西口 亮先生 出生前甲状腺スクリーニングは、子供のIQを変えるか?

西口 亮先生 :N Engl J Med 2012 366:493-501
出生前甲状腺スクリーニングは、子供のIQを変えるか?
Antenatal Thyroid Screening and Childhood Cognitive Function
【背景】妊娠初期には、胎児は母体からの甲状腺ホルモンに依存しており、1999 年、妊娠初期の母
親の高TSH血症とその子供のIQ<85 の割合が 3 倍に増えたというショッキングな報告を受け、大
規模な前向き介入試験が行われました。
【方法】無作為化試験において,妊娠期間が 16 週未満の女性から血液検体の提供を受け,TSH
と FT4 を測定し,スクリーニング群(ただちに測定を行う)と,対照群(血清を保存し出産後に測定を
行う)に割り付けた.TSH値が 97.5 パーセンタイルを超えるか,FT4 値が 2.5 パーセンタイル未
満,あるいはその両方の場合にスクリーニング陽性とした.スクリーニング群で陽性であった女性を,
レボチロキシン 150 ug/日投与に割り付けた.主要転帰は,スクリーニング陽性の女性から出生し
た児の 3 歳時の IQ を評価した。
【結果】血液検体を提供した女性 21,846 人(妊娠期間中央値 12 週 3 日)のうち,スクリーニン
グ群の 390 名と対照群の 404 名がスクリーニング陽性であった.390 名には、レボチロキシン治
療が開始され、TSHが 0.1∼1.0 mIU/L となるよう 用量が調節された.結果、スクリーニング陽性
の女性から出生した児において,平均 IQ スコアは,スクリーニング群で 99.2,対照群で 100.0
であった(差 0.8,95%信頼区間 [CI] ‐1.1∼2.6,intention-to-treat 解析により P=0.40).IQ
85 未満の児の割合は,スクリーニング群 12.1%,対照群 14.1%であった(差 2.1 パーセントポ
イント,95% CI ‐2.6∼6.7,P=0.39).on-treatment 解析でも同様の結果が示された.
【結論】このように出産前甲状腺スクリーニングを行い、母親の甲状腺機能低下症に対する治療を
行っても,児の 3 歳時の認知機能には改善なく、これから、5 歳時、7 歳時と解析されていそうであ
る。ちなみに、私の母は、私を出産後バセドウ病を診断されたそうだ。私の認知機能への影響は、
何歳頃、顕在化するのだろう。。。(文責 阿比留)