2011 三重総合 数学科 菅 淳 司 「人工衛星が人に当たる確率は,3200分の1」という数字(確 Vol. 11 率)を聞いてどのように感じましたか?「結構高い確率だなあ」 と思いませんでしたか?「当たる」といえば…「宝くじ」を思 人工衛星が人に当たる確率 い浮かべてしまいますが,年末ジャンボ宝くじの1等(2億円)が当たる 確率は10,000,000分の1(1千万分の1)です。宝くじと比べると結構 ~人工衛星は私に当たるのか?~ 当たりそうな(?)感じがしませんか? しかし,この「3200分の1」という確率は, 2011年9月9日にアメリカ航空宇宙局(NASA)から,注意報が発表 「地球上の⼈類誰かに当たる確率」のことです。 されました。 特定の誰か,例えば「あなた⾃⾝に当たる確率」となると, 地球上にはおよそ70億人の人間がいるので この秋,人工衛星の破片が空から降ってくるかもしれない。そして 計算上,21兆分の1という確率となります。 それが世界のだれかに当たる確率は3200分の1である。 まるで当たる可能性がないことが分かると 思います。と,いっても「注意報」が出て 今回,地球落下の恐れがあるのは, いる以上まったく可能性がないというわけではなく,注意は必要ですが… 1991年に 打ち上げら れた大気 観測 「人工衛星が当たる可能性があるから,外出を取りやめる」というような 衛星「UARS」(約6トン)。 話にはならないでしょう。 2005年 に運用を終 え,現在 は高 どうせ「当たる」なら,宝くじに当たりたいものですね。 度約250キロ付近を漂っていますが 高度は徐々に下がっており,9月下旬 数学の世界では「確率」とは,同じ状態のもとで繰り返すことができて, から10月上旬にかけて,大気圏に突 その結果が偶然によって決まる実験や観測を「試行」と呼び,その試行の 入する見通しだそうです。 結果起こるすべての結果と,特定の結果(事象)が起こる割合と定義して 軌道の角度からみて,破片が落ちるのは赤道を挟んだ北緯57度~南緯5 います。すなわち,「繰り返し」起こらなければ「確率」という考え方に 7度の間で,世界の広い範囲が対象地域となっています。その範囲には当 は当てはまらないことになります。 然日本も含まれています。 2011年10月22日に,アメリカの衛星に続いて,今度はドイツの人工 NASAの試算では大部分は燃え尽きるが,26個の金属破片(計532キ 衛星「ROSAT」が地球に落下するという報道がありました。今回,人に ロ)が800キロ四方の範囲に落ちる。この一つが,世界のだれかに当たる 当たる確率は前回の3200分の1より高い2000分の1とされています。 確率は3200分の1だということでした。現在,被害の報道がないところ 今回も特に大きな被害は生じなかったようです。人類が宇宙開発を行っ をみると,今回は3200分の1には該当しなかったようです。 た結果,繰り返し起こってしまう事柄ですが…,願わくば地球上に甚大な 被害をもたらすことだけは何とか避けてもらいたいものです。 Math2 No.1111/作成日:2011年10月28日
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