こちら - 公益財団法人食品農医薬品安全性評価センター

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研 究 所 報
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2004
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目次
1.(財)食品農医薬品安全性評価センター第 1
1回学術講演会
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1
. 内分泌撹乱化学物質研究の現状と問題点』
自然科学研究機構
2
岡崎統合バイオ サ イエ ンス セ ンタ ー
, C阻 ST,TST 井 口
トランスポーターと化学物質による毒性発現.....
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泰泉
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先生
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杏林大 学 医 学 部 薬 理 学 教 室 遠 藤 仁 先 生
1I.研究報告
1 ビーグル犬の頚動脈友び左冠状動脈硬化モデル
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大 平 永 敏,溝 口 真和
, 勝俣
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勇,岡村 孝 之,藤原
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正孝,北 島 省吾
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. 論文発表
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. コレステロ
ルによる 3T3-L1脂肪細胞中性コレステロール
.•• .• •.•• .••. •••• ••.••.•.
エステラーゼ (N-CEase)活 性 の 分 子 調 節 機 構 ・ 一 一 ー
三 浦 進司
, 名倉 広美,千葉
剛
, 富田
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池 田 雅彦,富田 多嘉子 ,Kr
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. 研究会・学会発表会
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. ラットの腎臓腫蕩に随伴して観察される円柱線毛上皮
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ラッ ト腎芽腫問葉型と腎間葉系腫蕩の鑑別一…一....・ ・
第四試験室 岩田
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. H・E染色標本の蛍光照射による退色についての検討 … … .
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古橋
由美,望月
貴治
, 三 木 雅代,磯部 香 里,
杉浦 ひろ子,松 岡 嘉則 ,山本
郁夫,萩原
孝
3
. マウスを用いた絶食時間の血液生化学値および胃の病理所見への影響の検討…....・ ・
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向井
大輔 , 山 川 誠 己 , 各務
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進, 村 田 共 治 , 井 上 博之
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大橋 信之
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. トピックス
79
1
. 第二試験研究棟 (
7
号館)の建設
(
財 )食品農医薬 品安全性評価セ ンタ ー
第二試験研究棟建設プ ロジ、エク トリー ダー 北島
省吾
¥II.望月喜多司記念賞
1 平成 1
5年度 (
第1
8回)望月喜多司記念賞要旨
2 第 1固からの望月喜多司記念賞受賞者リスト
VlI.平成 1
5年度における海外出張,研修講師派遣および視察・見学者の記録
8
3
8
8
97
(財)安評センター研究所報第 14巻
(
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.11
.6. 於:アクトシティ浜松
2004
コングレスセンター)
1.(財)食品農医薬品安全性評価センター 第1
1回学術講演会
『内分泌撹乱化学物質研究の現状と問題点 J
井口泰泉先生
自然科学研究機構
岡崎統合バイオサイエンスセンター,
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1
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年に環境中に化学物質の問題が残っているということ
から始まった. 1
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年代の始めの頃には, P
CBといった化学物質も減ってきたことにより,ア
内分泌撹乱という事の起こりは,
メリカの五大湖等も色々な野生動物が回復してきたといわれていた.しかしながら,まだ鳥に
影響が残っていたりするので,何が問題かということが話し合われた.生きているのだが,次
の子孫が残せないものもある.つまり,生きる死ぬというよりも,卵の中に入って発生異常が
おこっているというような観点が抜けていると,問題を提起した.これかiW
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る.それから 1
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年経過し,現在もう一回考え直すための会議が今年 (
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3年)コロラドで行われ
た.
有名な話としては,
DDT問題がある(図 1
)
. DDTを大量に使うと鳥に影響があるということ
が最初の契機である.その後,牛乳,人間の母乳から検出されたことを契機として,ケネデイ
は使用禁止になった.それを受けて 日本
大統領の時から始まり,その次の大統領あたりでDDT
も禁止にし,現在は欧米, 日本および韓国等がDDTを禁止している. しかしながら,まだアフ
リカ,南米,東南ア ジアでは DDT
が使用されている. DDT
の問題が提起されたのは 1
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年
,
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年の会議で化学物質での毒性では片付けられないのではないかということになった .DDT
図T
内分泌撹乱化学物質研究の現状と問題点
が女性ホルモンの受容体に結合し,女性ホルモンと同じような働きをすることが問題ではない
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物質以上は女性ホルモン作用があるということもわかっ
か,また,現在では農薬2
ており,環境に出た物質に女性ホルモンに似た働きをするものが結構たくさんある,というこ
とで 1979年から定期的に国際会議が聞かれていた.結局,現在の問題は,化学物質の暴露量が
多い場合には直接毒性を示すであろうが,暴露が少量の時には受容体を介するシグナル伝達を
狂わせてしまう.特に,発生時期といったような生体に対する化学物質の作用時期や,生体に
とってシグナル伝達経路の撹乱が生涯続いたりする様な持続期聞が問題である(図 2
).魚、の場
合,このような作用がずっと働いているとメスがオス化したり,オスがメス化したりというこ
ともあり得る.一方,海産晴乳動物は脂肪層が厚く,また代謝系が陸生日甫乳動物の半分程度し
か働かないため,分解しにくい残留性有機汚染物質のような物質は蓄積しやすい.鳥類の場合
は,親が取り込んだ物質が卵に入って卵が死んだ、り,産んだ卵の殻が非常に薄くなる.このよ
うな問題があいまって,内分泌撹乱物質の問題が起こった.
内分泌撹乱物質の問題点は,たくさんあり,基礎研究が非常に少なく,特に実験動物ですら
明確にわかっているわけではない.野生動物に関しては殆どと言って良いくらいわかっていな
い.また,野生動物の遺伝子がどこまで、わかっているかというと,これも殆どわかっていな
い.つまり,ヒト,マウス,ラットと比べると殆ど何もわかっていない状況に等しい.実際に
野生動物が減っているか,減っていないかということになると,日本は,過去のパックグラウ
ンドデータが殆ど存在しない.逆にイギリスでは,過去の野生動物に関するデータがあるの
で
, 1
0
年前はこれくらいだった,今はこうなったから減っていることは事実だと過去の状態を
さかのぼることができる.研究は,個体を対象にすると,まずどこの器官に問題があるのか,
その器官の細胞のどの遺伝子にという方向に進む(図 3
)
. 最後はこの遺伝子が働いていない,
という分子的な話にいって終結する.ところが,生態/環境の分野で話をする場合には,日本
では研究者がいない.要するに野生動物を対象としたときには一個体がおかしいと言っても誰
も相手にしてくれない.絶滅危慎種というふうにレッドデータブ ックに載せられると,ちょっ
と注目されるが,いつの聞にかいなくなっている.メダカを研究するために,野外のメダカを
取ってくることはできなくなってしまった.メダカですら絶滅危倶種になっている.生態系へ
の影響を調べる研究は, 1
,2
年研究しても答えが出ないことを要求されながら研究するという
ことになる.これは殆ど不可能であるから,どうしても実験室での実験の割合が多くなる.内
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)をキーワードにして検索するとどれくらい論
文が出てくるかを調べてみたところ,昨年は 450報くらいある(図4
)
. 日本の環境省を中心とし
て,水の中,或いは野生動物の体内でどのような化学物質が見つかるかというモニタリングを
した(図 5
)
. この環境中の濃度や,野生動物の体内濃度から化学物質をどれくらい取り込む可
能性があるかということが推定できる.一方,そういう化学物質をどのように試験するかとい
う試験法開発を OECDを中心にして行っている.ところが,ミレニアムプロジェクトとして,
数年のうちに環境庁でリストにあげた物質のリスク評価を行う必要があったため, OECDのよ
うな国際的スタンダードが決まる前に独自に試験方法を作り,同時に試験も実施している.環
境省としては界面活性剤の代謝された形であるノニルフェノールとオクチルフェノールの 2物
質は環境に出してほしくない.ただ環境省は法律的に化学物質をコントロールする力がない,
つまり許認可権がないために,お願いするという形でこれら 2物質を環境に出さないでほしい
ということを 2
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年に言っている.主な試験法として国立医薬品食品衛生研究所を中
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(財)安評センター研究所報第 1
4巻
2004
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心に,子宮肥大試験と Hershberger試験(前立腺肥大試験)が検討されている(図 6
)
. 他には結合
試験,レポータージーンアッセイ,コンビュータに計算させて結合する可能性を割り出してい
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)方法も一方で進んでいる.一方, OECDでは,ネズミを使った試験というのは始
まっていない.どの発生時期に,どういう量を与えて,何をエ ンドポイン トとして見るかとい
うことを中心にした試験法の開発が重要なテーマになっている i
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タを共有して同じ方法で化学物質のホルモン活性を見ていくということで, OECDの i
).野生動物に関しては,エコトキ シ
グルーフ。がバリデーションをすることになっている(図 7
コロジーというグループがあり,両生類 (
図8),鳥類(図9
),魚類(図 1
0,1
1
)そして無脊椎動物
(
図1
2
)の試験法を作るための OECDの会合が聞かれた.一方で、は,昨年WHOが内分泌撹乱に関
3で示されているように,人間で子宮内膜症
するグローパルアセスメントを出し,例えば,図 1
の増加,神経行動発達異常の増加,免疫機能の低下,乳がんの増加,精子の減少,といった現
象があり,これにはダイオキシンを含めた PCB或いは女性ホルモンが関連しているというよう
な仮説がある.野生動物の場合には(図 1
4, 1
5),有機スズ(トリブチルスズ,
トリフェニルス
5
内分泌撹乱化学物質研究の現状と問題点
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製によ紙る工魚場の排生水殖
異常
図1
4
アザラシ、鳥類およびつニで内分泌かく乱と考え
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られている現象 (
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との関連
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農薬
図1
5
7
内分泌撹乱化学物質研究の現状と問題点
ズ)の作用で巻貝のメスにペニスができる(インポセックス)状況がおこっている.例えば,イ
ギリスの下水処理水が流れ込む川でコイ科の魚の精巣に卵が出てくる状況があり,女性ホルモ
ン様物質で精巣に卵が出来るという関連性は高いということが認められている.その他にもア
ザラシの生殖低下とか,鳥やワニの問題がある.それから新たな問題点としては,医薬品と
か,ホルモンといった環境中の化学物質を調査したところ,調査した 1
3
9
水系で 95物質が見つ
6
).ということで,捨てられたり,体内を通って環境に出た薬物が環境問題になる
かった(図 1
前に,先取りして研究しよう,という提案があった.
内分泌撹乱の話になるが, ダイオキシンがあると女性ホルモン作用が低下すると言われてい
る.この説明のーっとして,ダイオキシンが入ってくると,肝臓の Cyp
系の代謝酵素が働きだ
し,解毒する.女性ホルモンも同様に代謝されるために減少するから,ホルモンの作用が弱く
なる.また ,i
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oの研究からわかったことであるが(図 1
7
),ダイオキシン受容体にダイオキ
シンが結合すると,エス トロジェ ンがない時には弱いエスト ロジェン作用をする.エス トロ
ジェンがエストロジ、エン受容体に結合し,ダイオキシンがダイオキシン受容体に結合してク ロ
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図1
7
8
(
財)安評セン ター研究所報
第1
4巻
2004
ストークした場合には,エストロジェンがエストロジ、エン受容体に結合して働こうとするのを
ダイオキシン受容体)には 2相性の働きがある.加藤ら(東
抑制する.このように, Ah受容体 (
大)はエストロジェンがない時にはエストロジェニックな作用をするし,エストロジェンがあ
る時にはそのエストロジェンの作用を抑制してしまうということを実験的に証明した.このよ
うに,今後は複数の受容体のクロストークを考えていかないとメカニズムはわからないのでは
ないか,ということになってきた.以前は,ダイオキシンと内分泌撹乱は別問題といっていた
が,現在の知見ではこのように関連が認められてきた.イギリスにはコイ科のローチという魚
がいる(図 1
8
).こ の魚の精巣に卵が見つかった.この魚のステロイドホルモン受容体がどう
なっており,どのようなものがこの受容体に結合しやすいのか,ということを調べてくれと依
頼された.そしてこの魚を送 ってもらい,エストロジ、エン受容体2
種類,アンドロジェン受容
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体,アロマターゼ, Doublesexandmab-3r
り,ホルモン受容体遺伝子を用いたレポータージーンアッセイの系を現在作成中である.この
系が確立すれば,どのような化学物質がこの魚には影響しやすいか,という実験が始められ
イギリスのローチの精卵巣
図1
8
図1
9
9
内分泌撹乱化学物質研究の現状と問題点
る.ヒトやネズミの場合には遺伝子配列が既にわかっているので レポータージーンアッセイ
の系を作るのも非常に簡単であるが,ローチのようなまだ、遺伝子配列がわかっていない動物を
使うときには,まず、遺伝子を取ってくるところから始める必要がある.また,このローチとい
う魚の生活環はどうなっているか,発生がどうなっているか,ということもまだ知られていな
い.また,有名なアポプコ湖のワニの組織を持ち帰り,エストロジ、エン受容体などの遺伝子ク
ローニングが終わったところである(図 1
9
).ワニは,卵がおかれている温度によって性が決定
0
0
される.例えば33Cにおいておくと,全部オスとなり, 30Cにおいておくと全部メスとなる.
しかし,たとえ 33Cにおいておいても, PCBや,農薬などのエストロジ、エン作用を持つ物質に
0
触れると中途半端なメスになるというように温度よりも化学物質のほうが強い性の決め方をし
てしまう .図 20はアトラジンという農薬の販売記録であるが,地図上の赤 黄 緑の順にたく
さん売られている .こ のあたりはトウモロコシ畑が多いところであるが,アトラジンの売れた
量を参考に,
1
ム3と番号がふつである地域で実際に野外のカエルを採取した .採取されたカエ
ルの精巣をみて,精巣の中に卵がある個体が何%あるかというのがグラフ化されている.ま
た,実際にアトラジンを卵に曝露してカエルになった生殖巣を見ると,精巣卵が入り混じって
にはミジンコが載せてあるが, ミジンコは環境が悪くなる
いるのが実験的に証明された.図 21
と,メスしか産まなかったのにオスを産むようになる.きれいな水に戻すと,またメスを産む
ようになる.可逆的にメスを産んだりオスを産んだりする.メスを産んで、いたミジンコがどう
してオスを産むようになったか,そのメカニズムを知るために, ミジンコの遺{
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み,ミジンコのオスを決める遺伝子を取ることを試みている.このミジンコに, i
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のアゴニス トがミジンコにオスを産ませる作用を持っていた .ちなみに,タマミジンコという
のは日本のミジンコで,オオミジンコというのは OECDで、毒性評価に使っているミジンコであ
る.また,汎用されているポリカーボネートのネズミのケージを強いアルカリの洗剤で、洗った
ところ,図 22のように傷んでしまう.ポリカーボネートは酸性には非常に強いが,アルカリ洗
剤 を使うとこの ように傷んでしまい,このようなケ ージ等を使用 してネズミを飼育すると,卵
の染色体で、 a
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が起こる確率が増加した(図 2
3
).こ のことから,給水瓶からどれくらい
ピスフェノールが漏れてきたかというのを調べ,同じ程度の濃度を実際にネズミに与えたとこ
図2
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(財)安評センター研究所報
第1
4
巻
2004
図 21
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図 22
図 23
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1
内分泌撹乱化学物質研究の現状と問題点
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4
).
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9
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9
9
4
年に環境中のエストロジェン, PCBや DDTを含むある種
の農薬と,乳がん或いは子宮がんの関係についての国際会議が聞かれ,ここで内分泌撹乱のグ
ループとドッキングして問題が大きくなった.女性ホルモンが環境中にあるということから,
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n(直訳すると環境ホルモン)と呼んでいた. よく知られていることであ
るが,メスのネズミには性周期があり,周期的に 4~5 日で発情期が来る.ところが,生まれた
時に女性ホルモンもしくは男性ホルモンを少量作用させると,躍が角質化した状態が続く(図
2
5
).また,同腹のオスの精巣をメスの皮下に移植すると,性周期はなくなり,さらに移植し
た精巣から男性ホルモンが分泌されたために,視床下部からの周期的な生殖腺刺激ホルモン放
出ホルモンの分泌ができなくなった(図 2
6
).そして,正常なものでも卵巣を取れば性周期がな
0日目くらいまでの間というのは,視床下部ではホ
くなり,発情間期の状態が続く.生まれて 1
ルモンに対する感受性が高く,生後 1
0日以内くらいに女性ホルモンがくると,性周期はなくし
てしまう.生後 1
0日ぐらいを過ぎると,少々たくさん女性ホルモンを作用させても何も影響は
図 24
図 25
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(財)安評センター研究所報第 1
4
巻
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図 27
図 28
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3
内分泌撹乱化学物質研究の現状と問題点
ない(図2
7
).生まれて 3日目くらいに少し大量の女性ホルモ ンを作用させると,卵巣がなくて
も腫上皮は角質化をずっと続けていく.この現象はラットでは非常に再現しにくい.ラットの
8
),卵巣がなく
場合にはエストラジオールを一ヶ月も打っておけば同様なことが起こるが(図 2
なっても撞は増殖して角質化を続ける.マウスの場合は生後5回くらいエストロジ、エンを投与
しておくと,完全に卵巣非依存の増殖がおこる.通常の場合は,卵巣を取 って しまえば発情周
期はなく,発情間期状態,或いは角質化のない状態となるが,出生直後にエストロジ、エンを投
与すると,卵巣を取ってホルモンがなくても卵巣非依存の腫上皮の増殖が起こる.そのメカニ
9
)古い本にも書かれているが,生まれた時に女性ホ
ズムを現在研究している.このように(図 2
ルモンを少し大量に投与すると,排卵はなくなり,生涯無排卵になる.しかし,少量の場合
は,途中までは排卵し,ある時期になると排卵がストップする.このため,閉経が非常に早く
来てしまうという現象があり,これを d
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週間投与してみた(図 3
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3
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卵も性周期認められるが, 1
2
0日になると性周期がなくなり,排卵の跡はなく,黄体もなくな
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図 32
図3
3
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5
内分泌撹乱化学物質研究の現状と問題点
る. したがって,ピスフェノールAも途中までは問題がないように見えるが,そのうち子供を
産めなくなる状態が来てしまうということが考えられる.生後間もなく女性ホルモンが作用す
ると,視床下部下垂体系の周期性がなくなるために性周期がなくなる.マウスの場合では,少
し大量に女性ホルモンを作用させると子宮がんになりやすくなったり,躍がんになることもあ
るし,もちろん視床下部下垂体系の周期性がなくなる(図 3
4
).或いは前立腺がおかしくなった
り,骨にも影響し,免疫能は低下し,肝臓の代謝系も変わるというような現象が知られてい
管からは子宮,
る.また,生殖輸管系の発生についても検討を始めているが,例えばWolff
腫,輸卵管という 3つの器官ができ, M
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ろは子宮,下のところは臆となる.そこで発現するのは輸卵管側から Hoxa9,
態形成の遺伝子が頭尾軸にしたがって発現する.これら Hox遺伝子の発現が女性ホルモンが作
用することによって変化してしまう. Hox遺伝子の 10番目が女性ホルモンの作用により,発現
が停止し,子宮形成に異常がおこり,上皮が多層化して腫の様になる.このように,形態形成
遺伝子のノックアウトマウス或いは女性ホルモンの作用により形態異常が見えてくるので,遺
図3
4
図3
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1
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財)安評セ ンタ ー 研 究 所 報 第 1
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図3
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図3
7
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る. 1960年くらいには,マウスで,生まれた時,或いは胎児期に DESを投与すると子宮がんや
年くらいにはヒトの流産防止に用いられた DESで女児に
臆がんになるというのがわかり, 1970
躍がんができたことから DESシンドロームと名前がついた(図 3
6
).妊娠マウスにおいて,胎生
9~16 日まで DES を投与し,発がん性試験をしてみた ( 図 37) .実際には,メスだけでなくてオ
スの前立腺にもがんができるということも証明された(図 3
8
).図 3
9は,実際に DESを曝露され
たヒトの腫であるが,マウスの場合と同様に adenocarcinomaが出来ている.マウスの場合には
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在では(図40),エストロジ、エン受容体を過剰発現するようなネズミを使うと早くがんができ,
エストロジェン受容体ノ ックアウトマウスでは,全くがんができないことも証明されている.
妊娠中の親に DESを投与し,産子には何も投与しないが,がんが発生するというように,世代
を越えた発がんがあるということが, 2つのグループから報告されている(図 4
1
).マウスの発
生過程の聞には様々な器官形成がおこる(図 4
2
).胎生9日から投与を行えば図 42に挙げている
1
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内分泌撹乱化学物質研究の現状と問題点
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それぞ、れの器官に異常をきたす期間を全部含んでしまう.また,ピスフェノールAが胎盤を通
過するかどうかということで,マウスの妊娠の 1
7日目に親に投与すると 30
分後には胎児の脳に
入っている(図43).ピスフェノールAは胎児の子宮にも精巣にも移行することから,胎児の組
織に分散してしまうことが考えられる.マウスの胎盤とヒトの胎盤は違う,という可能性もあ
るのが,ヒトに近い妊娠 1
50日目のニホ ンザルにおいても(図 44),1
時間後には胎盤を通過する
ことがわかる.最近の知見では,ピスフェノールAのS9による代謝物(図 4
5
)のエストロジ、エン
6
),代謝物のほうが約 1
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倍も強いエストロジ、エン活性を持っ
活性を,酵母の系で見ると(図4
ていることが示されている.形態形成の話であるが(図 47),形態形成遺伝子の発現を i
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遺伝子は結構上からず、っと 出ており, Hoxl0
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は輸卵管の部分はないが,子宮の部分で発現している. Hoxllはもうちょっと下から出てお
り
, Hox13は腫だ、け発現している(図 4
9
).ここに女性ホルモンが作用すると,これらの遺伝子
発現が消失する(図 5
0
).これ ら遺伝子発現と形態異常 との関連がありそうだ,ということで
Wnt
或いは Hox
系の遺伝子をノ ック アウトしたマウスを使って調べることを考えている(図 5
1
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図 47
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化学物質研究の現状と問題点
また,このような形態異常の問題には臨界期のような現象がある (
図5
2,5
3,5
4
)
. 視床下部で
はマウスの場合,だいたい生まれて 1
0日目で臨界期があり, 1
0日以内に女性ホルモ ンが作用す
ると無排卵になる傾向がある,或いは完全に無排卵になる.また,その臨界濃度がどれくらい
か,ということも出すことができる.各組織での臨界期と臨界濃度には差があり,腫では 3日
以内,視床下部 1
0日,骨では 30日となっている.最近わかったことでは,臆上皮の不可逆化と
いう現象,つまり卵巣がなくても勝手に陸上皮がファミリーの遺伝子増殖するところを踏み込
んで調べてみると,女性ホルモンの作用により,上皮成長因子 (EGF)がやたらに立ち上がって
いる(図5
5
)
. EGF
が働いたことによって今度はエストロ ジェン受容体が リン酸化をしていると
いうことを証明した.問題は, EGFが勝手に動き出し,それによ ってエス トロジェン受容体が
リン酸化されて遺伝子が動き出すというオートルーフ。が形成されてしまい,卵巣がなくても勝
手に増殖していく,というループのようである. erbB2などが自己リン酸化を起こし, ERα も
リン酸化を起こして,もう一回成長因子系を活性化するというループが証明された(図 56,
5
7
).このように,遺伝子発現を整理して,不可逆化という観点では色々な ことが明らかにな っ
てきた.現在では,低用量問題に関して,低用量のエストロジ、エンでどのような遺伝子が動く
かというのをマイクロアレイで調べているところである.内分泌撹乱とは程遠いアプローチを
しているが,問題点としてはもう少し基礎生物学をきちっとやらないと低用量問題も答えられ
ないし,特に野生動物ではもっと動物そのものを理解することが必要だと考えている.
(文責今井 清)
図5
5
24
(財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2
004
図 56
図 57
25
トラ ンス ポー ターと化学物質によ る毒性発現
『トランスポーターと化学物質による毒性発現』
遠藤仁先生
杏林大学医学部薬理学教室
様々な化合物を疎水性の化合物と親水性の化合物とに大き く2大分類出来る.疎水性の化合
物は脂質親和性があり,細胞の膜は脂質二重層からできているために油に溶けやすいものは単
純拡散で細胞の外から中へ,或いは中から外へという濃度勾配に従って拡散する.この場合は
特別な輸送経路というものは必要としない .こ れに対して親水性の化合物は油に原則的には溶
けないので,そのままでは細胞膜を通ることができない.ところがこの中に特別なタンパクが
あると,親水性のものはその中を通ってこの細胞の外から中にはいることができる. トランス
ポータ ーとは,こ のような膜タンパク質であり,簡単に言えば,様々な化合物の細胞膜を介し
た通路にあたるというふうに考えてよい .こ のようにトランスポーターを大きく 2つに分けて
考えると, 1
つは比較的選択的にある物質だけ通すという生体必須物質トランスポーターと言っ
てもよいものがある.このような トラ ンスポータ ーは雑多な混合物の中にある特定の物質だけ
を選択的に通すということになる .それに対して薬物トランスポーター或いは異物トランス
ポーターと呼ばれるものは,極めて選択性が甘くていろいろな種類のものを通してしまうため
に,化学物質の毒性発現に関係しているトランスポーターは,この異物トランスポーターであ
ると考えることができる.元来生体はさ まざまな種類の薬物や化学物質を認識することができ
薬物トランスポーター
図1
2
6
(
財)安評センター研究所報第 14巻
2004
ないので,生体の機能維持にとって必要なトランスポーターの基質選択性が少し広がったもの
).これらのトランスポーターは本来狭い
が薬物トランスポーターと考えることができる(図 1
基質選択性を持ち,栄養素とか神経伝達物質などを輸送していたが,自然界にあるもの,ある
いは新しく作られるものの中で極めて構造的に類似したものがある場合には,一部のトランス
ポーターの基質が広がってくるということを想定し,異物トランスポーターという考え方が出
てきた.この異物トランスポーターとは,広い基質選択性があり,生体の異物或いは代謝物を
認識して受け入れるというものである.細胞膜にあり,特定の物質を通す構造物にはチャネル
というものがある.チャネルとトランスポーターはどのように似ていて,どのように違うのか
(
図2
).チャネルとトランスポーターは,構造物として極めて類似性が高いが,チャネルの場
合はひとたびゲートが開いてオープンになると,細胞膜の厚さ分だけが完全にあいてしまう.
そして環境が許せばこの中を極めて早く大量のイオン或いは水が動くことができる,つまり時
間的に全開の部分がある.ところが トラ ンスポーターは 一時たりとも全開になることはない.
つまり輸送されるものが一度結合して,そしてこの結合することによってタンパクの構造が変
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27
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がないのが トラ ンスポーターである. トランスポーターには濃度差によって動 くものと, A
の水解エネルギーを使って基質の濃度勾配に逆方向に動かすものと,大きくわけで2つある.
チャネルの場合には 1秒間に 106~108 という極めて多くの分子が通ることができる.ところがト
ランスポーターの場合はくっついて出されてまた開くということの繰り返しであるので,
1秒
間に 102~104 というように極めてスピードが遅いということがわかる.したが って ,チャネル
とトランスポーターというのは輸送スピードがかなり違うということが非常に大まかな違いと
いってもよい. トランスポーターの基本的な構造は,細胞膜を複数回特に 2桁回,貫通した構
造をもっている(図 3
)
. 平面的に書かれているが,実際は立体的に見るとあたかも筒を作って
いるような形でp
o
r
eを形成できるということがわかる.特徴的なのは外側には糖鎖が結合し,
内側に相当するところにはリン酸化部位があるというのが,基本的な構造である.図 3は我々
が初めて有機陰イオントランスポーターとしてクローニングした OAT1の立体構造である.図
4はトランスポーターの輸送様式を書いたものであるが,
トラ ンスポ ーターの輸送のメカニズ
トランスポーターの輸送様式
・
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主主体必須物質
トランスポーター
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襲物トランスポーター
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図5
2
8
(
財)安 評 セ ン タ ー 研 究 所 報 第 1
4
巻
2004
ムには ATPの水解エネルギーを使わないものと, ATPポンプとも言われる ATPの水解エネル
ギーを使うものとがある. ATPの水解エネルギーを使う生体内必須物質のトランスポーターと
しては, Na+X+ATPaseや
, H+ATPaseなどがある.また,ある物質と一緒に共輸送するもの
(
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),例えばナトリウムとグルコースが一緒になって動くタイフ。の輸送Na-glucose
仕 組s
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rがある.また,単独で、濃度差に従って動くファシリテ ートリートラ ンスポーター
co
GLUT(
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)もある.さらに交換輸送としては, NHEといわれる Na+とH+の交換
輸送を行うもの等がある.さらに異物も認識するトランスポーターもある.今回は,異物トラ
ンスポーター或いは薬物トランスポーターといわれているものに関する話である.図 5は歴史
的には極めてエポックメイキングな出来事が起こったときの週刊誌「ネイチャー J
からとったも
のである .ネイチャーは非常に薄い,いわゆる週刊誌的なものであるが,この時は特別に厚
い,本のような雑誌になった.この 2001
年の 2月 1
5日号はヒトゲノム分析の概要が終わったと
いう内容であった.この中でヒトの遺伝子構造の概略が報告され,それと共にヒトの病気と遺
伝子との関係についての解析も出てきた.図 5はヒトの病気と非常に関係がある遺伝子群を分
軸には enzyme,その他
類したとき,一体どんなふうに分かれるかということを示している .x
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n
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lなどがあるが,その中にトランスメンブレント
ランスポーターというのがあり,これが今回の主題である.赤線がヲ │かれて いるものがトラン
,
スポーターの関与する病気の頻度である.全症例に対するトランスポーターが関わる病気の割
合,胎児・新生児・幼児・青壮年・熟年におけるトランスポーターが関わる病気の割合を示し
ている.このことからわかるように, トランスポーターは加齢とともに病気と関係する頻度が
多くなってきている. したがって, トランスポーターはいわゆる医薬品の標的分子になる可能
性がある.これらのことから,約 10%くらいの病気はトランスポーターの異常によって起こっ
ていると考えてもよい.これらトランスポーターの分野ではただ単に生体を理解するとか,或
いは化学物質の毒性発現との関係について解析するということだけではなく,病気に対して理
解を深め,その病気の治療に標的分子として トランスポ ーターを置くという考え方が出てき
た. トランスポーターは,細胞膜の中にあって,物を通す構造物には大きく分けて ATPの水解
エネルギーを使う経路と ATPの水解を伴わない経路と大きく 2つに分けることができる. ATPが
関与しないものをソリュートキャリアといい,頭文字をとって SLCと略す.それから ATPが関
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).それによ
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e(HUGO)という委員会がトランスポーターについて整理・分類をした(図6
8まであり,現在は 42まで存在する.つい
ると ATPの水解と関係していないほうがSLCの1から 3
最近我々もその中にないトランスポーターを発見し, 43というファミリーを新設した.した
がって現在, SLCは1から 43まで存在している.大半は生体内必須物質を輸送するものである
が,下線のものは生体内必須物質以外に薬物や異物を輸送することができる. ABCトランス
ポーターは, Aから Gまで7つに分かれている.その中でさらに分子がいくつかあり,極めて整
然とトランスポーターが分類し直された.
次に異物トランスポーターの種類とその機能について説明する.まず最初に異物トランス
ポーターを,有機イオントランスポーター,肝特異有機陰イオントランスポーター, ペプチ ド
トランスポーター,アミノ酸トランスポーター,そして ABCトラ ンスポーターの大き く5つに
分ける.図 7は非常に有機イオンの輸送が活発な腎臓の尿細管における有機イオン輸送メカニ
ズムである.生体内で血液によりもたらされたものが尿細管細胞の中に入る時にトランスポー
図7
図8
30
(
財)安評センター研究所報
第1
4
巻
2004
ターを使う.中に入ったものが尿に出ていく時に再ぴトランスポーターを使う.このように膜
のトランスポーターを二回使って異物は尿中に排池される.まず最初に有機イオントランス
ポーターのことについて述べる.有機カチオントランスポーター (OCT)は似て非なるものが 3
つ (OC
T
1
, OCT2,OCT3)あり(図 8
),腎臓の血管側に存在し,有機カチオンの入り口となって
いる.尿細管腔側の出口には, ATPのポンプを使うものと,プロトンとの交換輸送を行うタイ
プのものとがある.代表的な有機カチオンとしてのリガンドは Tetraethylammonium(TEA), 1
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eなどがある.そ
).歴史的には 1
9
9
4
年に OCT
して有機イオントランスポーターの構造は非常に良く似ている(図9
ファミリーの最初のメンバーが単離され, 1
2回膜貫通型で外側に大きなループ,内側に 1
つの
大きなループがあり,それぞれ糖修飾部位とリン酸化部位があることが判明した.我々が発見
したのは有機アニオントランスポーターで,構造は違うものだろうと予測したが,調べた結
果,全く基本骨格は同じであった.このことから,生体はきわめて合理的な形で使い分けてい
るということがわかる.現在のところ,有機カチオントランスポーターは OCT
1
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1
トラ ンスポー ターと化学物質による 毒性発現
メンバーがあり,ソリュートキャリア (SLC)グループの 22
番目のファミリーの Al.A2・A3に
整理されている(図 1
0
).各OCTの発現が認められる組織は, OC
T1は肝臓,腎臓,牌臓,脳,
胎盤などであるが,各OCTに共通しているところは, TEAのような代表的な基質は全部の OCT
が運ぶことができる.ところがそれ以外に,例えばOC
T1の場合だと dopamineとかc
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MPPを運ぶ. OCT2はc
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eを運ぶ, というふうに組織
の分布とその機能がわずかずつ異なっている.これら OCTの構造は,基本骨格こそ同じである
が,アミノ酸組成が少しず、つ違っているものが生体に分布しているということがわかる.ほと
んどの有機カチオン輸送モードは電位感受性であり, OCT
1
・ 2・3と3つの isoformがある(図
1
1
).これら OCTは腎臓で活発に動いており,有機カチオンの細胞内の取り込み及び排世とい
うことが主要な機能である.次に有機アニオントランスポーター (OAT)についてであるが,図
1
2にOATの基質となる化合物を示した.これも OCTと同様にまとめると(図 1
3
),現在のところ
OA
T
1
・ 2・3・4,および尿酸のトランスポーター URA
T1というのが明らかにされ,それぞれ全
てがSLCの22のファミリーに違ったナンバーで登録されている.これら有機アニオントランス
有機カチオントランスポーター (OCT)
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(財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2004
ポーターを発現している動物種は,ヒト・ラット・マウスなどである.さらに全部の分子種が
腎臓に発現しており,その他,脳,肝臓,眼,胎盤というふうに違ったメンバーが違った組織
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AH)である.
に分布している.輸送される基質で全部共通しているのは, p0
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種類以上のアニオ
その他には内因性のトケトグルタール酸とかサイクリック AMP その他2
4
),
ンがある.このトランスポーターの抗体を作り,ヒトの腎臓の切片を染めてみると(図 1
OA
T
1
, 2,3は血管側に発現し, OAT4は尿細管の管腔側に存在していた.従って, OATは,血
液側と尿側にそれぞれ違ったメンバーが分布しているということがわかった .実際にこれらの
遺伝子を培養細胞に発現させてその輸送の方向だとかメカニズムを研究することが現在可能に
なり,最近の研究では,このメンバーは交換輸送体であるということが明らかになってきた(図
1
4
).有機アニオントランスポーターには OA
T
1
・ 2・3・4の他に尿酸トランスポーターがあり,
5
)いろいろな内因性の基質,外来性の異物,薬物或いはその抱合体というようなものが運
(
図1
ばれ,これらの役割としては有機アニオンの細胞内への取り込み及び排出に関与しているとい
うことがわかる.以前は腎臓の研究をする時にカミソリで腎スライスを作り,スライス中濃度
有機アニオントランスポーター (OAT)
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3
図1
4
33
トラ ンスポーターと化学物質による 毒性発現
と培養液中濃度の SM
比を算出し,例えは:F
AHにおいて SM
比が 1
0以上でないとこのスライスは
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. OATを介した
活きが悪い,もしくは実験の条件が極めて不適切であると言われていた(図 1
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6に示したが, ( )内は各トランスポーターにおける PAHの50%飽和
濃度 (Km,μM)である. OA
T1は 5μMと極めて薄い濃度で入っていき, OAT3は42.9μMで
、
入っ
ていく.ところが, OAT4は2060μMと,極めて濃度が高くならないと動かない.入り口は極
めて濃度が低く,出口のほうは非常に濃度が高いくないと機能しない.このことから, PAHは
細胞内にたくさん蓄積されないと出口のトランスポーターは動かないということになる.この
ように宿命的なトランスポータ一機能の性質により,結果的に PAHは細胞中に蓄積されるとい
うことがわかる.この現象は内因性,或いは外来性の物質ごとによって違っており,毒性化学
物質なども腎臓においてはこのような蓄積が毒性発現の一つの原因になっていると考えられ
る.次に両性イオントランスポーターについて述べる.両性イオントランスポーターの代表的
な基質はカルニチンである.カルニチンは図に示すようにプラスチャージとマイナスチャージ
があるので両性イオンである(図 1
7
).生体内におけるカルニチンは,食事からも入るし,肝臓
有機アニオントランスポータ一 t
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図1
5
図1
6
34
(財)安評センタ ー研究所報 第 1
4
巻 2004
図1
7
図1
8
でリジンから作られるものもあり,生体にとって非常に大事なものである.そしてこのカルニ
チンは血中から約 95%再吸収されるが,残りは尿中に出ていく.カルニチンは脂肪酸が細胞膜
を通過するとき必ず一度くっついて離す,という脂肪酸をミトコンドリアへ送り,戸酸化する
時に絶対に必要な系を形作っている(図 1
8
).この両性イオ ン トランスポーターは今まで出てき
たカチオンとかアニオントランスポーターと違っており,両性イオンの基質は極めて少ない(図
1
9
).つまり選択性が結構高いということがわかる.それから OCTN1というのがあり,これは
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ていたが,必ずしもカチオンでなくて両性イオンを運ぶことがわかった. OCTN1,OCTN2/C
T1
およびCT2は腎臓,骨髄,牌臓などいろいろなところに分布しているが,この CT2は精巣にし
かないということで,組織の分布の特異性も極めて高いし,運ぶものもカルニチン骨格がない
と絶対運ぱなし九つまり選択性がそれほど広くないものである.こういう両性イオントランス
ポーターは大体がNa+
依存性のものが多いが,一部はカチオントランスポーターと同様に一方
向性である(図 2
0).実際にこの両性イオントラ ンスポーターの役割としては,腎臓に限らない
35
トランスポーターと化学物質による毒性発現
両性イオントランスポータ一 (OCTN/CT)
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向性イオンの細胞内への取り込みおよび排出.
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(財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2
004
が,両性イオンの細胞内への取り込み及び排出に関与してい るというこ とがわかる.次に肝臓
1
).これ
特異有機陰イオン (OATP)ファミリーである SLC21のファミリーについて述べる(図 2
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eか ら取って OATPという が,動物のものを小文字で書き,
ヒトのものは大文字で書くようにしている.組織分布は腎臓,肝臓,網膜,胎盤など全身に存
在し,基質は,肝臓の機能検査に使う b
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BSP),ウワパイン, ロイコトリエン
C4,ジゴキシンなどのアニオンを運ぶ.
プロスタグランジントランスポータ ー (
PGT)というものがあり, SLC21A2に登録をされている
が,プロスタノイドを非常に選択的に運ぶ トラ ンスポータ ーであり, 全身く まな く存在してい
る.特に肺のようにプロスタグランジンがう子解されるところに非常に強く発現している .OATP
の輸送経路としては交換輸送か或いは一方向性の輸送である(図 2
2
).腎臓での OATPの役割は
アニオ ンの基質を尿中に排出する役割が考えられている .次にペプチド トラ ンスポータ ー
(PEPT)について述べる(図 2
3
).このペプチドトランスポーターはなぜ、か今までのところ 2つし
か存在していない. PEPT1といわれているものと PEPT2といわれているものが見つかってお
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図2
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37
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図2
5
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, PEP
T1は小腸の刷子縁膜に存在する. PEPT2は腎臓に存在する.腎臓には PEP
T1も存在す
る. PEPTが輸送する基質は,アミノ酸2個のジペプチド, 3
個のトリペプチド,医薬品ではアン
ギオテンシン変換酵素阻害薬,戸ラクタム系抗生物質など,基本的にはペプチド構造を持った
ものが運ばれるが,全く構造的にペプチド様でないものも運ばれるということで, PEPTが輸送
する基質の選択性は極めて広い. PEP
T
1
, 2はSLCファミリーの 1
5番目に登録されており,この
1
5番目は 1・2しか存在しない.組織分布は PEPTlは小腸型で, PEPT2は腎臓型である.生体の
中でどのような役割を果たしているかというと, PEPTの輸送モードは全部プロトンとの共輸送
であるから,酸性の部分では非常に活発に動くことができ,消化管とか糸球体などからのジペ
プチド, トリペプチドの再吸収などを行っている(図 2
4
).その次にアミノ酸トランスポーター
L
について述べる.特に異物も認識するアミノ酸トランスポーターを, L型トランスポーター (
9
9
8年に発見し, LA
T1.2と命名し
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)という. LATは我々の教室で 1
2回膜貫通型であるが(図 2
5
),必ず 1回膜貫通
た.今までのトランスポーターと似ているのは 1
型のシャペロンが必要で、ある.そのシャベロンがこの 4F2ヘビーチェーン (4F2hc),別名 CD98
3
8
(
財)安評センター研究所報第 14巻
2004
図2
6
である.この 2つがs
s結合すると,一つの機能ユニットとしてアミノ酸を運ぶ.これはいわゆ
1
と
るヘテロダイマーが機能ユニットであるということになる.いろいろ検索した結果, LAT
いうのは,がん胎児性タンパクであり, LAT2は正常タ ンパクである .輸送される基質は,ロ
イシン,イソロイシン,フェニルアラニン,メチオニン,チロシン,ヒスチジン, トリプト
ファン,パ リンという非常に側鎖の長い大きな 中性アミノ酸である(図26).LAT2はグリシ ン
,
セリン,アラニンという小型のアミノ酸も運ぶ.つまり LAT2は極めて多種類のアミノ酸を運
ぶ.それに対してがん胎児性の LA
T1は,小型のアミ ノ酸は運ばないというタイプのものであ
T1の場合はグル タミンとの
る.このアミノ酸トランスポーターの輸送モードというのは, LA
交換輸送である.その他に L-DOPA,g
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nとかメチル水銀のシステイン抱合体などを極め
てよく運ぶことがわかった.細胞外からのアミノ酸の取り込みは,側鎖の大きいアミノ酸であ
り,殆どが必須アミノ酸であるので,代謝によって作られないために栄養素として細胞の外か
ら取り入れる必要があるアミノ酸である. したがって,アミノ酸類似構造物質も運ぶというこ
とになる.最後は ATPポ ンプで動く ABCトランスポーターである.図 27にABCトランスポー
ターの代表的なものをあげたが, ABCBlはPg
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n,P-gpといい, ABCCはMRPlから
MRP6が知られている.これら ABCトランスポーターファミリーはヒトには全部存在する.組
織分布は肝,小腸,腎臓,その他である.輸送する基質は極めて多彩であり,抗がん薬の耐性
発現メカニズ、ムとして知られているが,その他に色々な薬物の抱合体などを極めてよく認識し
て運ぶトランスポーターである. P
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図2
8
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結合性であり,第一次性
能動輸送ポンプである.また, MDRlと2は
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等の様々な薬を運ぶ.機能としては, 上皮細胞から異物を外側に排出する,或いは組織,血液
関門での異物の進入を阻止することがあげられる.それからがん細胞の抗がん薬に対する多剤
耐性を作るメカニズ、ムであるということがわかってきた.もう一つは mu
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いうアイソフォームが存在する.最近の知見ではさらなる i
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mが確認されている.輸送基質
は様々な薬物の抱合体であり,特にグルタチオンとかグルクロン酸抱合体をよく運ぶ.これは
肝臓,腎臓の上皮細胞における有機アニオンの排出,血液組織関門における有機アニオンを組
39
トランスポーターと化学物質による毒性発現
図 27
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およびカチオン性薬物
機能
上皮細胞からの異物排出
組織関門での薬物侵入の悶止
繊細胞の多剤耐性化
図2
8
図 29
40
園
・
園
.
.
(財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2
004
織の中に入れないための機能として働いている.
その次のトピックスは,化学物質の体内動態とトランスポーターとの関係についてである.
第一番目は,化学物質として最も種類が多い薬物の体内動態と毒性発現についての考察をして
0に示した.経口薬は小腸で
みたい.薬物動態(吸収,分布,代謝,排?世)に関する模式図を図 3
吸収されるので,
トランスポーターが必要である.様々な組織に分布する時に,この関門を
通って分布するので,
トラ ンスポータ ーが特異的に必要である.肝臓では多 くの薬物 は代謝を
受けるので,肝臓に入る時のトラ ンスポ ーターがまず必要である.肝臓で代謝を受けてさらに
膜を通りにくくなったものが出ていく時には,胆汁のほうへ出ていく時にも,血液のほうへ出
1
)
. 血液中に出されたものは大部分が腎
ていく時にもトランスポーターがまた必要である(図 3
2
).このようにいく
臓に行き,腎臓の尿細管の細胞中に入り,細胞中から尿中に出ていく(図 3
つかのトランスポーターが薬物動態に関与している.特に大切なことは,脂質親和性の高い化
の代謝を受け,様々な抱合反応でフェイズ2の代謝を受けると,
合物は P450でいうとフェイズ 1
脂溶性のものが水に溶けやす く,ア ニオ ンかカチオンになっている .これらのものが胆汁もし
くは尿中に排植される.腎臓では近位尿細管というところが重要になっているが,フリー体は
糸球体でろ過され,血液と血紫タンパクと結合したものはろ過を受けないために尿細管の血管
束から細胞の中に入り,細胞の中から尿中に出ていく.生体にとって必要なアミノ酸,糖,そ
の他尿酸などは逆に尿中に出てきたものを再吸収するために,このトランスポーターが複数必
3は,例えばヒト有機アニオントランスポーター OA
T
1
・ 2・3・4の遺伝子を単離
要になる.図 3
し,その遺伝子を培養細胞に導入して安定した強制発現系を作製し解析した結果である.この
EAの標識体を入れるても,アニオンのトランスポーターでは輸
発現系に有機カチオンである T
送されない.逆にアニオンのパラアミノ馬尿酸の標識体はアニオントランスポーターでは認識
されるけどカチオンでは認識されないということがわかる .特に注目すべきことは,プロスタ
グランジン等のオータコイドは 内因性生理活性物質であるから,非常に低濃度でも作用するた
以下であることである.プロスタグランジンの場合はカチオンでもアニオ
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つの基質しか認識されないものもある.このようなことから,生体内外に存在する物
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質はいったいどの輸送系に入り込むことができるのかということをある程度類推することがで
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図 33
42
(財)安評センター研究所報第 1
4巻
2004
きる. しかし全ての物質を放射性標識体で作ることができない.そのような場合は,図 3
3に示
すような放射性標識体を使い,普通の非放射性の物質の認識性を抑制実験として実施する.メ
トトレキセート (
MTX)とい う薬物は OA
T
1
, 3および4によって認識される. MTXが臨床におい
て単独で、はなく,別の薬と併用して使用されるような場合,薬物間相互作用の解析にこれらト
ランスボーターの研究成果が利用できないか,ということについて,図 3
4および3
5に実験結果
を示した.図 34では, MTXのOAT
1
, 3,4による取り込みを 1
0
0% とし,それに対して様々な非
ステ ロイド系抗炎症薬を併用した時に, MTXの吸収がどれだけ阻害されるかというもので,*
印がつい たものは有意に抑制されたというものである.この実験結果から,例えばOAT3の場
合だと全部が有意に抑制される. OAT4の場合は 3つの薬物が抑制を示す.臨床の場では,薬物
の血中濃度,およびそのタンパク結合率,そしてフリ一体の割合,これらの値を掛けることに
より,血中の フリー で存在する薬物の濃度を推定することができる.この濃度と MTXの抑制濃
度から, Ki
値を調べてみると(図34),p
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mのように血中 のフ リー体が0.0048μMしかない
ものにおいて, MTXの輸送を 50%抑制する濃度 (
Ki
値)が 1200μMであるので,このような組み
The Kivaluesofvariousdrugs thati
nhibitM T Xuptakei
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動 (
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箇中の盈舗はイヌリ ンの晶車体 F過速度を 1
∞としたときの相対
的な量値であり.血嬢蛋白鎗合.は情正してある
図3
5
43
トランスポーターと化学物質による毒性発現
合わせは非常に安全で、ある.ところが血dome
出a
c
i
nの場合は血中フリ一体が8.
4μ Mと推定され,
Ki
値は 5.95μMということになると, MTXの尿中排j
世が遅延し,血中濃度は徐々に上がってい
くだろうということが予測される .こ のように,ヒトの体を使わなくても遺伝子産物,遺伝子
を導入した細胞を使うことによってある程度の予測がつくということになる.例えば図 3
5は抗
生物質その他の腎臓における排池経路であるが,イヌリンというのはどこにも寄り道しないで
1
0
0%出てくるので,糸球体ろ過量の測定に使われる.その他に例えばスルファニルアミド,
アンピシリン,スルファメチゾールやセファレキシンがいったいどのように腎臓の中で動くか
ということが示されているが,スルファメチゾールやセファレキシンは分泌され,一部は再吸
収され残りが排池されるため,非常に多くの量が排地される.このような腎排池型の抗生物質
が途中で毒性を発現するということがよくある.例えばセファロリジンは代表的な腎毒性をお
こす抗生物質であるが,実は OAT1によって認識されて細胞の中に入って脂質過酸化を介して
6
).このことを裏付けるために,ほとんど毒性のないパ
毒性を発現することが考えられる(図 3
ラアミノ馬尿酸やアンピシリンと,極めて毒性が強いアモキシシリン,セファロチンおよびセ
図3
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財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2004
ファロリジンを OAT1を発現させた細胞もしくは mockt
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dの細胞に処置し,用量を上げ
ていくと,細胞の生存率は減ってくることがわかる(図 3
7
).この場合, OA
T1遺伝子がある細
胞のほうがより極端に減って,この OA
T1がない細胞はあまり減らない .セファロリジンと同
時にプロベネシドを存在させると,細胞の生存率の減少をある程度元に戻すことができる(図
3
8
)
. また,プロブコールは抗酸化剤であるが,この場合も同様に細胞生存率の減少を有意に
戻すことができる .さらに,直接的にチオパルピツール酸をスーパーオキサイド産生の安定的
な指標として測定した場合,セファロリジンによって過酸化脂質が有意に増加するが,プロベ
ネシドを併用することにより, トランスポーターが抑制された結果,過酸化脂質の産生が低下
する.このような現象は,ラジカルスカベンジャーによっても認められることから, トランス
ポーターの働きにより,細胞の中に毒性物質を入れるがゆえに自己が障害されるということが
わかる.このようなタイプの薬はたくさんあり,特に腎臓では特異性がなくても血液の何十倍
というように細胞内に蓄積された場合には,非特異的な毒性が発現する可能性が非常に高いと
いうことがわかる.第二番目の例としては,マイコトキシン(カピ毒)の毒性について考察して
図 38
図 39
45
トランスボータ ーと化学物質に よる毒性発現
図 40
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図 42
46
(
財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2
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4
みたい.図4
0はオクラトキシン A といい,黄変米に多く発生するアスペルギルス属やペニシリ
ウム属のマイコトキシンであり,腎毒性やがん原性がある.このことからオクラトキシン Aは
バルカン腎症,間質性腎炎の起因物質とされ,これらのマイコトキシンによる病気をいかにプ
ロテクトするかということか~'WHO ,アフリカおよびヨーロ ッパで研究が行われているもので
ある.このマイコトキシンが腎臓の特定の細胞をアタックするということは図4
1によってわか
る. S2というのは近位尿細管であり, MCTというのは集合尿細管である . X軸はオクラトキシ
ンAの濃度示す.集合尿細管はオクラトキシン Aの濃度をあげていっても細胞中の ATPは殆ど減
少しない.ところが近位尿細管は濃度に依存して有意に細胞中の ATPが減少する.図 42は腎皮
質からミトコンドリアを取り,オクラトキシン Aによる ATP産生の減少を見たものである .こ
の表からわかるように
オクラトキシン Aの濃度に依存してミトコンドリア中の AT
Pの産生が
T1という輸送体によって細胞の中に入り
減少する.したがって,オクラトキシン Aは,実は OA
(
図 43),ミトコンドリア障害を起こす.つまりこの入っていくところを何かでブロックする
と,オクラトキシン Aの作用からレスキューされるかということをやってみたのが図 44であ
図4
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図4
4
47
トランスポーターと化学物質による毒性発現
る.細胞に OAT1が発現していなければ,オクラトキシン Aを増やしても細胞数に差はない.と
ころがOAT1を強制発現した細胞においては,オクラトキシンを増やすことによって細胞数が
減少することがわかる.それに対して非常に毒'性の少ない l
mMのパラアミノ馬尿酸を同時に処
置すると,減ったものを元に戻すことができるということから,輸送の通路を制御することに
よって細胞の障害性をある程度レスキューすることができるということがわかる.次に,有機
水銀による神経および腎に対する毒性発現とトランスポーターとの関わりについて述べる.必
須アミノ酸のトランスポーター LAT2というのは正常タイプでLA
T1というのはがんタイプであ
るが,がん組織にはより貧欲に必須アミノ酸を入れる通路がある.正常組織には違ったアミノ
酸の輸送体があってこれは極めておとなしい.したがって,おとなしいほうはそのままにして
おいて,非常に貧欲なものを抑制したらおそらくがんの細胞は増殖しないだ、ろうというのが,
創薬ターゲットとしてのアプローチである(図 4
5
)
. はじめに, LA
T
1
と 2の分布を見てみた(図
4
6
)
. LA
T1は胎児の肝臓で強く発現し,正常な成人の肝臓には全く認められなかった.さらに
別のいろいろな実験から, LA
T1はがん胎児性のタンパクであることがわかった.ただし,骨
図4
5
図4
6
48
(財)安評セ ンタ ー研究所報
第1
4
巻
2004
髄,精巣,胎盤そして脳とい った細胞の増殖その他が激しいところではがんタイプのアミノ酸
トラ ンスポー ターが発現している.メチル水銀のシステイン抱合体で,極めてよ く似ているも
のにメチオニ ンがある (
図4
7
)
. このメチオニンというのはシステム Lという Lトランスポーター
の基質になるが,本来は メチオニンというアミノ酸を輸送するトランスポーターが,メチル水
銀と システイ ンのア ダクトができると ,間違 ってこれも輸送する.その結果, LA
T1が発現し
ているこの組織血液関門を乗り越えてい ってしまうという考え方が成り立つ.例えば,システ
インが入 っていない メチル水銀は殆ど輸送されない.システム Lのようなアミノ酸輸送体には
乗らない.とこ ろがメチル水銀とシステイ ンを結合させたものは正常タイプの LAT2でもがん
胎児タイプの LA
T1でも輸送される.メチル水銀を入れてその中にシステインを垂らすと,そ
T1および2によって輸送
のイ ンキユ ベーションの聞に システイ ンがどんどん結合していき, LA
されるようになる(図 48).生体の中では システインアダクトは極めて短時間に形成されるの
で,メチル水銀は生体の中に入 ってシステインとアダクトを形成してメチオニンライクのもの
に変わってしま うということが水銀の毒性に極めて重要であるということがわかる. T24とい
図4
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図 48
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トラ ンスポ ーターと化学物質 によ る毒性発現
う腸脱がん細胞は L AT1もそれから 4F2hcシャベロンタンパクも発現している.図 49はT24腸脱
がん細胞で、は 4F2hcシャペロンとがんタイプの L AT1が発現し,正常タイプの LAT2は発現してい
ないということを示したものである.図 5
0に示すように T24細胞を使って,
LA
T1抗体, OF2HC
を免疫2重染色したところ,局在性が一致した. L AT1には抑制薬があり,これによって完全に
アミノ酸の輸送は抑えられる.実際にメチル水銀とシステインのアダクトがBCHという Lタイ
プアミノ酸トランスポーターの抑制薬によって果たして予想通り抑制されるかというのを見た
1
),確かに予想通りメチオニンライクの基質として,メチル水銀は生体中でシステ
ところ(図 5
インとアダクトを作 って挙動するということがわかった.図 5
2は細胞の生存率を縦軸にとり,
横軸にはインキュベーション時聞をとりメチル水銀およびそのシステイン結合体の影響を表し
たものである. 30μMメチル水銀単独で、は,細胞の生存はあまり抑制されない.とこ ろがメチ
ル水銀とシステインを結合させると,早くも 4時間あたりから時間依存的に生存率が減少する.
確かに予想通りメチル水銀システインアダクトはメチル水銀単独よりも細胞に対する毒性は強
く発現する.ところが40μMになるとあまり差がなくなってくるということから,用量依存的
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安評セ ンタ ー研究所報
第1
4巻
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図5
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トラ ンスポ ーターと化学物質によ る毒性発現
にある限度を超えると非特異的な毒性が出てくるということがわかる.実際に細胞の生存をレ
3,5
4であるが, BCHというトラ ンス
スキューできるかどうかというのを調べてみたのが図 5
ポータ}の抑制薬を併用しでもメチル水銀の毒性は変わらない.ところがメチル水銀にシ ステ
インアダクトを使った場合は, BCHトランスポーター抑制によって正常と同じくらいまで回復
することができるということがわかる.これも実は生体ではシステインのアダクトはメチオニ
ンと同じような挙動を示すということを裏付けるものである.そこで我々は水俣病から何を学
んで何を解ネ斤してそれを明らかにできるかということについてまとめた (
図5
5)
.システム Lは
,
ある特定の物質,つまりメチル水銀システイン結合体は通すけれどもメチル水銀は通さない,
ということで,これカfシステム Lというトランスポーター (LAT)である.ところカfこのトラン
スポーターの非常に活発ながんタイプの LAT1は正常組織でも脳と胎盤には存在する.胎盤に
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している.このために,母親のほうから胎児のほうにトラ ンスポータ ーを通してメチル水銀シ
ステイン抱合体だけが入れる道が宿命的に存在していることが明らかにな った.それから脳血
図5
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さ註
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(
財)安 評 セ ン タ ー 研 究 所 報 第 1
4
巻
2004
液関門の中にも同じようなことがいえ, LAT
1
と 2があり,メチル水銀が脳の外側からの脳の実
質に入ることができたために水銀の中枢神経障害をおこすというように,メチル水銀の毒性発
現メカニズムはトラ ンスポーターを介したものであることを明確にすることができた.
要約としては,今までの話を 3つにまとめた. 1
つには生体を構成する細胞膜には,膜に存在
番目として,
するトランスポーターの本来の機能は,栄養素や内因性必須物質の輸送である. 2
いろいろな化学物質を含む毒性を発現する外来性異物はトランスポーターの基質となって細胞
膜を通り,細胞内で毒性を発現する. 3番目としては,
による毒性を回避することができる.即ち,
トランスポーターの抑制薬は化学物質
トランスポーターを抑制することによってその通
路を遮断し,化学物質の毒性の発現をブロックすることができる,ということが結論される.
最後に,これらの研究は図 5
6にあげる共同研究者の方々の協力により行われたので,ここに謝
意を表する.
(文責今井清)
共同研究者.
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54
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財)
安評セン ター 研 究 所 報 第 1
4
巻
2004
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. 研究報告
ピーグル犬の頚動脈及び左冠状動脈硬化モデル
大 平 永 敏 l), 溝 口 真 和 2), 勝 俣 勇 2), 岡 村 孝 之2), 藤 原 正 孝 1), 北 島 省 吾2)
1
)薬理薬効グループ,
2)第二毒性グループ
イヌの疾患モデルは生物医学,臨床医学などの分野で利用されてきた.特に心臓・血管(循
環器)
系,神経系,内分泌系,麻酔学,薬理学及び新薬の開発の研究において非常に有益なモ
デルとして利用さている.
我々グループは 2001年から薬効業務を展開するために,カニクイザルの左冠状動脈回旋枝を
用いて冠状動脈硬化モデルを開発してきた.この開発結果は, 2002年第四回日本疾患モデル学
会総会にて発表した.今回は,カニクイザルに比べて,多数のサンプルを得るのに十分な大き
さであること,多 くの研究者が利用可能であることからピーグ、ル犬を用いて頚動脈及び、左冠状
動脈硬化モデルを作製した.
[方法 1
3歳の雄,ピーグル犬に手術の 1
週間前からコレステロール 0.5%・コーンオイル 6%を添加し
た飼料を 1日当たり 250g
摂取させた.手術は犬の左胸部第4肋間で開胸し,心臓を露出後,心臓
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)を吸収させた約 0
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無停止状態で左冠状動脈回旋枝を剥離した. LPS(
の大きさのガーゼを冠状動脈回旋枝及び右頚動脈に巻き,胸腔内の陰圧を約一 4~-8cmH20 ま
で回復させた.胸腔内に異常がないことを確認した後に閉胸した.心電図検査を手術前,手術
2日及び30日に,血液生化学検査を高脂肪・高コレステロール負荷食開始前と解剖直前に実
後1
施した.
手術後 30日に解剖し,摘出した冠状動脈と頚動脈の組織標本を鏡検した.
55
ピーグル犬の頚動脈及び左冠状動脈硬化モデル
[結果]
高脂肪・高コレステロ ール負荷食開始前の総コレステロール値は 144mg/
dL,遊離コレステ
ロール値は 41mg
/
dL,中性脂肪値は 26.
1
mg
/
dLであ った.解剖直前の総コレステロール値は
1
66
mg
/
d
L,遊離コレステロール値は 45
mg
/
dL,中性脂肪値は 27.9m
g/dLであり,大きな変動は
みられなかった .
心
心電図検査で、
は手術前(心電図 A)には,異常は認められなか ったが,手術後の心電図検査(
電図B)では I
誘導およびaV
L誘導の ST
上昇が認められ, IU誘導の STの下降も認め られた.
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(財)安評センター研究所報第 1
4巻
20
04
病理学検査では,肉眼観察では心内膜の異常は認められなかったが,組織学的検査において
冠状動脈の内膜肥厚が認められた.内膜には,内皮細胞から内弾性板にかけ線維芽細胞,平滑
筋様細胞,線維の増殖,単球細胞浸潤,さらに脂肪を貧食したと思われる泡沫状の細胞質を有
する,マクロファージ様細胞が少数観察された (
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).
頚動脈の内膜の変化として,内皮細胞から内弾性板にかけて,透明な脂質の沈着,マクロ
ファージ,単球,線維芽細胞の浸潤が観察され,内膜平滑筋増殖が認められた,動脈粥状硬化
症の早期変化と思われる (
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[考察]
有益な疾患モデルの条件は,目的とする原疾患の病態が正確に適合すること,再現性が得ら
れること,入手および取り扱いが容易であること,生存期間が長く研究に適すること,多数の
サンプルを得られることなどが挙げられることから,今回,ピーグル犬を用いてモデルを作製
した.ヒトでは左冠状動脈回旋枝が冠状動脈硬化の好発部位であることから阿部位を処置部と
して選択したが,さらに,左冠状動脈回旋枝は,周囲を脂肪組織に固まれ,また左冠状動脈回
旋枝の主幹から分枝する小動脈が他の枝(右冠状動脈,左冠状動脈下降枝)に比べて少ないこと
から,手術時の出血が少なく,動脈の処置が容易でありモデル作製に適した部位と考えられた.
57
ピーグル犬の頚動脈及び左冠状動脈硬化モデル
前回,我々は血管の単球,マクロファージ細胞の賦活剤としてインターロイキンー
1
β を用い
て,カニクイザルの冠状動脈硬化モデルを作製した. しかし,インターロイキン ー
1sが高価で、
あり,カニクイザルも入手困難なことから,今回の疾患モデルの作製は実験動物にピーグル犬
を使用し,単球,マクロファージ細胞の賦活剤としてLPSを用いた. LPSはグラム陰性菌細胞
外膜の構成成分であり,マクロファージや単球,血管内皮細胞を活性化する.また,血管内皮
細胞に炎症性サイトカインを生産させ
接着因子の発現や凝固因子の活性化を促すことが明ら
かにされている(1).
炎症性サイトカインは動脈硬化病巣の形成に大きな影響を持つ.例えば,動脈病巣に活性化
したNF-kBが存在すると TNF
-α I
L
1は血管内皮細胞にマトリ ックスメタ ロプロテアーゼの発
現を誘発する.そのため
マトリックスの分解が血管内皮下へのマクロファージの侵入や中膜
平滑筋細胞の内膜への遊走を容易にする (
2
)
. 炎症性サイトカインによる血管内皮細胞の活性化
が動脈硬化病変の進展において重要な役割を果たしていることが示唆される.
本実験での病理組織学的変化として,単球細胞浸潤,線維芽細胞,平滑筋様細胞,線維の増
殖及びマクロファージ
泡沫状細胞の出現も観察された.
心電図の変化としては, 1
誘導, aVL
誘導でSTの上昇が認められた.このSTの上昇は心筋梗
塞急性期,異型狭心症発作時,心内膜炎などで認められる.しかし,心内膜炎ではSTの上昇が
aVR以外の全ての誘導で認められるのが特徴であるが,今回はI
誘導および、aVL
誘導にのみ認め
られた.病理学的検査の結果からも内膜炎の可能性は否定できると考えられた.
以上の結果から,ピーグル犬の頚動脈及び冠状動脈回旋枝を用いた本手術法は,短期間での
動脈硬化モデルを作製する方法として有意義なものと考えられる.薬効ス クリーニングや,薬
効発現機構の解析に適し,新薬の開発に大き く貢献する ことが期待される.
[参考文献]
(
1
)Ule
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c
h,
R
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,
T
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19
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)274
:1
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1
1
9
2
9
(
2
)R
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s
h
i
s
t
h,
5
8
(財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2
00
4
m
.論文発表
原著 L
i
p
i
d
s,3
8,7
4
3
7
5
0(
2
0
0
3
)より和訳転載
コレステロールによる 3T3-Ll脂肪細胞中性コレステロール
N
C
E
a
s
e
)活性の分子調節機構
エステラーゼ (
三 浦 進 司 l), 名 倉 広 美 l),千葉
剛 l), 富 田 勲 l
), 望 月 則 宏 l
)
2
),池 田 雅 彦 l
),
富田多嘉子 1
),Kr
aemer,
F
.B
.3)
1
)静岡県立大学, 2)(財)食品農医薬品安全性評価センター,
3
)スタンフォード大学
[要約]
中性コレステロールエステラーゼ (N
C
E
a
s
e
)は細胞質内に存在し,脂肪滴中のコレステロー
ルエステルを分解する酵素である.著者らはマクロファージ (M0)N-CEase
活'性がコレステロー
ル (CHL)により負の調節をうけることをすでに認めた (
M
i
u
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,
.
lA
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V
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.
B
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,
.
l
1
9
9
7
)
. 本研究では CHLによる NCEaseの負の調節が他の細胞,特に N-CEase活'性の高い脂肪細
胞(
3
T
テL1細胞)においても認められるかどうか検討した.脂肪細胞を 2
5
-ヒドロキシコレステ
ロール (250H-CHL)存在下で培養すると, N-CEase
活性は用量及び、時間依存的に 抑制された.
N-CEase
蛋白質発現量も 250H
CHLにより著明に抑制されたが, NCEasemRN
A発現量には変化
はなかった.以上の結果,脂肪細胞NCEase
活性は Mφ と同様, CHLによる負の調節を受けるこ
とを認めた.また,この調節は遺伝子転写段階ではなく転写後の段階で生ずることが示唆され
た.
[緒言]
動脈硬化の初期病変には,血管内皮下においてコレステロールエステル (
C
E
)を多量に蓄積
したマクロファージ
(M
の)由来の泡沫化細胞が認められる 1) 中性コレステロールエステラー
出 e
)は細胞質内に存在する貯蔵脂肪滴中の CEを分解する酵素であり,動脈壁に存在す
ゼ (N-CE
る本酵素活性は動脈硬化の進展に対し抑制的に作用すると考えられている 2)
一方,高比重リポ蛋白質 (HDL)が泡沫化細胞からコレステロール (CH
L
)を引き抜 くために
は,まず細胞内に蓄積した CEが遊離型CHLに加水分解される必要がある.そこで著者らはこれ
までHDLのM φ N
CEas
e
活性に対する影響について検討した結果, HDL
カ前CEase活性を充進す
ること,さらに NCE
出e
活性がCHLにより負の調節を受けることを明らかにし報告した 3) 本研
究では CHLによる NCEaseの負の調節がN-CEase
産生細胞で、普遍的に認められるかどうかを検討
舌'性の高い脂肪細胞 (3T3L1細目的を用い, NCEase
、
活
性
, mRNA,蛋白質
するため, N-CEaset
発現の各レベルの調節につき検討した.
59
コレステロールによる 3
T3-Ll脂肪細胞中性コレステロールエステラーゼ (N-C
Ea
s
e
)活性の分子調節機構
【実験方法】
1.
指肪細胞への分化誘導4
)
1
0% Ca
l
fserum
含 有DMEM中でc
o
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lこまで培養した 3
T
3
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, 10%f
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10%FCSDMEM)中0
.
2
5μM dexame
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s
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n,0.
5m MIBMXで
rum
48時間処理し,さらに 0.5μg/mli
n
s
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i
n含有 10%FCSDMEM中で7日間培養することにより成熟
脂肪細胞を得た.
2
.指肪細胞と CHLとの処理方法
CHL
及び、25h
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l
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r
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l(250HCHL)はエタノールに溶解し, 0~30 および0 ~ 1O μg/ml
司
(エタノール0.
3%以下)となるように 10%l
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nd
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ts
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r
u
m
含 有DMEM(10%LPDSDMEM)
に溶解し,脂肪細胞をこれら培地中で一定時間培養した.
3
.N-CEase活性測定方法5)
脂肪細胞ホモジネートの上清 (
4
3,
000Xg,30分間)を酵素液とし, CHL
[
1_
l
4C
]o
l
e
a
t
e
含有ミ
セル基質と 1
時間インキユベーション後,遊離した [
1
_14C]o
l
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i
ca
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dの放射活性を測定 LN
CEase
活性とした.
4
.定量的 RT-PCR法による N CEasemRNA量の測定方法
四
Vr
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et
r
a
n
s
c
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s
eにより cDNAに逆転写し, N-CEaseと
脂肪細胞の全RNAを抽出後, MuL
同一遺伝子産物と報告されているマウス hormones
e
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s
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el
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s
e(HSL)のcDNAに特異的に結合
する pr
i
m
e
rを用いて PCR反応 (
2
0サイクル)を行い, 5
'
側より 1
5
1
5から 1
9
2
3番目までの 408ヌクレ
l
y
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l
a
m
i
d
eg
e
l電気泳動 (PAGE)により分離した後,
オチドを増幅したの. PCR産物を 5%po
SYBRGreen1で染色された蛍光発光バンドをFl
uo
ri
m
a
g
e
rにより解析した.
5
.Westernb
l
o
t法による N-CEase酵素蛋白量の測定方法 7)
細胞ホモジネ ー トの上清 (
1
3,
OOOXg, 1
0分間)を 10%SDSPAGEで分離後,全蛋白質をニト
ロセルロースメンブレンに転写した. NCEase
酵素蛋白質は, HSL/b
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サギに投与して得た一次抗体, a
n
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b
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tIgGa
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t
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b
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d
yを二次抗体として用い, ECL法により検
出した.
6
0
(
財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2004
[ 結 果1
1
.N-CEase活性に対する CHLおよび:
'
250H・CHLの影響
脂肪細胞を CHL(0~30μg/ml) およびその酸化物である 250H-CHL (0 ~ 10μg/ml) を含有する
10%LPDS-DMEM中で 24日寺問培養したところ, N-CEase活性は, 250H-CHL1
0陀 Iml
存在下で
F
i
g
.1
)
. CHLは抑制作用を示さなかった.
は非存在下に比し約 25%抑制された (
また脂肪細胞を 1
0% LPDS-DMEM 中で0 ~ 36時間培養したところ, N帽CEase活'性は時間依存的
に増加し, 0時間に比べ 2
4時間で約2倍
, 3
6時間で約 2
.
5倍の活性の上昇が認められた (
F
i
g,2
)
.
この培地に 250H-CHL1
0は I
m
lを添加した場合, 6時間の培養で約1.3
倍の活性の上昇が認め ら
れたものの,それ以後の増加は抑制され,対照に比し有意な活性の低下が認められた.
a
s
e
酵素液に 250H-CHL(0 ~ 1000 n
g
/lOμgp
r
o
t
e
i
n
)を直接添加し,
脂肪細胞より調製した N-CE
N-CEaseに対する 250H-CHLの直接作用について検討したが,活性に変化は認められなかった.
したがって, 250H-CHLは酵素に対する 直接作用ではな く何ら かの情報伝達系を介して脂肪細
胞 N-CEase
、活性を抑制していることが示唆された.
1
2
0
1
0
。、
+
日
ム
Chol
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(財)安評センター研究所報 第 14巻 2
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2
.N-CEasemRNA
発現量に対する 250H・CHLの影響
脂肪細胞を 10%LPDS-DMEM中
, 250H-CHL(
1
0附 Iml)存在下および非存在下で 0, 3,6,
1
2,24, 3
6時間培養した後,全RNAを抽出し, RT-PCR法により N-CEasemRNA
発現量を解析
した.その結果, N-CEasemRNAは
, 250H-CHLの有無および培養時間にかかわらず変化がな
かった (
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3
コレステロールによる 3
T3-Ll脂肪細胞中性コレステロールエステラーゼ (N-CEas
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)活性の分子調節機構
3
.N-CEase酵素蛋白量に対する 250H-CHLの影響
, CHL(30μg/ml)および250HCHL(
1
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)存在下で 24,
脂肪細胞を 10%LPDふ DMEM中
3
6時間培養し, N-CEase酵素蛋白質量への影響を Westemb
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法により検討した. N-CEase酵素
蛋白量は, 250HCHL
存在下では非存在下に比べ 24時間では 72%,36時間では 93%減少し,
250H-CHLが脂肪細胞の N-CEase
酵素蛋白を著明に減少させることを認めた (
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財)安評センター研究所報第 14
巻
2004
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以上の結果は,脂肪細胞においてCHL
がN-CEase
活 性の負の調節因子であることを示唆した.
J
また, CHLによる N-CEase活性の調節には遺伝子転写段階ではなく,遺伝子転写後の過程が関
与すると考えられる.
[考察]
本研究で脂肪細胞N-CEase活性のCHLによる影響について検討し, 250H-CHLがN-CEase
活性
を著明に抑制することを認めた .Mφでは CHLによる N-CEase
活 性の抑制が認められたが3),脂
J
肪細胞では 250H-CHLによる作用がより著明であった.
受容体や HMG-CoA
合成酵素を抑制することが明らかにされているが,この
250H-CHLはLDL
作用は CHLよりも強いことが報告されている 8) その理由として細胞に対する親和性が250HCHLの方が強いためであると考えられている.脂肪細胞では250H-CHLの膜透過性がCHLより
も高く, CHLよりも強いN-CEase活性抑制作用が認められたものと考えられる.
また, N-CEase
活性調節のメカニズムについて中食言すしたところ, 250H-CHLがN-CEasemRNA
の発現量には変化を与えずに,酵素蛋白量を減少させることを認めた.これらの結果より, NCEase酵素蛋白量の変化にCHL
依存性のプロテアーゼ 9)およびホスファターゼ 10)の関与が想定さ
れる.
{参考文献]
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出口1.2
004;17:69-83抄 録 和 訳 転 載
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佐々木研究所,
1
)
2
)(財)日本食品分析センター,
3)(財)食品農医薬品安全性評価センター
アルキルフェノール類など代表的な内分泌かく乱物質の,蓄歯類特にラットの雌性生殖器に
及ぼす毒作用あるいは発癌作用に焦点を当てて,最近の著者らの研究成果を中心にレビューし
考察を加えた. Donryuラット新生児に高用量の p担 比ーo
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P,1
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g を生後 1日目
から 1
5日固まで毎日皮下投与)を処理すると,性成熟以前に性腺刺激ホルモンが低下して,雌の
生殖器系に子宮腺の発育阻害,持続性発情,多発性卵巣嚢腫などの機能的あるいは形態的なさ
まざまな不可逆性の変化が観察され,エストロジ、エン作用を有する内分泌かく乱物質の大量投
与は,視床下部への直接作用により男性化が起こり,性腺の成熟発達時期に性腺刺激ホルモン
分泌に影響を及ぼすことが示唆される.一方, 1
0
0mg
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k
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Pを生後5日間投与すると(生後
1日目から 5日固まで)性成熟に達するまでは視床下部一下垂体一性腺系制御システムあるいは生
殖器の発達・分化には異常は認められないが,成熟後視床下部
下垂体一性腺系制御システム
の遅発性変調により,卵巣萎縮が早期に起こり,より早期にしかも長期に Eって持続性発情が
起きる.正常発情を示す雌に高用量の t-OPを28日間投与すると,正常な発情周期は消失する
が,子宮の重量あるいは形態などに変化は認められないことから,内分泌かく乱物質は,蓄歯
類においては周産期暴露により最も重大な影響を及ぼすと考えられる. N
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Pを投与すると子宮で高分化型ある
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eでイニシエートされた Donryuラットに t
いは中等度分化型の腺癌発生が増強される.生後 1日から 5日まで高用量の t-OPを投与された
ラットでは,同様に子宮において腺癌の発生に対しプロモーション作用が認められるが,生後
1日から 1
5日まで高用量の t
O
Pの投与を受けたラットでは,子宮腺癌の悪性度が増すにもかか
わらず,発生頻度は増加しない.このことは,子宮腺癌の組織発生を考える上で非常に興味深
い.一方,人が実際に暴露されていると考えられる用量と同程度の量の n
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lあるいは
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lAをラットに経口投与しても,雌の生殖器の発育・分化あるいは子宮発癌に明らかな
影響は認められていない.従って人を含む晴乳類においては,低用量の内分泌かく乱物質に連
日暴露されても雌の生殖器系には何ら悪影響を及ぼさないと考えられる.
66
(財)安評センター研究所報第 14巻
2004
N
. 研究会・学会発表会
第2
2回北米毒性病理学者協会国際シンポジウム講演要旨集, p
8
5,2
0
0
3,より和訳転載
ラットの腎臓腫蕩に随伴して観察される円柱線毛上皮
ーラット腎芽腫間葉型と腎間葉系腫蕩の鑑別岩田聖
第四試験室
ラットの腎芽腫n
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a.腎間葉腫renalmesenchymaltumor・腎脂肪腫r
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aなど
に時として円柱線毛あるいは多列線毛上皮が観察される.今回我々はこの円柱線毛あるいは多
列線毛上皮に注目して,当センターの材料(♂ 8,
1
7
5;♀ 8,
4
0
5
)から腎芽腫 1
2
例,腎間葉腫3例
,
腎脂肪腫 1
8例について再検討した.
腎芽腫の4例には周囲に糸球体原基や腎芽細胞の増殖を伴った円柱上皮あるいは円柱線毛上
皮が観察された.これらの組織は腎膏(尿管芽)u
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から形成される原始尿細管p
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tと考え られた . (
腎閏葉腫の2例と腎脂肪腫の 1
例にも円柱線毛上皮あ るいは多列線毛上皮が観察された.我々
は今までこれらの上皮を尿細管上皮の胎児性化生 e
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aと考えてきた. しかし,
これら腎間葉腫や腎脂肪腫に見られる線毛上皮では,①正常尿細管上皮との連続性を示すこと
がない:②核分裂像や PCNAにも陽性であり増殖性である:③これらの上皮を中心に腫傷細胞
の増殖する例がある:④ラットの他の腎腫蕩(腺腫 Adenomaや腺癌 Adenocarcinoma)あるいは
慢性腎症には胎児性化生 embryonicm
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aは観察されない:などの疑問がある .腎芽腫の
発生母地とされている腎芽遺残組織 N
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tは加齢ラットにも観察され,加齢ラット
にも腎芽腫が発生することや 腎膏(尿管芽)の分枝が遺残したものは原始集合管と呼ばれ,周
囲を線維性の間葉系組織で固まれた円柱上皮あるいは線毛上皮よりなるなどの点からこれらの
円柱線毛上皮あるいは多列線毛上皮は単なる尿細管の胎児性化生ではな く,腫蕩細胞の 同一起
源の増殖性変化と考えた.すなわち 糸球体原基や腎芽細胞の増殖がなくても円柱線毛上皮(後
腎/中腎由来を示唆)あるいは多列線毛上皮(中腎由来を示唆)の増殖を伴った間葉系腫蕩は腎
芽腫間葉型と診断したい. (
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.
2,3
)
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g
.
l:N
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67
H.E染色標本の蛍光照射による退色についての検討
原著
実験病理組織技術研究会誌, 12,1
6,2
0
0
3より転載
H.E染色標本の蛍光照射による退色についての検討
0古橋
由美,望月貴治,三木雅代,磯部香里,杉浦ひろ子,松岡嘉則,
山本都夫,萩原孝
(財)食品農医薬品安全性評価セ ンタ ー
病理技術グループ
[keywords]
紫外線,可視光線
[目的]
鏡検中の H'E
染色標本は日中,机の上で日光や蛍光灯の光に晒される機会が多く,紫外線の
影響を受けて退色することが一般的に知られている.特に癌原性や慢性毒性試験など,鏡検に
時間のかかる試験は光による退色が懸念される.そこで紫外線の影響を調査する目的で,市販
の3
種類の蛍光灯を使って H ・E染色標本の退色度合いを調べた.
[材料]
F344
雄ラ ッ トの肺・心臓・腎臓・肝臓・牌臓・脳および消化管
[方法]
エーテル麻酔下で放血安楽死後,解剖し,肺・心臓・腎臓・肝臓・牌臓・脳および消化管を
摘出した. 10%中性緩衝ホルマリン液にて固定後,切り出し,自動脱水包埋装置にて脱水
パ
ラフイン浸透させ,包埋した.包埋後約 3μm
の厚さで, 1 臓器につき 4 ~5切片ずつ薄切し ,脱
パラ後, H.E
染色を行ない,脱水・透徹後,封入した.封入剤はオイキ ッ ト(
0
.K
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d
l
e
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社製)を
使用した.
H'E
染色に使用した試薬:
<マイヤーのヘマトキシリン>
武藤化学薬品(株)社製と MERCK
社製のマイヤーのへマトキシリン液を等量混合し使用した.
<エオジン>
エオジン (MERCK)
7
.
2
g
エリスロシン (MERCK)
4
.
8
g
蒸留水
600mL
無水エタノール
2400mL
酢酸
6mL
*上記試薬を混合し溶解する.
68
(
財)安評セン ター 研 究 所 報 第 1
4
巻
2004
<実験条件>
H'E
染色標本は蛍光照射の影響および蛍光灯の違いによる影響の差を検討するため,白色蛍
光灯 (HITACHIサンライン FLR40SW
爪1
36B),カラード蛍光灯純黄色 (
N
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lカラード純黄
・
F/
M),美術・博物館用蛍光灯(紫外線防止膜付)(
N
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l演色AA白色 FLR40S.W色FLR40S-YSDL'NU
/M)の 3種類を用い,いずれも蛍光灯直下に標本を貼り付け, 1,7および 14日開放置
した.また,白色蛍光灯直下の温度が60C近くあり,退色に熱の影響も考えられたため,恒温
0
槽にて 60Cよりも高い温度 (
6SC)
を設定し,遮光下で標本を 1
4日開放置した.放置後,肉眼お
0
0
よび顕微鏡下で観察した.表1
,表2および表3に実験条件
蛍光灯から照射される光の種類等
について示した.
表l
¥
蛍光灯の種類・条件等
照射される光の種類
①
②
白色蛍光灯
カラード蛍光灯純黄色
紫外線,可視光
③
美術・博物館用蛍光灯
(紫外線防止膜付)
紫外線(微量)
可視光
④
加温 (
6SC
)
遮光
0
紫外線,黄色光
表2
蛍光灯分光分布(可視光域)
一一 美術・博物館用
蛍光灯
400
500
600
700
波長 (nm)
69
H.E染色標本の蛍光照射によ る退色についての検討
表3
〈各蛍光灯から照射される紫外線の量 〉
蛍光灯の種類・条件等
白色蛍光灯
相対値
5.6%
カラード蛍光灯純黄色
美術・博物館用蛍光灯
(紫外線防止幕付)
三
五2
.5%
2.5%
相対値:太陽から照射される紫外線の量を
100%としたときの値
[結果]
<肉眼観察>
①白色蛍光灯
染色後1日目で著しい変化が認められた.全体的な退色に加え,肝臓の辺縁部分などに部分
的な変化が認められた(写真 1
B
)
. 7日目から 1
4日目にかけて更に退色が進んでいるのが認め
られた(写真 1
C,D)
.
写真 1 白色蛍光灯 (A :染色直後, B :1日目 , C :7日目, D:1
4日目)
iIT
れ
い
γ
t
I
F
¥
折HW
‘
•
B
C
70
D
(
財)
安評セ ンタ ー研究所報
第1
4
巻
2004
②カラード蛍光灯純黄色
染色直後から 1
4日目まで目立った変化は認められなかった(写真 2
)
.
.
.
写真2 カラード蛍光灯純黄色 (A:染色直後, B :1日目 , C :7日目, D:1
4日目)
.
・
・
4
4
b
b
、
、
/'huHドt
1
れ
4Fh
ノ/﹄1151'44
IFFE'tt
iHL7
rttrffiιIL
、
f!/
一
一J、
71
H'E染色標本の蛍光照射による退色 についての検討
③美術・博物館用蛍光灯
染色直後から 1
4日目にかけて,徐々に全体が退色している のが認め られた (
写真 3
).
写真 3 美術 ・博物館用蛍光灯 (
A :染色直後, B :1日目, C: 7日目 , D:1
4日目 )
~
~
E
置
.
72
~
(財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2004
<光顕観察 >
臓器により退色度合いに差が見られなかったため,小腸の組織についてヘマトキシリ ンは,
核・核小体等の観察のし易さ,エオジンは杯細胞との比較で判定をした(表4
).
表4 光顕観察結果
白色蛍光灯
カラード蛍光灯純黄色 美術・博物館用蛍光灯
加温・遮光
核
核
細胞質
(
ヘ
マ
ト
キ
シ
リ
ン
) (
エ
オ
ジ
ン
) (
ヘ
マ
ト
キ
シ
リ
ン
)
細胞質
細胞質
核
核
細胞質
(7ト
キ
シ)
1ン
) (
(7ト
キ
シ
リ
ン
) (
エ
オ
ジ
ン
)
(
エ
オ
ジ
ン
) へ
エ
オ
ジ
ン
)へ
1日目
++
+
ND
ND
7日目
+++
++
ND
ND
+++
++
+
1
4日目
+
一:変化なし,
+退色軽度,
++ 退色中程度,
+++:退色重度,
ND:Notd
e
t
e
c
t
e
d
①白色蛍光灯
7日目:核の退色は目立たないが,細胞質は重度に退色しており,杯細胞が観察しづらい(写
真 4A).
1
4日目:核は軽度に退色して赤紫色に見 える .細胞質も 7日目と比較して更に退色していた
(写真4-B).
写真4 白色蛍光灯
j
A:7日目
ヘマ トキ シリン(一)
エオ ジン(+++)
B:1
4日目
ヘマトキシリン(+)
エオ ジン(++
+)
73
H .E染色標本の蛍光照射による退色についての検討
②カ ラ ー ド 蛍 光 灯 純 黄 色
7日目:退色は殆ど無く,核小体も明瞭に観察出来た(写真 5A).
1
4日目:7日目と同様に変化は殆ど認められなかった(写真5・B).
写真5 カ ラ ー ド 蛍 光 灯 純 黄 色
A:7日目
ヘマ トキシリ ン(一)
エオジ ン(一)
B :1
4日目
ヘマ トキ シリン(-)
エオジン(一)
①美術・博物館用蛍光灯
7日目:細胞質が中程度に退色していた (写真6A).
B)
.
1
4日目:核の退色は目立たないが,細胞質が中程度に退色していた (写真 6
写真6 美術・博物館用蛍光灯
A:7日目
ヘマ トキシリ ン(一)
エオ ジン(++)
7
4
B :1
4日目
ヘマトキシリン(一)
エオ ジン(++)
(
財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2
004
④加 温 (
6
5C)
遮光
0
染色直後に比較して核が軽度に退色し ていた(写真7
).
写真7 加 温遮光 (
A :染色直後, B:1
4日目 )
A:染直後
B :1
4日目
ヘマ トキ シ リン(+)
エオ ジン(一)
7
5
H.E染色標本の蛍光照射による退色に つい ての検討
[考察]
白色蛍光灯では肉眼観察において染色後 1日目から著しい変化がみられ,光顕観察でもヘマ
4日目で退色軽度
トキシリンが染色後 1
果であった.カラード蛍光灯純黄色は
エオジンにおいては染色後 1日目から退色中程度の結
肉眼観察
光顕観察からも退色変化は見られなかっ
た.美術・博物館用蛍光灯では肉眼観察では染色後 1日目から徐々に退色しており,光顕観察
でもエオジンが染色後 1日目では軽度であ った が 染 色 後7日目以降では中程度であ った.これ
らの結果より,ヘマトキシリン,エオ ジ ンともに光による退色の影響は,白色蛍光灯>美術・
博物館用蛍光灯>カラード蛍光灯純黄色であった.
エオジンは染色後 1日目から退色変化がみられ,ヘマトキシリ ンよりも光による影響を受けや
すいとも考えられる.また加温遮光の結果
染色後 1
4日目に ヘマトキ シ リンでは退色軽度が観
察されたことから,ヘマトキシリンは光だけでな く,温度による影響も関与すると考えられ
た.今回は実際の鏡検中の条件とは異なり,蛍光灯直下にスライドグラスを貼付し,実験を行
なったが,通常部屋の蛍光灯に使用されている白色蛍光灯で退色 の影響を強く受けた.このこ
とより鏡検中,スライドグラスはマ ツペ に並べられ,紫外線にさらされることから,鏡検以外
のときは放置しないよう,また直射光もさけるよう心がけることが必要と思われる.また,温
度による退色の変化もみられることから
特に長期保存する際は暗所での保存が必要であるこ
とを再認識した.しかし,標本の退色には標本中の水分量より光反応が助長されるといわれる
ことから,標本作製時もできるだけ水分を含まないよう,アルコール脱水,透徹後封入を行な
い,退色防止に努めなければいけないと考えられた.
{文献]
1
)
日本病理学会編:病理技術マニュアル 3 病 理 組 織 標 本 作 製 技 術 下 巻
一染色法一,東
9
81
.p2
7
京,医歯薬出版株式会社, 1
2
) 渡辺明朗,他:標本の封入 第 1回封入剤の化学と特性, M
e
d
i
c
a
lT
e
c
h
n
o
l
o
g
y,V
o
1
3
1
0
0
3
N
O
.
2:1
7
9
1
8
2,2
3
) 広井禎之,他:標本の封入 第2回封入剤の役割および封入技術, M
e
d
i
c
a
lT
e
c
h
n
o
l
o
g
y,
V
o
1
3
1N
O
.
3:3
1
3
3
1
9
.2
0
0
3
7
6
(
財)
安評センター研究所報第 1
4巻 2004
2
0
0
3年7
月1
8
1
9日 第 3
0回日本トキシコロジー学会学術年会 要旨集p.
l7
7より修正後転載
マウスを用いた絶食時間の血液生化学値および胃の
病理所見への影響の検討
0向 井 大 輔 , 山 川 誠 己 , 各 務 進 , 村 田 共 治 , 井 上 博 之
(財)食品農医薬品安全性評価センター
{目的]
毒性試験では,血液生化学的検査に対する摂食の影響を出来る限り少なくするために,一晩
絶食後に解剖することが多いが,マウスは絶食ストレスに対する感受性が高く,時に胃に廃嫡
や出血などの所見が認められることもある.今回,我々は絶食時間と血液生化学検査値および
胃の病理所見との関係を調べたので報告する.
[方法]
動物は,日本チヤールスリバー株式会社より購入した B6C3F1系9週齢マウスの雌雄を使用し
た. 7
:
0
0点灯 1
9
:
0
0消灯の照明環境下で飼育し,採血,解剖は 9
:
0
0に行い血液生化学検査,消化
6,1
3,1
2,8,3時
管の肉眼観察および胃の病理組織学検査を行った .絶食時間は採血前21,1
間とし,さらに非絶食群を設けた.絶食開始時刻はそれぞれ 1
2
:
0
0,1
7
:
0
0,
2
0
:
0
0,
2
1:
0
0,1:
0
0お
6
:
0
0とした.また,摂餌パター ンの把握のため,摂餌量の測定も行った.
よび、
[結果]
摂餌量は 1
7
:
0
0
1
9
:
00で、増え始め,暗期中は高値で推移,朝方にかけて減少した.血液生化学
検査では, 8時間以内の絶食群 (
1
:00以後の餌抜き)で ASTの低値,血糖値および中性脂肪の高
値
, 3時間以内の絶食群 (
6
:
0
0以後の餌抜き)で総蛋白の低値など, 1
6時間絶食群 (
1
7
:00
餌抜き)
とは異なるデー タが得られたが, 1
2時間以上の絶食群 (
21:00以前の餌抜き )ではすべての項目
が1
6時間絶食群 (
1
7
:
0
0
餌抜き)と同等の値を示し,絶食効果は十分であることが示された.
病理学検査では雄では 1
6時間以上の絶食群 (
1
7:00以前の餌抜き )
,雌では 12時間以上の絶食
群(
21
:
0
0
以前の餌抜き)で胃に廃嫡の認められる例があり,これらの例では, AST,ALTおよび
ALPが高値となる傾向があった.
[ 結 論1
8時間以内の絶食群 (
1
:
0
0以後の餌抜き)では生化学検査値に 1
6時間絶食群(
1
7
:
0
0
餌抜き)とは異
なるデータが得られた.一方,
1
2
時間以上の絶食群 (
2
1:00以前の餌抜き)では胃の褐色斑や厩
嫡などの絶食ストレスによる影響が示唆された.
7
7
JSTP/IFSTP 2004;96 抄 録 和 訳 転 載
P
a
t
h
o
l
o
g
yI
n
f
o
r
m
a
t
i
o
nSystem
大橋信之
安評センターでは, 1
9
9
1年より毒性試験病理データ収集システムを開発し改良している.現
在までに 100試験を超える癌原性試験を含む多くの試験において本システムを利用してきた.
本システムは,ネットワークウインドウ (X-windows)を利用し高度なユーザーインターフェイ
S
o
l
a
r
i
s
8
)クライントには Windows2000を使用し
スを実現している.また,サーバーには UNIX(
ている.鏡検者は、鏡検観察を実施しながら並行して病理所見の記録が可能となった.鏡検者
i
n
d
i
n
gl
i
s
t,病理鏡検所見辞書,
は診断した所見あるいは診断名を,特定病変リストを表示する f
臓器辞書,コメントリスト,死亡理由リストのそれぞれのウインドウより選択することができ
る.これらの辞書の管理は本システムをより有効に利用するために重要である.鏡検者は,こ
れら辞書中の全ての病変について一般的に承認されている標準的判断基準についての確認が必
要である.それぞれの鏡検者は,本システムに付属する病理画像システムを,病変の判断基準
の確認のために利用する.鏡検者は病理所見画像をそれぞれのコンピュータスクリーン上に表
示し,鏡検者間で検討することができる.本システムを利用することにより,鏡検中の動物に
ついて,剖検データ,血液学,血液生化学,尿検査データを参照することができる.本システ
ムは病理データについて統計解析を伴った各種テーブル
アペンデイツクスを作成する.腫傷
o
'
st
e
s
tを実施可能である.さらに p
e
e
r
r
e
v
i
e
w
機能を有している.
性病変の統計解析のために P巴t
セキュリテイについては,各利用者は 3ヶ月ごとにパスワードの変更を必要する.ネットワー
クは,いくつかのファイーアーウオールあるいは OS機能より保護されている.病理埼玉支所か
らは, VPNを利用した安全なリモートアクセスが可能である.
78
(財)安評センター研究所報第 1
4巻
2
0
0
4
v
. トピックス
第二試験研究棟(フ号館)の建設
(財)食品農医薬品安全性評価センター
第二試験研究棟建設プロジェクトリーダー
北島省吾
2
現在の試験研究棟は約 5
.
7
0
0
mで、バリアと検査室等からなる弊センターの中心的な施設です
5年を経過しております.また,最近ではお客様からがん原性試験や反復投与
が,既に建設後2
毒性試験のお問い合わせを頂きましても,バリアに空室が無く,これにお応えすることが出来
ず,大変心苦しい状態が続いてまいりました .こうした面から第二試験研究棟の建設は,弊セ
ンターに取りまして緊急かつ重要な課題となっておりました.
0
0
3年8
月よりプロジェク トを立ち上げ,第二試験研究棟建設について検討を重
そのため, 2
0
0
4
年4
月に着工し, 2
0
0
5年春に竣工する運びとなりました.
ねてまいりましたが,お陰さまで2
この度の第二試験研究棟は,今後の安評センターの新たな顔となる重要な施設と位置付けて
おりますので,この機会にその概要につきましてご報告させて頂きます.
5年を経過した弊センターが,今後更に
先ず,第二試験研究棟の配置,規模,構造は,創立2
5
0
年そして 1
0
0
年後を展望した施設将来構想の基に決定しました.そして,設計にあたっては
GLP
対応を最優先に,動物福祉,耐震,環境負荷低減,職員の安全と労働環境に最大限配慮し
ました .更に,第二試験研究棟を中心に主要な施設を全て連絡通路で結び,人や物の流れを加
速させ,より早く,より正確に,そしてより効率的な試験の実施と報告の実現を目指しており
ます.
また,第二試験研究棟の規模は現在の試験研究棟に比べて一回り大きく,延べ床面積は約1.2
2
倍の 6
,
844m
,バリアの飼育室数は1.2
倍の 2
9
室(ラック交換でラットあるいはマウスの飼育可能)
でこれらの延べ床面積は約1.4倍となっています.バ リアについてはワンウェイ方式と明確な動
線,飼育室前室と後室の採用による差圧管理,ホルマリンくん蒸機能,電解水消毒,ケミカル
パスルーム等の採用によるコンタミネーションの防止と,未使用室の空調停止や全熱交換機に
よるランニングコストの低減をはかっています.そして
基準を満た
飼育環境については NIH
した個別ケージとオートクレーブ滅菌可能な移動式ラック,長年の経験を生かした飼育器具の
工夫等により,弊センターが最も得意とするがん原性試験と長期の反復投与毒性試験を,信頼
性の高い環境下で実施する最適の条件を確保しました.
検査区域については,従来施設ごとに行っていた被験物質の管理と調製を統合し,一元的な
2
管理と調製を行うため約 2
42m
を被験物質取扱い区域に充て,更に TK
等の分析部門の拡充や遺
伝子解析等の新たな技術的な対応が出来るように,拡張性を見込んだ十分なスペースを確保し
ました.
0
0
5年2月末の竣工後,ク リー ンアップ,試験飼育等を行い 5
月頃の稼動を
第二試験研究棟は 2
目指しておりますので,是非一度ご見学にお越し頂き,これからも弊センターをご利用頂きま
すようお願い申し上げます.
79
第二試験研究棟 (7号館)の概要
項
No
2
3
4
5
構造
階数
品さ
床面積
外壁
6
室構成
7
内
目
ケージおよびラック
合
n.
,
.
造),耐震性能震度6強
鉄筋コンクリート (RC
2階
1
4.8m
2
約 6,
8
44m
磁器質タイル(光触媒低汚染型タイル)
階
1
バリア内
7室,飼料混合室,充填室,飼料保管庫,
飼育室 1
ク リーン保管庫等
バリア外
洗浄室,機械室,飼料保管室,保管庫,荷捌室,
中央監視室等
2階
バ リア内
2室,被験物質調製室,飼料保管庫,
飼育室 1
ク リー ン保管庫等
バリア外
解剖室,被験物質調製室,コンピュータ室,
検査室,居室等
ケージ
個別飼育用金網式ケージ, (一部ポリカーボネイト
製ケージを採用予定)
ラック
マウス 5
段 1
2ケージ/段 (
6
0匹)
ラッ ト 4段 7ケージ/段
(
2
8匹)
1
階
Aタイフ。 (
6
6m2)ラッ ト換 算 5
6
0匹 9室
2
8
9
飼育室と収容匹数
Bタイプ (
49m)ラット換算 3
3
6匹 4室
2
Cタイプ (
85m)ラッ ト換 算 7
8
4匹 4室
2階
2
Aタイプ (
6
6m)ラット換算 5
6
0匹 3室
2
Bタイフ。 (
49m)ラッ ト換 算 3
3
6匹 9室
(合計収容匹数ラット換算 1
4,
22
4匹)
全熱交換器一体型外気処理空調
飼育室管理基準
バリア空調
3:
t2C,湿度 50:
t1
0%,換気 回数 1
5/
h以 上
温度 2
電気 :防災兼用発電機により 3日間確保
b.
k
用受水槽により 3日間確保
飲 水 :査
電気,水供給停止ならびに 工水(洗浄,冷却用) :工水用受水槽と井戸により
3日間確保
機器停止対応
4
0KWX2台 (50%運転),空調機飼育室
機 器 :冷凍機 1
系統5
0%2台運転と予備機
0
1
0
80
(財)安評センタ ー研 究 所 報 第 1
4
巻
2004
第二試験研 究棟(7号館)
1
階平面図
第二試験研 究棟(7号館)
2階平面図
1 ・M~
曹
車
'
‘
"
9
81
配置図
第二試験研究棟 (
7号館)完成予想図
82
(
財)安評セ ンタ ー 研 究 所 報 第 1
4
巻
2004
Vl.望月喜多司記念賞
1.平成 15年度(第 18回)望月喜多司記念賞要旨
1) 食品・農薬・医薬品等の安全性の分野
ア)功労賞
さ とう
てつ お
佐藤哲男
昭和6年 1月9日生
所属機関
千葉大学名誉教授
研究題目
トキシコロジーの国際的調和
業績の大要
薬学教育への毒性学導入の必要性を提唱し,その発展と普及に努めた.さ
らに,臨床における薬物毒性の問題を多 くの著書で認識させ,教育,研究の
場に反映させるとともに
薬学教育の中に毒性学を独立した学問体系として
位置付けることに努めた. 1
9
9
5年から 2
0
0
1年までは国際毒性学連合(
I
U
T
O
X
)
の副会長として国際的にも多いに活躍した. 2
0
0
2
年には「国際トキ シコロジ
スト認定機構J(IART)の初代会長として今日まで各国の毒性学者の資格認定
の相互承認を完成させた.我が国における トキ シコロジーの発展と,それを
国際的なレベルにまでヲ │
き上げるための多面的な貢献などその功績は多大で
ある.
イ)業績賞
のむら
まもる
野村護
昭和 2
0年3月1日生
所属機関
株式会社イナリサ ーチ
研究題目
臨床生化学的データ解析からみた病態機能異常との相関研究
業績の大要
試験管理部長・運営管理者
日本製薬協を中心と した臨床病理検査項目の圏内アンケート調査を通じて
測定法の疑義を発見し
IHCPT)において臨床病理検査の世界
国際調和会議 (
JSCC)に動物臨床化学専門委員
標準化を推進した.さらに,日本臨床化学会 (
会を設置し,専門家教育を実践すると共に JSCCから勧告法を提唱した.ま
た,毒性試験領域で活用されてきた統計決定樹の誤りを発見し,生物統計学
者との討論を基に理論的裏付けを構築すると共に, DIAシンポジウムで共同
発表して国際的調和を達成した.新理論を基に新たな解析ツ ール作成に協力
して,毒性試験従事者教育の進展にも努めた.その他, 1
9
9
9
年からトキシコ
ロジー学会理事として、活動すると共に,講習会,生涯教育を中心とした教育
委員会の活動を充実させ,底辺拡大と認定トキシコロジストの育成に尽力
し,あわせて事務局担当理事として学会運営に広 く貢献したことは,民間研
究者の意識改革と向上心の育成につながった.こ れらの業績により毒性学に
新しい風を吹き込み,名実共にニューサイエンスとしてのトキシコロジーの
科学的水準を国際的な規模で高めることとなった.
8
3
ウ)業績賞
や まぞえ
やすし
山添康
昭和 24
年 2月8日生
所属機関
東北大学大学院薬学研究科教授
研究題目
薬物代謝変動の分子機序と薬物毒性
業績の大要
チトクロム P450の酵素誘導と阻害は薬物動態の主要決定因子であるが,主
要薬物代謝型P450のCYP3Aについてその遺伝子の活性化機構を解析して核内
受容体PXRと相互作用する 3ヶ所の部位を明らかにした上でCYP3A4酵素誘導
の予測法を開発し,グレープフルーツジュース薬物相互作用の解析をして
CYP3A4阻害物質を同定した.さらに,小腸における CYP2J2やスルホトラ ン
スフエラーゼ、ST1A5の解析を行ってヒト薬物動態における初回通過代謝の重
要性を明らかにした.また肝内胆汁酸代謝と排椎への F
XR
核内受容体の役割
を解明した.これらの業績は,薬物動態と安全性評価研究に寄与するところ
大である.
エ)奨励賞
もりた
ふみ お
森田文雄
昭和 34
年2月1
3日生
所属機関
大鵬薬品工業株式会社安全性研究所主任研究員
研究題目
海馬神経細胞の変性・壊死に関する毒性学的研究
神経細胞が虚血負荷に対し感受性の高いことを利用し,スナネズミを用い
業績の大要
た短時間の前脳虚血負荷により,海馬 CAl領域に緩徐に進行する神経細胞
変性が発現する現象を見出した.さらに
この 3
分間一過性前脳虚血モデル
を用いて,神経保護物質プロサポシ ン由来 1
8・merペ プチド (
以下 1
8・MPと省
略)の虚血再濯流後28日間脳室内投与により,緩徐に進行する神経細胞変性
を有意に抑止し,受動的回避学習障害を軽減することを示した.これにより
虚血後神経細胞変性に対する 1
8MPの保護効果を証明するとともに, 18-MP
の神経細胞保護効果が抗アポトーシス因子 Bcl・
.
I
Iの発現誘導を介したアポ
トーシスの抑止にともなう作用機作を明らかにしたことは,種々の毒性物質
により海馬領域における進行性神経細胞障害の病理発生機作の解明に大きな
示唆を与えるばかりでなく,その緩解治療法に係る可能性を提起するもので
ある.
オ)奨励賞
やま もと
けいじ
山本恵司
昭和 39
年 5月29日生
所属機関
武田薬品工業株式会社医薬研究本部薬剤安全性セン ター 主任研究員
研究題目
薬剤による心電図 QT/QTc 間隔延長および心室性不整脈に関する安全性薬理
学的研究
業績の大要
近年,薬剤の安全性評価において薬剤による心電図 QT/QTc間隔延長およ
ぴ催不整脈作用の評価が重要となってきている. QT
延長を引き起こす薬剤で
8
4
(財)安評センター研究所報第 1
4
巻
2004
は特に T
o
r
s
a
d
ed
ep
o
i
n
t
e
s(
T
d
P
)という多形性の心室性頻拍が誘発されるが,
QT/QTc間隔の延長のみがこの不整脈の原因ではないことから,薬剤による
「催不整脈作用」を評価できる急性モデルが望まれていた中,まず健常イヌを
用いて,ハロセン麻酔,完全房室ブロック及ぴプログラム電気刺激を組み合
わせ, QT/QTc間隔を延長させる薬剤である IKr阻害薬の安全性評価に有用
な感度および、特異性の高い急J性の不整脈誘発モテ事ルを確立した.さらに,こ
のモデルを発展させ慢性房室ブロックによる心肥大イヌを用いて, IKr阻害
薬による T
dPが健常心に比べて肥大心において誘発されやすいメカニズムを
心筋内電位マッピング法により検討した.その結果,肥大心では健常心に比
べて心室再分極時間及びその貫壁性の不均一性が増大していること並びに IK
r回害薬は健常心よりも肥大心においてこの両者をさらに増大させることを
証明した.また同時に, IKrブロ ッカ ーによる TdPは心筋肉の機能的伝導ブ
ロ ックに よるリエ ント リー性不整脈であることを証明した.これらの研究の
成果は,薬剤による催不整脈作用を QT/QTc間隔を指標として評価する従来
の手法に加え,そのメカニズムにまで踏み込んでより直接的に評価すること
を可能にし,将来の薬剤安全性評価に繋がるものであると考えられる.ま
I
C
HS7B)の策定にも 日本製薬工
た,本トピックに関する ICHガイドライン (
業協会から専門家として参加し,ガイドライン案の一部を執筆するなど,学
術的のみならず社会的貢献にも尽力している.
カ)奨励賞
かきはら
よりのり
笠原義典
所属機関
研究題目
昭和 3
1年 9月 1
5日生
帝人株式会社医薬開発研究所安全性研究部長
医薬品の非臨床安全性研究,特に遺伝毒性評価
制癌剤であるメソトレキセートの小核誘発機構に関する研究
業績の大要
nv
i
v
o
試
医薬品を含む環境中の化学物質の遺伝毒性をスクリーニングする i
験として多用されている小核試験について
有用性および適切なプロトコー
ルの検討がなされてきた中,単回投与での小核誘発性は極めて弱いものの,
多数回投与によって増強されると報告されていた葉酸代謝括抗剤であるメ ソ
トレキセートの小核誘発性の発現機序に関して検討してきた.その結果, 多
数回投与によって血中や標的臓器である骨髄液中への薬物の蓄積は認められ
ないが,骨髄細胞内へは蛋白質との結合が要因となった蓄積が起きることを
見出した.また,投与回数の増加に応じて標的酵素であるジヒドロ葉酸還元
酵素の活性を低下させ骨髄細胞内デオキシリボヌクレオチド3リン酸 (dNTP
s)プールの低下をもたらし,細胞内 DNAにアルカリ感受性部位を増加さ
せ,骨髄細胞の染色体異常頻度,ひいては小核の発現頻度を増加させること
を明らかとした.これらの結果により,従来用いられていた小核試験のガイドラ
インの一部が改訂されることにもつながっており,学術的にも高く評価される.
8
5
2
) 農薬の分野
ア)奨励賞
いしはら
あっし
石原亨
年2月2日生
昭和 42
所属機関
京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻助手
研究題目
アベナンスラミド類の生合成誘導機構に関する研究
業績の大要
エンバクのファイトアレキシンであるアベナンスラミドの生合成の全体像
を明らかにすると共に,アベナンスラミドの蓄積を誘導するエリシターの作
用について解析を行った.また,生合成されたア ベナンスラミドが細胞壁へ
取り込まれることを示し,化学的防御のみならず物理的防御にも関与してい
ることを示唆する結果を見出した.さらに,類似した桂皮酸アミドが他の植
物でもストレスに応答して集積することを示し
桂皮酸アミドの集積が植物
生体防御機構の一つであることを明らかにした.この研究は,植物生理の解
明にとって興味深いものであると共に
植物保護の面からも重要な知見であ
る.
イ)奨励賞
かさい
しんじ
葛西真治
昭和 45年4月2日生
所属機関
国立感染症研究所見虫医科学部主任研究官
研究題目
ピレスロイド剤抵抗性要因としてのシトクロム P450に関する研究
業績の大要
近年,殺虫剤の作用機作及び殺虫剤抵抗性機構の研究は分子レベルでの研
究が主流となり,その成果を薬剤創製にいかに結びつけるかが重要な課題と
なっている中,カやハエを中心としてピレスロイド剤抵抗性機構を研究し,
主要因であるチトクローム P450の活性増強の分子メカニズムを明らかにし
た.また,最近では,昆虫ゲノムプロジ、エクトの進展に合わせ,マイクロア
レーを用いたチトクローム P450の分子種別発現の検出などを手掛けて新規殺
虫剤開発の基礎を築こうと努力している.
ウ)奨励賞
にしわき
ひさし
西脇寿
昭和 47年 9月9日生
所属機関
近畿大学農学部博士研究員
研究題目
ネオニコチノイド系殺虫剤の構造活性相関と作用機構に関する研究
業績の大要
ネオニコチノイド系殺虫剤は世界中で害虫防除に使用されているが,化合
物と標的であるニコチン性受容体との相互作用がどのように殺虫活性と結び
っくのか十分には理解されていない現状において
イエバエ頭部から調製し
た膜画分に対するネオニコチノイドの結合活性(受容体結合活性)に関する構
造活性相関について検討した .その結果,受容体結合活性に影響を及ぼす芳
香環およびイミダゾリジン環部の構造因子を解明するとともに,受容体結合
86
(財)安評センター研究所報第 14巻
2004
活性が殺虫活性と良い相関を示すことを見出した.さらに,ニコチン性受容
体に対するネオニコチノイドのアゴニスト活性が受容体結合活性と密接に関
連することをも証明した.これらの成果はいずれもネオニコチノイドの構造
活性相関や作用機構に関する理解を深めるものであり,その意義は大きい.
エ)業績賞
おぞえ
よしひき
尾添嘉久
昭和 26年6月24日生
所属機関
島根大学生物資源科学部教授
研究題目
神経伝達物質受容体とそのリガンドに関する研究
業績の大要
これまで一貫 して,神経系のレセプターに作用する化合物の作用機構と構
造活性相関に関する研究を行ってきた中で, γーアミノ酪酸レセプターに作用
する種々の化合物の構造と活性との関係を解析し,作用部位のモデルを構築
した.さらに,昆虫と日甫乳動物における作用部位の構造の違いを利用して,
昆虫に選択に作用する殺虫剤をデザインできることを示した.最近では,ア
セチルコリ ンレセプターやチラミンレセプターについても石汗究しており,ア
セチルコリンレセプターに関しては,昆虫レセプターに作用する新規化合物
の発見や殺虫剤ジノテフランの作用機構研究を行った.チラミンレセプター
に関しては,レセプター遺伝子のクローニングと発現系の構築を行い,一方
ではチラミンアゴニストを初めて発見し,生物制御剤のターゲットとしての
可能性を示すなど,世界的にも優れた業績をあげている.
オ)論文賞
まなベ
あきお
真鍋明夫
昭和 3
3年 5月1
9日生
所属機関
住友化学工業株式会社農業化学品研究所主席研究員
研究題目
αー
C
y
a
n
o
a
c
e
t
a
m
i
d
e
誘導体の合成と殺菌活性:新規イネいもち病防除剤ジクロ
S
2
9
0
0)の創製
シメッ ト(
業績の大要
本論文は,新規イネいもち病防除剤ジクロシメットの発見に至る経緯をま
とめたものである.化合物の選抜,候補化合物の化学修飾,および生物活性
が詳細に示されている.背景には膨大な研究結果があると思われるが,それ
を論理立てである程度の量にまとめられており,高く評価される.
8
7
2
.第 1回かうの望月喜多司記念賞受賞者リスト
第1回(昭和 61
年度)
l 安全性の分野
所
属
績(研究題目)
受賞者
業績賞
田中寿子
東京慈恵会医科大学
ヒトにおける多剤併用療法の毒性に関する研究
奨励賞
真板敬三
(財)残留農薬研究所
農楽究並安全び性に毒試性験病
に おける老齢マウス・ラットの病理学的
研
理学的研究
戸
3ζ
•
賞
業
賞名
2 農薬の分野
受賞者
中北
所
属
宏│農林水産省食品総合研究所
戸.
3ζ
賞
業
績(研究題目)
貯穀害虫 くん蒸剤ホスフインの作用機構に関する研究
第2回(昭和 62
年度)
l安全性の分野
所
属
賞名
受賞者
業績賞
谷本義文
(財)実験動物中央研究所
安全性試験における血液学的臨床化学的成績の評価法
に関する石汗究
奨励賞
山中すみへ
東京歯科大学
有ン剤機リン剤中毒す に関する基礎的研究,特に低毒性有機リ
中毒に対 る解毒剤の効果とその問題点
戸
Pに
L
ふ
賞
業
忠実(研究題目)
2
.農薬の分野
賞名
受賞者
業績賞
若林
業績賞
上路雅子
所
攻
属
戸
3ζ
•
賞
業
績(研究題目)
三菱化成株式会社
環状イミド系除草剤の分子設計に関する研究
農林水産省農業環境技術研究所
アミドリ ン酸エステル系殺虫剤の生理活性および代謝に
関する研究
第 3回 (
昭和 6
3年度)
1.安全性の分野
賞名
受賞者
功労賞
大森義仁
東京慈恵会医科大学
奨励賞
山添
慶慮義塾大学医学部
康
所
属
:
;
i
ι
L
賞
業
績(研究題目)
N ヒドロキシアミノアレンの代謝的活性化と遺伝毒性お
よび発癌性
2.
農薬の分野
受賞者
辻
8
8
孝 三
所
属
l
住友化学工業株式会社
戸.
3ζ
賞
業
農薬の新しい製剤に関する研究
績(研究題目)
(財)安評センター研究所報第 14巻 2004
第4回(平成元年度)
1
.安全性の分野
賞名
受賞者
業績賞
井村伸正
北里大学薬学部
重金属の毒性 に関する生化学 的研 究
業績賞
宮罵宏彰
武田薬品工業株式会社
化学物質の腎毒性に関する実験病理学的研 究
奨励賞
伊沢義弘
帝人株式会社
活性型ビタミン D3
類緑化合物の安全性評価研究
所
属
戸
3ζ•
賞
業
績(研究題目)
2農薬の分野
所
属
賞名
受賞者
功労賞
鍬塚昭三
名古屋大学農学部
功労賞
後藤真康
(財)残留農薬研究所
功労賞
宮本純之
住友化学工業株式会社
業績賞
本田
博
大沢貫寿
東尽農業大学農学部
東京農業大学農学部
貯穀害虫の化学生態学的研 究
奨励賞
中山
日本曹達株式会社
コンピュータによる農薬の分子設計および構造活性相関
章
戸
3ζ,
賞
業
績(
研 究題目)
第 5回(
平成2年度)
1安全性の分野
所
戸
5
<
:
賞名
受賞者
業績賞
水谷正寛
(財)食品薬品安全センター
医薬品等化学物研
質の生殖 ・発生毒性試験における行動奇
形学的評価 法 の 究
業績賞
早津彦哉
岡山大学薬学部
食物中の変異原物質の検出と変異原性抑制物質の研究
奨励賞
村田共治
クミアイ化学工業株式会社
ヒト尿価酸法代に謝モデ
る
研
ル
動
究物を 用 いたプ リン類似物質の安全
性評
関す
属
賞
業
績(
研 究題目)
2
.
農薬の分野
所
米 山 勝 美 │明治大学農学部
安西弘行│明治製菓株式会社
属
;
;
;
;
.
:
x
.
業
受賞者
賞
績(研究題目)
病原菌毒素不活化酵素遺伝子導入による植物病害制御に
関する研究
89
第 6回(平成 3
年度)
1安全性の分野
属
所
5
t
ι
業
績(研究題目)
賞名
受賞者
奨励賞
寺本昭二
(財)残留農薬研究所
農薬の発生毒性の解奇析形および安全性試験において自然発
生する遺伝性先天 形の発見と系統育成に関する研究
奨励賞
柳井徳磨
三共株式会社
ゲッ歯類,家畜および霊長類の脳におけるミネラル沈着
病変の比較病理学的研究
賞
2農薬の分野
受賞者
宮本
所
属
徹│東京農業大学農学部
戸'ム
〈
ん
賞
業
績(研究題目)
含イオウ有機リン殺虫剤の活性化に関する研究
第7回(平成4年度)
1
.安全性の分野
賞名
受賞者
所
属
戸
3ζ•
賞
業
績(研究題目)
業績賞
遠藤
東京大学医学部
腎毒性発現機構に関する基礎的研究
業績賞
前 川 昭彦
(財)佐々木研究所
開食品添加物等生活問
る研究
2 農薬の分野
受賞者
丸
諭
所
属
F正
3ζ
賞
業
績(研究題目)
水系環境における農薬の動態に関する研究
│千葉県農業試験場
第8
回(平成5
年度)
1安全性の分野
賞名
受賞者
功労賞
柳田知 司
業績賞
小野
業績賞
鎌滝哲也
宏
所
属
戸
3乙.
賞
業
績(研究題目)
(財)実験動物中央研究所
(財)食品薬品安全センター
一般毒性試験への機能異常検査導入の研究
北海道大学薬学部
ヒトにお的研け究
る 毒性の予測を指向した薬物代謝酵素の比較
生化学
2
.農薬の分野
9
0
賞名
受賞者
業績賞
宮崎昭雄
大阪府立農林技術センター
殺す虫剤究
の 代謝および活性発現における絶対立体化学 γ関
る石牙
業績賞
寺岡
東JJ<農工大学農学部
プロトプラスト・細胞培養系を用いた農楽の楽理学的研
究
徹
所
属
戸
3ζ•
賞
業
績(研究題目)
(財)安評センター研究所報第 14巻
2004
第9回(平成6
年度)
1.安全性の分野
賞名
受賞者
所
戸
J
ι,
属
1
廷
ミ.
.
業
績(研究題目)
業績賞
高仲
正
昭和大学薬学部
化学物質の安全性におけ る体内動態と毒性 に関する研究
奨励賞
岩田
聖
(財)食品農医薬品安全性評価センター
マウス自然発生性心臓血管 内皮細胞増殖性病変に関する
研究
奨励賞
高橋有里
藤沢薬品工業株式会社
免と疫
機 抑制剤タクロリムス (FK506) の牒臓障害発現様式
序に関する研究
2
.農薬の分野
賞名
受賞者
r
告
所
深海
功労賞
松中昭 一
関西大学工学部
功労賞
渋谷正弘
日本農薬株式会社
功労賞
山本
功労賞
業績賞
戸
3乙
L
賞
業
績(研究題目)
立命館大学理工学部
功労賞
出
属
東京農業大学農学部
J
o
加1E
.Casi
d
a 米国カルホルニア大学
佐々木満
住友化学工業株式会社
有機リン化合物の合成と農薬活性に関する研究
第1
0回(平成7年度)
1安全性の分野
賞名
受賞者
所
属
戸
3乙.
賞
業
績(研究題目)
大阪府立公衆衛生研究所
薬物・毒物 ・発癌性物質の酸化的代謝に関与するヒト肝
チトクローム P450酵素の生化学的,毒性学的研究
木村正明
大正製薬株式会社
フットの諸臓器織学の死的研後変究化および肝臓の死後経過時間推
定に関する組
滝沢節子
日本ロシュ株式会社
業績賞
島田
奨励賞
奨励賞
力
生殖品的・発ア生プ毒ロ性試験における毒性発現機序の研究一内分
チ
泌子
2
.農薬の分野
所
属
~
ζ
賞
業
績(研究題目)
賞名
受賞者
業績賞
利部伸三
岐阜大学教育学部
ネオーコチノイド系化合物の合成と殺虫活性に関する研
究
業績賞
S
c
o
t
tJ
巴f
合巴y
コーネル大学昆虫学部
殺虫剤の抵抗性メカニズムに関する研究
9
1
第1
1回(
平成 8年度)
1 安全性の分野
1
t
ι
賞名
受賞者
所
功労賞
加藤隆一
慶感義塾大学名誉教授
奨励賞
近藤
靖
田辺製薬株式会社
ラット遺伝子地図の構築
奨励賞
滝沢達 也
麻布大学獣医学部
A
るC
降
E圧)剤阻害(剤
エ ナフプリル,アンジオ
フット動脈管に対す(
テンシン変換酵素
エナラプリル)の影響
奨励賞
斉藤昇二
住 友 化 学工業株式会社
無機性およびる有化機性パフメ タ 性
(
記
Zl
述
お
理
よ
論
び
にZ関
0)
す
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る用
研
い
究た魚
介類におけ 七学物質の生物濃縮
属
賞
業
績(研究題目)
2 農薬の分野
所
属
x
賞名
受賞者
業績賞
Pe
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so
r
業績賞
桑野栄 一
九州大学農学部
戸
賞
業
績(
研究題目)
イミダゾール系化合物の合成と生物活性に関する 研 究
第1
2回(
平成9年度)
1
.安全性の分野
92
~ζL
賞名
受賞者
業績賞
小野 寺 威
関東第一サー ビス株式会社
化学療法薬の毒性発現機構に関する研究
業績賞
福島 昭治
大 阪市立大学医学部
ラッ ト多
証
臓
明器発がん性中期検索法によるヒ素化合物発が
ん性の
奨励賞
土井孝良
武田薬品工業株式会社
ラ ットにおける薬剤の免疫毒性評価法に関する研究
奨励賞
築瀬
山之内製薬株式会社
ピーグル犬網膜電図の得体系成分の記録と解析
純
所
属
賞
業
績(研究題 目)
(財)安評センター研究所報第 14巻 2004
第1
3回(平成 1
0年度)
1.安全性の分野
賞名
受賞者
所
属
戸
:
x
賞
業
績(研究題目)
オリンパス光学工業株式会社
がん原物質の効す率的究
な検出のためのスクリーニングシス
テム開発に関 る研
村越正典
帝国臓器製薬株式会社
前立び腺に過退形縮成における性ホルモンの関的与研及究びその発生な
ら
過程に関する機能病理学
桑原
株式会社大塚製薬工場
末梢用輸液の血管障害性に関する実験的研究
功労賞
石館
奨励賞
奨励賞
基
孝
2
.農薬の分野
賞名
受賞者
業績賞
佐藤幸治
業績賞
堀越
奨励賞
西野友規
所
属
戸
3乙
.
賞
業
績(研究題目)
玉川大学農学部
プロトックス阻害型除草剤の作用機構と代謝活性化ド関
する研究
日本農薬株式会社
プロトックス阻害型除草剤耐性植物の作出に関する基礎
研究
日本たばこ産業株式会社
スズメノカタピラ防除における植物病原細菌の利用に関
する研究
~丁
・→
第1
4回(平成 1
1年度)
l 安全性の分野
賞名
受賞者
業績賞
祖父尼俊雄
オリンパス光学工業株式会社
準化学化物質安す全性評価のための遺伝毒性試験法の国際的標
に関る研究
奨励賞
水橋福太郎
クミアイ化学工業株式会社
と
農薬を中心とした化学物質の毒性発現機序に関する研究
その応用
奨励賞
加藤善久
静岡県立大学薬学部
P
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1
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薬
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内
酵
分
素
泌
誘
撹
導
乱
効
作
果
用
発
に
現
関
に
す
お
る
け
研
る
究
3
・
メ
奨励賞
古川忠司
ニ共株式会社
フットにおける肝薬物代謝酵素活性の日内変動に関する
研究
奨励賞
的場好英
住友化学工業株式会社
家庭用殺虫剤のリスクアセスメントモデルの開発
奨励賞
福井英夫
武田薬品工業株式会社
イヌ及びサルに機お構
ける末梢セロトニン (
5HT)受容体を
介した瞳吐発現
に関する研究
所
属
戸
3
ι
'
-
賞
業
績(研究題目)
2農薬の分野
所
績(研究題目)
賞名
受賞者
功労賞
藤田稔夫
京
(
エ
都
ミ
大
ー
学
ル
名
プ
誉
ロ
教
ジ
授ェクト代表)
農薬の生理活性と化学構造との相関関係に関する研究
功労賞
江藤守線
九州女子大学・九州女子短期大学
昆虫制御化学の研究
功労賞
栗原紀夫
京都大学名誉教授
有機塩素系化を合物心の代謝て反)応の研究 (
BH
Cおよびメトキ
シクロ -Jレ 中 と し
功労賞
松村文夫
D
U
e
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V
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l
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o
g
r
y, 農薬の作用と抵抗性の機構に関する研究
業績賞
片山新太
名古屋大学大学院
属
戸
3ζ•
賞
業
土壌中の農薬分解に関与する微生物群の構造と挙動
9
3
第 15回(平成 1
2年 度 )
1
.安全性の分野
賞名
所
受賞者
属
A
A
ι
賞
業
績(研究題目)
功労賞
榎本
B
事
(財)食品農医薬品安全性評価センター
ヒトのガンを引き起こす化学物質の探求
発癌試験を用いて
業績賞
山崎
i
羊
関西学院大学理学部
メカニズムの研究をベースとした発がんリスクアセスメント
- Gapj
u
n
c
t
i
o
nを中心として
奨励賞
吉田
緑
(財)佐々木研究所
発二段癌階
修フット子宮発癌モデルを用いての各種化学物質の
飾作用に関する研究
2.
農薬の分野
賞名
所
受賞者
5
正
属
ζ
賞
業
績(研究題目)
東京農工大学農学部
ブラシノステロイドを中心とした植物成長調節物質に関
する研究
神戸大学農学部
薬物代謝酵素導入植物の作出とその残留農薬低減効果
田村 勝 徳
東京大学分子細胞生物学研究所
農薬の微生物代謝とその分解酵素の進化的解析
新木康夫
日本バイエルアグロケム株式会社
E
m
d
f
e
1
c
佃t
i
c
o
e
n
n
o
l
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f
n
M
t
o
v
f
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P
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h
b
y
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o
m
l
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e
X
u
1
1
m
I
S
b
y
m
n
t
m
h
e
s
i
s
t
w
些
du
r
叩
i
n
g
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業績賞
安部
奨励賞
乾
奨励賞
論文賞
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第1
6回(平成 1
3年度)
I安全性の分野
所
5
正
属
賞名
受賞者
功労賞
伊東信行
名古屋市立大学名誉教授
動物による発癌物質検出方法の簡便化とそれによる発癌
性の評価に関する研究
業績賞
堀井郁夫
日本ロシュ株式会社
毒性学・病理学領域における全毒性作評用価発へ現の に関する諸研究
およびそれらの創薬時の安
評
応用展開
奨励賞
宇野
奨励賞
田中剛太郎
洋
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賞
業
績(研究題目)
および腸管切除による消化吸収障害モデルの実験病理
的研究
寸
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帝人株式会社
大鵬薬品工業株式会社
抗アレルギー剤トシル酸スプフタストの代謝物によって
選択的に誘発される小脳穎粒細胞死の神経病理学的研究
2農薬の分野
9
4
所
属
賞名
受賞者
業績賞
本山直樹
千葉大学園芸学部
農薬の安全性に関わる環境科学的研究
業績賞
赤松美紀
京都大学大学院
農薬の三次元構造活性相関に関する研究
奨励賞
池田朋子
筑波大学
論文賞
都築
住友化学工業株式会社
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三
守
法
一
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戸
3ζ•
賞
業
績(研究題目)
GABAレセプターをターゲットとする殺虫剤の電気生理
学的研究
熱力学的手法を用いた農薬の蒸気圧予測法
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(財)安評センター研究所報第 1
4
巻 2
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4
第1
7回(平成 1
4
年度)
1.安全性の分野
所
三善隆広
│富山化学工業株式会社
業
A
x
属
受賞者
賞
績(研究題 目)
ラット肝内胆管の正常発生及び異常発生に関する病理組
織学的研究
2
.農薬の分野
所
属
賞名
受賞者
業績賞
山本広基
島根大学
土壌環境中における農薬の微生物生態影響評価に関する
研究
業績賞
石井康雄
独立行政法人農業環境技術研究所
残留農薬の効率的な分析法の開発に関する研究
奨励賞
稲生圭哉
環境省環境管理局
水田用農薬の挙動予測モデルの開発
論文賞
村田伸治
日本農薬株式会社
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賞
業
績(研究題目)
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第四 回(平成 1
5年度)
l安全性の分野
所
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属
賞名
受賞者
賞
業
績(研究題目)
功労賞
佐藤哲男
千葉大学名誉教授
業績賞
野村
護
株式会社イナリサーチ
業績賞
山添
康
東北大学大学院
薬物代謝変動の分子機序と薬物毒性
奨励賞
森田文雄
大鵬薬品工業株式会社
海馬神経細胞の変性・壊死に関する毒性学的研究
奨励賞
山本恵司
武田薬品工業株式会社
楽剤によ安る全心性電薬図理
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研
c間
究隔延長および心室性不整脈
に関する
奨励賞
笠原義典
帝人株式会社
で
トキシコロジーの国際的調和
研
臨
床
究生化学的データ解析からみた病態機能異常との相関
医薬あ 品の非臨床安全性研究、特に遺伝毒性評価 制癌剤
るメソトレキセートの小核誘発機構に関する研究
2
.農薬の分野
賞名
受賞者
業績賞
尾添嘉久
島根大学
神経伝達物質受容体とそのリガンドに関する研究
奨励賞
石原
京都大学大学院
アベナンスラミド類の生合成誘導機構に関する研究
奨励賞
葛西真治
国立感染症研究所
ピレスロイド剤抵抗性要因としてのシトクロム P
450に関
する研究
奨励賞
西脇
近畿大学
ネオニコチノイド系殺虫剤の構造活性相関と作用機構に
関する研究
論文賞
真鍋明夫
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寿
所
属
住友化学工業株式会社
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賞
業
綴(研究題目)
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) の創製
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6
(
財)安評セン ター 研 究 所 報 第 1
4巻
2
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0
4
w
.平成 15年度における海外出張,研修,講師派遣
および視察・見学者の記録
1
)海外出張・研修
(
1
)第一試験室第二毒性グループ清基城第二試験室薬理薬効グループ中野覚
サル腸骨動脈ステント留置手術および解剖
訪問先:中国広東省
康達実験動物科技有限公司研究所
(平成 15年7 月 25 日 ~8 月 1 日, 8 月 22 日 ~8 月 29 日)
(
2
)第二試験室薬効グループ三浦大作
ノTッチクランプロボ
訪問先:ドイツ
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8500使用のための講習
チューピンゲン
Flyion社(平成 1 6年2 月 8 日 ~1 4 日 )
(
3
)第二試験室長庄子明徳第二試験室薬理薬効グループ藤原正孝,大平永敏
中国サル実験・生産施設の調査・視察
訪問先:中国江蘇省
中科実験動物有限公司
四川省
医学科学院動物研究所
雲南省
中科院昆明動物研究所試験動物中心
(平成 15年 11 月 25 日 ~12 月 4 日)
(
4
)副 理 事 長 榎 本 異 第 一 試 験 室 第 三 毒 性 グ ル ー プ 小 林 克 己
中日韓GLP
教育セミナー招聴
訪問先:中国遼寧省藩陽(平成 15 年 11 月 28 日 ~ 12月 4 日)
2
)講師派遣
(
1
)第一試験部長村田共治
0回日本トキシコロジー学会学術年会市民公開セミナー
第3
演 題 :食品添加物は安全か?
場所:グリーンホール相模大野
(
2
)第一試験室第三毒性グループ小林克己
慶麿義塾大学総合政策学部非常勤講師
講座:多変量データ解析
静岡県立農林大学校非常勤講師
講座:畜産学概論
3
)視察,見学
1
)平成 1
5年6月3日
側理研グリーン・ゴルフ場管理会社一行
2
)平成 1
5年7月24日
埼玉県越谷市農業協同組合一行
1
5名
3
)平成 1
5年 1
0月9日
三ケ日町農業協 同組合一行
27名
4)
平成 1
5年 1
1月1
9日
愛知県J
Aひまわり
67名
いちご部会一行
5
)平成 1
5年1
2月1
2日 福岡県J
A筑前あさくら普通作部会役員会一行
3
0名
名
1
5
6)平成 1
6
年3
月12日
愛知県美和町露地野菜研究会一行
3
0
名
7)平 成 16年 3月 23日
愛 知 県 豊 橋 市 農 業 委 員 会一 行
22名
9
7
編集後記
平成 1
5年9月 1
4日,財団法人
食品農医薬品安全性評価センター(安評
センター)はお蔭様を持ちまして創立 25周年を迎えることが出来まし
5年経過
た。創立当時最新の技術を持って建設された動物飼育施設も、 2
した現在、一部に老朽化が見られるようになり、平成 1
7年5月本格的な
稼動を目指して、一部に実験室を備えた新たな動物飼育施設の建設が始
まりました。本号では、例年の記事に加えて新動物飼育施設の概要をご
紹介させて頂く記事を掲載いたしました。化学物質の総合的な試験研究
施設を目指している安評センターにとっては、最も重要な施設が新たに
誕生するこの期に役職員一向、気持ちを新たにして、皆様のご愛顧にお
応えする所存でございます。
今後ともよろしくお願いいたします。
(今井清記)
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青
編集委員長
今井
編集委員
村田共治
志賀敦史
柴田典昭
益森勝志
二浦大作
牧野江梨子
小川昌寿
4
砂次巻の予定.
安評セ ンタ一平成 1
6年度学術講演会より
I 演題「遺伝子改変マウスを用いた
化学物質の癌原性評価:その現状と問題点」
講師:東京農工大学大学院共生科学技術研究部
教授
2
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寅題「核内受容体と肝毒性」
講師:東北大学大学院薬学研究科
教授
三森国敏先生
山添
康先生
財団法人食品農医薬品安全性評価センター研究所報
第1
4巻 (
2
004年)
発行:平成 1
6年 1
1月
発行者 :望 月 信 彦
印刷:株式会社杉山印刷
電話 ω53)
484
-1
1
71
附
0
財団法人
食品農医薬品安全性評価センター
(略称安評センター )
ふ〈でちょうしおしんでんあざあらはま
干 437
・1
213 静岡県磐田郡福田町塩新田字荒浜 582-2
電 話(
0538)58-1266
附
0538)58-1393,
1293,
1343
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59-1170
東京事務所
干 110-0015 東京都台東区上野 218-7
共同ビル (
上野)
501号室
電 話(
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3837-2340
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