BRSC第18回学術講演会 2011年2月18日 医薬品における 遺伝毒性不純物の管理と安全性評価 本間 正充 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験センター変異遺伝部 本日の講演内容 遺伝毒性不純物問題の背景 遺伝毒性不純物に関する欧米のガイドラインと管理の方法 Viracept事件(遺伝毒性不純物の特殊なケース) ICH-M7ガイドラインの進捗状況と今後の展望 遺伝毒性とリスク評価 遺伝毒性不純物問題の背景 ICHガイドライン(Q3A, Q3B)の問題点 TTC(毒性学的懸念の閾値)による遺伝毒性物質のリスク管理の 進展 遺伝毒性不純物に関する欧米のガイドラインの発表 EMEAガイドライン”Guideline on the limits of genotoxic impurities“ (2006.6) FDAドラフトガイドライン”Genotoxic and Carcinogenic Impurities in Drugs Substances and Products: Recommended Approach and Acceptable Limit”(2008.12) 2010年6月のICHタリン会議でトピック化承認 医薬品の不純物に関するICH品質ガイドライン ICH Q3A: 原薬の不純物に関するガイドライン ICH Q3B: 製剤の不純物に関するガイドライン 原薬 最大一日投与量 構造決定が必要な閾値 安全性確認が必要な閾値 ≦2 g >2 g 0.10% 又は 1 mg/日の低い方 0.05% 0.15% 又は 1 mgの低い方 0.05% <1 mg 1 mg ~10 mg 10 mg~2 g >2 g 1.0% 又は 5 μg/日の低い方 0.5% 又は 20 μg/日の低い方 0.2%又は2 mg/日の低い方 0.10% 製剤 <10 mg 10 mg ~ 100mg 100 mg ~ 2 g >2 g 1.0% 又は 5 0 μg/日の低い方 0.5%又は200 μg /日の低い方 0.2%又は3 mg/日の低い方 0.15% Q3A、Q3Bの不純物の構造決定、安全性確認の ためのフローチャート c)毒性の非常に強 い不純物に関して は、これよりも低い 閾値が適当な場合 もある。 医薬品の不純物に関するICH品質ガイドライン Q3A、Q3Bの問題点 • 遺伝毒性不純物と判断された場合、どこまで減らせばいい か不明である。 • 不純物の毒性試験に対して、単離したものを使うことが強く 推奨されていない。従って、不純物濃度が不十分であるた めに陰性と判断される場合がある。 • 臨床試験で使用するものについての記載がない。 医薬品の不純物に関するICH品質ガイドライン Q3A、Q3Bの問題点 たとえば、Q3B(製剤)では 1日 2gの製剤を服用し、その0.15%に遺伝 毒性不純物が含まれるとしても許容される。 最大3mg/dayの遺伝毒性物質を暴露 (0.06mg/kg/day:体重50kg) DENは0.02mg/kg/dayでラットの50%にがんをつくる。 医薬品の不純物に関するICH品質ガイドライン Q3A、Q3Bの問題点 • 遺伝毒性不純物と判断された場合、どこまで減らせばいい か不明である。 • 不純物の毒性試験に対して、単離したものを使うことが強く 推奨されていない。従って、不純物濃度が不十分であるた めに陰性と判断される場合がある。 • 臨床試験で使用するものについての記載がない。 医薬品の不純物に関するICH品質ガイドライン Q3A、Q3Bの問題点 7.不純物の安全性の確認(Q3A) 7.不純物の安全性の確認 “試験は、対象とする不純物を含む原薬を用いて行うが、 単離した不純物を用いて行ってもよい。” 医薬品の不純物に関するICH品質ガイドライン Q3A、Q3Bの問題点 エームス試験は遺伝毒性不純物を検出するに十分な 感度を持っているのか? エームス試験に用いられる陽性化合物とその濃度 2-aminoanthracene sodium azide 2-nitrofluorene 9-aminoacridine MMS 1.0 μg/plate 1.0 μg/plate 10 μg/plate 75 μg/plate 1,000 μg/plate 医薬品の不純物に関するICH品質ガイドライン Q3A、Q3Bの問題点 エームス試験は遺伝毒性不純物を検出するに十分な 感度を持っているのか? 安全性確認が必要なレベルの不純物(0.15%,Q3B)として エームス陽性化合物が製剤中に含まれる場合。エームス試 験最高用量5 mg/plateとして、7.5 μg/plateの不純物が含 まれると計算される。 2-aminoanthracene sodium azide 2-nitrofluorene 9-aminoacridine MMS 1.0 μg/plate 1.0 μg/plate 10 μg/plate 75 μg/plate 1,000 μg/plate 検出可能 検出可能 おそらく検出可能 検出不可能 検出不可能 医薬品の不純物に関するICH品質ガイドライン Q3A、Q3Bの問題点 • 遺伝毒性不純物と判断された場合、どこまで減らせばいい か不明である。 • 不純物の毒性試験に対して、単離したものを使うことが強く 推奨されていない。従って、不純物濃度が不十分であるた めに陰性と判断される場合がある。 • 臨床試験で使用するものについての記載がない。 医薬品の不純物に関するICH品質ガイドライン Q3A、Q3Bの問題点 7.不純物の安全性の確認(Q3A) 7.不純物の安全性の確認 本ガイドラインは、臨床試験段階で使用する新原薬に適 用することを意図したものではないが、本ガイドラインに示 した閾値は、開発の後期の段階において実生産を反映し た工程で製造された原薬ロット中に認められた新たな不 純物を評価する上でも有用である。 医薬品の不純物に関する欧米のガイダンス EMEAガイダンス 2006年6月 EMEAガイダンス Q&A 2010年9月(最新版) 医薬品の不純物に関する欧米のガイダンス FDAガイダンス PARMAポジションペーパー 2006年 2008年12月 医薬品の不純物に関する欧米のガイドラインの特徴 構造活性相関((Q)SAR)による不純物の遺伝毒性評価 上市医薬品の遺伝毒性不純物は一日最大暴露量として10-5 の生涯発がんリスクを基としたTTCレベル(1.5μg/day)を目 標値とするが、臨床開発中は、この値を超えてもいい(試験 期間に応じた段階的TTC)。 作用機序や科学的根拠の重要度から遺伝毒性・発がん性リ スクの特徴を明らかにする。追加試験等によって、閾値メカ ニズムの証拠があれば別に許容一日暴露量を基に規格を決 定できる。 毒性学的懸念の閾値 (Thresholds of Toxicological Concern ;TTC) すべての化学物質について、その値以下では明 らかな健康被害がないとするヒトでの包括的な実 質安全性閾値(Virtual Safety Dose; VSD)の設 定について述べた概念。 閾値 閾値を問わない化合物 (遺伝毒性物質) TTC 用量 安全性量 実質安全性量(VSD) 反応 閾値あり化合物 (非遺伝毒性物質) 反応 反応 遺伝毒性閾値とTTC 閾値なし化合物 (遺伝毒性物質) 閾値なし 用量 安全性量? 用量 TTC算出の根拠 Distribution of VSD Relative Frequency Tumor Occurrence 0.8 0.6 50 0.4 0.2 re ea Lin m fro on i t ola ap xtr TD S ltiMu 10-6 el od eM g ta 0 VSD(TD 50) VSD(LMS) 63 %le 85 %ile 1.5 μg/day 0.15 ug/day μg /day TD50 (≒0.0025 ug/kg/day) Dose 実際のリスク評価の際のユニットリスクの算 定には、線形マルチステージモデルなどの 数理モデルによるフィッティングを行って求 められるが、TD50からの直線外挿により、 VSD(10-5~10-6リスク)を求め、その分布を 解析。 Distribution of TD 50 (10-6 from TD 50) Log10 Dose 発がん性が最も感受性の高い毒性エンドポイ ントであるという仮定に基づいて、発がん性 データベース(Carcinogenic Potency Database: CPDB)から得られるTD50データ の分布解析から求められている。 TTCレベル • Kroes et al., Food and Chemical Toxicology, 38, 255-312, 2000 • ILSI Europe, Threshold of Toxicological Concern, 2005 0.15μg/person/day ≒0.0025μg/kg・bw/day ≒0.05 ppb ¾ 未知の化学物質の10%が発がん物質と仮定して、その99%が10-6の 発がんリスクで担保される設定閾値 ¾ 食事中に低レベルで存在する遺伝毒性/要注意構造を持つ発がん物 質 ¾ 重要コホート(Cohort of Concern; COC)は除く 1.5μg/person/day ≒0.025μg/kg・bw/day ≒0.5 ppb ¾ 未知の化学物質の10%が発がん物質と仮定して、その99%が10-5の 発がんリスクで担保される設定閾値 ¾ 食事中に低レベルで存在する上記以外の発がん物質 ¾ 医薬品に含まれる遺伝毒性/要注意構造を持つ発がん物質(COCは 除く) 構造アラートにより強力な発がん物質であってTTCアプ ローチが不適切なもの (Cohort of Concern) アフラトキシンAflatoxin様化合物 アゾキシAzoxy化合物 ニトロソNitroso化合物 2,3,7,8-dibenzo-p-dioxinおよびその類似体(TCDD) ステロイド類 許容リスク (発がん性の有無を問わない) 飲料水(WHO): 飲料水(US-EPA): 香料(JECFA): 間接添加物(FDA): 10-5 10-6~10-4 1.5μg/day 1.5μg/day 日本での死因の生涯リスク(中央環境審議会 報告書より引用) 交通事故 水難 火災 自然災害 6×10-3(千分の6) 7×10-4(1万分の7) 6×10-4(1万分の6) 3×10-5(10万分の3) 落雷 2×10-6(100万分の2) 日常生活で摂取、暴露しうる発がん物質のレベル 摂取・暴露源 発がん物質 1日推定 摂取量 発がん性 (IARC) 水道水 Bromodichloromethane Chloroform 13 μg 17 μg 2B 2B 大気、食事 TCDD 5.4 pg 1 コーヒー Catechol Caffeic acid 1.3 mg 23.9 mg ピーナッツ Aflatoxin B1 18 ng 1 ポテトチップス Acrylamide 40 μg 2A 食品添加物 AF-2(現在使用禁止) 4.8 μg (当時) 2B 2B 2B TTC利用の背景 極微量の化学物質の暴露は通常有害ではないと広く容認されていること 閾値問題の回避 文明社会で生活する限り化学物質に対する健康リスクはある程度許容す べきとの考え 化学構造的に関連した化学物質の作用を予測する為の大量の既存の毒 性データの存在 実験動物、時間、財源等を健康への危険性がより強い物質の試験と評価 に集中させる ある意味では楽観主義的? 医薬品中の遺伝毒性不純物への段階的TTCの適用 段階的TTC 各曝露期間(臨床開発で通常用いられる期間)の1日許容摂取量(μg/日) • • Muller et al. 2006 60~70年生涯リスク→1年間のリスク: X 65 10-5発がんリスク →10-6発がんリスク :X 0.1 ≤1ヶ月 >1-3ヶ月 >3-6ヶ月 >6-12ヶ月 > 12ヶ月 120 40 20 10 1.5 EMEA, 2008 単回投与 ≤1ヶ月 ≤3ヶ月 ≤6ヶ月 ≤12ヶ月 >12ヶ月 120 60 20 10 5 1.5 FDA, 2008 < 14日 14日~1ヶ月 1~3ヶ月 3~6ヶ月 6~12ヶ月 > 12ヶ月 120 60 20 10 5 1.5 ベネフィット無し: 10-6発がんリスク ベネフィット有り: 10-5発がんリスク ICH M3 (R2) 探索型臨床試験ガイドライン(一部抜粋) Clinical: Dose to be Administered Start and Maximum Doses Maximal and starting doses Approach 1: can be the same but not Total dose ≤ 100 µg (no exceed a total accumulated inter-dose interval dose of 100 µg limitations) AND Total dose ≤ 1/100th NOAEL and ≤1/100th pharmacologically active dose (scaled on mg/kg for i.v. and mg/m2 for oral) Approach 2: Maximal daily and starting doses can be the same, but Total cumulative dose ≤ 500 not exceed 100 µg. µg, maximum of 5 administrations with a washout between doses (6 or more actual or predicted half-lives) AND each dose ≤ 100 µg AND Pharmacology In vitro target/ receptor profiling should be conducted Appropriate characterization of primary pharmacology (mode of action and/or effects) in a pharmacodynamically relevant model should be available to support human dose selection. In vitro target/receptor profiling should be conducted Appropriate characterization of primary pharmacology (mode of action and/or effects) in a pharmacodynamically relevant model should be available to support human dose selection. each dose ≤ 1/100th of the NOAEL and ≤ 1/100th of the pharmacologically active dose Non clinical: General Toxicity Studiesa Extended single dose toxicity study (see footnotes c and d) in one species, usually rodent, by intended route of administration with toxicokinetic data, or via the i.v. route. A maximum dose of 1000-fold the clinical dose on a mg/kg basis for i.v. and mg/m2 for oral administration can be used. 7-day repeated-dose toxicity study in one species, usually rodent, by intended route of administration with toxicokinetic data, or via the i.v. route. Hematology, clinical chemistry, necropsy, and histopathology data should be included. A maximum dose of 1000-fold the clinical dose on a mg/kg basis for i.v. and mg/m2 for oral administration can be used. Genotoxicityb / Other Genotoxicity studies are not recommended, but any studies or SAR assessments conducted should be included in the clinical trial application. For highly radioactive agents (e.g. PET imaging agents), appropriate PK and dosimetry estimates should be submitted. Genotoxicity studies are not recommended, but any studies or SAR assessments conducted should be included in the clinical trial application. For highly radioactive agents (e.g. PET imaging agents), appropriate PK and dosimetry estimates should be submitted. *<100μg/day、5日間であれば遺伝毒性試験の必要なし 遺伝毒性不純物のリスク評価方法 ステップ1:予期される不純物(構造的に特定され、容易に予測されるもの)の 要注意構造を特定し、分類する。 ステップ2:分類に基づいたDecision Treeにより不純物の証明ストラテジーを 確立する。 ステップ3:不純物の許容限界を確立する。 ¾ (段階的)TTCによる管理 ¾ PDE (Permitted Daily Intake) による管理(閾値機序が確立さ れた場合) ¾ 通常の不純物として管理 遺伝毒性不純物の分類と管理方法 不純物分類 予想される 管理方法 定義 カテゴリー 1 遺伝毒性発がん物質 TCC or PDE カテゴリー 2 遺伝毒性を有するが発がん性不明 カテゴリー 3 遺伝毒性不明、親化合物関連しないアラート構 造を有する カテゴリー 4 遺伝毒性不明、親化合物と類似したアラート構造 を有する Q3A, Q3B カテゴリー 5 構造アラートの特徴なし 不純物リスク評価のための Decision Tree (Muller et al., Regulatory Toxicology and Pharmacology, 44, 198-211, 2006) クラス1: 遺伝毒性を有する 発がん物質 クラス2: 遺伝毒性を有するが、 発がん性不明 クラス3: 親化合物に関連 しない要注意構造 クラス5: 要注意構造がない はい クラス4: 親化合物に関連した 要注意構造 不純物の除去? 遺伝毒性不純物 閾値機序? 不可能 確立されている リスク評価? いいえ 遺伝毒性を 有するAPI 確立されていない いいえ 限られたデータ 段階的TTC PDE (たとえばICH Q3C) 通常の不純物 としての管理 (ICH Q3A, Q3B) EMEAとFDAのガイドラインの違い Decision Tree EMEAガイダンス FDAガイダンス 付録 A:決定樹フローチャート 遺伝毒性の閾値関連 (threshold-related)メカニズムの ための十分なエビデンス 遺伝毒性不純物 試験データにより示される懸念、 例えばエームス試験陽性 /DNA 反応性 いいえ 関連 ICH の安全性確認の必要な閾値を超える量 または関連 ICH の安全性確認の必要な閾値未満だが 警告部分構造がある PDE*を算出 (NOEL/UF*分析): 安全な曝露量か? はい 遺伝毒性不純物 を含有しない 代替物を使用 追加措置 なし 回避できない 遺伝毒性不純物 は存在するか? いいえ いいえ 代替合成経路を 考える はい いいえ 不純物形成を防ぐことが可能か いいえ 不純物の量を遺伝毒性および 発がん性不純物* (1.5 µg/日の閾値または表 1 を参照) の安全性確認の必要な閾値以下の 1 日曝露量に関連するレベルに低減する 合理的に 実行可能な限り 低い濃度か? 適切な遺伝毒性 試験の実施 試験結果/科学的根拠の 重要度から遺伝毒性があると 考えられる不純物 はい 推定摂取量が TTC 値*1.5 μg/日 を超えるか?2) 許容 1 日曝露量を基に 規格を設定 はい いいえ 摂取濃度 1.5 μg/日超は許容 3) できるか? いいえ 閾値メカニズムの十分な 証拠があるか いいえ はい 適用された 使用を制限また は拒否 追加対策不要 安全濃度 まで低減 はい 無視できる リスク 1) いいえ はい はい 合理的に 低い濃度まで 低減 不純物の同定 はい リスク-ベネフィット比を基に 予定使用法を制限または却下する ことを考える 無視できる /許容リスク 1)強力な発癌物質(本文参照)と構造関連性がある不純物は TTC アプローチから除外する -5 2)発癌性データが入手可能な場合:摂取量は癌生涯リスクの算出値 10 を超えるか? 3) ケースバイケースの評価には治療期間、適用、患者集団などを取り入れる必要がある(本文参照) *)略語:NOEL/UF-無毒性量/不確実性係数、PDE-許容 1 日摂取量、TTC-毒性学的懸念閾値 * 遺伝毒性および発がん性不純物の安全閾値によるアプローチは、化合物特有のリスク評価を行える適切 なデータがある化合物や、SAR から発がん性が極めて強い化合物には適応できない。さらに、このアプ ローチは投与経路(経皮、眼内投与)によっては、曝露閾値決定の由来になったデータベースの中に当 該経路を使った試験がないため、不適切な場合がある。 EMEAとFDAのガイドラインの違い 推奨されるin silico(SAR)モデル EMEA:DERK, MCASE FDA:DEREK, MDL-QSAR, MC4PC(MCASE) In Silico による遺伝毒性の予測システム EXPERT RULE-BASED DEREK for Windows (Deductive Estimation of Risk from Existing Knowledge:DEREK):化合物の構造からその毒性を 予測する知識ベース(Knowledge Base)のエキスパートシステム。 多くの知見から得られた部分構造活性相関(SAR)の 経験則をル ール化した知識ベースにより、定性的毒性予測を行う。 MultiCase (Multiple -Computer Automated Structure Evaluation:MCASE):化学物質の構造と特徴を表す構造記述 子と、多数の部分的構造(Biophore)を機械的に検出し、ベイズ 統計理論を用いて毒性に関与する構造記述子を選別し、毒性を 予測する。 QSARBASED ADMEWORKS (AWORKS) :化学物質の構造を多数のパラメー タ(数値データ)に変換し、毒性と相関性の高いパラメータを用い て、多変量解析、パターン認識により毒性を予測する。富士通で 開発 TOPKAT、MDL-QSARはこの分類に入る。 DEREK, MCASE, AWORKSのエームス試験予測率 一般化学物質に対して DEREK Total + 19 7 26 - 21 159 159 180 40 166 206 In silico + - Sensitivity 73.1 % Specificity 88.3 % Concordance 86.4 % Ames Ames In silico + - MCASE Total + 13 7 20 - 13 133 159 146 40 140 166 Sensitivity 65.0 % Specificity 91.1 % Concordance 88.0 % AWORKS Ames In silico + + - 19 Total 7 26 54 124 159 178 73 131 204 Sensitivity 73.1 % Specificity 69.7 % Concordance 70.1 % Hayashi et al., Mutat Res, 588, 129-135 (2005) DEREK, MCASE, AWORKSのエームス試験予測率 医薬品に対して Tissue Metabolite Simulator (TIMES)による代謝物と その遺伝毒性の予測 Developed by Dr. Mekenyan in Bourgus University in Bulgaria (Setafimova et al., Cem Res Toxicol, 20, 662-676, 2007) Tissue Metabolite Simulator (TIMES) EMEAとFDAガイダンスの比較 FDA EMEA 新規医薬品および製剤への適用 + + 既存医薬品への適用(条件付き) + + 構造活性相関(SAR)を活用した遺伝毒性不純物の同定 + + 初期遺伝毒性評価へのAmes試験の利用 + + 場合によっては初期遺伝毒性評価にin vitroほ乳類細胞試験の評価も必要 + - 遺伝毒性の可能性にある不純物をできるだけ単離して試験を行う + + 遺伝毒性不純物の遺伝毒性の初期評価を行う際にはその不純物の適切なレベル明らかにする - + 追加の遺伝毒性試験が必要な場合の状況の概要 + + +/- + 遺伝毒性不純物の生成をできるだけ抑えることの試み + +/- 遺伝毒性不純物をできるだけ最低限に管理すること、およびその存在を容認 + + 上市医薬品へ許容しうる不純物の閾値は1.5ug/dayとする + + 臨床開発中の医薬品に関しては段階的TTCを適用 + + 小児に対しては追加の補正ファクターを適用 + - 構造が類似する遺伝毒性不純物の総量に対しては適正暴露閾値、もしくはTTCを適用 + + 遺伝毒性に閾値が存在した場合のPDEの計算 本日の講演内容 遺伝毒性不純物問題の背景 遺伝毒性不純物に関する欧米のガイドラインと管理の方法 Viracept事件(遺伝毒性不純物の特殊なケース) ICH-M7ガイドラインの進捗状況と今後の展望 遺伝毒性とリスク評価 ロッシュ社の抗HIV薬ビラセプト錠(nelfinavir mesilate)へのEMS混入問題 2007年5月18日:錠剤から異臭がするとの苦情が患者から寄せられる (スペイン) • 2007年6月4日:高い濃度のEMS(ethymethanesulfonate)が混入し ていることが判明 • 対象となる製品ロットの分析 EMS:強い遺伝毒性物質(アルキル化剤)、実験動物で発がん性、催奇形性 2007年6月5日:EMEAが製品の回収を指示 2007年3~5月の製品ロットで一錠当たり約920ppmの混入 O S O O 患者平均一日最大2.75mgのEMSを約3ヶ月間摂取 ~4.5万人の患者(29カ国、フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガ ル、スペイン、英国を含む)が暴露 • 上市薬のTTCレベル:1.5µg • 10-5発がんリスク、3ヶ月以下の段階的TTCレベル:200~400µg EMS 患者の遺伝毒性発がんリスクは? EMSのリスク評価のための非臨床試験プログラム (2007年7月にEU当局との合意の上で実施) 試験1: EMSの28日間反復毒性試験(ラット) 目的: 他の臓器への影響評価、NOAELの算定 試験2: EMSとENUの7日間連続投与による骨髄 での小核試験(マウス) 目的: 低濃度域でのEMSとENU染色体異常誘 発性の用量相関性の比較検討 試験3: EMSとENUの28日間連続投与による MutaMouseでの遺伝子突然変異試験(肝 臓、骨髄、胃) 目的: 低濃度域でのEMSとENU遺伝子突然変 異誘発性の用量相関性の比較検討 試験4: ヒトを含む種間でのEMSのDMPKの比較 目的: 患者に対するEMSの暴露評価 試験結果(I);閾値の証明 TG遺伝子突然変異試験 小核試験 骨髄 骨髄 肝臓 閾 値? Gocke, E. and Muller, L., Mutat Res, (2009) 胃 試験結果(II);遺伝毒性発現のMOE X455 Lutz Müller, Elmar Gocke, Thierry Lavé, Thomas Pfister, Tox Let (2009) Daily Dose (mg/kg/day) X370 X30 Cmax (µM) Daily Exposure (AUC; µM*h) Decision Treeに基づく不純物 EMSのリスク評価 (発がん性不明で、遺伝毒性に閾値があると仮定) EMEAガイダンス 遺伝毒性の閾値関連 (threshold-related)メカニズムの ための十分なエビデンス 遺伝毒性不純物 試験データにより示される懸念、 例えばエームス試験陽性 /DNA 反応性 PDE*を算出 (NOEL/UF*分析): 安全な曝露量か? はい 遺伝毒性不純物 を含有しない 代替物を使用 いいえ 追加措置 なし 回避できない 遺伝毒性不純物 は存在するか? いいえ 安全濃度 まで低減 はい 合理的に 低い濃度まで 低減 いいえ 合理的に 実行可能な限り 低い濃度か? はい 無視できる リスク 1) いいえ 推定摂取量が TTC 値*1.5 μg/日 を超えるか?2) はい 適用された 使用を制限また は拒否 いいえ 摂取濃度 1.5 μg/日超は許容 3) できるか? はい 無視できる /許容リスク ビラセプトで計算される PDE =0.104mg/day 1)強力な発癌物質(本文参照)と構造関連性がある不純物は TTC アプローチから除外する -5 2)発癌性データが入手可能な場合:摂取量は癌生涯リスクの算出値 10 を超えるか? 3) ケースバイケースの評価には治療期間、適用、患者集団などを取り入れる必要がある(本文参照) *)略語:NOEL/UF-無毒性量/不確実性係数、PDE-許容 1 日摂取量、TTC-毒性学的懸念閾値 患者平均一日最大2.75mgのEMSを摂取 線形外挿による不純物 EMSのリスク評価 (発がん性物質で、遺伝毒性に閾値がないと仮定) Tumor Incidence 最大被爆期間 HIV患者の,遺伝毒性物質 による腫瘍誘発に対する 感受性の補正 体重を50 kgとして1日3gのViraceptの摂取でEMSの1日最大被爆量 = 50% x 0.055 mg/kg/d x 0.25 y x 10 x 3 = 0.01% 31.8 mg/kg/d 70 y 1 0.1% 28 患者の寿命 ・MMSのTD50 (生涯飲水投与で肺腫瘍,造血腫瘍) ・EMSのTD50の妥当なデータがない。 ・MMSはEMSより一般に強い遺伝毒性物質である ことから,発がん性がより強いと議論されている。 年齢による感受性の補正 (感受性:若いヒト≧老人のヒト と仮定) Cancer risk = 10-3 (for life time) or 10-4 (for 3 m) EMS (2.75 mg/day) の発がんリスク評価の比較 発がん性データ なし あり TTC (Threshold for Toxicological Concern) 1.5 µg/day 遺伝毒性データ 高いリスク あり なし 閾値 線型外挿 発がんリスク = 10-4~10-3 あり なし PDE Safety margin =455-fold (Permitted Daily Exposure) (Based on Daily Dose) 104 µg/day リスク? 高いリスク リスク? HIV患者集団におけるがんの 自然発症率は,1000人/年あたり 約20~30例と推計 EU規制当局の結論 – July 2008 take home message: THERE IS A THRESHOLD FOR MUTAGENESIS BY DNA DAMAGING MUTAGENS !!!! A paradigm shift in genetic toxicology The complete data and risk assessment is published as special issue in Tox. Letters Volume 190, No.3, 2009 これまでのまとめ 現在のICHの不純物ガイドライン(Q3A,Q3B)では遺伝毒性 不純物の管理に対応できない。 遺伝毒性不純物を完全に除去することは不可能であり、一 日摂取量を基としたリスク管理が重要である。 段階的TTCの利用は臨床試験期間を考慮した許容しうる1 日摂取量であり、臨床開発中の遺伝毒性不純物のリスク管 理に利用できる。 EMEAとFDAからは遺伝毒性不純物の管理に関するガイド ラインが提出された。両者はほぼ同じ内容を持つ。 Viraceptに含まれたEMSのリスク評価手法は、今後、遺伝 毒性物質のリスク管理に大きな影響を与えることが予想さ れる。遺伝毒性閾値の証明、既存データの利用等にコンセ ンサスが必要である。 本日の講演内容 遺伝毒性不純物問題の背景 遺伝毒性不純物に関する欧米のガイドラインと不純物管理の方法 Viracept事件(遺伝毒性不純物の特殊なケース) ICH-M7ガイドラインの進捗状況と今後の展望 遺伝毒性とリスク評価 The International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for the Registration of Pharmaceuticals for Human Use (ICH) The ICH is an initiative undertaken by three regions, the European Union, Japan and the United States, with six co-sponsors European Union (EU) US Food and Drug Administration (FDA) Japanese Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW) European Federation of Pharmaceutical Industries and Associations (EFPIA) Japan Pharmaceutical Manufacturers Association (JPMA) Pharmaceutical Research and Manufacturers of America (PhRMA) "Quality" Topics, i.e., those relating to chemical and pharmaceutical Quality Assurance. Examples: Q1 Stability Testing, Q3 Impurity Testing "Safety" Topics, i.e., those relating to in vitro and in vivo pre-clinical studies. Examples: S1 Carcinogenicity Testing, S2 Genotoxicity Testing "Efficacy" Topics, i.e., those relating to clinical studies in human subject. Examples: E4 Dose Response Studies, Carcinogenicity Testing, E6 Good Clinical Practices. (Note Clinical Safety Data Management is also classified as an "Efficacy" topic - E2) "Multidisciplinary" Topics, i.e., cross-cutting Topics which do not fit uniquely into one of the above categories. 遺伝毒性不純物に関しては2010年11月の福岡からM7としてガイドラインの策定 が開始 M7:トピックタイトルの変更 Genotoxic Impurities (遺伝毒性不純物) Assessment and Control of DNA-Reactive (Mutagenic) Impurities in Pharmaceuticals to Limit Potential Carcinogenic Risk (潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中DNA 反応性(変異原性)不純物の評価および管理) M7:EWGメンバー Party Topic Leader EU EFPIA MHLW JPMA FDA PhRMA Peter Kasper Steven Spanhaak 本間 正充 澤田 繁樹 David Jacobson-Kram Warren Ku EFTA HC WSMI ラポーター 福岡会議欠席 Deputy Topic Leader Diana van Riet-Nales Lutz Muller 阿曽 幸男 紺世 智徳 Stephen Miller David DeAntonis Expert Observer Interested Party Kevin McKiernan 小松 一聖 John Leighton Joseph DeGeorge Elisabeth Klenke Alisa Vespa Esther Vock M7:適用範囲(I) 対象とする医薬品、成分 ¾ ¾ ¾ ¾ ¾ 新原薬、新製剤(Q3A、Q3B) 既存医薬品のうち、新規不純物の混入並びに既存不 純物の顕著な増加を伴う合成経路の変更申請を行う もの 承認後の追加申請(適応追加、用量追加等)により新 たなDNA反応性不純物による発がんリスクが懸念さ れる既承認医薬品 臨床開発中の医薬品 (分解物) M7:適用範囲(II) 対象としない医薬品、成分 ¾溶出物(Leachable) ¾(添加物;excipient) ¾バイオ医薬品(S6) ¾抗悪性腫瘍薬(S9) ¾(代謝物) ¾(がん原性試験を必要としない有効成分) M7:一般原則 本ガイダンスは、DNA反応性物質を対象とする。これらの物質は低用量で もDNAに損傷を与え、突然変異を誘発する可能性があり、閾値の証拠が十 分に確立されていないため、医薬品に不純物として存在する場合、たとえ 低用量でもがんを引き起こす可能性は否定できない。 このタイプのDNA反応性発がん物質は、一般にエームス試験で検出するこ とができる。 エームス試験陰性の遺伝毒性物質は概して閾値を持ち、不純物として存 在する程度のレベルではヒトに対して発がんリスクを増加させるような脅威 を与えるものではない。 従って、遺伝毒性不純物の発がんリスクの低減にはエームス試験により変 異原性の有無を立証し、管理に用いることが必要である。 構造活性相関(SAR)による評価はエームス陽性、もしくは陰性を示す化学 構造を、これまでの立証された情報から予測するのに有用である。 EMEAガイドラインQ&A-4 Ames 試験を実施する場合は、不純物単 独あるいはスパイク濃度5%以上のものを 用い、不純物濃度を250μg/plate以上に することが望ましい。 エームス試験陽性化合物の最低濃度の分布 Kenyon et al., Regulatory Toxicology and Pharmacology 48 , 75-86 (2007) 構造クラス別のエームス試験によるLECの範囲 および中央値 Kenyon et al., Regulatory Toxicology and Pharmacology 48 , 75-86 (2007) QSARによるDNA反応性不純物の評価 M7:今後の予定 ステップ1(2010年11月;福岡) ¾ 1stドラフト by WebEx (2011年5月) シンシナティー EWG会議 (2011年6月) ステップ2(2012年6月 or 11月) ステップ4 (2013年11月) 本日の講演内容 遺伝毒性不純物問題の背景 遺伝毒性不純物に関する欧米のガイドラインと不純物管理の方法 Viracept事件(遺伝毒性不純物の特殊なケース) ICH-M7ガイドラインの進捗状況と今後の展望 遺伝毒性とリスク評価 遺伝毒性試験のパラダイムシフト ーハザードからリスクへー HAZARD VERSUS RISK ¾ Exposure Assessment ¾ Exposure Assessment ¾ Hazard Identification ¾ Hazard Characterization • Weight of Evidence • Mode of Action • Mechanism of Action 遺伝毒性試験のパラダイムシフト ーリスク評価における遺伝毒性試験の役割ー Wight of Evidence を考慮した結果の解釈(遺伝毒性反応を考察) ¾ 非生物学的反応の排除 ¾ 非生理的条件下での反応の排除 ¾ データの再現性、信頼性の考慮 Mode of Actionを考慮した結果の解釈(ヒトに対する遺伝毒性を考察) ¾ ¾ ¾ ¾ In vitroからin vivoへ ヒト細胞系、ヒト代謝系へ 不死化細胞から初代培養細胞系へ 単一細胞系から組織モデルへ Mechanism of Actionを考慮した結果の解釈(発がん性への関与を考察) ¾ ¾ ¾ ¾ DNA反応性(変異原性) DNA修復機構、付加体形成 閾値の存在 標的組織 これら問題を考慮した試験系の改良、新しい試験系の開発が必要!!! リスク評価における遺伝毒性試験の役割 遺伝毒性リスクは 高いと評価される 遺伝毒性ハ ザードが同定さ れる 遺伝毒性リスクは 低いと評価される リスクアセスメントは、役に立っているかどうかの基 準に照らして初めて成立しうる • • • • • リスクアセスメントの客観的か? リスクアセスメントは現実との妥協か? リスクアセスメントは既成事実の追認ではないか? リスクアセスメントは楽観的? リスクアセスメントは科学か? 合理的楽観主義者 (マット・リドレー 2010) リスクアセスメントと科学 リスクアセスメントは他の科学と同様に完全ではない。主要な手 法の大部分は客観的な証拠に基づいているが、いくつかについ ては、はっきりとした証明は未だなされておらず、その信頼性は 限られた情報のコンセンサスにゆだねられている。 (Feedman & Zeisel, 1989) 結 語 科学者がリスクを論じるには、それなりのリスク を覚悟しなければならない。 (Honma, 2011) ご清聴ありがとうございました。
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