硫黄削減 – 自動車排気ガス の低減に向けて - Asian Clean Fuels

硫黄削減 – 自動車排気ガス
の低減に向けて
燃料に含まれる硫黄量の低減なくして、輸送機関が原因の大気汚
染の軽減など大気質を改善することは困難です。硫黄は原油に元々
含まれており、精製過程で除去する必要があります。除去したにもか
かわらず、ガソリンおよびディーゼル燃料などの完成品にある程度の硫
黄が残在します。そのような燃料を燃焼すると、粒子状二酸化硫黄
(SO2) および硫酸塩が排出されます。輸送燃料に含まれる硫黄量
の低減は、汚染硫黄の排出低減につながります。硫黄含有量を大
幅に低減することで、排出される汚染物質を全体的に減らすことが可
能です。
発展途上国では、加鉛ガソリンの世界的廃止を成し遂げるため、低
硫黄ガソリンとディーゼル燃料の使用が標準化されつつあります。これ
により、輸送機関が原因の汚染をさらに低減する無公害車および技
術の導入が可能になります。図1は、排気ガスを低減するクリーン燃
料および無公害車の技術開発の進行状況を示しています。
硫黄量の低減により、高度な排気ガス後処理技術が最も効果的
に作用するようになります。従来の自動車技術では、硫黄は、特に
二酸化硫黄、PMおよび窒素酸化などの排出物低減の最重要パラ
メーターです。硫黄の除去は、現行の自動車排気ガス量の低減に
即座に効果を現し、改良した触媒システム、フィルター (ディーゼル
燃料エンジン用)、および自動車排気ガス除去を実現する他の高度
技術の導入に必要です。自動車と燃料はシステムとして同時に作
用しなければならないため、低硫黄燃料が適切な自動車排気ガス
制御技術と適合する時に、最大限の効果を発揮します。
第6巻6号- 2008年8月/9月
本号の内容
硫黄削減 – 自動車排気ガスの低減に向けて
専門家との対談: A 2nd Opinion, Inc 社長
カル・ホッジ氏とのインタビュー
加鉛ガソリンの廃止と硫黄低減を推進する
北アフリカプログラム
硫黄含有量が高いと汚染に直接的影響をもたらすため、主な汚染
制御技術を自動車に導入する際の妨げになっています。硫黄は、
従来車および新型車の排気ガス制御装置の汚れの原因で、一酸
化炭素 (CO)、炭化水素 (HC)、窒素酸化物 (NOx)、および粒子
状物質 (PM) など他の汚染物質の制御に影響をもたらします。燃
料に含まれる硫黄含有量の低減は、現行の自動車から排出される
排気ガスの低減にもなり、高度な技術を新型車に導入することを可
能にします。
自動車排気ガスの効果
アジアクリーン燃料連盟
発行月刊誌
ACFA 最新ニュース
研究によると、硫黄含有量の必要低減量は国によって異なります。
NOx および CO に関する最新の排気ガス制約の導入が必要な
先進工業国では、自動車業界が硫黄含有量 10 ppm の超低硫
黄含有燃料の導入を求めています。
一般に、加鉛ガソリンの廃止が完了した国々は、ガソリンおよびディー
ゼル燃料に含まれる硫黄量の低減に取り組んでいます。 実施期間は
国によって異なりますが、10年以内にガソリンおよびディーゼル燃料に
含まれる硫黄量を 50 ppm (またはそれ以下) に低減することを目標
としています。図2 (3ページ) は、世界各地のガソリンに含まれる硫黄
制限量を表しています。
硫黄除去プロセス
原油の質は、精製所で使用するフィードに含まれる硫黄量および硫黄
を除去する処理装置の使用方法の指標となります。
(3ページに続く)
図 1 – クリーン燃料および自動車技術の進行状況
.
お問い合わせ先 [email protected]。当機関のウェブサイトwww.acfa.org.sg。Copyright 2008.
Asian Clean Fuels Association
免責条項:アジア•クリーン燃料連盟は、本ニュースレター(「コンテンツ」)に記載されている情報および資料の正確性、妥当性、または完全性に関する責任および保証を負わないものとし、コンテンツのいかなる
誤字または脱字、あるいはコンテンツに従って行なわれらた行為に対する一切の責任を放棄します。
専門家との対談
A 2nd Opinion, Inc
社長カル・ホッジ氏とのインタビュー
ホッジ氏は、カンザス州立大学で化学工学理学
士を取得しました。1998年に A 2nd Opinion,
Inc. (A2O) を設立するまでは、Amoco、Pace
Consultants、 そして Valero Energy で経験を積みまし
た。公害を出さすにガソリンを燃焼させる特性が、
彼が1960年代に奨励して人気を馳せた無鉛プレ
ミアムガソリンと同じだと気づいたホッジ氏は、1980
年代に研究した現在のクリーン燃焼ガソリンの質
および自動車技術を改良することにより、自動
が原因の汚染を 99% も軽減しました。
ホッジ氏は、A2O でこれまでの経験を活かし、規制、クリーン燃料、経
済および戦略問題などでクライアントを支援しています。ホッジ氏へのお
Q:世界のある特定の地域では、輸送燃料の需要が著しく拡大してい
ます。精製業界がこの需要に対応するための課題は何ですか?
A2O: 過去40年間、精製業は非営利団体でした。どの精製業者にと
っても、申し分のない年もあれば、そうでない年もありました。一番の課
題は、悪い年がやって来て慌てるのではなく、前もって備えておくことで
す。私が知っている限り、これを実現できた人物はいません。業界の溝
を埋めるために、私は大気質および潜在的効果の向上を促す輸送燃
料基準のグローバル化および強化を業界に提案します。
Q:世界燃料憲章などの自動車燃料に関するポリシーは、品質基準
をより強化する傾向にあります。これまでになされた主な進歩および
将来への期待についてどうお考えですか?
A2O: 燃料に硫黄または鉛を混入せず、原付バイクおよびオートバイ
を含む全車両がクリーン燃焼車であること、および世界的な鉛および硫
問い合わせ先は [email protected] です。
黄含有燃料の廃止が義務付けられても、現在の自動車業界はクリー
ン燃焼ガソリンおよびディーゼル仕様車を製造する術を知っています。ガ
Q:輸送燃料に含まれる硫黄の低減が、自動車排気ガスの低減で ソリンに鉛を混入しては絶対にいけません。
果たした役割について、簡単に説明していただけますか?
ガソリンスタンドの燃料に含まれている硫黄量が 15 から 30 ppm で
A2O: これまでに、米国の自動車排気ガスは 99% 低減されました。 あれば、無鉛と見なして良いでしょう。世界的に、ガソリンとディーゼルの
そのうちの 90% は、ガソリンから鉛を除去した結果です。残りの 9% オクタン価をそれぞれ87と50に設定するべきだと私は考えています。燃
は硫黄の除去によるものです。私が現在使用しているディーゼル車 料基準の強化は精製業界の過剰精製を解消するためにも有効です。
SUV の汚染物排出量は、私が大学4年の時に購入した1967年型 自動車業界では、自動車排気ガス基準の強化が新車の販売促進に
フォルクスワーゲンの 1% にも満たない量です。硫黄の除去により、ガ 有効です。
ソリン車の触媒式排気ガス浄化装置の効力がさらに高まりました。硫
黄の除去は、無公害ディーゼル車を誕生させたのです。
Q:原油価格がかつてないほど急騰していますが、精製業、硫黄低減
および燃料品質要件にもたらす影響をどのようにお考えですか?
Q:精製工程および技術は、燃料の硫黄除去の促進に貢献しました A2O: 精製業では、原油を実用可能な精製品に加工するのにエネ
が、オクタンの減少をもたらしました。精製業者は、オクタンを何で代 ルギーが必要です。製品が現行の基準に適合するには、より多くのエ
ネルギーが必要です。原油価格が高騰すれば、エネルギー費も上が
用しているのですか?
A2O: 最初に、オクタンの減少は脱硫ガソリンが初めて考案され時 ります。したがって、利益を拡大しなければなりませんが、残念なことに、
利益は拡大していません。また、原油価格が上昇するということは、
の予想よりも抑えられており、脱硫ディーゼル燃料がセタンの増加をも
下落する恐れもあるのです。精製業者は、製品を販売する前に原
たらす傾向にあることを付け加えておきます。米国では、漏洩性地下
油を購入するので、価格が下落する時に赤字になる可能性がありま
貯蔵タンク (LUST) と法律家がエテールの使用を妨げており、VOC
す。価格リスクを軽減するために、精製業者は、利益率は低下しな
および NOx の放出を増大させる傾向にもかかわらず、精製業者は
がらも、原油を購入する際に加工後の製品を前もって販売したり、
芳香族化合物の使用量を増やすことができずに、バイオエタノールに
在庫を最小限に抑えて、価格崩壊時の価格の急騰をもたらす傾向
移行しました。MTBE の材料に使用されているブチレンの一部を、揮
にあります。純利益率 (純益) の低下とは、製品品質の改善に必
発性の軽質炭化水素を置換することにより、エタノールの VOC 排
要な精製業者の現金が減ることであり、価格の急騰が政治的問題
出を相殺するために使用されるアルキレート、イソオクテン、またはイソ
を引き起こします。
オクタンに変えます。硫黄の除去は、エタノールの NOx 排出の相殺
に役立っています。LUST および法律家が障害になっていない米国
以外の国では、エテールが最善の代用品です。原料に関係なく、エタ Q:バイオ燃料に関するポリシーと再生可能な燃料の普及は、燃料生
ノールからエテールへの移行は、NOx および VOC放出量の増大を 産および使用にどのような影響を与えていますか?
解消しつつあり、直接混合よりもガソリンの供給を促進しています。 A2O: ほとんどの再生可能な燃料の実現には、助成金や指令など
炭素原子間に潜んでいる酸素原子を含むエテールは、ガソリンエンジ 何らかの政府介入が必要です。指令または助成金が特定の燃料に
(3ページに続く)
ンのクリーン燃焼分枝鎖パラフィン系炭化水素のように作用し、炭化
水素を原料とする燃料の使用を促進します。
2008年8月/9月
2ページ
A 2nd Opinion, Inc 社長カル・ホッジ氏とのインタビュー
(2ページから続く)
適用されると、燃料の改良を促進する技術
革新の妨げになります。焦点を、特定の燃料から、石油輸入量の減
量、貿易赤字の縮小、またはライフサイクルの温室効果ガス排出量の
低減などの目標の達成に移すことで、ポリシーに適合した欠陥のない
製品を生産するための技術革新が進展し始めました。新たな燃料に
は、現行のインフラに適合した炭化水素を使用する傾向にあります。
に完全に対応可能です。
超低硫黄ディーゼル燃料は、潤滑添加剤と反応します。
ConcoPhillips、BP および Petrobas は標準ディーゼル水素処理装置
で、バイオマスと留出油を共処理し、Neste Oil は独自の処理方法で
大量生産を実現しました。共処理に関しては低温の問題が残りますが、
製品の出荷までには混和しています。バイオマスを専用の水素処理装
再生可能なディーゼル燃料は、水素を動物性脂肪または植物性油 置で処理する場合、低温問題の解消のために、触媒および処理条件
と反応させ、パラフィン系炭化水素を生成する方法で生産します。す を調整することが可能です。
でにこの方法で市場的規模の量が生産されています。エネルギー純
益、温室効果ガスの低減率、または石油使用量は、バイオディーゼ また、バイオ技術のさらなる開発が進行中です。複数の企業が、バイ
ルとほとんど変わりません。 しかし、再生可能なディーゼル燃料により、 オエタノールの原料として使用され、ガソリン、ジェット燃料、およびディ
気温が下がらなくなり、安定性はありませんが、NOx 排出およびバイ ーゼル燃料の沸点で沸騰する炭化水素を排出する発酵性のバイオ
オディーゼルのような水の問題は解消されます。 なぜならば、ディーゼ マスを食料とする微生物の遺伝子組み換えに取り組んでいます。炭
ル燃料はパラフィン系炭化水素を原料としているため、セタン量が極 化水素系製品は、現行のインフラに完全に対応可能です。
めて高く現行のディーゼル燃料の生産、混合、普及および消費基盤
(1ページから続く)
硫黄削減 – 自動車排気ガスの低減に向けて
硫黄は、石油の自動車用燃料および他の製品への精製過程で除
去されます。精製およびテクノロジー企業は、原料に含まれる硫黄の
処理および硫黄除去の効率向上に向けて、触媒と処理装置の改
良に取り組んでいます。
精製業者にとって硫黄低減が重要である理由:
• 改質装置の多くの触媒は、原料の硫黄量に敏感である
• 精製所または処理装置に適用される大気汚染制御基準
• 硫黄を含むコークスの水素化による SO 放出
•
•
有機硫黄は水素化分解触媒を破壊する
ほとんどの硫黄化合物は腐食性である。
ガソリンに含まれる硫黄の生成源は、主に FCC (流動接触分解)
ガソリン、コークスナフサ、および直留ナフサの3つです。多くの場合、ガ
ソリンに含まれる硫黄の 90% 以上が FCC ガソリンの生産によるも
のです。完成したガソリンの硫黄量を低く抑えるには、低硫黄 FCC
ガソリンを生産する必要があります。
FCC 原料の硫黄量を抑えるには、いくつかの方法があります。
1つ目の方法は、水素処理です。
(5ページに続く)
図2 – ガソリンの硫黄制限量
原典:2008年4月 国際燃料品質センター
10 ppm
注釈:硫黄量は低硫黄ガソリンの早期導入時期に基づいています。
2008年8月/9月
3ページ
加鉛ガソリンの廃止と硫黄低減を推進する
北アフリカプログラム
8月にアルジェリア、モロッコ、およびチュニジア
の代表が環境技術チュニス国際センター
(CITET) で会合を開き、加鉛ガソリンの廃
止状況を検証し、燃料に含まれる硫黄量の
低減に関する計画について話し合いました。
最初のセッションでは、精製技術、自動車に
対する無鉛燃料の有効性、および他の諸
国の加鉛ガソリンの廃止事例など、加鉛ガ
ソリンの廃止に関する技術的問題を検証し
ました。残りのセッションでは、無鉛ガソリンか
ら低硫黄燃料への3ヵ国の移行計画に関す
るものでした。会合は、国連環境プログラム
- クリーン燃料および無公害車の普及のた
めのパートナーシップ (PCFV)、アジアクリーン
燃料連盟 (ACFA)、国際石油環境保護
協会 (IPIECA)、およびアフリカ精製協会
(ARA) の協賛の下、チュニジア環境維持
開発省の主催で開かれました。
モロッコの代表は、2008年末に加鉛ガソリンを廃止し、燃料の硫黄
含有量を 50 ppm に引き下げると発表しました。同様に、チュニジア
の代表も、年末までに加鉛ガソリンを廃止し、硫黄含有量を最低で
も 350 ppm に引き下げる国家プログラムの開始を発表しました。ア
ルジェリアは、鉛、ベンゼン、硫黄および芳香族化合物に関するユー
ロ同等基準に適合するため、4つの精製施設の拡充を計画しており、
2013年までに加鉛ガソリンを完全に廃止する予定です。
各国では、外部組織の支援の下、計画実現に向けた公共教育プロ
グラムを実施する予定です。
会合で合意に達した主な事項:
• 燃料仕様、自動車基準および大気質基準の標準化
• 北アフリカ地域が抱える環境衛生問題に対する地域的計画に
関する情報および開発交換
• 燃料品質のさらなる向上に向けた実現性の経済学
的分析とインセンティブ
• 他のクリーンエネルギーおよび再生可能な燃料の地
域的調査
チュニジアの環境維持開発大臣ナジル・ハマ
ダ閣下が基調演説を行い、大気質向上お
よび輸送部門を含む全セクターの排出物低
減に向けた取り組みの経過を簡単に説明し
ました。
IPIECA 代表のロブ・コックス氏は、大気質
改善に適用する主要技術を紹介しました。
彼は、改質、異性化、およびアルキレーショ
ンなど、精製所で実用可能な方法と
MTBE およびアルコールなどの高品質混合
品を批評しました。各燃料生産会社が、クリ
ーン燃料の要件を満たすため、精製過程を
評価し、最も適切で経済的な製品を選択
する必要があるとコックス氏は主張しました。
チュニジアの環境衛生大臣ラージャ・マジーズ氏は、硫黄放出量の高
さがもたらす健康への影響と硫黄量の低減による効果を明示しました。
マジーズ氏は、硫黄低減がガソリンおよびディーゼル車の CO、HC、
および NOx 排出量低減に貢献すると説明しました。
アルジェリア、モロッコ、およびチュニジアの代表は、燃料仕様および自
動車排気ガス基準の強化に向けた現行の取り組みに関する詳細な
プレゼンテーションを実施し、クリーン燃料を市場に流通させるための
精製所の近代化および工程変更を議論しました。
技術的検証およびプレゼンテーションの後、代表らは継続的改善に
向けた基本提案と活動計画の考案に着手しました。このプログラムの
成功を踏まえて、大気質改善およびクリーン燃料推進のための地域
的および国家的活動計画に関するフォローアップ会議を、北アフリカ
地域で開催することで合意しました。
詳細はhttp://www.unep.org/pcfv/meetings/Northafricameeting.asp
をご覧ください。
環境維持開発省の主任補佐官アビブ・ディマシ氏が歓
迎の挨拶を行ないました。アジアクリーン燃料連盟の常
任理事クラレンス・フー氏と、国際石油環境保護協会
(IPIECA) の代表ロブ・コックス氏がプログラムの概要を
簡単に説明し、燃料品質の向上と自動車排気ガス制
御への地域的取組みの重要性を強調しました。
原典: 2008年 CITET ワークショップ
2008年8月/9月
4ページ
硫黄削減 – 自動車排気ガスの低減に向けて
(3ページから続く)
ガソリンに含まれる硫黄量は原料の硫黄量
に大きく左右されるため、原料の処理に手間のかかる水素処理を実施
すると、他の脱硫方法よりもガソリンの硫黄含有量が少なくなります。
原料の水素処理には、金属、窒素など他の汚染物質を低減し、原
料の品質を高める利点があります。FCC 原料の水素処理には、他の
方法と比べて経費がかかることがマイナス点です。
FCC ガソリンの硫黄はほとんどがガソリンの高沸点留分に属するため、
ガソリンの硫黄含有量を低減する最も簡単な方法は、ガソリンから
蒸留留分に最大分 (10から15%) を転移するように、ガソリンを溶解
する方法です。この方法だと、FCC ガソリンの要件がさほど厳しくなく、
FCC ガソリンの硫黄量もあまり高くない場合だと、硫黄問題を解消
します。
燃料生産会社/サプライヤ、自動車およびエンジンメーカー、地方自治
体および政府、監督官庁、一般市民および地域団体などの当事者
は、全員が関与しなければいけません。図3は、自動車燃料の硫黄含
有量の低減計画と実行時に存在した問題の相互依存関係を表して
います。
発展途上国では、燃料品質の向上に向けた具体的な「手引き」に
は、一般的に、大気質の悪化が深刻な地域を対象にしたより厳しい
要件などの短期計画、そして基準の地域統一のような長期計画が
必然的に盛り込まれています。硫黄量低減計画を段階的に実施す
るのか、あるいは一括的に低減するのか検討しなければなりません。
すでに述べたとおり、自動車用燃料および自動車は一つのシステムと
して見なす必要があります。
硫黄低減方法のほとんどが、FCC ガソリン中のオクタン量を減少させ
欧州連合、北アメリカ、日本、および韓国においては、燃料品質の
てしまいます。重質な FCC ガソリンを接触分解することで再分解する
変更および硫黄低減を、排気ガス基準の強化と新たな自動車技術
と、FCC ガソリンの硫黄量は低減し、RON および MON は上昇しま
の導入と同時進行で実施しています。そのため、これらの地域では超
す。再分解によって生成されるガソリンには芳香族化合物 (オレフィン
低硫黄基準が設定されています (図2を参照)。深刻な大気質問題
は残留しない) が多く含まれており、オクタン指数が上昇します。しかし、
を抱えている発展途上国は、これらの他地域の経験を参考にするこ
重質ガソリンの再分解ではかなりの量のガソリンを浪費してしまいます。
とができます。ACFA やクリーン燃料および UNEP の無公害車のた
精製所および製品の構造に応じて、精製所は、MTBEやアルキレート
めのパートナーシップのような機関は、低硫黄燃料計画の指導要綱
などの酸化エテールなど、高オクタン価に着目するもの一つの方法です。
を作成しています。
燃料の硫黄含有量低減に向けた政策の
検討
燃料の硫黄含有量の段階的低減は、多くの国々で今後20年間の
最優先事項となっています。大気質の改善と共に、環境衛生への効
果が即座に現れることは確実です。
意思決定者は、燃料に含まれる硫黄含有量の低減に向けた計画お
よびプログラムを策定する際、さまざまな要因を考慮する必要がありま 図3 – 硫黄低減への相互依存要
す。これらの要因は、自動車排気ガスの低減および大気質の改善の
ための全体的取り組みに盛り込む必要があります。特定の国にのみ該
当する独特の条件および状況は、燃料の硫黄低減に多大な影響を
およぼします。硫黄低減で考慮すべき主な事項:
燃料に含まれる現行の硫黄量
• 現行の車両保有率と一般的に使用されている排気ガス制御技
術のレベル
• 自動車排気ガス基準および要件の強化
• 車両点検レベルおよび装備改良
•
車両の使用パターン
•
燃料精製、普及、小売構造、および市場に低硫
黄燃料を流通させる能力
燃料品質戦略には、燃料供給と安全性、経済、
市場競争力、環境的要因、および消費者教育と
容認など、さまざまな考慮事項が関わってきます。
•
原典: 2006年 IPIECA
2008年8月/9月
5ページ
ACFA 最新ニュース
ロシアがユーロ3基準の導入を先送り
インドが新たな自動車排気ガス基準を発表
ロシア政府は、国内精製業者が2009年1月の期限までにユーロ3
同等燃料基準の適合できない見通しのため、施行を2年間延期す
る決定を下しました。ロシアの石油会社は、2009年1月までに、基
準適合に必要な施設改修および設備投資が困難だと主張してい
ます。ユーロ同等基準の施行は2011年となります。ロシアの精製所
で生産される自動車用燃料のおよそ50%は、ユーロ2同等基準に適
合しています。ほとんどの精製所は2009年中にユーロ3ガソリン基準
への移行が可能で、2年ではすべての要件を満たす予定ですが、ユ
ーロ4同等基準を満たすための更なる燃料品質の改善には大規模
な近代化を行なう必要があります。 この決定の結果、ロジア政府
は、国内市場を賄う新たな精製所の建築計画など、国内における
石油燃料の生産支援を検討中です。
インド運輸省は、一般および非一般車両を対象にしたインドの排気ガ
ス基準の改正を公布しました。この改正では、型式承認制限、生産
制限の準拠、耐久性要件、劣化要因、責任範囲、市販燃料の仕
様、および軽自動車を対象にした OBD 許容限界値が改訂されてい
ます。この改訂に関する官報は、インド運輸省のウェブサイト
http://morth.nic.in/writereaddata/sublinkimages/GE522774676141.pdf でご覧いただけます。
linkimages/GE522774676141.pdf.
ガソリンエンジン使用の2輪および3輪車に関する主な要件は次のと
おりです。
2輪および3輪車の
バーラトステージ III 排気ガス
制限、2010年4月1日
.
CO
HC+NOx
PM
1.0
1.25
1.0
1.25
-
施行:g/km
ガソリン
香港の大気質による健康リスクが
悪化
2輪車
3輪車
香港で実施された貧困層の健康調査の結果、大気質の悪い地
域の死亡率が高いことがわかりました。香港大学公衆衛生スクール
が実施した研究結果が専門誌で発表されました。
Environmental Health Perspectives (環境衛生の視点) 誌による
と、最も死亡率が高いのは大気汚染指数が上昇した翌日です。
軽自動車に関しては、首都圏、ムンバイ、カルカッタ、プーナ、チェンナ
イ、バンガロール、ハイデラバード、アーメダバード、スーラト、カーンプル、
およびアグラで2010年4月1日から、バーラトステージ IV が施行される
予定です。
また、大気質が著しく悪化直後は、貧困層で死亡者が増えることも
確認されています。
この現象は、富裕層では確認できませんでした。
研究チームは、1996年から2002年までに呼吸疾患および心臓
血管が原因で死亡した21万5,000人を調査し、
居住時期、所得額、婚姻状況、および他の要因を大気汚染指数
と比較しました。
貧困層が大気汚染に影響を受けやすい理由をさらに詳しく調査中
です。
バーラトステージ IV
2010年4月1日
施行;g/km
ガソリン
カテゴリーM
カテゴリー N1 & N
すべて
RW ≤ 1305
1305 ≤RW≤1760
1760≤RW
CO
HC
NOx
1.00
1.00
1.81
2.27
0.10
0.10
0.13
0.16
0.08
0.08
0.10
0.11
近日開催予定の会議&イベント
2008年 アジア燃料 & 潤滑油
2008年10月14 – 15日、シンガポール
ACFA に関するご質問またはご感想は、
[email protected] にお問い合わせい
ただくか、リリス•スサントまでお電話(+65
6236 0248)またはメールでご連絡ください
2008年アラビア石油
2008年10月20 -22日、ドバイ
メタノール年次フォーラム
2008年11月3 -5日、ドバイ
2008年大気質改善
2008年11月12日 -14日、バンコク
( [email protected])。
当機関のウェブサイト http://www.acfa.org.sg をご
覧ください。
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2008年8月/9月
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