LM2585

LM2585
SIMPLE SWITCHER® 3A フライバック・レギュレータ
概要
特長
LM2585 シリーズは、フライバック、ステップ・アップ(ブースト)
、
およびフォワード・コンバータの用途に設計された、モノリシック IC
です。このデバイスには、3.3V、5.0V、12V、および可変型の 4 種の出
力電圧バージョンがあります。
外付け部品は必要最小限で、コストパフォーマンスが高く、使い易
くなっています。本データシートには、
ブースト・レギュレータとフラ
イバック・レギュレータの代表的な回路を示しています。また、ダイ
オードとコンデンサの選択ガイド、
これらのスイッチング・レギュレー
タの動作に最適設計された標準インダクタとフライバック・トランス製
品を記載してあります。
パワー・スイッチとして、耐圧 65V、3.0A の NPN トランジスタを内
蔵しています。パワー・スイッチは、過電流保護回路と熱暴走保護回
路、低電圧ロックアウト回路により、保護されています。この IC は、
100kHz 周波数発信器を内蔵しており、小型のインダクタ・トランスを
使うことができます。起動時の突入電流を低減するソフト・スタート
モード、および入力電圧と出力負荷の過渡状態の改善・除去、サイクル
毎の電流制限のために、電流モード制御も備えています。規定入力電
圧および出力負荷の条件内で、±4%の出力電圧許容差が、保証されて
います。
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少ない外付け部品
標準インダクタとトランスの製品ファミリ
耐圧 65V、3.0A の NPN 出力スイッチング・トランジスタ内蔵
広入力電圧範囲: 4V ∼ 40V
優れた過渡応答、ライン・レギュレーション、電流制限を実現する
電流モードオペレーション
スイッチング周波数:100kHz
内部ソフト・スタート機能により、起動時のラッシュカレントを減
少。
過電流保護、低電圧ロックアウト、熱暴走保護回路内蔵
規定された入力および負荷の条件に対して、最大±4%の出力電圧
誤差
代表的アプリケーション
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フライバック・レギュレータ
多出力レギュレータ
ステップ・アップ・レギュレータ
フォワード・コンバータ
フライバック・レギュレータ
製品情報
SIMPLE SWITCHER®と Switchers Made Simple® はナショナルセミコンダクター社の登録商標です。
© National Semiconductor Corporation
1
Printed in Japan NSJ 7/99
LM2585 SIMPLE SWITCHER® 3A フライバック・レギュレータ
March 1998
絶対最大定格(Note 1)
本データシートには軍用・航空宇宙用の規格は記載されていません。
関連する電気的信頼性試験方法の規格を参照下さい。
入力電圧
スイッチ電圧
スイッチ電流(Note 2)
コンペンセイションピン電圧
フィードバックピン電圧
保存温度範囲
リード温度(ハンダ付け、10 秒)
最大接合部温度(Note 3)
消費電力(Note 3)
最低ESD 耐圧(C = 100pF、R = 1.5kΩ)
− 0.4V ≦ VIN ≦ 45V
− 0.4V ≦ VSW ≦ 65V
内部制限
− 0.4V ≦ VCOMP ≦ 2.4V
− 0.4V ≦ VFB ≦ 2VOUT
− 65℃∼ 150℃
+ 260℃
+ 150℃
内部制限
2kV
動作定格
電源電圧
出力スイッチ電圧
出力スイッチ電流
接合部温度範囲
4V ≦ VIN ≦ 40V
0V ≦ VSW ≦ 60V
ISW ≦ 3.0A
− 40℃≦ TJ ≦+125℃
電気的特性
標準文字で表記される規格値は、TJ = 25℃に対するもので、太字は全動作温度範囲に適用されます。特記のない限り、VIN = 5V。
LM2585-3.3
LM2585-5.0
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電気的特性(つづき)
標準文字で表記される規格値は、TJ = 25℃に対するもので、太字は全動作温度範囲に適用されます。特記のない限り、VIN = 5V。
LM2585-5.0(つづき)
LM2585-12
LM2585-ADJ
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電気的特性(つづき)
標準文字で表記される規格値は、TJ = 25℃に対するもので、太字は全動作温度範囲に適用されます。特記のない限り、VIN = 5V。
LM2585- 出力電圧の全タイプの電気的特性
Note 1: 絶対最大定格とは、ICに破壊が発生する可能性のある制限値をいいます。動作定格とはICが動作する条件を示し、特定の性能リミッ
ト値を保証するものではありません。保証される仕様および試験条件については、電気的特性を参照下さい。
Note 2: ステップアップレギュレータでは、スイッチ電流と出力電流は等しくありません。LM2585 をステップアップレギュレータとして構
成した場合、出力電流はICにより制限されません。スイッチの損傷を防ぐため、出力電流は外部で3Aに制限しなければなりません。
但し、LM2585をフライバックレギュレータとして構成した場合、出力電流は内部制限がかかります(アプリケーションヒント参照)
。
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4
電気的特性(つづき)
Note 3: デバイスの接合部温度(TJ)は、周囲温度(TA)
、接合部 - 周囲間熱抵抗(θJA)と、デバイスの消費電力(PD)の関数になります。熱暴
。安全な熱設計のため、デバイ
走保護回路は、デバイスの温度が最大接合部温度を超えると動作します(PD × θ JA + TA(MAX)≧ TJ(MAX))
スでの最大消費電力が次式を満たすことを確認してください。PD ≦[TJ(MAX)− TA(MAX)]/θ JA。熱設計にマージンを持たせるため、最大
許容消費電力を計算するとき、最大接合部温度をディレーティングしてください。
Note 4: ダイオード、
インダクタ、入出力コンデンサなどの外付け部品は、スイッチング・レギュレータのシステム性能に影響します。LM2585
をFigure.2、3のテスト回路に示すように使用すると、システム性能は電気的特性のシステムパラメータセクションに示すようになり
ます。
Note 5: 室温におけるリミット値は 100%テストされます。全動作温度範囲におけるリミット値は標準統計品質管理(SQC)手法によって決
められた補正データを加味して保証されます。
Note 6: AVOL を精確に測るため、コンペンセイションピン(エラーアンプの出力)に 1.0MΩ の抵抗を接続します。
Note 7: このパラメータを測定するとき、出力トランジスタをオンするため、フィードバック電圧は低い値(Adj:VFB = 1.05V、3.3V:VFB =
2.81V、5.0V:VFB = 4.25V、12V:VFB = 10.20V)に設定し、エラーアンプの出力をハイにします。
Note 8: このパラメータを測定するとき、出力トランジスタをオフするため、フィードバック電圧は高い値(Adj:VFB = 1.41V、3.3V:VFB =
3.80V、5.0V:VFB = 5.75V、12V:VFB = 13.80V)に設定し、エラーアンプの出力をローにします。
Note 9: エラーアンプの出力電流の最悪値を測定するため、LM2585 は、フィードバック電圧を低い値(Note 7 で規定)と高い値(Note 8 で規
定)にし、テストされます。
Note 10: 5 ピンTO-220 パッケージを最小銅エリアを備えたプリント基板に垂直に、0.5 インチのリードでソケットを使用して、または直接実
装した時の接合部 - 周囲間熱抵抗(ヒートシンクなし)
。
Note 11: 5 ピンTO-220 パッケージをリードを囲む4 平方インチの銅エリアを備えたプリント基板に、0.5 インチのリードで垂直に実装した時
の接合部 - 周囲間熱抵抗(ヒートシンクなし)
。
Note 12: 5ピンTO-263パッケージを 0.136平方インチ(TO-263パッケージと同サイズ、厚さ35µm)の銅エリアを備えた基板に水平に実装した
時の接合部 - 周囲間熱抵抗。
Note 13: 5 ピン TO-263 パッケージを 0.4896 平方インチ(TO-263 パッケージの 3.6 倍のサイズ、厚さ 35µm)の銅エリアを備えた基板に水平に
実装した時の接合部 - 周囲間熱抵抗。
Note 14: 5 ピン TO-263 パッケージを 1.0064 平方インチ(TO-263 パッケージの 7.4 倍のサイズ、厚さ 35µm)の銅エリアを備えた基板に水平に
実装した時の接合部 - 周囲間熱抵抗。さらに銅エリアを追加すると、熱抵抗が下がります。
「Switchers Made Simple®」ソフトウェ
アの熱モデルを参照下さい。
Typical Performance Characteristics
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Typical Performance Characteristics(つづき)
ピン配置図
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ブロック図
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テスト回路
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フライバック・レギュレータの動作
LM2585 は、フライバック・レギュレータで使うのに適した IC です。
フライバック・レギュレータは、Fig.4に示されているように単一の電圧
を出力することも、複数の電圧を出力させることもできます。
Fig.4の、
フライバック・レギュレータは、入力電圧範囲内にある電圧を出力しま
す。これは、フライバック・レギュレータ特有の性質で、バック・レギュ
レータやステップ・アップ・レギュレータではこのような出力を作るこ
とは出来ません。
フライバック・レギュレータは次のように動作します
(Fig.4を参照)
:
スイッチがオンのとき、トランスT1の1次側に電流が流れ、トランス・
コアにエネルギーを蓄積します。1次巻線と2次巻線では位相が反転し
ているので、電流が1次側を流れるとき、2次側には電流が流れません。
スイッチがオフすると、磁界がなくなり、1次巻線と2 次巻線の電圧の
極性が反転します。このとき、D1は順方向にバイアスされて電流が流
れ、
トランスに蓄積されたエネルギーが開放されます。これにより、
出
力に電圧が発生します。
出力電圧は、ピーク・スイッチ電流の変調により、制御されます。こ
れは、出力電圧の分圧をエラー・アンプへフィードバックすることに
よって行われます。エラー・アンプは、フィードバック電圧と1.230Vの
基準電圧の差を増幅します。エラー・アンプの出力電圧は、
スイッチ電
流(スイッチがオンしているときのインダクタ電流)に比例するラン
プ電圧と比較されます。
コンパレータは、これら2つの電圧が等しくな
ると、スイッチ・オン時間を終わらせ、
スイッチ電流のピークを制御し
て出力電圧を一定に保ちます。
(Fig.4 に示されているように)少数の外付け部品だけで、LM2585 をフライバック・レギュレータとして動作させることができます。このレ
ギュレータのスイッチング波形を Fig.5 に示します。この回路の動作時の Typical Performance Characteristics を Fig.6 に示します。
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フライバック・レギュレータの動作(つづき)
代表的なフライバック・レギュレータのアプリケーション
Fig.7 からFig.12 に、単出力から 3 出力の、6 つのフライバック・レギュ
レータの回路例を示します。各図には、トランスを除いて、各部品の部
品番号とメーカ名が示してあります。トランスの部品番号とメーカ名
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については、Fig.13 の表を見て下さい。LM2585-ADJを使用する電圧の
場合や、他の出力条件の場合は、ソフトウェア Switchers
Made Simple®(Version 4.3 以降)を参照して下さい。
代表的なフライバック・レギュレータのアプリケーション(つづき)
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代表的なフライバック・レギュレータのアプリケーション(つづき)
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代表的なフライバック・レギュレータのアプリケーション(つづき)
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代表的なフライバック・レギュレータのアプリケーション(つづき)
トランスの選択(T)
Fig.13 に、フライバック・レギュレータで使える標準トランスを示します。表には、各回路の出力電圧、入力電圧範囲、最大負荷電流、各トラ
ンスの巻線比が示されています。
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代表的なフライバック・レギュレータのアプリケーション(つづき)
トランスのフットプリント(端子配置図)
Fig.15 から Fig.29 に、Fig.14 に載っている各トランスのフットプリントを示します。
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代表的なフライバック・レギュレータのアプリケーション(つづき)
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ステップ・アップ(ブースト)レギュレータの動作
Fig.30 に、LM2585をステップ・アップ(ブースト)レギュレータとし
て使った例を示します。この回路は、入力電圧よりも大きな電圧を出
力するスイッチング・レギュレータです。
LM2585 のステップ・アップ・レギュレータがどのように動作するか
を簡単に説明します(Fig.30 を参照)
。NPN スイッチがオンすると、イ
インダクタにエネルギーを蓄積
ンダクタ電流がVIN/Lの割合で増加し、
します。スイッチがオフすると、インダクタのスイッチ側が、VIN より
も高くなり、その電流を、ダイオード(D)を通して、
(VOUT − VIN)/L
の割合で、出力コンデンサ(COUT)へ流します。つまり、スイッチがオ
ンしているあいだにインダクタに蓄積されたエネルギーは、スイッチ
がオフしているあいだに出力に移ります。
出力電圧は、フライバック・
レギュレータと同様に、
ピークのスイッチ電流を調整することにより、
制御されます。
(Fig.30 に示されているように)少数の外付け部品だけで、LM2585をステップ・アップ・レギュレータとして動作させることができます。この
回路の動作時のスイッチング波形を Fig.31 に示します。Fig.32 にトランジェントレスポンスを示します。
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代表的なブースト・レギュレータのアプリケーション
Fig.33、Fig.35からFig.37に、4つの代表的なステップ・アップ・レギュ
レータを示します。1つは固定型 3つは可変型の LM2585を使用してい
ます。各図には、各部品の部品番号とメーカ名が示されています。12V
出力のアプリケーションの場合、
インダクタの部品番号とメーカ名は、
Fig.34の表に示してあります。
他の出力電圧のアプリケーションについ
ては、Switchers Made Simple®(Version 4.3以降)を参照して下さい。
Fig.34 の表には、Fig.33 の固定出力レギュレータのための標準インダクタの部品番号とメーカ名が示されています。
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代表的なブースト・レギュレータのアプリケーション(つづき)
* LM2585は、これらのアプリケーションではヒートシンクを必要とします。ヒートシンクの大きさは最大周囲温度に依存します。IC の熱抵抗
の計算方法や必要なヒートシンクの大きさはアプリケーション・ヒントの「ヒートシンク / 熱の考慮事項」を参照下さい。
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アプリケーション・ヒント
出力電圧の設定
(R1 および R2 の選択)
ショート・サーキット時の状態
Fig.38 の可変レギュレータの、出力電圧は、次式による R1 と R2 を
使って設定されます:
VOUT = VREF(1 + R1/R2) ただし、VREF = 1.23V
抵抗 R1 と R2 は、1.23V の内部基準電圧と比較できるように、出力電
圧を分圧します。R2 が 1k から 5k のとき、R1 は次のようになります:
ただし、VREF = 1.23V
R1 = R2(VOUT /VREF – 1)
最適温度係数および、経年変化にたいする安定した精度を得るため
に、1%金属膜抵抗を使います。
ステップ・アップ・レギュレータの回路構成から、出力を短絡したと
き(Fig.38 参照)
、電流は、スイッチをバイパスし、入力から直接、イン
ダクタとダイオードを通って、出力へと流れます。スイッチの電流制
限回路は、
回路全体の出力電流は制限しません。負荷を保護し、スイッ
チへの損傷を防ぐには、
外部電流制限回路を使って、電流を、入力ある
いは出力側で、
制限しなければなりません。外部制限は、デバイスの最
大スイッチ電流、3A に設定しなければなりません。
標準トランスを使ったフライバック・レギュレータの場合(Fig.39)
、
主出力が短絡しても、
LM2585は保護されます。出力電圧が定格の80%
に落ちると、周波数は25kHzに落ちます。低い周波数では、オフタイム
が長くなります。オフタイムが長くなると、
トランスは、スイッチが再
度ターンオンする前に、蓄積エネルギーを全て放出することができ、
スイッチは、コレクタ電流が零の状態でターンオンします。この状態
では、スイッチの電流制限回路がピーク電流を制限し、デバイスを保
護します。
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アプリケーション・ヒント(つづき)
フライバック・レギュレータの入力コンデンサ
出力電圧の上限
フライバック・レギュレータは、
入力電源から不連続のパルス電流を
引き込みます。したがって、フライバック・レギュレータでは、2 個の
入力コンデンサが必要です。ひとつはエネルギー蓄積のため、もうひ
とつはフィルタリングのためです(Fig.39参照)
。両方とも、
フライバッ
ク・レギュレータの動作のために必要です。安定した定電圧をLM2585
へ供給するため、蓄積コンデンサ(≧ 100µF)が必要です。入力源が整
流されたDC電源で、使用温度範囲が広い場合、非常に大きな許容リプ
ル電流のコンデンサが必要となります。これは、容量の大きい、
あるい
は電圧定格の高い入力コンデンサが必要となることを意味します。蓄
積コンデンサも、同じ入力電源に接続されている他の回路に干渉する
恐れのあるノイズを低減します。
さらに、入力電流パルスが発生するノイズのため、小さなバイパス
コンデンサが必要です。ノイズを除去するため、1.0µFのセラミックコ
ンデンサを、できるだけデバイスに近づけて、VIN とグランド間に挿入
して下さい。
ステップ・アップ・レギュレータの最大出力電圧は、最大スイッチ電
圧からダイオードの電圧降下分を差し引いたものです。
フライバック・
レギュレータでは、最大出力電圧は、巻線比N、およびデューティ・サ
イクル D を使って、次の式で定まります:
スイッチ電圧の制限
VOUT ≈ N x VIN x D/(1 – D)
フライバック・レギュレータのデューティ・サイクルは、次式で定ま
ります:
理論的には、
最大出力電圧は、トランスの巻線比を増加させれば、際
限なく大きくできます。
しかし、物理的な限界があり、巻線比を無限に
大きくすることはできず、出力電圧を無限に大きくすることはできま
せん。他の物理的限界には、LM2585 スイッチ、出力ダイオード、トラ
ンスの容量成分およびインダクタンス成分や、出力ダイオードの逆回
復時間があります。
フライバック・レギュレータでは、
オフしているときのスイッチに現
れる最大定常電圧は、トランスの巻線比 N、出力電圧 VOUT、および最
大入力電圧 VIN(Max)によって定まります:
VSW(OFF) = VIN (Max) + (VOUT + VF)/N
ショットキ・ダイオー
ただし、
VF は出力ダイオードの順方向電圧で、
ドでは代表的な値が0.5V、
ウルトラ・ファースト・リカバリ・ダイオード
では 0.8V です。回路によっては、電圧スパイク VLL が定常電圧に乗る
ことがあります(Fig.5 の波形 A を参照)
。通常、この電圧スパイクは、
トランスの漏れインダクタンス、出力ダイオードのリカバリ時間によ
り起こります。スイッチにかかる電圧が最大定格を超えないように
“クランプ”するために、トランジェント抑制素子を、
(Fig.4の回路、お
よび他のフライバック・レギュレータの回路に示されているように)
ト
ランスの1次側に、ダイオードと直列に挿入します。Fig.39の回路図に、
スイッチ電圧をクランプするもうひとつの方法を示します。電圧トラ
ンジェント抑制素子(SA51A)がスイッチ端子に 1 個挿入されていま
す。この方法では、1次側の電圧だけでなく、スイッチにかかる全電圧
をクランプできます。
回路レイアウトが悪い場合(回路レイアウトのガイドラインのセク
ションを参照)
、負のトランジェント電圧が、スイッチ端子(4ピン)に
現れることがります。
(ICのグランドに対して)負の電圧がモノリシッ
ク ICの端子にくわわると、ICの動作が不安定になり、予期せぬ動作を
することがあります。このことは、LM2585にも当てはまります。フラ
イバック・レギュレータに使う場合、スイッチ端子(4 ピン)の電圧は、
スイッチがターンオンするとき、負になることがあります。スイッチ
のリンギング電圧は、出力ダイオードの容量成分とトランスの漏れイ
ンダクタンスにより、2次側に共振回路が形成されることにより発生し
ます。共振回路がリンギング電圧を発生し、それがトランスを介して
スイッチ端子に発生します。この問題を避けるためによく使われる、2
つの方法があります。ひとつの方法は、Fig.39 に示されているように、
RCスナバ回路を出力ダイオードに並列に付加することです。
抵抗とコ
ンデンサの値は、スイッチ端子の電圧が−0.4V以下にならないように
選ばなければなりません。抵抗は 10Ω から 1kΩ の値、コンデンサは
0.001µFから 0.1µF の値で選びます。スナバ回路の追加により、回路全
体の効率は(ほんのわずかですが)低下します。
“リンギング”を少なくする、あるいは取り除くための他の方法は、
クランプとして、ショットキ・ダイオードを、Fig.39 に示されているよ
うに、4ピンと3 ピン(グランド)間に挿入します。これにより、4 ピン
の電圧が− 0.4V 以下に下がるのを防ぎます。ダイオードの逆耐圧は、
スイッチがオフ時の電圧よりも大きくなければなりません。
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入力電源のノイズ
入力スイッチがチャタリングする場合のように、入力電圧に異常に
大きなトランジェント・ノイズがのっているときは、小さなRCローパ
ス・フィルタを LM2585 の入力端子に使います。Fig.40 の回路は、フィ
ルタのレイアウトを示しており、コンデンサが入力端子とグランド間
に置かれ、抵抗が入力電源と入力端子間に置かれています。回路図に
示されているRIN とCIN の値は、ほとんどのアプリケーションで充分で
すが、特定のアプリケーションでは、
調整が必要なこともあります。
効
率が特に重要な場合、抵抗を小さなインダクタ(たとえば、10µH、
100mA 定格)で置き換えます。
安定性
電流モードで制御されるレギュレータはすべて、50%を超すデュー
ティ・サイクルで動作すると、
サブハーモニック発振として知られてい
る不安定動作に悩まされることがあります。サブハーモニック発振を
防ぐ、すべてのブースト・レギュレータやフライバック・レギュレータ
の安定動作に必要な、インダクタンスの最小値があります。この最小
値は次式で与えられます:
ただし、VSAT はスイッチの飽和電圧で、特性曲線で見ることができ
ます。
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アプリケーション・ヒント(つづき)
回路レイアウトのガイドライン
ステップ・アップ:
どんなスイッチング・レギュレータでも、
レイアウトは非常に重要で
す。高速でスイッチングしている電流は、配線のインダクタンスと結
合して、トランジェント電圧を発生し、
問題を起こすことがあります。
インダクタンスとグランド・ループを最小にするため、
リードとパター フライバック:
ンの長さをできるだけ短くして下さい。最良の結果を得るには、一点
接地にするか、グランド・プレーンを使用して下さい。
(Fig.41 に示す
ように)信号用グランドを電源用グランドから分離して下さい。可変
VF はダイオードの順方向電圧で、
ショットキ・ダイオードで
タイプを使うときは、電圧設定抵抗をできるだけレギュレータICに近 ただし、
は代表値 0.5V、ファースト・リカバリ・ダイオードでは代表値 0.8V で
づけて、敏感なフィードバック配線を短くして下さい。
す。VSAT はスイッチの飽和電圧で、特性曲線で見ることができます。
ヒートシンク / 熱の考慮事項
ヒートシンクが使われていない場合、接合部温度の上昇は次のよう
多くの場合、LM2585 の接合部温度を許容動作温度範囲内に保つに になります:
は、ヒートシンクは必要ありません。各アプリケーションで、
ヒートシ
∆TJ = PD x θJA
ンクが必要かどうかを決めるには、次の事項を確かめて下さい:
接合部温度の上昇分を最大周囲温度に加えると、実際の動作接合部
1)
(そのアプリケーションの)最大周囲温度
温度が得られます:
2)
(そのアプリケーションの)レギュレータでの最大消費電力
3)最大許容接合部温度(LM2585では125℃)
。安全で、マージンを持っ
TJ = ∆TJ + TA
た設計では、最大接合部温度よりも約 15℃低い温度(110℃)を選
んで下さい。
動作接合部温度が、前記3)項の最大接合部温度を超えると、ヒート
。
4)LM2585 のパッケージの熱抵抗 θJA と θJC(電気的特性を参照)
シンクが必要です。ヒートシンクを使うときは、接合部温度の上昇は
LM2585 の総消費電力(PD)は、次式で見積もることができます:
次式で求められます:
∆TJ = PD x (θJC + θInterface + θ Heat Sink)
ステップ・アップ:
この場合も、動作接合部温度は次式で与えられます:
TJ = ∆TJ + TA
フライバック:
前例と同様、最大接合部温度を超える場合、
(熱抵抗の小さな)大き
なヒートシンクが必要です。
®
Switchers Made Simple (Version 4.3)のデザイン・ソフトウェアに
は、精度の高い(非線形の)熱特性モデルが含まれており、異なった入
出力のパラメータや、異なった部品の値の場合の、接合部温度を求め
るのに使うことができます。レギュレータの接合部温度を最大動作温
VIN は最小入力電圧、VOUT は出力電圧、Nはトランスの巻線比、D は 度以下に保つのに必要なヒートシンクの熱抵抗を計算するのにも使え
デューティ・サイクル、さらに、ILOAD は最大負荷電流です(∑ILOAD は、 ます。
多出力フライバック・レギュレータの最大負荷電流の和です)
。デュー フライバック・レギュレータのデザイン手順をさらに簡単にするた
ティ・サイクルは次式で与えられます:
め、ナショナルセミコンダクター社は、SIMPLE SWITCHER シリーズ
のスイッチング・レギュレータ用に、コンピュータ・デザインを支援す
るソフトウェアを提供しています。
Switchers Made Simple®(Version
4.3)のソフトウェアは、IBM コンパチの PC 用の(3.5 インチ)ディス
ケットで、ナショナル セミコンダクター ジャパン社のカスタマ・レス
ポンス・センタ又は販売代理店から入手できます。また、URLからダウ
ンロード可能です(http://www.national.com/appinfo/power/index.html)。
http://www.national.com
22
外形寸法図 特記のない限り inches(millimeters)
23
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LM2585 SIMPLE SWITCHER® 3A フライバック・レギュレータ
外形寸法図 特記のない限り inches(millimeters)(つづき)
生命維持装置への使用について
弊社の製品はナショナル セミコンダクター社の書面による許可なくしては、
生命維持用の装置またはシステム内の重要な部品として使用す
ることはできません。
1. 生命維持用の装置またはシステムとは(a)体内に外科的に使用さ
れることを意図されたもの、または(b)生命を維持あるいは支持す
るものをいい、ラベルにより表示される使用法に従って適切に使用
された場合に、これの不具合が使用者に身体的障害を与えると予想
されるものをいいます。
2. 重要な部品とは、
生命維持にかかわる装置またはシステム内のすべ
ての部品をいい、
これの不具合が生命維持用の装置またはシステム
の不具合の原因となりそれらの安全性や機能に影響を及ぼすことが
予想されるものをいいます。
ナショナル セミコンダクター ジャパン株式会社
本 社/〒 135-0042 東京都江東区木場 2-17-16 TEL.(03)5639-7300
製品に関するお問い合わせはカスタマ・レスポン
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