フィッシャーの空気圧キット

イロン樹脂・金属からできていて、プラスチ
フィッシャーテクニックの空気圧学習キット
1.はじめに
産業界では油圧機器等がアクチュエータ
ーとしてあらゆる分野で重要な役割を果た
しておりますが子供たちを対象にした玩具
や教材の分野ではモーター駆動が圧倒的優
位で空気圧や水圧を利用した商品はペット
ボトルロケット他ごく一部を除いてあまり
見当たりません。そんな中でフィッシャーの
空気圧キットは子供たちが遊びながら空気
圧を学ぶことができる数少ないキットでな
いかと思いますので簡単にご紹介します。
2.フィッシャーテクニックのブロックの
特徴
フィッシャーテクニック fischertechnik
は子供たちがいろいろな機械や構造物を組
み立てながらその構造や原理が学習できる
ブロックキットとして、1965 年にドイツにお
いて開発されました。今日に至るまでそのブ
ロックの優れた特徴によって玩具というよ
り技術教育教材として高い評価を得ていて
欧米の企業や学校で技術教材として広く活
用されています。主な特徴を挙げると
①ブロックの接続が強固
レゴをはじめ一般
的なブロックは凹
面と凸面を直線的
にはめ込む構造に
なっておりますが
フィッシャーのブ
ロックは凸面を凹
面に対してスライ
ドさせて固定する
構造になっているため、外れにくく、構造的
に強固になっています。また 6 面すべてを使
いますので立体的な構造物を作るのに適し
ています。
②ブロック自身が構造的に頑丈
ブロックは3種類の素材、プラスチック・ナ
ック製のブロックに引張り強度の大変強い
ナイロン樹脂の接続部分が差し込まれ、さら
に接続部分が外れないように本体部分とは
金属のアンカーボルトで固定されています。
この構造によって世界で最も丈夫なブロッ
クといわれています。
③部品の種類が多彩で本格的
ブロックだけでなく、歯車やねじなどさまざ
まな部品が450種以上用意されておりま
すので工具や機械などの基本的な機構を再
現できるようになっており精度の高いミニ
チュアマシンを組み立てることが可能です。
④手動からシーケンサ制御まで
組み立てたモデルを手で動かすことはもち
ろん、モーターで動かしたり、リモコンで制
御したり、パソコンでプログラムを組んで制
御したりあるいはシーケンサで制御できる
ようにもなっており、利用者のレベルに合わ
せて幅広い制御方法が用意されています。ま
た商品ラインも大きく分けて小学低学年対
象のベーシックシリーズ・高学年以上対象の
アドバンスシリーズ・教材的要素の強いプロ
フィシリーズ・コンピューター制御ロボット
シリーズ・工業高校以上対象のトレーニング
キットの 5 ラインに分かれています。
フィッシャーのブロックキットの中で空気
圧を利用したキットとしては「空気圧作動キ
ットⅡ」と「空気圧ロボット組立キット」が
ります。
3空気圧作動キットⅡ
3-1キット内容
「空気圧作動キットⅡ」はプロフィシリーズ
の 1 種でコンプレッサーを組立て圧縮空気を
手動バルブで制御して製作モデルを動かす
キットです。使用している手動バルブは吸気
孔・排気孔およびシリンダーとの接続口 2 箇
所の4/3WAY タイプです。ブロック数は
400個以上、8種のモデル組み立て可能な
キットになっています。
バス・電車のドアに代表される空気圧開閉ド
アのミニチュアモデルで、つりドアはラック
&ピニオンをシリンダーで動かして開閉で
きるようになっています。
③角材押し出し機
3-2製作モデル
①コンプレッサーの組立
このキットではまずコンプレッサーを組立
てた後コンプレッサー、シリンダー、逆流防
止弁、手動バルブを使っていくつかの空気圧
に関する基本的な実験を行うようになって
います。そして空気圧のメカニズムが理解で
きた所で8種類の空気圧作動機械を順番に
組み立てて行きます。コンプレッサーで作ら
れる圧搾空気圧は 1.5 バール位です。組み立
てられる空気圧機械の何点かを簡単に説明
します。
この機械は左右に取付けた2本のシリンダ
ーがブロックの角材を押さえ、同時にもう1
本のシリンダーで押していきます。今度は角
材を押さえていたシリンダーの圧が開放さ
れると同時に押し出していたシリンダーが
元の位置に戻り、改めて次の押し出し体勢に
移ります。この動作を繰り返すことで角材を
一定の割合で押し出していきます。
④ショベルカー
②空気圧開閉ドア
2本のシリンダーでショベルの上下動を、も
う1本のシリンダーでショベル自身の開閉
をコントロールしています。
⑤パイプ敷設機
これは1本のシリンダーがパイプを挟むグ
リッパーの開閉を、他の2本のシリンダーが
グリッパーの上下動をつかさどるようにな
っています。
キットではこれら以外に「カタパルト」、
「プ
レス加工ターンテーブル」、
「ブルドーザー」、
「大型ショベルカー」を組み立てることが出
来るようになっています。いずれも手動バル
ブで動かすのですがメカのみでなくそれぞ
れの動きにリアルティがあります。
①自動ドア
ドアのスイッチを押すとドアが開き、ドアを
通り過ぎた後、光電センサーを横切ると自動
的にドアが閉じるようになっています。シリ
ンダーをダブルアクションシリンダーとし
て利用してドアを開閉しています。
②ソーティングマシーン(白黒選別機)
4空気圧ロボット組立キット
4-1キット内容
「空気圧ロボット組立キット」では手動バル
ブに代えてソレノイドバルブ(電磁バルブ)
を使ってシリンダーへの空気の流れを電気
的に制御できるようになっています。
ダイアグラム方式の専用のソフトウエアを
使うと簡単にプログラムが作れるようにな
っています。また Visual Basic 版ソフトも
あります。電磁バルブの仕様は3/2WAY 、
9VDC/130mA です。またキットに含ま
れるブロックを使って色々な駆動機構も作
れるようになっています。
4-2製作モデル
このキットで組み立てられる空気圧ロボッ
トモデルは次の4種類です。
フォトトランジスターへの反射光のアナロ
グ値の強弱によってワークを白と黒に区分
しています。送り出し装置でワークが一つず
つ送り出され、判別装置で白黒を判別し、仕
分け装置により左右のストッカーに区分さ
れます。仕分け機構は 2 本のシリンダーを使
用して仕分け棒を左右に動かして振り分け
る機構になっています。
③グリッパー
グリッパーはワークを掌握するハンド部分
とワークを運ぶ回転部分から成り立ってい
ます。ハンド部分はシリンダーの前後運動で
ワークをつかむようになっています。軸にば
ねを使うことで空気圧がかかっていないと
きはハンドが開いた状態になるようにして
います。
回転部分はシリンダーの前後移動を、歯車を
用いて回転運動に変えています。
④プロセスセンター
3 つのシリンダーを用いた、工場の生産ライ
ンを模したマシンです。ワークが一つ一つ送
り出されプレスされた後、ラインから排出さ
れるようになっています。装置はワークの押
し出し装置、回転盤、プレス加工、排出装置
からできていて、回転盤以外はシリンダーで
動作します。
このキットでは以上4種のモデルを組み立
てることで電磁バルブとシリンダーのいろ
いろな組み合わせが学べるようになってい
ます。またインターフェイスには4個の出力
しかありませんのでそれ以上の電磁バルブ
を使用する必要があるときには別売の拡張
インターフェイスを増設すれば入出力数を
2倍に増やすことが可能です。
5終わりに
ここではフィッシャーテクニックの空気圧
キットについてその製作例を中心に紹介し
てきました。実際にバルブを制御してシリン
ダーを動かしてみるとモーターの動きとは
異なる高速移動が体感できますので子供た
ちのとっては新鮮で興味深い体験になると
思います。空気圧について手軽に学んでいた
だける教材として小中学生にうってつけで
はないかと思っております。また工業高校生
以上であればマイコン学習の制御対象とし
て利用するのもお勧めです。