生物学 第2章 c.f. 参考:学名について 第2章 被子植物花の構造と 分類体系 (正式)和名:リンネソウ; 英名:twinflower スイカズラ科 学名: Linnaea borealis, Gronovius (1758) 属名 種小名 命名者名 命名年 c.f.リンネソウについて 亜高山の針葉樹林下・高山のハイマツ林床などに生える常緑の小 低木。 【花期】 7~8月上旬 1732年、 Lapland でLinnéが「私の花」と呼び、好んだ 1732年 でLinnéが「私の花」と呼び 好んだ Campanula serpyllifoliaと命名されていた種。 c.f. serpyllifolia.:“野生のタイムに似た葉を持つ”の意。 Carolus Linnæus Caroli a Linné 第10版(1758)改訂版 (1767)表紙 Gronovius (1758)、Linnèに因み Linnaea borealis “北方のリンネ”とリネーム 教p.11 注:分類単位 (taxon) 自然分類の階層構造における階級 復習:花の形成に関する遺伝子支配のABCモデル 花弁 界 Kingdom 動物界 Animalia & 植物界 Plantae (Linnéによる) 正常 門 Phylum(動物) Division(植物) 正常 綱 Class 変異1 萼 A B 変異1 B C Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ 国際動物命名規約規制外 教p.3 雌蕊 雄蕊 A A+B B+C C C B Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ C B+C B+C C ←領域 国際植物命名規約 シダ以上 –opsida (語尾、以下同様) 目 Order 国際動物命名規約規制外 科 Family 基準属名 + -idae (動物) + -aceae (植物) 国際植物命名規約 基準属名+ -ales (例外あり) 属 Genus Linné の二名法の第1語。ラテン語名詞 種 Species 生物分類の基本単位 種小名: 二名法の第2語。ラテン語形容詞 担当者: 山岡景行 変異3 変異2 変異2 B C A A Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ A A C C 遺伝子A単独:萼片 A+B:花弁 B+C:雄蕊全変異 C単独:雌蕊 ( 全ての領域で葉が 形成される) A、B、C 共に働かない:葉の形成 変異3 「八重咲き」 B Ⅰ Ⅱ B A Ⅲ Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ A A+B A+B A 全変異 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ 全ての領域で葉が形 成される。 1 生物学 第2章 教p.8 教p.8 被子植物の 花の構造 雌蕊(pistil): •花粉が付着する柱頭(stigma)、 (a) 花 の 縦 断 面 ; (b) 雄 蕊 の 構 造 ; (c)雌蕊と受粉 受精後 種 なる胚珠( ) 単数 複数 •受精後に種になる胚珠(ovule)が単数~複数 入っている子房(ovary)、 •両者をつなぐ花柱(style)からなる。 子房は心皮(carpel)で覆われる および受精の 模式図。 心皮は特殊な葉であり、種により1枚~複 数枚が、多くは融合して胚珠を包み込む。 教p.8 教p.7-8 ●同花被花: 花弁と萼片の区別が付かない花 (チューリップなどのユリ科の 花) ●異花被花: 区別がハッキリする花 雄蕊(stamen): •葯(anther) •花糸(filament)からなる。 葯は多数の花粉粒とそれを包み込む皮 からなる。 花が咲くと葯に裂け目ができて花粉が出 てくる。 c.f.花粉(pollen):花粉粒の集り 花粉粒(pollen grain):個々の粒子 被子植物の花の主要構成要素:花被 花被=萼+花冠、 萼=萼片の集合体 ●花冠: 花弁の集合体 •離弁花冠: 花弁が分離するもの •合弁花冠: 花弁が一つに合着しているもの ●単子葉類(ユリ科・ヒガンバナ科・アヤメ科・ラン科など)の花: 萼と花冠が区別し難い 外花被: 萼に相当する 内花被:花冠に相当する 教p.9 教p.8 バラ目 Table 1 被子植物の花の構成要素の名称 (まとめ)。 単独の呼称 旗弁standard 一つの花の全体の総称 雌蕊 pistil 雌蕊群 gynoecium 雄蕊 stamen 雄蕊群 androecium 花被片 花弁 petal 花被 花冠 tepal 萼片 sepal 花粉粒 エンドウPisum sativum pollen grain perianth 萼 花粉 翼弁 wing petal corolla calyx 竜骨弁 keel petal pollen 翼弁と竜骨弁で雌蕊と雄蕊が包まれる。→「開花中、他の個体 の花粉から守られる」→雑種が作られにくい。 担当者: 山岡景行 2 生物学 第2章 教p.9 エンドウの花の解剖 旗弁 教p.10 (翼弁をはずす) 翼弁 翼弁 竜骨弁 花弁 弁 蜜腺 萼 背萼片 雄蕊 ラン目ラン科 シュンラン Cymbidium goeringii 雌蕊 側弁 雌蕊 側萼片 雄蕊と雌蕊は完全に合体し、 蕊柱(ずいちゅう)を形成 雄蕊 ミズバショウ アルストレメリア (Alstroemeria ligtu) (lil off th (lily the IIncas)) ユリ目ユリ科 リ目 リ科 ユリ目ユリ科 (竜骨弁をはずす) ザゼンソウ Lysichitum Symplocarpus camtschatcense foetidus 唇弁 教p.9 花式図 (floral diagram) クワズイモ Alocasia odra ぶつえんほう 仏炎苞 雄花 雌花 花被片 (萼片と花弁のこと)・雄蕊・雌蕊・蜜腺等、花の 構成要素の配列を、雌蕊を中心に同心円状に模式化 して表わす。 •各構成要素の位置は、付着点の位置で代表。 •各構成要素の断面は 適宜 単純化 •各構成要素の断面は、適宜、単純化。 •基部でつながり合っている構成要素同士は、実線 で結ぶ。 •雌蕊は複数の心皮の複合体である場合が多いの で、断面構造まで示す。 p.10 花 サトイモ目サトイモ科 教p.11 教p.10 被子植物の分類体系 新エングラー体系 クロンキスト体系 APG体系 新エングラー体系:リンネ(Carl von Linné)時代の形態分 類 に基づく分類体系の一つ。 雄蕊1、雌蕊1の単純な花: 原始的な形態 単純な花 複雑な構造の花へと進化 と考えて植物群を系統的に配置する。 (a)クサノオ(ケシ科)の花, (b)オトギリソウ(オトギリソウ科)の花; (c)クサノオの花式図; (d)オトギリソウ 担当者: 山岡景行 直感的に分かりやすく、 植物図鑑等で良く使われる。 3 生物学 第2章 クロンキスト体系: 1980年代に Arthur Cronquist より提唱された分類体系。 教p.11 教p.12 <教科書参照>細かすぎるので・・・・! 植物分類体系 「新エングラー体系」 Arthur John Cronquist (1919-1992) Illustrations from the Hunt Institute for Botanical Documentation 花被・雄蕊・雌蕊等が多数、軸の周りを 螺旋状に配列している両性花を出発点 と考え、この原始的被子植物から種々の植物群が進化した、とす る仮説 1990年代にAPGが登場するまでは最新の分類体系 APG 植物分類体系: Angiosperm Phylogeny Group 分類体系。 ゲノム解析、特に葉緑体DNAの解析から系統の分岐を調査し、分類 体系を構築。1990年代に登場、今日も進行中の新しい分類体系。 この講義:特に断らない限り新エングラー体系を用いる 花式(floral formula):被子植物の分類体系に関連して 教p.9 c.f.花式図(floral diagram) 「部品」の配置は良く表しうるが、多様な花の構造を系統的整理に不向き 花式図 (エンドウPisum sativum) 花式(floral formula)を最初に提唱した人: Grisebach (1854) 追加 花式の構成要素の表し方 Rudolph Grisebach 萼片の集合:萼kelch 記号:K 花弁の集合:花冠 corolla 記号:C 雄蕊の集合:雄蕊群androecium 記号:A Aの数:多数は∞ 雌蕊群: 心皮gynoeciumの枚数 で表現 記号:G Grisebach, R.(1854) Grundriss der systematischen Botanik für akademische Vorlesungen. Verlag der Dieterichschen Buchhandlung, Göttingen: Dietrich 花式の例: xK5C5A10G1 x:左右相称 植物分類学基本計画のアカデミック講義Dieterichsch出版社。 追加 花式図: 追加 花式図 花被片 perianth 外花被片 雄蕊 Androecium 心皮 gynoecium オニユリ Lilium lancifolium 内花被片 萼片と花弁が区別不能なケース:外花被片+内花被片 =花被perianth 記号:P 雌蕊を構成する心皮 ジャーマンアイリス Iris germanica 花式: 担当者: 山岡景行 *P3+3A6G(3) *: 放射相称 c.f. $:非相称 花式: * 雄蕊 P3+3A3G(3) ( )付:合着融合している ( )なし:分離している 4 生物学 第2章 追加 副花冠を持つ花 追加 花冠の一部に由来 副花冠corona (paracorolla)の起源 雄蕊 Androecium ワスレナグサMyosotis scorpioides ムラサキ科 雄蕊の托葉が発達 心皮 心皮gynoecium i 副花冠 corona 花被片 perianth 雄蕊 Androecium * P(3+3)C(6)A6G(3) ニホンスイセン Narcissus tazetta var.chinensis セイロンライティア Wrightia antidysenterica キョウチクトウ科 雄蕊の托葉が発達 キンギョソウ Antirrhinum majus ニホンスイセンNarcissus tazetta var. chinensis 雄蕊の托葉が発達 トウワタ Asclepias curassavica ガガイモ科 追加 追加 子房の着座位置 副花冠を持たない品種 有す品種「マダム・バタ 「イエロー・バタフライ」 フライ・イエロー」 子房上位 蕊柱の托葉が変形 トケイソウ Passiflora caerulea 子房中位 子房下位 記号: プルプレオフスカ ‘レッドボタン’ Hoya purpureofuscaガガイモ科 花托が発達 教p.12 裸子植物門 教p.12 グネツム目マオウ 果実 ♀蕾 ♀ ♂ ソテツ目ソテツ ♀ ♀ マツ目アカマツ 担当者: 山岡景行 ♂ イチョウ目イチョウ ♂ ♂ 果実 イチイ目イチイ (アララギ) マオウ科Ephedra sinica 生薬:エフェドリンが主成分 、鎮咳去痰作用 麻黄湯:抗インフルエンザ効果、健康保険適応 5 生物学 第2章 教p.12 被子植物門 ブナ目ブナ モクマオウ目トキワギョリュウ 教p.12 ブナ目クリ 雌花 雌花 雄花 雌株 ブナ目シラカバ 雄株 雄花 雌花 クルミ目オニグルミ 雄花 ヤナギ目ネコヤナギ 教p.12 イラクサ目イラクサ ヤマモガシ目キングプロテア タデ目ヤナギタデ イラクサ目クワ サボテン目ゲッカビジン ヤマモガシ目マカデミア キンポウゲ目クリスマスローズ アカザ目アカザ モクレン目コブシ 萼片 教p.12 蜜弁 シロザ (おい) アカザChenopodium album アカザ科中国原産の帰化植物 (ホウレンソウ・オカヒジキもアカザ科) 教p.12 笈 やどりせむ あかざの杖に なる日まで (芭蕉、笈日記 所蔵 ) c.f. 教p.12 キンポウゲ目セツブンソウ 距を持つ花弁 Chen:”鳥”+podion:”小さな足”(gr.) 1688年6月、己百(きはく)の招きで岐阜、妙照寺を訪れた時の挨拶句。 「アカザが秋になって杖になり得るまで、滞在させてもらう」と言う意味。 担当者: 山岡景行 キンポウゲ目ミヤマオダマキ 6 生物学 第2章 教p.12 キンポウゲ目キクザキイチゲ キンポウゲ目ミヤマオダマキ 教p.12 コショウ目コショウ ウマノスズクサ目 ウマノスズクサ キンポウゲ目ミヤマトリカブト ウマノスズクサ目 カンアオイ キンポウゲ目ムベ キンポウゲ目ヒツジグサ コショウ目ハンゲショウ コショウ目ドクダミ 教p.12 サザンカの花弁は分離する 教p.12 オトギリソウ目オトギリソウ オトギリソウ目ツバキ科 タチカンツバキ (Camellia sasanqua cv. Fujikoa) (サザン カの園芸品種) ツバキ科 Hypericum, or セイヨウオトギリソウ ヤブツバキの花弁は分離しない Camelliaにはサザンカ類も含まれるが、便宜的に合弁花 とされる。 サラセニア目サラセニア 教p.12 教p.12 ケシ目カリフォルニアポピー 以下、比較的馴染みが薄いもの 以下 比較的馴染みが薄いもの バティス目? カワゴケソウ目トキワカワゴケ 担当者: 山岡景行 ケシ目コマクサ ヒドロスタキス目 ? ムクロジ目ムクロジ バラ目Cassia Sp. p バラ目カラスノエンドウ バラ目ネムノキ バラ目クララ 7 生物学 第2章 教p.12 ムクロジ目ツリフネソウ科 ユリ目ユリ科 ヒメサユリ ツリフネソウ (Impatiens textori) チャイブ Allium schoenoprasum Lilium rubellum Tricyrtis:treis(3)+ kyrtos(曲) 「曲がった3枚の外花被」 キツリフネ(I. noli-tangere) APGではユ リズイセン科 ホウセンカ(I. balsamina) インパチェンス(I. walleriana) 追加 ユリ目アヤメ科の花々 ホトトギス アルストロメリア Alstroemeria Saturne Tricyrtis hirta アヤメ科の花の構造;ジャーマンアイリスを例として 追加 内花被 3列した花柱 外花被 ジャーマンアイリスI. germania ヒオウギアヤメ Iris setosa ヒオウギ Belamcanda chinensis エヒメアヤメ I. rossii 柱頭 カキツバタ I. laevigata ノハナショウブ I. ensata var. spontanea 雄蕊 雄蕊 キショウブ 追加 側弁 ラン科の花の構造:シンビジュウムを例として 花式図 追加 子房の断面 背萼片 上顎片 唇弁 側弁 側萼片 パフィオペヂラム 1 蕊柱 3 唇弁 葯帽 花粉塊 蜜腺 花粉塊 葯帽を除去 蕊柱 担当者: 山岡景行 パフィオペヂラムの側萼片 柱頭 5 側面 腹面 蕊柱(ずいちゅう) 4 胚珠 側顎片 ラン目 6 2 側面縦断面 子房(開花時にねじ れて上下逆転する) 8
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