一体型ATP測定試薬キットと小型ルミノメーターを用いた農 耕地土壌の微生物バイオマスの推定 誌名 日本土壌肥料學雜誌 = Journal of the science of soil and manure, Japan ISSN 00290610 著者 青山, 正和 巻/号 82巻4号 掲載ページ p. 305-308 発行年月 2011年8月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所 Tsukuba Office, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat 305 炭素量との関係を検討し, ノート ATP量から徴生物バイオマス 炭素最への換算係数を求める必要がある. そこで本研究では, ATP量から徴生物バイオマス炭素 一 体 型 ATP測定試薬キットと小型ルミノメー 最へ換算するための係数を決定することを目的として, ターを用いた農耕地土壌の微生物ノ〈イオマスの 壌タイプならびに土地利用(水田,畑,果樹園)の具なる 推定* 114点の農耕地土壌を採取し,クロロホルムくん蒸一抽 出法で土壌微生物バイオマス炭素最を測定するとともに 一体型試薬キットと小型ノレミノメーターを用いて土壌の 青山正和 ATPを測定し,両者の関係を検討した. 2 . 材料と方法 キーワード ATP ,微生物バイオマス,ノレミノメーター, 畑土壌,水国土壌 1)土壌試料 14点の土壌試料を採取し,実験 青森県内の農耕地から 1 に供した.内訳は,非黒ボク土畑土壌 47点(水田転換畑 土壌 5点およびリンゴ閤土壌 3点を含む),非黒ボク土水 田土壌 24点,黒ボク土畑土壌 35点および黒ボク土水田土 壌 8点である.非黒ボク土は主にグライ土,灰色低地土, 1.はじめに 近年,土壌診断のための土壌分析は,農業生産現場に近 掲色低地土に分類される沖積土壌であり,畑土壌の一部は い施設でも行われており,土壌改良に役立っている. しか 掲色森林土を含んでいる.また,黒ボク土は岩木山起源の し土壌診断の項目は化学性に関するものが主であり,土 黒ボク土ならびに十和田・八Ej3田起源の黒ボク土からなる. 壌生物性の診断はほとんど行われていない.土壌生物性を 007年と 2008年の 7月から 1 1月までの期間に 畑土壌は 2 評価する場合,最初に必要となる情報は土壌徴生物量であ 008年と 2009年の 1 0 表層 10cmを 採 取 し 水 田 土 壌 は 2 る.土壌徴生物量は,一般に徴生物バイオマスとして評価 月から 1 1月までの期間に落水後の作土層から採取した. され,主にクロロホルムくん蒸法,基質誘導呼吸法やアデ 採取した土壌は,湿潤状態のまま 2mmのふるいを通して ノシン 5 ' 一三リン酸 (ATP) 法が用いられている. しか 実験に用いた.土壌の一部は,ふるいを通した後に風乾し, しながら, これらの徴生物バイオマス部定法は研究のため 化学分析に用いた. に開発されたものであり,農協や普及センタ一等の農業生 産現場に近い施設で行うことは困難である.前報(青山, 2 ) 化学分析 風乾土について, pH( H z O ) ならびに全炭素量と全窒 2 0 0 5 ) において,著者は食品関連施設等における清浄度 . 5水懸褐液 素量を測定した. pH(HzO) は常法通り 1:2 検査の目的で比較的安価で市販されている ATP測定用の 一体型試薬キットと専用の小型/レミノメーターを用いて についてガラス電極法で測定し,全炭素量と全窒素量は NC-アナライザー(住友化学 SumigraphNC-90A) で分 黒ボク土の ATP測定を行い 析した. ATP出定値とクロロホル ムくん蒸一抽出法による微生物バイオマス炭素量との関 係を調べたところ,両者の間には高い正の相関関係が存在 することを報告した.ただしこの結果は黒ボク土, しか 3 ) 前培養 各土壌の乾土 60g相 にとり, の湿潤土を 200mLビーカー 25Cで 7日間前培養した後, クロロホルムくん 0 も地域的にはかなり限定された土壌について得られたもの 蒸一抽出法による微生物バイオマス炭素の測定ならびに であり,水田土壌を対象としていなかった. したがって, ATPの測定に供した.前培養は各土壌について 3反復で ATP測定用の一体型試薬キットと小型/レミノメーターを 行い,反復ごとにバイオマス炭素と ATPを l連で測定し 用いた農耕地土壌の徴生物ノくイオマス推定法を確立するた た.なお,前培養に際して,前報(青山, 2 0 0 5 ) では最大 めには,多くの土壌について ATP量と微生物バイオマス 容水量の 60%水分に調節したが,本研究で、は簡便化のた め,土壌水分の調節は行わなかった. 4 ) 微生物バイオマス炭素量の測定 MasakazuAOYAMA:E s t i m a t i o no fm i c r o b i a lb i o m a s si na r a b l e s o i l su s i n gana l li noneATPa s s a yk i tandah a n d yl u m i n o m e t e r ネ本研究の主要部分は,平成 2 0年度科学技術振興機構重点地 域研究開発推進プログラム・シーズ発掘試験「低コストで 簡便迅速な土壌微生物診断法の開発j の一部として実施し た.また,本研究の一部は 2 0 0 9年 9月の日本土壌肥料学会 京都大会で発表した. 0 3 6 8 5 6 1 弘前市文京町 3 ) 弘前大学農学生命科学部 ( C o r r ε s p o n d i n gAuthor:青山正和 2 0 1 1年 2月四日受付・ 2 0 1 1年 5月 2 4臼受理 2巻 第 4号 p .305~308 ( 2 0 1 1 ) 日本土壌肥料学雑誌第 8 0 0 5 ) と同じく, Vancee ta l .( 19 8 7 )の 前報(青山, 2 クロロホルムくん蒸一抽出法に基づ、いて行った. 5 ) ATPの抽出 土壌からの ATP抽出には,広く使われているトリク ロロ酢酸 (TCA) ーリン酸ーパラコートの混液を用いる nkinsonandOades ,1 9 7 9 ) では毒性が強く取り 方法(Je 0 0 5 ) と同じ 扱いが難しいと考えたため,前報(青山, 2 く,ジメチルスルフォキシド (DMSO) とリン酸三ナト リウムによる抽出法 ( B a ie ta l .,1 9 8 8 ) を用いた.前培養 日本土壌肥料学雑誌第 8 2巻 第 4号 306 ( 2 0 1 1 ) した乾土1.0 0g相当量の湿潤土を 100mLビーカーに秤取 3. 結果と考察 10mLの DMSOを加えてスターラーで 2分間撹狩し .OlMリン酸三ナトリウム、溶液を加えて た後, 40mLの O 2分間撹持した.さらに超音波パス(アズワン US-1,出 力5 5W) 中で 2分間鵡音波処理を行った後,あらかじめ 0.005MMg-EDTAを含む O .OlM グリシン溶液 ( p H 7 . 5 ) 10mLを入れた試験管に懸掲液 1mLをただちに加えて十 分に混合し,希釈懸濁液を調製した.以下の ATP測定に 供試土壌の pH (HzO )は3 . 9 7 . 1の範閤にあり,土壌 し , 有機物含量の指標となる全炭素量も 4 . 2 8 8 . 8 gk g -1の範 囲にあった.非黒ボク土の畑地と水田ならびに黒ボク の畑地と水自に分けて頻度分布をみた場合にも,それぞれ 広い範囲をカバーしていた(表 1).なお, pH ( 狂20) の 土壌別の平均値±標準偏援は,非黒ボク土・畑地で 5 . 5 4 く,拭き取り試験用の一体型試薬キットであるキッコーマ 0 . 2 7,黒ボク土・畑 地で 5 . 6 9土 0 . 5 1,黒ボク土・水田で 5 . 5 8と こ0 . 2 9であり, 5 . 6土 l 1 .9 gkg-1, 全炭素量のそれは,非黒ボク土・畑地で 2 非黒ボク土・水田で 2 9 . 7ご と 6 . 1 gk g l,黒ボク土・畑地で 1 4 9 . 6: ! :1 8 . 6 gk g -,黒ポク土・水田で 6 0 . 8: ! :1 7. 4 gk g -1 ン社製ノレシパックワイドと専用の小型ノレミノメーター(東 であった. はこの希釈懸濁液を用いた. 6 ) ATPの測定 0 0 5 ) と同じ 上記の希釈懸濁液について,前報(青山, 2 軍 DKKAF-20) を用いて ATPを測定した.測定に際し : ! :0 . 7 8,非黒ボクゴ二・水田で 5 . 1 7と ご これらの土壌について,一体型試薬キットと小型/レミノ て,ルシパックワイド本体から綿棒ホルダーを引き抜いた メーターを用いて ATP最を測定し, 後,抽出試薬のーとの隔膜上に希釈懸濁液 100μLを注入し 法で測定した徴生物バイオマス炭素量との関係を検討した た.つぎに,綿棒ホルダーを本体に蔑して強く押し込み, ところ,荷者の間には正の相関関係が認められた.ただ クロロホノレムくん蒸 2枚の隔膜を破って測定チューブまで挿入した.その直後 し畑土壌と水田土壌とでは傾向が大きく異なっており, に,本体を数回強く降りおろし測定チューブ内で土壌懸 水自転換畑土壌は水田土壌と同じ傾向にあった.水田転換 濁液,抽出液および発光試薬を十分に混合した後,小型ノレ 畑土壌を株いた畑土壌について ATP量 ( X ) と徴生物ノ〈 ミノメーターに装着しスタートボタンを押して相対発光 イオマス炭素量 ( Y ) との関係を原点を通る一次回帰式に ( R e l a t i v eL i g h tU n i t;RLU) を測定した. RLUは , I 司 一試料について連続して 5 1 0回測定し,最大値を記録し た.それとは別に,上述の希釈懸渇液 1mLに対して ATP 標準溶液(10 0pg~tVl) 1 0 0μLを 加 え た 液 を 調 製 し こ の1 1 0uLに対して上記と同様に RLUを測定した.さら に,ブランクとして抽出試薬のみの RLUの測定を行った. ATP量は,下記の式により算出した. 当てはめると(鴎 1 A ),Y=117Xという関係式が得られた ( r = = 0 . 8 6料*).なお, この中にはりンゴ圏土壌も合まれて いる.これに対して,水田土壌と水田転換畑土壌の場合に は(密1B),非黒ボク土,黒ボク土を問わず, Y = = 2 0 2 X という関係式が得られた ( r = 0 . 6 7料*)• これらの関係式における傾きは,徴生物バイオマス炭素 と ATPの比(バイオマス炭素 /ATP比)に相当するが, この数値に土壌の化学性が影響しているかどうかを検討す C= ( N B ) / ( M N )X 1 0 -3 るため, μ g ), Bはブラン Cは希釈抽出液 100μL中の ATP量 ( , U Nは ATP標 準 液 無 添 加 の 場 合 の RLU , Mは クの RL ATP標準液を添加した場合の RLUである.なお, B a ie t a l .( 19 8 8 ) と羽a r t e n s( 2 0 01)の研究において ATPの回 収率はほぼ 100%であったとされていることから,乾土あ たりの ATP量の算出にあたっては,回収率を考慮しなかっ pHと全炭素量によって土壌を細区分して個々の 土壌のバイオマス炭素/ATP比 を 計 算 し そ れ ら の 平 均 値に有意差があるかどうかを検定した(表 2 ) . 水田およ び水田転換畑の黒ボク土については,細区分しなかった. 畑土壌と水田土壌および、水田転換畑土壌との聞には,統計 的に有意な差が検出されたが, pHと全炭素量は有意な影 響を及ぼしていないことが認められた.なお,バイオマス 炭素 /ATP比を儒別に計算した場合には,回帰式から得 た. られたバイオマス炭素/ATP比よりやや高い値が得られ 託20) と全炭素設の頻度分布 表 1 供試土壌 pH( pH( H20) 土壌 く 4 . 0 4 . 5 5 . 0 5 . 0 5 . 5 5 . 0 6 . 5 6 . 5 7 . 0 . 0 4 . 5 4 . 5 6 . 0 6 非巣ボク土・畑地 1 4 2 1 0 1 0 1 1 8 黒ボク土・対日地 O 2 9 1 7 1 5 1 非黒ボク土・水田 O O O 5 1 7 2 O 泉ボク土・水田 O O 5 2 l O O 土壌 1 O O O 全炭素設 (gkg→) 2 0 1 5 く 非黒ボク土・!畑地 黒ボク土・畑地 J o o l 累ボクニヒ・水田 黒ボクゴ二・水田 >7 . 0 l l O 2 0 3 0 2 0 4 1 1 3 0 4 0 7 6 1 1 O O 4 0 5 0 2 9 1 3 5 0 6 0 3 4 6 0 7 0 7 0 8 0 8 0 9 0 O O 4 6 O O O O l O l O 2 2 青山:一体型 A TP測定試薬キットと小型ノレミノメーターを用いた農耕地土壌の微生物ノくイオマスの推定 5 0 0 2 5 0 0 ( A ) 、 , @ 二400 307 bj) ( B ) 2 0 0 0 震 護3∞ 1 5 0 0 z r < 2 0 0 1 0 0 0 T y=117x r= 0 . 8 6 付* e 〆 暴1 0 0 剥 豊 臣 2 3 4 y=2 0 2x r =0.67*** 5 0 0 5 0 0 5 1 0 1 5 2 0 2 5 A T P( m gk g -1) 関 1 水回転換畑土壌な除いた畑土壌 ( A ) ならびに水田土壌と水回転換焔土壌 (B) における A T P最と微生物バイオマス最の関係 O非祭ボクニと:矧l 土壌 ; e泉ボク土畑土壌;ム非黒ボク土水国土壌; 印非黒ボクニ!こ水回転換~関土壌;企黒ボク土水回. * **0.1%水準で有意 表 2 土地利用, 土壌タイプ, p Hと全炭素主主とバイオマス炭素/A T P比 水回転換畑を除いた畑地 l 水田および水田転換J1J 黒ボク土 非黒ボク土 黒ボク土 非然ボクオ二 20 E旦(H ) 〈 5 . 0 5 . 0 6 . 0 く 5 . 0 >6 . 0 5 . 0 6 . 0 く 5 . 0 >6 . 0 >5 . 0 >5 . 0 2 0土 8a 1 2 4土 8a 1 0a 1 1 7土 11a 1 こ1 1a 2 1 1 2土 1 1 2土 14a 1 4 0と 2 4土 28b 3 9と こ2 0b 2 こ1 5b 2 5 6と ( 1 0 ) ( 1 7 ) ( 3 ) ( 2 2 ) ( 8 ) ( 8 ) ( 15 ) ( 10 ) ( 21 ) 全炭素設 (gkg-1) 〈 2 0 20-30 >3 0 <4 0 4 0…6 0 >6 0 <3 0 〉 3 0 >4 0 1 0 3 5 4土 1 と8a 1 2 3土 1 0a 1 2 8土 8a 1 2 3と こ1 3a 1 3 1と こ1 0a 1 2 8と ご1 0a 2 3 4と こ1 7b 2 6b 2 2 4と こ2 8b ( 1 5 ) ( 1 4 ) ( 1 7 ) ( 10 ) ( 1 1 ) ( 13 ) ( 1 1 ) ( 15 ) ( 8 ) 王子均領土標準誤差.表中のアルファベットは引lkey法による多重比較検定の結果を示し 向記号は 5%水準で 有意義がないことを示す.カッコ内の数字は試料数. ATP量から微生物バイオマス炭素量を推定するに いる.これを mgkg-1乾土で表した微生物バイオマス炭素 は,囲 l 帰式から得られた備を換算係数として用いる方が汎 ( Y ) と ATP量 ( X ) で示すと, Y=190Xとなる.た たが, 用性は高いと考えられる. したがって,畑土壌では A TP 測定値を 1 1 7倍,水田土壌と水自転換熔土壌で、は 2 0 2倍す ることにより徴生物バイオマス炭素最に換算で、きる. 前報(青山, 2 0 0 5 ) において, 7点の黒ボク土畑土壌お TP測定植の多くは, だし彼らが用いた A 酸 トリクロロ酢 ( T C A ), リン酸およびパラコートを用いた抽出によっ て得ーられたものである.一方, M a r t e n s( 2 0 01)は,本 研究で採用したと向じ DMSO-リン酸三ナトリウムによ ATPを 抽 出 し て い る が , バ イ オ マ ス 炭 素 / よび未耕地土壌について本研究と閉じ一体型試薬キット り土壌から と小型ノレミノメーターで測定した A TP量とクロロホルム ATP 比は 208~217 であると報告している. くん蒸法で測定した微生物バイオマス炭素量との関係は, と比べると,本研究の畑土壌について得ーられた Y=128Xで表されることを報告した. この関係は,本研究 で畑土壌について得られた Y =117Xという関係に近いも 0 0 5 ) では前培養時に土壌水分 ので、あった.前報(青山, 2 数値はかなり低い. ATP測定は,ルシフェリンールシフエラーゼ反応、による を最大容水量の 60%に調節したのに対して,本研究では 発光に基づいているが,さらにアデノシン 5 ' ーーリン酸 これらの報告 1 1 7という 一体型試薬キットであるルシパックワイドを用いた 前培養特に水分調節を行わなかった.それにも関わらず, ( A M P ) を ATPに変換する酵素であるピルベート・オル ATP量と徴生物バイオマス炭素量との関係は大きくは変 ソフォスフェート・ジキナーゼを加えることによって,ル わらなかったことから,前培養時の土壌水分の調節は必須 シフェリンールシフエラーゼ、反応で生じた AMPを蒋び ATPに変換して発光強度を高めている(キッコーマン, 2 0 01 ) . このため,本法で求めた A TP測定値は A抗 Pも ではないと考えられた. 土壌の徴生物バイオマス炭素量と ATP量との間の関係 については,多くの検討が行われてきている. C o n t i ne t 含めた値となり,実際より高く見積もられている可能性が a l .( 2 0 01 ) は,それまで得られていた多数のデータを取 ある. このことが, これまで、行われてきた研究と比べてバ りまとめて,土壌の徴生物バイオマス炭素量と ATP量と TP比が低い原田であると推定される. イオマス炭素/A ATP(~mol g-l乾土) =0 . 0 1 4x徴生物バイオ 水田土壌と水回転換畑土壌に関しては,バイオマス炭素 μgg-l乾土)の関係が成り立つことを報告して マス炭素 ( /ATP比は 2 0 2と,畑土壌と比べてかなり高い植を示し の簡には, 日本土壌肥料学雑誌、第 8 2巻 第 4号 308 ( 2 0 11 ) た. lnubushie ta l .( 19 9 1 ) は,土壌を湛水条件下と好気 ため,現場に近い施設で土壌生物性の診断に用いるには, 条件下で培養して ATP量と微生物バイオマスの変化を追 前培養を含めた前処理および抽出法のさらなる検討が必要 跡し,楳水条件下ではいずれの値も減少するが,徴生物バ であると考える. イオマスより ATP量の減少が著しいことを報告している. 謝 辞:本研究を行うにあたり,実験を担当された西 このことは,湛 7 ] (条件下ではバイオマス炭素 /ATP比が 塚由季子さん,林 上昇することを意味している.本研究で使用した水田土壌, いたします. 沙樹さんならびに山田智珠さんに感謝 水回転換畑土壌のいずれも採取時には湛水状態、で、はなかっ 文 献 たが,湛水条件を経ることもしくは水分過多の状態が土壌 の徴生物バイオマスと ATPの関係に影響を及ぼしている 可能性が示唆される. Shibaharaandlnubushi( 1995) は , 湛水前の水田土壌について TCAーリン酸で、抽出した ATP 量を測定しクロロホルムくん蒸一抽出法で測定した徴 生物バイオマス炭素量との関係を検討している.彼らの結 果からバイオマス炭素/ATP比を求めると, 232となり, Contine ta l .( 2 0 01 ) が畑土壌に関して得た 190より大き な値となった. このように,水田土壌では畑土壌と比べて バイオマス炭素/ATP比が高くなることが認められてお り,本研ー究での結果と一致している. 以上のように, DMSO- リン轍三ナトリウム抽出後に 清浄度検査用の一体型 ATP測定試薬キットとノト型ノレミノ メーターを使うことによって,土壌徴生物バイオマス炭 素量が推定可能であることが示された.ただし,畑土壌と 水田転換畑土壌を含めた水田土壌とでは ATP測定値から 徴生物バイオマス炭素量への換算係数は異なり,前者では ATP測定{直を 117倍,後者では 202倍することによって 徴生物バイオマス炭素量に換算で、きることが判明した.本 法は,清浄度検査用の一体型試薬キットと小型ノレミノメー ターを用いているので,測定操作自体は簡易に行うことが できるが,抽出にはスターラーと超音波パスを用いている 青山正和 2 0 0 5 .小型ルミノメーターを用いた ATP測定による黒ボ ク土の微生物バイオ 7 スの推定.土と徴生物, 59,4 1-4 4 . B a i,Q ., . Y Zel 1e s, , . LS c h e u n e r t, , . I andK o r t e,F .1 9 8 8 .A s i m p l e e f f 巴c t i v eproceduref o rt h ed e t e r m i n a t i o no f adenosine h e m o s t h e ' l e , 17, 2 4 6 1 2 4 7 0 . t r i p h o s p h a t e i n s o i l s .C M., Todd, A . , andB r o o k e s, P .C .2001 .TheATPc o n c e n t r a t i o n C o n t i n, i nt h es o i lm i c r o b i a lb i o m a s s .S o i lB i o . lβi o c h e m ., 33, 7 0 1 7 0 4 . K . ,B r o o k e s, P ., . ca n d J e n k i n s o n, D .S .1 9 91 .S o i lm i c r o b i a l I n u b u s h i, b i m a s sC,N andn i n h y d r i n Ni na e r o b i canda n a e r o b i cs o i l s 巴f u m i g a t i o n e x t a c t i o n .S o i lB i o . lB i o c h e m .,2 3, m e a s u r e dbyt h 7 3 7 7 4 1 . .S .,andOades, ] .M.1 9 7 9 .A methodf o rm e a s u r i n g J e n k i n s o n,D . lS o i l B i o . lB i o c h e m ., 1 1, 1 9 3 1 9 9 . a d e n o s i n e t r i p h o s p h a t e i n s o i キッコーマン 2 0 0 1 . ルシパックワイド j取扱説明書, p . l-4,キッ コーマン(株),東京. 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