CSTB の最近の活動概要 CSTB 理事長 アラン・モガール

CSTB の最近の活動概要
CSTB 理事長 アラン・モガール
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------私からは、CSTBについて説明したいと思います。
CSTBの特徴としましては、建築調査をし、コンサルタント業務をし、また情報の提供を
しています。私たちの団体の性格は、国が持っている民間企業のようなもの、という説明があ
ります。一応、国有の企業であるけれども、経営は民間企業と同じであるとご理解ください。
この円グラフにつきましては、時間を割いてご説明したいと思います。
CSTBの中では2つありまして、まず研究をしているところ。次に、コンサルタント業務
がありまして、これも研究に結びついてくる部分です。ですから、これがCSTBの活動の半
分を占めています。後ほど、この研究の中でどのようなものが優先課題かを説明したいと思い
ます。
CSTBのもう一つの大きな活動は評価活動です。評価業務というのは、テクノロジー活動
ですけれども。このような技術業務は、実際には、評価、試験、そして認証です。それから、
情報提供活動をしております。
このCSTBが、実際にどのように活動しているかを説明したいと思います。
CSTBの活動は8つの部門に分かれております。その中で、社会的なテーマとしては、国
の関心が持たれることです。特に新しいのは、持続可能な発展に関すること、そして、大きな
問題である安全性と防火性能です。
それから全般的な問題としては、建築物の技術があります。
そして、経済、社会的な面のうち、特に社会的な面ですが、国の政策としての位置付けです。
4年前から、社会的な課題というものを非常に大きく取り扱っています。というのは、CST
Bは一応国の機関ですから、やはり国のプライオリティとしても、我々にとっても、社会的な
課題は重要となるからです。
もう一つ大きく私たちに変化を与えるものとしては情報工学産業があります。この中でも、
特にITを使ったシミュレーション、バーチャルなシミュレーションということに努力してお
ります。社会的な課題とITの2つがCSTBの大きなブースターというか、これから将来へ
の大きな変化のもとになるもの、原動力になるものだと思っております。それ以外の音響、照
明、気象、外装、屋根や壁、その他の衛生設備は昔からやっている部分です。
子会社が4つあります。一つは防音についての研究をしています。特に、交通機関から出る
音についての研究をしています。隣の写真は、個人住宅の認証をしているところです。これに
ついては後ほどご説明いたします。次に、空気力学の研究としてエッフェル塔の風洞実験をし
ている写真です。最後に、すべての建設専門家に向けたインターネットサイトがあります。
次に、研究における優先課題についてお話しします。
最近の研究では、EUの政策における研究を強化しています。後ほど、リリング氏が、欧州
の研究プロジェクトについて発表します。2点目は、先ほど申し上げましたように、情報技術
とサステーナビリティをいかにバランスをとるかということです。持続可能な発展を建物のレ
ベルでも実現し、そしてまた都市計画のレベルでも実現することを考えています。つまり、持
続可能な発展を都市計画のレベルにおいて考えるということです。これは前にはやっていませ
んでしたから、新しい分野です。3点目には、これも新しいことですけれども、エネルギー問
題に関心を持つこと。また、フランスにおける大きなエネルギーに関するプロジェクトに参加
をするということです。最近ロシアが批准したおかげで、京都議定書がやっと発効することに
なります。ですから、この発効を機会として、建設分野における温室効果ガスの低減が、これ
までに考えていた建築資材や建物が環境に及ぼす影響よりも非常に大きなものになるというこ
とであります。
新たな建築のプログラムを始める。それは、ポジティブなエネルギーを持って建築の能力を
持つということです。そのポジティブなエネルギーとはどういうことか、説明したいと思いま
す。つまり、クリーンなエネルギーで電力をつくる建物です。風力から電力もつくるわけです。
クリーンエネルギーとしては、太陽エネルギー、地熱、そして風力が考えられます。ポジティ
ブなエネルギーというのは、この建物において消費される熱と電力の量が、この建物でつくら
れる熱と電力よりも少ないということです。ですから、これが実現しますと、建築がこれまで
のように温室効果ガスを増やすことに加担するということはなくなります。これまで、先進国
においては、温室効果ガスを 25%削減するとなっています。ですから、今申し上げましたよう
に、ポジティブエネルギーの建築が実現できるようになると、建設業界は温室効果ガスの削減
に貢献できることになります。もちろんこれは、法律的な規則ではなくて、こういうことを目
指して研究をしようというプロジェクトであります。
この研究の中で、新しいシミュレーションがあります。この建物の建築のシミュレーション
です。
様々な実験施設がありますけれども、例えば、これは防火試験センターです。これが今、ヨ
ーロッパの基準に合った試験センターになっています。音響学試験所におきましても、ヨーロ
ッパのレベルに合わせたラボになっております。大規模な風洞実験をする設備もあります。気
象実験の場合は全天候型試験所でありまして、雪や雨などの環境を想定した試験に対応してい
ます。写真には車が写っていますが、実際に風洞実験をされるクライアントは、自動車メーカ
ーが多いです。それから、建築学の技術的基盤につきまして、詳しくご説明したいと思います。
私たちの考えとして、建築のシミュレーションの能力を高めるということがあります。つまり、
これはバーチャルなモデルをつくる目的です。これによりますと、既に特定の段階から様々な
ことがシミュレーションによって予測でき、早い段階から実際の使用における建築物の運営上
の問題点を防ぐことができます。また、新しい設備として、2005 年初めに使用を開始するもの
があります。これは、ソフィアアンティポリスの近くにありまして、シミュレーションをする
設備です。これは建築のビジュアルなシミュレーションを行うもので、音と建物における温度
及び空気の動きの理想的な計算をします。しかも、この中で、バーチャルな形で歩いて、希望
する情報にアクセスすることができます。ですから、これにおきましては、温熱関係、視覚、
音も三次元で聞こえます。
次に、テクロノジーの部分についてもう少し説明します。テクノロジー用の事業は、評価・
認証の業務があります。評価に関しては、例えば建築製品の評価があり、建築部材、製品、建
建物の認証をしているわけです。本日は、特にこの中でも認証についてお話ししたいと思いま
す。と申しますのは、認証制度は新しい動きがございます。CSTBはこれまで建築物の認証
しかしていませんでしたが、新しく製品の認証を、ヨーロッパレベルで行うことになりました。
EUの中で認証された製品が自由に流通できるように、EUレベルで認証をするわけです。そ
れに伴い、これまではフランスレベルでの認証だったものが、ヨーロッパレベルの認証になり
ました。
また、CSTBの新しい事業として、建築にかかわる事業者の認証があります。建築にかか
わる事業者というのは、ディベロッパー、建築家、設計事務所、そして建設会社です。製品を
認証し、事業者を認証すると、次に建築物の認証ができることになります。つまり、建築物の
認証というのは、認証された事業者が認証された製品を使ってつくるものです。現在、製品の
認証は、ヨーロッパレベルで行われております。それには、どのくらいの幅、どのくらいのも
のを対象とすれば、CEというこれまでの認証のラベルにつけ加えることができるかというこ
と。どのようなステップをこれにプラスすることができるかということです。つまり、既存の
CEという認証があるわけですけれども、今度は新たにヨーロッパレベルの認証とするために、
どのようなものをプラスアルファすれば新たな認証になるかということです。それには、2つ
の方法が考えられると思います。一つは、より多くの情報をつけるということ。また、2つ目
の方法として、製造の際における審査の精度を高める、つまり、信頼性を高めるということで
す。これまでのCEは基礎的なものですけれども、今度の新たな認証は、右側の横軸(より多
くの情報)と縦軸(より高い信頼性)が交差した斜め上あたりのより多くの情報やより高い信
頼性を合わせ持ったものになるわけです。どのように認証を与えるかは、ケース・バイ・ケー
スです。つまり、場合によってお客さまから、もっと情報を付与してほしい、もっとチェック
をつけ加えてほしいとか、あるいは、製品の審査に厳しい情報を加えてほしい、信頼度を高め
てほしいという要望があった場合、それを認証として受け入れるわけです。パワーポイントの
スライドは全ページを皆様方にお渡ししますけれども、このスライドの中にも一部紹介してお
ります環境の質の認証については、明日発表致します。
建築物の認証については、まず個人住宅を対象として、次に集合住宅、3番目に公的住宅と
考えています。
これが最後のスライドですけれども、CSTBの国際業務についてお話ししたいと思います。
国際業務には2つありまして、まず一つはヨーロッパレベルのものです。一番目は欧州の建築
研究所のネットワークです。その次にあるのは欧州の認証機関です。このENHRは欧州レベ
ルでの住宅研究ネットワークで、特に経済的視野の研究活動を行なっています。また、CST
Bは国際エネルギー研究機関(IEA)のメンバーであり、CIBのメンバーでもあります。
また、技術評価に関しましては、日本と同じように、WFTAOのメンバーです。そしてこの
ような二国間協議に基づく交流を日本、中国、そして、多くのヨーロッパ諸国と行なっていま
す。
フランスにおける建築関連の法律につきましては、特にご説明申し上げませんでしたが、こ
れは何も新しいことがないからです。フランスにおきましては、多くの人が、現在ある建設法
典を改正して、もっと使いやすくすべきではないかと考えております。日本は、大変な努力を
して建築関係の法律を改正し、現在に合ったものにしています。ところが、フランスでは、E
Uが決めてきたことを国内法に置きかえますから、そこで変わることはあっても、フランスか
らEUに向けて大きく発信することはしていないというのが現状です。
以上で発表を終わります。
モガール氏の発表に関するディスカッション
●:日側メンバー、○:仏側メンバー
●
モガールさんのお話を大変興味深く聞かせていただきました。特に、最後にお話しになっ
たCSTBのサーティフィケーションの拡大について聞きたいと思います。まず、製品のサ
ーティフィケーションの考え方を、このように発展させようというのはすばらしいことだと
思います。一番難しいのは、フランス国内だったら、信頼性とか、新しいキャラクタリステ
ィックスとかいうものは合意が取りやすいと思いますが、EUに広げていく、ヨーロッパ全
土に広げていくとなると、例えばドイツではどうか、北欧ではどうか、基準の考え方、国民
性、少しずつ判断が違ってくるのではないかと思います。
○
非常にすばらしい質問で、まさにピタリと問題を当てているという気がしました。今、E
Uで統一されているのは建築製品でありまして、建設そのものではありません。建設そのも
のについてのEUでの認証ではないわけです。つまり、ヨーロッパレベルでの製品の認証は
ありますけれども、ヨーロッパレベルでの建築物の認証は考えられません。
ヨーロッパにおきましても、現在は製品のEUレベルでの認証を求めていますけれども、こ
れはEUとしてはもっと野心的にすべきであって、将来的には建設そのものについてもEU
で統一すべきであると思います。つまり、欧州共通建設認証というものをつくることは可能
です。でも、私たちが考えているのは、例えば住宅についての認証は難しいだろうというこ
と、逆に簡単なのは、オフィスとかホテルです。つまり、ヨーロッパレベルで活動する人た
ちが信用する建物の方が簡単に共通化できると思います。
●
わかりました。ありがとうございました。
○
CSTBの性格又はあり方についてご質問したいと思います。
先ほどのご説明で、国有の機関で経営は民間経営になっているというお話がございました。
そういう意味で、国の政策的な課題に対してどのくらい寄与しているのか。例えば、新しい
基準をつくるときに具体的にどう感じているのかということと、さらに、国の機関として制
約はどのようなものがあるかということについて、まずご質問させていただきます。
○
CSTBの中でも、テクノロジー的な認証業務とリサーチ業務の両方がありますから、2
つに分けて考えたいと思います。
まずテクノロジー的な業務である評価、試験、認証の業務に関しましては、国から何の援助
もなく、全くほかの民間企業と同じように一評価機関として競争、競合しています。しかも、
それがヨーロッパレベルであるということです。それから、ほかの認証機関とすれば、国の
ものであったり、民間のものであったりしますけれども、それと同じような形で競争してい
ます。評価と認証に関しましては、民間のプライマリティセクターと同じように競争してい
ます。
研究とコンサルタント業務に関しましては、国はお客様です。つまり、私たちの研究、ある
いはコンサルタント業務のお客様です。研究に関しましては、国はCSTBに対して、こう
いう研究プログラムを実行しろと要求して、そしてスキームを渡します。実際に研究プログ
ラムを実施しますと、その後で、きちんと実行したかどうかをチェックします。ですから、
この研究プログラムをきちんと実行したかどうかをきちんと審査されています。研究委託に
関しましては、国との大きな契約があるわけです。ですから、研究に関しては国だけが依頼
主であって、大きな契約を結んでいます。
下の 16%のコンサルタント業務に関しては、数多くの小さな契約があります。こういう研究
をしてくれというような、私たちの専門知識を提供するような契約があるわけですけれども、
その中で国もクライアントになることがあります。どういうことかといいますと、国が、家
の屋内での温熱に関しての規則をつくるから研究しろとか、防音についての規則をつくるか
らとか、規則をつくる準備のために要請をしてきて、私たちは、研究を通じて、この規則の
提案の準備をするわけであり、国はそれをもとにして、規則等を制定しています。しかし、
この面は決してCSTBの独占ではありませんから、私たちがきちんとした良い仕事をしな
ければ、国は他の機関に依頼してもいいわけです。ですから、毎年毎年、いい仕事をして、
国の満足を得るように努力しています。
ですから、この緑色の部分、コンサルタント業務の中で、今言ったような部分ですけれども、
民間企業もお客さんであったり、EUもお客さんとして研究・評価の依頼をしたりするわけ
です。
●
よくわかりました。ありがとうございました。
○
ほかに質問はございませんか。質問がないようですので、休憩に入りたいと思います。