2016 年度 一橋大 地理 ■概要 (1)出題・解答の形式 ・大問3題構成。ほぼ全ての大問でリード文と資料が提示される。大問1題当たりの論述問題の総字 数は 300~400 字,1問につき 100~200 字の論述問題が主で,空欄補充・単答問題も出題される。 ・産業・貿易・経済・都市・人口分野に関する出題が多い。経済的内容を軸に,世界全体や地域を概 観する問題が多く,発展途上国に注目した問題がとくに多い。 (2)分量/難易度の変化(昨年度比) 分量 : 変化なし / 難易度の変化 : 変化なし (3)特記事項 ・論述総字数は,例年並みの 1,025 字であった(2015 年度は 1,075 字) 。 ・Ⅲで,新課程の教科書でトピックとして取り上げられている「仮想水」が出題された。 ・自然環境に関する出題はなかった。 ■各問の分析 大問 (120 分) 出題形式・テーマ 問題の内容・分析 難易度 コーヒー豆・カカオ豆・茶を事例とする一次産品に関する問題。問 1の農産物名,問2の国名の判定は完答したい。問3は何を書くべ Ⅰ 一次産品 きか迷うが,まずは表Ⅰ-1で中国・インドの「生産量急増の割に (論述 100 字×1, 輸出量は微増→国内消費急増」に注目し,大きな需給の変化を説明 125 字×1, したい。問4は東南アジア2カ国は鉱工業も盛んな国,アフリカ2 150 字×1,単答) カ国はモノカルチャー経済国と容易に見抜けるはずなので,解答も 標準 容易に作成できよう。問5のフェアトレードは,2013 年度Ⅰで出 題されており,基本的な内容である。 EUの基本理念の1つである「人の自由な移動,資本や物の自由な 流通」に関する問題。問1はシェンゲン協定か通貨統合が書きやす Ⅱ EU(欧州連合) い。問2は東欧諸国の国名判定は難しいが,指標は確実に解答した (論述 50 字×1, い。問3は, 「加盟国の拡大→EUの域内格差の拡大」は知識で書 125 字×1, けるが,125 字を埋めるには,表から読み取ったことも的確に盛り 150 字×1,単答) 込む必要がある。問4は,世界金融危機時の 2008 年・2009 年が転 標準 換期となることに注目し,表を読み解く。ポーランドが流入人口・ 流出人口ともに増加している理由を書けるかが高得点のカギ。 文章1は「仮想水」がテーマ。問1は,日本の農業の弱点である「山 Ⅲ 農業 がちな地形,零細経営が主」と,水から想起し「稲作」に言及した (論述 100 字×1, い。文章2はメルコスールの農業がテーマ。問2は作物Y(大豆) 125 字×1, 以外の判定は難しい。問3は設問の意図がつかみにくいが,大豆の 150 字×1,単答) 需要増を柱に解答するとよい。問4は曖昧な問い掛けだが,熱帯林 やや難 の開発,先住民とアグリビジネスとの対立などを書けばよい。 ※ 難易度は一橋大受験生を母集団とする基準で判定しています。 ■合否の分かれ目 2015 年度と同様,2016 年度も高校地理の範囲を大きく逸脱した問題は見られないが,難問や読解に苦慮 する資料も見られた。リード文を丁寧に読み,資料を正しく読み取り,持っている知識と結び付けること ができたかが,得点のカギとなり,合否の分かれ目となる。各大問における基本的な知識問題や比較的単 純な資料読解問題では,確実に得点する必要がある。 ■一橋大地理の要求 ⇒幅広い知識と高い資料読解力を前提に,確実に解答できる“表現力”が必須。 要求① 人文・社会分野を主とする幅広い知識力 一橋大地理では,高校地理の範囲は当然のこと,人文・社会分野の幅広い“知識力”が求められる。世 界史・政治経済の知識を必要とすることも多いので,これらの教科書にも目を通しておくとよい。時事的 なテーマについても関心を持ち,日頃から新聞に目を通し,時事用語集などにも触れておくとよい。また, 読書を通して,人文・社会分野の様々な知識を吸収し,理解を深めておくこともお勧めしたい。 なお,自然地理的な問題も出題されることがあるので,教科書レベルの内容は確実に押さえておくこと。 要求② ポイントを素早く見抜く資料読解力 一橋大地理の問題では,数多くの資料が提示される。そこで,大量の資料の中から解答に必要となるポ イントを素早く見抜き,情報を的確に読み取る“資料読解力”が求められる。統計図表を使用した問題が とくに多いので,日本を含めた主な国の人口・民族・貿易・産業の現況について, 『世界国勢図会』 『日本 国勢図会』 (ともに(財)矢野恒太記念会)のような統計資料集で確認しておきたい。 要求③ 確実に解答できる表現力 一橋大地理の出題形式の中心は,100~200 字程度の論述問題である。リード文や設問文の意味を正確に 読み取り,知識と資料から読み取った内容を結び付けて,条件に沿うように,確実に解答できる“表現力” が求められる。 “表現力”の養成には,論述演習の繰り返しと,適切な添削指導が有効である。 ■一橋大地理攻略のために 基礎力の完成 要求①を満たすため,遅くとも高校3年生の夏までに未習範囲をなくし,一通りの基礎を完成させよう。 とくに一橋大地理頻出の産業・貿易・経済・都市・人口の各分野については,資料集なども念入りに確認 することが重要である。一橋大地理では,発展途上国を中心に,地誌的な内容の出題も頻出なので,地誌 学習も早めに取り掛かりたい。要求③の養成にも繫がるが,Z会の通信教育を利用するなどして,各単元 の基本的な学習を行うとともに,指定字数の少ないものでよいので,論述対策にも着手しておこう。また, 要求②を養うため,統計集や地図帳に日頃から目を通す習慣をつけ,統計の持つ意味を理解しておくこと が重要である。 論述力の養成 一橋大地理の攻略には,過去問などで傾向を知り,論述問題を中心とする問題演習を行うことが有効で ある。ある程度の要求①・要求②を身につけたあとは,Z会の通信教育などを利用して,問題演習に取り 組み,要求③を磨き,高めていこう。模試や問題演習を通して,苦手分野・地域を発見した場合は,早急 になくすことが肝要である。 実戦演習 要求①~③をすべて身につけた上で,高校3年生の冬休み以降は,Z会の通信教育などで,より本番に 近い形で得点を稼げる答案を作成する訓練を積むことが望ましい。制限時間・時間配分や問題に取り組む 順序などを意識した問題演習を繰り返し行うことで,入試本番で難問に出合っても冷静に対処できる“実 力”を身につけよう。
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