1 . 2 外 観 検 査 と「 感 性 」 「 生 理 的 機 能 」も「 精 神 的 機 能 」も 上 手 く 管 理 し 働 か せ る こ と が で き れ ば 、 五 感 に 加 え て 、 理 屈 で は 説 明 し が た い 、 鋭 く も の ご と の 本 質 を つ か む 心 の 働 き 、 す な わ ち「 第 六 感 」の よ う な 感 覚が働き、機械では到底検出できない不良の発見をする場合がある。また、動物や人の優れ たところは、ある機能に十分な能力がなくても、他の能力をパワーアップして補うことがで きる点にあり、 「生理的機能」 「 精 神 的 機 能 」を 固 体 に 合 わ せ て 自 然 と バ ラ ン ス よ く 働 か せ て い くことができる。ある機能の能力が極端に低いと別の機能が飛躍的に高まることがあり、こ の 場 合 も あ る 種「 第 六 感 」が 働 い て い る よ う に 見 え る 。 第 六 感 は「 感 性 」と も 呼 ば れ て お り 、 検 査 員 に は こ の 感 性 の 高 い 人 を 選 定 し 、 教 育 法 や 環 境 を整えて訓練し、さらに高めることが重要である。一般的にも、感性は、感覚を磨き、知識 を 備 え 、意 欲 を 維 持 し 、そ れ ら が し っ か り 機 能 す る 環 境 を 整 え る こ と で 向 上 す る と 言 わ れ る 。 1 . 3 「 感 性 」を 維 持 向 上 す る 誤 差 因 子 の 管 理 官能検査と外観検査はよく同義語で語られるが、官能検査では精度向上の方策として誤差 因 子 を「 恒 常 化 」 「教示」 「 除 去 」で 管 理 す る こ と が 重 要 と 言 わ れ る 。 恒常化は検査員の選定や正確な規格基準、心地よい作業環境などを常に一定に保つように 管理することであり、教示は検査員に情報与え、また心得などを教育すること、除去は検査 の阻害要因となる情報や環境を排除または予防するよう管理することである。 2.検査員の選び方 2.1 機能と識別能力 五 感 を 使 う「 官 能 評 価 」は「 分 析 型 評 価 」と「 嗜 好( 消 費 者 )型 評 価 」が あ る が 良 品 不 良 品 の 選 別 は「 分 析 型 評 価 」に な る た め 、選 考 や 訓 練 に お い て も そ れ を 意 識 し た 方 法 を 採 る 。 「分析型評 価 」で 重 要 な の は 知 覚 し た 信 号 が「 同 じ か 違 う か 」 「 違 う 場 合 ど の 程 度 違 う か 」を 正 確 に「 識 別 」 することである。 「 生 理 的 機 能 」で は「 視 覚 」・「 嗅( き ゅ う )覚 」・「 触 覚 」・「 聴 覚 」・「 味 覚 」の 五 感 に よ り 基 準 と の 差 や 、 差 の 大 き さ の 順 位 付 け を 限 ら れ た 時 間 内 で で き る「 生 理 的 識 別 能 力 」が 問 わ れ る 。 02 「 語 彙 力 」を 高 め て い く こ と で 、 あ る 程 度 向 上 す る こ と が 訓 練 結 果 で わ か っ て い る 。 こ れ が 「 第 六 感 」に 繋 が っ て い る と 筆 者 は 考 え て い る 。 詳 し く は 4 . 検 査 員 の 教 育 訓 練 の「 匂 い 識 別 訓 練 」で 事 例 を 紹 介 す る 。 2.3.4 新規採用者で精神的識別力を評価するには 「 人 を 外 見 で 判 断 す る な 」と い わ れ る が 、 検 査 員 選 定 は ま ず 外 見 か ら 入 っ て も 良 い 。 採 用 担 当 は 良 い 検 査 員 を「 外 見 = 外 観 検 査 」で 見 極 め る 能 力 が ほ し い 。 新 規 採 用 の 場 面 で は 短 時 間 で の見極めは困難ではあるが、履歴書の内容、面接での服装、応答内容や表情、姿勢などで判 断していく。 「 商 品( 作 業 )へ の 興 味 」で は 、 ま ず 服 装 か ら 見 る 。 服 装 は 華 美 に な ら な い 程 度 で 、 カ ジ ュ ア ル で も 構 わ な い が 、最 低 外 出 着 、訪 問 着 で あ る こ と で 、ト レ ー ナ ー や ジ ャ ー ジ 、ス ニ ー カ ー 、 サ ン ダ ル は 認 め な い な ど は 最 低 条 件 に す る 。 自 分 が ど の 様 に「 感 じ ら れ る か 」と い う 自 分 へ の 関心は大切で、次に常識的にどのような服装で行けばよいか、シーズンにふさわしいか、時 代遅れでないスタイルかなど、周りにどの程度関心を持っているかが服装で端的に現れる。 また、自社が取り扱う商品が装飾品であれば面接時に関連の装飾品を身につけているか、化 粧品であれば、お化粧をしているか。日用品であれば普段からよく利用しているかなど、外 見や質問でその興味の度合いを計ることができる。一般品でない場合は作業現場を見せ、感 想や質問が出てくればその内容、表情などで興味があるか判断していく。質問感想が出なけ れば残念ながら興味はないし、あったとしても素直に表現できなければ検査員としての採用 は見送った方が良い。 「 情 緒 安 定 性 、 作 業 態 度 」お よ び「 客 観 的 理 解 力 、 表 現 力 」の 評 価 で は 、 履 歴 書 の 内 容 や 応 答や表情、姿勢で判断していく。応答は質問事項をしっかり聞きとり、速やかに聞こえるよ うにはっきり答えること、表情は明るく、質問者を見ていること、姿勢は背筋を伸ばし、正 面を向いていることなど、一般的な採用面接時の注意事項は最低条件である。検査員適正か らもう少しポイントを絞ると、応答の答えでは、 「相手に理解してもらえる言葉で回答してい る 」こ と が 客 観 的 な 理 解 力 表 現 力 の 評 価 に で き る 。 ま た 、 「落ち着いて答えている」 「言い方が は っ き り し て い る 」こ と に 加 え 、 「 信 念 」が 感 じ ら れ る 答 え 方 で あ れ ば 、 再 現 性 が 高 い と 判 断 し、おそらく不良の検出や判定にブレがないと思われる。表情では、特に視線に注意する。 視線が泳いでいたり、採用担当者以外の方向を見ていることが多いのは、自信の無さから不 安を感じていたり、真実を話していない場合がある。そういった者は検査員には不向きであ 09 表 3 検査対象と要求される環境条件 検査対象 検査の種類 特に要求される条件 化粧品 視( 色 、 異 物 、 キ ズ )・ 臭 ・ 触 ・ 異 常 音 昼間照明、局部照明、無臭、恒温、 恒湿、換気、無騒音 食 品 視( 色 、 異 物 )・ 臭 ・ 触 ・ 味 昼間照明、無臭、恒温、恒湿、無騒音 アンプル 視( 異 物 ) 暗 室 内 、 一 定 照 度( 1 0 0 0 L x ) ペイント 視( 色 ) 昼光照明 視( 色 、 キ ズ ) 無指向性照明、局部照明、無演色性 操縦性、安定性、すわり心地 周回路、人口悪路、横風発生装置 異常音 低 騒 音( 4 0 d B 以 下 )、 無 振 動 視( 光 沢 、 し わ 、 色 な ど ) 昼間照明 風合い、着用感 防音、防振 視( 色 な ど ) 照明 異常音、騒音 防音、防振 聴 無 騒 音 、防 音 、残 響 、一 定 音 圧 、恒 温 、 恒湿 聴 無騒音、防音、 特性既知のシミュレート 視( 色 、 キ ズ )・ 触 昼間照明、局部照明、無騒音 自動車 繊維、織物 コンプレッサー オーディオ 通 信 機 ・ 電 話( 携 帯 ) 3.1 温湿度 温 湿 度 管 理 は 空 調 設 備 の 能 力 に 頼 る こ と に な る が、 一 般 的 に 快 適 と 言 わ れ る の は、 室 温 18 ∼ 22 ℃、 湿 度 40 ∼ 60% と さ れ る。 ま た、 検 査 機 器 の 校 正 の そ れ は 18 ∼ 25 ℃、20 ∼ 80% である。また、近年はエコ活動で推奨される室温は夏季 26 ∼ 28℃、冬期 18 ∼ 20℃で ある。これらをもとに、季節、結露、作業服、検査員の年齢なども考慮し、各検査施設で設 定すればよい。室温 24℃± 2℃、湿度 40 ∼ 60% あたりが望ましい。温度は温度計で監視し 空調機の設定温度を適宜調整する。湿度は空調機での自動設定である。季節によっては 24 時間運転や自動運転開始で、検査開始時にはすでに温湿度条件になっているようにする。 3.2 照 明 照 明 で は「 照 度 」 「 色 温 度 」が 検 査 に 影 響 す る 。 照 度 は J I S で 作 業 場 ご と の 推 奨 照 度 が 提 唱 さ れ て い る( 表 4 J I S 推 奨 照 度 参 照 )。 こ れ に よ る と 検 査 作 業 で は 1 , 5 0 0 L x( ル ク ス )前 後 が 望 ま し い 。 一 般 的 に 会 社 や 工 場 の 建 築 時 に「 部 屋 」は 会 議 室 、 事 務 室 と し て 1 , 0 0 0 ∼ 1 , 2 0 0 L x に なるように照明設備が配置されるので、検査室とする場合はあらかじめそのように仕様指定 す る か 、 別 途 ス タ ン ド 照 明 な ど を 追 加 し て 照 度 を 確 保 す る 。 色 温 度 は 5 , 0 0 0 ∼ 6 , 5 0 0 K( ケ ル ビ ン )を 必 要 と す る 。 色 温 度 は 色 識 別 に 影 響 す る と と も に 、 検 査 員 も 6 , 5 0 0 K あ る と 眠 気 を 11 開発試験担当 ↑匂い 原料検査員 製品検査員 材料検査員 認定基準 事務員、ライン作業者 認定基準 ←色 図 1 パ ネ ル 属 性 と 識 別 能 力 の 分 布( イ メ ー ジ ) 訓練を進めるにあたり、年齢や経験年数と能力の関係を見ると「図 2 年齢と色差識別能力 の散布図」などから、 「 色 差 識 別 能 力 」は 若 年 層 で は 特 に 訓 練 を し な く て も 識 別 能 力 を 持 っ て いるが、加齢により能力は低下する。ただし、若年から検査員として作業・訓練している場 合は高齢になっても識別能力が衰えることはないということがわかった。そのことから、色 差 識 別 能 力 は 加 齢 に よ り 低 下 は す る が 、 繰 り 返 し 訓 練 に よ り 効 果 が 期 待 で き た 。「 図 3 年 齢 と に お い 識 別 能 力 の 散 布 図 」 な ど か ら「 匂 い 識 別 能 力 」は 加 齢 で の 能 力 低 下 も 見 ら れ る が 、 個 人差が大きく、その個人差が何から来るのか、さらに解析しその結果に基づいて訓練をして いった。 17 認定基準を 40 点に仮設定して始めたが、一回目が 60 点以上のパネルは向上が認められなか った。これらから、色識別能力では一回目に 60 点クリアがパネルスクリーニングの基準と することができる。 写 真 1 1 0 0 H u e Te s t 70.0 70.0 60.0 60.0 50.0 50.0 評 評 価 価 点 点 40.0 40.0 30.0 30.0 20.0 20.0 10.0 10.0 0.0 0.0 1回目評価 1回目評価 2回目評価 2回目評価 3回目評価 3回目評価 図 4 色 差 識 別 の 繰 り 返 し 変 化( 訓 練 効 果 ) 140.0 140.0 120.0 120.0 100.0 100.0 評 80.0 評 価 80.0 価 点 点 60.0 60.0 40.0 40.0 20.0 20.0 0.0 0.0 1回目評価 1回目評価 2回目評価 2回目評価 3回目評価 3回目評価 図 5 3 回合計が 120 以上のグループの繰り返し変化 19 4 . 2 . 3 官 能 評 価 教 育( 訓 練 ) 「 色 差 識 別 能 力 」と「 匂 い 識 別 能 力 」な ど 生 理 的 識 別 能 力 の 維 持 向 上 訓 練 。教 育 体 系 の 中 に 組 み入れておく。 4.2.4 その他の教育や訓練 試験測定員教育、測定機器校正員教育、ISO/QC 教育など。 教育を実施し、実施した教育や訓練が有効であったかを評価技能履歴に反映し、次のステ ップや到達点を明確にして段階的に養成していく。 知識技能を身につける以前に、検査員は、社内ルール、作業ルールを守ること、整理整頓 の徹底、清潔なユニフォームのしっかりした着用、靴はかかとを踏まない、挨拶をはっきり するなど、社員の模範となるような言動行動を心がけるように指導することが大切である。 ある程度の緊張感を持たせて検査に従事させるようにしたい。 4.3 検査員認定制度 検査員候補者は前述の教育訓練内容を一定期間で実務作業および座学、実習訓練で履修 し 、 一 定 基 準 に 達 し た 者 を「 検 査 員 認 定 」し て い く の が 良 い 。 す で に 検 査 員 認 定 さ れ て い る 検 査 員 を 教 育 担 当 と し て O J T( オ ン ザ ・ ジ ョ ブ ・ ト レ ー ニ ン グ )教 育 を 一 定 期 間( 3 ∼ 6 ヶ 月 )実 施 し 検 査 実 務 と ノ ウ ハ ウ を 学 ば せ る 。 そ の 後 、 実 務 観 察 し「 技 能 」レ ベ ル を 評 価 し 、 「 筆 記 」に よ る 知 識 習 得 レ ベ ル と「 色 差 識 別 能 力 」な ど の 評 価 能 力 レ ベ ル の 認 定 試 験 を 行 い 、そ の 結 果 を 踏 ま え 検 査 監 督 者 の 推 薦 に よ り 、検 査 責 任 者 が 認 定 す る 。 認 定 の ラ ン ク に よ り 特 に 非 正 規 社 員 に は「 手 当 て 」を 支 給 す る こ と が 望 ま し い 。 検 査 員 と し て の責任感、モチベーションアップにつながる。尚、認定されなかった候補者に対しては改め て 一 定 期 間( 1 ∼ 3 ヶ 月 )の 訓 練 を 行 い 、 再 試 験 を 実 施 す る 。 検 査 員 認 定 の 更 新 に つ い て は 、日 常 の 検 査 実 施 状 況 を 試 験 責 任 者 が 観 察 し「 知 識 」 「 技 能 」の 評価を行い検査員として継続するのに相応しいか判断する。また、 「 色 差 識 別 能 力 」な ど の 評 価 も 合 わ せ て 実 施 す る 。 一 定 期 間( 6 ヶ 月 ま た は 1 年 )の サ イ ク ル で 実 施 し 、 検 査 員 の 更 新 を 行う。 22
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