その2

第6日目
天候:晴れ
4月29日(水)
土井之浦港~福江港
風:ベタ凪~軽風
レポート:山本
後続組フェリー「太古」にて到着
06:00 出港~15 マイル~08:20 入港
メンバー:渡海・佐竹・E.D・原・平田
昨 晩 、 博 多 港 か ら の フ ェ リ ー 「 太 古 」( 野 母 商 船
tel092-291-0510 http://www.nomo.co.jp/)に乗船して、広
島からの平田君と益田からの原さんの後続組が、今朝福江港
で合流する。両氏の到着前に「福江港に入港しておくこと」
との要望で、本日も早朝出港し早めに到着した。早々E.D さ
んがカリブ海で知り合いだった佐藤洋夫・昭子夫妻が車で迎
えに来られ、ここで E.D さんは佐藤洋夫・昭子さんご夫妻に
預け、一旦別行動となる。島内観光は福江港にあるレンタカ
ー会社(ニッポンレンタカー五島福江営業所 tel 0959-72-2110)で何時もの通り佐竹さんが手
配してくれて、午後から飛行機にのる私のために島内の南半分をレンタカーで巡った。福江
島の最西端(福江港から 40 ㎞、車で 70〜80 分)にある
西海国立公園 大瀬崎断崖には、岬の先端海抜 80mに大
瀬崎灯台があり、東シナ海に突出した高さ 100~150m
の断崖が約 15kmにわたって連なりすばらしい景観を
創り上げていた。ここでは日本最後の夕日を見ること
ができるそうだ。第二次世界大戦で南方戦線に出陣し
て行った日本海軍の艦船は、この灯台を最後に日本に
別れを告げた。
昨日、岩礁の割れ目に祭れたマリア様に大変失礼な行動をとった誰かさんの懺悔のため、井
持裏教会ルルドに立ち寄る。ここでも、聖母マリアが 18 回出現したという南フランスのルル
ドの町にあるザビエル洞穴を模して作られた岩の割れ目にマリア様が佇む。昨日の誰かさん
の無礼を皆で詫びることになる。
私の休暇も本日までとなり福江空港にて昼食後、帰路に着く。5 日間の航海で到着した距離を
福岡空港~博多駅
新岩国駅
所要時間 3 時間、昼過ぎまで五島列島の福江島で遊び、夕食
は家族と共に、近いものだ。
(ここからのレポート
平田)福江空港で山本さんを見送った残留組と新規参入組の 4 人は、
再びレンタカーに乗り込み、今度は福江島の北半分を巡ることにした。まずは福江港の北 10
㎞にある教会、堂崎天主堂
を訪ねた。ここは五島にお
ける最初の天主堂だそうで、
現在は堂崎天主堂キリシタ
ン資料館として拝観できる。
(大人 300 円
9〜17 時
tel 0959-72-2110)内部の展示物を通して、布教や弾圧の歴史など
をリアルに見ることができた。堂崎天主堂は、五島のキリシタン布教の拠点として位置づけ
られていたので、赤煉瓦造でゴシック様式の立派な建物である。五島の教会はどこも集落ご
とに設けられており、小規模だがそれぞれに特徴があってかわいらしい。そのほとんどが和
瓦葺きの洋風建築で、和洋折衷ながらも違和感が無く風景に溶け込んでいる気がする。堂崎
天主堂も天然の入り江と周りの地形を巧みに利用して、水辺に佇む姿が美しい。
その後も、いくつかの教会に立ち寄りながら反省
無き懺悔を繰り返し、島の北海岸を通り西に向かう。
途中、道の駅 遣唐使ふるさと館で休憩をして、西海
岸にある高浜ビーチと頓泊ビーチを見に行く。天然
の海水浴場としては日本一の美しさを誇るという白
砂の海浜がどこまでも続く。この広さなら夏になっ
ても人でごった返すなんてことはないだろうなあ〜
と考えながらも、子どもを連れて泳ぎに来られる距
離でないことを悔やむ。
夕方になり、島の西海岸 玉之浦町にある荒川温泉(大人
300 円
tel 0959-88-2008)に入って帰ることにする。五
島で一番古い温泉だそうで、豆谷旅館に併設されているが、
近所の漁師さんたちも気軽に利用する銭湯といった感じ。
お湯はさらっとしていたが、ちょっと熱かった。明るいう
ちに荒川温泉を出発し、島の中央を東西に貫く県道 27 号線
を東に向かう。この島では何故か国道より県道の方が立派
で、30 分で福江港に到着した。途中スーパーで買い物をして、港の近くの平山氷店で氷を補
給する。さすが福江は五島で一番大きな町なので、何でも揃う。
レンタカーを返す時、地元のおいしい魚料理屋さんを教えてもらう。今晩は E.D さんが友人
の佐藤邸にお泊まりなので、夕食は思う存分魚三昧にす
ることに決定。実は E.D さんは、お頭の付いている魚料
理が苦手だそうで、魚の目に見つめられているようで駄
目なんだそうである。体格の割にかわいいところがある
ものだ・・・。一旦船に戻り、商店街のはずれにある魚
料理屋さんまで歩いて食事に出かけた。いけす割烹 心
誠(福江町 10-5
tel 0959-74-3645)は、名前ほど肩の
こらないお店で、地元とのお客さんが中心のようだった。
刺身定食を頼み、郷土料理の箱フグの味噌焼き、伊勢エビの刺身と味噌汁など追加注文して
しまい、ちょっと贅沢
なディナーに平田は
初日から大満足! 数
日かけて私のために
回航してくれた山本
さん、E.D さんごめん
なさい〜。
波静かな入江にアンカーリングしているヨットと、突堤に係留しているのを見た初めてのヨット
第 7 日目
天候:晴れ
4月 30 日(木)
福江港~相之浦~半泊
風:軽風~中風
10:00 出港~24 マイル~16:00 入港
レポート:平田
メンバー:渡海・佐竹・原
本日の朝食は「ゼファーラー」特性和定食。回航中は E.D さんが料理をして下さったので、今
日からしばらくは私がバトンタッチ。E.D さんの洋食の味と比較されないように和食で攻め
ることにする。ご飯を炊き、味噌汁と漬け物、原さんが朝の散歩で買って来てくれた揚げた
ての薩摩揚げ。こんなものが朝から売っているから漁師町は好きだ。
ゆったりとした朝の一時をキャビンの中で過ごしていると、外から拡声器で誰かが呼んでい
る。なんの騒ぎかとあわててデッキに出てみると、海上保安庁の巡視艇が近寄って来ている
ではないか。こんな港の中で臨検?思っていると、巡視艇のデッキにたくさんの人影が見え
て来た。いつもより多い海上保安官に、なんと本格的なビデオカメラを持ったプロ風のカメ
ラマン 4 人に数名のカメラクルーが乗っている。ひょっとして「密着!海上保安官 24 時」と
いう番組で、我々は麻薬の密輸船と間違われたか・・・?
このようなヤバイ場面では、や
はり年長の渡海提督に犠牲になってもらおうとデッキに出てもらう。
「どこから来て、どこに
行かれるのですか〜?」意外なほど丁重な海上保安官のカメラを意識した態度に、どうどう
と広島弁で答える渡海提督。さすがです。どうやら、海の事故を防止する全国キャンペーン
の様子を取材しているらしい。なんともお騒がせな朝でした。
お昼前、昨日から E.D さんが滞在している、佐藤さんご夫妻の
お宅がある半泊湾に向けて出航した。天気もよく波も穏やか。の
んびりとセーリングを楽しんでいるうちに、半泊湾を通り過ぎ、
島の北端 糸串鼻を周り、車で行くには道が細いと言っていた岐宿
町唐船ノ浦を覗いてみることになった。天然の静かな入り江でアン
カーリングして昼食をとった。五島はどの入り江も絵にな
糸串鼻沖の奇岩
るくらい美しい。その後、半泊湾に戻り、これまた絵に描いたよう
な場所にある佐藤邸を訪ねた。佐藤さんご夫妻はかつてカリブ海で鮨店とチャーターヨットを
されていたそうで、数年前に日本に帰ってこられ、どこに住もうか全国をいろいろ探してい
る中でこの地に出会われたそうだ。自然豊かな半泊湾の海は穏やかで、そこに佇む小さな集落
はどことなく日本の原風景のようで懐かしい。これは想像だが、佐藤さんさんご夫妻はこの
景色をご覧になってここで暮らそうと決心をされたのではないだろうか。空き屋になってい
た農家を終の棲家にするために、お二人はこつこつと大工さんと一緒になって改造したのだ
そうだ。その一つで、手作りの五右衛門風呂に入れていた
だくことに。メンバーが順番にお風呂をいただいている間、
カリブ海での E.D さんさとの懐かしいお話や、昭子婦人の
オーガニックなお料理を堪能し、楽しい時間を過ごさせて
いただきました。あっという間に時間が過ぎ、昔話がつき
ないエドさんをもう暫く佐藤さんに預けることにして、静
かな半泊湾に停泊して船中で一晩を過ごした。
※ここ半泊は五島市郊外からのメイン道路を外れた細い山道を通った先の、海と山に囲まれた 500 メ
ートル四方の僻地だそうで、レンタカーで観光した時のパンフレットにも離合困難と書いてあるとお
り閑静な場所である。過疎で廃校になった校舎を本拠地に、
「田園ミュージアム構想」をコンセプトに
した、耕作放棄地の田んぼの再生をはじめ都市住民向けの滞在研修プログラム「半泊ステイ」などの
事業を、都会から来た若者達が頑張って居られるようです。
「五島列島ファンクラブ」を応援しょう!
第 8 日目
天候:晴れ
5 月 1 日(金)
半泊~クルーズ~久賀湾
風:軽風~中風
09:00 出港~30 マイル~15:00 投錨
レポート:平田
メンバー:渡海・佐竹・原
朝は半泊湾で目覚める。静かな空気が心地よく暫く景色
を楽しんでいると、佐藤さんがボートで近づいてくる。
近所の漁師さんが今朝釣ったばかりのお魚を差し入れ
に来てくれたそうだ。ボートには若いカップルも同乗
されている。お二人は、阿部さんご夫妻で、先月東京
から半泊へ移住されたばかりとのことで、佐藤さんの
後輩Iターン組。どうも半泊は田舎暮らしの人気スポ
ットのようだ。天気もよく、ほどよい風が吹いていた
のでお二人をクルージングにお誘いする。何か用事があったようだが、このような機会はめ
ったにないからと佐藤さんのおすすめもあって、我々と海の散歩に出かけることになった。
セーリングを楽しみながら久賀島を時計廻りに廻る。途中、お昼になったので、近くの入り江に
アンカーリングしてデッキの上でランチタイム。水深は 5m以上あるのに海底が手に取るように見
える。本日のメニューは牛丼にサラダ。もちろんビールやワインを飲みながら、の〜んびりした
時間をご一緒に過ごした。お二人を半泊に送り届けながら、これからの開拓生活(?)にエール
をお送りする。
「また来るので、頑張って下さ〜い!」今度お会いする時は、きっと佐藤さんご夫妻
と同じような笑顔に変わっているだろうなと心で思いつつ・・・。
久賀湾入口の「立 神」
船はもう一度 久賀島に進路をとる。久賀島は馬蹄形の形を
していて、北に向いて湾が開いている。本日は、その奥深い
久賀湾にアンカーリングして、五島らしいクルージングを楽
しむことにする。湾の奥に進んで行くと、東側の斜面に小さ
な教会が見えてきた。湾に向かって佇む姿が素敵だったので、
投錨した後ゴムボートの「アタリ号」を下ろして教会に向か
うことにした。海岸から真っ直ぐ延びる階段を上りきると、
山の新緑を背景にかわいらしい教会(牢屋の窄協会)が見えて来る。その隣に何故か不自然な空
き地があり、石碑が建っている。なんとこの場所に牢屋があったそう
だ。キリスト教弾圧の時代に島民の隠れキリシタンがここに集められ、
わずか6坪(20 ㎡)の建物に 200 人も監禁され42名も亡くなった
そうだ。敷地の奥にここで亡くなった方々のお墓があり、小さな子ど
もやお年寄りのものが目立った。牢屋だから湾のどこからも見張れる
小高いところに建てたのだろうが、皮肉なことにここから見える久賀
湾の景色はとても素晴らしい。神様のせめてものお恵みだったのかも知れない。
「アタリ号」に戻
り、今度は湾の一番奥まで行ってみる。再び上陸して小学校のあるところまで散策したが、さす
がに旅館やお風呂などの施設は無い。石を積んだ練り塀で囲まれ
た伝統的な屋敷を見る。武家屋敷だったのだろうか?キリスト教
弾圧の時、ここに役人が詰めていたのだろうか?歴史的が止まっ
たような景色に思いを巡らせる。
「ゼーファーラー」に帰り、今日
の夕食は今朝いただいたお魚を食することにする。焼き魚と魚ご
飯を作る。これぞ地産地消。自然豊かな場所で星が落ちて来そう
だ。本日も天の恵みに感謝する。
その 3 に続く