2012/04/30 企業の CSR 実践論 ワコールのブレストケア活動 講師:株式会社ワコールホールディングス IR・広報室 CSR 担当 忽滑谷 美香氏 1.ワコールの CSR 活動とは何か ワコールの原点は、創業者である塚本幸一氏の、55 名の部隊で 3 名だけが生き残った戦 争体験での悟り、「生かされた生命が続く限り日本の復興に尽くし、残された人生を“世の 為、人の為に”」、という「創業の精神」に基づいている。 CSR 活動は、この創業の精神と経営理念の「ワコールの目標」 「社是」 「経営の基本方針」 を基に推進している。 「社是」は、相互信頼経営と人間尊重の経営を謳っており、CSR 活動 の目標として、「社会との相互信頼作り」を掲げ、社会の要請と期待に応え、社会から信頼 されることを目指している。 また、基本的な CSR と積極的 CSR という 2 本の基本フレームをもとに活動を行ってい る。基本的な CSR は、ISO26000 を基にした CSR 活動の推進であり、積極的 CSR は、 ①社会性(社会的課題の解決に取り組む)、②事業性(ワコールの本業に通じた社会的事業 活動持続的に進めていくこと)、③+らしさ(企業理念を継承し伝えていくこと、他社に真 似できない新しい社会的活動や仕組みの開発をしていくこと)である。 【ワコールの目標】 【社 是】 1965/S40年制定 1964/S39年公式制定 世の女性に 美しくなって貰う事によって 広く社会に寄与する事こそ わが社の理想であり 目標であります わが社は相互信頼を基調とした 格調の高い社風を確立し 一丸となって 世界のワコールを目指し 不断の前進を続けよう 【経営の基本方針】 1964/S39年公式制定 1.愛される商品を作ります 2.時代の要求する新製品を開発します 3.大いなる将来を考え 正々堂々と営業します 4.より良きワコールは より良き社員によって造られます 5.失敗を恐れず成功を自惚れません 2.ワコールのブレストケア活動 ワコールのブレストケア活動は、「ワコールの目標」を原点に推進し、女性に共感し共鳴 されるシンボリックな企業「女性共感企業ワコール」を目指している。また、一人でも多 くの人に乳がんの事実を知ってもらい、乳がん検診を知って受けてもらい、乳がんを経験 された方をサポートしていくことがワコールの使命だと考え、乳がんの啓発、検診、術後 のサポート活動を進めている。 ①美しいボディラインの再生支援を行う「リマンマ事業」、②乳がん検診車「AIO(ア イオ)」を使った、乳がん早期発見支援のための「乳がん検診サポート事業」、③乳がんの 早期発見、早期診断、早期治療を行う「ピンクリボン活動」の 3 本柱で実行している。 ピンクリボン活動は、12の国と地域で乳がんに関する支援活動を展開しており、ワコー ルの活動はグローバルな広がりを見せている。これらは、ワコール本業のノウハウを活用 した社会的事業でもあり、経営理念のもとに取り組んできた活動である。 3.ワコールの多岐にわたる活動の展開 このほかにも、より多くの方に乳がんの啓発を促すための活動として、店頭でブラジャ ーを試着するだけで寄付ができる「ピンクリボンフィッティングキャンペーン」や「ピン クリボン検定」、「ピンクリボンバッジチャリティ」等の活動を行っている。 さらに、株主優待で株主へお届けしている商品券の一部を「日本対がん協会」へ寄付し、 株主からの寄付額に同額をワコールが上乗せして寄付をするといった、株主の方もピンク リボン活動に参加できるシステム「マッチングギフト方式」を 2005 年に創設した。 また、ブラジャーのセミオーダーシステムである「ディーブルベ」事業を活用し、 乳房再建手術後の方のニーズを捉えて、女性の QOL(生活の質)向上に貢献する活動も行 なっている。 ワコールの本社がある京都では、医療機関、看護師、NPO、京都の地元企業、京都市・ 府、各メディアが参画している「ピンクリボン京都」という活動を協働で展開している。 京都駅前で乳がんの無料検診や講演会、京都タワーのライトアップやオフィシャルサプラ イヤーでもある京都サンガの試合会場で、乳がん啓発活動を実施している。 その他、複数の企業が集まり、検診体制の整備、検診費用の補助など社内受診率の向上 が、日本全体の引き上げに貢献できるような活動や、従業員に乳がん検診を受けてもらう ために、事業所毎の受診率の把握・改善にも努めている。 CSR web サイトや、アニュアル統合レポート、CSR小冊子などの発行により、ワコー ルの事業や活動を多くの方に知ってもらうための情報発信も行っている。 4.今後のワコールの CSR 活動の展開 今後も多くの方に乳がんのことを知ってもらい、検診、術後のサポートなどの活動を通 して女性が美しく、自信を持って活躍できるよう活動を続けていきたい。 CSR の活動は、特別何かしていかなければならないというわけではなく、ワコールの事 業活動を通して、社会貢献や信頼につながっていくことが大切であると考えている。 今回紹介した活動以外にも様々な活動を行っているが、社外はもちろんのこと、社員全 員へCSR活動を浸透させるのは難しく、今後の課題としている。自分たちの仕事がどの ように社会に貢献できているのか、どのような役割を果たせるのか、伝えていく事が重要 であると考えている。
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