1 AKLTブラインド量子計算

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AKLT ブラインド量子計算
BFK プロトコルは、グラフ状態を用いていましたが、グラフ状態以外にも多くの
リソース状態があり、それぞれが advantage を持っています。そこで、グラフ状
態以外のリソースでもブラインド量子計算ができるかどうかというのが気になり
ます。
私は 2011 年にエジンバラ大の Kashefi とその PhD の学生 Dunjko と共同で、
AKLT 状態でもブラインド量子計算ができることを示しました。 [1]。
AKLT 特有の問題がいろいろあるため、グラフ状態のブラインド量子計算の結
果を直接拡張するわけにはいかずなかなか苦労しました。詳細は論文を見ていた
だくとして、ものすごく大雑把に言うと、下の図のように、アリスがランダムに
回転した4キュービット状態をボブに送り、ボブが AKLT を作り、その後は古典
通信をやりとりするのです。
(4キュービット状態だと、1キュービット状態を送
る上記のプロトコルに比べて、アリスの負担が増えてないか、と思うかもしれま
せんが一概にそうともいえません。エンタングルした2光子は Parametric down
conversion で簡単につくれますから、ひょっとしたら、状況によっては、1キュー
ビット状態を作るほうが大変かもしれません。このへんは実験の人と現在話して
います。)
Alice
(b)
Bob
(Kashefi と Dunjko と議論しているときに、この、特殊な4キュービット状態を、な
んて呼ぼう、という話になり、ジョークで「Dango」状態がいいんでないか、といったら、
本当に採用されてしまいました。ガイジンには Dango が何かわからないので、論文には
団子の写真がはいっています。)
今は、量子計算機を提供するサーバー、ボブ、は一人だけですが、ボブが何
人もいて、互いにベルペアー(シングレット)だけシェアーしているとどうなる
のか、というのも面白い問題です。(ベルペアーだけシェアーしていても、古典
通信ができなければ、なにも情報を伝えることはできません。もし、ボブ1がベ
ルペアーの片割れを測定しただけで、ボブ2に情報が伝わったら、因果律に反し
ます。)我々は、このような、
「多ボブ問題」も考え、同じようにして、AKLT ブ
ラインド量子計算が可能である、ということを示しました。このように、ベルペ
アーはシェアーしているのに、古典通信がまったく許されない、というのは多少
人工的ではないか、と思うかもしれませんが、実は現実的なストーリーとしてあ
りえるのです。
下の図を見てください。
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Coogle
Q-wave
Alice
D
Somy
Fakebook
IBN
将来、いくつかの会社が量子計算機をつくるでしょう。青い丸がそれらの会社
です。ベルペアーは、アリスが送ってもいいですし、信頼できる第三者機関 (D)
が送ってもいいでしょう。赤い点線でつながった赤丸がベルペアーです。アリス
は、その中の2社、例えば Fakebook と Q-wave を選んで、量子計算を依頼した
とします。Fakebook は、アリスの個人情報を得ようとやっきになっているので
(注:この話はフィクションです)、アリスが依頼したもう一社はどれか知ろうとし
ます。そのために、Fakebook は各社に電話で、「アリスに依頼された?」と聞い
て回るわけです。しかし、もし Fakebook が間違って、アリスが依頼していない
会社 Somy に電話したとすると、Somy は、Fakebook が、アリスの個人情報を得
ようとしている、という証拠を得ることになります。Somy がそれを公表すれば、
Fakebook の信用は地に落ち、もう二度と量子計算機サービスの仕事はできなく
なってしまいます。量子計算機を作り、維持するのは非常に大きな投資ですから、
だれも、このようなリスクは犯したくありません。したがって、2社の間で古典
通信することはありえない、と期待できます。
References
[1] T. Morimae, V. Dunjko, and E. Kashefi, arXiv:1009.3486
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