実録ドキュメント Officeライセンス管理の実態

2012/1/5
実録ドキュメント
実録ドキュメント
Officeライセンス
Officeライセンス管理
ライセンス管理の
管理の実態
~あるCIO(社内システム管理者)の不愉快な六ヶ月間の記録~
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1:発端
ある日私はマイクロソフトからの郵便を受け取った。
重要
「重要」と郵便の封筒の表に書かれている。
いつものDMと同じ様に読まずにゴミ箱に捨てた。
数週後、またもや私はマイクロソフトからの「重要」という表記のある郵便を受け取った。
今度はたまたまそれを開けてみると、
「マイクロソフトではソフトウェアの効率的利用を支援するために無償の
コンサルティングを行なっています。是非ご参加下さい。」
さすが大企業と感心しながら読み進めると…驚いた!
「参加しないと、場合によっては法的手段に訴える云々」
と要約されるような事が書かれていた。
「あなたは、メールでの参加要請にこれまで全然応えてくれていません」
というような事も書かれている。
調べてみると確かにメールは届いていたが、いつもの販促メールと判断し、迷惑フォルダ
に入っており読んではいなかった。
そこには、「ソフトウェア資産管理プログラムに参加しませんか。参加しないと、
場合によっては法的手段に訴えるかもしれません」
と要約する内容が書かれている。
このまま放置するとライセンスの不正使用と判断され莫大なペナルティを支払う事に
なりはしないかと私は急に不安になった。
2:調査
私はメールの連絡先へ返事が遅れた理由をきちんと述べ、ソフトウェア資産管理プ
ログラムには協力するつもりだと返信した。
すると「このメールの添付ファイルの必要事項に記入して下さい」とExcelファイル
の添付されたメールが届いた。
このシートに社内で利用しているマイクロソフト製品ライセンスをすべて記入しなけ
ればならないらしい。
しかし、「ソフトウェア資産管理プログラム」と名前はついているが、実態は他のメ
ーカーの製品とはまったく関係のないマイクロソフトのためのライセンス管理チェッ
クであった。
添付にあった資料には、私たちが購入したマイクロソフトのボリュームライセンス数
のリストが載っていたが、箱売りやらプリインストールのライセンスはまったく把握
されていなかった。ボリュームライセンス以外のライセンスは、
「下記の表に製品別に1行、製品名や使用ライセン数を記入し、証拠としてライセン
スキーを最大5つ記入して下さい」
という事が書かれている。しかたなく私は、WindowsプリインストールのPCの設置場
所に5回行っては、そのライセンスキーをメモし、リストに記入し返信した。
だが、これで話は終わらなかった。
思えばこれが半年に及ぶ長いやり取りの始まりであった。
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3:再調査
数週間後に返信が来る。記入シートの疑問点について、問いただすメールである
。
例えば、
「利用しているPC数に対し、Officeのライセンス数が足りません。不足のPCは
一体何に使っているのでしょうか?」の様に書かれている。
驚いたことに、マイクロソフトはPC全てにMicorsoftOfficeがインストールされて
いると思っている。
ここにおいて、私はこのソフトウェアの効率的利用を支援するという
「ソフトウェア資産管理プログラム」が
その件名とは全く別な目的を持っていることを確信した。
要するに、このプログラムの目的は、単にライセンス不正利用を徹底的に調査する
ためだけであり、調査の人件費を徹底的に節約し、不安をあおり、ユーザーに
人件費をかけさせるためのプログラムであった。
本来、自分達のやるべき事をユーザー側に行わせているのではないだろうか?
インターミッション(
インターミッション(閑話休題)
閑話休題)
「しかし」と、穏健な人は言うかもしれない。
「ライセンス数やライセンスキーをきちんと管理するのは
一般企業のシステム管理者として当たり前のことである」と。
それは正論である。私とて、不正なビジネスはしたいとも思わない。
それでも、程度というものがあるのではないか?
ライセンスを管理し、問題を把握すべきは売った側ではないのか?
適切なライセンス管理の手段も準備せずに、市場に大量にライセンス
を投入し、後になってどうなっているのか自社でも把握できずに、
利用者にライセンス管理をやらせようとする
それが「顧客志向の」一流企業のあるべき姿であろうか?
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4:再々調査
マイクロソフトのこの「プログラム」に対する不信をさらに確信したのが、OSライ
センスに関する調査だった。
以前古いWindowsPCを一新する計画を立て、WindowsXPに一挙にボリュームライセン
スを購入し全PCをアップグレードした。
その旨を漏れなくExcelシートに記入したのであるが、返信にはこうあった。
「アップグレートしたからには、そのアップグレードの対象となるOSのライセンスが必
要です。それを記入して下さい。ライセンスキーをサンプルに5つ。」
15年前に遡って遠い過去の厳密なライセンス管理をユーザー側に要求するのは、
世間一般の常識上、はなはだしく非常識である。
これを証明できなければ、我々はこの15年後にWindows95のライセンスを必要数分
マイクロソフトに支払うべき義務を負うのであろうか?
幸いにも、倉庫にWindows95のライセンス証書の膨大なストックが見つかり
問題はあっけなく解消した。
15年前の自分をこの時は褒めた。よくぞ保管していたものである。
5:再再々
再再々調査
まだすべてが終わったわけではなかった。残った問題は開発ライセンスである。
我々はかつてMSDN(マイクロソフトデベロッパーズネットワーク)の契約を結構な
数結んでいた。契約が終わってもそのとき取得したツールは使える。
しかも、このライセンスはMSDN事務局で管理されている。
ところが、「ソフトウェア資産管理プログラム」の担当によると
「私どもではライセンス取得状況はわかりません。恐れ入りますが、
MSDN事務局にお問い合わせ下さい」と言う。同じマイクロソフト社ではないのか?
そこで、MSDN事務局に連絡した。「××年頃に、我々の会社で契約したライセンスがあった
はずです。その証明となるものを下さい。」
その返事はこうであった。
「契約は開発者個々人としており、その会社の責任者の方であっても個々人の
ライセンス情報の提示はできません。契約した開発者個々人よりお問い合わせ下さい。
その際にはライセンス番号の提示が必要です。」
それが分からないから訊いているのに、お客様は確か我々のはずであったが?
これまた幸いにも、エンジニアに尋ねてみると、たまたま10年前のライセンスカードを保管
していたエンジニアがいて、それを差し出してくれた。
これでようやく最後の問題が解決した。
最後の返信を「ソフトウェア資産管理プログラム」の担当に送り、相手からの
「ライセンス上の問題は見つかりませんでした」との返事を2週間後くらいに受け取った。
この時点で最初のマイクロソフトのメール受信からはほぼ半年。郵便からも3か月。
かけた作業工数は計算するのも馬鹿馬鹿しい多大な数値である。
そういえば、「ソフトウェア資産管理に精通したコンサルタントからの有効な助言」など
この間一回も受けていないことに思い当たった。これが今回のあらましのすべてである。
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6:おわりに
そして今になって、この半年間の不毛なマイクロソフトとのやり取りの経緯を思
い浮かべると、以下のようにいくつかの主題にまとめられるように思える。
●第一に、企業のシステム管理者の使命とは何かということ。
答えは明確であり、我々の使命とは企業のコア事業の収益アップに迅速に貢献す
ることである。
それは営業部門や技術部門とも同じである。
MicorosoftOfficeなどは、それを支援する間接機能であり、そのコストは間接コス
トである。
我々はコア事業のためにその機能を使うのであり、しかもOfficeソフトウェア自体
は利益は生まない。
Office機能は必要だが、それがMicorosoftOfficeである必然性はない。
安い同様機能の製品があれば、それを導入するように務めるのが、我々の使命であ
るはずだ。(Googleドキュメント、KINGSOFTOfficeでも代替可能である)
よって、Office機能としてのMicorosoftOfficeを買う必要が無ければ、
今回体験したライセンス管理にまつわる不愉快な出来事はもう起こらない。
●第二に、製品自体のコストに加え、マイクロソフト製品を導入すると、上記の様
ような間接コストを増やすライセンス調査対応人件費が発生すことは問題ではない
かということ。
間接コストは原則的に企業にとって無駄であり、最優先の削減対象であるはずだ。
よって、代替できる選択枝があるならば、厖大なライセンス調査工数が必要なマイ
クロソフト製品はもう買う必要はない。
●第三に、リスクコントロール上、マイクロソフトとの関わりには常識では考えら
れないリスクが存在するということ。
リスク管理を行っている企業であれば、適切なリスク管理方針を検討する必要があ
る。今回の例の様にマイクロソフト製品を利用する事は企業側のリスク要因である
ことを、きちんと認識し(法律的には正しいとされる)知らない間に、とてつもな
いペナルティーを支払う羽目になるリスクを極力回避するのがシステム管理者の使
命ではなかろうか。
よって、代替できる選択枝があるならば、マイクロソフト製品とは今後は、極力関
わりを持たないようにする。
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