2016 浦和学院サッカー部 イタリア遠征 報告書 《シレアカップ》 2016/6/9~6/20イタリア・マテーラ市 イタリア遠征の狙い 組織・指導者・選手のサッカーにおける競技力向上と強化。 オンザピッチ(サッカー)・オフザピッチ(それ以外の生活)共に、日本とは 異なった異文化の中での生活の中で、日常にサッカー文化が根付いている ことを肌で知る。 サッカー先進国である本場ヨーロッパを体感し、かつ、その中で日本人と してのアイデンティティを認識、模索すること。 こうした経験を基にして、今後の高校生活、選手生活の中で人間的に自立 を促し・成長に活かす。さらに共同生活を通じて、仲間との結束を強める ことを目的とした遠征。 オンザピッチ ……世界の同年代との真剣勝負の中で技術・戦術・体力の違いを感 じること。 オフザピッチ ……日本と同様だが挨拶などのコミュニケーションの重要性を学ぶ。 異文化にふれることで国際的な視野や感覚を身につける。 出発 成田空港→ローマ→バーリ 成田空港で出発直前にコーディ ネーターの大森さんから日本を 代表して大会に参加することや、 現地での服装や振る舞いに注意 をすることなどの話をいただき、 改めて決意・覚悟を固め多くの 保護者に見送られながら日本を 出発しました。 現地時間17時にローマに到着し、 21時のバーリ空港行きの時間ま で空港内で自由行動。バーリ行 きの飛行機が遅れたこから、予 定より3時間オーバーでバーリ 空港に到着。こういったアクシ デントも含めて、大切な経験だ と感じた。バーリ空港からはバ スでマテーラの宿泊先に到着。 生活 ホテルは市街から離れた田舎町にあり、静かで落ち着いた環境で過ごす ことができました。 生徒は3人部屋で協力しながら生活。洗濯や部屋の掃除などは業者が 行ってくださり恵まれた環境の中でサッカーに集中することができまし た。 1日、1時間30分は学習の時間を設け、学業にも力を抜くことなく過ご すことができました。 ホテルには複数の大会参加チームが宿泊しており、私たちのホテルは 「ASローマ」(イタリア)、「パルチザン・ベオグラード」(セルビア)が 同宿でした。 海外の選手たちとコミュニケーションが取れる環境であったことから、 海外の選手の自立している姿を目の当たりし、自チームの幼さを認識す る良いきっかけになりました。 一般の利用者がいる中での振る舞いを学び、挨拶の重要性も感じること ができました。 食事は朝食は基本的にパンでしたが、イタリアでは朝食をあまり摂らな い習慣があるため、生徒の食べる量が多くホテルの方が驚いていた。 ACミランとの対戦後は気分転換もかねて、街に出て本場のピザを堪能す ることができました。 試合前には軽食が用意されるなど、食事はとても充実していました。 トレーニング時に岡部和希が左手を骨折。現地病院を受診し、整復し応 急処置を施しました。 グループリーグ第1戦 VSトレステ(イタリア)1対3 得点者:シャバニアン鼓太郎 初戦であったことや、外国のチームと初めて試合をする選手が多く、ウォーミングアップ 時から何人かの選手はとても緊張していました。 試合前から相手選手のモチベーションが高いことに驚かされました。これはすべての試合 で共通していました。これは「シレアカップ」がイタリアでも指折りのトップチームが集 う大会であり、ヨーロッパでも非常に権威のある大会であることから、プロクラブのスカ ウトが大勢訪れることでも知られているからでした。 試合は、序盤は相手のペースで試合が進みました。相手ペースの流れの中から先制を許し ました。浦和学院も時間の経過と共に、落ち着いてプレーができるようになり、ボールを 支配しシュートチャンスを作るなど、主導権を持って試合を支配しました。もっとも、相 手も試合巧者でセットプレーから追加点を奪われ、0対2で前半を折り返しました。 後半は浦和学院のペースで試合が進み、MF鎌田のクロスボールをFWシャバニアン鼓太郎が ゴール前で合せて同点としました。その後も追加点を目指しボールを支配しましたが、決 定的なチャンスも、相手の厚い守備に阻まれ時間が過ぎて行きました。そして試合終了直 前に相手チームは粘り強い守備からのカウンターに転じ、浦和学院は失点。3点目を奪わ れ試合終了となりました。身体の大きさや力強さには差がありましたが、技術やスピード では、相手を上回る部分も多くありました。特にMF高橋、鎌田のプレーにスタンド観客が から歓声が沸きあがる場面もありました。試合を振り返れば、相手チームの勝利への貪欲 な姿勢、チャンスをものにする勝負強さなど、我々とは圧倒的な差を感じさせられました。 トレーニング風景 風間トレーナーの下、体幹トレーニング 揃えて並べるという日本では当たり前のことが、イタリ アでは「素晴らしい」と評価された。 それがどこであっても、全力プレーをするのが浦和学院 サッカー部のしきたり。 町中のいたるところで子供たちがボールを蹴っていた。 グループリーグ第2戦 VS ACミラン(イタリア)1対7 得点者:鎌田武蔵 試合会場のスタジアムに到着すると、これまでに経験したこと のない異様な雰囲気を感じました。これが俗に言う「アウェ イ」という状況でした。 会場に入っても、関係者の対応やファンの視線が冷たく感じら れ、歓迎ムードなど微塵も感じることができませんでした。対 戦相手のACミランはプロのビッグクラブの下部組織の中でも、 「近年で最強チーム」という、前評判の非常に高いチームでし た。おのずと試合の注目度も高く、スタンドもユース年代であ りながら満員となりました。試合前にも盛大なセレモニーがあ り、両国の国歌が流れ、我々も日本を代表して戦うことを改め て実感することが出来ました。 試合開始前から会場の雰囲気、相手の選手との圧倒的な体格差、 同い年とは思えない彼らの醸し出す空気を浦和学院の選手たち も感じ取っているようでした。 キックオフから相手の早いポゼッション(ボール保持率)、ラン ニングスピードに圧倒され、開始1分で1度もボールに触れる こともできないうちに失点を喫しました。ペースは完全に相手 にあり、身体的にも精神的にも疲労していき、立て続けに4失 点してしまいました。初戦では通用したことが、全く通用しな い相手を前に、我々はそのサッカーにショックを受け、声を出 すことも出来ず完全に自信を失ってしまいました。全てに圧倒 され、世界のトップレベルとの差を痛感させられる内容(0対 5)で前半が終了しました。 グループリーグ第2戦 VS ACミラン(イタリア)1対7 得点者:鎌田武蔵 ハーフタイムになると、ここまで川上コーチに指揮を任せてい た森山監督が選手たちに言いました。それは戦術面の話ではな く選手それぞれのメンタルに問いかける話でした。 スター予備軍のACミラン。トップスターの登竜 門「シレアカップ」への意気込みは相当だった。 この遠征では袖に日の丸を縫いつけ、日本代表 としての誇りを持って戦い続けた。 「逃げずに相手に立ち向かうこと」 「戦う姿勢を前面に出し、声を出してチームで戦うこと」 相手に臆していることを指摘され、選手たちはチーム全員で戦 うということを再確認することができました。後半は前半とは 見違える、全く違った積極的なプレーが増え、相手選手が前半 のリズムでプレーをすることができなくなっているように感じ ました。相手の猛攻も身体を張ってピンチを凌ぐと、MF鎌田が ドリブルで相手を抜き去り、放ったシュートが渾身の一撃とな りゴール奪取に成功しました。つまり、後半最初の得点は浦和 学院が奪ったのです。その後も積極的なプレーは後半終了直前 まで続き、我々は失点を許さず試合を進めました。しかし、疲 労から動きが鈍くなったタイムアップ直前に、2点を奪われし まい1対7で試合は終了となりました。 前半とは全く違うプレーを見せた浦和学院に、後半途中からス タンドの観客からも大きな拍手をいただき、選手の姿勢、プ レーが評価されているように感じました。また試合後、毎試合 行っているスタンドの清掃も見た現地の方から「とても素晴ら しい日本の文化だ」と言葉をいただきました。 ACミラン戦ハイライト 大会の優勝カップと共に試合前の集合写真 世界トップの抜群のスピードとテクニックに翻弄される タイムアップの頃には陽も落ちてライトに灯りが燈る 試合後、街に出て記念撮影をすると若者が集まってきた グループリーグ第3戦 VS モノポリ(イタリア)1対6 得点者:シャバニアン鼓太郎 連敗したことでグループリーグ敗退が決定した中での試合でし た。疲労はありましたが、選手は1勝を目指し、ACミランとの 試合で感じたことを課題に、前向きな姿勢で試合に臨みました。 試合への入り方も良く、ボールを支配し、試合を優位に進めFW シャバニアン鼓太郎が左足で押し込み先制点を奪いました。し かし相手もACミランほどでないものの、個人の能力が高く、 徐々に相手に主導権を奪われると、守備に忙殺される時間が長 くなってしまいました。相手に押し込まれる展開の中で同点に されてしまいました。主導権を取り戻そうと手を尽くしました が、セットプレーやカウンターから追加点を与えてしまい前半 が終了しました。 ハーフタイムは前半の終盤に失点から、戦う姿勢が薄れている ことを指摘し、再確認をさせて後半に臨みました。ですがペー スは変わることなく、技術の高さに対応することができずに失 点を重ねてしまいました。局面局面で相手の上手さや狡猾さ、 ボールの動かし方など、非常に勉強になるプレーを見せつけら れ、結果は1対6での敗戦となりました。 グループリーグ3試合において共通して感じたことは、技術の 高さはもちろんでしたが、どのチームの選手も「プロになれる かなれないか」の瀬戸際で、常にハングリーに勝利に向かって プレーをする姿勢、メンタルの強さでした。真剣勝負する同年 代の世界の同年代の選手と、我々の土俵の違いを感じたグルー プリーグ3試合となりました。 トレーニングマッチ VS ターラント 1対2 得点:三嶋海斗 グループリーグで出場機会の少ない選手を中心にメン バー構成で試合となりました。 グループリーグ同様で、相手に臆することなく試合に臨 むことがテーマでした。コーディネーターの小松崎さん (元日本代表、中田英寿さんが所属したことで知られる プロチーム《パルマ》の戦略コーチ。この大会で浦和学 院を現地でサポートしてくれました)の尽力により、素 晴らしいスタジアム、国歌斉唱など、大会と同じ雰囲気 の中での試合を全選手が経験することができました。 出場機会の少なかった選手達もピッチ外で感じた事を最 大限発揮しようとする姿が観られ、非常に良いゲームが 出来ました。先制点を奪いましたが、追加点を奪う事が できずに、相手に少ないチャンスをものにされ逆転され 敗戦となりました。終始浦和学院ペースで試合をコント ロールしたのですが、勝負強さや、ゴール前での粘り強 さを見せつけられ、イタリアと日本のサッカー文化の違 いを感じる試合でした。 トレーニングマッチ 得点:加藤哲平 金子稜 VS カステラネータ 2対0 得点:シャバニアン2 VS トリット 9対1 豊田悠大2 栗城来夢 中里竜也 2試合とも街クラブとの試合 になりました。両チームとも それほどレベルの高い相手で はありませんでしたが、体 格・スピード・パワーなど浦 和学院を上回る部分も多かっ たです。 これまでの試合で経験した事 をベースに試合を進めること が出来ました。 技術では、我々に分があり、 遠征の締めくくりを勝利、連 勝で終えられた事が収穫でし た。 レセプション/授賞式 決勝戦を前にレセプションが行われました。 日本であれば、全ての日程が終わった後に表 彰式が行われるのが普通ですが、社交界文化 のあるヨーロッパではこうしたパーティは ディナータイムに行われるのが慣例のようで す。日本で言うところの《前夜祭》にあたる ものでした。 立食形式で選手たちは食事を摂り、パーティ を楽しんで、他のチームの選手と写真を撮っ たり、コミュニケーションをとったりして異 文化交流を深めました。 一番驚いたのは、パーティが始まってすぐに、 我々、浦和学院高校が場内にコールされたこ とです。煌びやかなステージの上に森山監督 と内舘キャプテンが呼びだされて、突然表彰 を受け、大きなトロフィーをいただきました。 全てのチームに贈られるものだと思ったので すが、どうやらそうではありませんでした。 「スポーツと文化の表彰」という特別な表彰 を我々は受けたのです。 試合後にスタジアムのベンチや控 え室、シャワールーム、スタンド 等の清掃を行っていたことや、礼 儀正しい紳士的な行動が評価され たものです。選手たち突然の表彰 に驚きを隠すことが出来ませんで した。 今大会の一番の収穫は、試合結果 よりも、こうした日本人としての、 当たり前の振る舞いを異文化の中 で評価していただいたことだと考 えています。 入学して間もない一年生であって も、浦和学院高校の一員として、 また日本の代表して自覚して行動 できたことは、引率者としても誇 らしく思います。同時に、快く日 本を送り出してくれた小沢校長先 生をはじめ、学校関係者、父兄の 皆様にあらためて深謝するしだい ございます。 現地の新聞に優勝したACミランと共に大きく取り上げられた。 観光/文化交流 今回、大会が開催されたマテーラですが、新市街と旧市街から構成されていて、中世から の町並みがとても美しいことで知られています。 世界遺産の「洞窟住居」があり、「サッシ」でも有名です。 町のルーツは古く、人々は旧石器時代からこの地を生活の場所としていたそうです。選手 は新市街から旧市街を見下ろしていました。世界的にも有名なこの地を見ようとたくさん の国から観光に訪れていました。その光景はまさに壮観でした。また南イタリアの玄関口 にあたるバーリにも足を運びました。海が近く、ブランドショップが立ち並ぶ都会的な町 並みでしたが、観光に訪れたこの日は、サッカーのヨーロッパ選手権でイタリア代表の試 合時間に重なってしまったのです。まだ陽も落ちていないのに、どのお店も空いていませ んでした。イタリア代表の試合を見るために、どのお店も一時、お店を閉めてしまうらし いのです。その証拠に試合が終わった途端に一斉にお店が始まったのです。偶然にもこう したサッカー先進国の当たり前の光景を目の当たりに出来たことも、選手たちには衝撃 だったようです。とにもかくにも、言葉も通じない、異文化とのコンタクトは、彼らの感 性をとても刺激したことは間違いありません。 アルベロベッロは「トゥルゥッリ」という特徴的な建物が有名で、まるで絵本の世界に 飛び込んだような気持ちにさせられました。ここも世界遺産であり、こうした世界的にも 知られる特別な場所を訪れ、観ることは、短い時間ではありましたが、多感な彼らの情緒 を向上させたと思います。 イタリア遠征写真集 イタリア遠征写真集 帰国 バーリ→ローマ→成田空港 現地で大変お世話になったコーディネーターの小松崎さんとは バーリ空港で別れることになりました。別れ際に小松崎さんから 選手たちに温かいメッセージをいただき再会を誓ってのお別れと なりました。 行きと同様にローマでのトランジットがありました。 生徒たちは疲れた様子でありましたが、日本に到着すると多くの 保護者の方が迎えに来てくださり生徒もホッとした様子でした。 成田空港では、現地で左手を骨折した岡部和希のご両親がいらっ しゃってくれました。チームに滞同し、現地で対応にあたった風 間トレーナー(スポーツ・マッサージナズー)が、怪我の説明、現 地での対応、帰国後の対応を、ご両親に事細かに説明。岡部は帰 国後、風間トレーナーがイタリアから連絡してくれていた同愛病 院(東京・両国)を受診。イタリアでの整復が良好だったため、手 術はせず、保存療法で経過観察することとなりました。また、こ の怪我は海外旅行傷害保険に加入しているので、その保険が適応 されます。
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