サッカーのキックに適したシューズ

サッカーのキックに適したシューズ
9班
中井遥大
1.はじめに
私は,小学校 1 年生から今までサッカーをしてき
た.小学生の頃は友人とサッカーをして遊ぶことが
多く,今でも時々ボールを蹴ることがある.サッカ
ーはスパイクを履いてプレーする競技であるが,遊
ぶときはスニーカーやランニングシューズなどのス
パイクでないシューズであることがほとんどである.
これらのシューズを履いているとき,私はいつもボ
ールの蹴りづらさを感じていた.そこで,今回の機
械工学創造演習でスパイクとその他のシューズの違
いについて調べることにした.
世の中には多くのメーカーから様々なスパイクが
出ている.見た目の色やデザインもそれぞれ異なっ
ているが,
よく見るとスタッドの形状やアッパー(甲
の部分)の材質もシューズによって異なっている.
そこで,それぞれのスパイクのキックへの影響を,
スタッドの形状と材質の違いに注目して明らかにし
たい.
カンガルーレザーや牛革が使われている.一方,人
工皮革は皮が伸びないためフィット感は変化しない.
しかし濡れに強くて耐久性が高く,手入れも簡単で
ある.最近では天然皮革のような柔らかさを持った
マイクロファイバーが使用されている.
スタッドについては,円柱型,ブレード型,その
他の 3 種類に分けることができる.円柱型はあらゆ
る方向に同じだけのグリップ力を発揮し,以前から
よく使われていた.ブレード型は長辺に垂直な方向
にはグリップ力が大きくなるが,平行な方向には小
さくなる.
(a)
2.スパイクについて
2.1 スパイクとその他のシューズの違い シューズ
はそれぞれの用途に合わせて作られている.スパイ
クは他のシューズに比べ,大きく異なる点がある.
最も大きな違いはソール部分(靴底)である.スニー
カーやランニングシューズはソール部分がつるつる
だったり,浅い溝があったりする.それに対しスパ
イクは大きなスタッド(突起)があり,その数は少な
い.スタッドが地面に刺さることでターンやダッシ
ュなどをスムーズに行えるようになっている.また,
スパイクにはミッドソールと呼ばれる緩衝部材がな
いのも異なる点である.これは,スパイクが他のシ
ューズと比べ芝や土などの比較的柔らかい地面の上
で用いられるからで,繊細なタッチ感覚を残すとい
う狙いもある.
2.2 スパイクの種類 スパイクには様々なパーツが
あるが,大きく材質とスタッドの形状の 2 つに分け
ることができる.
材質は主に天然皮革と人工皮革の 2 種類に分けら
れ,それぞれ特徴が異なる.天然皮革は動物の皮で
あり,使っているうちに皮が伸びて足に馴染んでく
るため履きやすい.その反面,雨で濡れることに弱
く,耐久性が低下する.また,手入れが大変である.
(b)
(c)
図 1.スタッド (a)円柱型,(b)ブレード型,(c)三角柱型
3.実験方法
蹴りやすさを定量評価するために,ボールを蹴る
際の飛距離について測定を行った.またそれぞれの
シューズにつき 3 回ずつ測定を行い,平均値を比較
した.A~E は経験者,F は未経験者である.
(1) 用途が異なるシューズで測定 表 1 のように,
用途の異なる 5 つのシューズを用意し,それぞ
れのシューズを履いたときの飛距離を測定した.
(2) スタッドの形状が異なるスパイクで測定 表 2
のように,円柱型,三角柱型,ブレード型のスタ
ッドのスパイクを用意し,(1)と同様に測定した.
(3) アッパーの材質が異なるスパイクで測定 表 3
のように,アッパーの材質が天然皮革であるカ
ンガルーレザーと,人工皮革であるマイクロフ
ァイバーのスパイクを用意し,(1)と同様に測定
した.
表 1.用途による靴底の違い
用途
①
②
③
④
⑤
スタッド
スニーカー
―
ランニング
―
フットサル
―
トレーニング
○
スパイク
○
靴底
大きさ
―
―
―
小
大
数
―
―
―
多
少
表2.スタッド形状の違い
表3.材質の違い
スタッドの形状
⑥
円柱
⑦
三角柱
⑧
ブレード
材質
⑨
カンガルー(天然)
⑩ マイクロファイバー(人工)
4.結果
得られたデータは人によってばらつきがあるため,
3 回の平均の飛距離を,(1)では①~⑤,(2)では⑥~
⑧,(3)では⑨と⑩の平均で割り,各実験の平均に対
する割合で示した.(1),(2),(3)のグラフをそれぞれ
図 2,3,4 に示す.
飛距離/平均
1.4
1.3
A
1.2
B
1.1
C
1
D
0.9
E
0.8
F
0.7
①
②
③
④
シューズの種類
⑤
図 2.シューズと飛距離の関係
飛距離/平均
1.15
A
1.1
B
1.05
C
1
D
0.95
E
0.9
F
円柱
三角柱
スタッド形状
ブレード
図 3.スタッド形状と飛距離の関係
飛距離/平均
1.06
1.04
A
1.02
B
1
C
0.98
D
0.96
E
実験(2)では,6 人中 5 人が円柱型スタッドで最大飛
距離を記録した.最も顕著な差が出たのは未経験者
であった。実験(3)では,6 人中 5 人がマイクロファ
イバーの方が飛ぶという結果となった.また,未経
験者が最も顕著な差を示した.
5.考察
実験(1)のような結果になった要因としてスタッ
ドの有無が考えられる.スタッドがあるスパイクで
は接地面積が小さくなり,1 つ 1 つのスタッドにか
かる荷重が大きくなることで地面にしっかりと刺さ
り軸足を安定させることができる.軸足の安定がキ
ックに影響していると思われる.
実験(2)では円柱型スタッドが適しているという
結果になった.スパイクのグリップ力は動こうとす
る方向に対するスタッドの投影面積で決まる.キッ
クの場合は前後方向の動きである.円柱型は投影面
積が一定であらゆる方向にグリップ力を発揮する.
一方,ブレード型は前後方向に細長く,左右方向へ
の動きにはグリップ力が大きくなるが,前後方向に
対しては小さくなる.この差が結果に表れたと考え
られる.
実験(3)はスタッドが同じ形状のスパイクで測定
したため,材質の反発比が関係していると考えられ
る.この 2 つの材質に,1mの高さからボールを落と
して跳ね返る高さを測定したところ,カンガルーレ
ザーは 0.6m,マイクロファイバーは 0.65mとなっ
た.例えばカンガルーレザーで 30m飛んだ場合,マ
イクロファイバーでは 32.5m飛び、2.5mの差が出
る.よって,材質の反発比が影響すると考えられる.
6.結論
蹴りやすさは軸足の安定性によっていて,スタッ
ドがついたスパイクは安定性が高くキックに適して
いると考えられる.また,キックという動作のみに
おいては前後方向に高いグリップ力を持つ円柱型ス
タッド,反発比がより大きいマイクロファイバーで
構成されるスパイクが適していることが分かった.
未経験者の結果が非常に顕著であったことから,経
験が少ない人ほど円柱型スタッド,人工皮革のスパ
イクを履くと良いと推察される.
F
0.94
天然
材質
人工
図 4.材質と飛距離の関係
実験(1)では,図 2 から分かるように,経験者,未経
験者問わずスパイク着用時の飛距離が大きくなった.
参考文献
・小田伸午,運動科学 実践編―二軸動作がスポーツ
を変える!,丸善(2007),P.204-211
・西脇剛史,「第5章 サッカースパイクの秘密」,
サッカーファンタジスタの科学,浅井武(監修),
光文社(2002),P.189-210