Newsletter 海洋文明 発行 東海大学 海洋学部 海洋文明学科 Newsletter海洋文明 vol.5 東海大学の卒業式は3月25日。開設から4年目を迎えた海洋文明学科では、この春に、はじめ ての卒業生となる71名の学生たちが学び舎から社会へと巣立っていきました。OH教員スタッフ にも移動があり、松島先生が龍谷大学経済学部に転任することになりました。そして、この4月か ら山田先生が教員スタッフに加わります。去る人もいれば、来る人もあり。 新入生を迎え、新たな年度の始まりです。 News 「ハワイ・太平洋諸島研究」でのハワイ島、オアフ島実習 2008年3月3日(月)~3月14日(金)の期間 で、 「ハワイ・太平洋諸島研究」という授業の 一環で、ハワイ島、オアフ島に行ってきました。 この 「ハワイ・太平洋諸島研究」という授業は、 英語の授業やハワイ・太平洋諸島についての 専門的な連続講義を受ける事前学習と、教員 指導によるフィールドワークを通して、ハワイ 島やオアフ島の自然・歴史・文化などを歩い て学ぶ現地での実習授業からなるユニークな 授業です。07年度は海洋学部から学生が17 名(うち海洋文明学科14名)、北海道東海大か ら7名、引率教職員6名(北東大1名)と、計30 名が参加しました (岡嶋)。 ①古代ハワイ人が最初に上陸した場所 ②ジェームズ・クック終焉の地 ビショップ博物館の見学 ④マウナケア山頂の天文台 ハワイ人の神話世界(写真①)から、 西洋世界との遭遇(写真②)、近代化 とハワイ王朝(写真③)など、ハワイ の歴史を学び、伝統的航海術と天文 学の関わり(写真④)とマリンスポー ツのメッカを支える現場(写真⑤)まで、 ハワイと海の関わりの深淵を探る。 ⑤ライフガードより説明を受ける ③イオラニ宮殿 1 Newsletter 海洋文明 発行 東海大学 海洋学部 海洋文明学科 OH Oh! Oh! Oh! -学生たちの活動- 第1回 “みんぱくバスツアー” 『オセアニア大航海展』エクスカーショ ン 2007年12月8日から9日にかけて、大阪府吹田市にある国立民族学博物館 (みんぱく)で特別展「オセアニア大航海展」見学会を実施しました。この施設 は、文化人類学・民族学を専門とする研究機関であり、世界各地の民族資料 の収集と公開をおこなっている博物館です。2007年は開館30周年となり、 様々な企画が催され、特別展「オセアニア大航海展」も、その1つです。「オセ アニア大航海展」は、ニュージーランドのオークランド博物館が企画した「ヴァ カ モアナ」展を組み込んだもので、世界各地を5年間かけて巡回する大規模 な国際展覧会の一環として開催されました。 海洋文明学科では「海洋民族学」や「海洋考古学」といった授業が開設され ており、学生たちにとってもこの「オセアニア大航海展」は関心を深める良い機 会になるのではと考え、今回はオープンゼミにかえて“みんぱく・バスツアー”を 学科で計画しました。 12月8日にバスをチャーターし、33名の学生が清水から大阪に移動。翌日 朝から入館し、本学科の非常勤講師であり、国立民族学博物館の外来研究員 である小野林太郎先生から、特別展の魅力と見どころをレクチャーしていただ きました。その後、ミクロネシアの伝統的カヌーの航海の様子を撮影した記録 「チェチェメニ号の航海」を鑑賞。また、太平洋の伝統的カヌーの帆に使用され る植物パンダナスの編み方体験も実施され、初めて触る太平洋の植物パンダ ナスを織ってしおりを制作しました。授業で聴いた「ラピタ式土器」や「大型のア ウトリガーカヌー」などの実物を見て、学生たちの探求心も一層深くなっていっ たようです(川崎)。 卒業研究紹介 ユニークプロジェクトからセミナー研究へ ~アウトリガーカヌーの製作にかけた大学生活~ 水野海生君は、本学科に入学した1年生のとき、サーフィンをするた めハワイへ行きました。そこで初めて本場のアウトリガーカヌーに出会 います。そのスマートなデザインに水野君は魅了されました。帰国後、 海洋学部の非常勤講師佐藤延夫先生に相談。自分でカヌーを作って みようと考えました。しかし資金集め、材料の調達、製作方法と場所、 そのすべてが未知数でした。 2006年、水野君は「アウトリガーカヌー製作とクラブ設立」と いう企画を計画。それが東海大学チャレンジセンターの「ユニー クプロジェクト」に採択され、大学からの資金援助を獲得しまし た。そして下田の会社研修施設跡地を借用し、こつこつと作業 を開始したのです。水野君には熱い想いがありました。海を通 じて誰もが同じ時間、同じ目標、同じ苦しみ、同じ自然を肌で感 じ、そこから生まれた仲間という存在を確かなものにしたい。こ うして、大学生活の後半すべてをカヌー製作に費やしたのです。 もちろん4年生のセミナー研究でも、テーマはアウトリガーカ ヌー。レポートとして製作過程の記録が残されています。そして 2008年4月、ようやくカヌーが完成しようとしています。カヌー製 作一筋の大学生活でした(川崎)。 2 “キャンパスは奄美” 2007 4年生になると必修科目『海洋文明学セミナー』が待っています。このセミナーを通して、学生 たちは4年間の集大成をレポートやプレゼンテーションといった形にまとめます。より完成度の 高い研究へと課題を掘り下げたい学生は、自由選択科目『卒業研究』を選び、卒業論文に取り 組みます。 この秋学期の場合、卒業レポートの提出期限は1月21日、卒業論文の提出期限は1月28 日で、両日とも大騒ぎでした。レポートや論文を提出するまでの準備や直前の様子にも、ゼミご との特徴が見られ、指導教官のくせや性格などが学生に伝染したかのようでした。締切り数日 前からゼミ生の多くが研究室に入り浸りとなり、締切り直前・猛ダッシュのゼミ。計画性と余裕を もって学生たちが研究を進めたゼミ。呼び出しても来ない学生たちの進み具合に教員がおろお ろし、締切り前も学生といっしょになって右往左往したゼミもあれば、院生含めて研究室所属学 生が一丸となって論文完成にあたったゼミなど、いろいろでした。 本号3~4ページに卒業研究のテーマをゼミごとにまとめましたが、学生たちの関心も十人十 色です。それでも、研究テーマに奄美のことを取り上げた学生が8名いました。 今回、卒業研究に取り組んだ4AOH生は、06年度の海洋実習に参加した学年です。海洋実 習は、学生たちに大きな影響を与えたようで、奄美のことをテーマに選んだ8人は、海洋実習 後に、自分たちそれぞれで計画して奄美大島を訪問しています。はじめは十分な下準備もない ままに現地に飛び込んでいきましたが、奄美の人たちに、いろいろお世話になりながら、なんと か卒業研究を仕上げることができました。 また、奄美の新聞 『南海日日新聞』には、 2008年1月1日より「キャンパスは奄美 東海大 生シマを行く①~④」という短い連載が掲載されました。その記事では、07年度の海洋実習に ついて、奄美陸上研修の内容紹介だけでなく、参加した学生たち数名の声が紹介されました。 2008年の2月から3月にかけ、学科教員たちが08年度実習の準備打合せのために奄美に 出かけましたが、川崎先生と学生3名の南海日日新聞訪問は、3月5日付け『人物交差点』で も紹介され、その記事には、4AOH生の卒業研究も触れられています。 海洋実習をきっかけに、学生たちが奄美で 学んだことを、レポートや卒業研究のテーマ に取り上げ、自らの力で研究をまとめていく だけでなく、学生たちが、それぞれの成果を お世話になった方々にも報告し、意見、感想 をいただきながら、さらに問題を掘り下げてと もに考えていくような・・・、奄美と清水と二つの キャンパスの往復書簡のような関係を続けて いけたらと思います。 3 4AOH生の卒業研究紹介 海洋文明学科では4年生になると必修科目『海洋文明学セミナー』が待っています。このセミナーを通して、学生た ちは4年間の集大成をレポートやプレゼンテーションといった形にまとめます。さらに完成度の高い研究へと課題を 掘り下げたい学生は、『卒業研究』にて卒業論文に取り組みます。『卒業研究』を選んだ学生たちは、1月28日の論 文提出後、2月4,5日の二日がかりで実施された卒論発表会に望みました。 以下に、今年度(4AOH生たち)の卒業研究内容を紹介します。 教員 卒業レポート・プレゼンテーションなど 卒業論文 「地域特産品の開発と地域食文化の創出 -地場産品としてのヒロメの養殖と消費」 上野 信平 川崎 一平 岡嶋 格 中辻 孝子 牛尾 裕美 中見 隆男 「日本における船上ウエディングの現状と考察」 「“さぁ、出航だ!”-アウトリガーカヌー製作過程 の記録」 「戸田のまつりを考える-「ごぜ芸能まつり」はな ぜつくられたのか-」 「日本のサーフィン文化の歴史を探る」 「サツマイモの伝播における知恵と努力 -文明の伝播における海洋と食物の関連」 「エスニック・ミュージック「奄美の三味線」 -奄美におけるシマウタとは-」 「西伊豆の昔の漁業と漁労習俗について」 「朝日新聞記事における差別と偏見の統計分析」 「高齢化社会が招く、地域伝統行事の変容」 「牛とスッジャ:沖縄多良間島における社会組織と 生業」 「佐久島:その島嶼性と海の役割」 「海から見るまち、三保ー日本的まちづくり論再考」 「九州及び南島・台湾の鯨歯製品について」 「南関東地方における考古学」 「伝統的航海に使用されたアウトリガーカヌーに施 された装飾や模様について」 「東ポリネシアにおけるラピタ土器の消滅」 「太平洋諸島の食文化」 「シロウオ胚における心臓の発生」 「生命科学の応用と社会問題について」 「ウミガメの骨格の一部から種と甲長を推定する研 究」 「太平洋戦争における海上特攻隊の歴史と意義」 「竹島の領有権紛争に関する一考察」 「捕鯨に関する一考察」 「一般市民にもできるトリアージと必要性」 「興津川における釣りの環境整備について」 「オーバートレーニングについて -健康な心と身体」 「国内における海浜事故の推移と分析 -平成17年のマリンレジャーに伴う海浜事故」 「大会(シイラフィッシング)運営について」 「海の環境-海岸付近の環境の実態-」 「ラグビーを普及させる為の方法と道具類の調査」 「清水港海釣り公園の現状とSOLAS条約」 4 「非営利団体による海を生かした子どもの健全育成 を図る活動-プログラムの計画と実行」 Newsletter 海洋文明 教員 松島 泰勝 田口 理恵 発行 東海大学 海洋学部 海洋文明学科 卒業レポート・プレゼンテーションなど 卒業論文 「沖縄の経済構造と産業の特色について -それらの展望を考える-」 「沖縄の運動能力について」 「島嶼経済の発展と島の環境変化」 「沖縄県における基地経済 -その必要性と実態ー」 「竹富島の町並み保存」 「駆除対象となる生物の有効な利用法について」 「サトウキビ産業の現状と将来への展望」 「沖縄の食文化について」 「太平洋戦争における海軍関係者の体験談」 「地下から表舞台へ-ストリートダンス、エンターテ イメントの新しい可能性-」 「剣道の起こりから未来への展望」 「多目的に捉えたレコードの考察」 「大阪の食文化(食意識の変動)」 「捕鯨-食文化の存続を考える-」 「サンデーサイレンスの軌跡-日本競馬界の今後」 「バヌアツ共和国 -世界で最も幸せな国に選ばれた理由とは」 「奄美群島の島おこし -活気のある島を目指してー」 「沖縄県石垣市白保のサンゴと人との共生」 「泥から見た大島紬-現状から未来への展望ー」 「持続可能なイベントーフライベントの可能性ー」 「奄美大島の公共工事と アマミノクロウサギの共生」 「奄美大島のオニヒトデ事情 -無駄なものから有効なものへー」 「幕張新都心の開発と活性化 ーベイタウンの現状と課題ー」 「今も生きる近江商人の心」 「『海狼伝』の世界 ー初めて触れた海洋文学の魅力ー」 「馬刺しから見る熊本の食文化」 「受け継がれる伝統芸能ー淡路人形浄瑠璃ー」 「車社会における環境問題への取り組み -自動車リサイクル法を中心に-」 「ハンセン病の歴史と現状」 「琉球絣を取り巻く環境と現状」 「焼津神社大祭ー 東海一の荒祭りー」 「ジャマイカにおけるラスタファリズム」 「クジラと人の関係史ー捕鯨文化論再考ー」 「家魚と魚食ー中国における養殖文化史ー」 4AOH生の就職先 ~民間企業~ 【リゾート開発・旅行会社・ホテル】 リゾートトラスト、HIS、クラブツーリズム、南海国際旅行、ホテルニューアカオ、パ ンパシフィック横浜ベイ東急、プリンスホテル など 【広告・インテリア・印刷】 エイエイピー など 【飲食・食品】 ダイヤモンドダイニング、サッポロライオン、王将フードサービス、丸善食品工業 など 【織物・衣服】 コナカ、ワールドストアパートナーズ など 【商社、海運、運送、倉庫】 八洲器材、清和海運、原田港湾、カンダコーポレーション など 【製造業】 大和冷機工業、積水化成品工業、村上開明堂 など 【情報・教育・人材サービス】 カプコン、セントラルスポーツ、精文館書店(株)、ピープルスタッフ、上組 など 【IT機械器具等小売】 トレジャーファクトリー、キャノンシステムアンドサポート など ~地方公務員~ 東京都警視庁、愛知県警察本部、成田市消防本部、横浜市安全管理局 5 Newsletter 海洋文明 発行 東海大学 海洋学部 海洋文明学科 フィールドワーク・ナビゲーター:教員たちの研究活動 この4月より海洋文明学科に着任します山田です。これまで日本財団 にて海洋関係の仕事に携わってきました。 日本は四方を海に囲まれた海洋国家です。日本を取り囲む海は、世界 へとつながっています。経済のグローバル化に伴い船舶の大型化、高速 化が進み、マラッカ海峡などの船舶が集中する海域では海難事故の危 険が増しています。また、世界の海では今も海賊が存在し、航海者を脅 かしています。日本は、海洋先進国として、海の安全と海洋環境対策の 推進を求められています。 2007年4月、海洋基本法が制定され、国として海洋政策に取り組むこ とになり、日本人の生活に欠かせない水産、海洋資源開発、海洋環境、 海運、海洋安全保障などを一元化して考える動きが始まりました。私は 日本の島々や世界の海を巡り、それぞれの持つ独自の文化、伝統と社 会、経済のつながりを研究してきました。海洋政策では、日本人の生活と 世界の人々とのつながりを考えることが不可欠です。 私たちを取り巻く「海」を学び、「海」を考え、「海」を通して明日の社会を、 みなさんとともに考えていきたいと思います。 山田 吉彦です。 「海洋国家の政治経済学」、 「海洋アジアの経営学」等 を担当します。よろしく!! 教員たちの研究活動 2007年8月~2008年1月 8/4~8/25 科研パプアニューギニア調査(川崎) 8/5~17 文部科学省ニーズ対応型地域研究推進事業による インドネシア調査(田口) 8/9~11 伊豆サンゴ調査(上野) 8/25~9/6 人間文化研究機構連携研究「人と水」によるラオス調査 (田口) 9/9~11 伊豆サンゴ調査(上野) 9/12~9/26 インドネシア調査(田口) 9/15~17 台湾(松島) 9/20~22 日本動物学会第78回弘前大会に参加(中辻) 9/22~23 全日本学生ライフセービング選手権大会(中見) 9/28~30 赤十字水上安全法指導員技術研修会および 赤十字水上安全法救助員養成講習会で講師(中見) 10/4~10/10 インドネシア・バリ島(中見) 10/6~8 伊豆サンゴ調査(上野) 10/17~1/7 天理大学附属天理参考館第56回企画展「モチゴメの 国ラオスーメコン河流域の暮らし 」(「アジア・熱帯モンスーン地 域における地域生態史の統合的研究:1945-2005」プロジェクト による成果公開)企画・実行 (田口) 10/25~29 西表島浦内湾河口域と浦内湾の生態学的研究(上野) 10/27~29 第2回日中海洋法ワークショップ参加(牛尾) 11/9~11 伊豆サンゴ調査(上野) 11/17~19 ゆいまーる琉球の自治研究集会参加(松島) 11/19 静岡裁判所へ裁判ウォッチング引率(牛尾) 12/8~9 国立民族学博物館へ学科企画“みんぱく・バスツアー”特 別展見学エクスカーションに参加(川﨑・岡嶋・中見・田口) 12/15~16 伊豆サンゴ調査(上野) 12/26~27 伊豆サンゴ調査(上野) 1/11~13 伊豆サンゴ調査(上野) 6 編集後記 3月前半は岡嶋、中見、松島3教員が「ハワ イ・太平洋諸島研究」のため不在。 3月後半は、 学科事務室(2425室から2227室 へ)の移動などもありました。 年度末ぎりぎりのNL編集作業も、なかなか 大変でしたが、なんとか新学期に間に合わ せることができました。 みなさん、原稿(論文、報告書、レポート類、 卒業研究、卒業論文・・・)は、やはり早め早 めの対応が精神的にもよいようで。 気をつけましょう (田口) Newsletter海洋文明 Vol.5 発行日:2008年3月31日 編集担当:田口理恵 発行責任:川崎一平 発行: 東海大学海洋学部海洋文明科 〒424-8610 静岡県静岡市清水区折戸3-20-1 Tel: 0543-37-0950 Fax:0543-37-0216
© Copyright 2024 Paperzz