電子タグ廃棄システムの開発に関する調査・研究

電子タグ廃棄システムの開発に関する調査・研究
報
告
書
平成20年3月
財団法人
ニューメディア開発協会
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
URL : http://keirin.jp/
1
序
わが国経済の安定成長への推進にあたり、情報・機械産業をめぐる経済的、
社会的諸条件は急速な変化を見せており、社会生活における環境、都市、防災、
住宅、福祉、教育等、直面する問題の解決を図るためには技術開発力の強化に
加えて、多様化、高度化する社会的ニーズに適応する情報・機械システムの研
究開発が必要であります。
このような社会情勢の変化に対応するため、財団法人ニューメディア開発協
会では、日本自転車振興会から自転車等機械工業振興事業に関する補助金の交
付を受けて、ニューメディ情報システム開発等補助事業を実施しております。
本「電子タグ廃棄システムの開発に関する調査・研究」は、ニューメディア
情報システム開発事業の一環として、当協会がミヨシ電子株式会社に委託し、
実施した成果をまとめたもので、関係諸分野の皆様方にお役に立てれば幸いで
あります。
平成20年3月
財団法人
2
ニューメディア開発協会
目
次
ページ
1. はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2. ICカード・電子タグの普及状況・・・・・・・・5
3. ICカード・電子タグの法規制・・・・・・・・・8
(1)国内の法規制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
(2)電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン・・ 10
(3)個別法規の例・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
(4)海外の法規制・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
4. 非接触式ICカード・電子タグの廃棄状況・・・14
(1)調査範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
(2)調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
5. 無効化廃棄システムの需要・・・・・・・・・ ・ 18
6. 無効化廃棄システムの要求仕様・・・・・・・・21
7. おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
3
1.はじめに
電 子 タ グ の 普 及 に 伴 い 、消 費 者 の 立 場 に お い て 電 子 タ グ を 安 心 し て 利 用 出 来 る 環 境 を
整備することが必要となっている。
2005年4月には個人情報保護法が施行され、またこれに先って2004年6月には
政府(総務省・経済産業省)が「電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン」を発表し
ている。ガイドラインでは「電子タグのついた商品が店舗において消費者に渡る時点で電
子タグを外したり記憶情報を無効化することを消費者が自由に選択できる」ことを規定し
ている。
一方、電子パスポートやICカード運転免許証など個人情報を内蔵する非接触式ICカー
ドが普及しつつあるが、これらは有効期限が切れて用済みとなった後、個人情報を確実に
消去または無効化(破壊)してから廃棄する必要があると考えられる。
本調査研究は市場に出回る非接触式ICカードや電子タグの中でどのような分野において
内蔵情報を消去したり無効化(破壊)したりすることが求められているのか、どのような廃
棄システムが必要とされているのか調査することが目的であり、これにより今後のセキュ
リテイ管理、プライバシー保護の一助にしたい考えである。
4
2.ICカード・電子タグの普及状況
(1)ICカードの普及状況
1)ICカードの分類
・ICカードとしては 接触式ICカード(ISO/IEC7816、CPU 内蔵/CPU なし)、非接触式
ICカード(ISO/IEC14443、TypeA/TypeB、FeliCa 方式)、及び接触/非接触一体型ICカ
ード(ハイブリッド/デュアルインターフェイス)の三つのタイプに分類される。
非接触式ICカード
TypeA
TypeB
ICカード
Felica
接触/非接触式一
接触式ICカード
ハイブリッド
デュアル
・非接触ICカードにおいては電子マネーや交通(鉄道・バス)乗車券、アミューズメン
ト・レジャー施設で利用されている他、行政機関系(免許証、パスポート等)で利用され
ている。次に接触式/非接触一体型ICカードでは公共系のIDカードの他、クレジット/
キャッシュカードと「Suica」、もしくは「Edy」等の電子マネー、
「QUICPay」等の非接触式
ICクレジット等との一体型カードがある。
・接触式ICカードは金融分野におけるクレジットカードやキャッシュカードの他、3G
携帯電話用の UIM カード、ETC カード、B-CAS カード等でも利用されている。
5
3)ICカード種類別の市場規模推移
・接触式と非接触式(含一体型)とを合わせた IC カード全体の市場規模(2006 年実績)
は発行枚数 1 億 5,680 万枚の実績となっている。内訳をみると非接触式 IC カードが 5980
万枚であるのに対して接触式 IC カードが 9700 万枚となっている。
・とりわけ非接触式 IC カードは Felica による「Suica」
「 PASMO」等の交通系カード、
「 Edy 」、
「nanaco」等の電子マネー、「QUICPay」等非接触クレジットの需要が伸びている。
・今後 TypeB による IC 旅券や IC 運転免許証等の行政機関系カードの本格的な普及も期待
されており需要は確実に拡大していくものと予想される。
<単位:千枚>
タイプ
年次
2006 年(実績)
非接触式 IC カード
2007 年(見込み) 2011 年(予測)
59,800
107,000
147,000
TypeA
8,800
16,000
17,000
TypeB
7,000
11,000
20,000
Felica
44,000
80,000
110,000
接触式 IC カード
97,000
110,000
130,000
IC カード全体
156,800
217,000
277,000
※非接触式 IC カードには一体型 IC カードを含む。
4) ICカードの分野別市場シェア
・非接触式及び接触式ともに
金融・電子マネー分野での需要が最も多く、次いで交通・
通信・放送・レジャー(含アミューズメント施設)が続いている。
その他は行政機関系・オフィス用・学校等である。
・非接触式 IC カードでは電子マネー分野と交通(鉄道・バス)分野の二つの分野で半数を
占めている。
カードの種類
非接触式 IC カード
接触式 IC カード
需 要 分 野
電子マネー
交通
レジャー分野
その他
(30.1%)
(20.1%)
(12.5%)
(30.6%)
金融
通信・放送
交通
その他
(45.4%)
(38.1%)
(13.4%)
(3.1%)
6
(2)電子タグの普及状況
1)電子タグの市場規模推移
・電子タグの市場規模をみると 2006 年実績では数量ベースで 4589 万枚、金額ベースで 67
億円となっている。製造分野を始めとして物流分野・流通・販売分野が牽引力となってい
ることに加えて、医療・福祉・オフィスなどの分野にも需要の裾野が拡がり拡大基調にあ
る。
項目
年次
2005 年実績
販売数量(千枚)
販売金額(百万円)
2006 年実績
2007 年(見込み)
40,480
45,890
99,380
6,300
6,705
9,380
2)電子タグタイプ別(周波数別)の市場規模構成
・周波数帯別での電子タグの市場規模構成をみてみると 2006 年実績では 13.56MHz 帯、
マイクロ波 2.45GHz帯無電池が需要の中心となっている。
・UHF 帯タグは 2007 年の実用化により需要量は今後拡大していくものと予想される。
(単位:千枚)
項目
年次
2006 年(実績)
2007 年(見込み)
13.56MHz
32,000
60,000
120~150kHz
3,200
3,300
400~530kHz
1,100
1,000
90
80
9,000
20,000
UHF
500
15,000
合計
45,890
99,380
2.45GHz電池付き
2.45GHz無電池
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3.ICカード・電子タグの法規制
(1)国内の法規制
ICカード及び電子タグの無効化処理(消去・破壊)と廃棄処理については個人情報保護及
び機密情報保護が密接に関連する。個人情報保護の観点では基本的には「個人情報の保護
に関する法律」(個人情報保護法)が包括的規定と考えるが、この他には「電子タグに関す
るプライバシー保護ガイドライン」が制定されている。
また廃棄処理については「資源有効利用促進法」
「廃棄物処理法」などが包括的に適用され
るが、ICカードや電子タグに関してリサイクルや情報保護という点での具体的な法規は
現状では見当たらない。
1)IC カード
■個人情報の保護に関する法律(2005.4.1 施行)
・第二十条 (安全管理措置)
個人情報取扱事業者はその取り扱う個人データの漏えい、滅失 又は き損の防止、その他
の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。
■「個人情報の保護に関する法律」の経済産業分野を対象とするガイドライン(2007.3)
・第二十条 (安全管理措置)関連の指針
消去・廃棄(手続の明確化と手続に従った実施):
個人データが記録された媒体の物理的破壊:シュレッダ、メデイアシュレッダ等で破壊する
規定。
■個別の法規
・住民基本台帳カード
:
総務省告示(別紙)・自治体条例
・運転免許証
:
警察庁規則・都道府県警規則
・電子パスポート
:
外務省規則・都道府県規則
・その他
■その他リサイクル・廃棄に係る規定
・循環型社会形成推進基本法
・資源有効利用促進法
・廃棄物処理法
など。
ICカードの直接廃棄に係る法規は制定されていない。
8
2)電子タグ
■ 電 子 タ グ に 関 す る プ ラ イ バ シ ー 保 護 ガ イ ド ラ イ ン ( 経 済 産 業 省 ・ 総 務 省 : 2004.6.8
別紙まとめ)
■その他リサイクル・廃棄に係る規定
・循環型社会形成推進基本法
・資源有効利用促進法
・廃棄物処理法
など。
電子タグの直接廃棄に係る法規は制定されていない。
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(2)電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン
(経済産業省・総務省
2004 年 6 月 8 日)
・本ガイドラインは経済産業省と総務省の両省共同で策定され、関係業界に向けての取扱
い指針をまとめたものである。
・本ガイドラインは「事業者の事業実態に応じて検討していく」との文言にもあるように
基本的には基本方針を示すもので 今後各業界、業態ごとに電子タグの実証実験等を通じて
実務レベルのガイドライン(自主基準)が策定されると考えられる。
<概要>
①ガイドラインの対象
電子タグ(IC チップとアンテナにより構成され、物品等に装着されるものであって、その
中に当該物品等の識別情報その他の情報を記録し、電波を利用することによりこれらの情
報の読み取り又は書き込みができるものをいう)を活用する事業者が対象。
さらに消費者が物品が手交された後もその物品に電子タグを付けたままにしておく場合が
対象。
②電子タグが装着してあることの表示などの義務付け
電子タグが装着されている事実、装着箇所、情報の内容を消費者に説明若しくは掲示、又
は商品・包装上に表示する必要。
③電子タグの読み取りに関する消費者の最終的な選択権の留保
④電子タグ内に個人情報を記録する場合の制限
電子タグ内に個人情報を記録して取り扱う場合、その個人情報の件数に拘わらず当該電子
タグ内に記録された個人情報に関して次の事項を守るよう努める。
○利用目的の本人通知
○目的外利用の場合の本人同意
○個人情報の正確性・最新性の確保
○消費者の求めに応じて、情報開示・情報訂正
○記録された情報の滅失、毀損、改ざん及び漏えいの防止
⑤情報管理者の設置
⑥消費者に対する説明及び情報提供
政府や事業者団体等の関係機関は電子タグの利用目的、性質、そのメリット・デメリット
等に関して情報提供を行うなど消費者の電子タグに対する理解を助けるよう努める。
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(3)個別法規の例
- 住民基本台帳カードの場合(総務省告示 第 392 号 2003.5.27 抜粋)-
総務省告示では返納された住民基本台帳カードの廃棄においては ICチップ部の破壊や
カード裁断等の物理的な廃棄処理を行うよう規定している。
住基カードのライフサイクル
11
(4)海外の法規制
1)概
況
欧米では古くからプライバシーの権利が保証されているが、最近ではデータ保護の規定も
追加されており、RFIDの普及を意識しながら法整備が進んでいる。
下表に欧州(EU)と米国の法制化の経過を示す。
■欧州(EU)の経過
・1980年 : OECDプライバシー8原則
・1995年 : 個人情報保護法
・1997年 : 通信部門の個人データ処理及びプライバシー保護法(欧州議会・理事会指令)
・1998年 : データ保護指令 [第 25 条]
個人データに関する十分なレベルの保護のない第三国への個人データの移動禁止
・2007年 : RFID法制化日程の発表(欧州委員会)・RFID利害関係者グループの創設
・2007年 : RFIDタグのデータの安全性とプライバシーに関する勧告
・2008年末 : RFID技術の経済的・社会的影響(プライバシー等)の分析・立法化推進(予定)
■米国の経過
・原則 : 憲法でプライバシーの権利が保証されており、個人情報保護の包括的な法律はなく
個々の分野毎に規定がある。
・2006年 : ICタグ利用ガイドラインの発表(プライバシー擁護団体 CDT)
電子タグが装着してあることを表示する。
消費者は商品の購買時に ICタグの取り外し、無効化、破壊を選択できる。
この選 択 により返 品 ・保 障 上 の不 利 益 、法 律 的 な不 利 益 、商 品 へのダメージがあっては
ならない。
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2)OECDの状況
・国際的なネットワークの拡がりにより情報のコピーや伝達が容易に行われるようになり、
「プライバシー侵害」が世界的に懸念されるようになり「個人情報」にある程度の制限を
かけようとする動きが、1980 年に OECD(経済協力開発機構)の理事会勧告(OECD 個人情
報保護ガイドライン)という形で始まった。
このガイドラインは「OECD 個人情報保護8原則」として8つの原則が規定されている。
■OECD個人情報保護8原則:
①収集制限の原則
⑤安全保護の原則
②データ品質の原則
⑥公開の原則
③目的明確化の原則
⑦個人参加の原則
④利用制限の原則
⑧責任の原則
・この原則に沿うと個人情報保護とは
第一に利用目的、利用範囲は情報主体(本人)から事前に同意を取る。
第二に利用目的、利用範囲に合った使い方をする。
第三に利用目的、利用範囲を変更する場合は情報主体(本人)から同意を取る。
以上三つの要件があると解されている。
・これを受けてOECD加盟各国(29ケ国)で個人情報保護、プライバシー保護などの基本
法が制定されている
3)EUの状況
・EU 指令では「OECD8 原則」を踏まえて EU 加盟国以外の国に対して個人情報の告知、ア
クセス、選択、承認などに関する一定の情報基準を決め、その基準に適合しないかぎり、
個人データの送付を制限するというものである。この指令は3年以内に加盟国に対して個
人情報に関する法律の制定または改正を求めている。
・ドイツの例:ドイツでは連邦データ保護法(1977 年制定、1990 年・2001 年改正)を制
定している。同法は公的機関及び民間機関の双方をカバーする包括法となっている。また
監督機関(連邦データ保護コミッショナー)が設置され個人情報を監督するとともに公的
機関を監督する。民間機関は州の監督官庁が監督している。
・その他 イギリス、フランスなど加盟する29ケ国全てで同様の内容が法制化されている。
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4.非接触式ICカード・電子タグの廃棄状況
(1)調査範囲
今回の調査では代表的な分野と関係機関/企業を選んでICカード、電子タグの利用状況や
廃棄状況を調査した。(表 4.1 参照)
表 4.1 非接触式ICカード・電子タグ廃棄状況の調査範囲
区
分
調査分野
対象カード/タグ
訪問先
(または電話確認先)
住民基本台帳カード
非接触式ICカード
行政関係
・総務省(自治行政局市町村課)
・ 各地の市役所
(関西地区中心に6ケ所)
IC旅券
・外務省(領事局旅券課)
・都道府県の旅券センター
(広島地区)
ICカード免許証
・警察庁(交通局運転免許課)
・都道府県の運転免許センター
(東京地区など2ケ所)
金融・交通関係
電子タグ
流通関係
クレジットカード
・クレジットカード会社(東京2社)
電子マネー
・鉄道会社(東京1社)
値札タグ
・ デパート(東京2社)
(アパレル販売店)
値札タグ
(シューズ販売店)
14
・ デパート(東京1社、大阪1社)
(2)調査結果
1)
非接触式 IC カード
業界分野
住民基本台帳カード
廃棄状況(発行から廃棄までのライフサイクル)
・住基ネットワークを実施している在住の市町村の窓口にて申請すること
により、住基カードが数日間内に発行される仕組みとなっているが、市民
の転出・転入や高齢・死亡などの場合に旧カードを市町村窓口に返納するこ
とで、市町村が旧カードを回収・廃棄処理する流れとなっている。
・現状では市町村において回収した旧カードをシュレッダで裁断処理する
ケースが多いが、その廃棄方法については総務省告示の基本方針があるも
のの具体的な方法は自治体に委ねられており各々違いが見られる。
パスポート
・パスポートの更新を旅券センターの窓口に申請し新しいIC旅券を受取
(IC旅券)
ることになっているが、この際に有効期限切れの旧旅券を返納するケース
が多い。旅券センターでは回収した旧旅券をセンター内でまとめてシュレ
ッダで裁断して廃棄する形をとっている。
・また場合により旧カードをパンチ機で穴あけ(無効化)し、利用者に返却
するケースもあるが、いずれにしても廃棄処理は都道府県に委ねられて
いる。
運転免許証
・期限切れや破損したIC免許証を運転免許センター(若しくは警察署)
(IC カード免許証)
で穴あけ処理して個人に返却するか、センターで回収してシュレッダで
裁断廃棄している。
・廃棄処理方法については都道府県に委ねられている。
金融関係
・期限切れの IC カードについてはカード保有者自身で廃棄するのが一般的
である。カードを発行している金融機関が回収するのは有効期限内のもの
で何らかのアクシデントで破損や毀損したカードが対象となっている。
・そして利用者が旧カードを金融機関に提出した後にカードの再発行(一
週間程度後)を行う流れとなっており、回収したカードは金融機関がまと
めて一元的に専用シュレッダー等で破砕し、専門業者に委託して廃棄処分
している。
交通関係
・有効期限切れや破損カードは鉄道会社が回収して新カードの発行もしく
は再発行を行うケースが多い。回収したカードの廃棄処理については鉄道
会社によって対応の違いがみられるが、専用の処理機で廃棄してリサイク
ル業者に委託する流れが多いと考えられる。
・一般的にはカード利用者により廃棄処理(ハサミで裁断等)されるケー
流通関係
スが多く、カード会社が回収するケースは少ないので廃棄の実態について
は詳細不明である。
15
2)電子タグ
業界分野
アパレル関係
廃棄状況(発行から廃棄までのライフサイクル)
・ 衣料品メーカーから卸問屋を経由して百貨店等の販売店舗に商品が流
れるルートが一般的なものとなっているが、電子タグの発行はこのな
かの卸問屋にて電子タグが発行されるケースが多い。
・ 卸問屋で商品に電子タグが装着され、百貨店にて仕入れされた後、在
庫管理及び商品管理するためにこの電子タグが使用される流れとなっ
ている。
・ 現状では百貨店売り場の棚に電子タグ付きの商品が陳列され、購入さ
れた段階で電子タグを外して使用済みのタグをまとめて回収する形と
なっている。
回収された電子タグは記録情報が書き換えされて再利用されるケース
が大半を占めている。
・ しかし今後は電子タグを商品(衣類)に取り付けたまま消費者に販売
されること(ソースタギング)が予想され、この場合消費者が身に付
けた状態では読み取り装置を近づけるとタグから商品情報が読めるの
で プライバシー侵害の問題が出る可能性がある。
シューズ関係
・ シューズ販売についても衣料品と同様に卸問屋にて電子タグが取り付
けされている。
・電子タグが取付けられた商品(シューズ類)を百貨店で仕入れ、在庫管
理・商品管理の目的で電子タグを使用した後に商品販売時にタグを外
して回収する。
・回収後は記録情報を書き換えて再利用するケースが多い。
・これも今後は電子タグを取り付けたまま販売されるケースが増えると
考えられ、読み取り装置を近づければ無断で商品情報が読めるので
プライバシー問題が出る可能性がある。
16
3)電子タグの問題点
ここ数年、国内・海外とも流通業界では電子タグの実証実験が行われており、電子タグに
よる商品管理システムの効果を確認中であるが、海外ではこれらの業界の動きに対して
消費者団体を中心に電子タグの普及に警告を発する動きがあるので注視する必要がある。
■消費者団体の動向
(1)消費者団体の指摘事項(電子タグの問題点)
①無断で読取られる:
バッグなどに入れている商品の情報を所有者が気づかないうちに読取られ商品の内容(個人の趣
味など)が分かってしまう場合がある。
②所有者が特定できる・行動が追跡される:
商品と所有者を関連づけることで個人を特定できることになり、商品を持ち歩くことで追跡が可能
になる場合がある。
(2)不買運動
*米国でのRFID実証実験:
・2004年、ウオルマートストアズの実証実験に消費者団体(CASPIAN)が反対、不買運動展開。
*英国でのRFID実証実験:
・2003年、テスコ社(スーパーチェーン店)の実証実験に対して消費者団体が不買運動展開。
*イタリアでのRFID実証実験:
・2003年、ベネトン社の実証実験に対して消費者団体が不買運動展開。
*ドイツでのRFID実証実験:
・2004年、メトロ社(スーパー)での実証実験に対して消費者団体が抗議。
これら不買運動に対して店側は実験の中止や計画変更などで対応し、消費者側に配慮した。
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5.無効化廃棄システムの需要
市場調査を通じて非接触式ICカードに係る個人情報管理(セキュリテイ)の問題や電子
タグに係るプライバシー侵害の問題が浮かび上がってきた。
これらの安全強化を目的として、今後非接触式ICカードの内部情報の消去やICチップ
の電磁的破壊、また電子タグにおいてもICチップの電磁的破壊を行う「無効化廃棄シス
テム」が必要になると思われ、市場での需要を調査したので調査結果を下表に示す。
1)非接触式 IC カード
■行政関係
凡例⇒
分類
需要有り
需要低い
需要評価
需要高い
無効化廃棄システムの需要検討
住基カード
住基カードの普及とその利用が停滞しているなかで
自治体(市町村)が住民の転入・転出に伴って回収
する住基カードも数としては少ないなどの事情から
現状では自治体での無効化廃棄システムの導入ニー
ズは低い。しかしながら今後の住基カードの普及動
向にもよるが、総務省告示(半導体チップの物理的破
壊)を実現するためには具体的な廃棄方法に関して
指針を出して頂く必要がある。
IC旅券
旅券センターでは更新時に旧 IC 旅券を回収して穴
あけや裁断処理して廃棄している現状であるが、氏
名・住所・国籍・顔写真など個人情報が収納されて
いることから今後偽造など悪用されるケースが出る
ことが考えられ、これを防ぐために電磁的に無効化
破壊するシステムが必要と考えられる。
IC カード免許証
IC 免許証は平成 21 年 3 月までに全都道府県で導入
される予定であり発行枚数から見ると行政関係では
最も多く現段階(2007 年 10 月)で約 100 万枚であ
るが、既存の免許証 8000 万枚がいわばポテンシャル
である。
更新時に古い免許証は穴あけ処理後ユーザに返却さ
れることが多いことから 今後偽造防止のためには
電磁的無効化廃棄システムが必要になると考えられ
る。
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■金融・交通・流通・レジャー関係
凡例⇒
分類
需要低い
需要有り
需要評価
需要高い
無効化廃棄システムの需要検討
金融関係
金融関係で使用される IC カードは多くの個人情報
が記録されていることから、個人情報保護の見地か
ら厳格な取扱いが求められている。有効期限切れカ
ードについてはカード保有者による処理に委ねられ
ており、また有効期限内のカードは信販会社が回収
するケースが多い状況であるが、いずれにしても無
効化廃棄システムの需要があると考えられる。今後
利用形態を詳細に検討する必要がある。
交通関係
期限切れカードを回収している鉄道会社と、期限内
カードで破損や使用不可となったカードのみを回収
している鉄道会社と会社によって対応の違いが見ら
れるが、一元的に回収している鉄道会社で需要があ
ると考えられる。但し現状では専用の処理機などで
廃棄処理を行っており既存品との差別化や優位性が
必要である。
流通レジャー
家電量販店、レジャー施設、コンビニなど流通レジャー
分野では基本的に IC カードの廃棄はカード保有者
で処理するケースが大半であり、サービス事業会社
が回収して一元的に無効化廃棄処理を行うケースは
少ない。したがって事業会社向けの廃棄システムは
需要が少ないと考えられる。
19
2)電子タグ
凡例⇒
分類
需要低い
需要有り
需要評価
需要高い
無効化廃棄システムの需要検討
衣料・アパレル
・現状では販売店舗内(百貨店等)での物品管
理とマーケティング用情報管理として電子タ
グが使用されるようになってきたが、主に人に
関わ る 情 報 より も 物 品 に関 わ る 情 報が 記 録さ
れていることが多く、プライバシー保護よりも
物品管理が重視される傾向にある。
・このためタグの価格が高いこともあってタグ
の無 効 化 や 廃棄 を 行 う より も タ グ 内の 記 録を
書き 換 え る こと に よ り 再利 用 す る 傾向 が 強く
廃棄装置の需要は低いと考えられる。
・しかし今後クローズ型(製造~流通)のタグ
利用からオープン型(製造~流通~販売)の利
用に拡大し、タグ情報が拡散することでリスク
との認識が高まる可能性があり、電子タグの低
価格化が進めば需要が期待できる。
シューズ関係
・シューズ関係においても衣料品と同様で現状
では需要は低いが、今後電子タグを商品に取り
付けたまま消費者に販売する(オープン型の)
形態になれば需要が出る可能性がある。
20
6.無効化廃棄システムの要求仕様
市場調査を元に検討した無効化廃棄システムの基本仕様を表 6.1 に示す。
実際の商品化にあたっては形状や使い方などの詳細仕様は対象となるICカード、電子タ
グに合せて決める必要がある。
表 6.1
無効化廃棄システムの基本仕様
(1)目的
・非接触式ICカード、電子タグの電磁的無効化(ICチップの情報消去・電磁破壊)
(2)無線・通信仕様
・対応カード
:
ISO14443(Type A・Type B・Felica)
・電波輻射
:
ARIB-STD-T82 準拠
・不要輻射
:
微弱電波相当
(3)機能
・ICカードの通信種別の確認
(周波数、Type B など)
・ICチップの無効化(情報データ消去・電磁的破壊)
・破壊履歴の保存
(4)外観・形状・サイズ・操作方法
・対象となるICカード、電子タグに合せた最適な形とする。
21
7.おわりに
今回の「電子タグ廃棄システムの開発に関する調査・研究」の内容を下記にまとめる。
(1)調査の目的
■非接触式ICカード:
期限切れなどで用済みとなったカードを廃棄する場合に個人情報などのデータが漏洩する
ことなく正しく廃棄されているかどうか、また従来の廃棄方法を強化するための「無効化廃
棄システム」(ICチップの情報消去・電磁的破壊装置)の需要があるかどうかについて調査
した。
■電子タグ:
海外で指摘されるようなプライバシー侵害の問題、即ち購入した商品を身につけて(または
身近かに置いて)使うことで個人が特定(追跡)されるような懸念があるかどうか、またこれ
を防ぐための「無効化廃棄システム」(ICチップの電磁的破壊装置)の需要があるかどう
かを調査した。
(2)調査結果
■非接触式ICカード:
個人情報を扱う行政、金融、交通、流通などの分野で非接触式ICカードの利用状況、廃棄
状況を調査した結果、現状はシュレッダによる裁断やパンチ機による穴あけなどで無効化
して廃棄するケースが多い。
しかし、より安全性を上げるにはICチップを電磁的に無効化(破壊)してから裁断・穴あけ
する方が望ましいと考えられ、これに関して関係者(官庁・企業など)と議論したところでは
「差し迫って必要とは考えていないが、今後安全性の向上が必要と考えており、無効化廃棄
システムが低価格で入手できるなら検討したい」との意見が多かった。
■電子タグ
:
電子タグでは衣料品(アパレル)、シューズなど商品を身につける分野に注目して市場調査
をしたが、まだタグの普及がそれほど進んでおらず、タグも店舗内や物流倉庫内での在庫管
理に限られている場合が多く、タグが商品に付帯して(装着したままで)販売されるケース
は今のところ少ない状況である。
今後商品に取り付けたまま販売される(オープンな)使い方に移行すれば 指摘されるよう
なプライバシーの問題が浮上してくる可能性があり、電子タグの無効化廃棄システムが必
要になると考えられる。
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電子政府、ユビキタス社会の実現に向けて各分野でICカードや電子タグが普及しつつあ
るが、個人情報の漏洩やプライバシー侵害の問題が指摘されているので、配慮しながら普
及を進めていく必要がある。今後は市場の動向を見ると共に無効化廃棄システムの低価格
の実現性について検討していきたい。
おわりにあたり今回の市場調査でご協力頂いた行政機関(政府・都道府県・市町村)や民間
の企業・事業所の皆様に御礼申し上げたいと思います。
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以上。
-禁無断転載-
電子タグ廃棄システムの開発に関する調査・研究
平成20 年 3 月
作
成
財団法人 ニューメディア開発協会
東京都文京区関口一丁目 43 番 5 号
TEL
委託先名
03-5287-5032
ミヨシ電子株式会社
兵庫県川西市久代 3-13-21
TEL
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072-756-1331