国際通貨システムの安定

国際通貨システムの安定
w12−0143
朴 亮太郎
目次
序章
1章
現代の通貨危機
2章
通貨危機への対応
3章
ユーロ導入と国際通貨システム
終章
序章
国際通貨システムは 90 年代においても多くの混乱を生じてきた。92 年には
ヨーロッパが通貨危機に見舞われ。96 年にはアジア通貨危機が発生し波及した。
通貨危機は為替リスクを増大にし世界貿易に多大な影響を与えてしまう。グロ
ーバル化が進み各国の相互依存が大きい現代の世界経済にとって、為替を安定
させる通貨システムが必要とされている。
一章では通貨危機の発生するメカニズムについて説明する。これには大きく
分けて二種類あり、経済のファンダメンタルズを原因にしたものと、投資家の
自己実現型投機を原因にしたもので 21 世紀型の通貨危機と呼ばれるものであ
る。2 章はアジア通貨危機への各国の対応を基に通貨危機恵の対応を考える。3
章ではまさに 2002 年からユーロ現金通貨流通が始まったがユーロ導入が内外
に果たす役割と影響を考察する。
1章
90 年代に入ってから起こった通貨危機には今までの通貨危機とは明らかい異
なる特徴が見られた。それは、経済のファンダメンタルズの悪化によりその国
の通貨が信任を失い、資本流出が起こるといった経路をたどったそれ以前のも
のとは異なり、投資家の投機アタックによるものである。この場合、経済が原
因で通貨危機が起こるのではなく、逆に経済が順調であっても通貨危機が発生
し為替の不安定化によってマクロ経済が悪化してしまうのである。しかし、な
ぜこのようなリスクを負ってまで固定相場制を維持したかと考えれば、ヨーロ
ッパであればユーロ導入に向けた条件として設定された変動幅を守るためであ
り、アジアであれば輸出依存型の経済でありまた海外からの投資が必要であっ
たからだと大まかに考えられる。一章では今までの固定相場制崩壊のメカニズ
ム(ファンダメンタルズモデル)と 21 世紀型と呼ばれる投機アタックを原因
にした自己実現型モデルを個別に検討する。
(ⅰ)ファンダメンタルズモデル
このモデルでは、国際金融のトリレンマ論つまり 1:自由な資本移動 2:
為替レートの安定 3:金融政策の独立性 を三つ同時には満たす事は出来な
いという理論においては1と3が満たされていない状況をもとにしている。
一言でいえば固定相場制下で財政赤字のファイナンスを目的にして金融政策
を行なった場合その国の通貨は信任を失い資本が流出するといえる。詳しく
述べれば、購買力平価と貨幣数量説が成立する長期においては固定された為
替レートと通貨供給量は一定に定まる。政府がこのルールに従い、そのこと
が市場で信頼されている限り問題は生じない。しかし、財政赤字を通貨発行
によってファイナンスしようとして、通貨供給量を増やした場合、固定相場
制下においては通貨の過大評価(適切な表現ではないが解りやすく言えば円
高)をもたらす。結果、輸出が減少、輸入増大とつながり外貨準備が減少す
る事でこの通貨は信任を失い、資本流出してしまい固定相場制は崩壊する。
つまり結局このモデルでは固定相場制の崩壊をもたらすのは不整合な金融政
策奈のである。これをマンデル・フレミングモデルで表せば図1のようにな
る。
図1
r
LM0
LM1
r:利子率
Y:産出量
IS
Y
LM↑(LM0⇒LM1) ⇒ Y↑⇒輸入↑ 輸出→ ⇒自国通貨過大評
価⇒自国通貨切り下げ圧力⇒自国通貨買い外貨売り介入⇒外貨準備減少
(ⅱ)自己実現型モデル
このモデルでは、国際金融のトリレンマ論でいえば自由な資本移動と為
替が安定していることが満たされていて、金融政策の独立性が満たされて
いない状態を想定している。
単純化して言えば投資化がこの国は投機アッタックが起こると予想した
場合それだけで実際投機アッタックが起こり、資本が流出して外貨準備減
少し、その国の通貨は切り下げせざるを得ない状況に追い込まれる、とい
える。
このモデルでもっとも重要であるのは「資本が流出した場合通貨当局は
固定相場を維持するためにはコストがかかる」という事実である。コスト
というのは資本流出が起こると、固定相場下においては金利が上昇しその
結果経済が悪化すると言うことである。もし、そのコストを嫌い切り下げ
ればそれは固定相場制崩壊と言う事になる。
では、なぜ投資家の予測が実現してしまうのであろうか。これは Obsfeld
のゲーム理論を用いた説明により明らかになる。以下でこれを検証する。
ルール
・プレイヤー 投資家A 投資家B の二人
・プレイヤーはそれぞれその国の通貨を 6 単位づつ保有している
・戦略 売る そのまま 但し売りの場合には手数料が 1 単位かかると
する
・売りによって固定相場が崩壊するとその国の通貨は 50%減価する
投
投資家A
(a)外
ケース
貨準備20の
売らない
(0,0)
売る
(0、−1)
(−1,0) (−1、−1)
売 ら な 売る
い
投資家A
(b)外
ース
投資家B
売らない
売る
(0,0)
(0,2)
(0,2)
(1/2 、1/2)
貨準備6のケ
売 ら な 売る
い
投資家A
(c)外
ケース
投資家B
売らない
売る
(0,0)
貨準備10の
(0,−1)
(0、−1) (2/3 、2/3)
この結果をみると(a)の場合つまり外貨準備が十分ならばとうしかは(売
り、売り)という選択はしない。つまり外貨準備が十分ならば通貨アタック
は起きない。次に(b)の場合これは外貨準備が脆弱な場合であるがこの場
合投資家は(売り、売り)の選択をする事がナッシュ均衡である。つまり、
もしある国が外貨準備が脆弱なことが投資家にばれた場合、その国は通貨ア
タックを受ける事になる。(c)つまり(a) と(b)の中間の場合、ナッシ
ュ均衡は二つ存在するこれは、投資家が通貨アタックは起こらないと考えて
いる間は(売らない、売らない)の選択をするが、何かのきっかけで投資家
がアタックが起こると予測した場合、その予測が現実のものとなってしまう。
このように、自由な資本移動がみとめられ、かつそれが技術的に可能で
あれば投資家の予測によって通貨アタックが起き固定相場制の崩壊をもたらす
のである。実際の場合、ほとんどの国、とくに発展途上国は投資家全体に対し
十分な外貨準備を用意しておらず、先の理論で説明すれば(b)または(c)
の状態にあると言える。つまり、自由な資本移動が可能な現代においては固定
相場制を維持しつつ自由な資本移動を許すことは極めて危険な選択である事が
わかる。では、何故こういったリスクを背負いながらも固定相場制を維持して
きたのかと考えれば、次の二つの要因が考えられる。
・このような国々は独立な変動通貨制の下で運営されるにはあまりにも経済的
に小国である
・このような国々は海外からの為替変動リスクの小さい安定的な資本流入が必
要である。
結局言えることは、固定相場制の維持を重視するか、自由な資本移動を重視
するかのいずれかのを選択する、または前者を維持しつつ後者を制限するかに
なるのである。当然後者のみを選択した場合は固定相場制を捨てる事になる。
それぞれの選択肢について整理すればいかの通りである。
・固定相場を維持し自由な資本移動を捨てる:為替変動のリスクは減り貿易に
は有利であるが、海外からの投資が減る事が経済の発展を妨げる。
・固定相場制をすて自由な資本移動を選択する:これはすなはち変動相場制に
移行することである
・固定相場制を維持しつつ自由な資本移動を制限する:これは最初の選択肢と
ほぼ同じであるが、短期資本と長期資本を区別する事で長期的な経済成長はさ
またけず、投機的な資本流入を防ぐ事が目的である。
2章
一章で検証した通り現在の通貨危機は、その原因は多分に経済の状況以外の
部分にあり順調な経済発展が通貨システムの不都合によって阻害されうる事が
わかった。2 章ではアジア通貨危機を受けてどのように当事国の為替システム
が変化したかについてみることで、通貨危機への対応を考える。
まず、どのように各国の為替システムが変化したかは以下の図2のとおりで
ある
図2 東アジア諸国の為替制度
通貨
中国人民元
94年1月より 人民元相場一本化 対ドル管理フ
ロート継続
香港ドル
カレンシーボード制
台湾ドル
変動相場制
韓国ウォン
90年より対ドル管理フ 97年11月より変動相
ロート
場制
シンガポール・ドル
通貨バスケット制(管理フロート)
マレーシア・リンギ
通貨バスケット制(管理 98年9月 対ドル固定
フロート)
相場
タイ・バーツ
通貨バスケット制(管理 97年8月対ドル管理フ
フロート)
ローと
インドネシア・ルピア
通貨バスケット制(管理 変動相場制
フロート)
フィリピン・ペソ
対ドル管理フロート
変動相場制
出所:村瀬哲司 2000 「アジア安定通貨圏」P274
見て解るように多くの国は変動相場制へと移行した。ではそれ以外の国はどう
のように変化し固定相場制を維持して行くシステムにしたかを為替制度別に検
証する。
・通貨バスケット制
例えばドルに対して固定相場制を取ったとしても、アメリカ以外の国の通貨、
例えば円やユーロに対しては為替変動のリスクは軽減されず、結局は貿易にお
いてリスクを背負う事になる。しかし、実行為替レートの概念、つまりある通
貨のその他全ての通貨に対しての二国間レートを加重平均する事であるが、こ
れを利用して為替レートの水準を決定することである。この仕組みであれば、
複数の国と貿易を行なっていたとしても為替変動の影響を受けにくくなる。
実際、通貨危機以前にこの制度を採用していた国は多かった。しかし、その
実態は極めてドルの比率が大きく、ほぼドルペッグ制であったためその役割を
十分果たさず、95年半ば1ドル=84円から96年後半には120円とい年
半で約3割減価した際、多大な影響を受け通貨危機の自体を深刻化させてしま
った。
しかし、この制度は実行為替レートのウェイトをドルに偏りすぎず、円、ユ
ーロ(通貨危機当時であればマルク)などの比重を貿易量を基準に算出すれば有
効な制度であるといえる。つまり、“ウェイト”を正確に考慮すれば理論的に
は、為替変動のリスクは大幅に減少し、ドルペッグでは無い為自動的に投機的
な短期資本を減らす事が出来る。と考えられる。
・カレンシーボード制
簡潔にいえば「自国通貨を少なくとも 100%外貨準備によって裏付ける制度」
である、つまり厳格な固定相場制である。したがって、自国通貨から外貨への
変換が行なわれた場合、自国通貨は減少する。その結果金利上昇を通じて自国
通貨が一掃魅力的なものになると言うメカニズムを通じて自動調整する。この
制度は固定相場制のメリットを最大限に生かすとともに、他の固定相場制度に
比べその通貨への「信任」は極めて高いものとなるメリットがある。しかし反
面通貨供給量と金利のコントロールは完全に失われてしまう。
実際、香港はこの制度をとっており、結果だけを見れば投機アタックから固
定相場制を防衛した。しかし、その代償として大幅な金利上昇により、(実際
一時、香港ドルのコールレートは 280%まで上昇した)マクロ経済に多大な影
響を及ぼした。その結果、1997 年は実質GDP成長率が5%であったのが 1998
年には―5.1%に落ち込んでしまった。
この事実は固定相場制度を維持することのコストは、生産量Yの減少である
事を端的に標している。つまり、この固定相場制度が教科書通りの反応を示す
厳格な制度である事を表している。
・対ドル管理フロート
簡潔にいえば、固定相場制+資本規制の事である。メリットとしては自由な
資本移動を制限しているため、短期資本などは流入せず投機アタックに見舞わ
れる可能性は低い。しかし、その反面投機的な短期資本以外の資本の流入も制
限してしまうため、自国の経済発展に必要な投資を減らしてしまう。
この制度は中国と通貨危機後新たにマレーシアも導入した。マレーシアは導
入に当たって、短期資本のみを制限するシステムにしたが、短期資本とそれ以
外の判別は難しく、どうしても資本流入全体を減らす結果になる。
結局、通貨危機後幾つかの国は変動相場制を導入した。しかし、東アジアの
国々は輸出依存型の経済体質であり、為替の安定が重要であり、かつ自由な資
本移動による資本流入を必要としていた。変動相場制は為替変動のリスクを拡
大し、かつそのことによって資本の流入も抑えられてしまう。
では、この二つの問題、為替の安定と自由な資本移動をクリアする制度は存
在するのだろうか。そのもっとも有力な制度として上げられているのは、「通
貨バスケット制+アジア通貨基金」である。
これは通貨バスケット制により貿易に対する為替リスクを抑え、アジア通貨
基金の設立により、投機アタックに見舞われたときの外貨準備を保証するとい
う仕組みであり、理論的には整合性があるように考えられる。
では何故、この「通貨バスケット+アジア通貨基金」は採用されていないの
か。その答えは残念ながら経済学の範疇にはないといわれている。政治の話に
なるが、通貨危機に見舞われた東アジア諸国はIMFの融資を受けたため、I
MFの指導に従わざるを得なくなってまった。その結果、IMFの認識が間違
っていたかワシントンコンセンサスつまりアメリカの思惑の働きによって、グ
ローバルスタンダードとされている、変動相場制に移行させられてしまったか
らである。と言われている。
3章
ユーロ導入の為替に果たす役割は、短い目で見れば圏内での為替リスク野消
滅であり、より長い目で見ればドルの一極通貨体制を崩し、2極通貨体制にな
りえるかであろう。しかしいずれも前提としてユーロ通貨が成功する事が条件
である。何を持って成功だと考えるのかについては、圏内の物価を安定させる
事が一番重要な点である。これを満たせば安定した経済成長などはおのずトつ
いてくるであろう。
通貨統合の成功の可能性を見る上では最適通過圏の議論を考慮する必要があ
る。果たしてユーロは最適通過圏であり統合によって多くのメリットがあるの
か、をこの章の最後で検討する。
(ⅰ)圏内の為替リスク消滅
結果として考え得る変化は圏内での貿易活発化つまり市場の統合と、同様
に投資も活発化する。つまり、金融資本市場の統合の、2つのメリットが理
論的には得られるといえる。もっとも、導入前からユーロ導入に備え域内で
の決済、または金融市場の自由化、とうを先行して行なっていたため今回、
現金通貨導入によって、それほど急激にこれらの効果目に見えて増える事は
ないだろう。
更に考慮しなければならないのは、もともとこれらの国々は全体の貿易量
に占める圏内の割合が平均して6割近くと極めて多きい事である。また、こ
の事実が統合へのインセンティブになった。
この側面のみを見れば通貨統合によって得られるメリットは大きいと言え
る。では、アジアを見るとその必要性はあるのか。これを検討するためには
表③(別途のExcell)をみると、アジアも域内に占める貿易量の割合
は5割∼6割であり得られるメリットは大きいと考えられる。
表③
東アジア 米国
EU
合計
中国
989
327
香港
961
409
台湾
639
337
韓国
632
216
シンガポール
672
231
タイ
275
111
マレーシア
430
146
インドネシア
293
75
フィリピン
136
98
日本
1710
1184
東アジア計
5725
2807
その他
239
227
191
152
175
91
114
78
46
657
1781
世界合計 アジア/世界
274
1829
54.1
232
1879
51.14
54
1221
52.33
367
1367
46.23
175
1253
53.63
98
575
47.83
98
788
54.57
76
522
56.13
28
285
47.72
660
4211
40.61
1788
12101
47.31
出所:IMF,Direction of Trade Statistics Yearbook 1998
(ⅱ)2極通貨体制の可能性
可能性としては低くないといえる。可能性を高めている要因としては、ア
メリカは経常赤字国であり、ユーロ圏は貿易黒字国の集まりであるからであ
るからに尽きるのではないだろうか。今までは、歴史的流れとその規模によ
って基軸通貨となりえる通貨が存在しなかったため、アメリカは経常収支赤
字をドルが決済通貨に用いられているため支払われたドルは結局アメリカの
銀行に預けられる。つまり資本収支が黒字になる事で、内外の株式市場、債
券市場に投資され、貸し出されることで経常収支赤字をファイナンスしてき
た。しかし、今後もし何かのきっかけ(経常収支赤字が膨らみすぎが問題視
されたり、ブラックマンデーのような株価暴落)が起こった場合、ドルの信
認が揺らぎ資本が流出した場合、いままでは、一旦流出しても結局は基軸通
貨である事から戻ってきたが、ユーロの存在によってそのままユーロに流入
しとどまる可能性は小さくないと言えるだろう。
以上のような二つの変化が起こる前提としてユーロ通貨が成功することが前
提条件である。ではユーロが成功するかを最適通貨圏を下に考えてゆきたい。
(A)最適通貨圏
Rマンデルによれば最適通過圏とは『経済的ショックが対象的に影響す
る地域より構成され、その間を労働及びその他の生産要素が自由に移動す
る』と定義している。更にいうならば、変動相場制よりも固定相場制また
は共通通貨を試用するほうが経済目標(完全雇用、物価安定、対外均衡)
を達成しやすい、また最適通過圏内では共通通貨を使うが体外的には変動
相場制が有効である。
(B)最適通過圏を構成する条件
【a】経済構造の同質性 【b】地域経済の相互の開放性 【c】生産
要素の流動性 の三つが挙げられる。以下ではそれぞれについて考察する。
【a】経済構造の同質性
経済構造が同質であれば、大きな経済ショックに対しても同じ幅で対応
できる。たとえば、「原油価格高騰」という経済ショックがあった場合。
先進工業国では「コスト上昇」「需要の減少」などの反応が起き生産量は
縮小する。一方で産油国では原油高によって輸出額は増え生産量は増加す
る。もし、この二つの国が異なる通貨圏であれば為替調整を通じて、先進
工業国は国際競争力をまし輸出を増やす事が出来る。しかし、同じ通貨圏
であった場合為替調整されないため格差がどんどん広がっていってしまう。
【b】地域経済の相互の開放性
経済には貿易財と非貿易財が存在し、貿易財の占める割合が大きいほど
その国は開放的であるといえ、すなわち通貨統合によるメリットが大きい。
【c】生産要素の流動性
労働力と資本の流動性が高ければ、圏内で景気のばらつきが出来たとし
ても、労働力は不況地域から好況地域に移動し雇用を平準化できる。また、
不況地域で賃金が下落した場合、新規投資すなわち資本の流入が好況地域
から不況地域に向けて起こる。
1983年
1993年
外 国 全 人 外 国 全 人 外 国 全 人 外 国 全人口
人 人 口 に 人 の 口 に 人 人 口 に 人 の に占め
口
占め 内E 占 め 口
占 め 内 E る割合
る 割 U籍 る 割
る 割 U籍
合
合
合
891 9.0% 587 5.9%
921
9.1% 544
5.4%
ベルギー
3442 6.3% 1870 3.4%
3597 6.7% 1312 2.4%
フランス
4535 7.4% 1433 2.3%
6876 8.5% 1536 1.9%
ドイツ
2.4%
94
2.7%
アイルランド 83
423 0.7%
987
1.7% 153
0.3%
イタリア
552 3.8% 174 1.2%
780
5.1% 188
1.2%
オランダ
210 0.6% 127 0.3% 430
1.1% 192
0.5%
スペイン
1601 2.8% 701 1.2%
2001 3.5% 720
1.3%
英国
(C)ユーロは最適通貨圏か?
現状で判断すれば、(B)での【a】【b】は満たしていると言える
しかし【c】に関しては、労働力の移動については流動的ではないとい
う事が(表4)を見ても解る。
(表4) 単位:千人
出所:国際通貨研究所「欧州通貨統合の動向」1997年3月
労働の流動性は高くない事は明らかであるが、経済状態、財政状態
もともとは異なっていたものをユーロ導入に向けて国々が努力し目標
を達成して、期限どおりの導入を果たしたため、この問題も何らかの
解決策が見つかるのではと考えたい。しかし、現実には言語、文化の
違いが存在しこの問題を解決することは極めて困難であると考えられ
る。悪いシナリオを考えれば、通貨圏のうちの一つの国が失業率が悪
化したために、マーストリッヒ条約を無視しGDP比3%をこえる財
政赤字を出し、その国の長期金利を上げ、インフレが起こり、物価安
定が困難になりECB(欧州中央銀行)が信任を失う事でユーロに影
響を与えることは大いに考え得るシナリオである。
終章
1,2 章では通貨危機を通じてアジアがどのように通貨システムを変えたかを
みた、結果言えることは、通貨危機後東アジアの国々は経済発展の為に最適な
為替システムを選択したとはいえないことがわかった。そして、現状に変わる
システムとして通貨バスケット+アジア通貨基金の妥当性を主張した。しかし、
この問題は政治を絡めて考えてゆく必要がある事も考慮する必要があることも
述べた。3章では、ユーロを通して通貨統合のメリットとそのメリットを享受
するために満たすべき条件として、最適通貨圏の理論を用いた。その結果、現
状のユーロに参加している国々は労働力の流動性を除いては条件を満たしてい
る事が解った。しかし、労働力の問題は極めて深刻な事態を引き起こす可能性
も指摘した。更に付け加えれば、こんご通貨圏を拡大していく上では東方の発
展途上にある国々を考えると、最適通貨圏の条件を満たすのは極めて難しいこ
とは、産業構造を考えれば明らかである。
私は今後 2 年間このテーマを進めていく上で最終的には、アジア共通通貨圏
が必要か、またはそうでなければどのような通貨システムがアジアには必要で
あるかを 4 年次には計量等を利用して明らかにしたいと考えています。その上
で今年、アジア通貨危機とユーロ統合について調べた事は土台になってゆく有
意義な勉強が出来たと思います。もっとも論文としては適当なものではないと
考えますが。
<参考文献>
ポスト通貨危機の経済学 青木健 馬田啓一 剄草書房
アジア安定通貨圏 村瀬哲司 剄草書房
金融経済入門 花輪俊哉 小川英治 東洋経済新報社
通貨危機の政治経済学 上川孝夫 新岡智 増田正人 日本経済評論社
ゼミナール国際経済入門 伊藤元重 日本経済新聞社
経済覇権 吉川元忠 PHP研究所
ヨーロッパ企業の変身 川村寛治 プロスパー