温湿度サイクル試験

発行:エスペック株式会社
温湿度サイクル試験
題
題
名
題名
名
キーワード
結露、呼吸作用、水
●温湿度サイクル試験の目的
一定の恒温恒湿条件下で行う高温高湿試験(JIS C 60068-2-3、+40℃93%rh)は、試料内部への水の吸着お
よび拡散による絶縁劣化や腐食の進行により、試料の耐性を評価する方法である。
一方、温湿度サイクル試験(JIS C 60068-2-30, JIS C 60068-2-38)は、湿度のサイクルを行うことによって違
った効果を引き出せる。その効果は、①外気と試料の温度差によって結露を生成させ吸湿を加速させたり、
②半密閉状態の試料内外で圧力差を発生させ、呼吸作用と呼ばれる気体や液体の流入・流出現象をさせたり、
③温度変化による材料の熱膨張の差による変形を検証できる(1)。
●用語の定義
(JIS C 60068-2-28 耐湿性試験指針による)
・ 結露(condensation)
: 表面温度が周囲の空気の露点温度より低い場合に、表面に水蒸気が析出し,
水蒸気から液体の状態に変わり水となる現象
・ 吸着(adsorption)
: 表面に水蒸気分子が付着する現象
・ 吸収(adsorption)
: 材料内部に水が蓄積する現象
・ 拡散(diffusion)
: 材料中の水分子の移動現象
・ 呼吸作用(breathing) : 温度変化によって内部圧力が変化し、そのことによって中空の空間と周囲
との間で空気が交換することで、中空の空間内に水分が蓄積する現象
●温湿度変化による結露の生成
大気中には常に水分を含んでおり,水分を含める量は温度が高いほど多い。したがって、温度が高い大気
を急に冷却すれば,飽和限度に達し結露が生成する(図1)
。
結露の生成には,①昼夜の温度変化によって熱容量の大きい試料は、その温度変化に追従できず低温状態
となり、周囲環境が高湿度環境に変化した結露が生成する。これらの結露は、周囲環境の変化が大きい場所
(海岸など)で、屋外に設置された比較的熱容量の大きな機器の外部や、または密閉されていない装置の内
外部で発生しやすい。
②冷却された試料を暖かいところへ移動した場合に、試料が温湿度の急激な変化を受けて結露が生成する。
これらは,携帯用機器に多くみられ、冬場に屋外から暖房が整った屋内、または夏場に冷房された屋内から
屋外に移動したりした場合に結露する(図2)
。
100
高温さらし
低温さらし
温 度(℃)
80
飽和絶対湿度ライン
60
40
空気中水分含有分
周囲温度の変化
結露分
試料表面温度の変化
水分含有可能分
20
結露
乾燥
0
0
200
400
絶対湿度(g/m 3 )
600
図1.温度と相対湿度と結露量
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図2.結露の生成機構
1
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●呼吸作用
呼吸作用は、半密閉容器のような小さな穴や隙間のあいた装置や部品において内部と外部の圧力差によっ
て発生する。
例えば,図3のような小さな穴のあいた容器で周囲の温湿度サイクルをすると、昇温時には周囲温度が高
く容器内空気は低いので、容器内の空気が冷えている間は負圧となり外部から空気が流入する。降温時には
容器が冷却されるまでは容器内部の圧力が高く、水蒸気は隙間を介して外部に多少放出される。しかし,半
密閉状器の場合、内部に残った水蒸気は冷却され結露する。結露した水分はサイクルを繰り返すほど増加す
る。
65℃
90∼98%rh
25℃
80∼98%rh
定常湿度
試
験
25℃
80∼98%
65℃
90∼98%
65℃
90∼98%
65℃
90∼98%
65℃
90∼98%
65℃
90∼98%
25℃
80∼98%
65℃
90∼98%
25℃
80∼98%
65℃
90∼98%
水分
温
湿
度
サイクル試験
25℃
80∼98%
65℃
90∼98%
水分
図3.湿度の呼吸作用(2)
●試験方法
JIS では、
「高湿度環境下で温度変化が繰り返す設置環境で、機器の表面に結露が生じるような条件下で、
使用するか貯蔵の耐性を評価する方法」として、JIS C 60068-2-30 が規定されており、「呼吸作用による機器
の耐性を評価する方法」として、JIS C 60068-2-38 が定められている。
90∼96%
95∼100%
湿度
湿度
←80∼96%
90∼96%
4h
+65℃
3h
9h
3h
9h
1.5h
+40℃
または+55℃
2.5h
8h
1.5h
温度
1 サイクル/24h
1 サイクル/24h
時間
時間
図4.JIS C 60068-2-30
4h
+25℃
温度
+25℃
2.5h
図5.JIS C 60068-2-38(低温サブサイクルを含まない場合)
●参考文献
(1) 日本規格協会、JIS C 60068-2-28
(2) 三根久、故障をゼロにする信頼性技術、日科技連(1990)
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