薬 機 般発 第 1208001 号 平 成 23 年 12 月 8 日 日本製薬団体連合会 御中 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 一般薬等審査部長 斉藤和幸 「後発医薬品(以下、ジェネリック医薬品)に関する見解」の検討・公表に関する調査 について(依頼) 謹啓 時下益々御清祥のこととお慶び申し上げます。平素より後発医薬品関連業 務につきましては格別のご高配を賜り御礼申し上げます。 さて、この度、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)一般薬等審 査部では、厚生労働省の指示の下、関係学会の協力を得て、ジェネリック医薬品に 関する見解について検討することとしました(参考別添1 厚生労働省医政局経済課 事務連絡)。 具体的には、2009年10月に米国FDAが公表した「ジェネリック医薬品に関する 事 実 と 誤 解 (‘facts and myths about generic drugs, FDA, resources for you, information for consumers’(参考別添2 日本ジェネリック製薬協会仮訳)」を参考とし て、本邦にて平成23年1月までに承認されているジェネリック医薬品の承認申請書 の添付資料のうち、主に生物学的同等性試験による統計学的解析結果を用いてジェ ネリック医薬品全体、薬効群ごと等のさらなるデータ集計及び解析を試みたいと考え ています。なお、集計及び解析に用いるデータについては、守秘義務のかかる PMDA 一般薬等審査部が限定的に取り扱うこととします。 その結果公表においては、個別の品目及び企業情報は掲載しないで論文化を行 い、しかるべき学会誌に投稿する予定でおります。 つきましては、貴会におかれては、かかる趣旨をご理解いただき、別紙 1 及び別紙 2に従い、当該生物学的同等性試験結果を直接、PMDA 一般薬等審査部あてに電子 メールによりお送り下さるよう、貴会会員会社及び関係団体に対する周知方ご協力お 願い致します。集計上、送付の締め切りを平成24年1月31日とさせて頂きますので、 何卒ご協力の程よろしくお願い致します。 なお、PMDA へのデータ提供に異議あるいは支障などがある製造販売業者におい ては、お手数ですが平成23年12月28日までに、当該製造販売業者からその理由 を付し直接下記メールアドレスへご連絡いただきますようお願いいたします。 敬具 [調査に関するお問い合わせ先] 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 一般薬等審査部 後発医薬品データ集計担当 メールアドレス:generic-01@pmda.go.jp TEL:03-3506-9001 FAX:03-3506-1104 別紙 1 生物学的同等性試験結果の提出方法等について 1. 本事務連絡における分析対象の範囲 PMDA 発足(平成 16 年 4 月 1 日)から平成 23 年 1 月 15 日までに承認されたジェ ネリック医薬品(剤型追加に係る医薬品(再審査期間中でないもの)又はその他の医 薬品(再審査期間中でないもの))のうち、ヒトにおける生物学的同等性試験を行った 内用剤。 ただし、小分け品目の場合は親品目の製造販売業者、共同開発の場合は代表と なる 1 社のみを対象とします。 血中濃度測定を行っていないもの及び代替新規申請により新たに承認を取得した ものは対象外とします。 2. 当該生物学的同等性試験結果の提出方法等 (1)データの提出方法 エクセル様式(別紙 2)への入力による電子媒体での提出をお願いいたします。た だし、小分け品目の場合は親品目の製造販売業者、共同開発の場合は代表とな る 1 社のみから提出してください。 (2)データの提出先 generic-01@pmda.go.jp エクセル様式(別紙 2)のファイル名を「○○(会社名)+別紙2」とし、上記アドレス へ送信してください。なお、送信メールの末尾にご担当者名・所属部署・連絡先 (TEL・FAX 番号・メールアドレス)を記載してください。 3. データの入力 (1) 販売名:販売名を入力してください。ただし、販売名変更のための代替新規申請 (以下、「マル名」)を行っている場合は、マル名承認後の販売名を入力してくださ い。 (2) 製造販売業者名:製造販売業者名を入力してください。 (3) 承認年月日:承認年月日を和暦(H○.△.×)で入力してください。ただし、マル 名を行っている場合は、マル名承認後の承認年月日を入力してください。 (4) 有効成分名:一般的名称を入力してください。 (5) 含量・単位:有効成分の含量・単位を入力してください。 (6) 剤形名:試験製剤の剤形について、錠、OD錠、顆粒、散、細粒、カプセル、末、ド ライシロップ、液の中から選択してください。選択肢中に該当する剤形名がない場 合は、適切な剤形名を直接入力してください。 (7) 薬効分類番号:3 桁の番号(大・中・小分類)を入力してください。 (8) 治療濃度域が狭い薬物:「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の 一部改正について」(平成 18 年 11 月 24 日薬食審査発第 1124004 号厚生労働 省医薬食品局審査管理課長通知)別紙 3 表 3 に示す薬物は「○」、記載はない が該当する薬物は「●」、該当しない薬物は「×」を選択してください。 (9) 適用した生物学的同等性試験ガイドライン:①「後発医薬品の生物学的同等性試 験ガイドラインについて」(平成 9 年 12 月 12 日医薬審発第 487 号通知)又は② 「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について」(平成 18 年 11 月 24 日薬食審査発第 1124004 号通知)の 2 種から選択してください。な お、①の場合は「H9.12.22」、②の場合は「H18.11.24」を選択してください。 (10) 即放性製剤、腸溶性製剤又は徐放性製剤:即放性製剤、腸溶性製剤、徐放 性製剤の 3 種から選択してください。 (11) 製剤の種類:酸性薬物を含む製剤、中性又は塩基性薬物を含む製剤・コー ティング製剤、難溶性薬物を含む製剤、腸溶性製剤の 4 種から選択してください。 (12) 標準製剤の販売名:標準製剤の販売名を入力してください。ただし、マル名 を行っている場合は、マル名承認後の販売名を入力してください。 (13) 標準製剤の含量・単位:標準製剤の含量・単位を入力してください。 (14) 標準製剤との溶出挙動の類似性(判定):①「後発医薬品の生物学的同等性 試験ガイドラインについて」(平成 9 年 12 月 12 日医薬審発第 487 号通知)又は ②「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について」(平 成 18 年 11 月 24 日薬食審査発第 1124004 号通知)の判定基準に従い先発医薬 品と溶出挙動が類似している場合は「○」、先発医薬品と類似していない場合は 「×」を選択してください。 (15) 標準製剤との溶出挙動の類似性(試験液):上記(12)の判定基準に従い、 先発医薬品と溶出挙動が類似しない(×)場合のみ、下記「表1」を参照の上、類 似しない試験液全てに「×」を選択してください。また、「酸性薬物を含む製剤」及 び「中性又は塩基性薬物を含む製剤、コーティング製剤」の⑤、「難溶性薬物を含 む製剤」の⑧について溶出挙動が類似しなかった場合、備考欄に試験液の種類 (①~③、⑤~⑦のいずれか)を選択入力してください。 (16) 標準製剤との溶出挙動の同等性(判定、試験液):徐放性製剤については、 上記(12)(13)の溶出挙動の類似性に加え、溶出挙動の同等性についても(12)(13) と同様に選択、入力してください。 (17) 同等性の判定:生物学的同等性の判定について、試験製剤と標準製剤の生 物学的同等性判定パラメーターの対数値の平均値の差の 90%信頼区間が、 log(0.80)~log(1.25)の範囲内にある場合は「○」、前段の判定基準に適合しない 場合において、試験製剤と標準製剤の生物学的同等性判定パラメーターの対数 値の平均値の差が log(0.9)~log(1.11)であり、溶出試験で溶出挙動が類似してい ると判定された場合は「●」を選択してください。 (18) 試験例数:ヒト生物学的同等性試験の最終判定時の例数を入力してくださ い。 (19) t:ヒト生物学的同等性試験の最終サンプリング時間を入力してください。単 位は時間(hr)。 (20) 測定成分:未変化体、主活性代謝物の何れかを入力してください。その他の 測定成分を用いている場合は、測定成分の名称を入力してください。 (21) 投与条件:絶食投与、食後投与の何れかを入力して下さい。両方で試験を行 っている場合は、行を分けてそれぞれ情報を入力して下さい。 (22) 水の有無:口腔内崩壊錠、口腔内フィルム錠のみ試験製剤の水の有無を記 載してください。両方で試験を行っている場合は、行を分けてそれぞれ情報を入 力して下さい。 (23) AUC0-t90%信頼区間:試験製剤と標準製剤の AUC0-t の対数値の平均値の差 の 90%信頼区間を入力してください。対数変換を行なわずに評価を行なった場合 は、本項目に記載し、備考欄に「対数変換なし」と入力してください。 (24) AUC0-t 対数値の平均値の差:試験製剤と標準製剤の AUC0-t の対数値の平 均値の差を入力してください。対数変換を行なわずに評価を行なった場合は、本 項目に試験製剤の平均値/標準製剤の平均値の値を入力して下さい(備考欄の 記載は(23)と共通)。 (25) Cmax90%信頼区間:試験製剤と標準製剤の Cmax の対数値の平均値の差の 90%信頼区間を入力してください。対数変換を行なわずに評価を行なった場合は、 本項目に入力してください(備考欄の記載は(23)と共通)。 (26) Cmax 対数値の平均値の差:試験製剤と標準製剤の Cmax の対数値の平均 値の差を入力してください。対数変換を行なわずに評価を行なった場合は、本項 目に試験製剤の平均値/標準製剤の平均値の値を入力して下さい(備考欄の記 載は(23)と共通)。 (27) 標準製剤、試験製剤各パラメーター(AUC0-t,Cmax,t1/2):算術平均値(av)、標準 偏差(sd)を入力してください。なお、AUC0-t,Cmax については、承認時の添付資料 に記載された単位も入力してください。 (28) 備考:上記項目に入力できないものについて、情報がある場合、入力してくだ さい。 表1 番号 酸性薬物を 含む製剤 中性又は塩 基性薬物を 含む製剤、 コーティング 製剤 難溶性薬物 を含む製剤 腸溶性製剤 (⑤~⑦は 難溶性薬物 を含む腸溶 性製剤) 徐放性製剤 ⑤ 100 ① ② ③ ④ 50 50 50 50 ⑤ 100 ① ② ③ ④ 50 50 50 50 pH 1.2 5.5~6.5 6.8~7.5 水 ①②③のうちの いずれか一つ 1.2 3.0~5.0 6.8 水 ①②③のうちの いずれか一つ 1.2 4 6.8 水 ⑤ 50 1.2 ポリソルベート80添加 ⑥ ⑦ 50 50 同上 同上 ⑧ 100 ① ② ③ ④ 50 50 50 100 4 6.8 ⑤⑥⑦のうちの いずれか一つ 1.2 6 6.8 ② ⑤ 50 ② ポリソルベート80添加 ⑥ 50 ③ ポリソルベート80添加 ⑦ 100 ② ポリソルベート80添加 ① ② ③ ④ 50 50 50 50 1.2 3.0~5.0 6.8~7.5 水 - ⑤ 50 ③ ポリソルベート80, 1.0%(W/V)添加 ⑥ ⑦ 100 200 ③ ③ - 回転バスケット 100 ③ - 崩壊試験 200 30 3 ③ ③ ③ ディスク無し ディスク有り ① ② ③ ④ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ 装置 パドル 回転数(rpm) 50 50 50 50 界面活性剤 無添加 同上 同上 同上 ポリソルベート80添加 - 4. 提出期限 データの提出については、原則、平成24年1月31日までにお願い致します。期限 までに提出が困難な場合は、おおよその提出時期を電子メールによりご連絡くださ い。 5. その他 本件について疑義が生じた場合、下記に照会してください。 連絡先:〒100-0013 東京都千代田区霞ヶ関 3-3-2 新霞ヶ関ビル 11 階 (独)医薬品医療機器総合機構一般薬等審査部 後発医薬品データ集計担当 電話:03-3506-9001 FAX:03-3506-1104 別紙2 標準製剤との溶出挙動の比較 No. 販売名 製造販売業者名 承認年月日 有効成分名 含量・ 単位 剤形名 適用した生 酸性薬物を含む製剤/ 物学的同 即放性製剤、腸 中性・塩基性薬物を含む 薬効分類 治療濃度域 等性試験 溶性製剤、徐放 製剤・コーティング製剤/ 標準製剤の販売名 番号 が狭い薬物 性製剤 ガイドライ 難溶性を含む製剤/腸 ン 溶性製剤の種類 標準製剤との溶出挙動の類似性 標準製剤の含 量・単位 AUC0-t 90%信頼区間 標準製剤との溶出挙動の同等性(徐放性製剤) 試験液 同等性の 判定 試験液 判定 判定 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ 備考 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ 備考 試験 例数 t 測定成分 投与 水の 条件 有無 下限 値 上限 値 Cmax AUC0-t 対数 90%信頼区間 値の 平均 値の 下限 上限 値 値 差 標準製剤 Cmax 対数 値の 平均 値の 差 AUC0-t 試験製剤 AUC0-t t1/2 Cmax t1/2 Cmax 備考 av 単位 sd av 単位 sd av sd av 単位 sd av 単位 sd av sd 参考別添1 事 務 連 絡 平成23年6月17日 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 御中 厚生労働省医政局経済課 後発医薬品に関する科学的な見解のとりまとめについて 後発医薬品については、患者負担の軽減や医療保険財政の健全化に資するこ とから、政府としてその普及促進に積極的に取り組んでいるところです。 しかしながら、後発医薬品への誤解に基づいた批判的な意見は依然として強 く、中央社会保険医療協議会・診療報酬改定結果検証部会における後発医薬品 使用状況調査においても、厚生労働省による後発医薬品の品質保証の周知徹底 を求める意見が多く見受けられるところです。 こうした状況を踏まえ、医療関係者が後発医薬品に対する正しい理解を得る ための広報の一環として、後発医薬品の審査基準等が科学的に妥当であり、品 質、有効性及び安全性が先発医薬品と同等であることを実証的にとりまとめた 資料を作成したいと考えております。 本件の実施にあたっては、後発医薬品の承認審査を行う貴機構の協力が不可 欠です。つきましては、貴機構一般薬等審査部職員のご参画を賜りますよう、 ご協力方お願い申し上げます。 担当:医政局経済課後発医薬品使用促進専門官 松野 参考別添2 FDA, Drugs, Resources for you, Information for Consumers (Drugs) “Facts and Myths about Generic Drugs” 日本語訳文 ジェネリック医薬品に関する事実と誤解(“Facts and Myths about Generic Drugs”, FDA, Resources for you, Information for Consumers (Drugs)) 10/13/2009 現在、アメリカで処方される処方箋の 7 割はジェネリック医薬品が処方されています。本 ファクトシート(fact sheet)は、ジェネリック医薬品がどのようにして製造、承認されるか を説明し、ジェネリック医薬品に関してよく聞かれる誤った理解を正すものです。 事実:FDA はジェネリック医薬品に先発医薬品と同じ品質・効果を求めている。 ジェネリック医薬品が承認されるためには、その製品の、同一性(物性) 、含量、品質、純 度、力価について FDA が定めた厳しい基準に合致しなければなりません。先発医薬品でも ジェネリック医薬品でも、製造の過程である程度のばらつきが起こります。ジェネリック 医薬品でも先発医薬品でも、医薬品が大量生産される際に認められる純度、サイズ、含量、 その他の指標のわずかなばらつきは許容されています。FDA は、医薬品の組成や効果のば らつきの許容範囲を設定しています。 ジェネリック医薬品には先発医薬品(または標準薬)と同じ有効成分、含量、剤形、投与 経路が要求されます。ジェネリック医薬品の賦形剤(非活性成分)は先発医薬品と同じで ある必要はありません。 FDA は、生物学的同等性データを審査することにより、ジェネリック医薬品がその先発医 薬品(または標準製剤)と同じ効果があることを保証しています。この基準は、即放性の ものであれ、徐放性のものであれ、すべてのジェネリック医薬品に適用されます。 ジェネリック医薬品は標準製剤と生物学的に同等性であることを示さなければなりません。 すなわち、標準製剤ときわめて類似した血中濃度を示さなければなりません。血中濃度が 同じであれば、治療効果も同じになります。その場合、臨床有効性試験を行う必要はなく、 そのような試験は求められません。 ジェネリック医薬品の製造、包装、試験を行う施設はすべて、先発医薬品と同じ品質基準 に合格しなければならず、ジェネリック医薬品は先発医薬品と同じ厳格な規格を満たさな ければなりません。実際、多くのジェネリック医薬品が、先発医薬品と同じ工場で製造さ れています。 新薬メーカーが、当該先発医薬品の製造場所を代替製造施設に切り替えたり、先発医薬品 の処方を変更する場合、ジェネリックメーカーに適用されているものと同じ厳しい製造に 関する基準を満たなさなければなりません。 事実:ジェネリック医薬品は、先発医薬品と全く同じように効果があることが調査研究に よって証明されている。 先頃、循環器系のジェネリック医薬品と、その先発医薬品とを比較した 38 報の臨床試験デ ータを評価する研究調査が行われました。循環器系の先発医薬品がジェネリック医薬品よ りも効果が優れているという証拠はありませんでした。 [Kesselheim et al. Clinical ©翻訳日本ジェネリック製薬協会 2009 年 10 月 30 日 1 FDA, Drugs, Resources for you, Information for Consumers (Drugs) “Facts and Myths about Generic Drugs” equivalence of generic and brand-name drugs used in cardiovascular disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2008;300 (21)2514-2526] 事実:価格面では、ジェネリック医薬品と先発医薬品の間には大きな差がある。平均で、 ジェネリック医薬品の価格は先発医薬品の価格と比べて 80~85%安くなっている。 IMS の全米処方箋監査(National Prescription Audit)データによれば、現在、標準的な 処方薬リスト(formulary)では、ジェネリック医薬品の場合 6 ドル、推奨先発医薬品*の場合 29 ドル、非推奨先発医薬品*の場合 40 ドル以上となっています。[Aitken et al. Prescription drug spending trends in the United States: looking beyond the turning point. Health Aff (Millwood). 2009;28(1):w151-60] 独立系の調査によれば、2006 年から 2007 年にかけてのアメリカにおける医療用医薬品の 支出合計額は 2,760 億ドルから 2,870 億ドルに、わずか 4.0%の増加であった。この増加率 は 2006 年の医療用医薬品支出額の増加率 8.9%からは大きく下がっています。この支出額 の増加が抑制された理由として引き合いに出される 1 つの要因は、ジェネリック医薬品が 入手しやすくなったということと使用の増加です。[Hoffman et al. Projecting future drug expenditures--2009. Am J Health Syst Pharm. 2009;66(3):237-57] 訳注*保険の償還リストへの収載に際して先発医薬品で保険会社が償還しても良いと しているもので比較的低価格品を推奨品とし、新しい高い医薬品は保険では非推奨 品として償還率を下げている。 最近、ジェネリック医薬品に関して懸念を引き起こす誤った情報が流れています。以下は よくみられる誤解の一部です。 誤解:FDA は、ジェネリック医薬品が最大 45%まで先発医薬品と異なることを認めている。 訳注:45%は、生物学的同等性試験の許容域である 80%~125%のこと。 事実:この主張は誤りです。この間違った情報を繰り返し公言する人は、FDA がどのよう にしてジェネリック医薬品を審査、承認しているかを理解しておられません。 先頃、FDA は、1996~2007 年に実施された 2,070 件のヒト試験を検証しました。これら の試験は、先発医薬品とジェネリック医薬品のヒト体内での吸収を比較したものです。こ れらの試験はジェネリック医薬品の承認のために FDA に提出されました。ジェネリック医 薬品と先発医薬品の体内への吸収の平均的差異は、わずか 3.5%でした。 [Davit et al. Comparing generic and innovator drugs: a review of 12 years of bioequivalence data from the United States Food and Drug Administration. Ann Pharmacother. 2009;43(10):1583-97]ジェネリック医薬品の中には、わずかに多く吸収されるものも、わず かに少なく吸収されるものもありました。この差異は、同じ先発医薬品の異なるバッチを 比較した場合でも、ジェネリック医薬品と先発医薬品を比較した場合でも、想定されてい たものであり、許容範囲内のものです。実際、先発医薬品とジェネリック医薬品の比較と 同様に、先発医薬品同士を比較した試験もあります。ジェネリック医薬品と先発医薬品を 比較した場合の差異は、先発医薬品同士を比較した場合の差異と概ね同じ程度でした。 先発医薬品(標準製剤)をモデルにして作られたジェネリック医薬品は、体内でその先発 ©翻訳日本ジェネリック製薬協会 2009 年 10 月 30 日 2 FDA, Drugs, Resources for you, Information for Consumers (Drugs) “Facts and Myths about Generic Drugs” 医薬品とほぼ同じように作用しなければなりません。わずかな、しかし医学的に重要では ない程度の自然なばらつきは常にあります。これは同じ先発医薬品でもバッチ間でばらつ きがあるのと同じです。 誤解:ジェネリック医薬品に切り替えた人は治療が失敗するリスクがある。 事実:この主張には証拠がない。治療の失敗は、ジェネリック医薬品でも先発医薬品でも 起こる可能性があるし、実際に起こることがある。再発期にジェネリック医薬品に切 り替えた人がいたならば、その人は再発が薬を切り替えたせいだと思うかもしれない。 深刻なうつ病から回復した多くの人々は、治療を継続していても再発を経験します。これ らの再発は長期治療の臨床試験で報告されています。[Byrne and Rothschild. Loss of antidepressant efficacy during maintenance therapy: possible mechanisms and treatments. J Clin Psychiatry. 1998;59(6):279-88] 発作の治療薬を服用している多くの人々は、治療を継続していても再び発作を起こします。 [Randomised study of antiepileptic drug withdrawal in patients in remission. Medical Research Council Antiepileptic Drug Withdrawal Study Group. Lancet. 1991;337(8751):1175-80]. 初期に良好な反応を示し、処方用量の制酸薬剤による治療を継続しているにもかかわらず、 一定割合の人が胃潰瘍の再発を経験します。 (シメチジン錠、 http://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?id=8131#nlm34067-9). 誤解:ジェネリック医薬品が安いのは、それらが先発医薬品よりも劣るためである。 事実:ジェネリックメーカーが製品を安く売ることができるのは、先発医薬品と比べて品 質が劣るためではなく、これらのメーカーは、概して費用のかかる宣伝やマーケティ ング、販売促進活動、大規模な研究開発を行わないためである。 先発医薬品の特許が切れて、ジェネリック医薬品が先発医薬品と競争できるようになると、 ジェネリック医薬品はより低い価格を提示して競合します。先発医薬品メーカーとは異な り、ジェネリック医薬品メーカーは、宣伝、マーケティング、販売促進活動、研究開発に かかる莫大な費用を回収する必要がありません。 誤解:ジェネリック医薬品の製造には品質問題がある。先頃のジェネリック医薬品のジゴ キシン(商品名 Digitek)のリコールは、ジェネリック医薬品が患者を危険にさらし ていることを示している。 事実:この事例における FDA の積極的な措置は、すべての処方薬―ジェネリック医薬品、 先発医薬品とも―が遵守しなければならない高い基準を示すものである。 2008 年 3 月、FDA は Actavis 社の製造施設の定期的*査察を行い、2006 年以来必要な規 格を満たさずに製造されていた製品を見つけました。この製品リストの中に、問題の Digitek のロットが含まれていました。 (*予定された通常の;承認前とか、緊急のもので ない) ©翻訳日本ジェネリック製薬協会 2009 年 10 月 30 日 3 FDA, Drugs, Resources for you, Information for Consumers (Drugs) “Facts and Myths about Generic Drugs” Actavis は、このロットの中に既定サイズよりも大きい錠剤を極少数検出しました(具体的 には、約 480 万錠のサンプル中 20 錠が規定の 2 倍の大きさ) 。 Actavis は、異常のあった Digitek の錠剤を目視検査で取り除こうとしましたが、医薬品の 製造管理及び品質管理基準(cGMP)規制に準拠した製品の品質および一貫性を保証するた めには、この除去方法では不十分だと FDA は判断しました。 製造上の問題が発覚して以来、FDA は異常の恐れのある Digitek 錠すべてのロットが確実 にリコールされるように、積極的に関与してきました。私たちとしては、市場に出回った 可能性のある欠陥のある錠剤はあったとしてもきわめて少数であったであろうこと、リコ ール前に有害事象の報告がなかったことから、患者への被害の可能性はほとんどなかった と判断しております。 製薬会社がcGMP に従っていないことが判明した場合、FDA は措置を講じます。過去 10 年間に、FDA は FDA の製造品質基準を満たしていない数多くの先発医薬品メーカー、ジ ェネリック医薬品メーカーに対して強制措置をとっています。 誤解:ジェネリック医薬品メーカーRanbaxy に対する FDA の強制措置は、輸入ジェネリ ック医薬品に品質問題があること示している。 事実:FDA の措置は、安全なジェネリック医薬品に対する FDA のこだわりを示すもので ある。 FDA は、Ranbaxy の 2 つの製造施設における問題に基づき、同社に対していくつかの規制 措置を講じました。Ranbaxy は、米国外に本拠地を置く数多くあるジェネリック医薬品・ 先発医薬品メーカーの 1 つです。 2008 年 9 月、FDA は 2 通の警告書を出し、U.S. cGMP の要求事項に対する違反により、 Ranbaxy のデワス、パオンタサヒブ、バタマンディの製造施設からのすべての最終製品お よび有効成分の輸入を禁じる輸入警告(Import Alert)を発しました。この措置は 30 種類 のジェネリック医薬品のアメリカへの販売のための輸入を禁止するもので、今日も有効で す。(http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm149532.htm)。 その後の FDA 調査でも、 Ranbaxy のジェネリック医薬品申請の信頼性に関して重大な疑問 を投げかける一連の疑わしいデータが明らかになりました。 改 ざ ん の 疑 い が あ る デ ー タ に 対 処 す る た め 、 FDA は パ オ ン タ サ ヒ ブ 工 場 に 対 し て Application Integrity Policy (AIP) を発動しました。AIP が発せられますと、FDA は、同 工場由来のデータを含む新規申請や申請中のすべての実質的科学審査を中止します。この AIP は、パオンタサヒブ工場由来のデータに基づく申請のみを対象とするものです。 事業年 2008 年度、FDA は 2,221 件の医薬品関連査察を実施した。FDA はジェネリック医 薬品メーカーに対してだけでなく、多様な強制措置を実施しました。事業年 2008 年度の強 制措置のリストは以下のサイトを参照のこと: http://www.fda.gov/downloads/ICECI/EnforcementActions/EnforcementStory/UCM1298 12.pdf. ジェネリック医薬品であろうと先発医薬品であろうと人々が使用する医薬品が安全で効果 があることを確認保証するのが FDA のつとめです。 誤解:先発医薬品はジェネリック医薬品よりも安全である。 事実:特定のジェネリック医薬品に関して、FDA はほとんど有害事象報告を受け取ってい ない。有害事象報告の大半は、医薬品原料自体の副作用に関するものである。 ©翻訳日本ジェネリック製薬協会 2009 年 10 月 30 日 4 FDA, Drugs, Resources for you, Information for Consumers (Drugs) “Facts and Myths about Generic Drugs” ジェネリック医薬品を含むすべての医薬品の市販後有害事象のモニタリングは、承認後の 医薬品の安全性を評価するための FDA の取り組みの 1 つです。ほとんどの場合、有害事象 報告に記載されているのは、医薬品の有効成分に対する既知の副作用です。 誤解:FDA はジェネリック医薬品に対する懸念を気にしていない。 事実:FDA はすべての規制製品―ジェネリック医薬品を含む―をより安全なものにするた めに積極的に努力している。 先発医薬品からジェネリック医薬品に切り替えた時、またはあるジェネリック医薬品から 別のジェネリック医薬品に切り替えた時に、望ましくない効果を経験する人がいる可能性 を示した報告書があることを、私たちは承知しています。しかし、医薬品の製剤の代替互 換性に関するして問題が起こるとしても、それらはごく少数の人々にしか発生していない という証拠があります。 FDA はジェネリック業界に対し、こうした問題が発生するかどうか、またどのような状況 下で発生するのかを調査するよう促しています。FDA は独自に臨床試験を実施するだけの リソースをもっておらず、こうした試験を実施するよう業界に求める権限もありません。 FDA はこうした治療の失敗に関するすべての事実を把握することを確実にするため、これ らの報告書の調査を継続し、必要が生じた場合は医療専門家および一般の人々に対して勧 告を出すでしょう。 終わり ©翻訳日本ジェネリック製薬協会 2009 年 10 月 30 日 5
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