ゴールドコーストと ハワイの不動産事情

インタビュー
不動産特別リポート
ゴールドコーストと
ハワイの不動産事情
観光・商業など日本人が集まりやすいという観点から「ハワイ」と比較されることの多いゴールドコー
スト。日本人の「暮らしたい海外都市No.1」で常にトップを競っている2大リゾートの類似点と相違点を
不動産の視点から比較する。
団塊の世代がこぞって定年を迎える「2007年問題」が話題となっている日本人にとって“住みやすい”
のはどちらか。ゴールドコーストの不動産に対する動向がどう変わってきているのか。また、急進する豪
ドルや地価高騰をどう捉えるべきか−−。ハワイとゴールドコーストの両都市で不動産のマーケティング活
動を行ってきた佐竹美香氏に、ハワイの現状を交えながらゴールドコーストの不動産事情について聞いた。
Q:ハワイとゴールドコーストの類似点と
相違点について
共通項はズバリ「気候が温暖で治安が良
い」という点です。そもそも、誰もが住み
たいと感じる土地というのは、「気候が温
暖」「治安が良い」「景色が美しい」「人が
優しい」
「食べ物が美味しい」というこの5
点なんですよね。
不動産で言えば、治安が良い地域で景色が
いい、で、安いに越したことはない(笑)
。こ
れに尽きます。最近は、GCでも不動産の高騰
が報道されていますが、ハワイでもこの3∼4
年間、物件の価格は上昇を続けてきました。
高騰の理由は、多方面からの影響を受けます
ので一概には言えませんが、リゾートに関し
ては、やはり上記に挙げたような5つの事柄
による「人気」が一番の理由になります。
ハワイの物件がなぜ人気なのかと言えば、
ハワイは米国で最も安全な州だから。人気と
言えばハワイでは今、ハワイ島がブームです。
コハラ・コーストという地域に開発が集中し
ていて、ちょっとしたリゾート物件でも3∼
4ミリオン(米ドル)する。マウイ島はかな
り開発が成熟してしまったので、新しい物件
を建てにくい。それでハワイ島に流れている
んですね。アメリカの富裕層がこぞって購入
している噂を聞いています。ゴルフ場に隣接
していて、閑静な住宅街という理由で、オア
フ島の喧騒を逃れてきていることもあるでし
ょう。これは豪州で言えば、他州からQLD
州に人口が流入してきているのと似ていま
す。ただ、単純に「物件が高騰しているから
他州へ」ということだけではなく、やはり、
ライフスタイルの良さがメイン。海があって、
山があって、緩やかな四季を楽しめるという
ことから、QLD州に住みたいと考える人が
多いようです。
他州に在住する日本人のお客様が、GCの
良さを日本人観光客に伝え、そこから問い
合わせをいただくケースも増えています。
ハワイとの違いは、日本との歴史の差だ
ったり、車が右車線だったり、チップが日
常のことであったり、ほとんどのレストラ
ンで日本語メニューがあったりなど生活習
慣の部分も大きいですね。
不動産の購入に絞って言うと、最近GC
に物件を購入したいという人の「層」に変
化が現われてきたように思います。
佐竹美香さん:スターツ・オ
ーストラリア・ゴールドコー
スト支社。QLD州政府認定セ
ールス・パーソン。2000年に
同ハワイ支社に入社。本社勤
務を経て、01年、ゴールドコ
ースト支社に転任。現在セー
ルス&マーケティング・マネジ
ャー。ハワイとゴールドコー
ストという2大リゾートの不
動産事情に精通。入社当初は
ハワイ派だったが、「美味し
く、楽しく暮らすコツ」の追
求で、現在では専らゴールド
コーストの良さを実感・満喫
している。
※1:1986年に当時の通商産業省が提唱した、リタイア層が余
生を海外で過ごすことを推進したプログラム。しかしながら、
92年ごろのバブル崩壊とともに同プログラムは存続するも頓挫
したかのようになっている
Q:不動産を購入するに当たっての両都市
Q:GCの不動産を購入しようとする日本人 の違いは?
の「層」に変化が現われてきているという
1番の大きな違いはFIRB(外資審議会)
のは?
の有無ですよね。ハワイにはFIRBがない
2000年までは為替が豪ドル安だったこと ので、外国人でも物件を買いやすいという
もあり、割安感からご購入される方が多か 点が利点。ただ、問題がないわけではなく、
ったと思います。コンドミニアムなどを買 完全に規制がないため外資が流入しやすく
って、利回りを狙うタイプの方も多数いら 物件も高騰しやすい。その点、オーストラ
っしゃいました。これはハワイも同様で為 リアはFIRBが規制しているので、外資の
替を考慮して多くの人が運用目的の投資物 氾濫によって物件が一気に高騰することが
件を購入しています。その後は、2001∼ ないので、健全な体制といえるでしょうね。
05年にかけてリタイアメント層が増加しま
さらにもう1つの違いは、「土地付き
した。これはかつてのシルバー・コロンビア (Fee Simple)
」と「借地権(Free Hold)
」
計画(※1)の流れで、スペインなどあら があるため、購入時の価格や管理費の面で
ゆる国に退職後の移住を試みたけれど、
「定 大きく異なります。
住」したいわけではなかった。余生を楽し ちなみにハワイでの不動産ローンの金利は
み、自身のサクセス・ストーリーの集大成と 約6∼7%、豪州は約8∼9%。さらに近年、
して別荘を買う人が多い時代でした。
豪ドル高が進み、豪州の物件は高くなった
ところが、最近一番多いなあと感じるの と感じる人もいるでしょうが、日本円を基
は30∼40歳代のいわゆる「ニュー・リッチ 準にして、米ドルは豪ドルに比べ約20%高
層」と言われる人たちが増えてきたこと。 いわけです。また、ハワイのチップは15%
永住権取得を視野に入れ、より「住む」と 必要でしょ。食物は島なので大方が船で運
いうキーワードに近くなってきていると言 ばれてくるため当然、割高です。生活面も
えます。ハワイと比較してみると、ハワイ 含めて考えれば、まだまだ豪州の物件は安
は現地に定住した日系人は既に4世を迎え いと言えます。
ています。GCに移住して働き、家族を育
てようとする私たちは1世ですよね。そう Q:ゴールドコーストの不動産を購入(賃
いう意味ではハワイは歴史もあるし、日本 貸)する前のアドバイスは ?
文化一般に対する認識も浸透していますが、 当社では、先の3大リゾート地すべてに
GCもまた、ビザを取得してまで住みたい 拠点があり、それを総合的に情報を提供し
という人が増加しつつあるという点は注目 ている「日本橋ショールーム・スターツ・ア
です。そこまでして住みたい土地というの イ」があります。ハワイに住みたいという
は、結局、ハワイとオーストラリアとグア 人の中にはゴールドコーストを知らない人
ムくらいかなということになるようです。 もいるし、ゴールドコーストからもっと近
この3大リゾート地についての日本人の いところに住みたい人たちもいるので、
人気度は、海外14拠点における当社の調べ 「じゃあ、ハワイは(GC・グアムは)どう
でも如実に表れています。今後は国を隔て ですか」と総合的なコンサルティングがで
ず総合的なアドバイスをしていけることが きる。私は、その研究と助勤の目的で先月
ニーズになってくると確信しています。
まで3カ月間、ハワイ支社へ長期出張して
きたのですが、GCでもハワイでも、先述
の通り、30∼40歳代の若い人たちが移住
を真剣に考えています。そこで問題になる
のがビザ。
ハワイはやはり世界トップクラスのリゾー
トですから、移住したいという人は多い。し
かし、米国のグリーンカード取得はかなり難
しいのが現状です。そういう点では、決して
簡単とは言えませんが、豪州のビザ制度は点
数制なので非常にクリアです。さらに、豪州
の移民割合は約40%で、常に優秀な人材を
募集している国でもあります。あと、特徴的
なのはワーキングホリデー・ビザがあり、こ
れをきっかけに豪州に住みたいと実感する人
が増えているのも事実です。
OECDによると、オーストラリアはGDP
における国の借金の割合が0.6%と、ほぼ
無借金の国。ちなみに日本は81%、米国は
47%です。そういうことを考えれば、どこ
の国に資産分散をすれば安全なのかは明確
ですよね。為替が上がっているのも、経済
力が高くなれば当然のことで、この辺のこ
とも理解していただきたいところです。
また、日本のように古いというだけで住宅
価値が下がるというのとは異なり、GCの不
動産は買った後の管理・リノベーションの仕
方によって、物件の価値が上がる場合もあり
ます。そこで、購入のことばかりを考えるの
ではなく「管理」についての方法や詳細を不
動産業者に聞くことも重要です。
そして、最後の決め手はやはり、本当に
自分がどこに住みたくて、何が欲しいのか、
どんな暮らしをしたいのかを考えることで
す。
「あの時、購入しておけば地価が上がっ
て利益が出たのに…」なんて考えても、ま
た下がるかもしれない。事実、GCは2000
年ごろから“不動産バブル”などと言われ
て、2、3年後にははじけるのではという風
説が流れましたが、結局、地価は上がった
し、下がってもソフト・ランディング(微減)
だったりします。だから、買いたいと思っ
た時が「買い時」なんですよ。それを逃し
たら、移住という夢さえ叶わないかもしれ
ません。どうか自分を甘やかして、夢のあ
る生活を掴んで欲しいですね。