ネットワーク事業者が直面 するトラヒック急増課題 L7レベルでトラヒックを

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ブロードバンド環境の進展に伴いインターネットトラヒック、特に映像系や P2P トラヒックが急増している。通信事業者にとっ
ては、設備増強と収益確保の両立が大きな経営課題となっている。以下では、この課題を解決するネットワークの高度化プロダク
ツとして、Allot Communications(以下、Allot 社)の DPI 製品と、F5 ネットワークス社(以下、F5 社)のアプリケーション・デ
リバリ・コントローラを中心に紹介する。
ネットワーク事業者が直面
するトラヒック急増課題
インターネットトラヒック急
増に伴い、ネットワーク高度化
製品が注目を集めている。その
背景について、IP ネットワーク
プロダクツビジネスユニット長
の市川弘幸氏は、「今までネット
グローバルプロダクツ事業本部
IP ネットワークプロダクツビジネスユニット
ワーク事業者はトラヒックの急
増に対してトランジット回線の
帯域を増やすことでお客様の
【左】ビジネスユニット長 【中】技術グループマネージャー 市川 弘幸氏
尾形 徹氏
【右】主任 長翁 政良氏
QoE(体感品質)を確保してきましたが、さらなる設
QoS 制御/課金を行う。これにより、加入者単位・
備増強が求められる一方で、収益確保との両立とい
アプリケーション単位でのリアルタイムな利用量把
う経営課題に直面しています。モバイルキャリアや
握と契約ポリシーに基づく帯域制御を行うと共に、
アクセス網事業者(CATV/ISP アクセス)の皆様から
柔軟な課金制御も可能となる。
多数お問合せいただいています」と語る。このよう
また図1右は、DPI によるインテリジェントなトラ
な課題を解決するソリューションとして、同社は
ヒック・ステアリング(転送)ソリューションの例
Allot 社の DPI(Deep Packet Inspection)製品
だ。トランジット回線の効率化の為にネットワーク
「NetEnforcer/Service Gateway」とF5社の「VIPRION」
エッジにビデオキャッシュ等付加価値サービス機能
を軸に顧客の用途に合わせた最適な提案活動を展開
を設置する場合、キャッシュ効率の高いトラヒック
している。
を識別して転送することで、効果的なキャッシング
が可能になる。
L7 レベルでトラヒックを可視化・制御する
Allot 社の DPI 製品
L7(アプリケーション)レベルでトラヒックを可
Allot ビジネスを担当する長翁政良主任は、「Allot
社の DPI 製品の最大の特長は、高機能(優れた DPI
エンジンを搭載し、様々な QoS ポリシーを設定可能)、
視化・制御する独自の DPI 技術を核にヨーロッパを
使い易さ(GUI で設定ができ、種類豊富なレポート
はじめ世界的に急成長を遂げているのが Allot 社だ。
とグラフを提供)、高可用性(シグネチャのアップデ
図1に Allot 社のネットワーク高度化ソリューショ
ートはダウンタイムなし、電力供給断時にも通信を
ンを示す。図 1 左は、DPI 技術により、動画配信や
継続するバイパス機能付)です。2003 年から取扱を
P2P などのトラヒックを L7 レベルで識別し可視化/
開始しましたが、2011 年は対前年比約3倍増、国内
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ビジネスコミュニケーション
2012 Vol.49 No.6
《DPI 可視化/QoS制御/課金ソリューション》
リアルタイム課金/ポリシー管理
トラヒック可視化
PCRF(ポリシー/課金ルール機能)
Allot NetXplorer
(リアルタイムモニタリング)
《トラヒック・ステアリング・ソリューション》
Streaming Caching
Allot Service Gateway
OCS(オンライン課金システム)
Video Optimization
Gx/Gy
Allot Service Gateway / SMP
Service
DPI
(アプリケーション識別)
IMS
PCEF
(QoS制御/利用量モニター)
Internet
ビデオキャッシュ・最適化の提供
DPIなどで識別した
トラヒックの転送
(ステアリング)
Internet
図 1 DPI 技術による Allot 社のネットワーク高度化ソリューション
の売上 No.1 を獲得しました。
PCRF
顧客の要望に応じた柔軟
なサービス・課金を提供
特に 2006 年∼ 2007 年に流行
した Winny の対策として導
※PCRF: Policy and Charging Rules Function
※PCEF: Policy and Charging Enforcement Function
入された機器が更改の時期
を迎えており、他社製品と
トラヒック急増
比較して、機能面、性能面、
採用いただいたことが最大
のポイントです。こうした
問合せは非常に増えており、
今後も乗せ換え需要が伸び
ていくと考えています」と
Allot SigmaE
DPI/PCEF
アクセス網/
モバイルアクセス
運用面、費用面、サポート
面で高い評価をいただき、
顧客の用途に応じて
帯域制御装置Allot Sigma-Eか、
負荷分散装置F5 VIPRIONを提案
F5 VIPRION
Internet
Allotの特徴
・アプリケーションレベルでのトラヒックの
可視化/帯域制御
・ビデオやP2Pストリーミングなどの効果が
出るトラヒックのみをステアリング可能
・非対称トラヒックの収容が可能
・Service Chainにより、複数の付加価値
サービスが利用可能
・PCRFとの連携が可能であるため、加入
者単位でのステアリングや、利用量に
応じた料金プランの設定が可能
述べている。
F5の特徴
Streaming
Caching
Media
Optimization
Parental
Control
付加価値サービス機能
・L4レベルで識別して、
ビデオキャッシ
ングやメディア最適化装置への負荷
分散が可能。
(i-Ruleの作成により、
L7レベルでの識別、負荷分散も可能)
・
TCP Proxy やHTTP 圧縮など
によりパフォーマンスを向上
図 2 スマートフォン急増によるアクセスネットワーク圧迫対策ソリューション
−モバイルキャリア、アクセス網事業者(CATV/ISP アクセス)向け−
アプリケーション・デリバリ・コントローラ市
場で多くの導入実績を持つ F5 社の VIPRION
ワーク圧迫対策として NTT-AT が提案する2種の付
加価値サービス機能連動ソリューションを示す。
F5 社のアプリケーション・デリバリ・コントロー
ラのうち、特に最近注目を集めている製品が、最上
位機種「VIPRION」だ。IP ネットワークプロダクツ
ネットワークの性能・ QoS 測定や
脆弱性を評価する測定機器も提供
ビジネスユニットの尾形徹技術グループマネージャ
ネットワーク高度化に不可欠な試験装置として注
ーは VIPRION について、「一言でいいますと、非常
目を集めているのが、高い IP 負荷がかけられる
にコストパフォーマンスに優れ、拡張性の高い製品
「Spirent TestCenter」とアプリケーションを意識し、
です。L4-L7 レベルでのトラヒックの識別・制御のパ
キャプチャした実トラヒックを高負荷発生可能な
フォーマンスに優れ、しかもネットワークやアプリ
「BreakingPiont FireStorm CTM」だ。「単純なパケ
ケーションの再設定なしにブレードを追加すること
ットの量ではなく、アプリケーションの中味によっ
で容易にアップグレードが可能なためビジネスの成
てネットワークの品質が左右されることから、アプ
長に合わせた投資が可能です」と語る。
リケーションを意識し、かつ非常に高負荷がかけら
図2にスマートフォン急増によるアクセスネット
ビジネスコミュニケーション
2012 Vol.49 No.6
れる試験装置は、今や不可欠です。」(市川 BU 長)
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