中野区立図書館報『シイビブリア』Vol.9

1927-1943
中野時代の
棟方志功をたどる
P.1 seebiblia vol.9
中野区立図書館ホームページへ行く
かわいかんじろう
みずたにりょういち
く つ かの展 覧 会に入 賞してい ました
学 び な がら 作 品を作 り 続 け ます。い
史 な ど と切 磋 琢 磨して、文 学 や 詩 を
油 彩 画 家を目 指して精 力 的に展 覧
会 に 出 品 をして い た 志 功 は、松 木 満
この 作 品 は、受 賞 はのがし ま し た
が、た だ な ら ぬ 魅 力と将 来 性 を見 出
動機に関連しているかもしれません。
袋 が 大 和 町 と 改 名 し た こと も 制 作 の
り ま すが、当 時 志 功 が住んでい た 沼
㎝・ 幅
発行されています。
他力のうつくしさ
志 功 は 「 私 は 自 分の 仕 事 に 責 任 を
持 って い ま せ ん 」 と 言 って 周 囲 を 驚
はんが
もの 棟( 方志功 『板散華』 」) と言及して
はんさんげ
肉 筆 では 出 し え な い 効 果 を 展 開 す る
か せ た そ うですが、
「 板 画は間 接 的
よ
な 働 き に 依 っ て 作 ら れ る も の 丈 に、
中野在住時代の志功のあゆみと、中野
の出来事を年表にまとめました。
現在の西武線が開通し、新
井薬師・沼袋・野方・鷺宮
の各駅が開業
松木満史のアトリエで共同
生活を始める
油絵「雑園」が帝展入選
赤城チヤと結婚
国画会展に版画「貴方行路」
他4点入選
長女・けよう誕生
油絵「荘園」が帝展で入選
中 野 町 と 野 方 町 が 合 併 し、
「中野区」誕生
沼袋(現在の大和町三丁目)
に家族と移住
り じ
中野区に「大和町」が誕生
ぱ
長男・巴里爾誕生
次女・ちよゑ誕生
国画会展に版画「大和し美
し」を出品
西武線に都立家政駅が開設
大和町内で転居
版 画「 釈 迦 十 大 弟 子 」( ※
1ページ参照)を制作。翌
年国画会展にて佐分賞受賞
大和尋常小学校(現・大和
小学校)開設
よしあき
次男・令明誕生
初の随筆集『板散華』刊行
渋 谷 区 代 々 木 山 谷( 現・
代々木)に転居
seebiblia vol.9 P.2
中野と棟方志功のあゆみ
両論でしたが、柳宗悦らの協力なバックアップで展示、出世作となります。
一 番 素 晴 ら し い と い う 意の 一 説 があ
が、川 上 澄 夫の版 画 作 品に感 銘 を 受
し た 日 本 民 藝 館 創 始 者・ 柳 宗 悦 の
かわかみすみお
け たことを き っ か け に、版 画の 道 に
買 上げと な り ま す。その 際、感 激 屋
やなぎそうえつ
進 むことを 心に 決 め ま す。 そ して そ
た り、 抱 き つ い た り、 詩 を 朗 読 し
れ ま での 写 実 的 な 構 造 を 打 ち 破 り、 の志 功は嬉しさのあ ま り 飛 び ま わ っ
棟 方 志 功の 独 創 的 な 作 風 が 確 立 し ま
た り して 喜 ん だ そ うです。 ま た、こ
やすだよじゅうろう
す。ま た 版 画 制 作の 傍 ら、中野で 知
枚 高さ
1999年にふるさと記念切手として
り合った保田與重郎らとの交流から、 の作 品は佐 藤 英 一 生 誕 百 周 年として
本の装丁も数多く手がけました。
運命の大作と出会い
さとうえいいち
やまとしうるわし
1936年、国画会展に佐藤英一の
ヤ マ ト タ ケ ル を テ ー マ にし た 叙 情 詩
が画面を埋め尽くした 「大和し美し」
代表作「釈迦十代弟子」
図 か ら 成る (
照 ・ 棟方志功記念館所蔵) を制作。
㎝) 大 作ですが、志 功は釈 迦の弟
子 達 の 姿 を 心に 浮 か ん だ ま ま 寝 食 も
い ま す。これは彫 り や 擦 り な どの制
い。私は仏 様の手 先に
な って、版 木の上を転
げ 回 っ て い る だ け だ。
そこから自然に生まれ
年齢
棟方志功という人
この人懐っこい笑顔が印象的な人物を
ご存知でしょうか。
棟方志功。その生命力溢れる力強い独
創的な作風は、観る者に強い感動と印象
を残します。晩年には国際的な賞も数々
受賞するなど、世界のムナカタと呼ばれ
世界に愛される存在でもあります。
その彼が中野に在住していた1927
年から1943年の 年間は、版画に目
覚め、精力的に多数の作品を残し自身の
道を切り開いた重要な期間でした。
今回は中野在住時代の作品や周辺人物
のまほろば」、つまり大和は国の中で
を 取 り 上 げ、志 功の 軌 跡 を た ど り ま す。 を 出 品。この 詩の 冒 頭 に 「 大 和 は 国
刻々と変化していく作風や作品のテーマ
の変化を感じてみてください。
単身上京、版画にめざめる
1 9 2 4 年、 志 功 歳。 ゴ ッ ホ
の「 向日 葵 」 を見て油 彩 画 家を志
し、「 わ だ ば ゴ ッ ホ に な る 」 と 単 身
まつきまんじ
上京。 1927年には同郷の洋画家 ・
松木満史のアトリエ(当時の沼袋南)
で共同生活を始めます。
素直に学びとる
を機に、志功が生涯に渡って師と仰ぐ
はまだしょうじ
柳宗悦や民藝運動を同じく志す陶工 ・
濱 田 庄 司 や 河 井 寛 次 郎、水 谷 良 一 等
と 出 会 い、彼 ら か ら 学 ん だ 仏 教 思 想
作のプロセ ス が間 接 的 ・ 他 力 的に流
忘 れて板 に 刻み、わ ず か 1 週 間で完
などを大いに吸収して、新しいテーマ
が 働 く た めで、板の 性 質の 根 本 を 捉
えて生まれたものを版画ではなく「板
れて、自 分の 力 を 超 え た 自 然の 作 用
成 さ せてし ま っ た そ うです。し か も
を開拓していきました。
かんのんきょうはんがまき
また 「観音経版画巻」 は 「裏彩色」 出 来上が ってみると不 思 議 と 人 ず
を初めて試みた作品です。この方法は、 つ 対 称の 構 図 と な って いて、志 功 は
いて戦火を逃れたと言います。
同 作 品は翌 年、国 画 会 展にて佐 分
賞 を受 賞。ま た ブ ラ ジルの第 回 サ
さぶり
木は、野 方の 知 人の 防 空 壕 に 入 って
柳 宗 悦 に 「 濃 い 不 透 明 な 顔 料 を 版 画 「自分で考え得ない仕事に上がりまし 画」 と呼んでいます。
の上から塗ってしまうと版の線が埋も た 」 と語 ってい ま す。そして志 功の
そして晩 年、渡 米し講 義 や 公 開 制
れて見えない。絵具を裏から差すよう 数多くの版木が戦災で焼失したなか、 作を行った際に、「自分の版画は、私
にした 方がさらに良 いのではな い か 」 代表作 「二菩薩釈迦十代弟子」 の版 が彫 っているのではな
と薦められ、以後多くの作品に取り入
れた手法です。従来のやり方に固執せ
ず素直に取り入れた結果、さらに素晴
らしい作品が生まれました。
さでは な く、真 に 迫る
ン パ ウロ・ ビ エ ン ナーレ 国 際 美 術 展 てくるのだ 」 と言 って
にて 版 画 部 門 最 高 賞 ( 1 9 5 5年 )、 います。技巧的な巧み
回ヴェ
西
暦
1
9
2
7
24
1
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1
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3
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むなかたしこう
志功は周囲の意見や学んだことを素 1939年、上野博物館で興福寺の
しゅぼだい
早く自分のものにして、作品に活かす 須 菩 提にイ ン ス ピ レーシ ョ ンを受 け
にぼさつしゃかじゅうだいでし
ことができる人でした。「大和し美し」 「二菩薩釈迦十大弟子」(1ページ参
棟方板画としては一番古いものです。
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P.3 seebiblia vol.9
そ の 翌 年 には イ タ リ ア の 第
中公文庫 / 2003 / 中央所蔵
16
21
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30
1903( 明 36) 年 ~75( 昭 50) 年。
感 動 を 与 え る 作 品 を多
数 生み 出 し たのは、こ
棟方志功 / 著
しもさわさきはちろう
ニ ス ・ ビ エ ン ナーレでも国 際 版 画 大
賞を受賞します。
の 思 想 あ って な の か も
しれません。
はんごくどう
版画家・下沢木鉢郎宛の絵葉書に使われたもので、
志 功 の 独 創 的 な ス タ イ ルは 今 も 世
界 に 高 く 評 価 さ れ、「 世 界 の ム ナ カ
「板極道」
それに加えて文字が画面を埋め尽くしていたため、当時の版画界では斬新なものとして賛否
所蔵館
東中野
中央 他
中央 他
江古田
書名
著者名
出版者
棟方志功全集 (全12巻) 棟方 志功
講談社
棟方志功の世界
長部 日出雄 講談社
板散華
棟方 志功
講談社
棟方志功の眼
石井 頼子 里文出版
1
9
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「中野眺鏡堂窓景の柵」 (1927)
タ」 と呼ばれ親しまれています。
【参考文献】※所蔵に基づく情報であり、初版ではありません
1
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33
宅を「眺鏡堂」と名づけていました。この作品は、
5
3
1
9
3
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35
をテーマに写実的に描きました。当時、中野の自
90
当時はまだ版画は芸術としての評価が低かったため、会場スペースが限られていたにも関わ
(濱田益水撮影)
ることなく自由に彩色されていて躍動的。
1
9
4
0
37
なかのちょうきょうどうそうけい
1
らず、志功が出品したのは、なんと 20 図にも及ぶ大作。当初は展示を断られたと言います。
青森県出身。日本の誇る版画家。
裏彩色がほどこされた初期の版画。線に囚われ
1
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38
12
30
「大和し美し」(1936) 右よりはじまりの柵 , ヤマトタケルの柵 ( 棟方志功記念館所蔵 )
棟方志功
「観音経版画巻」 (1937) 阿修羅の柵
1
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油彩画家を目指して上京した棟方は身近な風景
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1
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3
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中野時代の棟方志功をたどる
中野時代の棟方志功をたどる
基本図書を巡って
超え、空間を超え、参照され、研究さ
どんなジャンルでも、読まなければ
ならない基本的な図書がある。時間を
づいていくために共に読み進めると
の起源』 を取り上げる。その本へ近
そ こで、 今 回 は 「 進 化 を 科 学 に
した」 一冊、C・ダーウィンの 『種
これを機会に、基本図書の海に飛
びこみ、思索の波を超え、新たな読
して 歴 史 に 近 づ き う る か の 探 求 の
【『種の起源』 の起源】
【きっかけは、手紙】
ダ ー ウィン が、『 種の 起 源 』 と
してまとめるき っ か けとな っ たの
が、 ウ ォ レ ス か ら の 手 紙 だ っ た。
『 ビ ー グル号 航 海 記 』 に憧 れ、自
らも調査に赴いたウォレスも適者
生 存 な どのア イ デ アにた ど り 着
いていた。その手紙を受け取った
ダーウィンは、1 8 5 8年のリ ン
いかがだろうか。
虫の声を聴 き ながら、反 証しては
今や科学となった 【進化】 を証
明した 『種の起源』。秋の夜長に、
後を絶たない。
J ・ グールドを始め、未だ刊行が
『利 己 的 な 遺 伝子』 のR ・ ドー
キンス。『ワンダフルライフ』 S・
いる。
まれなかっただろうと振り返って
量にな り、そ れ だ けで、人 々に読
容を圧縮しなければ、3~4倍の
のウ ォ レ スの論 文に触 発され、内
刊 行 し た。『 自 伝 』 に お い て、こ
その論文を基に、一般公衆に向
け、『 種の 起 源 』 を 1 8 5 9 年に
業に入ったのだった。
『 種の起 源 』 の文中にも登 場する、 ネ学会にてウォレスと同時に発表
マ ル サ ス の 『 人 口 論 』。 個 体の 増 加 すべく、自らの思 索をまとめる作
よ り 小さい 食 糧 生 産によ り、生 物 間
で競 争 が発 生、そこで環 境に適 応し
た 者 が競 争に勝 ち、子孫を繁 栄させ
るとい う 考 察をまとめ たものだ。彼
は、ここか ら 適 者 生 存 ・ 自然 淘 汰と
い う 進 化 論の大もとの思 想を生み出
していった。
ダ ー ウィン が 調 査 中 に 耽 読 し た と
されるのが、ラ イ エルの 『 地質 学 原
理 』 で あ る。 本 書 か ら、 地 殻 に は、
自 らを形 作る一 定の働 き が、連 続し
た 変 化を伴 って行 わ れていることを
知った。そこから、生物も起源から、
連 続 し た 変 化 にお いて 形 成 さ れて き
たという 「進化」 概念が生まれた。
【ダーウィン以後】
現 在 の 生 物 科 学 への 橋 か け と
な っ たのが、メ ン デルとその遺 伝
の法 則である。これは、1 8 6 5
年の講 演で発 表 され た 内 容 を 基
に、1900年にド ・ フリース等
が再発見した 「優性・分離・独立」
の法則のこと。『雑種植物の研究』
として、1 8 8 6年にまとめ ら れ
た。これにより、観察から廻った
進化の理論は実証され、遺伝学が
生まれ、現在まで繋がっている。
seebiblia vol.9 P.4
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『
種の起源』を読むために
れ続ける資料がある。
していく。
ただろうか。言葉が独り歩きし、肝心
書の楽しみを見つけてみてはいかが
真相に迫ることができる図書を紹介
しかし、一体私たちはどれだけ、そ
のような図書と触れ合ってきただろう
の資料そのものに触れることがどれだ
だろうか。
か。その思想と闘い、思索を深めてき
けできているだろうか。
【多くの著作】
『 種 の 起 源 』 を 生 み 出 すにあ た り、
ダーウィンには重 要 な 記 録があっ た。
南太平洋への、若き日の調査旅行の記
録 『ビーグル号航海記』 である。ここ
での体験は、彼自身の研究の礎となっ
ている。科 学 者の記 録 だ けではな く、
一大旅行記として、子どもから大人ま
用による肥沃土の形成およびミミズの
書でもある」 と。
『ダーウィン進化論』
で幅広く読み継がれている。
習性の観察』 では、表面上、ミミズが
きむらもとお
また、目に見える進化ではなく、
目 に 見 え な い 分 子 世 界 での 進 化
は、木村資生が1968年に 『N
ewton』で発表した「中立説」、
これが現代の基礎的な考えとされ
ている。その木村が1 9 8 8年に
電子ブックサーチでもご覧いただけます。
研 究 は 死 の 直 前 ま で 続 い た。 ミ ミ ズの習 性に関する論 考である
1 8 8 1 年 に 出 版 し た 『 ミ ミ ズの 作 ととも に、 科 学 的 な 方 法 で い か に
土を動かし、その状態を改良する様を
ダーウィンは、『種の起源』 をは
じ め、地 質 や 動 物 を 対 象 とし た 研
量的に実証する内容に見える。
しかし、『ミミズと土』 を訳された 究 を つ づ け た。 人 間 を 対 象 とし た
平凡社ライブラリー版の解説で、S ・ ものは、『人類の起源』 にまとめら
れている。『種の起源』 では、詳し
記 し た 『 生 物 進 化 を 考 え る 』 は、
(木村資生、岩波書店、中央館所蔵)
近年発売の
▲ Oxford 大学所蔵 WOODALL 著のダーウィン
く 明 か さ れ な か っ た 人 間 に つ いて
ダーウィン か ら自説 まで至る、進
『生物進化を考える』
岩波書店版
の 考 察 と、性 淘 汰 原 理 の 説 明 が 中
化の理論的展開がわかりやすく説
※原文は、下記サイト及び、中野区立図書館
(左)
心の、
姉妹編ともいえる内容である。
明されている。 (渡辺弘之訳、平凡社、複数館所蔵)
翻訳がある。
「総括と結論」 等において、社会
的 動 物 と 呼 ば れ る まで高 ま っ た 道
進 化 論は研 究 者 だ けのものでは
な い。1 8 7 2年に、ダーウィン
(渡辺政隆訳、早川書房、中央館所蔵)
(右)
衝動も、自然淘汰の結果であるとし
も寄稿した 『Popular S
cience』 誌が創刊されて以
『ミミズと土』
には多くの
ている。その理論への反証が、現在
(ニュートンプレス、複数館所蔵)
「ProjectGutenberg」
S・J・グールド 『ワンダフルライフ』
(荒俣宏訳、平凡社、江古田所蔵)
(日高敏隆ほか訳、紀伊國屋書店、複数館所蔵)
『ビーグル号航海記 新訳(上・下)』
ドーキンス『利己的な遺伝子 増補改訂版』
(渡辺政隆訳、光文社、複数館所蔵)
光文社版
伝記『CHARLES DARWIN』より、1878 年に撮影
降、多くの本が発表されてきた。
(河内洋佑訳、朝倉書店、所蔵館なし)
『種の起源(上・下)』
ライエル 『地質学原理(上・下)』
(八杉龍一訳、岩波書店、複数館所蔵)
◀発刊以来
の生物科学を支えているといえる。
マルサス『人口論』
☆ダーウィン著作☆
(斉藤悦則訳、光文社、中央館所蔵)
『種の起原 改版(上・下)』
中野区立図書館ホームページへ行く
P.5 seebiblia vol.9
,2014/8/24 確認)
(
J ・ グールドは断言する。「この本は
▲『ビーグル号航海記』も定番と言える。
▲ダーウィンが耽読した『地質学原理』
〇その他〇
参考文献一覧
▲米国議会図書館所蔵「Bain Collection」より、撮影日不明
徳 意 識 も、そ れ を 凌 駕 する 動 物 的
上は近年出版の平凡社版。
基本図書を巡って『種の起源』を読む
基本図書を巡って 『種の起源』を読む
中野百景 今×むかし 地下鉄に乗って
中野百景 今×むかし 地下鉄に乗って
池袋方面へ
西新宿
柏木一丁目
方南町方面へ
本町通り三丁目
鍋屋横町
本町通り五丁目
新中野
▲青梅街道を走っていた都電杉並線の車両、現在は長
▲営団地下鉄荻窪線開通前の新中野で試
差点は名残を残しつつもその姿は大きく変えている。
02系車両と「東京地下鉄」(東京メトロ)のマーク、
が設置されている。
中野区提供(写真左上)
右は開業した昭和29年から平成7年まで走り続けた
提供:公益財団法人メトロ文化財団
◀長崎電気軌道株式会社提供
営団 300 形車両と「帝都高速度交通営団」のマーク。
本町通り六丁目
提供:東京地下鉄株式会社(写真左・マーク左)
高円寺一丁目
公益財団法人メトロ文化財団(写真右)
高円寺二丁目
東高円寺
崎市を走っている。また、路面電車がいた鍋屋横丁交
▲左は現在丸ノ内線を走っている東京メトロ(営団)
運転をした時の様子。現在はホームドア
蚕糸試験場前
杉並車庫前
荻
窪
新高円寺
馬橋一丁目
▲中野坂上駅で昭和36年2月8日に行
馬橋二丁目
われた荻窪線開通式の様子。
阿佐ヶ谷
南阿佐ヶ谷
提供:公益財団法人メトロ文化財団
杉並区役所
◀都電杉並線と丸ノ内線の内新宿から荻
成宗
窪間を比較したもの。横に並んだ駅が対
天沼
荻窪
応する駅となっている。
荻窪駅前
メ ト ロ
▲「角の文房具屋」として有名だった「文具のエトー」。
鍋屋横丁交差点に並ぶ商店はどれも鍋屋横丁の顔と
して、商店街を活気付けていた。 提供:中野区
▲上:写真は、実際に建っていた
中野オデヲン座を撮ったもので、
現在はマンションとなっている。
▲「杉山公園」も「中野オデヲン座」同様、
『地下鉄に乗って』 下:写真は静岡県伊東市で行わ
では具体的に名前が登場する。主人公はこの間を右往左往
しながら新しい真実に出会う。 提供:中野区
れた映画版のセットである。
提供:鍋屋横丁大通商店会
※(白黒版:長崎電気軌道株式会社公式ホームページ、またはWEB版シイビブリア vol.9 では同社から提供していただいた写真をカラーで掲載している。)
中野区立図書館報『シイビブリア』のページへ行く
seebiblia vol.9 P.6
『地下鉄に乗って』に見える鍋屋横町・新中野駅
ぽ っぽ や
30
た作家、
『鉄道員』、『壬生義士伝』などで数々の賞を受メ賞トしロ
浅田次郎。今回の中野百景では、彼の代表作『地下鉄に乗って』
年には映画化さ
18
にあやかり、昭和 年代の新中野駅と鍋屋横丁を特集する。『地
年にミュージカル、
12
下鉄に乗って』は平成6年に刊行され、同7年に吉川英治文学
新人賞を受賞した。同
れ、その際に特別版が刊行された。その特別版の書き下ろしエッ
セイで、著者は鍋屋横丁出身であり、その当時に見聞きしたも
年の新中野駅や鍋屋横丁が登場する。その描写
39
のを投影したと著されている。実際に本書では、その舞台の一
つとして昭和
中野区立図書館ホームページへ行く
せいち
※(カラー版:長崎電気軌道株式会社提供の写真参照)
は、真偽入り乱れながらも、あたかも読者自身がその場にまぎ
れたかの様に思うほど精緻に描かれている。
『地下鉄に乗って』では、今も残る杉山公園や当時なら誰も
が知っていたであろう「角の文房具屋」なども登場する。その
P.7 seebiblia vol.9
中でも時代の変化を強調する存在として、映画館「中野オデヲ
2014/9/1 確認)
ン座」が登場する。現在、中野区の映画館は「ポレポレ東中野」
(東京メトロ 25
があるのみだが、『映画館のある風景』(キネマ旬報社刊行)に
・「東京メトロ」公式ホームページ
12
の映画館が、区の至る所を映画の看板や
確認)
32
年は
2014/9/1
よると、昭和
(公益財団法人メトロ文化財団運営
54
出版:徳間書店
ポスターなどで彩っていた。「中野オデヲン座」は昭和 年に
・「メトロアーカイブアルバム」
38
「東亜興業」によって開業され、昭和 年にその幕を落とすまで、
(住宅協会/編、住宅協会、中央所蔵)
年に廃止された。実際
昭和 36 年』
青梅街道沿いの娯楽を提供していた。『地下鉄に乗って』の映
・『東京都全住宅案内図帳 中野区 30
画化でも、重要な物語の分岐点として、当時の姿が再現された。
・『東京人』 07年 5月号
(都市出版、中央所蔵)
また昭和 年代は、路面電車の「都電杉並線」と「営団地下
鉄荻窪線」(現丸ノ内線)が並走していた時代でもあり、昭和
ンター、複数館所蔵)
36
年当時の住宅地図では、両者を青梅街道沿いに確認すること
(なべよこ観察隊編、鍋横地域セ
41
ができる。(中央の地図にて再現)以降、自動車の普及と鉄道
-なべよこ観察隊-』
網の充実により、 系統あった都電は「都電荒川線」のみとなっ
・『見たい聞きたい記録したい
た。杉並線も荻窪線の影響により昭和
・『中野区政の歩み 1963-1967』
(中野区編、中央所蔵)
に杉並線を走っていた車両の一部は、現在でも長崎市の長崎電
報社編 キネマ旬報社、複数館所蔵)
気軌道株式会社によって運用され、当時のカラーを再現した車
・『映画館のある風景』 (キネマ旬
両に乗ることができる。(※)
書影提供:徳間書店(タイトル下段))
著者:浅田次郎
区 昭和36年』を基に作成した。
・『地下鉄(メトロ)に乗って 特
(浅田次郎著、徳間書店、複数館所蔵、
『地下鉄に乗って』
▶地図は『東京都全住宅案内図帳 中野
〈参考文献〉
別版』
ロ
本町通り二丁目
中野坂上
ト
成子坂下
メ
新宿駅前
~青梅街道を巡る車両たち~
新宿
中野百景 今×むかし
都電杉並線
『地下鉄に乗って』
丸ノ内線
本とのおつきあい
第三回
「のど割れ」
② 読 み か け の 本 は、 ペ ー ジ を 開 い た ま ま 伏 せ る の を 避
防ぐために
①本を無理に開かない、力を加えない。
本の背には丸みのついた「丸背」と平らな
背 の「 角 背 」 の 2 種 類 が あ り( 図 2)、 さ ら
け、しおりを利用する。
まめちしき
に3種類の代表的な本の開き方「ホローバッ
この3点に注意をすれば、「のど割れ」を減らすこと
ができます。
たせる。
ク」「タイトバック」「フレキシブルバック」 ③ 書 棚 に 本 を し ま う と き は 左 右 の 本 と の 間 に 余 裕 を も
があります。(図3)
小 説 な ど に 多 い ハ ー ド カ バ ー の 本 は、「 丸
図 書 館 の 本 は た く さ ん の 人 が 読 む も の で す。 繰り返し読まれた本は、どうしても傷んでしま 背 」 +「 ホ ロ ー バ ッ ク 」。 開 き や す い の が 特
徴です。
います。少しでも良い状態の本を読んで頂くた
① は、 本 を 読 む と き だ け で な く、 コ ピ ー を と る 際 に
も注意が必要です。
め に、 皆 さ ん に 知 っ て お い て も ら い た い「 本 」 文庫本やソフトカバーの本は「角背」+「タ
イ ト バ ッ ク 」。 の ど の 開 き が 悪 く、 一 度 割 れ
と上手に付き合うコツを紹介していきます。
電話帳などの厚いソフトカバーの本は「角
背 」 +「 フ レ キ シ ブ ル バ ッ ク 」。 開 き や す い
す原因になってしまうのです。 ま た、 ③ は 本 を 閉 じ た 状 態 で す が、 余 裕 の な い 棚 に
ぎゅうぎゅうと詰めることも、「のど割れ」を引き起こ
てしまうとそのままページがとれてしまうこ
着がとれてぱっくりと割れた状態になってしま
ですが、背が傷みやすく、背表紙のタイトル
ともあります。
うことを指します。
が薄れてしまうことがあります。
第 3 回 は「 の ど 割 れ 」 に つ い て で す。「 の ど
割れ」とは、本の「のど」の部分(図1)の接
最も大きな要因は、何度も繰り返し開くこと
による劣化です。また、本を開いた状態で強い
力を加える事も原因となります。
割れてしまったら
「平和について考えるこの 1 冊 Part15」 もし図書館の資料が「のど割れ」をおこして
しまった場合は、そのままの状態で図書館へお
▲フレキシブルバック
・おしゃべり講座 持ちください。のりや万力など、専用の道具を
自由研究・読書感想文 江古田図書館
使って修理をします。
②図書館探検隊
・宿題お助け隊
イベント掲示板
接着剤で背を固めている
育てる ” 耳から聴く読書 ”」東中野図書館
▼角背
▲タイトバック
「絵本で広がる世界一心と頭を
8 月 日水 曜日、中央図書館にて図書館探 検 隊に
参 加した子ども達が、い つもは入 れ な い図書館の裏
・児童文学講演会
側を探検しました。
・ぬいぐるみお泊り会 鷺宮・上高田図書館 ①影絵の世界へ行こう!
・中野ゆかりの作家・文化人 第二回 本町図書館
日 に 影 絵 師 S A K U R A さん を 上 高 田 図 書
▲ホローバック
・「はじめてでも使える!?手話」(手話講座)中央図書館
7 月
綴じ部分と背のあいだに空間ができる
・「のまりんの紙芝居」 野方・上高田図書館
20
「父と暮せば」中央図書館
館に招き、「影絵の世界へ行こう!」 が開催されまし
た。開 催 後、取 材 班はS A K U R Aさんにお時 間を
ふじしろせい じ
いただいてお話を伺うことができました。
『影絵を始めたきっかけは藤城清治さんの元で影絵
の舞台を、お手伝いをしたことです。私は海外旅行を
することが好きなのですが、ヨーロッパを旅行しマリ
オ ネ ッ ト や 人 形 劇の大 道 芸を見て周 り ました。日本
に帰ってきて、「影絵も海外の大道芸のように気軽に
どこでもできるようにしたいな」 と考えて、「出張影
絵」 を始めたんです。
影 絵を始 めるときは、部 屋を暗くしな いとい け ま
せん。小さい子が怖くな ら な い よ う、物 語をする前
に 「これは何の影でしょ う か?」 とい う ク イ ズを出
しています。そこで、暗さに慣れてもらえるようにし
ています。
図書館とそ れ以 外の施 設で影 絵をする時、実はや
り 方を変 えてい ます。図書館とい う 特 性上、バ イ オ
▼丸背
・終戦記念ひとり読み語りしばい
seebiblia vol.9 P.8
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P.9 seebiblia vol.9
リ ン、チ ェロ、ハープな どの楽 器 を使 って生 演 奏 を
してい ま せん。その他の音の大 き さな どにも気 をつ
けるようにしています。ただ、図書館を利用している
子どもたちは、静かにしていることに慣れているので、
助かっています。
』
▼図書館を回る前に探検隊ノートを作りました
「のど」
図1
図 2 背の種類
図 3 本を開いて上から見た図
他に行われた夏のイベント
28
背が固められていないので、そりかえ
るように開く
▲探検終了後、修了書を渡しました
~参加者全員が語る平和を考える 1 冊 江古田図書館 ▲おはなし会をしてくれた SAKURA さん
▲子ども達と一緒に人 形を動かす練習をしました
本とのおつきあい
イベント掲示板
図書館からのお知らせ
図書館からのお知らせ
お気に入りのクリアファイルを再利用して
No.009
図書館からのお知らせ
ブックカバーを作ろう
読書週間を前に、本を大切にして欲しいという想いをこめて、ブックカ
バーを作ります。材料はクリアファイル。お気に入りの柄をつかったり、
上手にできたの まき
だあれ?の巻
自由に絵を描いたり。壊れてしまったクリアファイルも再利用できます。
開催日程:10 月 19 日(日) 15:30 ~ 16:30
定員:20 名 (9 月 19 日~事前申込制 )
鷺宮文庫 開設一周年記念事業
場所:江古田図書館 2 階 会議室
~没後 60 周年 鷺宮を歩いた私小説家 古木鐵太郎~
対象:中学生以上
問合せ先:江古田図書館カウンター または(3319)9301
ビブリオバトル@江古田 冬の陣
~ 50 年後に伝えたい1冊~
「夏の陣」に続き、ビブリオバトルを開催します。
今回のテーマは「50 年後に伝えたい1冊」です。
オススメの本を、ぜひご紹介ください。
開催日程:11 月 3 日(月) 14:00 ~ 15:30
定員:発表者 6 名 (9 月 27 日~事前申込制、多数時抽選 )
※観覧者は事前申込不要
場所:江古田図書館 2 階 会議室
問合せ先:江古田図書館カウンター または(3319)9301
秋のおたのしみ袋
乳児から小学生までを対象に、図書館員がおすすめする本のテーマ別お
たのしみ袋をご用意します。中にどんな本がはいっているかは開けてから
のお楽しみです。
開催日程:10 月 18 日(土)、19 日 ( 日 )
10:00 ~ 17:00
場所:南台図書館 1 階 児童新刊コーナー
問合せ先:南台図書館カウンター または(3380)2661
中央図書館 システム担当
『ニューヨーク・ストーリー
ルー・リード詩集』
(ルー・リード著 梅沢葉子訳 河出書房新社)
請求記号:931 リ
芸術がわれわれの役にたつのか?、世界を変えることができるのか?、分からない。しかし、チェコ
共和国の初代大統領ハヴェル曰く、
「あなたがいたから大統領になれた」と言わしめた作品がここにある。
2013 年に亡くなった著者は、ニューヨークを舞台に、A・ウォーホールがプロデュースした『THE
VELVET UNDERGRUOND &NICO』に始まる美しい詩と音で、ロックとアートを融合した立役者だ。
詩、インタビュー、チェコ共和国訪問記で構成された一冊。作品に溢れた自由を楽しんでみてほしい。
P.11 seebiblia vol.9
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◆鷺宮アーカイブファイル(11月17日(月)~)
昭和初期以降の鷺宮に関する写真ファイルを閲覧
健康運動セミナー
~健康になるために必要不可欠な運動とは~
ゴールドジム東中野東京のトレーナー・坂本真嗣氏、
笠原江梨香氏をお招きし、運動の効果や影響に関する
用として、鷺宮文庫に設置します。鷺宮区民活動セ
講演と体操の実技指導をしていただきます。
学校収蔵品と鷺宮の今昔写真展」でもアーカイブファ
開催日程:10 月 18 日(土) ンターで開催される鷺宮文化村研究会主催「鷺宮小
イルを設置します。
14:00 ~ 15:30
定員:15名 (事前申込制)
◆鷺宮文庫ゆかり展示(12 月 1 日(月)~)
対象:中学生以上
雑誌『改造』の編集者を経て、昭和 10 ~ 20 年代にか
場所:東中野図書館 3 階 会議室
を過ごしました。没後 60 周年記念として、中央図書館・
または (3366) 9581
けて多数の小説を執筆した古木鐵太郎は、鷺宮で後半生
鷺宮図書館と共同で館内展示を行います。
問合せ先:東中野図書館カウンター
写真家・本橋成一 講演会
場所:鷺宮図書館 6 階
問合せ先:鷺宮図書館カウンター 写真家・映画監督であり、「ポレポレ東中野」のオー
または(3337)1044
ナーとしても活躍の本橋成一氏をお招きし、東中野ご
出身の本橋氏ならではの地域に関するエピソードや、
写真家としての体験談をお話いただきます。
古木鐵太郎 Book List
書名
紅いノート
仲秋
葉桜
大正の作家
折舟
開催日程:11 月 15 日(土) 14:00 ~ 15:30
出版者
出版年
白河書院 2005
古木春哉 1982
皆美社
1972
桜楓社
1967
校倉書房 1966
定員:20名 (事前申込制)
対象:中学生以上
場所:東中野図書館 3 階 会議室
問合せ先:東中野図書館カウンター
または(3366)9581
中央図書館 雑誌担当
『五月女ケイ子の レッツ!!古事記』
(五月女ケイ子著 2008 講談社、講談社コミッククリエイト)
請求記号:913.2 ソ
古事記に関する本を読み漁っていた頃、この本に出会ってその面白さに衝撃を受けました。古事記入
門書としてとっつきやすいだけでなく、ある程度の関連書を読んだ方にとっても、文字を追うだけでは
とらえにくかった部分がイラストになっているため、かなり役立つ良書です。硬軟どちらの視点からも
古事記を楽しめる、オススメの一冊です。
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seebiblia vol.9 P.10
次号予告+編集後記
次号予告
2大
特集
・ゆかり展示大特集
〜古木鐵太郎の文学游歩〜
・緊急特集!!
システムリプレイス
〜中野の図書館はこう変わる〜
/他
vol.10 12 月 1 日(月) 発行予定
※予告の内容は変更になる場合があります
ー 編集後記 ー
夏が終わり、すごしやすい季節になりましたね。
今号は秋にぴったりな特集を取り上げました。
美術の秋、読書の秋、散歩の秋…
人それぞれ秋の楽しみ方があると思いますが、
あなたはどの秋がお好みでしょうか。
さて、次号は特別編成でお送りします。
ゆかり展示とのコラボ企画や、新たなシステムを導
入し、既存のサービスとどう変わるのか?…などを
取り上げる予定です。皆様、どうぞお楽しみに。
新刊本案内
著 者:ダニエル・コナハン
ダニエル・スミス
出版社:悠書館
所蔵館:中央図書館
著者:北尾トロ
請求記号
337
コ
出版社:信濃毎日新聞社
所蔵館:上高田図書館
著者:澄田喜広
請求記号
232.8
ウ
請求記号
024.8
ス
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出版社:青弓社
所蔵館:本町図書館
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