新潟空港誘導路改良工事における安全対策について 新潟港湾・空港整備事務所 新潟空港出張所長 田室 正秋 ○港 湾 施 設 監 査 官 中野 佳朗 1.はじめに 航空機の安全運航を確保するには、空港の滑走路や誘導路を良好な舗装状態で保持し、 舗 装 の ひ び 割 れ や わ だ ち 掘 れ 、 ブ リ ス タ リ ン グ (表 面 ぶ く れ )や 層 間 剥 離 な ど の 損 傷 を 防 ぐ 必要がある。 新潟空港においては、舗装のわだち掘れが顕著に認められたため、舗装の機能回復を目 的とした誘導路改良工事を実施した。 施工箇所はエプロンに隣接する誘導路であり、航空機の往来頻度が高い。この様な箇所 で 、航 空 機 の 運 航 を 考 慮 せ ず 施 工 を 実 施 し た 場 合 、様 々 な 事 故 が 発 生 す る の は 明 白 で あ る 。 そのため、供用中空港の特性を考慮した安全対策を行った。本報告は施工において実施し た安全対策について報告するものである。 写真-1 新潟空港の現況 ◇ 誘導路改良工事実施内容◇ C-3 誘 導 路 部 アスファルト舗装→無筋コンクリート舗装版 2.供用中空港での施工上の問題点 施 工 に 伴 い エ プ ロ ン と 誘 導 路 C-2 を 結 ぶ 区 間 が 走 行 で き な く な る た め 、 滑 走 路 の 一 部 を地上走行路として使用する必要がある。その際に運航を誤れば、着陸した航空機と離 陸する航空機が出会いとなる「着陸機・離陸機の地上走行路問題」が考えられた。通常 時における航空機の地上走行路を図-1 に示す。本施工を実施するため、航空機の運航 に支障を与えないよう、通常時の地上走行路を極力変更させない方針で検討を行った。 凡例 着陸 離陸 施 工 箇 所 (Ⅰ 工 区 ) B4 B5 C6 施 工 箇 所 (Ⅱ 工 区 ) B3 C5 B2 C3 C4 B1 P3 C2 B4 B5 C1 C6 B3 C5 B2 C3 C4 B4 C6 B3 C5 C4 B2 P3 C3 C2 B1 C1 B4 B5 C6 B3 C5 C2 C1 出会いとなる 滑走路を地上走行 B5 B1 P3 C4 B2 B1 P3 C3 C2 C1 出会いとなる 図-1 航 空 機 地 上 走 行 路 (通 常 時 ) 図-2 航 空 機 地 上 走 行 路 (Ⅰ 工 区 閉 鎖 時 ) そ の 結 果 、 図 - 2 で 示 す と お り 、 エ プ ロ ン と 誘 導 路 C-2 を 結 ぶ 区 間 で あ る Ⅰ 工 区 を 閉 鎖 するのは施工上やむを得ないが、この箇所を優先的に施工し、工事による閉鎖区間と期 間を最小化させ、航空機が早期に走行できるようにすれば、航空機運航に対する影響が 最小限になると考えた。 3.着陸機・離陸機の地上走行路問題 3.1 検 討 対 象 航 空 機 検討対象航空機は、本工事期間中に就航が想定された航空機の中で機体幅が最大であ る BOEING-747 400 と し た 。 3.2 地 上 走 行 路 の 検 討 Ⅰ工区の閉鎖期間を最小化することが重要であることは前述したが、Ⅰ工区の具体的 な 施 工 延 長 を 決 定 す る た め 、 後 述 す る 施 工 区 域 端 部 か ら 誘 導 路 中 心 線 を 32.5m 移 設 さ せ た状況で航空機を運航させた場合の航空機の軌跡等を検証し、安全に走行することがで き る 73m を Ⅰ 工 区 の 施 工 延 長 と 決 定 し た 。 な お 、 検 討 に 用 い た 航 空 機 地 上 走 行 軌 跡 図 を 図 - 3,4 に 示 す 。 図-3 航 空 機 地 上 走 行 軌 跡 図 (C-4→ C-2) 図-4 航 空 機 地 上 走 行 軌 跡 図 (P-3→ C-2) 3.3 誘 導 路 中 心 線 移 設 の 検 討 地上走行航空機 滑走路中心線等と工事区域との重複をさける 駐機航空機 仮設誘導路中心線 クリアランス+α 基準値 15.0m 仮設誘 工事 導路灯 作業幅 た め 、地 上 走 行 路 を 迂 回 さ せ る 必 要 が あ っ た 。そ 既設誘導路中心線 のため、誘導路中心線の移設距離を検討した結 施工区域 果 、工 事 区 域 端 部 か ら 、地 上 走 行 航 空 機 に よ る ブ ラ ス ト 影 響 範 囲 (30m)+仮 設 誘 導 路 灯 (1.5m)+工 事 駐機航空機 地上走行航空機 作 業 幅 (1.0m)の 合 計 32.5m と し た 。ま た 、こ の 時 の駐機中の航空機と地上走行中の航空機との離 施工区域 隔 を 照 査 し た 結 果 、28.3m(基 準 値 15m)あ り 、安 全 上必要な離隔を確保していることを確認した。 図-5 誘導路中心線移設検討図 4.対策結果と今後の課題 以 上 、 供 用 中 空 港 で の 施 工 に あ た っ て 航 空 機 走 行 の 安 全 を 確 保 す る た め 、 図 - 6,7 に 示 す安全対策を実施した。また、その他の対策として、施工を空港の供用時間外である夜間 (20:30~ 7:00 間 )に 行 い 、航 空 機 と 資 機 材 等 運 搬 車 両 と の 接 触 事 故 を 防 止 し た 。さ ら に は 、 資機材運搬路に使用した航空機地上走行路の点検を徒歩により確実に実施し、航空機のエ ンジンが飛散物を吸い込み破損することを防止する安全対策を実施した。供用中空港での 施工下で生じる諸問題に対応する安全対策に積極的に取り組み、無事故・無災害で工事を 終 え る こ と が で き た 。し か し 、写 真 -4,7 に 示 す 航 空 機 の 輪 荷 重 が か か ら な い 箇 所 で 使 用 し た テ ー プ 状 の 仮 設 マ ー キ ン グ 材 (以 下 「 仮 設 材 」 と い う 。 )が 剥 が れ 飛 散 す る 事 象 が 認 め ら れ、施工上の課題を残した。これは、使用した仮設材の屈撓性が乏しく、路面の凹凸に適 合しなかったものと思われる。今後、同様な施工にあたっては、現場条件に適合した仮設 材を使用していきたいと考える。 滑走路を地上走行 エプロンを地上走行 供用休止標示物 写真-2 航空機の地上走行状況 写真-3 供用休止標示物設置状況 マ ー キ ン グ 剥 が れ 写 真 - 4 仮 設 マーキング剥 が れ 状 況 ① 航空機の誤進入 防止対策標示物 マ ー キ ン グ 剥 が れ 後方センサーを取付け、 巻き込み事故防止 写真-5 夜間における施工状況 施工箇所に近接して 走行する航空機の状況 写真-6 施工箇所と走行する航空機 写 真 - 7 仮 設 マーキング剥 が れ 状 況 ② 図-6 地 上 走 行 路 誘 導 線 等 設 置 図 (Ⅰ ・ Ⅱ 工 区 施 工 時 ) 図-7 地 上 走 行 路 誘 導 線 等 設 置 図 (Ⅱ 工 区 施 工 時 ) 5.おわりに 航空機の中で特に旅客機の離着陸が出来なくなると新潟空港を利用する搭乗客に対して 損失を与えるのは当然であるが、新潟空港に就航する旅客機は1日に日本各地を移動し、 次の到着地でもまた、乗客を乗せて移動する。そのため、他の空港を利用する搭乗客に対 しても損失を与えるため、供用中空港において工事の影響による航空機の離発着等に支障 を出さないよう、発注者として重責を担っている。 今後も航空機の運航に与える影響が最小限となる安全対策を実施し、社会資本整備を着 実に執行していきたいと考える。 最 後 に 本 工 事 の 実 施 に あ た り 、新 潟 空 港 を 利 用 す る 航 空 各 社 、東 京 航 空 局 他 関 係 各 位 の 、 多大なご指導、ご協力に対し、深く感謝申し上げる次第である。
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