第6期 事業報告 自 平成 21 年 4 月 1 日 至 平成 22 年 3 月 31 日 Ⅰ. 事業の概況 1.旅客輸送について 平成21年度における富山地域の経済は、米国の金融危機を発端に厳しい状 況が続いており、一部には好転の兆しも見受けられますが、需要低迷によるデ フレ基調など先行きについては楽観できない状況にあります。 当社を取り巻く経営環境も、運輸収入や広告収入等に企業業績の低下を受け 厳しい状況が続いております。 (1) 鉄道・軌道線 平成21年度の当社は、企業の景気低迷や新型インフルエンザの流行さら には高速道路の1,000円利用などの外的な影響を強く受け、これまで「環 境」や「鉄道復権」ムードにも支えられ好調に推移してまいりました業績は、 他の鉄道事業者と同様、若干低迷した状況となっております。 そうしたなかでも鉄道事業者の基本責務である安全運行につきましては、 最大限の注意を払っており、乗務員との懇話会、乗務員研修、安全管理会議 及び内部監査を実施するなどして、安全運行に万全を期してまいりました。 このような取組みの結果、昨秋には北陸信越運輸局長から、3 年間重大事 故がなく運転業務が優秀であったことから無事故事業者として表彰を受け ることができ、社員一同、安全に対する認識を新たにしたところです。 また今冬は、開業後始めての本格的な降雪となり、軌道部分については 消雪設備をフル稼働し、鉄道部分では除雪車を深夜 2 回出動させたほか、普 通車両の終日走行を 2 回、早朝の点検走行を15回させることにより線路を 確保いたしました。また各駅では地域の除雪協力員の皆さん等に尽力してい ただき、通路部分の除雪を行いました。 このような努力の結果、若干の遅延があったものの、雪による運休は皆無 であり、当社線の雪に関する不安を払拭し、ライトレールは雪に強いことを 利用者にアピールすることができたと思っております。 営業面につきましては、国の雇用対策事業を活用し、公共交通の活性化推 進員として、契約社員2名を6月から採用し、PR用パンフレットやホーム ページ作成、装飾車両のデザインなどの情報発信業務を強化してまいりまし た。 また 12 月に中心市街地において開業した環状線セントラムも利用できる 1 日フリー切符を発売するなどし、ポートラムとセントラムの相乗効果が発 揮できるようPRにも努めてまいりました。 更には 3 月 14 日から、利用者の利便性を第一義とし、当社ICカードの パスカと富山地方鉄道㈱の「えこまいか」の相互利用を開始したところです。 平成21年度のポートラムの輸送人員は1,843,564人で、1日平 均の輸送人員は5,051人(実利用者数は1,581,900人、1日平 均4,334人)となり、昨年度に比べ約2%の減となっております。 (2) フィーダーバス 平成19年度に市から当社が引き継いだフィーダーバスの運営につきま しては、21 年度も厳しい経営状況が続いております。 当社においては、バス運行経費削減のため、バスの小型化やジャンボタク シーへの転換等を検討してまいりましたが、経費削減効果が尐ないことから 現行の運行形態を継続するものとし、3 月にはバス沿線各戸に利用を促すチ ラシを配布したところです。 これらの結果、フィーダーバス利用者は117,983人、1日平均では 323人となり、昨年度に比べ約1%の減となっております。 2.施設の整備等について (1)軌道整備工事 振動・騒音の抑制及び保守作業の軽減を図り、安全と快適な旅客輸送を 目指し、木製の枕木をコンクリート枕木へ交換する工事や25メートルレー ル2本を溶接し長尺化する工事を継続して実施しており、21年度末での進 捗率は、61.4%となりました。(施工済約 4 ㎞、未施工約 2.5km) (2)踏切保安設備更新工事 当社では20箇所の踏切を有しており、JR時代から使用し、老朽化した 踏切機器を年次計画に基づき順次更新しております。今年度は歌塚踏切警報 器及び歌塚踏切遮断機、蓮町踏切遮断機の更新を実施したほか、故障した千 原崎踏切の改修を行いました。 (3)沿線緑化工事 富山ライトレール沿線の魅力向上を図るため、景観植栽工事(あじさい等の 植栽:城川原~蓮町間)を3ヵ年計画で実施しており、最終区間である犬島新 町・蓮町間が完了いたしました。 (4)がめ川鉄道橋梁改修工事 富山市が施工する準用河川がめ川の護岸改修工事に伴い、同河川に架かる 鉄道橋梁改修工事を富山市からの受託工事として、19 年度から実施してお りましたが、21年 6 月末で完成いたしました。 (5)法定車両検査の実施 法令により定められた重要部検査につきましては、昨年度から順次実施 しておりますが、当初は予備車両がなくなることから、円滑な車両運行が できるか懸念されましたが、20年度で3両、21年度で4両の検査を無 事終了することができました。 (6)足元誘導灯の整備 利用者の夜間の安全確保を図るため、電停照明の故障等に備え、全電停の 乗降口の足元に、太陽光を利用し蓄電するLED照明を埋め込む工事を施工 いたしました。 3.ICカード「パスカ」ついて パスカ発行枚数は、当期4,828枚、累計40,649枚となっており、 平日におきましては約8割の方がパスカで精算されております。 また、富山地方鉄道㈱において、ICカード「えこまいか」を導入されたこ とから利用者の利便性を高めるため、相互利用を開始するとともに、パスカと 「えこまいか」とのサービス水準に配慮し、割引運賃を従来の 160 円から 170 円へ変更し、統一的な運賃といたしました。 4.ライトレールグッズ及び広告事業について 当社では、営業収入の増加を図るとともに、富山ライトレールの認知度を高 めるため、チョロ Q やネクタイ等のライトレールグッズを販売しており、21 年度には富山湾の深海魚「げんげ」を利用したせんべいを地元業者と商品化し、 販売を開始しました。販売先につきましても、富山空港や高速道路の有磯海サ ービスアリアで販売するなど販路の拡大に努めているところですが、当期は、 約1,400万円の売上げとなり、前年度比7%の減となりました。 また、広告事業につきましては、新たな広告媒体である、車内の液晶モニタ ーが堅調に推移し、約1,850万円の売上げとなり、前年度比4%の増とな りました。 5.各種イベントの実施について (1)開業3周年記念イベントの実施 開業記念日である4月29日に岩瀬カナル会館をメイン会場としてステ ージショー、物販、花火などのイベントを開催するとともに、NPO法人子 供地球基金の協力を得、世界の子ども達が描いた絵で装飾した車両を運行し、 お客様に感謝の気持ちを表しました。 (2)キャンドルナイトについて 6月21日の夏至の夜には、昨年に引き続き、電灯を消してロウソクなど の灯りを楽しむ「とやまキャンドルナイト」をブールバールでおこない、環 境に優しいライトレールをアピールしました。 (3)電停の花の装飾について 富山駅北電停において、フラワーポット等による装飾を季節やイベントに 合わせ年 5 回行いました。電停を花で飾ることによる企業イメージの向上と、 魅力ある新しい鉄道のイメージを示し、新たな利用者の開拓を図りました。 (4)運転体験会について 7月21日から5回に渡り、富山エクセルホテル東急の運転体験ツアーに 協力し運転体験会を開催したところ延べ63人の参加がありました。 この企画は鉄道ファンを中心に好評とのことで、この 3 月からも引き続き 開催されることになりました。 (5)下奥井駅前花壇の整備について 下奥井駅前花壇において、近隣の富山化学㈱の従業員やろう学校の生徒の 皆さんの協力を得て、初夏には黄花コスモスなどの種まき、秋にはチューリ ップの球根の植え付けをおこない、地域ぐるみで車窓景観の向上に努めてま いりました。 (6)とやまグリーントラム等の運行 11 月 21 日から 12 月 18 日まで、エコをイメージした装飾電車をグリーン 電力で運行し、「環境」について広くアピールいたしました。このグリー ン電力の購入にさいしては、市民からの協賛等を募りました。 また、クリスマス・正月装飾、バレンタイン・ホワイトデイ装飾等の電車 も運行し、公共交通や沿線の活性化に取り組みました。 6.当社への視察者について 開業以来、当社は日本初の本格的LRTとして注目をあび、21 年度も前 原国土交通大臣をはじめ、各方面より多くの視察者を受け入れました。 平成21年度視察者数 1,463人 (開業からの累計視察者数 8,798人) 以上の結果、当期の営業成績は輸送人員約184万4千人、旅客運輸収入は 約2億4千800万円、当期純利益は約3,000万円となりました。 鉄道・軌道運輸営業成績 種 別 営業キロ 営業日数 輸送人員 旅客運輸収入 運輸雑収入 運輸収入合計 営業費 運輸収入 一 日 1キロ当り運輸収入 平 均 1キロ当り営業費 平成21年度 7.6キロ 365日 1,843,564人 248,291千円 54,099千円 302,390千円 356,107千円 828千円 109,008円 128,373円 平成20年度 7.6キロ 365日 1,875,841人 252,058千円 53,676千円 305,735千円 372,664千円 837千円 110,214円 134,341円 平成21年度 10.8キロ 365日 117,983人 14,650千円 ― 14,650千円 61,666千円 40千円 3,716円 15,643円 平成20年度 10.8キロ 365日 119,618人 15,276千円 ― 15,276千円 61,519千円 41千円 3,875円 15,606円 フィーダーバス運輸営業成績 種 別 営業キロ 営業日数 輸送人員 旅客運輸収入 運輸雑収入 運輸収入合計 営業費 運輸収入 一 日 1キロ当り運輸収入 平 均 1キロ当り営業費 7.当社の対処すべき課題 当社といたしましては、今後予想される厳しい経済情勢や事業環境を踏まえて、 経営の合理化や効率化を一層推進するとともに、国等の補助制度も積極的に活用 することにより、より強固な経営基盤の確立を図ってまいります。 もとより鉄軌道事業の根幹をなす安全の確保は、最優先事項であり、他社の鉄 道事故のほとんどがヒューマンエラーに起因することを肝に銘じ、社員一人ひと りが漫然とすることなく、基本事項の確認を徹底するなどし、安全・安心・快適 な輸送の確保に全力をあげることを第一の目標といたします。 また、昨年度の新型インフルエンザの感染流行時には、当社ではいち早く、乗 務員がマスクを着用し業務にあたったほか、車内や電停にマスク着用やうがい・ 手洗いを呼びかけるポスター掲示などを行いましたが、今後とも速やかな感染防 止対策に努めてまいります。 さらに、沿線活性化のため地域の皆様と一体となったイベントを開催するほか、 花壇の整備や線路ぎわ遊休地への植栽による緑化推進により、魅力ある環境にや さしい公共交通機関となるように努め、一層の利用増加を図ってまいります。
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