平成28年度事業計画

平成28年度事業計画
自 平成28年4月 1日
至 平成29年3月31日
公益社団法人日本バス協会
Ⅰ
バス事業を巡る諸情勢と重点取組事項
我が国経済は、政府による各種経済対策等により緩やかな回復基調にあるが、国内
消費は力強さを欠き、海外では新興国の経済が減速するなど先行きは予断を許さない
情勢であり、全国あまねく景気回復が実感されているという状況には未だ至っていな
い。
このような中、乗合バス事業については、大都市部を中心に経営改善の動きが見ら
れるが、地方部では人口減少と少子高齢化の進展等を背景に、依然厳しい経営状況が
続いている。一方、貸切バス事業は、新運賃料金制度の下で経営基盤の健全化が進ん
でいる。
また、アジアを中心とする外国人観光客の増加が我が国経済をけん引しており、バ
ス事業は輸送サービスの提供によりこれに貢献するとともに、観光を通じた地域振興
に寄与することが求められている。
その一方、乗合バス、貸切バスともに運転者の確保が重要課題となっている。
このような中で、本年 1 月、軽井沢で死亡者 15 名の悲惨な貸切バスの事故が発生
した。国土交通省に設けられた「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」において再
発防止策の検討が精力的に進められているが、利用者に安心してバスをご利用いただ
くために、バス事業者はもとより、日本バス協会及び各地方バス協会において、格段
の事故防止対策を進める必要がある。
以上のことを前提に、平成 28 年度は、次の事項に重点的に取組むこととする。
(重点取組事項)
○ 交通政策基本計画や地域公共交通活性化再生法の趣旨を踏まえ、地方自治体との連
携、協力の下、乗合バス路線の維持、再編等が円滑に進むよう努める。
○ 貸切バスの新運賃料金制度の定着に努め、これによる安全で安定した輸送サービス
の提供を進める。
○ 軽井沢でのバス事故を重く受け止め、事故防止対策に最大限取組む。
〇 外国人観光客の増大に対し、安全な輸送サービスの提供とサービス改善に取組む。
〇 運転者の確保について、大型二種免許取得の支援措置をはじめ各種対策に取組む。
Ⅱ
事業計画
1.乗合バス路線の維持、再編と輸送サービスの改善向上
(1)乗合バス路線の維持、再編等の円滑な推進
交通政策基本法が平成 25 年 12 月に施行され、また、地域公共交通活性化再生法の
改正法が平成 26 年 11 月に施行された。この改正法は、地方公共団体が中心となり、
まちづくりと連携して面的な公共交通ネットワークを再構築することを主眼として
おり、地方公共団体が事業者と協議の上地域公共交通網形成計画を策定すること、こ
の実施のため地方公共団体が事業者等の同意の下で地域公共交通再編実施計画を策
定すること、この計画の実現に向けて国土交通省が後押しすることなどが定められて
いる。
交通政策基本法の制定と交通政策基本計画の策定、また、地域公共交通網形成計画
と地域公共交通網再編実施計画の策定等により、それぞれの地域におけるバス事業の
活性化と再生の枠組みが整いつつあり、いよいよこれらを実践する段階になってきて
いる。
この新たな枠組みを活用してさらにバス事業の再生、活性化を進めるために、地方
交通委員会を中心に地域公共交通網形成計画等に関するバス事業者間の情報共有を
進め、地方公共団体との連携、協力を効果的に進めていく方策等について検討を深め
る。
(2)自家用車ライドシェア問題に関する検討
自家用自動車によるライドシェアが、シェアエコノミーの一つとして取り上げられ
ている。これに対し、全国ハイヤー・タクシー連合会が、白タク行為を合法化するも
のであり、タクシー事業の根幹を根底から揺るがす問題として、業界を挙げて反対し
ている。現在、交通空白地域への導入について、国家戦略特区法の改正による道路運
送法の特例措置の制度改正が進められている。
これらの動きは、バス事業にとっても、コミュニティバスを中心に乗合バスに影響
が及ぶおそれがある。地方部におけるバス輸送は、地方公共団体からバス事業者に対
し路線維持の補助やコミュニティバスの運行委託等が行われており、一方で、道路運
送法に基づく自家用有償旅客運送制度も運用されている。本問題についてはこのよう
な実情を踏まえて対応を検討することとし、また、日本バス協会は全国ハイヤー・タ
クシー連合会と、また、各県レベルでも地方バス協会と地方タクシー協会の連携を密
にし情報の共有を進めることとする。
(3)輸送サービスの改善向上等
ア.IT技術を活用したサービスの改善
昨年 11 月のIT情報化推進特別委員会において、IT技術を活用したバス輸送
サービス改善について審議し、オープンデータ化への対応やICカードシステム
の普及とその支援措置等が議論された。本年は、次の課題等に取組むこととする。
① バスロケーションシステム、ICカードシステムの導入等
バス利用者の利便向上のため、スマートフォン等新たな情報技術を活用した
バスロケーションシステムの導入等を促進する。また、運賃収受の利便や消費
税率引上げの対応等に資するICカードシステムの普及を図る。
② バス情報の検索サービスの強化
乗合バスは、外部から来た人は使いづらいとよく言われる。現在でも多くの
バス事業者が情報検索システムに系統、ダイヤの情報等を提供しているが、こ
れをさらに促進し、バスの利便性を向上することが、観光需要などを取り込み、
路線の維持、地域の活性化につながることが期待される。このため、国土交通
省の本件検討に参画し、バス交通の利便性の向上を目指す。
イ.その他のサービス改善
① 走行環境の改善、関係施設の整備
都市部における道路渋滞の解消及びバスの走行環境の改善を図るため、公共
車両優先システム、バス優先対策の拡充及び幹線道路における違法駐車対策の
強化について、関係行政機関に働きかけを行う。
バスターミナル、駅前広場、パークアンドバスライド駐車場等交通結節点の
施設整備について、地域整備と一体となって取組むよう関係行政機関に働きか
け、推進する。
② ノンステップバス、BRT等の推進
平成 18 年 12 月に施行されたバリアフリー新法に基づき、移動円滑化基準に
適合したバス車両への代替促進とあわせて、国の認定した標準仕様ノンステッ
プバスの普及を促進する。その際、道路整備(停留所)との連携を図る。また、
より改良されたノンステップバス等、次世代型「人にやさしいバス」の実現に
向け国及び関係団体の各種検討会等に積極的に参加する。
加えて、効率的なバス輸送手段として、BRTシステム(連節バス等)の活
用促進に努める。
(4)バス運賃に関する取組等
ア.消費税再引き上げに伴う運賃改定の準備等
消費税の再引き上げ(8%→10%)が 29 年 4 月に予定されており、本年は、こ
のためのバス運賃改定について準備を進める。2%という低い改定率を運賃に反
映させることについて、その方法等について検討するとともに、簡便で迅速な運
賃改定手続きを国に要請していく。
また、バスの利用促進を図るため、各種運賃制度導入状況の情報を収集し、会
員事業者及び利用者等に提供する
イ.経営状況の把握と情報の提供
国が行う乗合バスの経営状況等の調査に協力し、実態の把握につとめ、また、
予算、税制措置等のバス事業の振興方策等検討の参考に供する。
2.貸切バスの健全な経営基盤の確立と軽井沢事故を受けての安全対策の充実強化
(1)新たな運賃料金制度定着に向けた取組
貸切バスの新たな運賃・料金制度が発足してから2年が経過し、安全コストを含ん
だ運賃の適用により経営基盤の改善がみられる一方、色々な課題も出てきている。こ
のため、制度の内容はもとより、安全なサービスを安定的に提供する基盤となる本制
度の趣旨について、引き続き関係者の理解が進むよう努める。また、運賃の収受状況
について、引き続き調査を行うとともに、新運賃料金制度による経営改善の下で、安
全投資や運転者の人材確保の取組状況等について調査し、新制度の趣旨に沿った運用
を推進する。
また、運賃料金制度の遵守、旅行業者との関係の適正化、手数料の問題等について
は軽井沢事故対策の検討を踏まえ対策を進める。
なお、新運賃制度の適用方については、国土交通省に置かれた運賃ワーキンググル
ープの検討結果として、いわゆる中抜け問題については、「待機した時間は時間制運
賃を収受する。ただし、改善基準告示でいう「休息期間」を与えた場合には、その時
間は待機時間から除くことができる」との取扱いをすること、また、スクールバス等
の年間契約問題については、「企業送迎などを除き、学校教育法による学校への通学
又は通園等に用いる運送に限り、年間運賃額の算定に当たり、365 日に代えて年間運
行日数を用いることができる」旨の取り扱いが合意されている。この趣旨に沿った取
り扱いが早期に明確化されるよう、国土交通省に要請している。
(2)軽井沢事故を受けての安全対策の充実強化
ア.基本方針
・貸切バス業界全体の安全対策の充実強化を目指す。
・国土交通省に設置されている「軽井沢スキーバス事故対策検討委員会」(以下
「検討委員会」という)の検討及び自民党国土交通部会・交通安全特別委員会等
での検討を踏まえ、対策を進める。
・検討委員会の検討状況及び取りまとめ内容については、適宜、運営委員会や関係
の委員会等で審議し、また、地方バス協会との情報共有に努め、実効ある対策が
着実に進むよう努める。
・検討委員会での取りまとめ内容については、速やかに実施する施策は直ちに取組
む。また、制度、予算、要員体制等の整備が必要な事項については、これらの環
境の整備を待って着実に取組を進める。
イ.緊急の安全対策の推進
2 月 10 日の安全輸送委員会で安全輸送緊急決議として取りまとめられた事項を
推進する。また、検討委員会の結論に沿って各種対策を進める。特に、シートベ
ルトの着用については、事業者の取組に加え、日本バス協会としてDVDやわか
り易いリーフレットを作成し事業者に配布するとともに、国土交通省、警察、バ
スターミナル運営主体等の協力を得て、バス利用者の着用意識の向上に取組む。
また、日本バス協会による街頭指導により、事故防止についての運転者及びバ
ス事業者の安全意識の一層の向上を図る。
ウ.悪質事業者に対する監査とこれに基づく厳正な処分、新規参入規制の厳格化等
検討委員会での取りまとめに当たり、上杉会長が 3 月 7 日の検討委員会で説明、
要望した、厳正な監査による不適切事業者の退出、参入規制の厳格化(車両、施
設に関する見直し、運営体制についてのチェック強化)の考え方が反映されるよ
う努める。
また、監査に関する民間団体等の活用については、予算や要員の手当てに加え、
国による監査との役割分担等について検討する必要がある。事務局が 2~3 名体
制のところが多い地方バス協会の実態等も考慮し関係者による具体的検討を進
めることとする。検討委員会が取りまとめた内容については、具体的検討を踏ま
え、地方バス協会と協議のうえ、着実な推進を図る。
エ.新運賃料金制度の遵守と利用者に対する情報の提供
① 新運賃料金制度の遵守
旅行業界との連携の下、手数料問題も含め新運賃料金制度が遵守されるよう、
運賃の適正収受に取組む。
インバウンドのランドオペレーターについては、バス運行に関する法令や運
賃制度の遵守に関し、観光庁の指導を要請する。
② 利用者に対する情報の提供
旅行業者及びツアーの利用旅客に対し、検討委員会での取りまとめを基にで
きる限り貸切バス事業者の安全情報の提供に努める。提供の時期、内容につい
ては、業界の契約実態等を踏まえ旅行業界とバス業界との検討を深める。
オ.その他
検討委員会の取りまとめを受けて、ハード面での安全対策の強化等国土交通省
で進める対策への協力、その他必要な取組を進める。
(3)貸切バス事業者安全性評価認定制度及び貸切バス事業の適正化コンサルティング
事業の推進
ア.貸切バス事業者安全性評価認定制度の推進
安心して利用できる貸切バスを目指して「貸切バス事業者安全性評価認定制度」
の適正な運用と認定取得事業者の拡大を進める。加えて、旅行業界や一般の利用
者に対する「セーフティバス」のさらなる周知を図り、認定事業者の利用促進に
努める。
また、軽井沢の事故を受けて、評価項目の改善充実を図るとともに、申請事業
者増加に対応した審査体制、審査方法についても見直しを進める。
イ.貸切バス事業の適正化コンサルティング事業の推進
高速・貸切バスの安全・安心回復プランに基づき事業者団体が行うこととされ
た適正化コンサルティング事業について、27 年度までに 23 の地方バス協会が実
施してきたが、軽井沢の事故を受けて、事業の一層の推進を図る。
なお、本事業については、検討委員会での監査に関する民間団体等の活用と関
連するので、この実務的な検討に資するようこれまでの実施内容や課題を整理す
るとともに、効果的で円滑な適正化コンサルティング事業を推進することとする。
3.高速バスネットワークの充実
(1) 高速バスネットワーク充実のための規制見直し等
高速バスは幹線輸送手段の一つとして、利用客のニーズに合った輸送サービスを提
供しており、この高速バスネットワークを充実し、さらに利便性を高めていく必要が
ある。このためには、高速バス路線網の拡大に関し、路線開設規制の緩和や乗合型管
理の受委託について受託者側車両の使用を認めることなど規制を見直す必要があり、
国土交通省に要請し、実現に努める。
なお、高速バスについては、柔軟な運賃設定等サービスの改善、向上が進められて
おり、これらの取組について情報を収集し会員事業者の参考に供する。
高速道路料金の大口・多頻度割引については、27 年度補正予算で最大 5 割引きの割
引施策が次世代型のETC2.0 の利用者に対し 28 年度末までの延長が認められた。な
お、従来型のETC利用者に対しては、NEXCO 3 社において、一定期間経過措置
として実施されることとなっている。今後、ETC2.0 の普及状況等を把握し、また、
高速道路の利用実態等を踏まえて、引き続き高速道路を利用するバスの利用料金の負
担軽減に努める。
(2)新宿高速バスターミナル(バスタ新宿)の開業
新宿高速バスターミナル(バスタ新宿)は、本年 4 月 4 日からの開業に向けて、新
宿高速バスターミナル株式会社及び利用予定の全てのバス事業者からなる利用事業
者会とその常設幹事会が連携して諸準備を進めている。
関係者の連携のもと、従来のターミナルからの円滑な移行と新ターミナルの利用、
活用に万全を期し、多くの利用客に便利にご利用いただける日本一の高速バスターミ
ナルを目指すこととする。また、開業後においては、ターミナル利用の習熟や甲州街
道をはじめとする道路交通への影響等を勘案しながら、さらなるターミナルの活用に
取組むこととする。
4.訪日外国人旅行者増大への対応
(1)拡大する需要への対応
訪日外国人旅行者の伸びは著しく、2015 年は 1,973 万人に達し、前年の 1,341 万人
を大きく上回った。特に、中国をはじめアジアからの旅行者の伸びが著しいが、アジ
アからの旅行者は団体旅行をする人が多く、貸切バスは重要な移動手段となっており、
安全な輸送サービスの提供に努めることとする。一方、欧米からの旅行者やアジアか
らの旅行者でもリピーターの方は、個人旅行をする人も多く、空港リムジンバスや高
速バス、路線バスについても対応が求められている。
急増するインバウンド輸送需要に応えるため、個々の貸切バス事業者の対応だけで
なく、クルーズ船の入港により一時に 100 台規模のバスが求められるような事態には
業界を挙げて取組むこととする。また、貸切バスの乗降場所、駐車場の確保などイン
バウンド輸送の取組を推進する。なお、国土交通省は訪日外国人旅行者対応のため、
貸切バス事業者安全性評価認定を受けた事業者が当該旅行者を輸送する場合には、営
業区域を地域ブロック及び隣接県に拡大する臨時措置を 27 年度末まで講じており、
本年度についてもその延長を図る。
(2)観光部門との連携強化
観光庁の 28 年度予算に、訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策として、新規に
80 億円が計上されており、その中には二次交通対策として、バスやバスターミナル、
ICカードの導入等に関するインバウンド対応の支援、貸切バスの路上混雑緩和に関
する待機場所から乗降場への誘導方式の実証実験実施等が含まれており、これらの予
算の活用により、観光立国への対応を進めることとする。
また、
「観光立国実現に向けたアクションプラン 2015」(27 年 6 月 5 日観光立国推
進閣僚会議決定)に基づき、国土交通省に、LCC関係者、高速バス関係者、旅行業
関係者、国土交通省担当部局からなる「高速バス・LCC等の利用促進協議会」が設
置され、12 月 15 日に第一回会合が開かれた。この審議に参画し、関係者との連携の
下で、LCCや高速バスを活用した国内観光の振興と国際観光の拡大について取組む
こととする。
なお、海外の旅行会社から日本国内の旅行手配を委託されるランドオペレーターに
ついては、関係法令の遵守や商慣習などについて問題の指摘がある。このため、ラン
ドオペレーターの質の確保を観光庁に要請し、貸切バス事業者との取引内容の改善を
図ることとする。
(3)オリンピック・パラリンピックへの対応
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会等と連携し、貸切バス確保
等について検討を進める。また、多言語対応について検討し、推進する。
5.交通事故の減少と安全対策の推進
事業用自動車の交通事故の防止については、国土交通省が 10 年間の計画として定
めた「事業用自動車総合安全プラン 2009」を踏まえ、「バス事業における総合安全プ
ラン 2009」を策定し、事故防止に取り組んでいる。
バス事業に係る交通事故の件数は順調に減少傾向にあり、平成 30 年における人身
事故発生件数を 1,800 件以下とする目標の達成も視野に入っているが、死亡事故はほ
ぼ横ばいの傾向となっている。
このような中で軽井沢でのスキーバス事故が発生したが、検討委員会での事故防止
対策に加え、従来からの対策にしっかりと取組むこととする。
(1)道路交通事故の防止
バスの事故の態様として、相変わらず交差点右左折時の死亡事故等が発生している。
このため、バス業界として死亡事故の削減に重点的に取組むこととし、交差点を右左
折する際に横断歩行者を確実に確認するために横断歩道の手前で一旦停止する運動
に取組む。
また、高齢者や道交法改正による自転車対策等につき関係機関と連携協力して取組
む等、重大事故の削減に向けて各種安全対策に万全を期す。
あわせて、衝突被害軽減ブレーキ装着車両やドライブレコーダー等の事故防止対策
機材の導入を促進するほか、国のASV技術のさらなる開発への積極的な協力などに
より、車両面での事故防止対策を進める。
(2)車内事故の防止
バス事故の約 3 割を占める車内事故は、高齢者が被害を受けることが多く、また、
重大な被害を蒙ることもあるため、高齢者を中心に防止に努める。車内事故防止キャ
ンペーンを実施し、利用者に対する「ゆとり乗降」の啓発と運転者に対する「ゆとり
運転」による安全運行の徹底を図る。なお、総合安全プラン 2009 の見直しに際し、
車内事故の中でも大きな割合を占める発車時の事故防止に重点的に取組むこととし
たので、この取組を強化する。
また、シートベルトの着用については、軽井沢の事故を受けて検討委員会が取りま
とめた事故防止対策に全力で取組む。
(3)健康起因事故の防止
本年に入って運転者の健康に起因すると思われる事故が連続して発生している。国
土交通省が作成した「事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル」の遵守に取組む。
特に、SASに起因する事故防止として、要治療と診断された場合には、CPAPに
よる治療が行われるまでは乗務を見合わせることを徹底する。また、SASをはじめ
心筋梗塞や脳卒中等の意識障害を誘発する病因等については、国土交通省の事業用自
動車健康起因事故対策協議会の検討に参加し、科学的知見に基づく事故防止対策に取
組むこととする。
なお、健康起因事故防止の法制化の動向については、全日本トラック協会、全国ハ
イヤー・タクシー連合会と連携して対応を進める。
(4)飲酒運転の根絶に取組む
飲酒運転事故の防止については、日本バス協会が作成した「飲酒運転防止対策マニ
ュアル」に基づき、対策を進める。また、秋の全国交通安全運動時に合わせ、「飲酒
運転防止週間」を設定する等、業界をあげて飲酒運転の根絶に取組む。
(5)車両火災事故の防止
年末以降に相次いで貸切バス車両等の火災事故が発生している。いずれも負傷者は
なかったものの、この種事故はテレビニュース等で取り上げられるなど、バスに対す
る信頼を損なうものであり、車両整備の点検を図るとともに原因分析を踏まえた事故
防止対策を進める。
(6)危機管理対策の徹底
本年 5 月に我が国において先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開催され、また、
関係大臣会合なども開かれることから、テロ対策等危機管理対策に万全を期すること
とする。このため、テロ対策通達による対応や日本バス協会が作成した「バスジャッ
ク統一対応マニュアル」の周知とともに、警察等との連携の強化を図る。加えて、緊
急連絡手段(防犯灯、非常事態発生を表す電光表示等)、運転席の防護アクリル板、
GPS等を利用した運行管理システム等の整備を促進し対応力を強化する。
大規模な地震災害等への対処については、日本バス協会が作成した「大規模災害基
本対応マニュアル」を活用し、国、地方自治体とも協力して、平素から危機管理・安
全防災対策の強化に努め、災害発生時の乗客の安全と輸送力の確保に万全を期する。
6.環境対策の推進
地球温暖化ガスの削減及び大気環境の改善に資するため、次の諸活動を行う。
① 「バス事業における低炭素社会実行計画」に基づく諸対策の推進を行う。
② 「バスの環境対策強化期間」等の実施によるエコドライブの推進。この中で、燃
費にかかわる車両の点検整備や急発進・急加速を避けた無理のない運転の励行に取
組む運動を行っており、優良な取組事例について、日本バス協会のホームページで
紹介する。また、バス事業のグリーン経営認証制度及びISO14001の普及に
努める。この他、電気バス等環境対応型のバスシステムの実用化について、情報収
集及び調査研究を行う。
③ NOx・PM法に基づく重点対策地区(対策地域内で大気汚染が特に著しい地区
(局所)を指定)の状況について、情報収集及び周知を行う。
7.バスに係る技術面の向上
(1)中央技術委員会等の活動
バス事業における技術の向上、安全や環境等の車両性能の向上、保守費の軽減、
整備性の向上等を図るため、中央技術委員会の全国大会及びバス改善要望全国会議
において、優良技術の発表・普及、各種技術情報の共有化、事業者間の意見交換等
を行い、また、自動車メーカーに対する改善要望、情報交換を進める。
(2)バス車両の技術開発の推進
① 車両の安全やバリアフリー、環境対策に係る新技術について、情報収集及び調査
研究を行う。
② 運転者の健康に起因する事故の防止を図るため、運転者が運転操作不能となった
場合に安全に停車することのできる車両の開発について、引き続き国土交通省及び
自動車メーカーに要請するとともに情報収集を行う。
8.バス運転者不足問題への取組及び労務問題への対応
(1)バス運転者不足問題への対応
労務委員会での検討及び国土交通省の「バスの運転者の確保及び育成に向けた検
討会」の報告等を踏まえ、効果的な対策を検討、推進する。
日本バス協会として、28 年度は、後述のように運輸事業振興助成交付金のバス輸
送改善推進事業として、大型二種免許取得を自社養成した場合の支援措置を設ける。
また、厚生労働省のキャリアアップ助成金、キャリア形成促進助成金の活用につい
てバス事業者への周知などを進める。さらに、大型二種免許の取得については、取
得年齢の引き下げ、普通免許保有期間の短縮等の見直し要望があるが、軽井沢の事
故検討委員会において、運転者の訓練、技量の確認等の対策が進められていること
から、安全確保を大前提に再度検討することとする。
(2)春闘等に対する対応と労務実態調査、情報提供
春闘について、経済界や連合、私鉄総連等の情報を収集し、これらを踏まえて労
務委員会において春闘に対する事業者側のスタンスについて審議し、基本方針を策
定する。また、春闘関係情報の収集と提供を行う。
最賃問題研究会において最低賃金について審議し、私鉄総連と対応する。この他、
労務問題について関係労働組合と意見交換を行い、相互理解を深める。
バス運転者等の賃金、労働時間、退職金等についての実態を調査し、適切な労務
管理の実施や労使交渉に資する情報の提供に努める。
(3)その他
労働基準法、労働安全衛生法等の労働法制やその具体的運用、また、SASやメ
ンタルヘルス等労働管理に係る新たな課題について調査等を進め、講習会の開催等
により周知を図る。
9.バス事業に対する予算、税制措置の充実
(1)バス関係予算の充実
バス関係の 28 年度予算についてその活用を図るとともに、29 年度予算あるいは補
正予算がある場合には、次のバス関係予算の拡充に努める。
① 交通政策基本計画及び地域公共交通活性化再生法の趣旨を踏まえ、予算、税制措
置の充実に努める。
② 地域公共交通確保維持改善事業の予算の拡充、補助制度の見直し改善を進め、乗
合バス路線の維持、再編、バリアフリー化の推進、ICカード導入等を図る。
③ バスに係る環境対策についての予算、デジタルタコグラフ、ドライブレコーダー
や衝突被害軽減ブレーキの装着の促進等のため安全対策予算の確保に努める。
④ 道路整備、ターミナル整備、交差点改良等バスの走行環境の改善や高速道路整備・
補修に係る予算の確保に努める。
(2)バス関係税制等
① バス関係税制について、営自格差等現行税制特例の維持とともに新たな負担軽減
措置の拡充に努める。
② 平成 29 年度の消費税引き上時の負担軽減
消費税引上げに際し、自動車関係諸団体とともに車体課税や軽油引取税の負担軽
減に努める。また、運賃改定に伴う運賃収受システム等の変更について、改修費用
の支援を要請する。さらに、他の公共交通機関と連携して、軽減税率の適用につい
て検討を進める。
10.運輸事業振興助成交付金事業(中央事業)によるバス事業者支援の充実
(1)運輸事業振興助成交付金事業(中央事業)の実施
運輸事業振興助成交付金事業(中央事業)については、次の事業を効果的に実施す
る。また、実施に当たっては、運輸事業振興助成交付金審議評価委員会を開催し、日
本バス協会の施策に反映する。
① バス輸送改善推進事業の実施
・利用者ニーズに対応した輸送環境の改善に資するため、「バス利用者施設等整備
事業」としてバスロケーションシステム整備、バスターミナル整備、ICカード
システム導入等に対し支援する。
・高齢者等を含めた利用者の利便及び安全性の向上と環境対策を推進するため「人
と環境にやさしいバス普及事業」としてノンステップバスや衝突被害軽減ブレー
キ装備車等の車両購入を支援する。
・厳しい経営状況下にある地方路線バス事業及び貸切バス事業のための「車両更新
(中古車購入)支援事業」として支援を実施する。
・運転者人材確保対策事業として、バス事業者が大型二種免許取得費用を負担し、
正社員として採用した場合に、1 名につき 5 万円、1 事業者あたり 50 万円を限度
に助成する。また、地方バス協会が行う運転者確保のための取組で、他の協会の
参考になる事例に対し、1 協会あたり 50 万円を限度に助成する。
・バスの安全及び利用促進に関する広報事業を実施し、また、支援を行う。
② 融資斡旋・利子補給事業の実施、改善
バス事業者の経営安定化に資するため「融資斡旋・利子補給事業」を公募により
実施する。融資枠 200 億円を年 2 回に分けて募集することとし、この融資枠を地方
バス協会に割り当て、各バス協会で枠の管理を行う。なお、1 事業者当たりの融資
残高は昨年に引き続き 4 億円までとする。
融資斡旋・利子補給の対象は、バス車両購入資金、施設整備資金、退職金資金、
運転資金、災害復旧事業等に要する資金であり、利子補給率は、資金の目的に応じ、
0.4%から 1.0%(災害復旧)としている。なお、極低利の借り入れについては利
子補給の対象から外す方針の下、本年度は金利 0.8%以下の借り入れを利子補給対
象から外すこととする。また、バス車両購入資金に係る借入期間を、事業者の要望
等を踏まえ現行 3 年以内から 5 年に以内に延長する。ただし、利子補給期間は従来
通り 3 年以内とする。
(2)28 年度融資斡旋事業特別基金の運用管理方針について
財産管理規程 11 条に定める国債、地方債等を運用対象とし、確実かつ安全な方法
で運用するとともに運用収益の確保に努める。28 年度運用収益は 46 百万円(利回り
0.55%)を見込む。
28 年度満期償還される地方債 5 億円、商工中金債 22 億円については、バス輸送改
善推進対策引当資産の取崩しに充てる約4億円を除いた 23 億円を次のような内容で
運用する。
全体の約 8 割に当たる 18 億円を、従来同様の国債や商工中金債等で運用する。残
りの約 2 割に当たる 5 億円を安全な運用とともに運用収益の確保を図る観点から、事
業債、仕組債(株式や為替リスクを負わない、A格以上の運用先)で運用する。
(3)地方バス協会における地方事業の効果的実施について
平成 24 年度からの中央出捐中止に伴う地方事業の充実を図るため、事業が適切か
つ効果的に行われるよう積極的に情報提供等の支援を行う。
また、交付金事業の実施の財源となる運輸事業振興助成交付金については、法制度
に基づいた確実な交付がなされるよう、地方バス協会と協力して引き続き取組を進め
る。
11.その他
(1)広報活動の推進等
・日本バス協会ホームページにより、会員事業者及び広く一般の方々に対し、当協
会の活動状況やバス事業の現状等について情報提供を行う。特に、バス事業者の
取組及び営業案内等について、わかり易く利用者へ情報提供を行う。
・全会員事業者等に対し、機関誌「バス月報」を発行するとともに、随時「メール
マガジン」を発信し、その内容をホームページの会員専用ページに掲載する等迅
速な情報提供に努める。
・国土交通省からの通達等については、ホームページに掲載するとともに、メール
マガジンにより掲載している旨を連絡し迅速な周知に努める。
・多くの会員バス事業者は、メールアドレスを登録していただいているが、未登録
の事業者もいるため、メールアドレスの登録を進め、すべての会員バス事業者に
メールマガジンが届くよう努める。
・
「日本のバス事業」や「日本のバス事業と日本バス協会の概要」の冊子を作成し、
バス事業の最新の現状と課題や取組等を分かり易く紹介する。また、その内容を
ホームページに掲載し広く情報提供に努める。冊子「会員名簿」を作成し配布す
る。
・マスコミの利用や車内掲示等を通じて、広く一般にバスについての理解を深める
とともにセーフティバスの周知を進め、一層の利用促進を図る。また、貸切バス
の新運賃料金制度の周知に努める。この他、地方バス協会及びバス事業者と連携
し積極的な広報に取組む。
(2)バス事業関係表彰の実施
・優良バス運転者等に対する会長表彰
・観光バスガイドに対する会長褒賞
・技術に関する発明考案功労者に対する会長表彰
以上、平成 28 年度事業計画の実施にあたり、資金の借り入れ及び設備投資の予定は
ない。