第11回 The Master of Bridal Coordinator コンテスト 論文試験 論文テーマ『ブライダル業界の活性化に向けて』 「将来の婚礼業界のためになすべきこととは」 マナーハウス島津重富荘 チーフウェディングプランナー 加治木絵麻 ある結婚披露宴での様子だが、座っていることに飽きてきたのであろうふたりの女の子が、入場扉前で 遊んでいた。そこに、和装にお色直しをした新郎新婦が入場準備で近づいてくると、そのふたりが遊ぶの をやめて、 「綺麗!」と新郎新婦に纏わりついていた。このふたりのように、幼い頃に、花婿花嫁を間近で 見たり、接したりする機会が何度かあれば、結婚や結婚式を実施することへの憧れが大きくなるのではな いだろうか。婚姻数や出生数が減少傾向にある今、どのようにしたら、幼い子どもたちが、結婚や結婚式 に触れる機会を増やせるのか、考えてみた。 自分自身のことを振り返ると、幼い頃、結婚式に出席した記憶は 2 回しかない。父が 4 人兄弟、母が 3 人姉妹の私でも、2 回だけである。少子化が進み、親戚の人数が少ない現在の子どもたちは、なおさら経 験できる回数が少ないだろう。大人になるまで、一度も本物の花婿花嫁を見た事が無かったという人もい るのではないだろうか。少子化の現状を今すぐに変えることは出来ないので、親戚の結婚式に出席する回 数を増やすことは難しい。それでは、親戚ではなく、近隣の人々の結婚式に触れられる機会を増やせない だろうか。 「ゼクシィ結婚トレンド調査 2014 九州」によると、挙式した会場は一般の結婚式場が 34.3%、ホテル が 25.9%、ゲストハウスが 16.9%と、設備が整っているところでの挙式が全体の 77.1%を占める。そのほ とんどの人は、挙式場内で支度をし、披露宴が終われば平服に着替え、挙式場を出ている。つまり、招待 されたゲストしか、花婿花嫁の姿を見ることが出来ないのである。私は、ここに改善点があるのではない かと考える。 花嫁支度を挙式場とは別の場所でする回数を増やせないだろうか。自宅で出来れば尚更良いと思う。自 宅で支度をし、近所への挨拶を兼ねて、花嫁行列を行うのである。きっと、近所の子どもたちが花婿花嫁 を見るために集まってくるであろう。周りの人々に祝福されている花婿花嫁を、幼い頃から近くで見てい た子どもたちは、いずれ同じように結婚式をしたいと思うのではないだろうか。 しかし、実際に挙式場以外で支度をするには、移動のための車代、美容師やカメラマンの出張料など、 挙式場で支度をするよりも費用がかかる。そこで、補助金について考えてみた。地域に住む男女が結婚を し、ハレ姿を近隣の人々にお披露目をすることで、その地域の婚姻数や出生数が上がれば、地域活性の大 きな力となる。特に、過疎化、高齢化が進む地方では有効ではないだろうか。そのような点に注目すれば、 自治体が補助金を交付するということも、ひとつの方法ではないかと思う。 少子化は避けて通れない今だからこそ、挙式場を探しているカップルの獲得だけに注力するのではなく、 いかにして結婚や結婚式をしたいと思う人々を将来的に増やすかを熟慮し、その対策を実行することが、 婚礼業界の大きな課題であり、発展の礎であると思う。 第11回 The Master of Bridal Coordinator コンテスト 論文試験 論文テーマ『ブライダル業界の活性化に向けて』 新郎新婦の声を届けたい (株)レック 小さな結婚式 浦和店 渡邉 未来 「やっぱり、結婚式を挙げてよかったです。 」先日担当したお客様が式後に残された言葉である。ウエディ ングプランナーである私にとってこれほど喜びとやりがいを感じる言葉はない。 近年、結婚式を挙げないカップルが増え続けているのには様々な理由があるが、結婚式に意義を感じな い事が、最大の理由だと私は考える。 冒頭の一言を口にしたお客様はカナダと日本の国際結婚で、準備の忙しさや、新婦が二度目の結婚だっ たことがあり元々挙式をする考えはなかったが、ビザの申請の関係で式を挙げることとなったとの事だっ た。そのせいか、お打ち合わせの段階では形だけでも式が挙げられればいいということで、あまりこだわ りが強くないようだった。 しかし打ち合わせが進むにつれ、お二人の式に対する熱がだんだんと熱くなっているように感じた。例 えば、カナダから参列する方に日本の魅力を楽しんでほしいという思いから、挙式の衣装をドレスから和 装に変更したり、引出物をこだわりの和菓子にしたり、日本の方には引出物の中にカナダの名物であるメ ープルシロップを用意したり、誓いの詞を日本語で披露した。はじめは式の準備も面倒と思っていたお二 人だが、当日を終えた新郎新婦の顔は愛に満ち溢れているように感じた。それは打ち合わせでは見た事の ない笑顔だった。そしてこの新郎新婦と式後にゆっくりと話をし、式を挙げて良かった点を聞くことがで きた。 ・二人の親族へ結婚相手をお披露目できた ・家族だけでなく、列席者とのつながりを感じられた ・列席者に感謝の気持ちを伝えることができた ・新しい家庭を持つことを実感できた 以上のことが、新郎新婦からの意見であった。これらは、式を挙げなければ他に機会を設ける必要があっ たり、機会がないままになったり、感じることの出来ない事であったりする。結婚式を挙げないカップル はこういった生の声を知らないのではないか。 このように新郎新婦の声を聞き、私は、結婚式の意義を感じないという要因は、結婚式を挙げた新郎新 婦の生の声、実際の経験談を知らないことが大きいのではないかと考える。 そして、結婚式を挙げる意義をより多くの人に感じてもらうための活動を行うことが、これからのブライ ダル業界の活性化に必要だと考える。以上のことから、結婚式を実際に挙げてよかったというカップルの 声を入籍するカップルに形にして届ける活動をしていくべきであると言える。婚姻届を提出する際や、産 婦人科など、様々な場所で色々な形の結婚式についての資料を渡したり、DVD などの映像を見てもらった り、講演会をしたりするのも効果があるのではないか。このような活動をこれから更に考え、進めて行き たいと思う。 第11回 The Master of Bridal Coordinator コンテスト 論文試験 論文テーマ『ブライダル業界の活性化に向けて』 「LGBTの結婚式市場への着目」 甲府富士屋ホテル 婚礼課アシスタントマネージャー 萩原 徹朗 「さあ、大きな声で、僕は彼が好き。私は彼女を愛している。」 「人を好きになる」とは全人類に与えられた権利であり、自然なことである。「愛する人と結婚する」 誰もが抱く夢だろう。しかし法律上の婚姻関係が成り立たないLGBTには認められていない。 「LGBT」とはL=レズビアン(女性同性愛者) G=ゲイ(男性同性愛者) B=バイセクシュアル(両性愛者) T= トランスジェンダー(性同一障害など)の頭文字を取り、セクシャル・マイノリティ(性的少数者)を表す。最 近ニュースでも取り上げられ耳にするようになったが、性的マイノリティに対して私達はどれだけ理解し ているだろうか。 ある調査によれば 日本の人口の20人に1人はLGBT、また結婚式を望む割合は約6割に及び、ハワイでは 7組に1組が同性婚だと言う。この現状を知ってまず感じたこと、今まで職場の同僚や友人など自分の周り にLGBTがいると考えたこともなかった、そんな自分が少し情けなく思えた。またLGBT同士の結婚に対 して需要があるにも関わらず、受け入れ側のブライダル業界でも未だ認知度が低く、国内で同性婚への理 解やサポート体制も整っていない。 婚姻届けに対して約半数が結婚式を挙げない今、結婚式の数は今後も下降の一途を辿ることが予想され る。「経済的理由」や「価値観を見出せない」そんな理由から結婚式を挙げない現状、それと相反するよ うにLGBTのように結婚式を挙げたくても挙げる場所を見つけにくい、周囲に理解されないといった同性 愛者同士の結婚式の現状がある。 私達ブライダル業界にとって同性婚はこれから私達が着手すべき大きなマーケットだと思う。その取り 組みが社会的にも経済的にも今後のウエディング市場に影響を及ぼすと言っても過言ではない。では、実 際LGBTにどう接してどう向き合っていけばいいのか。考えてみると結婚式の衣装の問題、ヘアメイク、 式の演出、列席者へのケアなど問題は山積みであった。その1つ1つおふたりの希望を伺いながら一緒に 考え解決していく、そんな姿勢が理想ではないかと思う。しかし、その一方でホテルや専門式場などでは パッケージされたプランなどで対応していることも多いことから業務の大変さは計り知れないだろう。 同性婚が認められていない日本において、法整備が整うのを待っていては何も始まらない。ブライダル 業界が貢献できること、まずは「結婚式」を入口にあらゆる偏見を取り除いてビジネスチャンスを作るこ と、そして私達コーディネーターは結婚式の概念に囚われない提案力をもっと養っていかなければならな いと思う。その積み重ねが今後のウエディング市場に大きな役割を果たし、活性化へとつながっていくの ではないだろうか。結婚式は「幸せ」の象徴である。安心して結婚式を挙げることのできる環境作りなど ブライダル業界こそ先陣を切り、前に立ち手を差し伸べていくべきではないだろうか。 第11回 The Master of Bridal Coordinator コンテスト 論文試験 論文テーマ『ブライダル業界の活性化に向けて』 Magritte garden ウェディングプランナー 室井 輝 ブライダル業界が活性化していくにあたり必要な事は何か。私は都会では実現できない地方ならでは の結婚式を創り上げていくことだと考える。 現在、多くの企業が主要都市やこれから発展していく都道府県への進出が多く見受けられる。今年は 石川県の金沢市が 3 月の新幹線の開通をきっかけにたくさんの大手企業が店舗進出をした。 確かに主要都市への進出は注目度が高まり、獲得組数を伸ばすことができる。そして利用するゲスト にとっても、地方に比べ公共交通機関が発達しているためアクセス面の心配をする必要が少ない。 それに比べ地方は電車も 1 時間に数本しか無い事や、車でないと行く事が出来ない事もしばしばだ。 そして、地方は人口減少が懸念されているため、ただ単に地方に結婚式場を店舗展開するだけでは生き 残りは厳しい事が予想される。 そこで大切なのが、主要都市との差別化だ。例えば、ガーデンやオーシャンビューなどのリゾートウ ェディングがその1つだ。自然の良さを人工的に創り上げる事は都会では難しい。 現在私は、栃木県の足利でガーデンウェディングを行っているが、栃木県に縁もゆかりもない新郎新 婦様がわざわざ東京や千葉、茨城などから見学にお越し下さり、ここで結婚式を挙げる事を決めて下さ る方が増えてきた。その理由として、リゾートウェディングでメジャーである軽井沢や那須で結婚式を 挙げるのは遠すぎて難しいが、ガーデンウェディングがしたいと考える方が増えてきたことが考えられ る。確かに足利という土地は東京方面でも 1 時間程あれば移動が可能で、かつガーデンウェディングが 出来るという他には無い魅力がある。駅からの送迎バスがあればアクセス面の心配も無い。このように 足利だからこそできる結婚式がここにはある。 また、私には夢がある。私の故郷である小豆島で唯一無二の結婚式を創り上げる事が私の夢だ。山や 海がすぐ近くにあり景色が素晴らしい小豆島。ロケーションは抜群である。また、オーガニックの素材 や無農薬の野菜などが注目されている中で、地野菜や海産物を使った料理を取り入れる事で、そこでし か味わう事のできない物をゲストに振舞う事ができる。島民ではなく島外の人をターゲットにしていく 為、アクセス面に関しては、旅行会社などと協力しながら結婚式に列席の方の特別プランのようなもの を作りたい。実現していく為には解決していかなければいけない問題が様々あるが、これが実現できれ ばきっとどこにも真似する事のできない唯一無二の結婚式を創り上げる事ができる。 「遠いから行けな い」ではなく「遠くても行きたい」結婚式場になるはずだ。さらに、その地域の産業の活性化にも繋が る。 私はブライダル業界の活性化に向けて、あえて地方に目を向け、都会ではできないその土地ならでは の結婚式を創り上げていく事こそが活性化に繋がると考える。 第11回 The Master of Bridal Coordinator コンテスト 論文試験 論文テーマ『ブライダル業界の活性化に向けて』 世界基準の結婚式 富士屋ホテル 婚礼宴会課 栗本麻由子 日本のブライダルの「お客様」とは誰だろうか。 結婚する新郎新婦、結婚を夢見る若者子供たち・・そのお客様は果たして日本人だけだろうか。2020 年 には東京オリンピック・パラリンピック開催をひかえ、また観光客数においても日本政府観光局(JINTO) によると昨年1年間の訪日外国人は 1341 万人と過去最高を記録している。ブライダルに直結するわけで はないが、日本への興味が高まる中、私たちも無関係ではいられない。例えば国際結婚のカップルや、海 外の新郎新婦にも日本で結婚式を挙げてもらえないか。海外に視野を広げ、日本のブライダルを世界基準 にする。そうすることで日本のブライダルのお客様を増やせないだろうか。 私にそう思わせてくれたのは、昨年の夏、担当をした日本人の新婦、パキスタン国籍・カナダ在住の新 郎だった。 初回の打ち合わせ時、その新婦から開口一番に出た希望は「ゲスト全員が楽しめる一日にしたい」とい うものだった。私は海外のゲストにも楽しんでもらえるよう日本らしい会席料理の披露宴と、そして新婦 が気に入ったガーデンを使用して人前式とシャンパンパーティーを提案したのである。ところが新婦から はこう答えが返ってきた。 「和風にはこだわっていません。ゲスト全員が、宗教文化の違いに関わらず、不都合なく気持よく過ごし てもらうことはできないでしょうか。 」 新婦のこの思いを叶え、ガーデンパーティーと、宗教上の制限に配慮したオリジナルメニューでの会食 会をやることに辿り着いた。宗教上飲酒できないゲストを考慮し、ガーデンではシャンパンの代わりにノ ンアルコールドリンクとフルーツを用意し、お子様の為に日よけのテントとバルーンも飾り付け、人前挙 式と両家の仲を深めるカジュアルパーティーの時間を設けた。 結婚式一週間後、新郎新婦から手紙を頂いた。最も記憶に残っているのは「私の家族も海外から参加し たゲストも、皆喜んでくれたことが何よりの贈り物です」という言葉だ。 私はこの新郎新婦から、これまで提案してきたウェディングがいかに型にはまったものであったのかを思 い知らされた。形式的な挙式・披露宴の概念を捨て、新郎新婦の想いを新たな結婚式の形にする為には、 視野を広げていくことがいかに重要かを突きつけられたのである。 トレンドや時代の変化、業務成績など、限られた時間のなかで私達が追いかけるものは目の前に溢れて いる。私は、その先にある一生ものの笑顔をつくりたい。新郎新婦の想いを受け入れ、時には引き出し、 一から結婚式をつくっていく。結婚式・披露宴をやろうと思えない新郎新婦が半数いる今の日本で働く、 私たちブライダルコーディネーターだからこそ、より自由で、そして広い視野が必要だと思うのだ。 結婚式を挙げるなら日本で、と思われる日を作りたい。日本のブライダルの力で、最高の幸せと感謝を 増やしていけると私は信じている。 第11回 The Master of Bridal Coordinator コンテスト 論文試験 論文テーマ『ブライダル業界の活性化に向けて』 Shall we celebrate Japanese Wedding? 大阪観光専門学校 学務部 宮田 信恵 非常識が常識に、常識が非常識にと常に日本人の意識も変化している。 平成 25 年 4 月 1 日、東京渋谷区にて「同性パートナーシップ条例」が施行され、同性婚を認めたという 記事を見た。LGBT の世間一般の理解が認識された出来事だ。東京ディズニーランドでもウェディングドレ スに包まれた二人の幸せそうな同性婚のニュースがあった。京都のホテルや寺院ではすでに LGBT の方の 婚礼プランがある。好きになった相手が同性か異性かであって、根底にある幸せになりたいと願うことは 同性も異性も同じはず。授かり婚が今では二重のおめでたいことで皆から祝福されるように、近い未来「人 生を共に歩むパートナーができて良かったね」と幸せ一杯の LGBT の二人の披露宴が一つの披露宴スタイ ルとして存在するだろう。プランナーを含め、LGBT の知識と価値観の理解がますます必要になると考える。 何よりも、披露宴でのお披露目が人々の意識変革に一番効果的な機会の場になるはずだ。 また、インバウンドの増加によるグローバル化が目覚ましく発展している。 先日、大阪の難波の夜を家族で歩いていると日本人以上にインバウンド取り分けアジア諸国の観光客ば かりで驚いた。ホテルの稼働率も軒並み右肩上がりである。政府観光庁がビジット JAPAN キャンペーンを 促進し、また観光ビザ緩和によりすでに年間 1000 万人を超え、現在 2000 万人を目標に挙げている。2020 年の東京オリンピック開催も後押しし、インバウンドや外国就業者の数がますます増加するだろう。日常 に外国人が当たり前になり、日本人がハワイでの海外挙式をするように、きっと日本での和婚式や和装で の記念写真を残したいと考える外国人カップルも増えると考える。何よりもこんなに友好的で安全な国は ない。 世界的に SNS を利用した情報入手が簡単になったからこそ、 短期間で可能な婚礼プランの提案など、 語学力にたけたスタッフが多いホテルでは、滞在中にいろんな提案と可能性がある。例えば、宿泊予約段 階でオプショナル選択項目として、到着してすぐに、衣装合わせ、美容相談、神前式の作法やカウンセリ ング、翌日の午前中にホテル内での神前式や挙式場やホテル館内での写真や映像の提案。平日利用も多く、 六曜も関係ないので、あらかじめ準備や対応は可能だろう。挙式可能な神社仏閣についても、1 日コース で挙式体験、半日コースで和装での記念写真や人力車での体験など積極的にビジネス展開するべきだ。そ して SNS を通して、その外国人カップルたちの幸せそうな写真が掲載され、ますます日本文化の良さが認 知され、連鎖されることだろう。 日本のプランナーの提案力は、世界にも十分通用するので、日本独自のわびさびとおもてなしの精神で、 従来のカップルの獲得だけでなく、LGBT、国籍、人種に関係なく、 「地球市民」をターゲットにブライダル 業界を活性化できると考える。 第11回 The Master of Bridal Coordinator コンテスト 論文試験 論文テーマ『ブライダル業界の活性化に向けて』 フリープランナーの確立 富士屋ホテル 婚礼宴会課 秋山 佑衣 「ウエディングプランナー」という映画に出会い、私はこの仕事に興味を持った。当時学生だった私は、 「結婚式」という舞台の総監督として、全てを取り仕切る主人公の女性プランナーに強く心を惹かれた。 そして現在、私も憧れであった職業に就くことができたのだが、現実は映画のように華やかなことばかり ではなく、精神的にも肉体的にも想像を超えるハードなものであった。 私自身、昨年末に入籍をして今後の家庭生活を考えたとき、時間的拘束を含め今後この仕事とどのように 向き合っていくかを考え始めた。現状のワークスタイルでは、出産や育児などで一度現場を離れてからの 復職が難しく、やる気はあるのに復帰できない。そんな現状に悩む女性コーディネーターが沢山いるので はないだろうか。 ここに、今後のブライダル業界の活性化へ向けたヒントがあるのではないかと考える。 世界経済フォーラムが発表している「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」によれば、2012 年 度の女性の社会進出度の日本の評価は 135 ヵ国中 101 位と、他国に比べ遅れている。 ワークスタイルさえ工夫すれば、ブライダルコーディネーターという仕事は、女性にとって天職になりう る職業ではないだろうか。 新婦の「想い」を汲み取る必要がある特殊な分野の仕事において、同じ女性としての人生経験を活かすこ とができるこの仕事は、生涯現役として活躍できるとても魅力ある仕事だろう。 日本の場合は会場都合が優先され、契約後に始めてコーディネーターが選任される。商品によっては高額 な持込料が発生し、新郎新婦の選択肢が狭まってしまっている。 しかし、欧米の結婚式では、フリーランスのコーディネーターと新郎新婦が契約を交わし結婚式を創り上 げ、会場はあくまでも場所貸しに過ぎない。これこそが本当の顧客志向ではないか。 今後、日本でもフリーランスコーディネーターが当たり前となり、在宅やタイムフリー勤務として働ける 職業であれば、先に上げたワークスタイルでの不安要素が解消でき、会場の制約に縛られることなく、様々 なニーズの結婚式にも対応できる。また、フリーランスコーディネーターという職業が国家資格として認 められれば、新郎新婦の立場からも身元の保証されたコーディネーターを選ぶひとつの基準となるだろう。 こうして、活躍できる環境が整えば、今までには考えられなかった結婚式が可能になるはずだ。 例えば、あまり遠出ができなくなってきた祖父母のために田舎のご自宅での結婚式。日差しが暖かく降り 注ぐ縁側での集合写真。お庭ではご自身で栽培された木々たちに装飾し花を添える。笑顔のご家族や祖父 母がそこにいる。そんな結婚式を一緒に創り上げる日も来るだろう。 そして、様々なスタイルの結婚式が実現することで、ブライダル業界はとても活気ある明るい未来が待っ ていると確信している。 第11回 The Master of Bridal Coordinator コンテスト 論文試験 論文テーマ『ブライダル業界の活性化に向けて』 「お二人の夢とその先の使命」 アメイジンググレイス前橋 営業部 ウェディングプロデューサー 萩原 芳美 「お二人の夢を叶えること」それがウエディングプランナーである私の役割だと考え、この仕事を続け てきた。しかし、あるカップルの結婚式を担当したことにより、私の考えが変わった。 結婚式をとても楽しみしていた一組のカップルを担当した。打合せが始まった当初から、やりたいこと も、会場コーディネートもお二人の中でイメージが決まっていた。“こだわりが強いお二人”それが 私のお二人に持った第一印象だった。しかし、決して珍しいわけではない。 “オリジナリティー”を望む、 どこにでもいる一組のカップルだった。 お二人の想いでもある「大切なゲストに楽しんでほしい」ということを軸に、二人らしさを加え、 一つ一つの打合せが進んでいった。 「毎日でも打ち合わせがしたい」という言葉がでる程、結婚式を楽しみ に待ち望んでいたお二人の傍で、私の想いも強くなっていった。 迎えた結婚式当日。お二人の満面の笑みが物語るように、会場にはお二人の夢がカタチとなり溢れてい た。 いざゲストを迎え、進行が進む。お二人の楽しそうな笑顔の反面、所々で垣間見られるゲストの 浮かない表情。祝福で溢れ、笑顔が溢れ、感動の涙が溢れ…会場は確かにたくさんの想いで溢れていた。 しかし、現実に引き戻されるゲストの一瞬の表情。お二人がどのゲストも楽しめるようにと考えた進行は、 二人よがりだったのではないかと、私は不安に襲われた。 自分達の夢が叶った結婚式にお二人はとても満足していた。しかし、その中でのゲストの一瞬の表情に 気づいてはいなかった。結婚式が終わってからも、“宝物の一日”と愛おしそうに振り返るお二人と 対照的に、私には課題の残る“特別な一日”となった。 「お二人の夢を叶えること」それだけでは終わらないウエディングプランナーの役割と、その先の 使命を改めて感じた。結婚式の価値を見いだせないカップルが増えている今、結婚を控える世代に自らが 参列した結婚式の経験を通し、結婚式の意味・価値を感じ取ってもらうこと大切だ。 「人は自らの経験によ って、考え、行動する」とよく耳にするが、このお二人の結婚式を通して、あの場にいたゲストに結婚式 の印象がどのように伝わったのかと課題が残る。 ウエディングプランナーにとって、お二人に寄り添う事はとても大切なことである。しかし、お二人に 寄り添うこと=ゲスト満足に繋がるとは限らない。そのことを念頭におきながら、特別な一日をお手伝い できるウエディングプランナーとしての使命を全うしたい。 「ブライダル業界の活性化」それは主役のお二人だけはない結婚式に訪れた全てのゲストが「満足」す ることにより、ナシ婚層にストップをかけられると考える。今後のブライダル業界の活性・発展は、 結婚式を作り上げていく私たちの責任と夢の詰まった課題である。 第11回 The Master of Bridal Coordinator コンテスト 論文試験 論文テーマ『ブライダル業界の活性化に向けて』 伝え方 出雲記念館 婚礼予約事業部 サブマネージャー 山岸麻利奈 「僕はいらん子なんです」 これは、新規で初めて来館された時の新郎様の一言だった。新郎様は婿養子だったが、養子に出てもお父 様は悲しまないと言うのだ。 打合せが始まりいきなり新郎様がおっしゃったのは、もう何年もお父様と口を利いていないという事だ った。また、そのお父様がモーニングを着たくないと言っているというのだ。理由を聞いても、お母様経 由で聞いた為わからない、自分が父を説得することはできないと、打合せを重ねる度に、親子関係の悪さ が嫌でもわかってしまう打合せだった。更に、結婚式なんて挙げなくてもいいじゃないかとまでお父様は 言っているそうだ。私はお父様に対しての不信感を抱かずにはいられなかった。 そんな時、新婦様が一人で来館され、その際に打ち明けて頂いた内容が衝撃的だった。話を伺うと、新 郎様のお父様は車椅子で、車椅子になった事故の原因が新郎様にあるという内容だった。今まで新郎様と お父様の会話がなかった理由がそこでやっと理解できた。また、新郎様のお母様からは、新郎様の高校最 後の野球の大会をお父様がこっそり見に行かれていた事を聞いた。それを聞いて、私はずっとこの親子の ことを誤解していたのだと気付かされた。お父様は「車椅子に乗っているお父さん」という目線で見られ る事で、新郎様が更に責任を感じてしまう事を避けたかった為、モーニングを着たがらなかったのだ。私 は新郎様に、お父様へ手紙を書くことを提案した。それを受け入れてくれた新郎様は、この機会に素直に 想いをぶつけたかったのではないだろうか。 披露宴終盤、新郎様が手紙を握り、読み出すまでに長い時間がかかった。やっと、涙ながらに発した言 葉を今でも鮮明に覚えている。 「父ちゃんごめんな。父ちゃんの身体の自由を奪ったのは俺のせいだよな…。」 その手紙には、お父様の事故に責任を感じていた事や、ずっと素直になれなかった事に対しての謝罪の言 葉や感謝の想い、そんな、長年伝えたかった新郎様の気持ちが綴られていた。それを会場後方で聞いてい たお父様は、ハンカチで顔を覆うくらいの涙を流されており、その後の花束贈呈では二人が強く抱き合っ ていた。お互いに素直になれず、事故の日から向き合う事をしなかった親子が和解した瞬間だった。そし て、その姿を見ていたゲストのほとんどが涙を流していた。 「ありがとう」や「ごめんなさい」という言葉は、普段言葉にしにくいからこそ、結婚式という日に伝 えて頂きたい。その想いを伝えるシチュエーション、言葉、ツールは人それぞれであるが、大切なのは真 正面から伝える事である。そういった結婚式の提案ができるよう、私たちは常日頃、新郎新婦様が発する 言葉を敏感にキャッチしなければならない。お二人らしい伝え方で忘れられない結婚式をつくる事、それ が、ゲストが結婚式の魅力を感じる瞬間である。ゲストが魅力を感じた時、ブライダル業界は活性化する と信じている。
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