教員からのメッセージ 保健看護に必要な3つの「目」 和歌山県立医科

教員からのメッセージ
保健看護に必要な3つの「目」
和歌山県立医科大学保健看護学部 岡本光代
学生の皆さんは臨床実習の場面で、患者様を色んな角度から見て全体像を捉えるように
助言を受けることが多いと思います。地域看護実習では、地域で生活している様々な人を
対象とし、地域全体の健康を守るために、
「広い視野で見る」ことが大切だとよく言われま
す。さて、私たち看護職に求められる「目」とはどんな目なのでしょう。
地域看護実習である保健師さんが、
「虫の目、鳥の目、魚の目を持った看護職が求められ
る」とおっしゃいました。
「虫の目」は近いところで、複眼を使って様々な角度から注意深
く見る目のこと。
「鳥の目」は虫では見えない広い範囲を、高いところから見下ろし眺める
目のこと。そして「魚の目」とは水の流れや潮の満ち干を、つまり世の中の流れを敏感に
感じる目のことです。看護に置き換えれば、まず看護職が現場に出向いて対象者と直に接
して問題を把握するのが「虫の目」
。次に対象者の置かれている全体を把握し何が最重要問
題なのかを判断する「鳥の目」が必要です。鳥の目で高いところから眺めると、虫の目で
見たときよりも優先すべきことが発見されることがあります。虫の目を使って得た情報を、
鳥の目で判断するのです。そして、地域、社会全体がどんな流れの中で人々は健康を脅か
されているのかということに関心を持ち、私たち看護職にできることを実行していくこと
が「魚の目」なのです。
皆さんはどの「目」がよく見えるタイプでしょうか?これらの「目」を養うためには1
つ1つの経験を丹念に積み重ねてゆくことが大切です。しかし、私たち教員もそうですが、
学生の皆さんはいつも忙しい毎日です。つい効率よくこなすことを身に着け、役に立たな
いと思うものを捨ててはいませんか。その時は役に立たないと思うことでも、長い経過の
中で活きてくることもたくさんあります。私たちが学ぶことや経験することの1つ1つに
意味があり、その積み重ねによって、様々な
物事の見方や考え方が養われていきます。
最後にもう一つ大切な「目」があります。
保健看護の道を志した初心を忘れないで、や
り遂げようとする意志の力、つまり「心の目」
を持ち続けてゆくことです。私たちが大自然
の生き物と同じような素直な心でものごと
を見つめることができた時、そこに保健看護
の未来が拓かれていくのだと信じています。