表面保護用粘着フィルムの製品動向 (PDF形式、142kバイト)

U.D.C.
678.6/.7-416-408.2:621.792.053
総 説
表面保護用粘着フィルムの
製品動向
Trend in Pressure Sensitive Adhesive Film for Surface
Protection
当社 複合材料事業部 松岡 寛 Hiroshi Matsuoka
表面保護用粘着フィルムは,製品加工時あるいは保管・搬送時の傷つき防止用とし
て使用され,歩留まり向上,製法の合理化などに欠かせぬ副資材である。当社では表
面保護フィルム“ヒタレックス”を上市しており,多分野で使用されている。
本報告では,ディスプレイ関連で使用される表面保護フィルムの製品動向について,
当社の製品を例に説明する。
Pressure Sensitive Adhesive (PSA) film is attached on various industrial products to
protect their surfaces from injury derived possible during their production, handling,
storage, and transportation. It is an important subsidiary material for improving the
processability and yield.
Hitachi Chemical's PSA film series, HITALEX, have been on the market since 1972,
and have been used in a variety of application fields.
In this paper, we will introduce our new PSA films which meet the recent and future
needs for the PSA films used in the ever developing display field.
〔1〕 緒 言
〔2〕 表面保護用粘着フィルム
粘着フィルム(テープ)には,身の回りでは事務用のセロ
図1に表面保護用粘着フィルムの構造を示す。大別すると
ハンテープ,梱包用クラフトテープや電気絶縁用ビニールテ
基材フィルムと粘着剤の2つになるが,さらに巻きほぐしを
ープ,あるいは絆創膏などがあり,工業分野でもマスキング
容易にするための基材背面の剥(はく)離処理層や,粘着剤
テープや接着テープ,両面テープ,ラベルあるいは表面保護
と基材フィルムの接着性を高めるための基材の表面処理層や
用フィルムなど多くの製品が上市さ
れている。
このなかで当社は,製品を製造す
る際の傷つき防止などの目的で使用
される表面保護用途の粘着フィルム
として,ヒタレックスを1972年に上
市した。
当初は鋼板,建材や銘板などの加
工および保管時の傷つき防止用が主
粘着剤
流であった。その後,めっき工程に
下塗剤
おけるマスクや半導体ウェハのダイ
表面処理
シング時の保持用テープなどの加工
基材フィルム
補助などを目的とした製品,あるい
は配線板や半導体を製造する工程で
幅:10∼2,000mm
長さ:100∼3,000m
剥離処理
使用される高機能フィルムを開発
し,上市してきている。
本総説では,特に高性能,高機能
が要求されるディスプレイ用粘着フ
図1 表面保護用粘着フィルムの構造 粘着剤と基材フィルムのほかにも数種類の層を持つ。
ィルムの最近の製品動向について報
Fig 1 Structure of PSA film for surface protection
PSA film is composed of several layers including a base film and an adhesive layer.
告する。
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総 説
下塗剤層からなる多層構造をしている。表面保護用粘着フィ
ルムに使用される主な構成材料を表1に示すが,これらの各
構成材料を組み合わせることで,多種多様な被着体およびそ
の使用目的に対応する設計が可能となる。
〔3〕 ディスプレイ分野での“ヒタレックス”粘着
フィルムの使用例
ディスプレイは,テレビ以外にもコンピュータや携帯電話
粘着フィルムに使用される粘着剤は接着剤の一種と定義さ
などの各種情報機器,ビデオカメラやデジタルカメラなどに
れている 1)。物質と物質が接着するには,物質間にvan der
おいて,機器と人間とのインタフェースとして使用され,市
Waals力などの分子間力が発生していることが必要である。
場は拡大を続けている。
そのためには,分子間距離が1∼5オングストロームまで接
従来から使用されているブラウン管(Cathode Ray Tube:
近しなければならない 2),3)。しかし,通常物質の表面は目視
以下,CRTと略す)や液晶(Liquid Crystal Display:以下,
では平滑に見えても分子レベルでは凹凸が大きく,2つの表
LCDと略す)のほか,最近ではプラズマディスプレイ
面を単に接触させても,分子間力が働くほど接近する部分は
(Plasma Display Panel:以下PDPと略す)が上市され,さら
極めてわずかである。そのため,隙間を埋める材料すなわち
には有機EL(Electroluminescence)やFED(Field Emission
接着剤が必要になる 。
Display)の応用製品の開発が進められている。これらの2005
4)
一見非常に平滑に見える2枚のガラス板を,単に重ねただ
年の市場予測を表2に示すが,総計で10兆円市場になる可能
けでは接着しないが,間に水が介在すると引きはがすことが
性がある 6)。特にフラットパネルディスプレイ(Flat Panel
容易でなくなる。これは,分子レベルでの凹凸を水が埋め,
Display:以下,FPDと略す)の主力製品であるLCDやPDPで
水を介在し,分子間力が働いているからである。
は年率20%程度の伸びが期待されている。
通常の接着剤は,液状で流動性が大きく,物質の表面形状
一方,国内ではFPDへの置き換えが始まり,減少する印象
に馴染みやすくしてある。ただし,そのままではその状態を
があるCRTも,中国,インド,アフリカなどの市場の立ち上
維持することが難しいので,熱や水分(湿気)あるいは光な
がりや,国内でも2台目以降のパーソナルテレビ需要から,
どを用いて固体に相変化させ,剥離に対する抵抗力を持たせ
拡大基調は維持されると推測される。CRTを構成する部品に
ている。
シャドーマスクがあるが,当社ではシャドーマスク製造時の
これに対して粘着剤は柔軟な固体(貯蔵弾性率:≦3.3×
5)
106dyne/cm2)
であり,軽度の圧力を加えるだけで容易に変
部材のキャリアおよびエッチング時のマスク用に使用される
ヒタレックスL-5000を上市している。
形して,分子間力が発生する距離まで接近する性質を持って
さらに今後大きな伸びが期待されるLCDは,パソコンや携
いる。さらに固体としてその形状を保持し続けるのに十分な
帯電話への採用が進んでいる。LCDには液晶本体の他に様々
強度を持っているので,通常の接着剤のように硬化させなく
な光学シートが用いられており,これらの搬送や製造工程で
ても,ただちに必要な接着強度を得ることができる。また通
表面保護フィルムが傷や汚染防止などのため使用される。
常の接着剤と比較すると,接着力(粘着力)が低いので剥離
当社では本用途の粘着フィルムを上市しており,特にLCD
できるため,マスキングテープや表面保護用粘着フィルムな
用プリズムシートの表面保護用粘着フィルムで高いシェアを
どの用途がある。
持っている。さらにこの技術を展開して,光学シートや構成
次章では特にディスプレイ分野への適用を意図して開発し
部品などの接合用接着シートの開発も進めている。
た当社製品で,具体的な例を説明する。
表1 主な構成材料 粘着フィルムは多種多様な材料の組み合わせで構成されている。
Table 1 Main component materials of PSA films
PSA film is composed of various forms and chemical sorts of materials.
材 料
部 位
特 長
天然ゴム
粘着特性良好
合成ゴム
天然ゴムより耐久性など良好
ゴム系
粘着剤
耐久性,耐熱性,透明性良好
アクリル系
PE,PP
安価,耐寒性,耐薬品性良好
その他
PVC代替など
オレフィン系
基材フィルム
PVC
伸び性,加工性良好
PET
高剛性,透明性,耐熱性良好
ポリイミド
高耐熱性
アルキル系
低汚染性
シリコーン系
剥離性良好
剥離処理剤
注)PE: polyethylene,PP: polypropylene,PVC: polyvinylchloride,PET: polyethylene telephthalate
8
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総 説
表2 世界のディスプレイ市場 年平均伸び率は約20%である。
Table 2 Worldwide market of display equipment
Annual market growth rate averages about 20%.
タイプ
2000年
2005年
伸び率
(%/年)
CRT
2.5兆円
2.8∼3兆円
3∼5
LCD
2∼2.2兆円
4.6∼5.8兆円
20∼30
PDPその他
0.2∼0.3兆円
0.5∼1.4兆円
15∼60
合計
4.5∼5兆円
8∼10兆円
15∼22
位相差板
液晶セル
ユニット
偏光板
ガラス板
液晶セル
シール材
プリズムシート
バックライト
ユニット
光拡散シート
冷陰極管
反射板
図2 LCDの概略図 多くの光学フィルムを使用している。
Fig 2 Conceptual formation of LCD
LCD includes various sorts of optical films.
LCDは1960年代に電卓の表示用として実用化がスタート
し,ノートPCおよびデスクトップPCの表示部,携帯電話,
剥離できること(粘着力が経時で上昇しないこと)である。
この2つの特性は背反するので,その両立が課題である。
カーナビから,さらには据え置きTV用にも使用されている。
当社ではすでに,表面粗さが算術平均粗さ(Ra)で50µm
LCDの構成を図2に示すが,表示精度と品質の向上のために,
を越える被着体用の粘着フィルムや,プラスチックの板に適
液晶の構造はDSM(Dynamic Scattering Mode)から,TN
した粘着フィルムを上市しているが,前者の場合は用済み後
(Twisted Nematic)を経てSTN(Super Twisted Nematic)
,さ
に剥離しようとすると,プリズムシートに無理な力がかかり
らにはTSTN(Triple Super Twisted Nematic)に変化し,駆
ひずみが発生する。また後者の場合は,使用中に粘着フィル
動方式はスタティック駆動からダイナミック駆動に,さらに
ムが部分的に浮いてしまう。
は同じダイナミック駆動でも単純マトリックス駆動からアク
ティブマトリックス駆動に変化した。LCDは図2に示すよう
に,偏光板やプリズムシート,光拡散シートなど多くの光学
シートから構成されており,当社のヒタレックス粘着フィル
ムは,プリズムシートの表面保護用として採用されてきてい
粘着フィルム
るが,さらに偏光板用の表面保護用粘着フィルムおよび感圧
型接着フィルムを開発し,上市した。
プリズムシート
(1)プリズムシート用ヒタレックスL-7300
プリズムシートは図3に示すように全面に凹凸があり,通
常の被着体と比較すると接触面積が非常に小さく,粘着フィ
ルムを張り付けにくい被着体の代表例である。したがって粘
図3 プリズムシートの形状 粘着フィルムの接触面積は小さい。
着フィルムに要求される特性は,①しっかりと張り付き,プ
Fig 3 Conceptual structure of prism sheet
Effective contact area of PSA film and the prism sheet is very small.
ロセス中剥離しない(浮かない)こと,②用済み後は容易に
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総 説
着体表面への汚染が極めて少なく,加工性,保護性能におい
一般に表面の凹凸の大きい被着体に対して粘着性を確保す
ても優れている。
るためには,粘着剤を柔軟で変形しやすくすればよい。しか
(2)ヒタレックスL-8000
し単純に粘着剤を柔軟にしても,液体のように瞬時に変形が
終了せずに張り付け後も継続的に濡れ広がり,接触面積が増
表面保護フィルムを使用する顧客では,フィルムを張り付
大するので粘着力が高くなる。つまり初期から十分な粘着力
けたまま被着体を検査する場合がある。ここで特に被着体が
を得ようとすると,経時的に粘着力が増大して用済み後の剥
光学用フィルムの場合には,表面保護フィルムにも透明性が
離が困難になる。そこで,張り付け時の圧力では容易に変形
良好で粘着剤や基材フィルム中に異物がないことが求められ
し,必要な粘着力を得た後には,粘着剤の変形が進みにくく
る。さらに,表面粗さが異なる未処理(グレア)タイプやマ
なるようにする必要がある。
ット処理(アンチグレア)タイプの光学用フィルムに対して,
次に粘着フィルムの浮きとは,加熱などに際して,基材フ
粘着力の差が小さいこと,張り付け後に加熱などの工程を経
ィルムに残留するひずみや粘着フィルムと被着体との熱膨張
ても粘着力の上昇が小さいこと,浮きが発生しないこと,な
量の差により剥離する現象である。ここで粘着剤は粘弾性体
どが求められる。
であるため,粘着力は剥離速度と剥離温度に依存する。前述
ヒタレックスL-8000ではまず透明性を確保するため,ほか
のひずみにより発生する力に対しては,非常に低速での剥離
と比較して光学特性が良好なアクリル系粘着剤を基本に,架
における粘着力を大きくすることで対策できる。これらの要
橋剤や基材フィルムの透明性も考慮して選定を行った。その
求物性を満たす粘着剤の組成および硬さと厚み,さらには基
結果,透明性(表3参照)はアクリル板なみに良好で,張り
材フィルムの硬さと厚みを最適に選定し,必要な粘着特性を
付けたままでも光学用フィルムの検査をすることが可能にな
得ることができた。
った。
次に被着体の表面粗さの影響が小さい粘着剤の開発手法に
また剥離後の被着体の表面に粘着剤の成分が残留する汚染
(のり残り)がないこと,光学シートに必要な切断,打ち抜
ついて述べる。一般に粘着力は被着体の表面粗さに依存し,
きなどの加工性を満たすこと,保護性能に優れていることな
図6に示すように被着体の表面粗さが大きくなると急激に粘
ども重要である。当社では粘着剤中の不純物の除去と,粘着
着力は小さくなる。そのため表面保護用粘着フィルムは,4
剤凝集力の最適化などにより改善を行い,ヒタレックスL-
∼5種類の粘着力グレードを用意して対応している。
この対策として粘着剤を柔軟にし,表面粗さの大きい被着
7300を開発した。
ヒタレックスL-7300はプリズムシートのような表面の凹凸
体の凹凸に対して十分に追従させれば,被着体の面粗さ依存
の大きい被着体にも良好に張り付き,かつ図4に示すように
性を小さくできる。ここで粘着剤を柔軟にするためには,ポ
張り付け後の粘着力の経時変化が小さいので,用済み後の剥
リマのガラス転移温度(Tg)を低くするか,あるいは凝(ぎ
離が容易である。また図5に示すように,低剥離速度域での
ょう)集力確保のための架橋の度合いを下げればよい。特に
粘着力を,従来のプラスチック板表面保護用粘着フィルムよ
架橋度合いの低減は効果が大きいが,逆に架橋が不十分にな
りも高くすることで,浮きの発生を防止している。さらに被
ると,のり残りや剥離性の悪化などの問題が発生する。
粘着力(mN/25mm)
150
100
50℃放置
室温(23℃)放置
50
0
0
5
10
15
処理時間(日)
図4 粘着力の経時変化(L-7300) 室温での上昇率は約10%と小さい。
Fig 4 Change in adhesion strength with the time elapsed after assembly (L-7300)
The increase at room temperature is as small as 10% even after 15 days.
10
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総 説
3.5
3.0
L-7300
粘着力(N/25mm)
2.5
2.0
1.5
1.0
従来品
0.5
0
0.1
1
10
100
剥離速度(m/min)
図5 粘着力の剥離速度依存性 従来品と比較し低速での粘着力を高くした。
Fig 5 Peeling-speed dependence of adhesion strength
L-7300 has much higher adhesion strength especially at the lower peeling-speed range.
表3 透明性 L-8000は良好な透明性を持つ。
Table 3 Transparency of L-8000
L-8000 has good transparency comparable to an acrylic polymer plate.
L-8000
L-7300
アクリル板
92
90
93
ヘイズ(%)
3
33
1
小←粘着力→大
項 目
可視光透過率(%)
小←表面粗さ→大
図6 粘着力の表面粗さ依存性 表面粗さが大きいと粘着力は小さくなる。
Fig 6 Surface roughness dependence of adhesion strength
Adhesion strength decreases as the surface is rougher.
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総 説
凝集力を確保できる柔軟な粘着剤を開発した。
一般にアクリルポリマは合成に使用するモノマの反応性に
差があり,共重合したポリマ中に均一にモノマが分散しな
L-8000の粘着特性を表4に示すが,表面粗さ依存性を小さ
い7)。そのため,架橋に関与する極性基の分散も不均一にな
くすることができた。また,経時的に粘着力が上昇しにくく
り,部分的に凝集力が低下する。そこで,のり残りを防止す
(図7)
,高温加熱による粘着力の上昇も小さい(図8)とい
う優れた剥離性を得ることができた。
るためには過剰に架橋する必要があるが,それでは硬い部分
ができて柔軟性が低下する。そこでヒタレックスL-8000では,
(3)ヒタレックスDA-1000
光学用途の表面保護フィルム用粘着剤を開発する一方で,
粘着剤の官能基を均一に分散させ,少量の架橋剤でも十分な
180
160
80℃放置
粘着力(mN/25mm)
140
65℃放置
120
室温(23℃)放置
100
80
60
40
20
0
0
5
10
15
20
25
30
35
処理時間(日)
図7 粘着力の経時変化(L-8000) 80℃でも上昇率は約50%である。
Fig 7 Change in adhesion strength with the elapsed after assembly (L-8000)
The increase even after 15 days at 80℃ is not more than 50%.
200
粘着力(mN/25mm)
150
100
50
0
0
50
100
150
200
処理温度(℃)
図8 粘着力の処理温度依存性(L-8000) 張り付け後10分では粘着力の温度依存性はほとんどない。
Fig 8 Characteristics of adhesion on treatment temperature
Adhesion is not depend on temperature 10 minuets after attached to application.
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表4 未処理およびマット処理タイプの光学用フィルムに対する粘着力(L-8000) 表面粗さが異なってもほとんど
粘着力は変動しない。
Table 4 Adhesion strength of L-8000 to optical film with a flat or mat surface
Adhesion strength is independent of surface roughness.
粘着力(mN/25mm)
表面粗さ
(算術平均:Ra)
(µm)
オートクレーブ
処理
オートクレーブ
処理+加熱処理
備 考
初期
未処理タイプ
0.03
130
100
120
浮き,
のり残りなし
マット処理タイプ
0.3
110
120
150
浮き,
のり残りなし
被着体
その技術の応用として部材の接合用の感圧接着シートを開発
した。以下に特長を述べるが,光学フィルムや光ディスクの
(4)電磁波遮蔽(へい)フィルム
マルチメディア時代のテレビとしてPDPが注目をされてい
る。これは高輝度(200cd/m 2以上)で,高解像度の画質を,
張り合わせ用などの分野への展開を図っている。
より大型で薄くて,軽量なディスプレイで実現するという要
DA-1000Xの特長は,
①透明性が優れており(表5)
,紫外線領域でも高い光
求に対して,特に40∼60インチのサイズではPDPが最も量産
線透過率を有している(図9)ことから,次世代DVD用
性に適しているためである8)。
への応用が可能である。
しかしPDPは発光にプラズマ放電を利用しているため電磁
②各種の被着体に対し高い接着性を有している(表6)
波や近赤外線の発生量が大きい。電磁波に関してはVCCI(情
ことから,感圧接着剤として様々な応用が可能である。
報処理装置等電磁波障害自主規制)の放射電界強度規格を満
表5 透明性 DA-1000は良好な透明性を持つ。
Table 5 Transparency of DA-1000
DA-1000 has good transparency comparable to an acrylic polymer plate.
項 目
DA-1000X
L-7300
アクリル板
可視光透過率(%)
93
90
93
ヘイズ(%)
2
33
1
100
DA-1000
透過率(%T)
従来品
50
0
200
300
400
500
600
700
波長(nm)
図9 光線透過率 (DA-1000) 紫外線領域でも良好な透明性がある。
Fig 9 Light transmittance of DA-1000
DA-1000 dose not less its transparency even in the UV region.
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総 説
表6 各種被着体に対する接着力(DA-1000) プラスチック,ガラス,
金属に対して良好な接着力を持つ。
Table 6 Adhesion strength of DA-1000 to various materials
DA-1000 has good adhesion to various plastics, glass, and metals.
項 目
DA-1000
180°ピール接着力
(N/25mm)
アクリル板
8.8
ガラス板
9.4
PC板
6.2
PET
7.0
SUS430BA
4.9
アルミ板
11.0
図1
1 電磁波遮蔽フィルムの拡大写真
導電性細線メッシュにより透明
性を確保している。
足する必要がある。家庭用テレビにPDPを使用するためには,
特に厳しい規格(クラスB)取得が要求されているが,現在
Fig 11 Magnified photograph of conductive-mesh film screen
Narrow line width allows for high light transmittance.
はPDPに破損防止などの目的で設置したフィルタ(前面板)
に電磁波遮蔽機能も持たせている。
当社ではこの電磁波遮蔽フィルムを上市している。図1
0に
PDPの概要を,図1
1にエッチングにより形成した銅のメッシ
ュ構造を示すが,本構造により高い電磁波遮蔽機能と高透明
性を両立させている9)∼17)。
〔4〕 結 言
本報ではディスプレイ関連で使用する粘着フィルムを中心
に説明したが,このほかにもIVH付き配線板のプレス時に使
用する,離型性とIVH部分の樹脂の封止性を兼ね備えたRSシ
リーズや,FPCスポットめっき時に使用するマスクフィルム
として,PVC代替基材フィルムを用いたFPシリーズ,また半
導体用途では,QFNやCSPなどのモールド時に使用する離型
用フィルムRMシリーズなどを上市した。
今後とも新分野への展開を進めるために,各種被着体に対
する粘着性の向上や,経時変化と汚染の低減,また基材フィ
PDP用
フィルタ
ルムに関しては,耐熱性や加工性の改善や環境対応の推進な
どを進め,広範な顧客ニーズに対応した製品を開発したい。
反射
防止
PDPパネル
モジュール
ガ
ラ
ス
参考文献
1 )JIS Z 0109
電磁波遮蔽
フィルム
2 )中尾,外:日立化成テクニカルレポート,1,53-58(1982)
3 )G.M.Barrow(訳者:藤代)
:物理化学,東京化学同人(1976)
4 )日本粘着テープ工業会:粘着ハンドブック(1985)
近赤外
吸収
5 )北崎:粘着剤と粘着加工の概要,接着の技術,15,1-6(1995)
6 )日経マイクロデバイス編:フラットパネルディスプレイ2001,日
経マイクロデバイス別冊,日経BP社
7 )P.J.Flory(訳者:岡,外)
:高分子(上)
(1977)
8 )登坂,外:日立化成テクニカルレポート,32,21-24(1999)
9 )米国特許 6,086, 979
10)米国特許 6,197, 408B1
11)米国特許 6,207, 266B1
12)特開平10-41682
13)特開平11-45676
図1
0 PDPの概要 パネルの前面に電磁波遮蔽フィルムをもつ。
Fig 10 Conceptual structure of PDP
PDP is equipped with EMI shielding film screen at the panel module front.
14
14)特開平11-45677
15)特開平11-45678
16)特開平11-233992
17)特開2000-323891
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(2002-1)