住宅ローンの供給・返済の円滑化のために必要な緊急措置の提案 住宅土地調査会住宅ローン問題小委員会 委員長代理 鶴保 庸介 事務局長 長崎 幸太郎 マイホームの取得は、多くの国民にとって、人生の夢である。しかしながら、 現在、景気後退に伴う金融機関のリスク許容度の低下により、住宅ローンの貸 出が厳格化の傾向にあり、その夢が奪われつつある。また、国民経済的にみて も、住宅建築の増加は、単に住宅建設に直接関連する産業のみにとどまらず家 具や家電製品等の買換え需要を喚起し、内需拡大に大きな寄与が期待される。 また、既存の住宅ローンを有する方々にとっては、現下の不況による所得の 不安定化・低下により月々のローン支払いが大きな生活圧迫要因となっており、 スムーズな借換え等によりこれを軽減することが可能となれば、生活資金にゆ とりができ消費拡大につながることも期待できる。 以上の観点から、新規住宅ローンの供給円滑化及び既存住宅ローンの返済円 滑化を実現するため、下記の措置及びこれらに必要となる財政上の措置を講じ ることを提案する。 I 住宅ローンの供給円滑化のための措置 1.個人住宅ローンに対する公的保証 (1)住宅融資保険制度(住宅金融支援機構)の抜本的拡充・強化 金融機関による個人住宅ローンの貸出を積極化させるため、そのリスク を軽減する措置を講ずることが有用である。 このため、民間金融機関の住宅ローン融資に係る債務保証を行う住宅融 資保険制度について、保険料率の抜本的引下げ、填補率の10割への引き 上げ(担保掛目に係る基準も撤廃)その他利用者たる民間金融機関の要望 を踏まえた抜本的拡充・強化を図ることにより、各地域における民間金融 機関が住宅ローンをより円滑に供給しやすい環境を整備する。 (2)住宅融資保険制度(住宅金融支援機構)に係る周知徹底 各地域における民間金融機関の間で、住宅融資保険制度の制度内容等が 十分に理解・活用されていない現状を踏まえ、上述の制度改善にあわせて、 本制度を積極的にPRすることにより、周知徹底と利用の拡大を図る。 2.フラット35(住宅金融支援機構)の融資率の引き上げ等 画一的な融資選別がなく、また、将来における金利変動リスクのないフラ ット35(買取型)について、融資率を現行の9割から10割に引き上げる とともに、事業量の拡大及び長期優良住宅等性能の特に優れた住宅に対する 金利優遇の充実を行うことにより、比較的手持ち資金の少ない一次取得者等 も含め、住宅取得を積極的に支援する。 II 既に住宅ローンを借り入れている方々の返済の円滑化のための措置 1.借換ローンに対する公的保証 既に住宅ローンを借り入れている方が、より毎月返済額の低い民間住宅ロ ーンに円滑に借換えることができる環境を整備するため、住宅融資保険制度 の付保対象に借換ローンを追加する。 2.フラット35(住宅金融支援機構)の買取対象への借換ローンの追加 既に住宅ローンを借り入れている方が、将来の金利変動に伴う返済負担の 増加によりマイホームを手放さざるを得なくなるリスクをあらかじめ回避で きるようにするため、フラット35への借換えを行うことができるよう、フ ラット35(買取型)の買取対象に借換ローンを追加する。 3.住宅ローン利用者に対するきめ細かな返済相談の推進 住宅金融支援機構が、住宅ローンの返済が困難となっている方や困難とな る懸念のある方等に対して、返済期間の延長等返済条件の変更も含め、引き 続ききめ細かな返済相談を行うことを徹底する。また、民間金融機関につい ても同様に、きめ細かな返済相談を行うよう促す。
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