店舗とu

「経営革新優秀企業表彰」優秀企業
トップインタビュー
経営者に聞く!
株式会社ケーズネットワーク
代表取締役 山友浩司 氏
「社員は、全員が経営者(商売人)」
当社はこれを「実行、実践できる
環境の場」として在りたい
山友社長は大学在学中にディスコチェーン運営会社に学生社員として入社し
た。大学を卒業する年度には支配人となり、すぐに店長、部長、本部長へと昇
格していった。ディスコブームの終息と逆行して立場は上がっていったが、実
際に任されていたのは、リストラ計画の現場指揮やディスコから飲食店への業
態転換などであり、明日の見えない時代を過ごしていた。現状からの脱却を強
く思うようになっていた山友社長は、撤退予定であった勤め先の2店舗(千葉、
大阪)をリースする形での別会社立ち上げを決意し、平成10年に有限会社ケー
ズネットワークを設立した。自らの手で明日の見える会社を目指していくため
の独立であった。会社設立後は、次々に飲食店舗を出店し、鍋料理店、カジュ
アルレストラン、カラオケダイニングを3本柱として事業を拡張していき、平
経営革新計画に盛り込んだ内容や目標は
「セントラルキッチン及びTVリアルタイム配信による調理・教育システムの構築」
をテーマに平成18年8月から平成21年10月までの4年計画で経営革新計画を作成し
ました。
申請時の目標としては、①セントラルキッチンを導入し、そこからTV画面を通じ
てリアルタイムに調理場に配信するシステムを構築すること、②セントラルキッチ
ンには熟練工を配置することで商品の品質安定化を図り、研修も兼ねたキッチンと
することで仕込みと共に研修の場として活用していくこと、を掲げ、社員教育、研
修が画面を通して行うことが可能となるだけでなく、新商品の開発、研究を画面を
通じて店舗間で行うことを目指し、具体的には次の取組を目標にしました。
①については、千葉港に建設計画のあった本社ビル及び新規店舗にセントラルキッ
チンとTV画面を通してリアルタイムに調理場を配信(双方向)するシステムを導
入し、仕込みとともに研修の場とし
て活用することを計画しました。
②については、その当時すでに実施し
ていた千葉・大阪・広島間でのテレ
ビ会議の設備や全店舗に設置してい
たセキュリティカメラなどの既存の
設備を活用して、新たなインフラを
準備・設置し、社員教育、研修及び
調理方法の実演による新商品の開発、
更には技術の共有までを目指した計
(TV画像によるキッチンの様子)
画としました。
成17年には和菓子の製造販売にも進出していった。
経営革新への取組が必要と考えた理由は
承認計画への具体的な取組は
1 平成20年7月に新規3店舗及びセントラルキッ
当社は、千葉、大阪、広島に10店舗を展開していましたが、各店舗間における品
チンを備えた本社ビルを建設し、セントラルキッ
質にレベル差があったり、調理人のレベルアップ及び十分な社員教育が行えなかっ
チンで食材の仕込みを行うことになりました。各
たりしていたので、熟練した調理人のノウハウを他の調理人へ教育することや店舗
店舗の調理スペースの効率化が図られ、店舗スペ
間でのノウハウ交換を効果的に行う方法がないかと模索していました。
ースの拡大が可能となりました。
当社はそのころ既にIP電話を導入して店舗間や店舗と事務所間の電話代を安くす
2 セントラルキッチンを活用して、各店舗の調理
る工夫をしていましたが、このことが一つのヒントになってセントラルキッチン方
者の研修を実施し、調理技術の向上や料理の品質
式を導入し、調理手順をTV画像としてセントラルキッチン・各店舗の調理場間で双
向上及び均一化を実現しました。
方向に配信するシステムを思いつきました。また、ちょうどそのころ、商工会議所
3 更に本社の事務室と各店舗、或いは店舗間では、
主催の経営革新セミナーを受講しており、経営革新計画承認による低利融資獲得と
調理部会議や店長会議を迅速に開催し、メニュー
いった不純(?)な動機もあって経営革新に挑戦することになりました。
の入れ替え、味の統一化などに有効活用しました。
10
(千葉港の本社兼店舗)
承認計画の成果や効果は
今後の夢、将来の展望は
経営革新に取り組んだ結果、売上高、付加価値ともに計画策定時の目標をかなり
千葉は同じ首都圏に位置している横浜と比べて正直なところ、遅れをとっている
上回ることができました。これはTV画面により各店舗間での情報の共有化が図られ、
と感じています。千葉港の新本社はその名のとおり、港に面していますので、将来
各店舗の調理の安定化、品質の均一化によってお客様の満足度が向上したことが寄
的には目の前にある海を使った活性化策を実施したいと考えています。例えば、レ
与していると考えています。また、セントラルキッチンを備えることによってキッ
ストラン船を係留させたり、クルージングと食事を組み合わせたパッケージ商品を
チンスペースの効率化、調理スタッフの省力化が図られたことにより、レストラン
開発したりなど、当社の業績に結び付けるのはもちろんですが、千葉の地位向上、
スペースの有効活用に繋がり、入店客数が増加したことも効果として上げることが
横浜に負けない地元千葉実現のために少しでも役に立てればと思います。そして、
できます。雇用面では、新規店舗出店と合わせて積極的に従業員を採用し、当初71
やはり常に新しいことにチャレンジして、挑戦することの楽しさを味わい続けたい
人を予定していた従業員数は230人と大幅に伸ばすことができました。
と考えています。
承認計画の成功要因は
これから経営革新にチャレンジされる経営者にアドバイスを
今回のシステム導入を通じて各店舗で必要な情報をタイムリーに入手することが
私自身もそうでしたが経営革新に取り組むきっかけは、例えば低利融資などの不
できるようになりました。メニューや調理ノウハウだけでなく、例えばWEB上で全
店舗のチラシを見たり、他の店舗が実施した販売促進策のレスポンスの良さや効率
(費用対効果)も確認したりすることができます。更には会社全体の計数情報も開
示しています。
そのため、各店舗及び各担当者は十分な情報と権限を与えられており、それぞれ
の店舗或いは、個々の社員全員が経営者(商売人)として活躍するための環境が整
純(?)なものでも構わないと思います。今までと違うこと、新たなことに挑戦す
ることが大切です。計画作りの大変さから始まり、途中で面倒になり、何度も投げ
出したくなるかもしれませんが、そこを乗り切り、最後までやり切ることができれば、
きっと次のステップへと進んでいけると思います。挑戦すること自体が面白い。そ
のことをお伝えいしたいと思います。
っています。必要な情報やノウハウを提供しつつ、全社員が経営者(商売人)とし
ての認識を持ち、なおかつお互いに競争する環境を整えたことが、経営革新計画の
成功に結び付いたものと考えています。
現状の課題、経営者として取り組まれていることは
まずは、店舗運営ノウハウの構築・確立を進めていくとともに、優良な居抜き物
憩 い の ひ と 時
株式会社ケーズネットワーク
件を探して新規出店を続けていきたいと考えています。
夏であれば、本社の屋上
承認年月日 平成18年8月3日
また、千葉県の原料を使った特産品
にあるプールで泳いでリラ
の開発・販売も行っています。店内の
承認の類型 ②、③
ックスしているという山友
代 表 者 山友 浩司
社長の休みは日曜日である
所 在 地 千葉市中央区中央港1−28−6
が、日曜日にも仕事をして
ケーズリゾートビル
いることが大半らしい。し
電 話 番 号 043−203−3600
かし仕事であっても趣味で
資 本 金 50,000千円
あっても充実していること
売 上 高 18億2千5百万円
が一番であり、挑戦するこ
従 業 員 数 230名
とが何より面白いと山友社
業 種 その他の一般飲食店
長は考えている。
U R L http://www.ksnetwork.com
工房で丁寧に焼き上げた自家製のバー
ムクーヘンである“ちばーむ”はレス
トランのデザートメニューとして、テ
イクアウト用のお土産品として販売中
であり、千葉市の推奨お土産品に指定
されています。常に新たなことにチャ
レンジしながら、マンネリを防ぎ、地
元千葉への貢献も果たしていくべく取
り組んでいます。
(自家製バームクーヘン“ちばーむ”
)
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