ダウンロード - 公益財団法人 京都市景観・まちづくりセンター

平成27年8月
(公財)京都市景観•まちづくりセンター
京町家まちづくりファンド•サロン
報告書
日時・会場:平成27年6月25日(木)19:00~21:00
be 京都(京都市上京区新町通上立売上る安楽小路町429番地1)
平成27年6月27日(土)14:00~16:00
三原邸(京都市中京区岩上通蛸薬師下る宮本町)
概
要:• 京町家まちづくりファンド 近況報告
• 会場内部見学
• 平成26年度京町家まちづくりファンド・サロンで出たご意見、
アイディア等のご紹介
• グループでの座談会
• グループ発表
参 加 者:6月25日 12名
6月27日 18名
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◆京町家まちづくりファンド 近況報告
京町家まちづくりファンド改修助成事業の近況、基金の変遷、平成26年度の寄附拡大の
取組についてご説明しました。
改修助成を受けた皆様には、京町家まちづくりファンド事業報告会時に、見学会として会
場のご提供及び改修の経緯等のご説明、当財団が実施している「京町家再生セミナー」にお
ける講師及び会場のご提供、京町家に関するマスコミ等取材のご協力等、多岐にわたりご支
援、ご協力をいただいております。
今後も、皆様と連携を深めながら、京町家の保全・再生の事業に取り組んでまいります。
※ 新たな寄附付き商品 井筒八ッ橋「夕子バナナカカオ」は、現在、夏の季節商品販売の為休止中ですが、
平成27年9月頃より発売再開の予定です。
◆平成26年度京町家まちづくりファンド・サロンで出たご意見、アイディア等
ご回答及び当財団の各種支援事業等を紹介しました。主なものは以下のとおりです。
◇京町家についてのお困りごと
 大工さん、設計士さんなど気軽に相談できる方がいない場合、当財団からも各種京町家
関係団体におつなぎしています。また、随時、京町家なんでも相談及び京町家の専門家
(大工さん、建築士、不動産事業者の方々)による専門相談を実施しています。
 京町家についての基本を様々な視点から学ぶ「京町家再生セミナー」を開催しています。
また、皆様のご意見は、今後のセミナーのテーマに反映させ、セミナー内容の充実を図
って参ります。
 近隣問題に関する相談窓口
窓
口:京都市役所 北第一会議室(北庁舎東玄関受付隣)
担
当:京都市 都市計画局 建築指導部 建築指導課
実 施 日:毎週木曜日
受付時間:13:15~13:30 予約不要
相談時間:13:30~15:30
ホームページ:http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000104670.html
◇歴史的な景観の保全について
 多くの人に歴史的な景観が残るエリアだということを知ってもらうために、京都市が
実施している「京都を彩る建物や庭園」*1 にご近所が一緒に応募し、地域一円で保全の
輪を広げることを目指している事例もあります。選定を希望する場合は、自薦も可能で
す。また、当財団から推薦による応募も実施しておりますので、お気軽にお声掛けくだ
さい。
 お住まいのエリアの町並みや住環境を守るという課題については、随時、地域まちづく
り相談を実施しています。デザインや高さ等のルールづくりの制度である地区計画や
建築協定等、様々な地域まちづくりの取組をお手伝いします。また、どんな地域にした
いかというビジョンづくりや、それを共有し、実現するための「地域景観づくり協議会」
*2 制度の取組も支援しています。
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 税制優遇の制度について
景観重要建造物:相続税の適正評価
登録有形文化財:固定資産税/家屋 2 分の 1 控除
相続財産評価額/土地・家屋とも 10 分の 3 控除等
「京都を彩る建物や庭園」*1:京都の財産として残したいと思う、京都の歴史や文化を象徴する
建物や庭園を公募により、リスト化・公表し、市民ぐるみで残そうという気運を高めるととも
に、様々な活用を進めることなどにより維持継承を図る制度で、京都市文化市民局が実施して
いる。
「地域景観づくり協議会」*2:地域の景観を保全・創出するため、地域住民が主体となって景観
づくりに取り組んでいる組織を京都市が「地域景観づくり協議会」として認定し、地域が主体
となって、その地域で建築活動等を行う建築主等と、より良い景観形成に向けて意見交換を行
う制度
6/25「be 京都」会場
6/27「三原邸」会場
◆座談会
① 「京町家を改修して残したい」という思いを、他の所有者に広げる方法
② 町家暮らしの中での地域とのかかわり方/こんなことを実践しています
③ 京町家を守ることの大切さを寄附者の方に共感してもらう仕掛け
の3つのテーマについて、意見交換を行ないました。
◇テーブル①発表「京町家を改修して残したい」という思いを、他の所有者に広げる方法
6月25日
 町家の改修に携わる多くの大工さんを応援・表彰し、技術の継承を通して町家の改修を
広めていく。
 町家の改修時は、近所の人が声をかけてくれたり、大工さんとの打ち合せなど、多くの
人とつながるきっかけになる。この人脈をもとに改修の輪を広げていく。
 町家がお化粧直しをすることによって、町全体が輝く様子を見てもらう。
 室内の暗さや冬の寒さなど町家の困難な局面が注目されがちだが、天窓からトオリニ
ワに降り注ぐ光や、風が通るので自然を感じながら快適にすがすがしく暮らせること、
自然素材や古材を使ったエコロジーな改修であることなどを積極的にアピールする。
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 町家をテーマにした漫画や絵本が出版されているので、それを読んで町家を身近に
感じてもらう。
 町家の宿が人気だが、行政が改修計画や許可申請の指導をしっかり行い、宿泊客に町家
暮らしの良さを実感してもらえるような活用事例を増やす。
 冬は寒いため、家族がひとつの部屋に集まりやすい、子供が丈夫に育つ、また、町家は
集いの場として最適なので親戚付き合いが密になる、などの利点をアピールする。
 町家の一部をお店にすると、通りを歩いている人が写真を撮って行く、お客さんが町家
の内部をじっくり見て行ってくれるなど、周囲の注目度が所有者のモチベーションに
つながる。
 外観は伝統的な形を残しつつ、快適な居住性を実現出来ることを伝える。
 町家の庭は緑が豊かなので、環境面での補助金制度が出来ないか。
6月27日
 親の背中を見て子供達が「いいなあ」と思ってくれるように、京町家での日常的な生活
を守り、継続していく。
 行政が、景観の視点に加えて、観光の視点も含めて、本腰を入れて補助金や税制優遇、
ヨーロッパのような景観保全の為の規制などの法整備を進めなければ、町家の維持は
個人の努力だけでは難しい。行政が京町家の重要性を示せば、所有者の意識も変わる。
 改修費は高くても100年保つことや、柱や床などは使えば使うほど美しくなること
をアピールする。
 暑い寒いはあたりまえ、季節の変化を楽しめることや、結露しないなど環境面のメリッ
トをもっとアピールする。
 子や孫の世代を含めた長期スパンで、改修や維持管理について検討することの重要性
を伝える。
 やむをえず売却する場合でも、買主にその町家の歴史や良さを伝えれば、町家を解体せ
ず、残して活用しようという意識につながるのではないか。
 寄り合いや地蔵盆に利用し、地域の人に見てもらう。
 「○○町の町家」という表記で facebook などに自分の日常やイベント情報を発信し、
周囲の人にも地域の資産であることを実感し、見守ってもらう。
 私有財産だが、京都の歴史的な景観につながっていることを地域全体で意識するよう
にする。
 景観重要建造物など、公的な指定を受けた場合の税制優遇のメリットを伝える。
 残そうかどうかを悩んでいる方のいる地域で、行政や景観・まちづくりセンターの出前
講座を実施してはどうか。
 大工さんなどの専門家に評価してもらうと、所有者が家の価値を再認識する。
 最近は若い人が町家に注目している。地道な活動を継続する中で、少しずつ共感してく
れる人を増やす。
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◇テーブル②発表 町家暮らしの中での地域とのかかわり方/こんなことを実践しています
6月25日
 通りから店舗越しに見える庭の花々や、軒上の鍾馗さんなどが町家をより美しく引き
立てて、通りがかりの人の注目を集めている。
 「地域景観づくり協議会」(P3 参照)を発足し、看板の新設時に協議会と所有者で話し
合いをする、マンション住民も参加しやすい自治会活動の仕組づくりなど、横の連携を
深めながら自分たちの町の景観を守り育てる活動に取り組んでいる。
 お茶の教室を開催している。
 お祭りで地域の一体感が生まれている。
 ギャラリー兼貸しスペースの町家で実施するイベントを、FMなどで発信している。
 自営店舗の店先で、まちセンのチラシを配っている。
 近隣の家もぜひ残って欲しいので、所有者に声を掛けている。
 借家の町家で執筆活動をしていた研究者の出版記念講演会を、その町家で開催した。
6月27日
 地域の寄り合いや地蔵盆に開放している。
 子供向けのおもてなしの授業やコンサート、サロンに活用している。
 京都の住民自治の伝統を残すことも、京町家を残すことと同様に大切。近所付き合いの
出来ない方には町家暮らしを薦めない。
 織屋建ての広い空間を使って、たこやき、ピザ、もちつきなどの地域イベントを開催す
る予定。
 改修した町家を染色家の方にお貸ししているが、近隣に染色の教室が出来るなど、芸術
的な広がりを感じている。
 オフィスとして活用しているので、通りがかりの人がふらっと見学に入ってこられる。
 町会長になったが、地域の少子化を実感している。それぞれの地域に応じた対応が必要。
6/25 の発表の様子
6/27 の発表の様子
◇テーブル③発表 京町家を守ることの大切さを寄附者の方に共感してもらう仕掛け
6月25日
 町家のイベントに参加するなど、きちんと伝統的な工法で改修された京町家に直接
ふれてもらうことが大切。
 町家だけでなく蔵や塀も含めた京都の歴史的な景観を守るためには、町家以上にコス
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トがかかる等、蔵や塀の維持の困難さを伝える。蔵や塀の改修の為の支援制度も必要。
 京都の観光に係わる企業は、伝統的な景観を支える町家の保全のために寄附をすると
いうようなシステムがつくれないか。
 ファンドの助成を受けた町家が連携してイベントを行なう。
 見学が可能なファンドの助成を受けた町家のマップを作成し、観光案内所で配る。寺社
だけでなく、京町家をもっとアピールできないか。
 「京都を彩る建物や庭園」(P3 参照)の制度をもっとPRする。
 町家の改修には高額な費用がかかることを理解してもらう。
 借家の時に住んでいた留学生や研究者は、その後も所在を気にかけてくれる。留学生に、
「紙と木と土でできた家を守って欲しい」といわれて、改修を決意した。このように、
町家に係わった人の輪が、寄附の輪につながるのではないか。
 町家を守ることの大切さを直接きちんと伝える。京町家まちづくりファンドによる
保全・再生の取組を説明したところ、お店のお客さんの外国人の女の子が募金をしてく
れた。
6月27日
 寄附者の方への特典として、京町家のおもてなし体験をしてもらう。
 ふるさと納税のように町家のための納税制度を実施してはどうか。
 ファンドの助成を受けた町家を中心に、近隣にも声を掛けて町家を廻るツアーを開催
する。
 実際に動く織機がある織屋建ての町家として動態保存し、見学してもらう。
 伝統工芸の世界では常に新しい技術が生み出されているように、京都の伝統と新しさ
が融合した場である京町家の姿を見てもらう。
◆まとめ
参加者の皆様には、町家の改修という共通の体験を通して、我が家や地域に対する思いを
分かち合い、交流を深めていただきました。また、座談会では、自己紹介や我が家紹介の
なごやかな時間の中、京町家の保全・再生を促進するための3つのテーマについても、数多
くの貴重なご意見をいただきました。当財団では、これらの皆様の京町家に対する思いを、
今後の事業につなげてまいります。
6/25 参加者の皆様
6/27 参加者の皆様
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