域の国家資格を有する職種が存在する、多くの専門職 種の混在する職場であるという特徴をもっている。 (3) 福祉・介護分野の労働市場 (ア) 国の調査によると、平成 17(2005)年度、福祉・介護分野には 328 万人が従事している。これは平成 5(1993)年度に比べると約 4.6 倍、 介護保険制度が施行された平成 12(2000)年度の 170 万人と比べ約 倍増しており(4)、急速に拡大していることが理解できる。 (イ) また、このうち介護保険事業に従事する介護職員は、平成 17(2005) 年に約 117 万人いるが、平成 37(2025)年には 250 万人が必要とす る推計データもある。( 5) (ウ) 一方、介護従事者(訪問介護員、介護職員)の 1 年間の離職率は 18.7% となっている。就業形態別では正社員(正規職員)18.5%と非正社員 (非正規職員)18.9%で大きな差は見られないが、職種別に見ると訪 問介護員 13.9%に対して介護職員が 21.9%と高い。また、離職者の 勤務年数に着目すると、1 年以内 39.0%、1 年以上 3 年未満 36.5%で あり、約 75%が 3 年未満での離職となっている( 6)。<表 1‐2> <表 1-2 介護従事者の 1 年間(H19.10.1~H20.9.30)の離職率>(%) 離職者の勤務年数 1 年未満 1 年以上 3 年未満 離職率 18.7 39.0 36.5 正社員 18.5 32.7 39.7 非正社員 18.9 43.2 34.4 訪問介護員 13.9 26.2 39.9 介護職員 21.9 44.4 35.1 2 職種(訪問介護員、介護職員)計 就業形態別 職種別 (財) 介護労働安定センター「平成 20 年度 介護労働実態調査結果」から作成(2010) (4) 厚生労働省「平成 17 年度介護サービス施設・事業所調査」 、厚生労働省「社会福祉施設等調査報告」 (5) 社会保障国民会議「社会保障国民会議 最終報告」2008.11.4 (6)(財)介護労働安定センター「平成 20 年度 介護労働実態調査結果」 -4- (エ) 介護業務間での転職者の「直前の介護の仕事をやめた理由」として、 「事業所の運営のあり方に不満」(23.4%)、「職場の人間関係」 (23.0%)、 「収入が少なかった」 (21.8%)、 「他に良い職場があった」 (20.0%)に次いで「将来の見込みが立たなかった」(17.8%)があ がっており(7)、働き続けるなかで自身の将来像が見えない不安、つま り、職務経歴を通じた自己実現の過程としてのキャリア形成の道筋が 見えない状況が生じていることがわかる。 (オ) 新たな担い手として、介護福祉士養成校の平成 20(2008)年度の入 学状況をみると、入学定員 25,407 人に対し、入学者数は 11,638 人と 45.8%の充足率となっている。( 8) このことからも、介護職員の確保は 重要かつ喫緊の課題であるといえる。 (カ) また、保育分野では、年間約 5 万人の保育士が養成されているが、今 後の増大する保育需要に対応するため、保育士についても質と量の拡 充が期待されている。 (キ) 求人状況に着目すると、福祉分野の有効求人倍率(平成 20 年度)は、 全国平均で 1.44 と、前年度 1.28 よりさらに 0.16 ポイント高くなっ ている。分野別に見ると高齢者分野の求人倍率が極めて高いことが分 かる。また、関東ブロック 2.26 から四国ブロック 0.46 と地域差が大 きいことも指摘できる。(9) <表 1-3 分野別有効求人倍率> 高齢者福祉・介護 有効求人倍率 介保 介保 施設 以外 4.03 7.08 障害者福祉 児童福祉 複合 身体 知的 精神 複合 保育 0.61 0.59 0.70 0.32 1.30 0.82 保育 以外 0.67 その他 複合 社協 福祉 以外 0.10 0.17 0.58 2.17 中央福祉人材センター「平成 20 年度 福祉分野の求人・求職動向(概要)」から作成(2010) <表 1-4 ブロック別有効求人倍率(平均)> 北海道・東北 有効求人倍率 0.67 関東 2.26 東海・北陸 1.92 近畿 1.88 中国 1.24 四国 0.46 九州 0.70 中央福祉人材センター「平成 20 年度 福祉分野の求人・求職動向(概要)」から作成(2010) (7) (財)介護労働安定センター「平成 20 年度 介護労働実態調査結果」 (8) 厚生労働省調べ (9) 全社協・中央福祉人材センター「平成 20 年度 福祉分野の求人・求職動向」 -5- (4) 職場における教育・訓練 (ア) 全国経営協の調査によると、社会福祉法人全体の職員数が平均で常勤 職員 73.2 人、非常勤職員 27.1 人であるが、81.5%の法人は常勤職員 数が 100 人未満となっており(10)、福祉・介護サービスの実施単位で ある施設・事業所は、小規模なところが多いといえる。 (イ) 職員教育の観点からみると、小規模な事業所においては「教育訓練を 外部に依存せざるを得ない」状況にあり、また同時に、従事者の立場 からは、「同一法人・事業所内だけではキャリア形成の十分な機会を 得ることが困難である」状況にあるといえる。 (ウ) また、福祉・介護サービスは多職種連携・協働によるチーム実践が基 本である。しかし、サービス単位の小規模化や数の増加が進むなかで、 現場では、非常勤職員や資格を有しない者を含めてチームを構成して 実践を行っている現実がある。(11) そのため、職員の働き方や専門性 に配慮しつつ、サービス水準の維持向上を図るためにも、指導的な役 割を担う職員や、管理者に望まれる役割・機能強化への期待は高い。 (エ) ところが一方で、これまで教育・訓練に係る方針や方法の選択等は「職 場任せ」の状況であったことから、結果として人材育成への意識や積 極性について大きな温度差を生じている。 (オ) 例えば、研修の実施体制等の現状について、昨年度委員会が実施した 調査分析からは概ね以下①~③の状況が明らかになっている。(12) ① 職場における研修の実施体制が十分に構築されていない法人・事 業所が少なくない。 職場研修の担当者(もしくは推進委員会)の設置は、65.2%に とどまる。 「職場研修の理念や方針の策定」は 70.7%にとどまる。 「年間研修計画」は、51.1%の策定にとどまる。 ② 「施設長が考えるスキル」と「本人が考えるスキル」との間に差 (10)全国社会福祉施設経営者協議会「会員法人基礎調査報告書」2007 (11)例えば介護職員のうち、介護福祉士資格を有しない者は、施設で 61.9%、在宅サービスで 82.3%。 厚生労働省「平成 17 年度介護サービス施設・事業所調査」 (12) (福)全国社会福祉協議会『福祉・介護サービス分野(資格職)のキャリアパスに対応した研修体系 モデル-「社会福祉事業に従事する者のキャリアパスに対応した生涯研修体系構築検討委員会」報告書』 (2009) -6- が生じている。また、本人が望むスキルが必ずしも研修受講につ ながっていないというミスマッチを生じている。 (例示) 「チームワークの必要性を職員に理解させる」について、主任 クラスに必要なスキルであるとの施設長の回答が 9.8%にとど まるのに対し、主任クラス自身は 23.9%と高くなっている。 主任クラスの 22.1%が自身に備えるスキルとして「リーダーシ ップ」を掲げているが、実際に受けた職場外研修(OFF-JT) でのリーダーシップ研修受講実績は 5.5%にとどまっている。 ③ 正規職員に比べて非常勤職員への研修が不足しており、非常勤職 員に対して研修等を行っていない施設・事業所が 17.4%ある。 (カ) このように、福祉・介護サービスに従事する職員に対して、それぞれ の職場での教育・訓練は十分に行われているとはいえない状況にある。 (キ) これらの理由として、福祉・介護サービス従事者が、それぞれの職場 において求められる能力や、それに関連する役割・機能が明確にされ ておらず、その結果、教育や訓練の実施の基本となる、職員の成長発 達段階に対応した人材育成方針やその養成プログラムが確立されて いないことが考えられる。福祉・介護職場に従事する多くの職員が、 5 年先、10 年先の職業人としての自らの将来の姿を描き出すことが困 難な状況に置かれていることは想像に難くない。 (ク) 介護労働者の平均勤続年数が男女共 4.4 年(全産業男 13.3 年、女 8.7 年)という現状において(13)、人口減少社会の到来により総労働力人 口も減少していくなかで、貴重な人材を福祉・介護以外に流出させな いことも重要である。その点で、それまでの勤務経験や研修、教育・ 訓練の受講歴等が法人・事業所を超えて適切に評価される仕組みづく りも大切な視点である。 (5) 職能団体等による外部研修 (ア) 小規模施設・事業所が多いことから、個々の法人や施設・事業所内に おける研修の実施には限界があり、外部機関での研修を利用すること (13) 介護労働安定センター「平成 20 年度 介護労働実態調査」 、厚生労働省「平成 20 年度 賃金構造基本 統計調査」 -7- が必要になる。 (イ) また、福祉・介護サービスが職場内外における多職種連携・協働によ る実践の場であることを考えると、自らの専門性を確立・向上させる ための資格取得へのチャレンジや専門職団体への加入、学習会への参 加、研究会活動等といった自職場以外の人材、専門性との交流等も、 従事者が自らを磨き、鍛えるうえで重要な機会になる。 (ウ) 職場外においては、職能団体や事業者団体(種別協議会等)、中央・ 都道府県研修実施機関といったさまざまな研修実施主体が存在する。 【職能団体による研修の特徴と課題】 (エ) 福祉・介護の国家資格者による職能団体が組織化され、各々生涯研修 体系の構築を図っている。研修は専門性に立脚した、利用者サービス の知識・技術等に関するものが多く、専門職としての知識・技術の獲 得・向上やアイデンティティの確立に大きな役割を担っている。 (オ) 一方で、各事業所における階層に応じた役割・機能に関する研修はあ まり行われていないことや、経営者層、管理者層からの資格に対する 認知や評価が必ずしも十分でないために、福祉・介護サービス施設・ 事業所におけるキャリアパスには活用されにくい側面がある。 【事業者団体や中央・都道府県研修実施機関等による研修の特徴と課題】 (カ) 種別協議会を中心とする事業者団体や社会福祉協議会、行政、その他 の民間法人等によるさまざまな研修実施機関が存在する。 (キ) 各種の資格取得や業種別に必要とされる専門知識・技術の獲得、共通 理解の促進等においてこれらの研修は有益であるが、内容的に以下の ような課題がある。 キャリア形成の視点が弱い。 研修ごとの到達目標が明確になっていない。 目標への到達状況や効果に係る評価が十分に行われていない。 研修の実施方法は講義形式が多い。 多人数による集合研修型が多く受講者の水準が一定しないため、 対象者個々のレベルに応じた有効な研修を実施しにくい。 単発の研修が多く、中長期視点に立った継続的な研修の企画が -8- 行われにくい。 【「キャリア形成」の視点から見た外部研修の課題】 (ク) 上記のようにさまざまな団体・機関による研修が実施されているが、 実施主体が各々の考えに基づいて企画しているのが現状であり、相互 に無関係に実施されている状況にある。 (ケ) このような状況から、法人や施設・事業所を異動するとそれまでの研 修受講歴等が認められにくい、評価されにくいといったことから、結 果的にキャリアパスにつながらないという問題がある。 (コ) 一方で、各分野において必須とされる制度研修(例/認知症対応型共 同生活介護の実施事業所管理者に対する認知症介護実践者等養成事 業など)が実施されており、これらは実施主体やプログラムが予め規 定されている。そのため、一部の例外を除いては他の研修との間で受 講・修了履歴等の代替性や互換性がなく、受講対象者にとって受講に 係る日程的、費用的負担が大きくなりがちである。 (サ) また、介護サービス施設・事業所では、キャリアパスに関する要件が 交付金の交付要件に位置づけられる等によって、結果として外部研修 の活用が促進されることも考えられるが、そうした要件を満たすため だけに利用されるべきではない。 (6) 小括 (ア) 国民からの福祉・介護サービスの高度化の要請、労働市場の拡大への 対応や離職防止のために、職場における教育訓練体制及び研修推進体 制を整備することが必要である。 (イ) 能力の開発と役職等への任用、処遇向上が結びつくよう、キャリアパ スとのつながりをふまえ、事業者団体、職能団体、研修機関、養成校 等が協働して段階的、かつ、体系的な研修体系を構築する必要がある。 (ウ) 福祉・介護サービスの質の担保・向上を図るため、国家資格の定着を 基本とした継続教育の仕組みを構築する必要がある。 (エ) 福祉・介護サービス従事者のキャリアパスに対応した研修体系の構築 が必要である。そのために、既存の研修体系について必要な見直しが 行われるべきである。 -9- 2. 『福祉・介護サービス分野(資格職)のキャリアパスに対応した研修体系 モデル』(平成 20 年度報告書)の概要 (1) 福祉・介護サービスの質の向上のためのシステムの基本的考え方 (ア) 「福祉・介護サービスの質の向上のためのシステムを確立する必要が ある」として、そのための基本的考え方①~⑤を示した。 ① 体系的な外部研修による段階的継続教育のシステム ② キャリア形成に資するシステム ③ 有資格者を基本にした研修体系 ④ 職能別の能力開発と福祉・介護分野に共通する能力開発の2つの 要素を組み合わせた研修体制 ⑤ 共通の教育内容に基づく研修 (2) 「福祉・介護サービス分野(資格職)のキャリアパスに対応した研修 体系」のモデル (ア) 「カリキュラムに基づいた外部研修を受講して得た成果を、施設・事 業所で生かし職場の人材育成に役立てる」ことや、「法人間の人事交 流などにも活用し、職場横断型のキャリアパスに役立てる」ことを目 的として研修体系モデルを設定した。 (イ) 福祉・介護サービス従事者に求められる能力を、「(a) 職能に求めら れる価値・倫理」 「(b) 利用者への支援・援助技術」 「(c) チームケア・ 組織運営管理技術」に区分した。 (ウ) 福祉・介護サービス従事者が専門職としての能力を高めていくための 段階として、5つの「実践能力段階」を設定した。<図 1-1> (エ) キャリアパスを支援・確立するための仕組みとして、各実践段階に対 応したステップⅠ研修~ステップⅤ研修を設定した。<図 1-2> (オ) 福祉・介護専門職の継続教育カリキュラムの基本的なフレームワーク を「Ⅰ.価値・倫理」 「Ⅱ.福祉・介護サービスの提供」 「Ⅲ.専門能 力の開発」の3点で整理した。 以上、平成 20 年度報告書は、研修システムの基本的考え方及び研修体系 のモデルについて論点を整理したものである。 福祉・介護現場においては、職種、資格、キャリア、職場の規模等がき -10- わめて多様であり、20 年度報告書を「たたき台」として、今後の研修体系 構築にあたり、どのレベルをどのように実施するか等については次年度以 降の課題とした。 <図 1-1 福祉・介護サービス従事者の実践能力段階> <図 1-2 福祉・介護サービス従事者(資格職)の研修体系とキャリアパスのイメージ図> -11- 3.平成 21 年度「福祉・介護サービス従事者のキャリアパスに対応した生涯 研修体系構築検討委員会」の検討課題等 (1) 「福祉・介護サービス分野に共通する職階ごとの能力開発」に必要な 研修カリキュラム (ア) 20 年度報告書における「基本的考え方」をふまえ、 「職能別の能力開 発」と「福祉・介護分野に共通する能力開発」の2つの要素を組み合 わせた研修体系を検討する。 (イ) とくに「福祉・介護分野に共通する能力開発」に着目し、そうした資 格横断的なスキルの獲得を「共通研修ニーズ」としてとらえ、職階ご とに研修カリキュラムの設定を試みる。<図 1-3> (ウ) (イ)の検討データを得るための調査研究として、職員教育・研修に積 極的に取り組んでいる法人・事業所に対して、「職員の育成に係る基 本理念や方針」 「階層ごとの職員に求められる能力と職務内容」 「研修 教育制度」等についてヒアリング調査を行う。 <図 1-3 21 年度「研修体系」検討のイメージ(下図「網かけ」部分)> 20年度「研修体系モデル」から 段階 第5段階 役職イメージ 資格横断的なスキル (共通研修ニーズ) 事業所全体の統括者 ステップⅤ 研修 第4段階 第3段階 第2段階 部門の責任者/ 熟練者/教育指導者 チーム活動の企画・ 指導・調整・評価等 ステップⅣ 研修 ステップⅢ 研修 新任職員のロールモデル ステップⅡ 研修 第1段階 指導・指示を受け、安全 な実践を行う (新任職員) ステップⅠ 研修 -12- 種別分野ごとに 職能分野ごとに 必要とされるスキル 必要とされるスキル (2) さまざまな機関が研修を実施するための要領の考え方 (ア) 多様な実施主体が研修を行えるようにするための仕組みを構築する ために、「実施要領」の考え方を整理しておく必要がある。 (イ) 「実施要領」としてまとめておくべき事項には、「実施主体・要件」 「研修に必要な期間(時間数等)」 「実施方法(講義・演習)」 「修了認 定の仕組み」等が考えられる。 (ウ) (イ)の検討データを得るための調査研究として、都道府県研修実施機 関や職能団体等の実施する階層別研修の実施状況等について、便覧や 要覧等の文献・資料調査を行う。 (3) 21 年度検討の基本方針 (ア) 前年度の報告内容を尊重し、その「基本的考え方」に沿った継続した 議論を行うことを基本方針とする。 (イ) 但し、下記 2 点については今年度の新たな方針とする。 新たな研修体系に基づく研修の受講対象を国家資格取得者に 限定しない。 (但し、法人や事業所の支援と本人の努力により、 キャリアパスの過程で早期に国家資格を取得することが望ま しいとする考え方を基本とする) 職務階層の設定は、業務経験年数ではなく当該階層の職員に必 要とされる役割・機能に着目して行う。 なお、具体的な実施方法等…法人・事業所、都道府県社会福祉協議会、 全社協中央福祉学院等の研修実施機関等が研修の段階ごとに果たすべき役 割や担当すべき範囲、第 5 段階の上に位置づけられる理事長等経営者への 研修、各段階の詳細な研修方法やカリキュラム等については、今後の検討 課題とした。 -13- Ⅱ 福祉・介護サービス従事者の職務階層ごとに求められる機能と研修体系 1.福祉・介護サービス従事者の職務階層と機能に係る基本的な考え方 (1) 福祉・介護職場における職務階層の整理(ヒアリング調査結果から) (ア) 「福祉・介護サービス従事者のキャリアパスに対応した研修体系」を 検討するために、福祉・介護職場における職務階層(キャリア段階) について、その実態を把握する必要があった。 (イ) そこで、本委員会の調査研究事業として「『福祉・介護サービス分野 に共通する職階ごとの能力開発』に必要とされる研修カリキュラム」 の検討を目的に、11 法人・施設に対するヒアリング調査を行うなか で、職務階層の実際についても聞き取りを行った。 (調査結果の個別事項についてはⅣ章を参照のこと) (ウ) その結果、階層ごとの職員に求められる機能に着目して整理した場合、 調査対象としたすべての法人・施設において、図表 2-1 および下記第 1~第 5 の 5 段階の職務階層による整理が可能となった。 (エ) その他、職務階層と国家資格の関係については、保育士や看護師等、 国家資格保有が雇用の前提となっている場合を除き、介護職や相談援 助職等、対応する国家資格が存在する職種でも、現況に鑑みて採用時 に必須とはできない状況がある。しかし、法人や事業所の支援と職員 本人の努力等により、これらの人材についてもなるべく早期に資格を 取得する方向性がキャリアパスに位置づけられることが望ましい。 (オ) また、職務階層ごとの期間(経験・勤務等の年数)は、法人や施設・ 事業所の規模や事業分野等によりさまざまな実態があるため一律に は規定できない。 (2) 福祉・介護サービス従事者の職階ごとに求められる機能イメージと対 応役職(例示) (ア) ヒアリング調査結果等により、本報告書においては、福祉・介護サー ビス従事者の職務階層は 5 段階に設定する。<図表 2-1 参照> (イ) 図表 2-1 では、各段階で「職務階層」と「求められる機能(役割・業 務)イメージ」、対応する「役職名称(例示)」を示している。 (ウ) 各段階の特徴について、調査結果等をふまえ次のように整理する。 -14- <図表 2-1> 職務階層と求められる機能のイメージ 職務階層 求められる機能 第5段階 第4段階 トップマネジメント リーダー* シニアマネジャー (上級管理者) ・ 運営統括責任者として、自組織の目標を設定し、計画を立てて遂 行する。 ・ 必要な権限委譲を行い、部下の自主性を尊重して自律的な組織 運営環境を整える。 ・ 人材育成、組織改革、法令遵守の徹底などを通じて、自組織を改 善・向上させる。 ・ 自らの公益性を理解し、他機関や行政に働きかけ、連携・協働を 通じて地域の福祉向上に貢献する。 ・ 所属する法人全体の経営の安定と改善に寄与する。 マネジメントリーダー マネジャー (管理者) ・ 業務執行責任者として、状況を適切に判断し、部門の業務を円滑 に遂行する。 ・ 職員の育成と労務管理を通じて組織の強化を図る。 ・ 提供するサービスの質の維持・向上に努める。 ・ 経営環境を理解し、上位者の業務を代行する。 ・ 他部門や地域の関係機関と連携・協働する。 ・ 教育研修プログラムを開発・実施・評価する。 ↑ 管理職 ↑ 第3段階 チームリーダー リーダー (職員Ⅲ) ・ ・ ・ ・ チームのリーダーとして、メンバー間の信頼関係を築く。 チームの目標を立て、課題解決に取り組む。 上位者の業務を補佐・支援する。 当該分野の高度かつ適切な技術を身につけ、同僚・後輩に対して のモデルとしての役割を担う。 ・ 地域資源を活用して業務に取組む。 ・ 教育指導者(スーパーバイザー)として、指導・育成等の役割を果 たす。 ・ 研究活動や発表などを通じて知識・技術等の向上を図る。 第2段階 第1段階 メンバーⅡ スタッフⅡ (職員Ⅱ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ 組織の中での自分の役割を理解し、担当業務を遂行する。 職場の課題を発見し、チームの一員として課題の解決に努める。 地域資源の活用方法を理解する。 後輩を育てるという視点を持って、助言・指導を行う。 業務の遂行に必要な専門的知識・技術等の向上を図る。 職業人としての自分の将来像を設定し、具体化する。 メンバーⅠ スタッフⅠ (職員Ⅰ) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 指導・教育を受けつつ、担当業務を安全・的確に行う。 組織・職場の理念と目標を理解する。 担当業務に必要な制度や法令等を理解する。 組織内の人間関係を良好にする。 福祉の仕事を理解し、自己目標の設定に努める。 仕事から生じるストレスを理解し、対処方法を身につける。 福祉・介護サービス従事者としてのルール・マナーを順守する。 役職名称 [例示] 施設長(1) (部長) 施設長(2) 小規模事業管理者 部門管理者 (課長) (係長) 主任 職員(一般)** 職員(新任) *この場合のトップマネジメントとは、法人を単位とした経営管理についてではなく、施設・事業所を単位とした運営統括に係るものに限定される。 **職員(一般)には、第1段階(新任職員期間)を終えて独り立ちした段階から、監督的立場ではないが個々のサービス提供場面などにおいてスタ ッフリーダーとしての役割を果たす段階までが含まれている。 -15- 【第1段階、第2段階(メンバー、スタッフ)】 (ア) 「メンバー」や「スタッフ」と称される、いわゆる一般職員層につい ては、役割・機能の実態から、「新任職員」としての第 1 段階と、新 任期を過ぎ、担当業務を遂行するうえで一人前とされる第 2 段階とに 区分できる。 (イ) 第 1 段階、第 2 段階においては、職員の雇用および勤務形態は正規・ 非正規、常勤・非常勤、フルタイム・パートタイム等さまざまな実態 にある。しかし、利用者の立場からすれば、職員の雇用形態にかかわ らず常に良質で適切なサービスが提供されることが最も重要なこと である。直接援助業務に従事することが多いと考えられるこの段階の 職員に「求められる機能」について、雇用や勤務形態による基本的な 違いはないものと考えるべきである。 (ウ) 福祉・介護サービス実践はチームケアが基本であるため、この段階の 職員には、常にチームの一員としての自身の役割を理解して業務上生 じた課題解決に努めることが重要である。 (エ) 職場内外にさまざまな職種や専門性が存在することを知り、チームの 中での自らの専門性を発揮するとともに、広く地域にまで目を向けて 多職種連携・協働を理解する必要がある。 (オ) 福祉・介護サービス従事者が、強い支援欲求や高い使命感など自身に 内在する心理的特性を理解し、福祉・介護職場に特有の心身にかかる ストレスへの対処法や回避術、健康管理の基礎知識、技術を身に付け ることが必要である。 (カ) 福祉・介護サービス従事者一人ひとりのキャリアビジョンについては これまであまり注目されてこなかったといえる。しかし、福祉・介護 サービスの仕事が「少子高齢社会を支える働きがいのある、魅力ある 職業」として発展していくために、職員個人の目標やライフデザイン と、所属する法人や施設・事業所の理念・方針、業務内容等とのマッ チングにより「職業人としての自分の将来像を描く」ことは、離職や 業界からの離脱防止等につながる重要な要素である。 【第3段階(チームリーダー、リーダー)】 (ア) 現場において実務をすすめる単位(チームやユニット、グループ、ク -16- ラス等)において「チームリーダー」あるいは「リーダー」として、 指導的立場を担う職員層について第 3 段階とする。 (イ) この段階の職員は、ユニットリーダーやクラス主担任等、小規模な職 員集団におけるリーダーとなることから、メンバー間の信頼関係の構 築を基本として、日常の業務課題の解決に取り組む役割を担う。 (ウ) また、自らが当該分野の業務に従事すると同時に、現場における実務 の推進役として、上位者の補佐・支援的役割と同僚・後輩に対する指 導的役割が求められる。 (エ) 同僚や後輩職員のモデルとして高い倫理観や実践能力、知識・技術が 要求されるため、社会福祉士や介護福祉士等、当該職種に対応する国 家資格は必要であると考えるべきである。そして、専門職団体への加 入等により専門性を磨く機会の確保や、実践をベースにした研究活動 等により自ら研鑽に励む姿勢を示すことが大切である。 (オ) 自組織だけでなく地域の福祉課題への意識と関心を持ち、地域への働 きかけを行うなどの役割が期待される。 (カ) 福祉・介護職場における役職名称としては「係長」や「主任」と称さ れることが多いが、この段階は、いわゆる「管理職」とは区分して考 えられるべきである。 【第4段階(マネジメントリーダー、マネジャー)】 (ア) 第 4 段階以上の職務階層が「管理職」層である。そのうち、組織内で 介護や保育といった直接援助(ケア)、相談援助、事務等の業務執行 単位で職責を有する「マネジメントリーダー」あるいは「マネジャー」 クラスを「部門管理者」層として第 4 段階とする。 (イ) この段階は、部門単位の業務執行責任者として、法人の理念や方針の もとで、自身の所管部門に係る一定の権限委譲等を受けて、業務が円 滑に遂行されるよう管理、監督する機能が求められる。 (ウ) また、自組織の提供するサービスの質の確保、維持、向上について中 心的な役割を担う。そのため、業務の遂行等についての適切な判断力 が求められる。また、チームリーダーやメンバーに対する育成や労務 管理に係るスキルも必要である。 (エ) 自組織の他部門や、地域の関係機関との連携・協働活動の推進につい -17- て、この段階が実務面での主導的役割を担うことが求められる。 (オ) 第 4 段階の職務階層は、福祉・介護職場における役職名称に照らして 「課長」等が考えられるが、法人の規模等によってはこの段階にある 者が「施設長(事業所長)」に就いている場合が考えられる。法人や 施設・事業所においてキャリアパスのシステムを構築するにあたり、 求められる機能のイメージに沿って役職等を整理する必要がある。 (カ) 保育所における主要な役職である「主任保育士」は、制度上その配置 や職務内容が規定されていないことなどもあって、役割・機能および 実務と、職階としての位置づけが不明確な現状がある。本報告におい ても、職務階層でいうところの第 3 段階と第 4 段階との間で位置づけ が見えにくい状況にある。 【第5段階(トップマネジメントリーダー、シニアマネジャー)】 (ア) 福祉・介護職場における職務階層において最も上位となるこのクラス を「上級管理者(シニアマネジャー)」層として第 5 段階とする。 (イ) この階層は、主に施設レベルの運営統括責任者であり、一般的に「施 設長」クラスの職員を指す。法人の理事長や理事等の経営層(役員) を兼ねるケースも少なくない。しかし、本報告においては、福祉・介 護サービス従事者の勤務する施設・事業所等の職務階層におけるトッ プとしての位置づけである。 (ウ) この段階は、自身が運営統括責任を持つ施設・事業所において、目標 や計画設定からその実行に至る指示・命令・監督の権限を有するが、 トップとしての明確な方針を示しつつ、権限委譲や部下の自主性の尊 重等による自律的な組織運営の環境を整える役割が望まれる。 (エ) 人材育成や組織改革、法令順守の徹底等について責任を持つ立場であ り、自組織の改善・向上の責任を有する。 (オ) 自組織の公益性を理解し、他機関・行政への働きかけ、連携、協働を 通じて地域の福祉向上に貢献することもその役割であることを理解 する必要がある。 -18- 2.福祉・介護サービス従事者の職務階層に対応した新たな研修体系 (1) 新たな研修体系の構築に係る基本的な考え方 (ア) 本委員会協議の目的であった、「福祉・介護サービス分野に共通する 能力開発」のために、8 つの研修科目を設定した。そして、この 8 科 目の学習・教育内容について、前節にて明らかとなった 5 つの職務階 層において、どの段階でどのような内容を学習すべきかについて示し た。それらを整理したものが<図表 2-2>である。 (イ) 本年度、新たな研修体系の提案にあたり、20 年度報告書「研修体系 モデル」において示した下記 2 点については、ヒアリング調査結果お よびそれに基づく委員会協議の結果、下記のとおり考え方を変更した。 本報告で提示する研修体系における受講対象者については、必 ずしも資格職(国家資格保有者)を前提にしないこととする。 (ただし、保育士など任用用件として定められている資格は各 規定に従って資格取得が前提となる。その他の職種はそれぞれ のキャリアパスにおいて取得を推進する。) 各段階(職務階層)は当該階層の職員に必要とされる役割・機 能に着目して設定しているため、本体系上では業務経験年数を 規定しない。 (2) 新たな研修体系に基づく研修・教育科目の設定と主な内容 【 福祉サービスの倫理と基本理念 】 (ア) 「福祉サービスの倫理と基本理念(尊厳の保持・権利擁護)」 「利用者・ 家族の理解と支援」 「福祉サービスの基礎と実践」が主な内容である。 (イ) 本科目は、職務階層としては第 1・第 2 段階で十分に押さえておくべ き「福祉・介護サービス従事者に共通する専門性の基礎」といえる内 容で構成されている。第 3 段階では、チーム実践として展開できるレ ベルの理解が求められる。第 4・第 5 段階では、自身の理解を前提に 組織体制の構築や環境整備の方法等について学ぶ。 【 セルフマネジメント(自己管理と環境づくり) 】 (ア) 「身体の健康管理」 「キャリアデザイン」 「ストレスマネジメント」 「モ チベーションマネジメント」が主な内容である。 -19- <図表2-2> 福祉・介護サービス従事者の職務階層に対応した新たな研修体系~科目設定と職務階層ごとの教育・研修のポイント~(概念図) ー タ 、 養 成 ー 養 成 ョ ビ ジ リ ス ク の 理 解 ー 利 用 者 や 地 域 の リ ス ク へ の 対 応 管 理 実 践 へ の 展 開 実 践 を 苦 通 情 じ へ た の 解 対 決 応 の 推 進 苦 情 の 理 解 適 切実 な践 制と 度展 運開 用 自 職 場 の 理 解 制 度 ・ 規 定 の 理 解 基 本 の 理 解 ) タ 実 践 研 究 の 推 進 ) ( 業 職務 場課 の題 問へ 題の 解対 決応 ) ( 業 職務 場課 の題 課の 題発 形見 成と 分 析 、 ー ー ォー 部 コ下 の チ育 ン成 グと 能 ス力 開 パ発 ー シ リ テ ( ) ( フ ー ュー ィ ・ チ ァ ー エ ル ダ 研 究 課研 題究 のの 発必 見要 と性 取理 り解 組 み リ スリ クス をク 生へ まの な気 いづ 環き 境と づ対 く応 り 制 度 の 構 築 と 運 用 ( 必 要 性 理 解 会ス地 と域 ボのに ラ連お ン携け テ・る 協イ ア働ン 等 フ 住 民 マ 地ル 域サ 社 ビ 基 本 の 理 解 苦 情 へ の 対 応 コ ン プ ラ イ ア ン ス の 理 解 と 順 守 基 本 の 理 解 労 務 の 理 解 と 管 理 の 実 践 人 事 制 度 の 理 解 と 組 織 へ の 展 開 財 務 の 理 解 と 経 営 へ の 応 用 ) 多職種連携・地域協働 発 階 層 解別 決の 策業 の務 検課 討題 ・ に 推対 進応 し た 研 究 進 の め 意 方 義 と 予 防 と 管 理 経 営 へ の 応 用 制 運度 用の 改構 善築 と ) 地 域 と の 連 携 ・ 、 メンバーシップ・リーダーシップ ー セルフマネジメント (自己管理と環境づくり) 福祉サービスの 倫理と基本理念 ッ 科目 ) ( 専 築働他 組 行専織 政門や と性地 のの域 連理の 携解専 等 門 ネ職 と トの ワ連 携 ク・ 構協 、 ン 技 術 ( 、 プ の 理 解 と 実 践 ) プ の 理 解 と 実 践 シ ー シ 門組 性織 のの 理中 解で の チ多 職 ム種 実連 践携 等・ 協 働 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組織運営管理 ( 方 体 針 制 の 整 決 備 定 、 コ 指 ミ 導 ュ ン 者 ニ 技 に ケ 術 必 シ要 ョ な ー ー ー 利 用 ニ者 ・ ズ家 の族 把の 握理 と解 支に 援基 づ く ム 管 理 ト リ ッ プ ダ を 補 シ ッ佐 プす る ー ー チ 理 シ 者 ョ に ン 必 技 要 術 な ー 職 場 管 理 ー 尊 厳 ・ 職 業 倫 理 の 理 解 と 実 践 環要 境因 改分 善析 ビ ス の 質 の ー メンバーⅠ スタッフⅠ 第1段階 (職員Ⅰ) 組 コ織 ミ ・ ュ部 ニ門 ケ管 サ 福ニ ム祉 ズ にサ に よ ビ基 る スづ 展 の く 開 実チ 践 ム と に 展 よ 開 る ー メンバーⅡ 第2段階 スタッフⅡ (職員Ⅱ) 体 制 整 備 行 と政 の ・ 連他 携機 関 ー 管 理 と 環 境 整 備 チ チームリーダー 第3段階 リーダー (職員Ⅲ) リ ト ッ ダプ と シし ッ て プの リスクマネジメント 業務課題の解決と実践研究 人材育成 、 対 策 の 実 践 ー マネジメント リーダー 第4段階 マネジャー (管理者) 多職種連携・地域協働 ー シニアマネジャー (上級管理者) 組 織 方 針 の 決 定 と 体 制 ・ 環 境 整 備 メンバーシップ・リーダーシップ ー 第5段階 セルフマネジメント (自己管理と環境づくり) 福祉サービスの 倫理と基本理念 科目 ン 人材育成 業務課題の解決と実践研究 リスクマネジメント 組織運営管理 ※上記以外に、法人の理念や目的、方針やサービス提供に係る基本技術については、職場内研修により教育・訓練を行う必要がある。 -20- -21- (イ) 介護や保育、相談援助といった直接的な対人援助業務からキャリアが スタートすることが多い福祉・介護サービス従事者にとって、自らの 心身の状態や特性を理解し、自身や周囲のストレス状況の把握とその 回避方法等の基本を理解しておくことは、早期離職の要因につながる モチベーションの低下等を防ぐうえでたいへん重要である。 (ウ) 第 1・第 2 段階の「職員」については、自らの福祉・介護という職業 や職場の理解を基本として、職業人としての自らの目標や将来像を描 く「キャリアデザイン」について学ぶ。 (エ) 本科目では、福祉・介護サービス従事者の自己理解・他者理解に始ま る基本と実践や、職業理解や職業人としての自己目標の設定と管理に かかわる「キャリアデザイン」等、「働く私の理解」に基づく自らの 心身のマネジメントに係る知識・技術の習得を目的とする。また、上 位階層ではそうした健やかな職場環境づくりの重要性を理解し、要因 分析や実施方法等を学ぶことを目的とする。 【 メンバーシップ・リーダーシップ 】 (ア) 「コミュニケーション技術」 「メンバーシップの理解と実践」 「リーダ ーシップの理解と実践」が主な内容である。 (イ) 福祉・介護サービス利用者やその家族、また、職員間や他の専門職等 との関係形成の基本として、すべての階層を通じてコミュニケーショ ン技術が必要である。 (ウ) 本科目では、福祉・介護職場におけるチームワークの重要性の理解を 基本として、組織およびチームを構成するために必要なメンバーシッ プやリーダーシップについて理解を深め、それらを実践場面において どのように発揮すべきか等について学ぶことを目的とする。 【 多職種連携・地域協働 】 (ア) 「組織の中での多職種連携(専門性の理解、チーム実践、多職種連携・ 協働) 」「他組織や地域の専門職との連携・協働(多職種連携・協働、 ネットワーク、行政との連携)」 「地域におけるインフォーマルサービ スとの連携・協働(住民、地域社会、ボランティア等)」が主な内容 である。 -22- (イ) 福祉・介護サービス従事者は、利用者を中心とした支援を展開するた めに、所属する組織の内外に存在する多くの職種が持つ専門性に加え て、インフォーマルな地域の社会資源について理解する必要がある。 (ウ) 本科目では、組織内外の専門職や地域の社会資源等との連携・協働の あり方や、ネットワーク構築の仕組み、実践方法等を身につけること を目的とする。 (エ) 職務階層が上がるにつれて、自職場から地域へと連携・協働の実践フ ィールドは広がっていく。第 4 段階では、他機関や地域のインフォー マルサービス等との連携、協働による支援を展開するうえで必要な、 開発方法やマネジメントに係る知識・技術等について学ぶ。 【 人材育成 】 (ア) 後輩指導の仕組みとして導入する法人や施設・事業所も増えつつある 「エルダー・チューター養成」、職場内研修の推進担当者等として、 あるいはチーム会議のまとめ役としての「ファシリテーター養成」、 「部下の育成と能力開発」が主な内容である。 (イ) 「部下の育成と能力開発」では、福祉・介護職場における人材育成の 基本を学び、指導者層以上の職員が部下・後輩育成のための職員指 導・育成場面における活用を目指してコーチングやスーパービジョン の知識・技術の習得等を図ることを目的とする。 【 業務課題の解決と実践研究 】 (ア) 「業務課題の発見と分析(職場の課題形成)」 「業務課題への対応(職 場の問題解決)」「実践研究の推進」が主な内容である。 (イ) 福祉・介護職場においては、発生した問題に対して的確に対応するだ けでなく、兆候や傾向の分析とともに、業務の改善や革新の視点から 自律的に課題を発見し、解決に向かって対応していくというスタンス を身につける必要がある。 (ウ) 職務階層によってその持ち場とするところの業務の範囲には差があ るが、情報の収集や解決策の検討には工夫や創造性が必要であり、そ の実行にあたっての企画立案や提案に係る能力開発はいずれの段階 においても必要である。 -23- (エ) 実践研究活動の推進は、職場の問題解決を図る取り組みであるだけで なく、そうした活動を通じて職場やチーム、また、そこに属するメン バーのモチベーションの維持向上に有効である。そこで、本科目にお いて、実践研究の必要性の理解とその推進方法を学ぶ。 【 リスクマネジメント 】 (ア) 本科目では、「利用者や地域のリスクへの対応」「苦情への対応」「コ ンプライアンスの理解と順守」が主な内容となる。 (イ) 福祉・介護サービスを行う施設・事業所におけるリスクマネジメント の範囲は、介護事故や感染症等といった利用者に直接的なものだけで はない。例えば、災害発生時において施設が地域住民の支援拠点とし て活動する場面も生じることから、地域のリスクへの理解と対応につ いても学習が必要である。 (ウ) 職員のレベルではリスクや苦情等の理解から実践場面における対応 の学びが基本となるが、管理者クラスでは自組織のコンプライアンス マネジメントにもかかわって予防や管理、対策の推進にとどまらず、 リスク対応等方針の決定から制度の構築、運用、改善に至るまで責任 ある立場としての知識・技術を学ぶ。 【 組織運営管理 】 (ア) 「労務の理解と管理の実践」 「人事制度の理解と組織への展開」 「財務 の理解と経営への応用」が主な内容となる。 (イ) 基本的には指導職員層以上が身につけるべきスキルであるといえる が、職務規定など自らの労務に関する基本事項は、一般職員でも理解 しておくべきである。 (ウ) 上記科目「リスクマネジメント」と同様、管理者層にはこれらの実践 に加えて制度構築や運用、改善のスキルが必要となる。また、福祉・ 介護職場として安定的な経営、運営を行うだけでなく、財務を経営に 活かす視点の醸成もねらいとするところである。 -24- 3.新たな研修体系に基づく設定科目の目的・ねらい・到達目標等 (1) 概 要 (ア) 新たな研修体系に基づく研修科目と職務階層ごとの教育・研修のポイ ントについて<図表 2-2>により示したところである。 (イ) 今後、この新たな研修体系に基づいて実際の研修プログラムが検討さ れ、科目ごとの学習内容(シラバス)の作成へと展開することになる。 (ウ) シラバスの作成は次年度以降の課題となるが、本年度実施したヒアリ ング調査とその結果に基づく委員会協議等の内容を受けて、新たな研 修体系に基づいて設定した各科目の目的・ねらい・到達目標等につい て考察した。 (エ) なお、ここに示す各科目の目的・ねらい・到達目標等は例示であり、 今後、それぞれ科目の学習内容の詳細を検討するうえで参考資料とな ることを目的としたものである。 (2) 科目ごとの目的・ねらい・到達目標等(例示) (ア) 新たな研修体系において設定した研修科目について、科目実施の「目 的」、階層別の「ねらい」と「到達目標・獲得目標」、これらの科目設 定の「背景」を次ページ以降に例示する。 (イ) これらの「ねらい」や「到達目標・獲得目標」等をふまえ、学習内容 や方法(実施する研修技法)等が検討・選択されることが望まれる。 -25- 福祉サービスの倫理と基本理念 (福祉サービスの倫理と基本理念(尊厳の保持・権利擁護) 、利用者・家族の理解と支援、福祉サービスの基礎と実践) 1. 目的 • 社会福祉法には福祉サービスの利用者個人の尊重や地域福祉の推進、さらには福祉サービスの質の向上などが規定 されており、ここでは社会福祉法の基本理念に基づき、福祉サービスに関する理念、価値観を学ぶ。 利用者の主体性と尊厳を尊重する社会福祉の理念を理解し、福祉サービス提供者の行動指針となる理念を学ぶ。 具体的には福祉サービスの意味、利用者ニーズの理解、利用者の尊厳、主体性の理解、チーム支援の実践方法など について学ぶ。 • • 2. 階層別の目的 段階 役職イメージ 5 トップマネジメ ねらい • ントリーダー シニアマネジャ ー • (上級管理者) 4 マネジメントリ • 到達目標・獲得目標 社会福祉の基本理念の理解の促進や、その理解に基づいた • 念に則って質の高い業務を遂行するため ることについて学ぶ。 の環境を整えると共に、必要に応じて組 提供される福祉サービスの質の向上に向け、組織、法人の 織変更やリーダーなどへの指導を行える 運営環境を整えることについて学ぶ。 ようになる。 地域社会や他の地域資源との関係を理解し、法人の理念や ーダー 活動を地域社会に理解・浸透させる方法について学ぶとと マネジャー もに組織の地域における社会的な役割を職員が理解でき (管理者) るように教育などの環境を整えるための能力を身につけ • チームリーダー • リーダー (職員Ⅲ) • なる。 • 福祉サービスの倫理と基本理念に関する 教育の機会と環境づくりができる。 社会福祉の基本理念を理解し、その理解のもとに実際にサ • 自身の仕事だけにとどまらず、職場のメ ービス提供ができるよう職場環境を整えることについて ンバーが福祉サービスの倫理と基本理念 学ぶ。 に則って仕事が出来る環境を整えるとと 利用者のニーズ、さらに家族が抱えるニーズを理解し、利 もに、必要に応じてメンバーへの指導を 用者本位のサービスの提供を展開することを学ぶ。 • 組織・法人の理念を地域社会に理解・浸 透させるための取り組みが行えるように る。 3 組織全体が福祉サービスの倫理と基本理 サービス提供ができるように組織・法人の運営環境を整え サービスを提供するメンバーが福祉の考え方や価値観、倫 行えるようになる。 • 理観を持って行動ができるように職場の環境づくりやチ ームメンバーの指導方法を学ぶ。 利用者のニーズを理解し、適切なサービ スをリンキングすることができる。 • 利用者及び家族との関係を構築し、維持 できるようにチームメンバーと協力関係 を築くことができる。 2 メンバーⅡ • スタッフⅡ (職員Ⅱ) 1 • 利用者の人権、尊厳、主体性を理解し、福祉サービスを提 • 利用者のニーズの基本構造を学び、利用者ニーズを適切に 福祉サービスの質について理解し、質を維持するために必 要な支援について理解する。 背景 • • • • 利用者のニーズを的確に把握するために 適切なアセスメントができる。 • 導き出す基本的な技術を身につける。 • 福祉サービスの倫理と基本理念を身につ け、行動できるようになる。 供する基本的な価値観、倫理観を育む。 (職員Ⅰ) 3. • 社会的な意義、意味について学ぶ。 メンバーⅠ スタッフⅠ 社会福祉法の基本理念を学び、福祉サービス業務に携わる サービスの質の基礎を理解し、質の向上 に向けた取り組みができる。 • 福祉職としての専門性を理解し、質の高 い福祉サービスを提供できる。 福祉サービスは一般のサービスとは異なり、サービスの提供にあたっては、その専門性、特殊性を理解しなければ ならない。 福祉サービスの利用者は身体的にも精神的にも弱い立場にあることが多く、本人のニーズを適切に理解し、適切な 支援をすることが不可欠である。それらに加えて利用者の尊厳を尊重し、権利を守り、時に利用者の代弁者として の行動が求められる。 そのために福祉に関わる従事者は福祉サービスの倫理と基本理念を身につけ、それぞれの専門性に裏付けられたサ ービスの提供を通じて、利用者の支援を行うことが求められている。 -26- セルフマネジメント(自己管理と環境づくり) (キャリアデザイン、身体の健康管理、ストレスマネジメント、モチベーションマネジメント) 1. 2. 目的 • 仕事を行う上で生じる強い不安やストレスなどを自分自身でコントロールし、職員が心理的な健康の不全に陥ることなく仕事 を継続できる心理状態を作り出せるようにするための技術を学ぶ。また、不安やストレスを受けにくい仕事の段取り、進め方、 報告、相談などの方法を仕事に取り入れる方法について学ぶ。 • 職場におけるメンタルヘルス・ストレスマネジメントは、 「積極的な健康の保持増進」 、 「仕事による健康障害の防止」につい て学び、さらに「健康不全の早期発見、早期対処」 、 「再発・再燃の防止」方法を身につける。 • さらに職員の仕事に対する動機付け(モチベーションマネジメント)を行い、職員の職場定着率が上がり、積極的に仕事に関 わる環境を整える。 • また、福祉サービスの専門家としての目標をたてて日々研鑽し、その目標を達成するためのキャリアデザインを描く。 階層別の目的 段階 役職イメージ ねらい 到達目標・獲得目標 5 トップマネジメ • 職場の心理的健康管理の環境を整えるため、 総合管理職と しての心理的健康管理手法について学ぶ。 • 職員の心理的健康管理を組織で取り組むための制度、 仕組 みの構築方法を学ぶ。 • 職員が心理的健康不全に陥ることを事前に防ぐとともに、 心理的健康不全に陥った職員の回復支援、 職場復帰支援の ための制度、仕組みの構築方法を学ぶ。 • 職員の仕事に対する動機付けができるようにキャリアパ スを明示し、職場環境を整えるとともに評価・人事制度の 構築方法を学ぶ。 • 職場で起こっているストレスや心理的健康の維持を阻害 する職場の要因分析と課題の整理方法を学ぶ。 • 職場での利用者・職員との関係を理解し、適切な人員配置 について学ぶ。 • 現場職員が仕事に積極的になれるように職場の雰囲気、 組 織の文化の構築する方法を学ぶ。 • キャリアパスに応じて職員を育成するとともにその指導 者を養成することの重要性を理解する。 • チームメンバーの精神状態やストレスを理解し、 必要に応 じて相談を受け、 しかるべき対応が必要な場合は上司と相 談し、対応策をとることの重要性を理解する。 • 仕事の中で生じる精神的ストレスなどを自身の力で解消 したり、ストレスの原因を取り除くための方法を学ぶ。 • リーダーとして部下の目標となり、 部下が仕事に対して前 向きになれる職場づくりの方法を学ぶ。 • 職員の心理的健康管理の必要性を自覚する。 • 心理的健康管理を行える職場環境の整備手法を 獲得する。 • 心理的健康不全の予防対策を実施する。 • 職員の仕事に対する動機付けになるような制 度、報酬を体系化し、組織に定着させる。 ントリーダー シニアマネジャ ー (上級管理者) 4 マネジメントリ ーダー マネジャー (管理者) 3 チームリーダー リーダー (職員Ⅲ) 2 メンバーⅡ スタッフⅡ (職員Ⅱ) • • • 1 メンバーⅠ • スタッフⅠ (職員Ⅰ) 3. • • • 職場の心理的健康管理を維持するための組織管 理手法を身につけ、心理的疾病の予防ができる。 • 心理的ストレスを抱える職員の相談を受け適切 な対応が取れる知識と技術を身につける。 • 職場のリーダーと積極的に関わり、職員の仕事 へのモチベーションをあげるための組織活性化 法を身につける。 • 仕事と心の健康についての基礎知識を身につけ る。 • 職員の仕事と心の状況について、目配りできる 知識、技術がある。 • 職場のリーダーとして職員が仕事に集中できる 環境をつくれる。 • キャリアを考えて、自身の能力向上を図ること ができる。 職場における心理的健康管理に関する知識、意味、必要性 • 自身の心理的健康管理を自分自身で行い、仕事 における心理的ストレスの予防、解消方法を身 を理解する。 につけ実行できる。 自分自身だけでなく新任職員や経験の浅い職員の心の健 • 新任職員の心理的健康管理を積極的に行い、新 康管理を学び実践する能力をつける。 任職員の心理的健康の維持を支援する。 目標を持って積極的に仕事に取り組むためのキャリアデ ザインの方法について学ぶ。 • 仕事に対する意欲をあげられるように仕事の基 礎を固めるとともに仕事にける目標をもつ。 心理的健康管理の知識、意味、必要性を学ぶ。利用者の拒 • 自分自身の心理的健康管理方法を学び実践する 能力を身につける。 絶、 関係不全など自身が心理的ダメージを受けた際の対応 • 課題意識をもって仕事に取り組み、自らが主体 方法を学ぶ。 となって仕事ができるようになる。 心理的な抑圧が生じにくい仕事方法について身につける。 仕事に対して目標をもつことによって、 主体的に仕事に関 わる方法を身につけ、キャリア形成の重要性を理解する。 背景 • 福祉.介護サービス従事者は、障害などがある人々に対する強い支援欲求をもち、さらに社会的な使命感をもって入職するこ とが多い。強い支援意欲は仕事を進めるための強力なドライブとなる半面、利用者や職員同士の人間的・心理的関係に問題が 生じると喪失感が強く心理的に業務の遂行が困難になることが多い。燃え尽き症候群などもその典型であり、日々の福祉的支 援で起こる問題を受け止めて業務を遂行する心の健康管理が強く望まれる。 • 福祉は人の命に関わる仕事であり、仕事のストレスも多い。ストレスを管理し、抑制するために仕事に対して主体的になれる 動機付けが不可欠である。それぞれの階層に立って職員が意欲をもって仕事に取り組める環境整備が必要である。 -27- メンバーシップ・リーダーシップ (コミュニケーション技術、メンバーシップの理解と実践、リーダーシップの理解と実践 1. 2. 目的 • 福祉における支援は複数の職員によって個人にあるいは集団に対して提供される。質の高いサービスを提供するためにはサー ビスを提供する職員が、同じ目的に向かってそれぞれの役割を果たしながらチームとしてサービスの提供が行われなければな らない。そのためチームワークを形成するためのメンバーシップが不可欠である。 • メンバーシップにはメンバーとしての役割を担う為のメンバーシップ技術とリーダーとしてチームをリードするリーダーシ ップ技術も含まれる。チーム員として自らの役割を発揮するための仕事を身につけることが狙いである。 階層別の目的 段階 役職イメージ ねらい 到達目標・獲得目標 5 トップマネジメ • 法人及び組織の長として、法人組織が進むべき目標を示し、 その目標を達成するための手段を構築し、達成状況を検証す ることで、法人・組織におけるリーダーシップを発揮する方 法を学ぶ。 • 職場のリーダーになりうる人材を発掘し、リーダーとしての 教育機会を作り、リーダーを養成する方法を学ぶ。 • また、自身の後任となる次世代リーダーの育成を行い、法人・ 組織が継続した経営が維持できる環境を整えることについて 学ぶ。 • 法人・組織のリーダーの意思を理解し、目標を達成するため に具体的な業務に展開し、リーダーを支援する方法を学ぶ。 • トップリーダーに代わって法人・組織の運営することの意味 を理解する。 • 現場のリーダーを育成し、そのリーダーが業務を遂行しやす い環境をつくる方法学ぶ。 • 自らの業務肩代わりできるミドルマネジメントリーダー補佐 を養成することの重要性と方法について学ぶ。 • 現場のトラブルを解決するとともにトラブルを予防し、チー ムで行う業務の進捗管理を行う方法を学ぶ。 • 部下の抱える問題を見つけ、問題を解決するための課題を設 定するための方法を学ぶ。 • チーム間の人間関係を調整し、目標に向かってチームが機能 するように指導する方法を学ぶ。 • 様々な職種と共同して働くための福祉に関する基礎知識と、 チームとして働く際のポイントを学ぶ。 • 職員間のコミュニケーション方法と、チームが仕事を達成で きるように働くことの重要性を理解し、実践するための方法 を学ぶ。 • 新任職員がチームメンバーとして仕事ができるように指導す るための方法を学ぶ。 • チームの一員に求められる福祉の基礎知識をもち、先輩職員 と一緒に仕事を達成していくためのポイントを押さえる。 • リーダーの指示を理解し、自身で仕事を行ううえでのポイン トを押さえる。 • 法人・組織の経営管理技術をもち、法人を 目標に向けて動かす能力を備える。 • 部下、次世代リーダーを養成するための組 織内環境を整える力をもつ。 • 職員の仕事に対するモチベーションをあげ る技術をもつ。 • 職員が仕事をしやすい環境を整え、自らの 目標を達成しうる組織づくりができる。 ントリーダー シニアマネジャ ー (上級管理者) 4 マネジメントリ ーダー マネジャー (管理者) 3 チームリーダー リーダー (職員Ⅲ) 2 メンバーⅡ スタッフⅡ (職員Ⅱ) 1 メンバーⅠ スタッフⅠ (職員Ⅰ) 3. ) • リーダーとのコミュニケーションが取れ、 法人・組織の方針を理解して具体的な業務 に展開する能力を身につける。 • リーダーを支えるための経営管理ができ る。 • 次世代の現場リーダーを発掘し、育成する 能力をもつ。 • 職場の問題を発見し、その問題を解決する ための課題を立てられる。 • 部下とのコミュニケーションがとれ、職場 の課題を的確に伝えることができる。 • 部下の要望、希望を聞き出せる技術をもち、 適切な指示を出すことができる。 • アセスメントができ、利用者を中心とした ニーズを明確にできる。 • 利用者のニーズと家族のニーズとを調整す る能力がある。 • 福祉支援に関する基礎知を身につけ、実践 できるようにする。 • チームで働くことを理解し、指示されたこ とを達成できるようになる。 背景 • 利用者の生活を支援するためには多様な職種の人々とチームを組成しながら業務に当たることが求められる。そのためには他 の職種の仕事を理解し、協働できるための基礎・知識技術を身につけることが求められる。 • また、法人・組織の目標を達成するためにその核となるリーダーとそれを補佐するリーダーを育成なければならない。 • 次世代のチームリーダーを養成することで、組織に求められる安定と継続を実現させることが必要である。 -28- 多職種連携・地域協働 (組織の中での多職種連携・協働、他組織や地域の専門職との連携・協働、地域におけるインフォーマルサービスとの連携・協働) 1. • • • • • 2. 目的 利用者の生活を中心とした支援を行う為に、福祉従事者は自組織内の他の職員、他の職種の職員など多様な職員と情報を連携 し、協働していく必要がある。 自組織内のみならず、他のサービス提供事業者や病院の医師、看護師等との情報連携や協働を円滑に行うことは、利用者の生 活を支えて行こうとする福祉サービスには不可欠なものである。 あわせて、その家族、そして利用者が生活する地域のインフォーマルなサービスについて深い理解と知識を身につけることが 求められる。 ここでは自組織内と他の組織の専門職との連携と協働の理解と実践していくための技術を学ぶとともに、地域のインフォーマ ルサービスの理解と連携方法について身につけることを目指す。 具体的には、多職種、他組織の専門職との関係を築くための専門用語の理解、コミュニケーション力、地域社会との関係を強 化するネットワーク力などであり、これらの能力を養成し、多職種協働、組織内外の連携力を高めることを目的とする。 階層別の目的 段階 5 役職イメージ ねらい 到達目標・獲得目標 トップマネジメ • 法人及び組織の地域社会での役割を認識し、地域福祉を向上 させるための自組織の役割を認識する。 • 法人及び組織が提供しているサービスが円滑に提供できるよ うに地域資源との関係を築き、地域間連携の基礎をつくるた めの方法を学ぶ。 • 法人及び組織において地域で担うべき役割を果たすための方 法を身につける。 • 福祉サービスを提供する中で、求められる地域の関連法人と の調整を行い、連携できる関係を構築するための方法を学ぶ。 • 地域ニーズを理解し、自組織が果たす役割を理解し、地域の 役割を担いつつ地域社会との連携を深めるための方法を学 ぶ。 • 法人間の連携のために地域の関連法人との 関係をつくる能力をもつ。 • 法人・組織が活動するために必要な地域環 境をコーディネートする力を備える。 • 法人間の連携のためのネゴシエーション能 力をもつ。 • 利用者中心のケアを実現するために職員の配置を管理し、職 員が様々な職種の職員とコミュニケーションが取れるように 環境を整えることの重要性と方法を学ぶ。 • 利用者を中心としたケアが実践できるように職員に指導し、 地域のボランティアなどのインフォーマルサービスの活用や 育成を図りながらサービスの管理をするための方法を学ぶ。 • 福祉サービスにおける適切な協働・連携に必要な専門知識を 学ぶ。 • 地域のボランティアの育成なども含めた利 用者中心の支援ができる職場の環境を整え るとともに管理運営する力をつける。 • 利用者のニーズに応じたケアができている かを確認し、できていない場合は軌道修正 を行うために部下を指導できる。 • 職員と利用者とのコミュニケーションを促 すことができる。 • 他の職種の業務内容を理解し、適切な連携 を図ることができる。 • 多職種の中での自分の職種の業務と役割を 理解し、実践できる。 • いろいろな職種に、報告連絡相談を行いな がら業務を進めることができる。 ントリーダー シニアマネジャ ー (上級管理者) 4 マネジメントリ ーダー マネジャー (管理者) 3 チームリーダー リーダー (職員Ⅲ) 2 メンバーⅡ スタッフⅡ (職員Ⅱ) 1 メンバーⅠ スタッフⅠ (職員Ⅰ) 3. • 組織内の自分の立場を理解するとともに、他の職員や、他の 職種の専門職がどのような業務を行い、業務の中でどのよう な協働や連携が行われているのかを理解する。 • 福祉サービスに必要な専門知識を学ぶ。 • 地域の関連法人との関係を築くためのコミ ュニケーション能力を持つ。 • 地域のニーズを把握し、自組織が果たすべ き役割を理解し、地域連携の方法を考える ことができる。 背景 • 利用者を中心としたケアの実施は福祉の基礎であり、それを具体的に展開する仕組みを法人組織はもっていなければならない。 また、利用者を中心としたケアを展開できるように職員教育を行い、利用者中心のケアが実行されなければならない。そのた めには生活全体を支えていくための多様なサービスの連携と協働が不可欠であり、そのための専門職相互の理解と連携協働が 効果的・効率的に行われることが重要である。 • 福祉に携わる法人は社会的意義を地域において実現し、地域社会の福祉の向上を担うことが求められている。そのために地域 における関連機関との連携とネットワークづくりが求められる。 -29- 人材育成 (エルダー・チューター養成、ファシリテーター養成、部下の育成と能力開発) 1. 2. 目的 • 一般に福祉サービスは人によって供給される。そのため福祉サービスの提供者のもつ能力、技術が福祉サービスの品質と同義 となり、人の育成が福祉においてはサービスの品質を維持するために重要な経営課題となっている。とりわけ援助、支援とい った福祉的な行為だけでなく、利用者と接する際の対応や人柄までもが福祉を提供する場合には課題となる。このような福祉 サービスの特徴を考慮したうえで、人材を育成し、より品質の高い支援を生み出すことが目的である。 • また、福祉サービスを提供する福祉従事者が、この仕事に就くことへの誇りをもち、生涯を通して仕事を継続できるための人 材の育成と能力開発のための組織及び環境を整えることが重要である。 階層別の目的 段階 役職イメージ ねらい 到達目標・獲得目標 5 トップマネジメ • 法人及び組織の業務とキャリア及びキャリア毎に求められる 能力を理解し、提示するための方法を身につける。 • 職員の能力を適切に判定し、キャリア評価をするための体制 をつくりあげる方法を学ぶ。 • 職員が目標を持って仕事につける職場環境を作り出す方法を 学ぶ。 • 人材育成のための組織体制を整えることが できる。 • 職場における研修制度、育成制度を作り上 げ、運営できる。 • 組織の環境変化に応じて人材育成の仕組み を修正できる。 • 職員を育成するめに実際に職員指導に当たるとともに職場の 指導者を育成するための手法を学ぶ。 • 仕事の目標を設定し、その目標に向かって職員が自己研鑚で きるように指導体制を構築することの重要性と具体策を学 ぶ。 • 自分自身が組織のリーダーとして他の職員の目標となりうる よう自身の業務に求められる能力を身につけ、それを仕事に おいて実際に示すことの重要性と方法について学ぶ。 • 職階ごとに求められる能力、業務内容を明 示化し、部下の育成に直接あたることがで きる。 • 職階ごとに求められる業務目標の設定と職 員の到達度を評価することができる。 • 部下の仕事を鳥瞰的に見て、適切なアドバ イスを行える。 • 外部研修などを受け、職場の指導者として の機能を果たせる。 • チームの果たす役割を理解したうえで同僚 や後輩の仕事内容の評価ができる。 • 同僚や後輩のジョブコーチとして、業務を 指導し、能力向上を支援することができる。 • 自身で課題設定ができ、自身の能力向上を 図れる。 ントリーダー シニアマネジャ ー (上級管理者) 4 マネジメントリ ーダー マネジャー (管理者) 3 チームリーダー リーダー (職員Ⅲ) 2 メンバーⅡ スタッフⅡ (職員Ⅱ) 1 メンバーⅠ スタッフⅠ (職員Ⅰ) 3. • チームのリーダーとしての同僚や後輩の仕事内容を評価し、 適切な指導をするための方法を学ぶ。 • 仕事における将来像を描き、自身を振り返りながら求められ る能力向上のための自己研鑚を行うことの重要性を理解し、 その方法を学ぶ。 • チームのリーダーとして同僚や後輩の成長を促す指導を行 い、自身が職場のモデルとして行動することの重要性とふる まい方について学ぶ。 • 業務を遂行するために求められる能力を理解し、そのための 自己研鑚の重要性について理解するとともに、後輩にも説明 し、理解させるための方法を学ぶ。 • 仕事の目標を立て方、目標達成までの手順の立て方を学び、 後輩に説明して理解させる方法を学ぶ。 • 福祉職の仕事の目的と意義を正しく理解する。 • 担当業務の進め方を理解する。 • 仕事における将来像を描けるように仕事を理解する。 • 仕事の目標を立て目標達成のために先輩の 指導を受けながら自信と後輩の能力の向上 を図ることができる。 • 職業の意味を理解したうえで、自身の将来 像を描きながら自己研鑚することができる とともに、後輩に将来像の描き方を説明し、 自己研鑚することの大切さを示すことがで きる。 • 福祉職としての仕事の意味を理解し、自ら の仕事を上司の指導のもとに遂行できる。 • 業務遂行に必要な知識、技術を理解し、自 身の身につく努力を行うことができる。 背景 • 福祉職の定着率を下げる原因の一つに福祉職の人材育成が十分でないことがあると言われている。福祉サービス専門職として 成長できる人材育成のプログラムの確立が福祉に関わる法人に求められている。 • また、対人サービスである福祉の職場では、福祉職に求められる仕事像が見えにくい側面をもつ。福祉の仕事と仕事に求めら れる能力を明らかにし、人材育成のための仕組みを組織に組み込むことが課題である。 -30- 業務課題の解決と実践研究 (業務課題の発見と分析、業務課題への対応、実践研究の推進) 1. 2. 目的 • 福祉サービス現場においては発生した問題に対して、的確に対応するだけでなく、兆候や傾向の分析とともに、自律的に課題 を発見し解決に向かうことが必要である。そのため常に業務を見直し、改善することが必要であり、その業務改善のプロセス を組織に定着させることが狙いである。 • 自己の業務の改善のために業務を客観的に分析し、問題を見つけ、その解決方法を見つけ出すことを組織として定着させ、業 務の分析と業務を遂行するための研究を行う習慣を組織に定着させることが狙いである。 階層別の目的 段階 役職イメージ ねらい 到達目標・獲得目標 5 トップマネジメ • 法人及び組織内に業務改善及び業務改善のための関係研究が おこなわれるように研修及び研究の機会を職員のため整備す る能力を身につける。 • 職員が行う業務改善や業務に関する研究が行えるように業務 改善のための方向性を示し、奨励することの重要性を学ぶ。 • 業務改善、業務改善研究を評価し、人事評価に加えるなど職 員が積極的に取り組める環境を整える方法を学ぶ。 • 業務改善のために必要な専門家とのネットワークを構築し、 助言や指導等を受けられる環境を整えることの重要性と方法 を学ぶ。 • 業務改善のための予算を確保する方法を学ぶ。 • 担当する組織において、自立的に業務改善及び業務改善ため の研究活動がおこなわれるように部下に指示を出すとともに 具体的な改善活動及び研究方針を作成し、職員に示すための 能力を身につける。 • 職員が業務改善および業務改善に係る研究ができるように業 務配分を考慮する方法を学ぶ。 • 業務改善及びその研究にかかる費用を職員に適切に配分する ための方法を学ぶ。 • チームの業務を常に振り返り、問題点を見つけ出し、その問 題点を部下に示すための方法を学ぶ。 • 業務の質を高めるための研究活動を率先して行い、その成果 を発表するための方法を身につける。 • 業務改善の方法を部下に指示し、日常業務として業務の改善 に取り組むように指示をすることの意義を理解し、実践する ための方法を身につける。 • 担当する業務における問題点や課題を見つけ出せるようにな るための方法を学ぶ。 • 上司が行う業務改善のための研究の補助者として研究を進め る方法を身につける。 • 日常業務に業務を振り返る時間を設け、常に課題を見つける 視点を身につける。 • 新入職員に業務の振り返りを指導する能力を身につける。 • 業務改善が組織で自立して行われるような 組織運営方法を実践できる。 • 職員が積極的に業務改善に取り組める組織 風土及び制度を組織内に構築、管理できる。 • 研究が日常的に行えるように業務のあり方 を整備し、専門家とのネットワークを構築 できる。 ントリーダー シニアマネジャ ー (上級管理者) 4 マネジメントリ ーダー マネジャー (管理者) 3 チームリーダー リーダー (職員Ⅲ) 2 メンバーⅡ スタッフⅡ (職員Ⅱ) 1 メンバーⅠ スタッフⅠ (職員Ⅰ) 3. • 日常業務において常に振り返りを行うことの大切さを学び、 自身の業務の改善を図るための基本的な方法を身につける。 • 業務に関わる研究などに触れ、知識を深める。 • 業務改善の必要性を理解し、その中心的役 割を担う。また、改善した業務が定着する ように働きかけることができる。 • 職員の業務改善に対する職員の意識を向上 させ、業務改善や研究が行われる組織風土 を形成することができる。 • 業務を振り返り、問題を見出すことができ る。 • 問題解決のための研究を計画し、研究を進 めることができる。 • 研究成果を総括し発表する技術・能力をも つ。 • 担当業務を自立して行い、業務における課 題を見つけるための振り返りの時間を作り 出せる。 • 業務改善や業務改善のための研究を上司の パートナーとなって実践することができ る。 • 新入職員に業務の振り返りを指導すること ができる。 • 日常業務を振り返る習慣を身につける。 • 業務改善の意識を常にもつ。 • 上司の指示したがい業務改善のための活 動、研究を手伝うことができる。 背景 • 一般に福祉サービスは無形であり、生産と消費が同じ場所で同時に行われる特徴があるため品質の管理がむずかしい。また、 提供されるサービスの質はサービスを提供する側だけの努力だけではなく、サービス利用者側の協力に大きく左右される。 • 福祉サービスの品質を維持するためには、提供しているサービスの質を確認し、主体的に管理しなければならない。したがっ て、業務改善を日常業務として取り入れ、さらに、研究などによって組織的に品質管理をすることが求められる。 • 利用者のサービス満足度は提供されているサービス水準より常に向上しなければ、維持できない特性を持っている。福祉サー ビスにおいても日常的にサービスの品質が向上する仕組みを業務として位置づけしなければ、利用者が満足できるサービス水 準を維持することができなくなる。 -31- リスクマネジメント (事故等への対応、苦情への対応、コンプライアンスの理解と遵守) 1. 2. 目的 • 法人の経営における不確実なリスクを予見し、リスクによってもたらされる被害を予防し、被害が発生した場合はその被害を 最小限に管理する技術を身につける。 • 福祉サービスは、利用者の生命や身体等に直接関係する日常生活全般に関わり、利用者の安全を最大としたサービス管理及び リスクマネジメントができる体制を法人内、組織内で構築することを目指す。 • また、資産や資金の健全な運用、労働上の安全の確保、地震などの自然災害時の安全確保など法人が存続していく上で必要な 経営管理を行うことを目指す。 階層別の目的 段階 役職イメージ ねらい 到達目標・獲得目標 5 トップマネジメ • 事業経営をする上で生じうる経営リスクを理解し、リスクに よって生じる問題を事前に防止するための対応策を立てるこ とができる能力を身につける。 • 利用者の安全と職員の安全を守るためのサービス管理や労務 管理の環境の整備方法について学ぶ。 • 社会福祉に携わる法人の公共性に鑑みた事業経営計画の立 案、運営管理計画の立案方法について学ぶ。 • 担当する組織における運営上のリスクおよび福祉サービスの 提供時のリスクを洗い出し、そのリスクによって生じる事故、 過誤、苦情を未然に防止する方法を学ぶ。 • 事故、過誤を回避するための業務分析を自ら行い、その分析 結果に基づいて具体的な業務改善などの指示を部下に出すた めの能力を身につける。 • 事故、過誤、苦情が発生した際にその被害が最小限になるよ うに事前にリスクを想定し、緊急時に適切な処置をとるため の方法を身につける。 • 職場における危険を見つけ出し、事故、過誤が起こらないよ うに自らの行動を管理する能力を身につける。 • 対人サービスにおける事故や過誤について理解し、予防のた めに向けた業務改善の方法を学ぶ。 • 福祉サービスの利用者が弱者であることを理解し、事故・過 誤のリスクを理解する。 • 事故が起きた際に迅速な対応ができるように上司と同僚・後 輩との連携方法を理解する。 • 担当する業務におけるリスクを把握し、事故や過誤、利用者 からの苦情が起きないように業務を遂行する能力を身につけ る。 • 新入職員ともども事故、過誤が起きた場合に直ちに上司に相 談し、適切に事故の解決を進めるための能力を身につける。 • 事故や過誤、苦情について理解をするとともに上司の指示に 従い事故や過誤が起きないように業務を遂行する手順を身に つける。 • 事故や過誤が発生した場合に上司の指示のもとでトラブル対 応するための能力を身につける。 • 社会福祉事業経営における経営リスクと福 祉サービスの提供におけるリスクを理解 し、組織として事故や苦情の予防とそれら が発生した際の最適な処理ができる。 • 予めリスクを想定し、職員への指導の実施、 業務の改善などを指示し、職員に実践させ る能力をもつ。 • 組織におけるリスクを想定し、職員に対し て業務実施上の指示及び改善の指示が出せ る。 • トラブルが生じた際のトラブル解決手法を 身につけ、リーダーとなって問題解決を行 うことができる。 ントリーダー シニアマネジャ ー (上級管理者) 4 マネジメントリ ーダー マネジャー (管理者) 3 チームリーダー リーダー (職員Ⅲ) 2 メンバーⅡ スタッフⅡ (職員Ⅱ) 1 メンバーⅠ スタッフⅠ (職員Ⅰ) 3. • 福祉サービスの持つリスクについて理解を 深める。 • 事故、過誤、苦情を未然に防ぐための業務 の見直しができる。 • 事故発生時には問題が解決できるように上 司及び同僚・後輩と連携して対応できる。 • リスクに関する基礎知識を身につけ、自身 の業務におけるリスクを把握する。 • 事故や過誤が生じた場合に上司と相談しな がら問題解決に当たることができる。 • 担当業務のリスクを理解する。 • トラブルが生じた際に上司に直ちに報告 し、トラブル回避のための指示を受けて対 応できる。 背景 • 福祉サービスは、利用者の身体に触れ、プライバシーである生活に踏み込んで提供される密着型のサービスである。また、物 販とは異なり提供される生活支援サービスは無形である。それゆえに事故や過誤が起きやすく、また、起きた際には利用者の 生命にも危険が及ぶ特徴をもつ。そのためにサービスに関わるリスクを事前に把握し、リスクに応じた対応策を法人及びサー ビス現場で構築しなければならない。 • 社会福祉法人は社会福祉や社会保険等の社会保障制度に基づいて経営されており、常に制度が変更されることによる制度リス クがある。経営者、管理者はそうした経営環境リスクを事前に把握し、組織を継続できる環境を整える必要がある。 -32- 組織運営管理 (労務の理解と管理の実践、人事制度の理解と組織への展開、財務の理解と経営への応用) 1. • • • • 2. 目的 法人及び組織がそのもてる力を出せるように適正な法人・組織の管理運営が行われる必要がある。本研修では、法人ならびに 組織の運営・管理の必須となる人事制度の運用、労務管理、財務管理について、基礎から実践展開方法を学ぶ。 人事制度に関しては、法人理念・目標を達成するための人材の管理・活用方法、人事考課、人材配置などの手法について学ぶ。 また、組織の活性化、組織の効率性をあげるために求められる人事管理についての実践的な技術が身につくことを目的とする。 労務管理においては、法人と職員との関係が円滑であり、働きやすい職場環境の整備のために必要な管理手法について学ぶ。 法人や組織の目標を達成するために階層ごとに求められる財務知識を習得し、法人経営の安定と継続のために必要な資金及び 財産の管理と最適配分方法について学ぶ。 階層別の目的 段階 役職イメージ 5 トップマネジメ ントリーダー シニアマネジャ ー (上級管理者) 4 マネジメントリ ーダー マネジャー (管理者) 3 チームリーダー リーダー (職員Ⅲ) 2 メンバーⅡ スタッフⅡ ねらい 到達目標・獲得目標 • 総合管理職として、法人・組織の理念を達成するための人事・ • 人事、労務、財務に関する計画を立て、具 体的に業務に展開する能力を身につける。 財務・労務の方針を決め、組織運営に具体的に展開するため • 法人ならびに組織の現状を常に把握し、問 の方法を身につける。 題点を見つけ出し、人事制度、労務管理、 • 法人の現状に鑑み現行の人事制度、労務管理、財務管理の問 財務計画を柔軟に運用し、変更する力を獲 題を見つけ出し、問題を解決するために必要な具体的な手段 得する。 を導き出す能力を磨く。 • 法人理念に沿った人事評価体系、賃金体系、財務方針を構築 する能力を身につける。 • 法人の方針に沿って形成された人事制度に基づいて日常業務 が円滑に遂行されるように現場の職員を指導するための方法 を学ぶ。 • 組織の予算作成、予算執行を組織の方針に則って遂行してい くことについて学ぶとともに、業務を遂行する上で必要な予 算、財務上の問題があれば、適切に見つけ出すための方法を 身につける。 • 日常業務が円滑に行えるように職員の労務を管理し、職員が 最大の能力を発揮して仕事ができる環境を整える力を身につ ける。 • 人事・労務管理の基礎的な知識を身につけ るとともに組織の人事制度、労務管理の現 状を分析し、改善策を提案できる。 • 財務の基礎知識を身につけ、組織の財務管 理を行うことができる。 • 職場の人事制度・労務管理の正確な知識を身につけ、職員が 働きやすい環境を整えるための方法を学ぶ。 • 組織の予算について全体を知り、予算管理の方法について学 ぶ。 • 職場で決められた人事制度、労務管理を業 務において遂行できる。 • 予算管理の基礎知識をもつ。 • 労務管理の基礎知識を身につけ、自身と同僚や後輩が適切な 労務環境下で働くことについて学ぶ。 • 自身とチームメンバーである同僚や後輩の 労務管理ができる。 • 職場における就業規則の意味を理解し、規則に準じて仕事を 行うことの重要性を学ぶ。 • 就業規則を理解し、自身の労務管理ができ る。 (職員Ⅱ) 1 メンバーⅠ スタッフⅠ (職員Ⅰ) 3. 背景 • 社会福祉に携わる法人に求められるのは経営の安定・発展と組織の継続である。組織がめざす経営を実現するために現場職員 からトップマネジメントリーダーまでがそれぞれの階層における業務を遂行するために必要な財務、人事、労務など法人の運 営管理に関する知識を定着させることがこの研修に求められる。 -33- Ⅲ 研修実施機関の階層別研修および専門職団体等の生涯研修制度の状況 1.都道府県・指定都市研修実施機関の階層別研修の実施状況 (ア) 都道府県・指定都市の研究実施機関が実施する階層別研修について、 中央福祉学院が収集した各実施機関の研修計画および実績に関する 資料(平成 22 年 1 月現在収集済みの資料)から分析を行った。 (イ) 収集資料のうち、できるだけ年度の新しい研修実績から集計・分析を 行うこととしたが、実績資料を収集できなかった実施団体については 計画の状況で集計を行い、50 の実施機関の階層別研修あるいは、分 野別階層別研修の実施状況を把握することができた。 (ウ) 収集資料の分析を行った 50 機関のうち、階層別研修は 48 機関で実 施されていた。とくに新任職員については、階層別研修を実施してい る 48 機関の多くで実施されている。 (エ) 階層別研修の実施に関して、収集資料に「福祉職員生涯研修課程標準 研修プログラム」の標記を確認できたのは、50 機関中 18 機関である。 多くの機関において、研修プログラムに独自性を持たせていることが 推察される。 (オ) 研修の受講料については 11 機関で確認できたが、1 回の研修につい て 500 円から 20,000 円まで幅広い設定となっている。 (カ) 分野別階層別研修は、50 機関中 20 機関で実施されている。とくに保 育分野に関する階層別研修が多く行われている。高齢者福祉分野、障 害者福祉分野の階層別研修はそれぞれ 13 機関、12 機関で実施されて おり、どちらかが行われていれば他方も実施されていることが多い。 (キ) 新任研修と施設長研修については全分野共通の階層別研修として実 施し、中堅と指導者層については保育分野を分けた形の階層別研修と して実施するなど、全分野共通の階層別研修と分野別の階層別研修を 組み合わせた形で実施している機関がある。 -34- <図表 3-1> 都道府県・指定都市研修実施機関における階層別研修の実施状況(実績または計画資料調べ) 階層別研修(職種横断的に実施しているもの) № 実施団体 1 2 3 4 5 北海道社会福祉協議会 札幌市社会福祉協議会 青森県立保健大学 岩手県社会福祉事業団 宮城県社会福祉協議会 6 秋田県社会福祉協議会 7 山形県社会福祉協議会 8 福島県社会福祉協議会 生 涯 研 修 表 記 ○ 11 群馬県社会福祉協議会 12 埼玉県社会福祉協議会 13 千葉市社会福祉協議会 14 東京都社会福祉協議会 15 神奈川県社会福祉協議会 16 新潟県社会福祉協議会 富山県社会福祉協議会 石川県社会福祉協議会 福井県社会福祉研修所 山梨県社会福祉協議会 長野県社会福祉協議会 岐阜県社会福祉協議会 23 静岡県社会福祉協議会 ○ ○ ○ 24 愛知県社会福祉協議会 25 三重県社会福祉協議会 ○ 26 滋賀県福祉人材・研修センター 27 京都府福祉人材・研修センター 京都市洛西ふれあいの里保養研 修センター 29 大阪社会福祉研修センター 大阪市社会福祉研修・情報セン 30 ター 28 ○ 新任コース、中堅コース 社会福祉施設中堅・指導的職員研修、社会福祉トップセミナー 新任、中堅、指導的 社会福祉施設新任、指導職員、施設長、法人役員 福祉保健施設・事業者等職員新任研修Ⅰ、Ⅱ、施設長 (中堅Ⅰ、Ⅱ、指導者Ⅰ、Ⅱについては、保育所を除く) 社会福祉施設ケアリーダー研修 社会福祉施設新任職員、中堅、中堅フォローアップ、指導的職 員、施設長等運営管理職員 社会福祉法人指導職員、社会福祉施設長 社会福祉行政新任職員、指導監査、中堅、施設長 福祉施設等新任、中堅Ⅰ、Ⅱ、指導的、 施設長・管理者研修(経営者協議会と共催) 社会福祉施設・社協運営管理、指導的、中堅、新任 福祉施設新任、職員研修(入所施設)、職員研修(通所施設)、 監督者 管理者、指導的、中堅、中堅ステップアップコース、新任 管理者養成課程(管理Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ) 新任、中堅、トップ 福祉施設等新任(基礎・概論編、各論編(A相談系・B介護系)、 実践編、振返り編(A相談系・B介護系))、中堅Ⅰ、Ⅱ(各論編) 新任、中堅基本、中堅専門、指導的職員、運営管理者、法人監 事研修コース〔初級コース〕、社会福祉トップセミナー 新任、中堅、指導的、運営管理 新任、中堅、共通指導、共通指導実践、運営管理、運営管理職 新任(課程Ⅰ・Ⅱ)、中堅(課程Ⅰ・Ⅱ)、指導的 主任介護職員、主任指導員 新任 新任、中堅、指導的 新任(課程Ⅰ・Ⅱ)、中堅(課程Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)、指導的(課程Ⅰ・Ⅱ)、 運営管理職(Ⅰ・Ⅱ) 新任、中堅、指導的、運営管理 新任(課程Ⅰ・Ⅱ)、中堅(課程Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)、指導的(課程Ⅰ・Ⅱ)、 運営管理職(Ⅰ・Ⅱ) ステップⅠ研修①②(新任)、ステップⅡ研修①~④(中堅)、ス テップⅢ研修①~⑤(指導的)、管理者研修①~④ 新任、中堅、指導的、運営管理 新任、中堅、指導的、管理 新任、中堅、指導的、OJTリーダー 新任、中堅、指導的(Ⅰ・Ⅱ) 36 島根県社会福祉協議会 ○ 新任、中堅、指導的、運営管理 37 岡山県福祉人材センター ○ 新任、中堅、指導的、管理 33 奈良県社会福祉協議会 38 広島県社会福祉協議会 39 41 42 43 44 45 46 47 ○ 財団法人 かがわ健康福祉機構 研修部 愛媛県社会福祉協議会 福岡県社会福祉協議会 北九州市福祉事業団 長崎県社会福祉協議会 熊本県社会福祉協議会 大分県社会福祉協議会 48 宮崎県社会福祉事業団 49 鹿児島県社会福祉協議会 50 沖縄県社会福祉協議会 ○ ○ ○ ○ 16 ○ 2 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 49 2,000~18,000 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 14 3,000~4,000 3 8 12 8 8 12 (800時間) 6 11 11 2,000~5,000 8 10 10 3 4 8 別途 18 6 18 45 9 8 新任、中堅、指導的 5 3,000~5,000 21 9 12 10,000~ 13,000 8 6000~20000 3,000~4,000 6 +別途 17 財団法人 山口県ひとづくり財団 社会福祉研修部 40 徳島県社会福祉協議会 ○ 500 12 34 和歌山県社会福祉協議会 35 鳥取県社会福祉協議会 32 神戸市社会福祉協議会 2 2 7 9 7 新任職員、中堅職員、指導的職員(係長、主任)、部門管理者 (フロアー長、部課長)、施設長・社協・事務局長、法人理事・監 事、法人理事長 新任職員共通研修A・B・C・D、中堅職員共通研修(Aコース・B コース)、主任者研修①②、施設マネジメントセミナー 新任、新任フォローアップ、中堅(基礎・応用)、リーダー職員、 ○ リーダー職員オプション 新任、中堅(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ) ○ 中堅層、指導的、管理的(21年度は新任も含め生涯研修に) 31 兵庫県社会福祉協議会 受 講 料 ○ 9 茨城県社会福祉協議会 10 栃木県社会福祉協議会 17 18 19 20 21 22 階層のわけ方 合 計 日 数 職種別階層別研修 実施の有無 高 障 保 そ 齢 害 育 の 他 新規採用A・B(社協・施設)、新任(社協・施設)、中堅(社協・施 設)、指導的(社協・施設)、施設長・社協事務局長、役員 新任 新任①②、中堅、管理職 新任、基礎、専門A 新任、中堅、指導的 ○ 新任(Ⅰ~Ⅳ)、中堅(Ⅰ~Ⅲ)、指導的(Ⅰ・Ⅱ) ○ 新任(1~5)、中堅(1・2)、指導的 新任、中堅(第1部、第2部)、指導監督、施設長、法人監事 新任指導的職員研修A・B・C、現任指導的職員研修、法人理事 長 新任、中堅、監督、運営管理、監事等 初任、指導 12 -35- 11 ○ 2 ○ 4 4,000~9,000 18 9 8 10 8,000~16,000 13 5 1,000~2,000 ○ ○ ○ ○ 13 12 ○ 20 9 4 ○ 7 2.専門職団体等における生涯研修制度等の状況 (ア) 社団法人 日本社会福祉士会(生涯研修制度) ① 生涯研修の理念・制度体系等 それぞれの会員が目指すべき社会福祉士像に向けて研修計画 を立案し研修受講を通して質の維持・向上を図ること、職能 団体は会員の専門性の維持・向上のために会員の研鑽を支援 するということを基本理念とする。これは、会員の活動分野 の広さと、それに応じて求められる知識・技術の多様性に対 応するためである。 生涯研修の体系は、基礎研修課程、共通研修課程、専門分野 別研修課程の 3 課程からなる。基礎研修課程は必修であり、 共通研修課程と専門分野別研修課程は研修計画に基づく。 生涯研修では、社会福祉士に共通する必要な力量と分野専門 的な力量をバランスよく獲得することを目指している。 現制度では、研修課程修了認定の意味づけや活用がしにくく、 研修受講など研鑽を重ねていながら制度を活用していない会 員も少なくない状況にあるため制度の見直しを行っている。 新制度の施行は 2011 年の予定である。 ② 対象となる研修・実施機関 社会福祉士試験の科目に基づく領域に準ずるもの、その他社 会福祉士として必要なものであり、かつ会員の自己研修計画 に基づいた内容の研修が対象となる。 基礎研修課程は、ガイドラインに従って各支部が主催する。 共通研修課程は、研修計画に従って受講するもので、実施機 関については、社会福祉士会以外に、国、地方自治体、社会 福祉関係団体、学会、大学等広く認めている。 専門分野別研修課程は、特定の専門性を高める課程として一 定の要件を満たす研修が指定され、必要に応じて受講する。 ③ 単位の認定 会員は、 『生涯研修手帳』に研修履歴を記録し、単位の基準に 従って定められた期間内に所定の単位を満たした場合、生涯 研修センターに共通研修課程の修了申請を行う。 -36- 共通研修課程の修了が認められると修了証明書が発行される。 共通研修課程の修了有効期間は 3 年間であり、3 年ごとの更 新が必要である。 専門分野別研修課程は研修ごとに修了認定を行っており、認 定されると認定証が発行される。 (イ) 社団法人 日本介護福祉士会(生涯研修ポイント制度) ① 内容 生涯研修ポイント制度は、会員の研修実績をポイント化して 手帳により管理するものである。このポイントによって優先 して受講できる研修が組まれるなど、インセンティブが働く 仕組みが設けられている。 生涯研修制度免除規定が設けられている。これまでに実施さ れた初任者研修等の研修について、平成 14 年度までさかのぼ り、既修了者に対して生涯研修制度の同研修を修了したもの と見なすための暫定的・経過措置の規定である。 ② 対象となる研修・実施機関 日本介護福祉士会主催、ブロック主催、都道府県支部主催研 修における研修受講あるいは発表、講師やシンポジストとし ての参加がポイント対象となる。 上記に加えて、現在検討中の専門介護福祉士、研究介護福祉 士及び管理介護福祉士分野の研修、全国社会福祉協議会、長 寿社会開発センターの実施する研修を受講した場合には一定 のポイントが付与される。 ③ 単位の認定 基準単位に受講時間数を乗じたものがポイントとして認定さ れるが、全国大会や日本介護学会等については時間数にかか わらず一定のポイントが付与される。 ポイント制度の認定を受けようとする者は、研修の要綱と生 涯研修手帳を日本介護福祉士会事務局に送付する。また、必 要に応じて他団体研修認定伺い書を添付する。 -37- (ウ) 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国保育協議会・全国保育士会 (保育活動専門員認証制度) ① 内容 1 年間の通信課程である保育所長専門講座(全国保育協議会) および主任保育士特別講座(全国保育士会)の修了や、全国 保育協議会が指定する大会・研修会の受講に対して付与され る研修ポイントと認定レポートの提出によって、全国保育協 議会・全国保育士会から保育活動専門員の認定証と認定カー ドが発行される。 ② 対象となる研修等 全国保育協議会や全国保育士会、ブロック保育協議会の主催 する大会や研修会への参加、あるいは、全国保育研究大会や 全国保育士会研究大会等での発表などに対して規定のポイン トが付与される。 ③ ポイントの有効期限と専門員認定期間 ポイントの有効期限は 10 年間である。専門員としての認定期 間は 5 年間で、この期間内に規定のポイント以上を獲得する ことにより更新することができる。 -38- -39- Ⅳ ヒアリング調査の実施結果 1.ヒアリング調査の実施概要 今年度委員会における調査研究事業として、下記概要(目的・項目等)によるヒアリ ング調査を実施した。調査は、主目的である「求められる能力と研修テーマ」の原案作 成のための一次調査と、それらに対する意見等の聞き取りも含めた二次調査の2段階の 構成とした。 ヒアリング調査は、下記の目的および調査項目を事前に連絡し、人材育成や職員教 育・研修の仕組み、考え方について述べることのできる理事長や担当理事、施設長、教 育研修部門長等の各法人より選出された回答者に対して実施した。また、ヒアリング調 査はすべて各法人(施設・事業所)への訪問により実施した。 調査研究事業 ヒアリング調査(一次調査)の概要 【調査目的】 介護、保育などの福祉職に共通する基礎能力の向上を目指した研修カリキュラム素案作成の ため、教育研修に積極的に取り組んでいる法人(事業所)の取組内容とカリキュラムの実態 を明らかにする。 【調査項目】 Ⅰ.事業所属性 ・事業所概要、 (職員数、利用者数、施設の属性等) ・事業内容(施設理念、サービス内容等) Ⅱ.職員の育成方針及び基本理念 ・組織体制と職員の階層及び給与体系 ・職員の育成理念・方針・考え方 ・階層ごとの職員に求められる職務内容と能力(一般能力、職種別専門能力) Ⅲ.研修教育制度 ・自組織内の研修制度の内容 (対象者、時期、内容 到達目標 そのような仕組みとしている理由、考え方) ・自組織内の研修制度についての改善の方向性 ・外部研修の利用について(利用している研修の内容、利用のしやすさ、改善点 等) ・外部研修の利用意向 ・研修受講に係る評価の仕組み(キャリアパスとの関連 等) 【調査先およびスケジュール】 日程 平成 21 年 10 月 9 日(金) 10 月 20 日(火) 訪問時刻 調査先法人名(本部所在地) 9:30 社会福祉法人 聖隷福祉事業団 (静岡県浜松市) 14:00 社会福祉法人 天竜厚生会 (静岡県浜松市) 9:30 社会福祉法人 こうほうえん (鳥取県米子市) -40- 調査研究事業 ヒアリング調査(二次調査)の概要 【調査目的】 介護、保育などの福祉職に共通する基礎能力の向上を目指した研修カリキュラム素案作成の ため、教育研修に積極的に取り組んでいる法人(事業所)の取組内容の実態を明らかにする。 特に福祉介護サービス従事者が共通して身につけるべき内容としてどのようなものがある のかを把握するため、高齢者事業のみならず、障害者、児童福祉等の事業者からも意見を収 集する。また、一次調査をもとに整理した「求められる能力と研修テーマ(案) 」について 意見を伺うことで、求められる能力や、コンテンツに関する内容の深化を図る。同時に、研 修で学ぶべき内容(教えてもらいたいこと)など具体的な意見があれば収集する。 【調査項目】 Ⅰ.法人(施設・事業所)属性について ・概要(職員数、利用者数、施設・事業所の属性等) ・事業内容(理念、経営方針、サービス内容等) Ⅱ.職員の育成に係る基本理念及び方針等について ・職員の育成理念・方針・考え方 ・組織体制と職員の階層及び給与体系等の実際 ・階層ごとの職員に求められる職務内容と能力(一般能力、職種別専門能力) Ⅲ.研修教育制度について ・自組織内の研修制度の内容 (対象者、時期、内容 到達目標 そのような仕組みとしている理由、考え方) ・自組織内の研修制度についての改善の方向性 ・外部研修の利用について(利用している研修の内容、利用のしやすさ、改善点 等) ・外部研修の利用意向(どのような内容の研修を希望するか) ・研修受講に係る評価の仕組み(キャリアパスとの関連 等) Ⅳ.「求められる能力と研修テーマ」について ・ 「求められる能力と研修テーマ(案) 」 (一次調査結果)についての意見 【調査先およびスケジュール】 日程 訪問時刻 平成 21 年 11 月 27 日(金) 14:00 12 月 3 日(木) 13:00 12 月 10 日(木) 12 月 11 日(金) 9:00 13:00 9:30 14:30 12 月 14 日(月) 9:00 12 月 18 日(金) 13:00 法人[施設]名(本部所在地) 社会福祉法人 湘南福祉センター [明石町保育園] (神奈川県平塚市) 社会福祉法人 南山城学園 (京都府城陽市) 社会福祉法人 依田窪福祉会 (長野県上田市) 社会福祉法人 みまき福祉会 [ケアポートみまき] (長野県東御市) 社会福祉法人 中心会 (神奈川県海老名市) 社会福祉法人 至誠学舎立川 [至誠ホーム] (東京都立川市) 社会福祉法人 宏仁会 [清風荘] (青森県東津軽郡平内町) 社会福祉法人 金津福祉会 [金津サンホーム] (福井県あわら市) -41- 領域 保育 知的 障害 高齢 高齢 複合 複合 高齢 身体 障害 2.ヒアリング調査の結果(調査先別まとめ) 1)社会福祉法人 聖隷福祉事業団 所在地 概要 静岡県浜松市中区元城町 218-26 聖隷ビル TEL053-413-3300(代)/ FAX 053-413-3314 正職員数は約 6800 名(パート・非常勤職員を含めると約 10000 人)、その内介護従事者 が約 2000 名。病院 6・健康診断施設 2・特別養護老人ホーム 12・老人保健施設 3・保育 園 9・有料老人ホーム 8 など一都七県に約 100 の施設を有し、事業部制をとっている。 ホームページ 職務経験によって階層を分け、各階層に求められる役割に応じたプログラムを提供する 「階層別研修」を実施。就職前研修より中堅研修までは事業部等によって分けた 7 つの 研修委員会、係長以上は事業団研修委員会が研修を企画運営。 介護などの職種別の専門研修は各部門会や事業部などが運営。 http://www.seirei.or.jp/hq/ (1) 組織体制 • 病院は職位と役割は一緒である。介護福祉は事業部や施設によって違う。施設長が課長や次 長・部長、職場長が係長・課長の場合もある。職場の規模に比例するわけではない。 • 職位は下から係長・課長補佐・課長・次長・部長・役員。 • 各研修委員会が主催する中堅職員研修を終了し、役職登用試験を受かった後、実際登用され 初めて職位がつく。試験に受かっていても必ず職位がつくわけではない。 • 係長の職場長は、福祉部内ではプレイングマネジャーである。係長が職場長となっているた め、マネジメントに徹しきれない。その分を育成・教育で補う必要があるし、金銭面でも補 い本人らのやる気をフォローする必要がある。 • 課長以上でもマネジメントに徹しているわけではなく、日常業務に関わる事も多い。このま まの仕組みでいいのか考える必要がある。 (2) 研修方法 • 現場、研修、現場へと繋ぐため、研修シートを利用。研修の動機づけとして、職場長は参加 者のがんばっていること、研修参加目的、年度末までの期待する姿を記載し面接する。面接 の後本人にも研修で学んできたいことを書かせ、研修へ送り出す。研修終了後、参加者は研 修で得たものを記入する。後日、現場に返した研修シートを基に職場長は参加者と面接し、 研修の学びを仕事に生かすための調整を行うという仕組み。 • 原本は本人管理(以前、施設長や職場長の意識の差により本人に返されない事もあったが、 現在はない) 。キャリアファイルに閉じるよう促す。以前は年度ごとに新しいファイルを渡 していたが、今年からは成長の流れが見えるよう各自まとめさせるようにした。 • 研修シートは財産。キャリアアップが目で見え、その時言われた事が今わからなくても、後 にわかることもある。また後輩教育をするに当たって、かつて職場長から言われた事が役に 立つ。 • 研修シートの職場長の記入は職場長自身の部下を観察し育成する視点のトレーニングにも なっている。係長・課長の研修でもこのシートの記載例を個人が特定できないように示し、 フィードバック方法などコミュニケーションの仕方に活用している。 (3) ファシリテーターについて • ファシリテーターに選出されるのは係長以上。 • 任期は 3 年。階層別研修の講義・演習・司会・グループディスカッションなどを担当する。 -42- 担当時、理論を自分の事例を用いて解き明かすよう指導している。そうする事で、自分たち が日常的にやっているマネジメントを振り返るチャンスになり、理論を学ぶ事でその必要性 (根拠)を理解する。 (4) マネジャー研修 • 事業団内の組織体制を補完するため、2008 年度よりマネジャー研修対象者の振り分けを階 層より担う役割とした。新任係長を対象としたマネジャー1 研修と、新任課長および職場長 (係長を含む)を対象としたマネジャー2 研修である。 • マネジャー1 研修はリーダーシップ・OJT(コミュニケーション含む) ・問題解決が 3 つの柱。 プレイングマネジャーとして、自分が後輩たちのロールモデルになるように教える一方、課 長の代行としてのマネジメント知識を教えている。 • マネジャー2 研修の柱は、マネジメントの原理原則とモチベーションマネジメントである。 (5) マネジャーサプリメント研修 • 今年からマネジャーサプリメント研修を新設した。役職者の役割の一つに「人材育成」があ り、それを果たすための知識提供である。対象者は、登用の時期や職位にかかわらず、現在 職場長の任を担い、受講が適当とされる職員。 (6) 研修とキャリア ・中堅研修修了者が役職登用試験の受験資格を得る条件になっているが、研修受講の評価がキ ャリアパスに繋がるのは一部の専門職種のみで、事業団内で統一したものは今のところはな い。事業団内では職員のキャリアプランの申告に自己申告書を使用し、評価制度として目標 参画システムとコンピテンシー評価がある。現行の人事の諸制度と研修を、整合性をもって 効果的に運用できるような体系化が必要であると感じている。 • 各階層に求められる役割は、1 年目は先輩の支援を受けながら与えられた仕事を遂行する。2 年目は与えられた仕事を 1 人で出来る。3 年目は後輩に仕事を教える。4 年目からはリーダ ーシップを発揮する。ここまで来て一人前といえる。しかし介護現場では、入職後数カ月で 一人前に育成することが期待されている。 • こういった役割を明確にして、人材育成・評価・処遇に反映する体系作りに着手している。 (7) 資格の重要性 • 介護福祉士の割合は平均 70%を超えているが、施設による差をなくしていきたい。 • 資格がなければ上に行けないという事はないが、4 年目でリーダーシップを発揮するために は、自身の基礎となる資格は必要である。 • 介護福祉現場では、係長に登用する時は資格を持っている人を優先するよう提案している。 (8) 研修(OJT)の問題点 ・介護福祉の専門研修として事業団の「福祉従事者研修」のほかに、現場の職員による勉強会 や外部の研修にも参加している。その学びが個人の成長や実際の仕事にもっと生かされるこ とを期待している。聖隷には法人全体で人材を育成していこうという組織風土があるが、職 員の退職や異動に伴い新入職員の早期育成を求め、十分な OJT がなされないまま一人前を 期待される傾向がある。職員個々が段階を追って大切に育てられた実感や介護のおもしろさ を味わうことが、自信ややる気につながる。職員個々の資質能力の効果的な育成につなげる ために、専門性を含めた人材育成の体系化を目指している。 -43- 2)社会福祉法人 天竜厚生会 所在地 概要 ホームページ 静岡県浜松市天竜区渡ヶ島 217-3 TEL:053-583-1115(代) 約 2,000 名 高齢、障害、保育、医療 新任職員教育と、選抜式の管理職任用前研修については総務が統括し、専門教育訓練 は各事業部・施設で行っている。資格取得支援等は法人の設置する研修センター等を活 用。 http://www.tenryu-kohseikai.or.jp (1) 職階 • 就任年数は主任で 10 年、 係長で 15 年位である。 大卒でも主任に 7 年くらいかかる事が多い。 さらにそこから 5~10 年で係長となる。管理職は係長より上である。階層は 6 階層あり一般 は 2 階層(初級・中級) 、主任・係長、課長・施設長、さらに部長級の 6 等級である。 • 総合職の昇格条件は、以前は「ひととなり」だったが、最近は研修を受けた人から人選をし ている。 • 介護職員(ケアワーカー) ・保育士は総合職のような事はしていないが、力量のある人がい ればマネジメントできるよう、次世代リーダー養成プログラムを受講する機会を設けており、 既にそこから管理職となった職員もいる。 (2) 資格の考え方 • キャリアパスについては、介護なら最低介護福祉士、大卒なら最低社会福祉士を取って欲し い。社会福祉士は基礎資格だと考える。最近は自分から進んで取ろうとする人が多い。 • 新卒採用者は福祉系大学卒とは限らないので、就職採用時に勉強を促しており、その過程で 資格取得を勧めている。通信教育のスクーリングに参加するときなど資格取得のために仕事 を休む場合は、職場がバックアップとして特別休暇を与えている。 • 介護職員(ケアワーカー)が主任になるにあたっては、介護福祉士の資格が必須である。経 験があり、人柄が良くても資格がなければならない。資格を取ると資格手当もつくので職員 には積極的に受験するよう勧めている。 (3) 入社から 1 年間の研修概要 • 採用~1 年目の研修は、法人の総務で集中的に行っている。 • ステップアップ研修は入社半年後に、半年を振り返る意味で実施している。 • また新人職員の業務に対する戸惑いや悩み、気付きなど専用のノートを使い、文章化し、担 当リーダーとのコミュニケーションに利用している。このノートに返信を書くリーダーは、 1 年間その新人を指導する人で、5 年くらい勤務した人が基準(実際は 2 年目などもいる。 人選は施設長に任せている) 。この仕組は、新任育成とリーダー育成、両方を兼ねている。 • 1 年の最後には、どれだけ成長したか・得たもの感じたことを振り返り課題レポートを提出 させる。 (4) 3 年目、5 年目の研修 • 3 年目 5 年目の研修では、現場の事より総合職としての能力を強化する。この研修に参加す る職員は大卒で今後厚生会の中核を担うリーダー的人材である。 -44- (5) 選抜型の次期管理職を目指した研修について • 今回の選抜型プログラムは 30 代が多く(35 歳前後が中心) 、一部 40・50 代が含まれる。職 種はソーシャルワーカー・事務員・看護師・保育士など様々である。 • 研修を受けたからといって必ずステップアップ(昇格)できるわけではない。今回は 1 年間 を通して 22 名が受講している。 通信教育のレポートと演習を中心とした座学を行っている。 • この中でリーダーとして引っ張っていける職員もいるが、ついていくだけの職員もおり、そ のような職員に対しては、自分がリーダーであることを自覚するよう促している。 • 選抜型研修は、全て委託しており、最後に課題報告会を行っている。 • プログラムの参加者は総務が作る指名リストによる。評価は委託先のコンサルタントや管理 者・自分達などが行い、昇格等の人事評価に結び付けている。 (6) 研修のやり方 • 最近やっている研修は、2 日間研修して課題提起と振り返りを行う形式である。1 日目の課 題を持ち帰って実践し、再び研修で確認するというのが増えている。そうすると実践の結果 がどうだったか見ることができる。 • プログラムを 3 部構成にし、事前課題を出し、当日それで臨み、事後にレポートを書く仕組 みにしようと思っている。各事業部の内部研修もこの形式が定着してきた。さらに宿題を出 すこともある。実践をしてから振り返らないと、研修の成果は確認できない。 • 発表形式にする事で、事業部ごとの取り組みの格差が明らかになった。高齢者・保育部門は 特に熱心に実践している。 (7) 外部研修について • 全社協が行う集合研修は良いと思う。ロフォスには多様な人材がいるので人材派遣制度があ ると良い。 • 集合研修だとその職員は勉強してくるが、現場の他の職員に定着するかわからない。 • 自分たちは福祉職だが、社会人でありビジネスマンであるため、普通の会社に就職して経営 学などの研修を積んだり、どこかで学んだりといった経験も必要である。特に管理職になる 人は、これから社会福祉法人のみが競争相手になるのではなく、一般の会社や医療法人が相 手となるので、福祉の知識・技術だけでは追いつけないだろう。 (8) 研修の課題 • 学んだものを実践できるスタッフに育て上げる事が重要である。業務改善・業務分析は現場 にとって大変であるが、重要である。そのため施設長が率先して行うことが求められる。 • ケアワーカー(主任クラスや総合職の人たち)が業務改善やロジカルシンキングを意識する 必要がある。そのためには福祉の勉強だけでなく、ビジネスマンとしての知識が必要である。 ただし現場の人たちにやれというのも難しく、主任クラス・総合職の人たちに早めにやり方 を教えたい。 • 効率の良い仕事の仕方、個人だけでなく組織・チームとしての仕事の回し方を研究する必要 がある。今は介護も相手と 1 対 1 での接し方ばかりに注意が払われている。 • 業務を建て直すには、組織をどう動かすかが肝心であり、企業はこの点が強い。しかし、社 会福祉の業界はこれが弱く、社会福祉の視点を持ちながら組織の一員として動ける事が重要 ではないか。特に経営者がその視点を持つのが大事であり、上から下に命令するだけという 考え方の持ち主では、組織は動かせない。 -45- 3)社会福祉法人 こうほうえん 所在地 概要 ホームページ 鳥取県米子市両三柳 1400 アザレアコートこうほうえん(本部事務局) TEL 0859-24-3111 / FAX 0859-24-3113 1,600 名 高齢、保育 ISO9001-2000 取得 年間教育研修と階層別プログラムを連動させている。自己啓発法と具体的な目標を持ち 達成感を得やすいチェックリスト(入職 3 年目まで)を用いた方法、計画した研修を実践して いる。エルダー制度を導入している。 http://www.kohoen.jp/ (1) 職員の階層 • 新人が総合職として入職したら、正職員なら資格の有無に関係なく全員介護ないしは保育に 就く。保育と介護間での人の動きは、基本的にない。 • 管理職は主任・係長・所長・課長。所長はリーダーや管理者。係長や主任が勤めている事も ある。この辺りが職名と職階がアンバランスである。グループホームなどでは、単体ユニッ トだと主任クラスで管理者となり、複数ユニットだと係長が担当する。 • それぞれの長になるのは最低主任以上で、主任以上が管理職である。大規模施設の場合は課 長が昔の寮母長で束ねる役目を負う。寮母長と施設長は別で、施設長はほとんどが部長クラ スである。 • リーダーの管理能力として求められるのは、伝えていく、繋げるスキルである。リーダーは 全体が見えている事が非常に大事である。制度の改定等の変化の中で自分たちの立ち位置を どうするのかなどを言語化し職員に提示する能力が必要である。 • 役職が上がるところで試験はない。ただし主任になる時に理事長の面接とレポートがある。 (2) 異動とキャリアパス • 異動はエリア毎に捉えており、例えば米子エリアの中に特養・デイ・グループホーム等の中 で捉える。 • 学生は就職をする上でキャリアパスと研修はとてもこだわる。最近はネットで見たりして本 法人の研修体制が整っているからという理由で就職が増えてきた。研修制度があり研修を受 けることで自身を成長させる機会があることは、継続して勤める動機になる。 (3) 教育投資 • 研究発表会を柱に、他所にも積極的に発表している。売上の 1%は研究開発費。そこから新 しいサービスが生まれる。 • 発表会と並行して、組織として強くするために自己啓発・自己研修をきちんと実施している。 (4) エルダー方式とチェックリストによる教育 • エルダーの仕組みが一番の特徴である。先輩が新人を教育し、短期間に現場で働けるように する。チェックリストを使って、エルダー方式で指導を受けた 1 年間が仕事の土台になるよ うにしている。 • 全ての職員がエルダーの経験を持つ。2 年目からはエルダーとして人に教える事を行ってい る。2 年目から 3 年目は、新人チェックリストに基づいて責任を持って仕事ができることを 目指す。 -46- • このためエルダー機能を重視し、チェックリストを浸透させていかなければならない。 • 施設内研修は、基本的に施設の主任以上がすべて講義、自分の言葉で説明することが課題で ある。取りまとめは研修担当・各エリアの課長・限られた施設長が行い、作った資料をその 人たちに出し、それを元にしてみんながまた作りかえて提出している。 (5) 研修の組み方 • 現場を支援していくための各エリアの生活支援委員会が、一番現場をわかっているので、そ こからテーマを出してもらい、施設長や教育研修の担当・課長などで構成する研修委員会が、 研修テーマを決めている。 • 現場の情報を集めて検証して、必要な研修をし、必要ならチェックリストの項目に加え、新 人研修の項目として反映される仕組みである。 • 今の課題はリーダー層の育成にある。リーダーは組織を語り、現場を語ることが大切である。 リーダーとして伝えることが語れないと駄目である。 • メンタルの研修も重要である。 (6) 指導者研修会の実施 • リーダーへの研修は、指導者研修会である。施設の経営的な視点をもち、地域の中での役割 を理解し、さらに新人やエルダーからリーダーまでの人たちとコミュニケーション出来る能 力を磨くことを目的としている。 (7) コミュニケーション研修 • ヒューマンコミュニケーション研修は、接遇も含めて、まず自分を知る、聞く、という内容 を実施している。 • 専門家を呼び、一定期間来ていただいて、その先生に指導者養成をしてもらう。そのメンバ ー6 人が毎月各エリアに出向き研修を実施する。主任級、施設長代理が講師をし、受ける人 は新人からである。 • 外部講師からリーダーシップを学ぶコミュニケーション研修もある。コミュニケーション研 修は繰り返しが大事である。例えば同じ内容の研修を 2 年後に受けても、その時によって受 け止め方が違うので、受ける意義がある。例えば、職場内の人間関係、利用者との関係性・ 家族などでつまづいている時などは、以前に感じなかったことを研修から学ぶこともある。 • コミュニケーション研修は介護以外の職員も共通している。誰でも研修に参加可能である。 (8) 受けたいテーマを受ける研修 • 職員として最低受けなければいけないものと、 それぞれの自主性に任せる研修と 2 種類ある。 • 勉強したいものはした方がいいので、研修対象が指導者・管理者層中心の場合でも、参加し たい人は参加出来る仕組みになっている。 • 施設外では、毎月県内外の研修で参加したほうがいいと思うものは案内を出す。その結果、 自主研修に出かける職員も多くなった。 -47- 4)社会福祉法人 至誠学舎立川(高齢事業本部 至誠ホーム) 所在地 東京都立川市錦町 6-28-15(至誠ホーム) TEL 042-527-0031 FAX 042-527-2646 概要 正職員 190 名、契約 320 名 新人は原則的に全員介護職として入職、チューター制度 (指導指針策定)、年間 30 回の自主研修会・勉強会[就職情報サイトより] 人事評価制度(成果期待給制度、チャレンジシート)[至誠ホーム HP より] ホームページ http://www.gakusha.org/(法人) http://www.shisei.or.jp/index.html(至誠ホーム) (1) 事業状況 • 法人は児童養護事業、保育、高齢者の 3 つの部門に分かれる。事業規模は児童が 2 割、保育 が 3 割、高齢者が 5 割である。 • 高齢部門は、正職員 190 名、契約社員 330 名で、520 名の規模である。 • 昭和 26 年(1951 年)に高齢者福祉事業を開始し、間もなく 60 周年を迎える。近年では、 平成 15 年に養護老人ホームをケアハウスに転換、児童養護グループホームを包括した地域 密着型世代交流・複合型拠点施設の開設等。 • 法人内の児童養護、保育との人事異動はほとんどないが、各高齢福祉事業内での異動は頻繁 に実施されている。 • 事業内での異動は原則として正職員が対象である。 • 正職員の採用は児童、保育、高齢の事業毎に採用を決めている。 (2) 研修プログラム • 採用試験終了後に内定者に対して内定者研修を数回、入職前の 3 月に事前研修を実施してい る。 • 内定者研修の目的は、内定者の同期での仲間作りと大学生から社会人への切り替えをさせる こと、さらに内定者をつなぎとめることである。 • 内定者研修は茶話会を中心として、簡単なワークを行う程度の研修内容である。 • また、内定者には職場を事前に知ってもらう目的でアルバイトをさせている。 • 新任直後は、チューター制度によって先輩が新入職員を指導する。チューター制度は効果的 であり、新人の育成に役立っている。 • チューターは常時新人について指導するわけではなく、日々の仕事のローテーションの中で 指導する機会を作り、日々日常的な課題は職場の先輩が適宜指導する体制をとっている。 • チューターは年に 3 回新人の業務のチェックを行う。 • チューターは、入職後 2,3 年目の職員が任命される。 (3) 職階・給与と研修 • 組織の階層体制はメンバー、副主任、フロアー担当となる主任(リーダー) 、主任をまとめ る統括主任(セクションマネジャー)、センター長(在宅) 、園長(施設) 、統括事務局長、ブロ ック長、ホーム長の構成である。 • 給与は成果期待給を取り入れ、評価結果は昇格、特別昇級、賞与に反映させる。 • リーダー研修は主任以上に対して施設内で実施している。 • 副主任、主任、マネジャーに対しては、階層別研修を実施。コーチング等を研修するととも に主任同士の仕事が分かるように各主任の立場を理解する研修、フロアー間連携のための研 -48- 修を実施している。 • また主任層には対人援助技術だけではなく、人との付き合いやコミュニケーションをテーマ とした研修やマネジメントの基礎についても研修を実施している。主任クラスには経営的視 点が求められるためである。 • この他に職員の自主研修会があり、主に援助技術的なものを中心に実施している。講師は現 場リーダーや、外部講師などである。 • 園長、ブロック長などの管理職の研修は、一般企業の経営者を対象とした社外講座を受講し ている。例えば「人材創造フォーラム」などを活用している。 • 園長、ブロック長には、ファシリテーターとしての機能も期待している。 • 至誠ホーム「職員の誓い」には自己啓発することが入っており、東京都社会福祉協議会の高 齢者福祉研究大会(アクティブ福祉 in 東京)等で研究の成果を発表する機会を設け、自己 研鑽している。 • 契約職員に対しても研修を実施している。契約職員はそれぞれの職場採用となるので、法人 の理念などを理解する機会がないため、集合研修で介護保険制度や認知症等の講習と一緒に 法人の理念についての研修を行っている。現在契約職員の育成制度構築のため公的補助を受 け進めている。 (4) 求められる能力と研修テーマについて • 援助職は原則として最初は特別養護老人ホームの介護職として配置し、基礎的な介護を身に つけさせる。事業全体を理解する機会として、新人教育では秋に全ての職場で実習をする職 場内研修を行っている。 • コーチングについては、第 2 段階位で必要な技法である。根拠を持って説明できる人になる のが目標である。 • 職階の 1 段階 2 段階は実務能力中心に現任研修を実施し、4 段階 5 段階ではコンセプトなど 抽象的で幅の広い研修を行う必要がある。 • コンプライアンスについては、各段階での認識を向上させるように全ての階層(もう少し上 の段階、下の段階)に拡大することが必要であると思う。 • 家族や地域への支援は、第 2 段階からの(より上の仕事)業務になる。 • キャリアデザインは重要であり、意欲をもって入職した職員には 40 代くらいまで、第 3 段 階に入った段階にキャリアデザインについての研修があってはどうかと考えている。ただし、 介護職をそのまま続けるかどうかは 2 段階で決まるのかも知れない。また女性はライフデザ インとの関係も注意しておく必要がある。 • 「知識・技術の理論化を図る」ことは 2 段階から必要である。 • 幹部には研修がまだ不十分であるのかも知れない。生産性を高めるということではなく、サ ービスの質を上げることを目的として事業の拡大ができる能力、経営感覚を身につけさせる 研修も必要だと考えている。 • 最後に、福祉事業における人材育成は非常に重要なテーマだが、それは法人自体の内包する 福祉理念がその基盤に捉えられていなければならないと考えている。 -49- 5)社会福祉法人 中心会 所在地 神奈川県海老名市杉久保南 3-31-6 Tel:046-237-2052 / Fax:046-237-2057 概要 正規 131 名、非正規 274 名 高齢、児童入所 ISO9001 取得 非常勤職員・契約職員への研修制度(法人 HP に記載) ホームページ http://www.chusinkai.net/index.html (1) 事業概要 • 児童養護施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、老人居 宅介護等事業、訪問入浴事業等を行っている。 • 各事業を事業推進本部が統括し、会計、財務、人事等は同本部の総務部が、教育・研修は同 本部の品質管理・教育研修部が研修担当をしている。 • 本年度から品質管理・教育研修部を法人本部内に設置し、職種別の研修の実施を始めた。(職 種別研修自体は以前より実施) • 平成 21 年 6 月 1 日に、 「えびな北高齢者施設」を新規に開設した。特別養護老人ホーム、短 期入所介護、デイサービスセンター、老人居宅介護事業と在宅事業として訪問入浴サービス を行っている。 (2) 中心会の研修体制 • 介護は実務的な仕事であり、理論と実践の両方が重要である。援助は利用者の特性によって 異なり、介助者は個別性を理解するように研修などで伝えている。 • モデルを使っての研修で出来ることでも、実践で使えないこともある。その点に配慮した実 践的研修教育を目指している。 • 仕事に対する志は職員それぞれであり、仕事に対する意識は法人が育てることが必要である。 • 仕事を円滑に進めるためには長、リーダーをしっかりさせることが必要であり、リーダー教 育に力を入れている。 • リーダーに求められるものは、スキルとマインドであり、リーダー能力の両輪でもある。両 方の能力が身につく研修を行っている。 (3) 職階と研修体制 • 一般職は介護の最前線で働く職階で 1 級から 3 級までの職員である。4 級~6 級が部署の長 となり、特養では介護課長、児童養護施設では児童養護課長と現場の支援業務のリーダーで あり、責任者である。このクラスのリーダーは職員 10 名に対して 1 名の割合で設置してい る。 • 資格によってスタートする等級は異なり、介護福祉士は 2 級、介護支援専門員は 3 級からス タートする。 • 7 級~10 級は施設長、部長などの管理職である。 • 新入職員はすぐに業務のローテーションに入ることになるため、入職前からの研修を行って いる。3 月 15 日ころから 2 週間の研修を行う。 • 事前研修では、法人の理念の理解、仕事の進め方、専門分野別に分かれた演習を実施してい る。 • 着任後OJTで仕事を覚える。新入職員も即戦力として考えている。 -50- • 新任職員には夜勤などの場合に先輩職員をつけ、仕事を覚えるように工夫している。 • 介護サービスという一連の動きそのものに 1 年目、3 年目で区別する内容はない。例えば、 1 年生は食事介助をしなくてよい、配下膳のみでよいということはないし、排泄介助そのも のにも経験年数でやる、やらないという仕事の区別は存在しない。そのため、1 年目でも仕 事を限定することはなく、3 年目と同じ仕事を実践させる。先輩である 2 年目職員、3 年目 職員は新入職員の指導に当たる。 • 社会福祉士、介護福祉士の実習生の受け入れを、入職 2~3 年目の職員に担当させる。教え ることで職員自身の研修となる。 • 新入職員も含め若手の職員が困った時はその業務のリーダーである課長、課長補佐に相談す るように指導している。エルダーを否定しているわけではない。エルダー体制がとれないこ ともあり、その部署の長である課長らが指導監督職という任務を背負っている。 • 課長補佐、課長は職員の相談を受けることが仕事で、相談を受けて若手職員を育成するリー ダーシップを求めている。 • 現在、管理職は不足しており、新施設を立ち上げたこともあり、課長になる人材も不足して いる。福祉職は専門職志向が強く、管理者にならない人も多い。 • 管理職には、管理職になるという動機付けをすることが必要である。 • 1 年目は指導されながら仕事をし、言われたことを言われたとおりにするレベルである。 • 研修は内部で行い、介護の基礎等を職場ごとに行っている。研修回数は年に 4 回である。 • 課長などのミドルクラスの職員に研修を行っている。モチベーション、コミュニケーション、 チームのあり方などについて研修を行う。また外部から講師を招くこともある。 • 業務の品質管理とリスクマネジメントのために品質管理部長がチームを編成し、6 月と 11 月に各部署を巡回し、品質管理指導を行う。 • 福祉に仕事を求める人は競争がないことや穏やかな職場を求めている人が多い。また、見返 りを求めている人が福祉職に多い。つまり、利用者からの感謝や評価( 「えらいですね」 「立 派ですね」など)などである。 • しかし、福祉職も他の仕事と同じように競争もあり、職場での仕事は激しいことも多い。当 社では職員の仕事へのモチベーションを維持するために「FISH」と呼ばれる研修を行って いる。 「FISH」はシアトルにある魚市場を題材にし、環境の厳しい中で、仕事を楽しく前向 きに行うための技術や方法を身につけようとするものである。 • 楽しく前向きに介護職をこなすためにセルフエスティーム(自己評価、自尊感情)を向上さ せる研修を受けさせている。自己概念が正しく評価されれば仕事に対して前向きになり、充 実した質の高い仕事行うことができる。セルフエスティームを上げる研修に力を入れている。 (4) 求められる能力と研修テーマについて • 所長クラスとなる第 5 段階は企業でいう支店長や店長のイメージである。企業の幹部と変わ りないイメージでトップ層には研修をしている。 • 中堅職員である係長、課長補佐レベルからセルフエスティーム研修を行っている。自己重要 感、自己有能感、自己好感をあげることで利用者や部下を有能で大切な人として好感を持っ て対応することができる。 • セルフエスティームが高いと柔軟な姿勢が生れ、仕事にも柔軟に対応できる。今回の階層研 修にセルフエスティームをいれてはどうか。 • 階層研修でメンタルヘルスが入っているが、仕事と向き合えば当然ストレスはかかるもので ある。メンタルヘルスというより、仕事でのつまづきを防ぐための研修が必要と思う。 -51- 6)社会福祉法人 宏仁会(高齢者総合福祉施設 清風荘) 所在地 青森県東津軽郡平内町大字小湊字薬師堂 63-23 Tel:017-755-5531 / Fax: 017-755-5532 概要 法人独自の研修体系「清風荘研修機構」の構築、「新人教育」の強化等 ファーストステップ研修等への積極的取組 職員 150 名 ホームページ http://www.s-care.jp/ (1) 事業概要 • 昭和 58 年に法人が設立され、特別養護老人ホーム(50 床) 、ショートステイ(2 床) 、ミニ デイサービス(5 名) 、法人独自の配食サービスで事業をスタートした。 • 現在は、2 つの特養を中心にデイサービスやホームヘルプ、訪問看護など、各種の在宅サー ビスを展開する高齢者総合福祉施設となった。 (2) 職員の採用について • 専門職として、あるいは組織人・社会人として職員を育成することが必要である。 • 高齢者福祉のスペシャリストとしての研修取り組みと、社会人として特に福祉を生業とする 人間としてどのような姿勢や生活信条をもって生活していけばいいのか、そうしたことを教 育しなければならないと考えている。 • 介護の仕事はキツイものでもあり、モチベーションを維持し、支えていくことが不可欠であ る。そのためには雇用の安定が重要であると考え、職員の採用をしているうちに、結果とし て正職員比率が高くなってきた。 • 人材を『人財』として称するのは、組織にとっての人的な財産としての視点以上に、地域社 会にとっての将来的な意義を見出しているからである。従って、レベルアップは当然のこと として組織内のキャリアアップに言及しているのではなく、広義のキャリアアップとして広 く他組織においても介護の専門職となりえる人材の育成を主眼としている。 (3) 職員育成について • 総事業費の 1%を教育研修費として、職員に権限を委譲し自由に研修をさせている。 • まず、個人の能力が向上していくことが必要。成長させられる土壌が法人内にないといけな い。それがなければ人材が介護以外の業界に流出することになることもあるが、そうならな いように土壌をよいものにしていかなければならないと考えている。 • 職員が育つには、自分がどのような職場環境に適しているのか、それぞれの職員が自分で見 極めていくことも必要であり、 『働く』という意味そのものを理解する必要がある。 • 職員は、新人の時から、地域に出してニーズをくみ上げさせている。社会福祉法人は、地域 に役立つものであり、地域に開放していくものであるということを職員に徹底しており、一 住民として、暮らしやすく、自分が年を取ったとき指向していた生活ができるか、そのよう な介護で良いか考えるように話している。そのためには、様々な人々とかかわる接点が必要 で、それを作っていく必要がある。それによって、業務改善等を図る上での様々な問題もお こるが、トップや指導者・監督者層は権限を持ち、そして責任をとる覚悟がないと、積極的 に職員の背中を押すことは難しい。積極的に進めるに当たっても、組織としてのしっかりと した支持が不可欠である。 • 職員を一人前にするのは真剣勝負、常に職員の意識がどこにあるか、観察を怠ってはいけな -52- い。職員が伸びる瞬間がある、それを逃さないようにしないといけない。初期の教育がとて も大切。また、辞めたいと思う引き金は常在しているが、その観察が重要であり、最悪を最 少に止めることができる。 • 新人教育を仕掛けとして、中間層のモチベーションを上げることになる。ケアの質向上の取 り組みへのスイッチである。職員の教育は、やり続けなければいけない。 • 組織の研修部門の経過としては、新人教育を整理したところで、管理職研修の必要性を強く 認識することとなった。新人研修は、論理的に組み上げられたが、管理職研修は試行錯誤で 様々なものを組み上げてきた、事例中心で生々しくディスカッションする方法が現行の方法 である。 • 上位役職への登用には、試験等の関門は設けていない。近いうちに、その規準と方法を定め る準備を進めている。現状は、役職が与えられて、それになじんでいくというのが実態。レ ベルが到達したのでポストにつけるという形ではない。近年の事業展開のスピードが速かっ たためである。 • また、基本的に職員教育の姿勢として、競争させて落とすための教育ではなく、どの職員も すべてすくい上げて、自己実現していくための環境づくり、サポートを教育プログラムとし て作ってきた。 • 年功序列で経験を積み上げポストにつく方法とは別に、抜擢型は、若くても「見なしポスト」 につけて多様な経験をさせる。早期に指導役・監督役である第三階層第四階層を育てる必要 があったため。また、もう一つの理由は、女性特有の結婚や妊娠出産というライフイベント による成長段階での中断によるリスクを避ける目的もあった。早期に経験をした場合には、 カムバックした際にも有利である。判断は、理事長のピックアップである。試行的に学習能 力が高い人間を、研修機構の担当の職員として抜擢した。 • 長いスパンでみれば組織として「教育」に時間をかけることは最大のリスクヘッジになる。 • 未だに、社会のなかでは、特養は『入れたい人はいるが、入りたいところでない』という、 イメージがある。また、仕事がない場合には、仕方なく介護の業界へ、という風潮も無いわ けではない。それを変えていくためにも、現在の職員には品位ある労務姿勢を望む。 (4) 求められる能力と研修テーマについて • 新人は 3 年までと考えている。中間層は指導職であり、ユニットリーダー・小グループリー ダーあたりからであるが、明確な基準は先に述べたように現在のところは曖昧である。 • その層は、プレイングマネジャーである。レベルアップのための研修が最も必要とされる層 でもある。この階層を丁寧に指導育成していく必要がある。組織の中でも、色々な役割と責 任を負わされる年代なので、監督者はその調整をしていないと、心が折れやすくなるので、 注意が必要である。 • 人を育てる人を育成し、その人が適切に指導できるためには、教材が不可欠であると考えて いる。尊厳あるケアを目指すなら、尊厳あるケアをできる人材を育成できるよう、尊厳で貫 いているようなテキストが必要である。担当するのは少人数の職員なので、詳細なものが必 要である。小さな法人のできそうな事例を取り上げることで、チャレンジしてみようとする 法人が出てくるのではないか、そうした幾つかの手法を示さないと、介護の専門性を向上さ せる制度上の仕掛けが活きてこない。 • また、指導職以上、監督職・管理職が、どう成長すべきか、そのモデルも少ない。 • リスクマネジメントは全階層に、またコーチングはもっと中間層にしてはどうか。 • 実践者の研究については、発表すること、自分のしていることの振り返り、など価値がある。 新人であっても、どこでも必要。研修者の発表とは違うので、新しいものである必要はない。 実践の証明、存在の証明である。 -53- 7)社会福祉法人 依田窪福祉会 所在地 長野県上田市下武石 776 番地 1 TEL:0268-85-2202 FAX:0268-85-0070 概要 高齢 法人理念「地域の方々の安心・安全な自立生活の支援」に基づく「サービスの質 に対する安全」としての「職員教育」「新人事制度の確立」「ISO9001 取得」 職員数 140 名、うち正規職員約 80 名、非常勤職員 50 名 ホームページ http://www.janis.or.jp/users/tomosibi/index.html (1) 事業概要 • 依田窪福祉会は、依田窪南部の 3 町村(旧長門町・旧武石村・旧和田村)の行政主導によっ て平成 8 年に設立された。 • 職員 140 名(常勤 80 名) 、入居者は 50 名、特別養護老人ホーム 45 名、在宅 100 名程度で ある。 • 平成 9 年 4 月開所の特別養護老人ホーム「ともしび」を開設し、その後、3 町村の社会福祉 協議会からホームヘルプ事業、デイサービス事業などが移管され、10 を超える事業を行って いる。 • 平成 9 年 4 月 依田窪特別養護老人ホームを開所し、以降、配食サービス、ホームヘルプサ ービス、デイサービスセンター(長門、和田) 、介護なんでも相談室、長門デイ民家、宅老 所鳥屋、デイサービスセンター大門、宅老所上本入、グループホーム和田、デイサービスセ ンター長久保を開設し、地域に根付いた高齢者介護を進めている。 (2) 依田窪福祉会での職階別の研修状況 • 本法人とみまき福祉会がともに行政立ということから研修を共同で実施し、法人間連携を始 めた。みまき福祉会の総務担当(現施設長)が本法人でリーダーの研修を受けることを決めた ことが契機である。 • 新任職員は 2 年程度までである。試験を受けることで等級が上がる仕組みとなっている。等 級は 1 等級から 5 等級まである。 • しかし、管理者の試験は明確にやっていない。1、2 等級は必ず試験を行っており、試験は筆 記試験である。なお、3 等級は筆記試験と面談が含まれる。 • 試験は問題をオープンにし、身につけてほしい内容を職員に示す目的でも試験を活用してい る。 • 管理職は、労働法上では 4 等級以上であるが、運用上は 3 等級から管理職としている。管理 職手当は 3 等級からである。 • 3 等級は総務本部付担当者、宅老所管理者、小規模デイサービスの管理者が管理職で 3 等級 に相当する。 • 昇格試験の受験資格は常勤になることが条件であり、常勤職員はフルタイムで働くことがで き、夜勤もこなせることが条件である。常勤になるには正規職員登用試験を受ける。正職員 になって 2 年以上経てば 2 等級にあがる(試験あり) 。常勤の新卒採用は 1 等級である。 • 役割行動と人事考課表がリンクしている。職員が見れば役割と評価基準が分かる仕組みにな っている。 • 新任は 1 等級で、新任研修があり、業務要件がその際に示される。エルダーはいないが、技 術指導員がおり、業務手順書を徹底している。新任研修のあと半年後に研修が再度ある。み まき福祉会と合同で研修し、技術などの定着度を確認する。 -54- • 本法人では半年を過ぎれば一人前の職員として扱っている。最低 2 年間は 1 等級で仕事し、 2、3 年で 2 等級を受ける。給与面で変わるので大半は受験する。 • コンサルタントの力を借りて等級別の役割基準と人事考課表を作って運用している。役割基 準書に書かれている能力はその等級になった際に持っているべき能力であり、職員の職務目 標となっている。 • 施設長は社会福祉士など国家資格の取得が基準となっているが、取っていない施設長もいる。 • 4 等級は管理者であり。明日を見て仕事する管理者で、3 等級はプレイイングマネジャーで ある。4 等級以上はブロック長となる。実務だけではなくマネジメントを求められる。 • 階層研修は新任研修のみである。中間層の教育が課題である。職員に全国水準の研修を受け させたい。例えば本法人の 3 等級職が世間の水準でどの程度のレベルであるかを確認する意 味でも社外の研修を受けさせたい。現在の全社協の生涯研修は役に立つ。 • 基礎研修は大学の基礎講座に匹敵している。福祉のきわめて基礎的なことを新任職員や中途 採用職員には教えている。 • 基礎研修は社会福祉士の試験対策講座も兼ねている。福祉では資格がない人が働いている。 医療ではありえない状況である。福祉業界は熱心に勉強する人が多いが、福祉の基礎ができ ていないことが多く、基礎研修はその知識の補てんに活用している。 • 一方、テーマ研修は日々の業務に基づいた研修を中心としている。同じ研修内容を何度も職 員が受けられるようにしている。仕事の能力によって同じ研修でも、得る内容が異なる。そ の点を重視している。 (3) 求められる能力と研修テーマについて • 燃え尽き症候群は福祉職の宿命的特性のような気がする。福祉職は人の役に立ちたいという 強い思いがあり、この気持ちの裏側には「自分も大切にして欲しい」という思いがつよい。 その結果利用者からの「ありがとう」等のフィードバックが得られないと落ち込んでしまう 傾向がある。 • その意味でストレスマネジメント、メンタルヘルスは重要なカリキュラムである。本法人で は、職員に対して、 「見返りを期待すると自身の心がもたない」と常に教えている。 • 仕組として、研修というより OJT で技術指導員が職員をクールダウンさせることをやって いる。部下や後輩が落ち込んでいる時に心理的支援をすることが上司の役割である。 • 現場では技術指導員と人事担当者が職員のメンタルのケアをしているが、実際に行っている ことはスーパービジョンであり、上司にはスーパービジョンができることが重要である。 • トップがこの仕事の全体像を把握していないことがあるのが福祉業界である。社会福祉士の 資格が福祉業務の基礎となるので、基礎研修において福祉の基礎を継続して教えている。資 格は福祉職の基礎となるので、取得し、職能団体に加入すれば手当を出している。 • チームメンバーシップは各階層で学ぶべきである。財務、労務はユニットリーダークラスか らある程度の知識を持っておくべきで、予算を積み上げる場合にも必要な知識である。した がって 3 等級くらいから労務、財務を学んでおく必要がある。 • 求められる能力に掲げられている言葉の定義やその能力が出された背景について解説が欲 しい。 -55- 8)社会福祉法人 みまき福祉会 所在地 長野県東御市布下 6 番地 1 TEL:0268-61-6001 FAX:0268-61-6003 概要 新人・中堅の「階層別」、スキルアップ等の「課題別」各研修会を依田窪福祉会と連携して 実施している。 職員 150 名、正規 63 名、常勤臨時 47 名、短時間臨時 40 名 ホームページ http://www.cpmimaki.or.jp/ (1) 事業概要 • 平成 5 年に法人が設立され、日本財団(財団法人日本船舶振興会)の地域福祉創造プロジェ クトのケアポート事業の 3 番目のモデル事業として平成 7 年 4 月にケアポートみまきがスタ ートした。 • 現在、特別養護老人ホームであるケアポートみまきを中心とした施設サービス事業と、デイ サービスを中心とした通所事業、居宅サービス事業、健康づくり事業を展開する法人であり、 一般財団法人身体教育医学研究所も併設されている。 • また、健康づくりやリハビリテーション機能を持つ収益事業としてプールを運営しており、 地域の子どもから大人までの健康増進機能を持つ。 • 正職員は 63 名。常勤臨時職員が 47 名、臨時職員が 40 名、合計 150 名。 (2) みまき福祉会での職階別の研修状況 • みまき福祉会は施設長をトップに上記の事業毎にサービスマネジャーが置かれている。他の 施設でいえば施設長は総合施設長であり、サービスマネジャーが施設長に相当する(本年か ら配置) 。 • その下に施設やサービス種類別の事業部門があり、その部門の長が主任である。管理職はこ の主任以上である。 • 各事業部門の主任とサービスマネジャーは兼務している。筆頭の主任がサービスマネジャー である。 • なお特養についてはユニット毎にリーダーとしてサービスマネジャーの下にエリアリーダ ーが置かれている。 • 正職員の採用は国家資格を取得していることが条件となっており、全員が介護福祉士などの 国家資格取得者である。新卒採用の場合も国家資格をとれなかった場合は正職員としては採 用されず、準職員として採用される。常勤臨時職員は正職員とほぼ同じ働き方である。常勤 臨時職員から正職員になるには 6 か月の試雇期間を経て主任からの推薦を受けて採用される。 • 正職員になるために国家資格取得を取るための研修を行っているが、近隣の依田窪福祉会で 行われている基礎研修に参加させている。 • 準職員は給与制で常勤臨時職員、臨時職員は時給である。 • 新任研修は、採用直前の 3 月に集中研修を行っている。また、着任後に新任研修を法人内で 実施している。 • 2 年目、3 年目からは現任研修を受ける。依田窪福祉会との共同研修で、テーマ別研修、中 堅職員研修などを受けている。 • 新任期間は 1 年である。3 月に合同研修を行う。正職員、臨時職員も受講する。 • 新人研修の次の研修、あるいは試験などは無く、研修を受けたあとのレポート提出はある。 • 2 年目 3 年目の研修が大事である。現在は現任者研修に振り替えている。繰り返し同じこと -56- を受けるケースもある。介護技術も新しくなってくるのでベテランも同じ内容の現任研修を 受けている。 • 依田窪の研修リストをすべて職員に見せて、事業所ごと及び本人の判断で研修に参加する。 研修派遣の最終判断は主任が決める。外部の件数へ行く場合は施設長の判断も入る。 • 職員は階層ではなく、テーマで研修を受ける。研修の回数は職員間で差がある。研修に行か ない場合は評価が下がる。研修はあくまでも自己研鑽として位置づけられている。 • 主任になるための試験はなく、施設長、理事長が判断をして決めている。月 1 回のサービス マネジャー以上の経営会議で個人の力量などについて検討し、そこで情報を得て選任してい る。ポストが空かないとなれない。制度を新たに作って行きたい。主任からサービスマネジ ャーを選ぶ場合も同じである。 • 人事考課シートがあり、全職員用と主任以上のものがある。それぞれに必要な能力は総務本 部で作っている。本人評価と主任評価をして、事務長が確認し、最終的には常務理事が確認 する。評価ランクは本人にもわかる。 • ランクは SABC に分かれ、賞与のときに結果を本人に伝える。賞与で差をつけるが、基本給 アップにも反映させている。 • 自己申告書は年に 1 回提出させる。本部計画、事業所計画を受けて個人の自己申告をしても らう仕組みである。本人の目標との整合性を取るようにしている。 (3) 求められる能力と研修テーマについて • 主任は 3 段階で、サービスマネジャーが 4 段階、施設長が 5 段階。 • エルダーシステムは無いが、メンバー全員で指導する。余裕があればエルダーシステムのよ うなことも考えたい。 • 介護現場の従事者は年齢の幅が広く、年齢差が大きいため若い世代に教えることが課題とな っている。年齢階層がそろっていない小さい事業所は多い。 • 内部でメンタルヘルスはやってきたが、うまくいかない。専門医による職員個別対応の方が 良い。メンタルやモチベーションなどは一つの事業内だけではできない面があるのではない か。 • 主任クラスと同等の職員が研修リーダーを行っているが、現場職と兼務になっている。 • 接遇研修は職場単位で行っている。一人が社外で研修を受け、職場で研修を行っている。 • 法人の考える研修とスキルアップのための研修の両方を目指して行きたい。 • 離職を防止するための人材育成をしていきたい。そのために研修担当を置きたい。 • 施設長の研修では、社会福祉懇談会、全社協の研修などに参加しているが、公益性を考えな がら施設をどのように方向付けるかが課題である。 • 理事の研修も必要。県社協の視察研修はあるが近隣でやって欲しい。テーマとしては今後の 展望やマネジメントが中心となる。 -57- 9)社会福祉法人 南山城学園 所在地 京都府城陽市長池五社ケ谷 14-1(法人本部) TEL 0774-54-7210 FAX 0774-54-2117 概要 知的障害、高齢 障害領域(知的障害者入所更生施設)を基盤とした法人設立 パート職員・準職員研修 採用 1・2 年目、3~5 年目(合同)フォローアップ研修、管理職員研修等の階層別実施 ホームページ http://www.minamiyamashiro.com/ (1) 事業概要 • 知的障害者の入所更生施設として昭和 40 年にスタート。その後更生施設を拡充するととも に障害者の高齢化への対応を始める。京都府下で初めての高齢者棟を設立した。 • 昭和 59 年には知的障害者グループホームを開設し、さらに知的障害者のデイサービスセン ターなどの在宅生活支援サービスを展開している。 • 地域の高齢化に応じて介護老人保健施設を開設し、さらに地域ニーズに応えるために就労支 援、地域生活支援サービスを展開している。 • 職員数は 400 名で、正職員が 180 名、準職員 100 名、パートタイムが 100 名である。 • 利用者は障害入所施設で 280 名、老人保健施設が 100 名、通所の障害高齢で 100 名~150 名、グループホームが 50 名である。 (2) 南山城学園での職階別の研修状況 • 新任職員は定期採用を 4 月に行う。新任教育は 2 週間のオリエンテーション、次の第 1 土曜 日に接遇等法人主催の横断研修を実施している。 • 入社前の 7 月頃から月 1 回の事前研修を実施。 (内定辞退防止の目的もあり法人本部にて実 施。 ) • 入社後は新任職員を対象とした法人主催の研修を月に 1 回のペースで実施、さらに知的障害 施設、高齢者施設それぞれの各施設で月 1 回の研修を実施。新任は月 2 回のペースで研修す ることになる。 • 月 1 回行われる法人研修は OFF-JT 形式の研修で、外部講師の招聘、または施設長、理事な どが交代して担当している。テーマとしては接遇マナー、モチベーション、メンタルヘルス などである。 • 施設での研修は OJT に近い研修で、例えば自閉症についての研修などを実施。社外研修に 出ることもある。 • 2 年目は年に 4 回の横断的研修があり、施設内での研修も受ける。新任と同じような内容の 研修を繰り返し 2 年目も実施している。チームワーク、モチベーション等のテーマが多くな る。2 年目の職員に悩みや課題の話しをさせ、グループでディスカッションする形式をとっ ている。 • 3~5 年目はフォローアップ研修という位置づけ。月に 1 回行うが、5 月にテーマを与えて、 2 月に発表をさせる形式を取っている。発表は 2 回であるが、グループで数回集まって検討 を加えている。発表で出てきた提言には、法人として応えていくようにしている。 • 3~5 年は自己啓発をする SDS 研修の色合いが強くなる。また、プレゼンテーション能力の 向上や、問題解決の技法などがテーマとなっている。主任を目指す研修である。 • 主任登用は 5 年から 10 年目の間になり、管理職は概ね 35 歳で副施設長、40 歳で施設長で ある。 -58- • 主任は職場で職員が互選で決める。妥当な人が選ばれている。副施設長、施設長は、法人が 決める。 • 第 3 段階は、5 年目から 10 年目の主任クラスで、研修は少なくなっている。管理職ではな いので OFF-JT が多く、SDS で自己啓発する人が主任になっている。 • 第 4 段階は副施設長、5 段階が施設長である。このクラスには、コーチングやリスクマネジ メント、財務などについて、外部講師、理事や顧問の会計士などを招いて管理職研修を実施 している。管理職は 17 名で、総務部長、財務部長、副施設長、施設長が集まり、財務につ いて一定の理解を得るための研修を実施している。ここ数年は介護保険や自立支援法改正に 伴い、そこにテーマを絞って厚労省の課長会議資料を分担して読む研修を実施している。 • 人材の育成に力点を置いていたため人事考課はまだできておらず、現在は施設長による評価 をしている。考課評価の採り入れなどは今後の課題である。 • 施設長は経営的な資質が求められる。副施設長は現場介護のリーダーである。施設長の経営 ノルマはないが、経営的な数字を理解することが求められ、人材配置なども人件費比率など を勘案して提案することが求められる。 (3) 求められる能力と研修テーマについて • 1 年目職員と 5 年目職員にペアーを組ませてエルダーシステムを実施したが、勤務が交替制 のため完全に密着できず、あまり効果はなかった。 • 接遇・コミュニケーションは 1、2 段階、モチベーションは 2,3 段階、キャリアデザインは、 第 2 段階で将来を見通すための研修として必要であろう。 • スーパービジョン・コーチング、運営と経営基盤は 4 段階、5 段階で身につけてほしい。 • リーダーシップは 3~5 段階、ファシリテーターの育成は 3 段階、4 段階、エルダーは、3 段 階である。 • メンタルヘルスは 1、2、3 段階が中心であるが、管理職のメンタルヘルスも必要である。 • チームワーク、メンバーシップ、問題解決技法、家族や地域の支援力活用の強化は 2~5 段 階までである。 • リスクマネジメントは 3、4、5 段階で身につける必要がある。 • 苦情対応は制度で規定されており、基本は 4、5 段階であるが、現場で対応することも多く、 2 段階から苦情対応をすることが求められる。 • 財務管理は 5 段階、労務管理は 4、5 段階である。コンプライアンスは全員理解が必要であ り、研修は 1~3 段階くらいまでに研修することが必要である。 • 施設長が半ば経営者として仕事をするように指導している。副施設長は現場の管理者、サー ビス管理が中心となっている。 • 人事考課と人材育成は全段階で必要であるが、段階別による教育方法があると考える。 • 中間層が職員全体に占める割合は高い。全職員の 8 割程度を占めるが、この中間層の上位 2 割の管理者候補生に対する研修を積極的に実施したいと考えている。問題解決、コーチング など管理職研修で行っている内容を前倒しで実施させたい。 -59- 10)社会福祉法人 金津福祉会(金津サンホーム) 所在地 福井県あわら市花乃杜 3-22-12 Tel:076-73-5033 概要 身体障害者療護施設で全国初の ISO9001 認証取得 現在は旧法施設 ホームページ http://www.ksunhome.com/index.html (1) 事業概要 • 身体障害者療護施設である金津サンホームと、訪問介護事業、居宅介護支援事業などを実施。 • 金津サンホームに材用も含めた法人機能が集約されている。 • 職員 63 名。正職員は 25 名。 (2) 研修プログラム • 新入職員研修を実施。外部のコンサルタントを入れて教育する。 • 入社前に内定が決まった時には内定者の集まり的なものを 12 月位にして結束を固めること も実施している。 • その後フォローアップ研修もあり、3、6、9、12 ぐらいの 3 ヶ月刻みで実施を計画したが、 現在は実施していない、 • 全職員向けの研修として品質管理の研修とマナー関係の研修を実施している。 • テーマを選ぶにあたっては、活動別力量管理表の確認をして、ここの力量は職員が全体的に 足りないものであるとか、満足度調査で利用者からその力量が足りないと評価されたものに 関しては入れているが、毎年大きな変動はない。 • 仕組みと運用の仕方の問題にもなるが、4 月入社の場合は年間のプログラムに乗せて 1 年間 手をかけていくことが可能だが、4 月採用で十分な補充はできないところがあり、中途採用 というのが出てくる。中途採用の場合は、入ってきたところから 1 年手をかけるのは難しい 現状にある。 • 4 月入社が 2 名など、その人数にフォローアップ研修をかけるのが難しく、また、本人たち の負担になってきてしまうところがある。仕組みがあるものの運用がむずかしくなってきて おり、小規模な所だとそうした課題がある。 • 採用が少ないことや、離職の問題もあるため、新人を教育するためのエルダーも手薄になっ てしまっている。 • 嘱託職員には正職採用の道があり、過去に正職採用した人は 4 名程度いる。 (3) 職階・給与と研修 • 小規模法人で職員数 60 名程度である。正職員と非正規職員の比率では、50 数パーセントが パート系であり、明確な 5 段階の職階ということではない。ただ、新人の階層も考えると実 体的には、5 階層と考えることもできる。 • 主任までは一応中堅職員、施設長が管理者である。 • 人事考課はない。活動別力量管理票で評価をしている。求める力量を明確にして、それに対 して管理、評価していくというのが ISO の中の仕組みにあるため、それを使用している。目 標管理と一緒で到達点を示している。人事考課や評価のほうの仕組みを考えた時もあったが、 評価する人間が必要となり、そのための人材を置くことが困難であるため、活動別力量管理 表の結果を評価へつなげて、さまざまな面で評価する材料にしていきたいと考えている。 -60- • 特に育成を考える上でこの資格を持っていないと課長に上げないといったものは、今はない。 • 障害者自立支援法に基づく制度上は加算要件として介護福祉士が何割とかなっているが、当 施設はまだ旧法施設なので、採用時の有資格者の要件というのは現在設定していない。 • できれば有資格者、中途でも有資格者の経験者を採用したい。介護職員中で介護福祉士を持 っているのは 12 人である。 • 資格手当はないが、例えば嘱託職員などが、資格取得をした場合には、正職員への転換や、 給与にそのまま乗せるということはないが報奨金のような形で賞与に反映している。 • 主任になるのは正規職員で、登用にあたり特に要件はない。 (4) 求められる能力と研修テーマについて • 職員を外部研修に派遣すると時間の拘束が長いというのは課題である。以前よりは派遣はし やすくなってきているが、3 日間で 4、5 人出すのは本法人にとっては厳しい。 • コストとの見合いもあるが、例えばコーチングであるとか接遇マナーであるとかいうのは、 外部にしっかりとしたものができたならば、法人個々でやるよりもそちらを利用してもいい と思う。 • 外部の研修で他社の職員と交わるというのが大きな刺激になる。コーチングも中でやってい ると同じ人間の集まりになってしまうので、刺激というか緊張感が薄い。外部へ行けばそれ だけの緊張感を持って、グループワーキングなども特に考えて発言することになる。 • メンタルヘルスやストレスマネジメント、モチベーションコントロールなどの研修は必要で はないか。 • コーチングに関しては 3 段階ぐらいから取り組みが求められるのではないか。スーパービジ ョンは、2.5 から 3 段階程度でないと力量が発揮できないのではないか。スーパービジョン はストレスマネジメントとも大きく影響してくるところもあるので大事なことだと思う。 • リスクマネジメントという大きな柱の中でコンプライアンス、苦情というところを一つの領 域としてはどうか。 • 職場のなかでの基本的な事柄を順守していくことは大切なことである。今の若者にそうした 意識が抜けがちであるので、そういうところも教育研修に入れていかないといけないと考え ている。 -61- 11)社会福祉法人 湘南福祉センター(明石町保育園) 所在地 神奈川県平塚市明石町 15-16 TEL0463-21-0789 FAX0463-24-6080 概要 保育 約 130 名、常勤 100 名、非常勤 30~40 名、障害 20 名弱 保育、知的障害 全国保育士会キャリアパス検討会委員 法人としては保育所 5 園、知的障害者通所授産・GH 運営を実施。保育事業をベースに障 害領域に事業を拡大してきた法人。 ホームページ http://www8.ocn.ne.jp/~akashi-h (1) 事業概要 • 幼稚園、保育所から事業をスタートし、現在 5 つの保育園、知的障害者通所授産施設、グル ープホームなど業務を展開している。 • 5 つの保育園で約 630 名の児童の保育を行っており、10 年前から放課後児童クラブ事業を開 始した。 • 5 園で職員 100 名、非常勤は 30 名~40 名、障害系の施設には 20 人弱の職員。 • 法人は、理事長、理事、部門長、各施設長がいる。児童部門、診療部門、障害部門。部門長 と園長を兼任している。 • 保育所間での人事異動はあるが、障害者施設と保育所との人事異動は基本的には行っていな い。保育所間の移動も、保育士に欠員ができた場合などに限定されており、保育士は所属し た園に継続して勤める形式となっている。 • 職員採用、財務管理などは法人本部で実施しているが、人材の募集は施設単位に実施してい る。 (2) 湘南福祉センターの職階と研修 • かつて職階の表を作り、年数別必要能力と指導体制表をつくったが、うまく運用できなかっ た。職階による能力、研修はうまくいかなかった。保育の特殊性があって、こうしたテーブ ルのミスマッチがあるのではないかと思う。 • 現在の教育はファシリテーター機能を副園長が担っており、職員へのインストラクションと ファシリテーションを兼用して指導している。 • 新人教育は待機児童がいることもあり余裕がないのが現状であるが、副担任等を使い、1 年 目の新入職員に自信をもたせ、失敗体験はさせないように配慮している。 • 仕事の評価は重要視している。しかし、結果評価ばかりでは失敗を恐れるし、プロセス評価 は自己満足評価になりがちである。したがってプロセス評価と結果評価の両方をバランスよ く活用している。 • 新任研修は年に 6 回程度を計画しているが、できていないのが現状である。1 回の研修は 1、 2 時間程度である。 • 5 年までは新人として処遇しており、5 年以上以降は中堅職員としている。 • 新任は先輩保育士がつくが、考え方は新任から一人前として扱う。保育の配置基準は新人も 1 名としてカウントしなければ経営が成り立たない側面がある。 • 保育園は最低基準があり、0 歳児は 1:3 など、乳児クラスは複数担任である。単数担任の クラスは経験者がつく、0 歳児の複数担任の所に新任者が経験者と組んで担当している。 • 副担任はおいていない。1 歳クラスなら 1 歳クラスのリーダーがいる。0 歳なら 0 歳のリー ダーがいる。4、5 歳児には職員一人なので必然的にリーダーとなる。 -62- • 保育士、リーダー、主任、副園長、園長の階層となっている。 • リーダーは俸給ランクが上がる。主任は各園に 1 名いる。園ごとに保育士の構成が異なる。 リーダー、主任を決めるのは年齢なども配慮している。 • 管理職は副園長からである。副園長からは管理職手当となり、リーダー、主任は手当のみで ある。 • サービスの質的向上は、直接処遇者である保育士の人格に依存することが多い。したがって、 保育士の教育は人格の形成の部分にも触れざるを得ない。実を取るためには人格に関わらざ るを得ない。 • 今の保育士は本心を言わないことが多い。本心を伝えてくれる環境をつくることが大事であ る。 • 園長をはじめとする管理職への教育は必要であり、理事長にとっての懸案事項である。 • 園長だけの外部研修はある。保育関係の研修もあるが、まれに企業関連の研修に行く。例え ば顧客満足系の研修に行っている。ただ、そのまま保育の現場に直接結びつくものではない。 • 保育関係の研修では、保育指針の改定などがあればその研修には必ず出ている。指針の内容 は研修を受けないと把握できない。 • 外部研修は園長が選択して保育士に示している。外部研修は日常性と非日常性の問題点があ る。外部研修は非日常的である。学んだ時点では新鮮であるが、非日常的なことを日常業務 に転換することが課題として残っている。 • 園の家具は無垢材で作っており、職員が自身のこだわりや提案を実現できる機会を保障する ために必要だと考えている。家具のデザインを提案することで、職員自身が自分で考えたも のを具現化でき、仕事に対する意欲を高めることが目的である。 • 自己研修は、手が空いた時間を見つけ、個々で行っている。勉強しようとする職員の気持ち は大切にし、本を買うこともある。 • 職員の状況に応じて研修に出す。年数ではない。抱えているテーマに応じて研修に出してい る。 (3) 求められる能力と研修テーマについて • ファシリテーターの重要性が高まっている。インストラクターが保育業界には多いが、ファ シリテートすることが大切。両者は対立する概念だけではなく、ファシリテーターとインス トラクターを使い分けることが必要である。 • 主任保育士に求める能力は、中堅以降の能力で自身の位置づけを客観的に把握している。問 題発見解決能力、ファシリテーター能力、自分自身の仕事にフィードバックのできる能力で ある。 • 若い職員は仕事がうまくできないことを、置かれている環境や他に責任転嫁する行動をとる。 主任クラスがこういった考えを持つと部下の職員が同じような行動をとってしまうので注 意が必要である。 • 生涯一保育士を望む人やその位置付けが適している人もいる。しかし年数がたつと主任と同 じような発言をしてしまい、職場内の統制が取りづらくなる恐れがある。保育の専門職とい う職種はあり得るが管理職との違いをどのように維持するかが重要な課題である。 • 主任保育士に求める能力は、中堅以降の能力で、自身の位置づけを客観的に把握する能力、 問題発見解決能力、ファシリテーター能力、自分自身の仕事にフィードバックできる能力で ある。 • 管理者である園長は集団議論の議論、意思決定、合意形成の方法などを学ぶべきである。ま た、振り返りをしながら部下のスーパービジョンをする能力が求められる。 -63- Ⅴ 研修プログラムの開発・実施に向けた道筋と今後の課題 1.新たな研修体系に基づく研修プログラムの開発と実施に向けて (1) シラバスの検討と学習教材、指導教材の開発、作成等 (ア) 本年度委員会の主な成果は、Ⅱ章で報告した 5 つの職務階層<図表 2-1>と、福祉・介護サービス従事者に共通する能力開発の観点から 設定した研修科目や教育内容<図表 2-2>である。また、教育内容の 詳細を決定していくうえで必要な、想定される各科目における目的や 階層別のねらい、到達目標・獲得目標を例示した。 (イ) 今後は、各職務階層(第 1~第 5 段階)に対応した研修プログラムの 作成が課題である。そのために、科目ごとの学習目標や内容、時間数 等を記載した「シラバス」が必要である。 (ウ) そして、シラバスに準拠した学習教材の開発が必要である。具体的に は、 「テキスト(教科書)」と、演習に使用する「ワークシート集」が 考えられる。また、科目によっては既存の資料・文献等を活用するこ とも検討する必要がある。 (エ) あわせて、修了認定のために、「修了テスト」や「修了レポート」等 による評価の仕組みが求められる。「事前課題」や「事後課題」の活 用も学習効果を上げるうえで有効である。 (オ) 多様な実施機関での研修が想定されるため、学習内容と同様に指導内 容や方法の均質化、標準化を図ることが重要である。具体的には、講 師向けの「指導の手引き」や演習指導のための「研修技法ガイドブッ ク」等の作成が必要と考える。 (カ) (オ)に基づいた指導者(講師)養成研修を実施し、研修体系を支える 指導者の質の維持、向上を図る仕組みが必要である。そのためには、 指導者養成研修修了を講師の任用要件としたり、講師の登録制度を設 けたりするなど、研修を継続していくための工夫が必要である。 (2) 多様な実施主体が研修を行うことを想定した仕組みづくり (ア) 研修の実施主体は、都道府県・指定都市社会福祉研修実施機関、職能 団体や種別協議会、養成校等多様な機関が想定され、機関相互の教育 内容や方法の共有や均質化、標準化が重要な課題となる。 -64- (イ) 教育内容や方法、共通の評価システムの導入等において研修機関・団 体相互の連携を可能とする協議の場を検討する必要がある。 (ウ) また、新たな研修体系に基づく研修を実施する機関について認定・認 証制度を設けるなど、他との差別化を図る方策も検討すべきである。 (エ) 研修の均質化、標準化を図るための具体的な方策として、(1)に示し た学習教材や指導教材の共有に加えて、実施主体が標準的に具備すべ き要件を示す必要がある。 (オ) 研修実施機関に対して、共通する要件を示した「実施要領」と、運営 の実際を示したガイドラインとなる「運営の手引き」が必要である。 (カ) 「実施要領」は、研修体系の構造や各科目の考え方に加えて、受講対 象や実施日数などを示した標準実施モデルと費用等の例示、評価方法 や修了認定の仕組み等が考えられる。 (キ) 「運営の手引き」は、研修会場や教材、備品等に加えて、研修のタイ ムテーブル、講師との調整事項の例示など実際の運営に必要とされる 詳細な事項を記載する。 (ク) このように「学習内容」 「指導方法・講師」 「実施主体」の 3 つが、多 様な実施主体が実施する研修の均質化、標準化を図るうえで必要な要 件であると考えられる。<図 5-1> <図 5-1 研修の均質化、標準化に係る 3 つの要件> 【 実施主体 】 「実施要領」 「運営の手引き」等 【 学習内容 】 【 指導方法・講師 】 「シラバス」 「指導の手引」 「テキスト」 「研修技法ハンドブック」等 「ワークシート集」等 (指導者養成研修会) -65- 2.活用・定着に向けた方策と課題 (1) 専門職としての社会的認知・評価の向上に向けて (福祉・介護サービス現場の理解促進と導入に向けた環境整備) (ア) 福祉・介護サービス従事者が専門職として社会的認知を確立し、その 社会的評価を高めていくために、まずは従事者自身の、専門資格の取 得や現任訓練により生涯を通じて自らの専門性を向上させる努力が 必要である。 (イ) 同時に、福祉・介護サービス経営者は、自らの経営する施設・事業所 が提供するサービスの質の確保や向上の観点から、また、人材育成に よる組織の継続、発展の観点から、従事者に対する体系的、継続的な 研修受講についての啓発や支援等が求められる。 (ウ) 新たな研修体系は、福祉・介護サービス従事者のキャリアパスに対応 することを目指したものである。そのため、研修の受講歴、修了歴が 福祉・介護サービス従事者のキャリアパスに役立つものにするために も、種別協議会等の事業者団体の協力等により業界内外での認知度を 高めていく必要がある。 (エ) さらに、受講料や研修期間の設定等、業務に従事しながら参加できる ための配慮など、導入に向けた環境整備に十分に配慮する必要がある。 (2) 中央福祉学院および都道府県・指定都市社会福祉研修実施機関におけ る研修事業の見直し (ア) 中央福祉学院および都道府県・指定都市社会福祉研修実施機関は、本 報告をふまえて、それぞれの研修事業のあり方について検討を行う必 要がある。 (イ) とくに、平成 5 年の旧「福祉人材確保指針」に基づく「福祉職員生涯 研修課程」を総括し、その結果を新たな研修体系の構築に反映させる ことが求められる。 (3)行政への期待等 (ア) 制度を運営する国や地方自治体において、新たな研修体系に基づく研 修への取り組みに対して適切な評価がなされることが望まれる。例え ば、研修の受講がサービスの質の向上に対する評価として報酬等に適 -66- 切に反映されることを期待する。 (イ) また、主任や施設長等について、新たな研修体系に基づく研修の受講 を就任・任用要件とすることについて検討されることを期待する。 (ウ) 制度研修における実施科目の受講読み替え等について配慮され、受講 負担の軽減等が図られることを期待する。 本報告において提言された事項について、中央福祉学院、都道府県社会 福祉協議会(研修センター)等の研修実施機関、福祉・介護の職能団体や 幅広い関係者において検討がなされ、多くの意見が寄せられることを期待 する。そのうえで、平成 22 年度においても「福祉・介護サービス従事者の キャリアパスに対応した生涯研修体系構築検討委員会」が継続してより具 体的に検討されることが望まれる。 -67- 資 料 1.協議経過 (1)本委員会 第1回委員会(平成21年7月30日)) 委員長・副委員長の選任について 委員会の検討課題について 事業スケジュールについて 調査研究事業の実施について 第2回委員会(平成21年9月1日) 調査研究事業の実施について 事業スケジュールについて 研修体系構築をめぐる論点について 第3回委員会(平成21年12月21日) ヒアリング調査の概要[報告] 求められる能力と職務段階、階層構造の整理について 階層別の職員に求められる能力と研修テーマの設定について 報告書骨子(案)について 第4回委員会(平成22年1月27日) 委員会報告の概要について(確認・協議) 報告書骨子案について ・ 検討の背景とレビューについて ・ 職務段階と機能イメージについて ・ 職務階層に対応した新たな研修体系について ・ まとめ及び今後の課題について 第5回委員会(平成22年3月3日) 報告書(案)について -68- (2)作業委員会 第1回作業委員会(平成21年10月28日) 階層別の職員に求められる能力と研修テーマについて 二次調査先の選定について 第2回作業委員会(平成21年12月16日) 調査先法人・施設における階層構造等の特徴について 階層別の職員に求められる能力と研修テーマ・ねらいの設定 について 報告書骨子(案)について -69- 2.委員名簿 (1)本委員会 [◎…委員長、○…副委員長] (敬称略、50 音順) 氏 名 所属・肩書(勤務先) 1 磯 彰格 社会福祉法人南山城学園理事長 2 上村 初美 社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国保育士会 副会長(福岡県・砂山保育園主任保育士) 3 衣川 哲夫 社会福祉法人兵庫県社会福祉協議会 社会福祉研修所研修第2部長 4 田島 誠一 5 永田 壽子 社会福祉法人こうほうえん教育研修部長 6 羽山 政弘 社団法人日本介護福祉士会副会長 (札幌市・慈啓会特別養護老人ホーム介護課長) 7 久田 則夫 日本女子大学教授 8 宮入 修治 社会福祉法人長野県社会福祉協議会 福祉人材研修課課長 9 山崎 美貴子 ◎ 神奈川県立保健福祉大学学長 10 山村 社団法人日本社会福祉士会会長 (浜松市・天竜厚生会障害者支援事業部長) ○ 睦 財団法人日本老人福祉財団理事長 【オブザーバー】 諏訪 徹 厚生労働省社会・援護局福祉基盤課社会福祉専門官 (2)作業委員会 [◎…作業委員長](敬称略) 氏 名 1 田島 誠一 2 久田 則夫 所属・肩書(勤務先) ◎ 財団法人日本老人福祉財団理事長 日本女子大学教授 【調査研究協力】 岸田 宏司 和洋女子大学教授 小野 信夫 和洋女子大学研究支援課長 -70- 福祉・介護サービス従事者の職務階層ごとに求められる機能と研修体系 ~キャリアパスに対応した生涯研修体系構築を目指して~ 「福祉・介護サービス従事者のキャリアパスに対応した生涯研修体系構築検討委員会」 報告書 平成22年3月 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 中央福祉学院 〒240-0197 神奈川県三浦郡葉山町上山口 1560-44 TEL 046-858-1355 FAX 046-858-1356 ※ 本会の許可なく本報告書を複写・転載して使用することを禁じます。
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