第2章 土地条件調査

霧島市国土利用計画基礎調査編
第2章 土地条件調査
1.自然的条件調査
(1)標高
本市の標高の最高点は、霧島・牧園両地域の北部にそびえる韓国岳の 1,700mで、獅子戸岳・
新燃岳など 1,000mを超える山岳が連なっている。この付近一帯は、霧島火山地に属し、標高の
割に火口の巨大なものが多く、新旧何層もの火山があり、火口湖である大浪池など様々な火山地
形が見られるのが特色となっている。
市域の西部や東部は、標高 300~700mの山地が連なり、その麓には標高 200~300mの台地畑
作地帯が広がっている。また、南部は、標高 100m未満の広大な平野部が波静かな錦江湾に接し、
国分・隼人地域の市街地や水田に利用されている。
◆標高区分図
資料:鹿児島県土地分類図
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(2)傾斜
鹿児島空港周辺の台地や錦江湾に接する平野部に傾斜度3度未満の平坦地が広く分布してお
り、農用地あるいは商・工業地、住宅地などの土地利用がなされている。一方、霧島連山の火口
周辺や中腹の標高 600~800m付近、横川地域の安良岳周辺、西部の山地などには、傾斜度 30 度
以上の急傾斜地が広く分布し、平野部と台地部の境付近では 40 度以上の急傾斜地が帯状に伸び
るのが見られる。また、福山地域の海岸部にも 20 度以上の傾斜地がまとまって分布しており、
これらの地域では、一般的に宅地化や大規模農業などまとまった規模の土地を必要とする土地利
用は困難とされている。
◆傾斜区分図
資料:鹿児島県土地分類図
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(3)表層地質
霧島火山群一帯及び西部山地の地質は、概ね安山岩質溶岩により構成され、台地は主に姶良カ
ルデラから火砕流として噴出したシラスや溶結凝灰岩によって広く覆われている。特に、この火
山灰からなるシラスは水に弱く豪雨や地震に伴って崩壊しやすい特性から災害等の面で問題と
なっている。
◆表層地質区分図
資料:鹿児島県土地分類図
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(4)土壌
山岳・丘陵地の土壌は、森林の生育に適した褐色森林土や黒ボク土、未熟土が大部分を占め、
台地部分は下層に厚いシラス層の存在するシラス地帯で、未熟土や黒ボク土が広く分布している。
一方、海岸部の平坦地や河川流域の沖積地帯では、灰色低地土が分布し、水田として広く利用さ
れている。
◆土壌区分図
資料:鹿児島県土地分類図
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◆主な土壌の概要
大土壌群
未熟土
黒ボク土
土壌統群
要
粗粒火山抛出物未熟土壌
粗粒風化火山抛出物未熟土壌
○いずれも火山性未熟土壌に属し霧島火山の抛出物に由
来するもので、標高の高い山地にまとまって分布し、表
面の土壌化の歴史が新しく火山抛出物(火山砂・灰石等)
により形成される土壌である。
○森林としての生産力は極めて低く、潅木程度が見られ
る。山麓部では、細粒質の火山抛出物を母材とし、黒色
の表層土が流亡し侵蝕を受けやすい。
厚層黒ボク土壌
黒ボク土壌
多湿黒ボク土壌
○霧島火山に起因する火山灰性のものが広く分布し、数次
にわたる火山物質の堆積層序がみられる。地形の急峻な
山地地形では、火山灰土の流亡によりその被覆はみられ
ないが、山麓部では火山灰または火山灰と基岩風化物と
の二次的な混合堆積物が多くみられる。
○低標高地では農耕地としての利用が図られている。特
に、厚層黒ボク土壌、多湿黒ボク土壌はそのほとんどが
農耕地に利用されている。
○黒みの強い表層土が5~15 ㎝の黒ボク土壌は、台地・段
丘・山麓緩斜面等の安定地形に多く分布しており、その
利用は林地農耕地とも相半ばしている。
○淡色黒ボク土壌は、やや乾燥の影響を受ける緩凸面に分
布し黒みがやや弱い土壌である。
乾性褐色森林土壌
○褐色森林土は、山地土壌の最も一般的な土壌で、乾性褐
色森林土壌は土層が浅く水分が流去しやすい山頂稜線
部や山腹凸斜面に多く分布する。
褐色森林土壌
○降水量が多く起伏量の大きい山間地域に広く分布し、ス
ギ・ヒノキの造林地となっている。
灰色低地土壌
○第三紀層の頁岩・砂岩・シラス等を主母材とするもので、
保肥力は比較的高く、土壌の養分状態も良好で、水稲の
生産力も高い。
粗粒灰色低地土壌
○河川の上流地域、谷底沖積の氾濫地等に分布し、粗粒質
のため保肥力は小さく、土壌の養分状態は悪い。老朽化
水田はこの土壌に多く見られ、水稲の生産力は低い。
グライ土壌
○河川流域の自然堤防後背低地に多く見られ、作土下の土
性は壌質で、養分状態はやや良好であるが、酸素不足に
よる根系障害を受けやすく、水稲の生産力は中庸であ
る。
粗粒グライ土壌
○グライ土のうち、作土直下より砂質あるいは礫層、砂礫
層が出現するもので、養分状態は悪く土性が粗いため肥
料の持続性が悪く、水稲の生産力は低い。
低地泥炭土壌
○ヨシを主材料とした未分解の有機物が断面中に出現す
る。保肥力は中庸で土壌の養分状態は比較的良好であ
る。
褐色森林土
灰色低地土
グライ土
泥炭土
概
資料:鹿児島県土地分類図
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(5)植生
北部の霧島連山には、自然林が広く分布し、その間にクヌギ・コナラ等の二次林が比較的多く、
中腹や山頂ではミヤマキリシマの群生、新燃岳北西斜面のミツバツツジやえびの高原に自生する
国の天然記念物のノカイドウ、霧島にだけ生育するキリシマミズキ・キリシマグミなど多くの貴
重な植物が生育している。また、標高 800m以下では、シイ・カシ類の常緑広葉樹林やモミ、ツ
ガ、アカマツなどの針葉樹林が見られ、その他の山地はスギ・ヒノキ等の植林地となっている。
◆植生区分図
資料:環境省・環境基本調査
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(6)気候
本市の気候は温暖多雨で、南部の海岸沿いでは一部無霜地帯もある。年平均降水量は、約
2,100mm 程度であり、そのほとんどは梅雨期から台風期に集中している。平成 18 年の気象デー
タでは、平均気温は 20.5℃、年間降水量が 2,139mm となっている。
◆平成 18 年の気温と降水量の状況
○気温
○降水量
35
200
700
30.7
29.7 33.5 34.1
27.8
30
24.3
19.0
20
17.6
18.1
13.3
14.1
5.6
5
7.5
19.7
19.6
134
500
12.5
8.2
92
300
-3.0
68
200
5.2
40
30
29
-2.2
-2.7
3月 4月 5月
111 192 132 253 235 575 598 304 164 13
6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均気温
最高気温
最低気温
40
23
13
0
1月 2月
60
44
100
-4.0
80
8.5
-5
(℃)
100
68
3.4
0
140
120
400
13.4
14.8
11.7
10
160
22.8
21.1 21.1
180
600
22.6
21.1
18.9
15
27.6
25.5 25.9
25
169 173
20
81 115
0
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
月別降水量
(mm)
日最大降水量
(mm)
資料:消防局・通信司令室気象データ
(7)河川・海岸
本市の主要水系としては、錦江湾に注ぐ天降川、網掛川、検校川、志布志湾に注ぐ菱田川があ
り、天降川の河岸緑地や渓流部は、良好な生態系や自然とふれあえる水辺空間を保有している。
天降川等は、BOD(生物化学的酸素要求量)などの環境基準を概ね達成しているものの、一
部の箇所では基準を満たしていない項目があるので、今後とも、霧島市天降川等河川環境保全条
例に沿って、水質の保全を図る必要がある。また、本市は約33㎞の海岸線を有しており、海洋
性レクリエーションを楽しむことができることに加え、2つの漁港と2つの港湾を備えている。
◆主な河川の流路延長
河川種別
河川名
二級河川
天降川
網掛川
検校川
菱田川
流路延長
(km)
流域面積
(k㎡)
41
22
14
55
404
73
59
394
資料:平成16年鹿児島県統計年鑑
◆海岸線の状況
地域
(単位:m)
海岸線延長
海岸保全区域
延長
河口部延長
河口部含む
海岸線延長
国分
7,603
2,100
310
隼人
16,483
3,464
-
16,483
福山
8,657
3,300
-
8,657
合計
32,743
8,864
310
資料:県河川課
- 17 -
7,913
33,053