DIG ラベリング PCRラベリング法, ランダムプライムドラベリング法, RNAラベリング法の比較 2. 2 PCRラベリング法,ランダムプライムドラベリング法, RNAラベリング法の比較 このセクションでは, PCRラベリング,ラ ンダムプライムドラベリング, RNAラベリン グの類似点と相違点とを概説します. このセクションの情報は, ハイブリダイ ゼーションに使用するプローブにDIGを付 加させる 3 通りの一般的な方法から, それ ぞれの目的にあったものを選ぶのに役立つ でしょう. 11 3 通りのラベリング方法の原理 PCR による DIG の取り込み DIGランダムプライムド DNA ラベリング DIG RNA ラベリング DIG dUTP +Taq DNA ポリメラーゼ DIG 直鎖化 dUTP + クレノー酵素 DIG UTP +T7/SP6 RNA ポリメラーゼ + プライマー DIG DIG DIG DIG DIG 図 4. PCRラベリング, ランダムプライムドラベリング, RNAラベリング 2. 2. 1 PCRラベリング法について PCRにおいて,耐熱性ポリメラーゼ(Taq ポリメラーゼなど)は特異的なDNAター ゲットを短時間に100万倍に増幅させるこ とが可能です. 反応混合液にDIG-dUTPが 含まれれば, 増幅されるDNAはラベル効率, 特異性および感度の非常に高いハイブリダ イゼーション用プローブになります. この PCRラベリング反応の特異性は, 特にシー クェンスの短いターゲットに適したラベリ ングのテクニックをもたらします. PCRラベルされたプローブは, シングルコ ピー遺伝子のジェノミックサザンブロット での検出や希少なmRNAのノーザンブロッ トでの検出に特に適しています. また, こ れらのプローブはライブラリーのスクリー ニング, ドット/ スロットブロット, in situ ハイブリダイゼーションにも使用すること ができます. PCRラベリングは, 非常に少量のテンプ レートからラベルされたプローブを高収量 は じ め に DD II GG の の 基 基 礎 礎 に生成します. PCRラベリングにおけるテ ンプレートの最少量と最大量の範囲は, プ ラスミドで10∼100 pg, ジェノミックDNA で1∼50 ngです. しかし, 当社の実験から プラスミドでわずか10 pg, ジェノミック DNAで10 ngから, 最適な結果が得られる ことが示されています. 一般的に, プラス ミドに挿入したクローンDNAの方が, ジェ ノミックDNAよりも良好な結果をもたら します. PCRプライマーのシークェンスが, 増幅されラベルされる領域を決定します. つまり, テンプレートの調製のクオリ ティーは, 通常PCRラベリング反応に影響 しません. クルードな精製状態のプラスミ ド試料(ボイリングによる精製など)でも, 使用することができる場合があります. こ れはまた, PCRラベリングでは他のラベリ ング方法に比べて諸条件を最適化させる必 要が少ないことを意味します. 13 DIG ラベリング は じ め に PCRラベリング法, ランダムプライムドラベリング法, RNAラベリング法の比較 2. 2. 2 ランダムプライムドラベリング法について D I G の 基 礎 ランダムプライムドラベリングは, ほとん どあらゆる長さのテンプレートをラベルす ることが可能です. ノート: 非常に短いシークェンスには, PCRラベリング法 (前述のセクション2. 2. 1) を使用してください. 1 ランダムプライムドラベリングでは, ヘキ サマー ( 6 量体) のプライマーとアルカリに 不安定なDIG-dUTP存在下でクレノー酵素 がDNAテンプレートを複製します. この酵 素は平均20∼25ヌクレオチドの伸長ごと に 1 分子のDIGを挿入していきます. 結果として得られるラベル産物は, 均等 にラベルされた高感度のハイブリダイゼー ション用プローブ(最少0.10∼0.03 pgの ターゲットDNAを検出することが可能) です. ノート:DIG分子が間隔を開けて取り込ま れることはとても重要です. DIG分子どう しが接近していると, 立体障害により高分 子の抗DIG抗体によるラベルされたプロー ブの認識と結合を妨げることになります. ランダムプライムド法でラベルされたプ ローブは, ジェノミックサザンブロットに おけるシングルコピー遺伝子の検出や, リ コンビナントのライブラリーのスクリーニ ングに特に適しています. また, ドット/ スロットブロットやノーザンブロットにも 使用することができます. それぞれのプライマーは異なる 6 塩基の シークェンスをもつため,ラベルされたプ ローブ産物は, 実際は多様な長さをもつフ ラグメントの集まりということになります. したがって, ラベルされたプローブはゲル 上では特定のバンドというよりもスメアに 現れます. ラベルされたプローブの長さの 分布は, もとになったテンプレートの長さ に依存します. 例:2 kbのテンプレートから生成されるラ ベルされたフラグメントは, およそ300∼ 1500 bpの範囲にあり, その大部分はおよ そ800 bpの長さになります. PCRラベリン グと異なり, ランダムプライムドラベリン グでは高度に[High Pure Plasmid Isolation Kit(Cat. No. 1 754 777または1 754 785)や 密度勾配 (CsCl)遠心分離法により] 精製さ れたテンプレートが必要とされます. 2.2.3 RNAラベリング法について ラベルされたRNAプローブは, 直鎖状にし たDNAテンプレートからin vitroトランス クリプションにより生成されます. トラン スクリプションの間に, DNAテンプレート のコピーであるRNAが多く合成され, それ ぞれがDIG-UTPによりラベルされます. RNAラベリング反応によるプローブの収量 は大変高く, ラベルされたシークェンスは特 異的でラベル効率も高いです. この特異的なテンプレートのシークェンス は, ウィルスのプロモーター(T7, SP6, T3 RNAポリメラーゼなど)の下流に存在する 必要があります. テンプレートは高度に精 製された直鎖状のDNAあるいは増幅中に 14 適切なプロモーターを付加させたPCR産物 のどちらも使用できます. ラベルされた RNAプローブの感度はとても高いです. 事実, RNAターゲットの検出においてDIG ラベルされたRNAプローブは, DIGラベル されたDNAプローブに比べて高い感度を 示します. したがって, RNAプローブは ノーザンブロット上での希少なmRNAの検 出に特に適しています. また, サザンブ ロットやライブラリーのスクリーニング, ドット/ スロットブロットやin situ ハイブ リダイゼーションにも使用することができ ます. DIG ラベリング PCRラベリング法, ランダムプライムドラベリング法, RNAラベリング法の比較 2. 2. 4 3 通りのラベリング法における重要なパラメーターの比較 パラメーター PCRラベリング シングルコピー遺伝子を検 出するプローブを合成する ために必要なテンプレート 量 ● 最良の結果を得るために推 奨されるテンプレート ● ● 10 pg プラスミドDNA ランダムプライムド ラベリング ● 10 ngジェノミックDNA 未精製のクローンされ たプラスミドのインサー ト["クイック調製"法 (mini-prepsやmaxipreps)や,単に細胞をボ ● イリングして調製された プラスミドでも使用する ことができる. ] RNAラベリング 300 ng∼1μg ジェノミ ックDNAまたは プラスミド ● 高度に精製されクロー ンされたプラスミドのイ ンサート (High Pure Plasmid Isolation Kit, Cat. No. 1 754 777を用 ● いるか, 塩化セシウム存 在下で密度勾配遠心分 離によりプラスミドを 調製することが望まし い. ) ● ● ● ● ● 必要とされるテンプレート の精製度 ● 低い DIG-dUTP : dTTPの最適な 比率 ● ラベルされた産物の長さ ●(プライマーに依存し) ●(もとのテンプレートの 1:3(< 1 kbの長さの プローブ用) ● 1:6(1 ∼ 3 kbの長さの プローブ用) ● 1:6 ∼ 1:10(> 3 kbの 長さのプローブ用) 1μgの直鎖状DNA 100∼200 ngのプロモー ターを付加したPCR産物 特別に調製され精製さ れたPCR産物(SP6, T3またはT7 RNAプロ モーターを必ず含む). 調製試料には, EDTA やRNaseが含まれな いこと. 最適なテンプレートの 長さは0.3∼1.0 kbであ る. テンプレートは必ず制 限酵素を用いて直鎖状 にし, 5'突出末端を有す ること. テンプレートは, 制限 酵素処理の後,必ずフェ ノール / クロロフォルム 抽出し,RNaseを除去す ること. ● 高い ● 高い ● 1:3 ● 1:3 特異的 ●(プロモーターおよび末 長さに依存し)多様 端サイトに依存し) 特異 的 ラベルされた産物の性質 ● ラベルされた特異的な DNA. 多量のコピー数. ● 多様にラベルされたDNA. もとのテンプレートの フラグメントから転写 されたもの. ● ラベルされた特異的な RNA. 多量のコピー数. ラベルされたプローブの 感度 ● 0.10∼0.03 pg DNA ● 0.10∼0.03 pg DNA ● 0.10∼0.03 pg RNA またはDNA 結論 : DNAにDIGをラベルする最も融通が効いてパワ フルな方法は, PCRラベリングです. 特に高度に精製さ れたテンプレートがない場合に有用です. ランダムプライムドラベリングは, 高度に精製された テンプレートが充分にある場合に同様の感度を有する プローブを合成します. DIGラベルされたRNAは, ター ゲットのRNAを検出する上で最も高い感度を示します. 15 は じ め に D I G の 基 礎 1
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