社交不安障害の診断と治療 - 精神神経学雑誌オンラインジャーナル

総 説
精神 神経 学 雑 誌 第 117 巻 第 6 号(2015) 413 ₄₃₀ 頁
社交不安障害の診断と治療
朝 倉 聡
Satoshi Asakura:Diagnosis and Treatment of Social Anxiety Disorder
社交不安障害(SAD)は,DSM Ⅲにおいて,社交恐怖としてその診断基準が示されて以降,
欧米では多くの研究がなされるようになってきた.わが国では,対人交流場面で強い不安感や緊
張感が生じて日常生活に困難をきたす SAD と類似の病態については「対人恐怖」として多くの
研究が行われてきている.特に,自己臭恐怖あるいは醜形恐怖などのように自分の身体的欠点が
他人に不快感を与えていることを確信し悩む症例を確信型対人恐怖として検討してきたことが特
徴と考えられる.DSM 5 においては,
「他者の迷惑になるだろう」と恐れることが診断基準に加
えられ対人恐怖を SAD として診断する方向で改訂された.しかし,醜形恐怖症/身体醜形障害が
身体表現性障害から強迫症および関連症に移り,自己臭恐怖,醜貌恐怖が日本語表記で他の特定
される強迫症および関連症に分類されることになったことは混乱をきたしやすい.薬物療法とし
ては SSRI が多くのコントロール研究で有効性および忍容性が認められ,現在,第一選択薬と考
えられるようになっている.また,認知行動療法の有効性も示されているが,SAD は併存精神疾
患が多いことから,その対応や治療効果不十分例に対する対応は今後の課題と考えられる.
<索引用語:社交不安障害,対人恐怖,確信型対人恐怖,診断,治療>
は じ め に
については,薬物療法や認知行動療法などの精神
社交不安障害(social anxiety disorder:SAD)
療法の有効性に関する研究も多く行われており,
は,1980 年 に DSM Ⅲ に お い て, 社 交 恐 怖
臨床症状評価尺度も開発されている.わが国にお
(social phobia)としてその診断基準が示されて以
いては,現在 SAD の治療薬として fluvoxamine と
降,欧米では多くの研究が行われるようになって
paroxetine が保険適用として認可されている.
きている.以前はまれな病態であるとの認識で
SAD の日本語表記については,
「社会不安障害」
あったが,大規模な疫学調査で 3∼13%という高
とされていたが,2008 年の日本精神神経学会によ
い生涯有病率であることが示され,さらに社会生
る精神神経学用語集より「社交不安障害」と表記
活上の障害も大きいことが明らかとなり,SAD
されることとなった56).また,2013 年に改訂され
は「認識されず治療されなかった重大な障害」で
た DSM 55)の social anxiety disorder(social pho-
あるという考えが一挙に広まった4).また,治療
bia)の日本語表記は「社交不安症/社交不安障害
2)
著者所属:北海道大学保健センター・大学院医学研究科精神医学分野,Department of Psychiatry, Health Care Center
and Graduate School of Medicine, Hokkaido University
編 注:編集委員会からの依頼による総説論文である.
精 神 経 誌(2015)117 巻 6 号
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(社交恐怖)」となされることとなった57).
て分類されて呼ばれていたが,山下86)はこれらの
わが国においては,社交場面や対人交流場面で
患者を対人恐怖定型例としてまとめ,その特徴と
強い不安感や緊張感が生じて日常生活に困難をき
して,自分の臭いや視線,表情,容姿などについ
たす SAD と類似の病態について「対人恐怖」と
ての対人性をもつ欠点の存在,その存在に関する
して 1930 年代より研究がなされてきた.その研究
確信は極めて強固であるという確信性,その欠点
は,神経症と精神病の境界領域にかかわる精神病
は相手の行動などから直感的に感じとられるとい
理学的検討や森田療法をはじめとする精神療法的
う関係妄想性,この妄想体験は一定の状況内にと
介入など多岐にわたっているが,このような病態
どまり,それ以上発展することはないという妄想
については他の国からの報告は少なかった.この
体験の限局性と生育歴や性格,状況要因などから
ため,対人恐怖については,わが国の社会文化的
症状形成が了解的に把握できるという了解性を見
背景に密接に関連して発症する文化結合症候群と
出している.
考えられることが多かった.しかし,DSM Ⅲ以
さらに,わが国における対人恐怖という場合で
降,世界各国でわが国の対人恐怖と類似の病態で
も,研究者によって用いられる概念,用語は異
あると考えられる SAD が高頻度に発症している
なっていた(図 1).山下86)は対人恐怖を対人恐怖
ことが明らかとなり,SAD と対人恐怖の関係に
軽症例と対人恐怖定型例に 2 分したが,1997 年に
ついても議論されるようになってきている.
は操作的な国際分類も考慮しほぼ同様な概念を緊
本稿では,SAD の診断,治療などについて,わ
張型対人恐怖と確信型対人恐怖と呼び変えてい
が国の対人恐怖との関係も含めて概説してみたい.
る87).笠原ら34)は対人恐怖を 4 群に分け,第 1 群:
青春期という発達段階に一時的にみられるもの,
Ⅰ.わが国における対人恐怖
第 2 群:恐怖症段階にとどまるもの,第 3 群:関
対人恐怖は「他人と同席する場面で,不当に強
係妄想性を帯びているもの(重症対人恐怖症)
,第
い不安と精神的緊張が生じ,そのため他人に軽蔑
4 群:前統合失調症症状,統合失調症回復期にみ
されるのではないか,他人に不快な感じを与える
られるもの,としている.植元,村上ら75)は特に
のではないか,いやがられるのではないかと案
妄想的確信をもっている患者に着目し,思春期妄
じ,対人関係から身を退こうとする神経症の一
想症という名称をつけて研究している.
型」と定義されてきた35).このような病態につい
これらと DSM 5 との対応をみると,SAD は山
て は, わ が 国 で は 多 く の 報 告 が み ら れ た が,
下の緊張型対人恐怖,笠原らの第 1 群および第 2
DSM Ⅲによる SAD の診断基準が提出される以
群にほぼ対応していると考えられる.また,自己
前は他の国からの報告が少なかったことから,特
臭恐怖や自己視線恐怖,醜形恐怖などの身体的欠
にわが国における社会文化的背景が注目され,文
点を妄想的に確信しているという山下の確信型対
化結合症候群とも考えられていた.
人恐怖,笠原らの第 3 群の重症対人恐怖症や思春
その後,わが国では 1960 年代頃からは自分の体
期妄想症は,妄想性障害の身体型,あるいは醜形
から不快な臭いが出て周囲の人に迷惑をかけてい
恐怖症/身体醜形障害(body dysmorphic disor-
るのではないか,自分の視線がきつくて周囲の人
der:BDD)に分類されることとなると考えられ
に嫌な思いをさせているのではないか,あるいは
る.DSM 5 で や や 混 乱 を き た し や す い 点 は,
自分の外見が周囲の人に嫌な印象を与えるのでは
BDD が身体表現性障害から強迫症および関連症
ないかなどのように自分の身体的欠点が他人に不
群/強迫性障害および関連障害群に移り,醜貌恐
快感を与えていることを悩む患者が注目されるよ
怖(shubo kyofu)
,自己臭恐怖(jikoshu kyofu)
うになった.これらは自己臭恐怖や自己視線恐
が日本語名のまま他の特定される強迫症および関
怖,醜形恐怖などと身体的欠点の確信部位によっ
連症/他の特定される強迫性障害および関連障害
朝 倉:社交不安障害の診断と治療
山下
笠原ら
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対人恐怖軽症例
対人恐怖定型例
緊張型対人恐怖
確信型対人恐怖
第1群
第2群
青春期に一時的
にみられるもの
恐怖症段階に
とどまるもの
第3群
関係妄想性を帯びて
いるもの
(重症対人恐怖症)
植元・村上ら
第4群
前統合失調症症状,統合失
調症回復期にみられるもの
思春期妄想症
DSM−5
社交不安障害
(SAD)
醜形恐怖症/身体醜形障害
醜貌恐怖 自己臭恐怖
妄想性障害
身体型
図 1 対人恐怖概念と DSM 5
として記載されたことである.BDD を強迫関連
odor として自己臭恐怖と類似の患者を記載して
症 と し て 検 討 し て い く の が よ い か, あ る い は
いる.この患者は,自宅近くの教会には行けず,
SAD に関連したものとして検討していくのがよ
わざわざ遠くの教会に出かけているとの記述があ
いか診断学的にも議論がなされているが ,わが
り,わが国の対人恐怖研究において指摘されてい
国では対人恐怖全体を一臨床疾患ととらえた上で
る中間的な人間関係において恐怖症状が出現しや
亜型に分類するのが合理的であるとの考えが提案
すいことが英国の患者でも認められるのかもしれ
されている
ない.また,米国の 181 名とわが国の 161 名の一
38)
.
32,87)
般の大学生に対し社交不安のスケール(Social
Ⅱ.SAD と対人恐怖
Phobia Scale:SPS,Social Interaction Anxiety
SAD と対人恐怖の関係を考える上では,自己
Scale:SIAS)と確信型の症状を含む対人恐怖の
臭恐怖や自己視線恐怖,醜形恐怖などの確信型対
スケール(Taijin Kyofusho Scale:TKS)を施行
人恐怖が SAD の精神病理と類似のものとしてと
し両国間の社交不安の文化差を比較した検討があ
らえられるかが問題となると考えられる.他の国
る40).この検討では,米国の大学生で SPS と TKS
か ら の 報 告 と し て は, 米 国 か ら 少 数 例 な が ら
ともに高得点者は 53%,SIAS と TKS ともに高得
offensive subtype of taijin kyofu sho として報告
点者は 53%であり,わが国の大学生では SPS と
があり18),韓国からは自己視線恐怖を含め,わが
TKS ともに高得点者は 54%,SIAS と TKS とも
国と同様の症例が存在していることが報告されて
に高得点者は 50%であったという.米国の大学生
いる .自己臭恐怖については,これと類似の病
で SAD タイプの社交不安と確信型を含む対人恐
態が olfactory reference syndrome として報告さ
怖タイプの社交不安を併せ持つ人を合わせると全
れていることが散見される
.Marks は social
体の 8.8%であり,わが国の大学生では 8.1%で
phobia の鑑別診断として dysmorphobia を取り上
あった.このことから,米国とわが国のどちらの
げているが,その中で dysmorphobic fear of body
文化圏でも確信型を含む対人恐怖タイプの社交不
42)
14,59)
50)
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安を呈する人がいると考えられる.また,米国と
いての検討では,BDD は SAD の併存精神疾患と
韓国の DSM Ⅳで診断される SAD 患者で確信型
しては 4 番目に多いものとされ28),時点併存率は
対人恐怖の症状の出現頻度を検討した報告もなさ
8∼12%程度とみられている85,88).一方,BDD に
れている15).この検討では,米国の SAD 患者 181
おいての SAD の時点併存率は 16∼69%程度とみ
例中,こわばった表情に関する恐怖が 48.9%,臭
られている82,88).SAD と BDD が併存していると
いに関する恐怖が 32.4%,視線に関する恐怖が
診断される患者が,わが国の確信型対人恐怖と類
37.2%,腸のガスに関する恐怖が 44.2%,外見に
似の臨床症状を呈しているかどうかは興味がもた
関する恐怖が 37.6%認められ,これら 5 つの症状
れるところである.
のいずれかが認められるものは 75%に及んだと
また,確信型対人恐怖の生物学的基盤を考える
報告された.さらに,これらの症状により他人に
上で,薬物療法に対する治療反応性を検討するこ
迷惑をかけているのではないかと考える加害性を
とも重要と考えられる.この病態に関しては,わ
おびる患者の割合も韓国の患者と比較しても低く
が国ではセロトニン再取り込み阻害薬(serotonin
はなく,確信型対人恐怖の症状は米国の SAD 患
reuptake inhibitor:SRI)が有効であったとの報
者の中でもさほど非一般的なものではないとして
告がみられていた6,7,51).また,確信型対人恐怖の
いる.徐々に他の文化圏においても,わが国で確
一部が分類されると考えられる BDD に対しての
信型対人恐怖として検討されていた症例が存在す
欧米の研究では妄想型を含む BDD の 29 例に対
る可能性が指摘されてきており,DSM 5 におい
し,SRI として clomipramine を使用し,desipra-
ても「他者の迷惑になるだろう」と恐れることが
mine との 16 週間の二重盲検クロスオーバー試験
SAD の診断基準に加えられた.さらに文化に関
を行ったものがある27).この検討では,妄想型を
連する診断的事項において,
「対人恐怖症という
含めても SRI は BDD に対し有効であったという.
症候群は,しばしば,社会的評価への懸念によっ
また,わが国で,Nagata ら55)は 22 例の確信型対
て特徴づけられ,社交不安症の基準を満たしてお
人恐怖に対し 12 週間で SSRI である paroxetine の
り,その人が他の人たちを不快にさせているとい
オープンラベル試験を行い有効性が認められたと
う恐怖と関連しており,この恐れは時に妄想的な
報告している.治療の項目で後述するが,SAD に
強さで経験される」と記載され,対人恐怖を SAD
対する SSRI の有効性が欧米およびわが国におい
として考える方向となっている.また「この症状
ても確立してきていることを考えると,確信型対
はアジア以外の状況でもみられるかもしれない」
人恐怖についても SAD と類似のセロトニン系に
と指摘し,確信型対人恐怖も他の文化圏でもみら
関する生物学的基盤が想定されるかもしれない.
れることが認められてきているが,さらなる比較
文化的な検討は必要と考えられる.
Ⅲ.SAD の診断
DSM では,確信型対人恐怖の一部は BDD ある
DSM における SAD の診断の変遷について整理
いは妄想性障害の身体型と診断されてきた可能性
してみたい.DSM Ⅲ,DSM Ⅲ R3)では SAD は
がある.欧米における近年の BDD の研究では,
social phobia という診断名であった.DSM Ⅲで,
身体的欠陥へのとらわれの強固さから妄想的と考
Ⅰ軸診断として診断基準が示されたが,ここで
えられ,妄想型 BDD といわれる患者が 48.7%に
は,人前で話をしたり,人前で字を書いたり,会
及ぶことが指摘されており,これらは非妄想型
食をしたり,公衆トイレを使用したりするような
BDD と比較して有病率,経過,合併精神障害,精
特定の状況に対する恐怖が強調されていた.主に
神科家族歴,治療反応性において大きな差異は認
ある行為状況に対する恐怖,不安症状が示されて
められず,亜型に分類されると考えられるように
おり,単一恐怖の一種という程度の認識であっ
なっている .米国の BDD と SAD との関係につ
た.また,全般的な社交的状況に対する恐怖症状
62)
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あるいは回避行動をとる症例はⅡ軸診断の回避性
者に迷惑をかけることを恐れることが記載され
パーソナリティ障害に分類されることとなってい
た.他者に迷惑をかけることを恐れる加害性につ
た.その後,診断基準が示されたことにより大規
いては,特に確信型対人恐怖の研究で指摘されて
模な疫学調査(epidemiologic catchment area:
いた症状と考えられ興味深い.確信型対人恐怖と
ECA)61)などが行われ,SAD は,典型的な発症年
SAD との関係を検討する上で問題であった恐怖
齢が 10 歳代半ばと早く,有病率が高く,うつ病や
の不合理性の認識は,必要とされなくなってい
アルコール依存の併存が多いことなどが示され
る.これらのことから,DSM 5 はわが国の対人恐
た.さらに SAD 患者は,特定の状況のみならず
怖を SAD として診断していく方向で考えられて
多くの社交的状況で困難をきたしており,学業や
いる.DSM 5 の診断基準を表 1 に示す.
職業上また婚姻や日常の社会生活全般に大きな障
SAD の研究が進むにつれ,DSM ⅢからⅢ R,
害をきたしていることが明らかとなってきた.
Ⅳ,5 へと,より病態の把握が洗練されてきてい
これらを踏まえ,DSM Ⅲ R での大きな変更点
る.さらに,今後,DSM 5 により検討されること
は,1 つあるいは 2 つ程度の状況のみならず多く
になると SAD とわが国の対人恐怖との関係につ
の社交的状況で恐怖,不安症状や回避行動を示す
いても明らかになってくる点が多いのではないか
全般性の特定をすることとなった点である.ここ
と考えられる.
で,SAD は非全般性と全般性の 2 つの亜型に分類
されることとなった.
Ⅳ.SAD の併存精神疾患
さらに,DSM Ⅳでは,人目につく赤面,震え,
SAD の臨床では,併存精神疾患について考慮
発汗などの不安症状を恐れることが診断基準に明
することは重要である.米国で行われた National
記されるようになった.社交的状況で出現するこ
Comorbidity Survey(NCS)による疫学調査で
れらの不安症状をコントロールできなくなる経験
は,SAD 患者 1,077 人の 6 割近くに併存精神疾患
にとらわれ,予期不安の悪循環に陥り,このため
がみられ,SAD 以外の不安障害が 56%,うつ病
他者からの注目や恥ずかしいふるまいをしてしま
が 42%,アルコール依存が 40%であったという39).
うのではないかということを恐れることが示され
独国での 14∼24 歳の一般人口を対象とし,4 年
た.診断名も,social phobia から social phobia
間追跡調査した Early Development Stages of
(social anxiety disorder)と変更された.
Psychopathology Study(EDSP)によると,調査
DSM 5 においては,恐怖する状況の多さは
開始時に SAD の診断がなされた人は,精神疾患
SAD の重症度に関連する要因と考えられるため
の診断がなされなかった人に比べ 30∼50 ヵ月後
全般性を特定するのではなく,人前で話をしたり
に 3.5 倍大うつ病エピソードを経験していたとい
演技をしたりする行為状況のみに状況が限定され
う67).うつ病を併存した SAD 患者では,自殺念
るものをパフォーマンス限局型と特定することと
慮,自殺企図,抑うつ症状数の増加,うつ病エピ
なった.DSM Ⅲで SAD の診断基準が示されたと
ソードの期間増加の危険が高くなった.このこと
きには,特定の行為状況における恐怖感が主に指
から,SAD はうつ病発症の危険因子であるだけ
摘されており,対人交流場面での恐怖,不安症状
ではなく,うつ病の経過の増悪因子であることも
を中心に考えられていた対人恐怖と SAD との関
指摘され,SAD とうつ病の併存例には治療反応
係を考える場合に問題になっていた点の 1 つで
性や経過について慎重な対応が求められると考え
あった.この変更により,SAD の中核群をより対
られる.さらに,うつ病が双極性うつ病の可能性
人恐怖に近い病態と理解できるようになると思わ
がないかどうかも検討する必要がある.米国で行
れる.また,自分が恥をかかされたり,恥ずかし
われた National Comorbidity Survey Replication
い思いをしたりすることを恐れることに加え,他
(NCS R)においては,双極性障害に不安障害は
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表 1 DSM 5 による SAD の診断基準の要点(文献 57 よ
り引用)
A .他者の注視を浴びる可能性のある 1 つ以上の社交場
面に対する,著しい恐怖または不安.例として,社
交的なやり取り(例:雑談すること,よく知らない
人に会うこと),見られること(例:食べたり飲んだ
りすること),他者の前で何らかの動作をすること
(例:談話をすること)が含まれる.
注:子どもの場合,その不安は成人との交流だけ
でなく,仲間達との状況でも起きるものでな
ければならない.
B .その人は,ある振る舞いをするか,または不安症状
を見せることが,否定的な評価を受けることになる
と恐れている(すなわち,恥をかいたり恥ずかしい
思いをするだろう,拒絶されたり,他者の迷惑にな
るだろう).
C .その社交的状況はほとんど常に恐怖または不安を誘
発する.
注:子どもの場合,泣く,かんしゃく,凍りつく,
まといつく,縮みあがる,または,社交的状
況で話せないという形で,その恐怖または不
安が表現されることがある.
D .その社交的状況は回避され,または,強い恐怖また
は不安を感じながら耐え忍ばれる.
E .その恐怖または不安は,その社交的状況がもたらす
現実の危険や,その社会文化的背景に釣りあわない.
F .その恐怖,不安,または回避は持続的であり,典型
的には 6 ヵ月以上続く.
G .その恐怖,不安,または回避は,臨床的に意味のあ
る苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な
領域における機能の障害を引き起こしている.
H .その恐怖,不安,または回避は,物質(例:乱用薬
物,医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用
によるものではない.
I .その恐怖,不安,または回避は,パニック症,醜形
恐怖症,自閉スペクトラム症といった他の精神疾患
の症状では,うまく説明されない.
J .他の医学的疾患(例:パーキンソン病,肥満,熱傷
や負傷による醜形)が存在する場合,その恐怖,不
安,または回避は,明らかに医学的疾患とは無関係
または過剰である.
該当すれば特定せよ
パフォーマンス限局型:その恐怖が公衆の面前で話し
たり動作をしたりすることに限定されている場合
失調症圏の疾患に対する不安障害の併存率は
38.3%であり,その中で SAD は 14.9%と最も高
かったという.Edinburgh High Risk Study にお
いては,SAD 症状は統合失調症の発症の危険度
を高める因子であることが指摘されている31).
SAD の併存は統合失調症の精神病症状の重症度
とも関連が指摘されており,SAD 症状は妄想症
状を強めるとされ49),統合失調症の経過に影響を
及ぼし,日常生活能力の低下をもたらすという.
米国における National Epidemiologic Survey
on Alcohol and Related Conditions(NESARC)で
は,SAD の生涯診断がなされる人の 48%はアル
コール使用障害の生涯診断がなされたとされ
る24).SAD 患者におけるアルコール使用障害の
12 ヵ月有病率は 13.1%とされ,一般人口における
アルコール使用障害の 12 ヵ月有病率の 8.5%と比
較し高いとされる23).また,SAD を併存するアル
コール使用障害では,SAD を併存しないアル
コール使用障害と比較し,より重度のアルコール
依存となりやすく,うつ病エピソードも伴いやす
く,社会的支援も受けにくいことが指摘されてい
る73).
このように,SAD は早期に発症し,その後,他
の精神疾患が併存しやすいことが考えられる.他
の精神疾患が併存してくる前に SAD に早期に介
入し治療的対応を行うことは,SAD に併存しや
すい他の精神疾患の治療という観点からも重要と
考えられる.
Ⅴ.臨床症状評価
1.Liebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)に
よる SAD の臨床症状評価
SAD の評価者が臨床症状を評価する尺度とし
ては,LSAS43)が使用されることが多い.LSAS
は,SAD 患者が症状を呈することが多い行為状
況(13 項目)
,社交状況(11 項目)の 24 項目から
74.9%併存し,その中で SAD が 37.8%と最も多
なり,それぞれの項目に対して恐怖感/不安感と
かったとされている .
回 避 行 動 の 程 度 を 0∼3 の 4 段 階 で 評 価 す る.
52)
最近行われた,Achim ら による 52 の研究の
DSM Ⅲにおいて SAD の診断基準が示されたと
4,032 例を対象としたメタ解析の結果では,統合
きに重点がおかれていた,人前で話をしたり,会
1)
朝 倉:社交不安障害の診断と治療
419
食をしたり,公衆トイレを使用したりするような
作成されているため治療初期に症状の出現状況を
行為状況のみならず,注目を浴びたり,他人の意
確認していくときにも役立つと思われる.面接場
見に賛成できないことを表明したり,人と目を合
面では語られなかった不安感が高まる状況が確認
わせたりするなどの社交状況についても評価する
できたり,不安階層表などを作成するときにも参
ように作成されており,症状出現状況として行為
考になると考えられる.また,評価を得点として
状況に偏らない評価尺度となっている.LSAS の
視覚化して確認しながら治療をすすめていくこと
評価は,過去 1 週間の症状を評価するものとされ,
は問題点を検討しそれを克服していく方法を治療
項目にあたる状況を経験していなかった場合は,
者と一緒に考えていく一助にもなると思われる.
そのような状況におかれた場合を想像して回答し
てもらい評価することとなる.治療反応性の検討
を行う場合は,項目ごとの想定されている状況を
2.社交不安/対人恐怖評価尺度(Social Anxiety/Taijin kyofu Scale:SATS)
一定にすることに注意が必要である.例えば「人
SAD の臨床症状評価尺度では,自己臭恐怖や
に姿を見られながら仕事(勉強)する」の項目で
自己視線恐怖,醜形恐怖などのわが国において確
あれば,社長や友人に見られながら仕事をするこ
信型対人恐怖として検討されてきた症例の症状評
とは稀であり,一般的に直属の上司のもとで仕事
価には不十分な点があると考えられる.このた
をすることが多いと考えられる人であれば,治療
め,確信型対人恐怖を含め,その臨床症状を評価
経過を通して一貫して上司の見ている状況で仕事
する構造化面接による SATS を強迫性障害の臨床
をしているときの症状を評価することにする.
症 状 評 価 尺 度 で あ る Yale Brown Obsessive
わが国の SAD 患者について検討することを目
Compulsive Scale
(Y BOCS)
を参考に考案した12).
的として,再翻訳の手続きを経て LSAS 日本語版
SATS で は,Y BOCS と 同 様 に 最 初 に 症 状
(LSAS J)を作成し,症例群 30 例,健常対照群
チェックリストを行い,不安感/恐怖感あるいは
60 例を対象として,その信頼性と妥当性を検討し
回避行動の出現しやすい状況(聴衆の前で話す,
てみた結果をみてみたい8).表 2 に LSAS J を示
会議などで意見を述べる,相手に反対の意見を言
す.症例群における全項目の Cronbach のα係数
う,自分より権威のある人と話す,異性と話す,
は 0.95 を示し,内的整合性は保たれていると考え
人を誘う,相手の目を見て話す,知らない人の多
られた.健常対照群において 2 週間の間隔をおい
い集まりに参加する,少人数のグループ活動や行
て 2 回施行した場合の全項目の級内相関係数
事に参加する,他の人が集まっている部屋に入っ
(intraclass correlation coefficient:ICC)は 0.92
ていく,人に見られながら仕事や勉強をする,人
を示し再テスト信頼性も高いと考えられた.ま
に見られながら文字を書く,公共の場所で飲食を
た,LSAS J は社交不安の自己記入式評価尺度で
する,あまり知らない人に電話をかける,かかっ
あ る Social Avoidance and Distress Scale
てきた電話に出る,注目を浴びる,他の人が乗っ
(SADS)日本語版
30)
と相関を示し,診察医が軽
ている公共の交通機関を使用するなど)
,恐怖感/
症,中等症,重症の 3 段階に判定した臨床的重症
不安感に関連する身体症状
(体や表情がこわばる,
度とも相関を示した.また,ROC 曲線を作成し
体や手や足が震える,赤面する,息苦しくなる,
カ ッ ト オ フ 値 を 求 め た と こ ろ 42 で あ っ た.
多量に汗をかく,声が出にくくなったり震えたり
LSAS J はわが国における fluvoxamine と parox-
する,お腹が鳴ったり痛くなったりする,動悸が
etine10)の SAD に対する臨床試験にも使用され,
する,吐き気がする,すぐに排尿したくなるな
治療反応性の評価にも適していることが示されて
ど)
,確信型対人恐怖の認知症状(自分の体の臭
いる.
い,視線,外見,表情が他の人に嫌な感じを与え
LSAS は,比較的多くの状況を評価するように
ており,それは他の人の様子からわかる)を確認
9)
精 神 経 誌(2015)117 巻 6 号
420
表 2 Liebowitz Social Anxiety Scale 日本語版(LSAS J)
恐怖感/不安感
回 避
0:全く感じない
1:少しは感じる
2:はっきりと感じる
3:非常に強く感じる
0:全く回避しない(0%)
1:回避する(1/3 以下)
2:回避する(1/2 程度)
3:回避する(2/3 以上
または 100%)
1.人前で電話をかける(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
2.少人数のグループ活動に参加する(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
3.公共の場所で食事をする(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
4.人と一緒に公共の場所でお酒(飲み物)を飲む(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
5.権威ある人と話をする(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
6.観衆の前で何か行為をしたり話をする(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
7.パーティーに行く(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
8.人に姿を見られながら仕事(勉強)する(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
9.人に見られながら字を書く(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
10.あまりよく知らない人に電話する(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
11.あまりよく知らない人達と話し合う(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
12.まったく初対面の人と会う(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
13.公衆トイレで用を足す(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
14.他の人達が着席して待っている部屋に入って行く(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
15.人々の注目を浴びる(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
16.会議で意見を言う(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
17.試験を受ける(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
18.あまりよく知らない人に不賛成であると言う(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
19.あまりよく知らない人と目を合わせる(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
20.仲間の前で報告をする(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
21.誰かを誘おうとする(P)
0 1 2 3
0 1 2 3
22.店に品物を返品する(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
23.パーティーを主催する(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
24.強引なセールスマンの誘いに抵抗する(S)
0 1 2 3
0 1 2 3
P:行為状況,S:社交状況
し,それらを標的症状リストにまとめる.その後,
確信型対人恐怖の患者 15 例を対象とし,信頼
構造化された面接により恐怖感/不安感
(予期不安
性,妥当性の検討を行った結果では,SATS の
の程度,恐怖感/不安感に伴う苦痛,恐怖感/不安
Cronbach のα係数は 0.97 を示し,内的整合性は
感に対する抵抗,恐怖感/不安感に関連する身体
高かった.SATS 合計は恐怖感/不安感,回避行
症状),回避行動(回避行動の頻度,回避行動と苦
動,認知症状の各項目と高い相関が示され,ICC
痛,回避行動に対する抵抗,回避行動による社会
による 10 人の評価者での SATS 合計,恐怖感/不
的障害),認知症状(確信の程度,関係念慮,加害
安感,回避行動,認知症状の評価者間信頼性も高
性,認知症状に伴う苦痛)について 0∼4 の 5 段階
く, 再 テ ス ト 信 頼 性 も 高 く,Clinical Global
で評価する.SATS を表 3 に示す.
Impression
(CGI)
重症度評価とも相関がみられた.
朝 倉:社交不安障害の診断と治療
421
表 3 社交不安/対人恐怖評価尺度(Social Anxiety/Taijin kyofu Scale:SATS)
恐怖感/不安感
予期不安の程度
恐怖感/不安感に伴う苦痛
恐怖感/不安感に対する抵抗
恐怖感/不安感に関連する身体症状
なし
軽度
中等度
重度
極度
0
0
いつも抵抗
0
0
1
1
大抵は抵抗
1
1
2
2
少しは抵抗
2
2
3
3
躊躇するも屈服
3
3
4
4
完全に屈服
4
4
なし
軽度
中等度
重度
極度
0
0
いつも抵抗
0
0
1
1
大抵は抵抗
1
1
2
2
少しは抵抗
2
2
3
3
躊躇するも屈服
3
3
4
4
完全に屈服
4
4
なし
軽度
中等度
重度
極度
0
0
0
0
1
1
1
1
2
2
2
2
3
3
3
3
4
4
4
4
回避行動
回避行動の程度
回避行動と苦痛
回避行動に対する抵抗
回避行動による社会的障害
認知症状
確信の程度
関係念慮
加害性
認知症状に伴う苦痛
DSM 5 では,SAD にわが国の対人恐怖を含め
の患者の状態に合わせてなされることになると思
て考えられるようになってきており,確信型対人
われる.不安感が強く認知行動療法で用いられる
恐怖の症状を含めて臨床症状を評価できる SATS
ホームワークができにくい場合などは,薬物療法
は,今後,SAD と対人恐怖との関係を検討してい
が選択されることが多いかもしれない.また,D
く上でも有用と考えられる.
cycloserine が行動療法の有効性を高める報告26)
などから,今後,精神療法を施行するときの有効
な増強療法が開発されていくかもしれない.
Ⅵ.SAD の治療
SAD の治療については,薬物療法や認知行動
療法の有効性が多くのコントロール研究により示
1.薬物療法
されている.メタ解析によると SSRI のエフェク
初期の SAD に対する薬物療法としては,モノ
トサイズは 1.5 程度,曝露療法と認知再構成のエ
ア ミ ン 酸 化 酵 素 阻 害 薬(monoamine oxidase
フェクトサイズは 1.8 程度とされる .薬物療法
inhibitor:MAOI)の有用性が検討されていたが,
と精神療法の直接の治療効果比較は精神療法の検
副作用とチラミン含有物の食事制限などが必要な
討では対照群にウエイティングリストを用いるな
こともあり忍容性と安全性の面から問題が指摘さ
ど薬物療法と検討方法が異なるため難しい面もあ
れていた44).また,高力価のベンゾジアゼピン系
る.一般的には,薬物療法の効果発現は早く,認
坑不安薬については alprazolam と clonazepam に
知行動療法の効果は長く続くことが指摘されてい
ついて検討され19,22),ある程度の有効性が認めら
る22,25).治療ガイドラインでは,薬物療法と認知
れたが,SAD にアルコールや物質使用障害が併
20)
行動療法はいずれも SAD の治療として第一選択
存しやすいことなどを考慮すると,副作用や依存
の治療法として提唱されている71).現在のとこ
性の観点からベンゾジアゼピン系抗不安薬は第一
ろ,薬物療法と認知行動療法の併用は,それぞれ
選択薬とはなり得ていない.
の単独療法よりどの程度有効かははっきりとしな
SSRI については,fluvoxamine9,66,80),parox-
いところがある.治療法の選択については,個々
etine45,47,65),sertraline37,46,78),escitalopram36,41)で,
精 神 経 誌(2015)117 巻 6 号
422
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
(serotonin noradrenaline reuptake inhibitor:
が,3∼4 割程度の症例については SSRI 単剤投与
以外の薬物療法的工夫が必要かもしれない.
で大規模
多くのコントロール研究は,成人を対象にして
なコントロール研究が行われ,その有効性と忍容
行われているが,SAD は発症年齢が低いことか
性が確認されている.メタ解析による SSRI の
ら,児童青年期の患者に対する薬物療法の研究も
SAD に対する number need to treat(NNT)は
必要と考えられる.SAD を含む児童青年期の不
3.7 と報告されており,その有用性は高いと考え
安障害に対する fluvoxamine によるプラセボ対照
られる .
試験では,fluvoxamine の有効性が指摘されてい
用量比較試験からは,SAD に対する SSRI の効
る72).また,paroxetine も児童青年期の SAD に
果に用量依存性は少ないとされているが45),高用
対して有効性が指摘されている83).希死念慮や副
SNRI)については,venlafaxine
47,48,60,68)
79)
量にして治療反応性が得られる例があることも知
作 用 を 注 意 深 く 観 察 し な が ら, 児 童 青 年 期 の
られている63).わが国で行われた,paroxetine の
SAD に対しても SSRI による薬物療法を施行する
SAD に対するプラセボ対照二重盲検試験の結果
ことは,その後に併発してくることが多い他の精
では,全例を対象とした解析では,paroxetine 20
神疾患の予防という観点からも重要かもしれない.
mg/日群,paroxetine 40 mg/日群ともに 12 週間
セロトニン 1 A アゴニストの buspirone につい
の治療期間で SAD の臨床症状評価尺度である
ては,単剤療法では SAD に対し有効性は示され
LSAS J がプラセボ群より有意な改善をみせた
なかったが81),比較的少数例のオープンラベルの
が,治療開始時に CGI 重症度評価で重症以上の例
検討では,SSRI に buspirone を併用することで有
に限ると paroxetine 40 mg/日群はプラセボ群と
効性が認められたと報告されている77).わが国で
比較し LSAS J が有意に改善したが,paroxetine
は,tandospirone を増強療法として使用すること
20 mg/日群 で は その改善度は有意ではな かっ
が可能かもしれない.抗てんかん薬の gabapen-
た .このことから,重症例については高用量を
tin58)と pregabalin21)については,SAD に対する
使用してみる価値があるかもしれない.
有効性がコントロール研究で示されているが,
多くの SSRI や SNRI の SAD に対するコント
levetiracetam69)では有効性が示されなかった.非
ロール研究は 12 週程度の短期間のものであるが,
定型抗精神病薬では,小規模の研究であるが,
paroxetine64),sertraline84),escitalopram53)で行
quetiapine76)と olanzapine13)で SAD に対する有効
われた再発防止試験からは,薬物療法継続群での
性が示されており,SSRI により効果がみられな
再発率は 4∼14%であったのに対し,プラセボ群
い場合は,体重増加やメタボリック症候群などの
では 36∼39%であったとされる.このため,治療
副作用に注意しながら試みる価値はあるかもしれ
反応性がみられた後も 1 年程度は薬物療法を継続
ない.
した方がよいのではないかと考えられている.薬
SAD と単極性うつ病の併存例については,
物療法による治療反応性の予測因子については,
SSRI により薬物療法を行うことは妥当と考えら
10)
治療期間の長さが指摘されていることから ,良
れるが,双極性うつ病との併存例に対しては,
好な治療関係を保ち,薬物療法を継続させること
SSRI を使用するか,気分安定薬を使用するか,両
が肝要と思われる.わが国で行われたオープンラ
者を併用するか,エビデンスは多くはないが両疾
ベルの長期投与試験によると 52 週での CGI によ
患に有効性が期待されるかもしれない quetiap-
る治療反応率は fluvoxamine では 64.7%であり9),
ine,olanzapine などの非定型抗精神病薬を使用す
paroxetine では 71.2%であったことから ,1 年
るか,バルプロ酸との併用で gabapentin,prega-
程度の SSRI による薬物療法で約 6∼7 割程度の症
balin などの SAD に対して有効性が指摘されてい
例で効果が得られる可能性はあると考えられる
る抗てんかん薬を考慮するかなど,試行錯誤にな
63)
10)
朝 倉:社交不安障害の診断と治療
423
好意を示してくれなければ
その人は自分を嫌いなのだ
社会的状況
皆に好かれなければ自分は
価値がない
思い込みを活性化する
不安な様子をみせたら奇妙
に思われ拒絶されるだろう
など
社会的危険を察知する
自己を社会的対象として処理する
安全保障行動を含む
回避行動
身体的,認知的
症状
図 2 SAD の認知モデル(文献 16 より改変引用)
ると思われる.統合失調症に併存する SAD 症状
交的状況に関する一連の思い込みを活性化すると
の治療においては,薬物療法としては少数例での
いう.これらの思い込みのために,SAD 患者は,
オープンラベルの検討ではあるが,aripiprazole
通常の社交的状況における対人関係も否定的に解
有効性を指摘する報告がある .アルコールや物
釈し危険のサインとみなし,不安のプログラムが
70)
質使用障害が併存する場合は,まずはその治療が
始動し始めるという.それは,3 つの相互に関連
優先されると考えられる.薬物療法としては,依
する構成要素からなる.第 1 は,危険を察知する
存性を考慮しベンゾジアゼピン系抗不安薬は避
ことによって始まる身体的,認知的な不安症状と
け,SSRI から始めた方がよいと思われる.他の不
される.赤面,震え,動悸,集中困難感,何も考
安障害としてパニック障害が併存している場合
えられない感じなどが起こり,これらが,それぞ
は,SSRI による薬物療法は投与初期の不安感の
れ察知された危険のさらなる原因と考えられ不安
増強を避けるため,少量から開始した方がよい.
を維持する悪循環が形成される.第 2 の構成要素
また,妊娠,授乳中の女性に関しては,薬物療法
は,患者が恐れている社交的状況に対する脅威を
におけるベネフィットとリスクを十分に考慮し
減らすためにとる安全保障行動を含めた回避行動
て,治療を考える必要がある .
である.第 3 の重要な構成要素は自己を社会的対
74)
象として処理する過程とされる.自己の注意が他
2.精神療法
者の視点にシフトしてしまい,不安時に生じる自
SAD に対する精神療法としては,わが国の対
分の内部感覚的な情報を使って,他者からみる自
人恐怖に対する精神療法として検討されてきた森
分自身の印象を作り上げてしまう.自己に注意が
田療法は有効と考えられるが,欧米では認知行動
集中するために,口の周りの筋肉が緊張するのを
療法の有効性が多く検討されている.
感じるとすぐに,この感覚は誰の目にも明らかな
SAD の認知モデルとしては,Clark と Wells の
引きつった表情のイメージにつながることもあ
モデル が興味深い(図 2)
.このモデルによる
り,また,ちょっとした汗の感覚が額を滝のよう
と,SAD 患者は恐れている社交的状況に接する
に流れる映像につながっていくこともある.そし
と,
「好意を示してくれなければ,その人は自分を
て,その自分自身についての印象は,実際に他者
嫌いなのだ.皆に好かれなければ,自分は価値が
が患者について考えていることが反映されている
ない.もし,自分が不安な様子をみせたら,奇妙
と思い込むのである.このように,閉じたシステ
に思われ拒絶されるだろう」などの患者自身の社
ムの中で自己の内部で作られた情報によって自分
16)
精 神 経 誌(2015)117 巻 6 号
424
が否定的に評価される危険があるという信念が強
表 4 SAD の小精神療法
化され,実際の社交的状況で起こっていることは
1 )SAD は治療可能な病態である(心理教育)
2 )今のままでは大変困ってしまうと思われるので,治
療者と一緒に日常生活を立て直していこう(動機づ
け)
3 )しばらくは不安感をうまく手なずけようというよう
な気持ちで(不安感の扱い),まずは 3 ヵ月間は一緒
に治療を行ってみよう.効果が感じられるようであ
れば,少なくとも 1 年間は治療を続けてみよう(予
想される治療期間を示す)
4 )薬物療法は力強い味方になる(薬物に変えられるの
ではなく手助けに)
5 )まずは,日常生活の中で,できそうなことから(行
動)始めてみよう(階層化)
6 )できていることに目を向けよう
7 )周囲の人の話をよく聴き,よく見てみよう(自分の
身体反応に注意が集中しないように,自分への過剰
な観察に陥らないように)
8 )治療中,症状に一進一退があるため,一喜一憂しな
いようにしよう
9 )元来,人に気をつかえることは長所でもある
見過ごされてしまうことが多くなるという.
わが国の自己臭恐怖や自己視線恐怖,醜形恐怖
などの確信型対人恐怖の症状形成を考える場合も
この自己を社会的対象として処理する過程は興味
深い.
「観察者の視点で自己を注目する処理
(自己
注目)
」 「内的情報への注意シフト,内的情報に基
づいて自分が他者にどう見えるかを推論(事実と
一致しない自己イメージ)
」
「自分の価値は他人の
判断で決まる」ことが起こり,その中で自分の臭
いや視線,外見などの対人性をもつ身体的欠点の
存在に事実と一致しない自己イメージが焦点化し
確信していくことが,確信型対人恐怖では起こる
のかもしれない.
認知行動療法の治療技法としては,心理教育,
リラクセーション(漸進的筋弛緩法や呼吸法)
,社
会技能訓練,曝露療法,ビデオフィードバック,
認知再構成法などを組み合わせて行われることが
その症状を理解してもらえなかったと感じている
多い .どの技法の効果が高いかについては議論
ことも多いので,今までのつらかったことを広げ
があるが,近年では認知的技法の重要性が多く指
てみせてもらうようにすることも重要と思われ
摘されるようになってきている .SAD の認知モ
る.その中で,症状の好発状況を確認していく.
デルに沿って,非機能的認知や回避行動を改善し
その上で「社会的にも頭の中でも,対人関係や社
ていくように対応していく.認知行動療法は,個
交的状況に条件づけられた不安が起こりやすい悪
人療法と集団療法の両方で行われているが,近年
循環の回路ができてしまっているかもしれない」
の研究では,個人療法の方が集団療法よりも有効
と病態を説明し「その悪循環の回路が回りださな
性が高いことが指摘されている .
いように,悪循環がとれてよい循環になるよう
一般臨床の外来場面では,認知行動療法や森田
に」一緒に治療していくということを説明する.
療法などの体系的な精神療法の施行が難しい場合
2)
「今のままでは大変困ってしまうと思われる
も多いと考えられる.このため,わが国で 2006 年
ので,治療者と一緒に日常生活を立て直し
から 3 年間にわたり検討された SAD 研究会によ
ていこう(動機づけ)
」
29)
17)
54)
る「SAD の小精神療法」も参考になると考えられ
治療方針を説明する際には,まず,治療に対す
るため,以下解説したい (表 4)
.
る動機づけを高めることが鍵になると思われる.
1)「SAD は治療可能な病態である(心理教育)
」
本来やりたかったが,不安が強く避けてきたため
心理教育時のポイントは,まず,笠原敏彦33)の
できなかったことを聞き出していくことも有効と
11)
指摘する「心の落穂拾い:不安感の出現しやすい
思われる.このとき,治療者は「避けたくない」
社会的状況を確認しながら惨めな思い出を心情的
けれども「避けたい」という両方の気持ちがある
レベルで丁寧に聞き取ること」を十分に行うこと
ことを確認しておいた方がよい.森田療法的対応
と思われる.SAD 患者は周囲の人から「気にしす
に慣れた治療者であれば,症状の裏にある向上発
ぎだ,気持ちを強くもて」
などと言われるのみで,
展の希求(生の欲望)をうまく利用できるかもし
朝 倉:社交不安障害の診断と治療
425
れない.
ともある.可能であれば,徐々に安全保障行動
(不
3)「しばらくは不安感をうまく手なずけようと
安感が起こらないように自然にとってしまう回避
いう気持ちで(不安感の扱い)
,まずは 3 ヵ
行動)をとらないで行動してもらい,その前後で
月間一緒に治療を行ってみよう.効果が感
の周囲の人の様子を確認してもらう.
じられるようであれば,少なくとも 1 年間は
8)「治療中,症状に一進一退があるため,一喜
治療を続けてみよう
(予想される治療期間を
示す)」
一憂しないようにしよう」
うまくいかないことが生じると失敗したという
不安感の扱いは,最初から完全になくさなけれ
感じを強くもつことも多いので,うまくいった
ばいけないと思わない方がよいかもしれない.う
り,うまくいかなかったりしながら,一緒にうま
まく手なずける,折り合いをつける程度にしてお
くいく方法を考えて,全体として徐々に改善して
き,まずは 3 ヵ月,効果が感じられるようであれ
いくことを伝えておく.
ば 1 年間程度は治療を続けてみた方がよいと説明
9)
「元来,人に気をつかえることは長所でもあ
し,予想される改善の時点を最初に設定しておく.
4)
「薬物療法は力強い味方になる(薬物に変え
られるのではなく手助けに)
」
る」
治療の後半では,人に気をつかいすぎてしまう
ことは大変であったが,人に気をつかえることの
薬物療法に対する不安感をもつ人もいるので,
長所も話しておく.
薬物療法を手助けにし,頭の中の悪循環の回路が
このように,一般臨床の外来場面で可能な精神
回りだすことがなくなり,良い循環の回路がうま
療法的対応を行いながら,社交場面での不安感に
く形成されてくるとだんだん薬物は必要なくなっ
とらわれすぎずに生活する自信を獲得できるよう
てくるかもしれないと説明しておく.
に支援していくことも重要と考えられる.
5)「まずは,日常生活の中で,できそうなこと
から(行動)始めてみよう(階層化)
」
お わ り に
不安階層表などを作成してみてもよいかもしれ
SAD について,わが国の対人恐怖を含めて,そ
ない.日常生活で必要な行動がとれるようになっ
の診断,治療などについて概説した.診断につい
ていくことが重要であることを説明する.不安感
ては DSM 5 では,わが国の対人恐怖は SAD とし
が多少あっても行動ができていればよいという
て組み入れる方向で考えられてきている.今後,
メッセージを伝える.
特に確信型対人恐怖が国際的にどのような診断的
6)「できていることに目を向けよう」
位置づけになっていくか興味がもたれる.治療に
できていないこと,不安感が出現することに目
ついては薬物療法としては SSRI が多くのコント
が向きやすいので,できていることに目が向くよ
ロール研究で有効性が示されていることから第一
うに配慮する.うまくできそうな方法を治療者と
選択薬となっているが,SSRI で効果不十分な症
ともに検討していく.
例や治療困難例に対する対応は今後の課題と思わ
7)「周囲の人の話をよく聴き,よく見てみよう
れる.また,精神療法と薬物療法とのより有効な
(自分の身体反応に注意が集中しないよう
組み合わせ方についても検討が必要であると考え
に,自分への過剰な観察に陥らないよう
に)」
意外とよく聴いていなかったり,よく見ていな
かったりし,周囲の人の様子を誤解していること
が多い.よく聴くことができるようになり,よく
見ることができるようになると落ち着いてくるこ
られる.
なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない
精 神 経 誌(2015)117 巻 6 号
426
文 献
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精 神 経 誌(2015)117 巻 6 号
430
Diagnosis and Treatment of Social Anxiety Disorder
Satoshi ASAKURA
Department of Psychiatry, Health Care Center and Graduate School of Medicine, Hokkaido University
Many studies of social anxiety disorder(SAD)have been conducted because diagnostic
criteria are defined as social phobia in DSM Ⅲ in the West. In Japan, several studies have
examined pathological conditions similar to SAD, known as taijin kyofu(TK)
. This highly
remarkable disorder involves a convincing fear of giving another person discomfort from one s
physical faults
(e.g. feeling that neighboring people detect an unpleasant smell from one s body,
“jikoshu kyofu”
, or feeling that neighboring people feel unpleasant because of one s appearance,“shukei kyofu”
)termed“convinced subtype of TK”
(c TK;also known as offensive
subtype of TK)
. In DSM 5, the definitions of feeling rejection and offense of others are added
to a fear of humiliating or embarrassing oneself. Moreover, TK is a sufficient criterion for SAD.
However, it is confusing that body dysmorphic disorder is not in category of somatoform disorders but in that of obsessive compulsive disorder and related disorders and that the Japanese
terms of“jikoshu kyofu”and“shubo kyofu”are categorized as other specified obsessive
compulsive disorder and related disorders. The efficacy and tolerability of selective serotonin
reuptake inhibitors(SSRIs)for the treatment of SAD has been reported in many controlled
studies. Recently, SSRIs are regarded as first line pharmacotherapy for SAD. Cognitive behavioral therapy is also effective for SAD treatment. High rates of co occurring SAD and other
psychiatric disorders can be found in clinical samples and in the general population. Additional
research must be conducted for these patients and for the management of treatment refractory SAD patients.
<Author s abstract>
<Keywords:social anxiety disorder, taijin kyofu, convinced subtype of taijin kyofu(also
known as offensive subtype of taijin kyofu)
, diagnosis, treatment>