財団法人 大阪国際経済振興センター インドの物流に関する報告 STRATEGIC MANAGEMENT GROUP (タタ・インダストリー社の部門) 2010 年3月 Nirmal 18th Floor, Nariman Point, Mumbai 400021, India Tel 91-22-6637 6789 / 42 Fax 91-22-6637 6600 URL: www.tsmg.com Email: [email protected] インドのマクロ経済状況 ............................................... 1 インドの物流概要 ..................................................... 2 輸入のバリューチェーン ............................................... 4 港湾 ........................................................................... 4 CFS/ICD ........................................................................ 5 倉庫業 ......................................................................... 5 輸送 ........................................................................... 6 第三者物流 ..................................................................... 7 主要ルートにおける標準的輸送時間 ............................................... 7 諸段階における規制要求事項 ........................................... 8 インドの諸産業部門における外向き流通の平均コスト ...................... 9 サプライチェーンの諸段階における主要課題 ............................. 9 インドにおいて効率的なサプライチェーンを確保するための提案 ........... 11 将来の展望 .......................................................... 11 付録 ................................................................ 13 インドのマクロ経済状況 国内総生産(GDP)成長率 不変価格表示(2000 年度基準)による 2009 年度インド国内総生産(GDP)は、7,900 億米ドル1 と推定される。2003~08 年までの5年間で、不変価格表示の GDP は 8.9%成長しており、今後5 年間の年平均成長率(CAGR)は 7.3%になると見込まれる。 詳細 03 年度 08 年度 09 年度 (推定) 10 年度 (予測) 11 年度 (予測) 12 年度 (予測) 13 年度 (予測) 487.8 746.9 792.2 845.9 911.1 983.6 1,064.1 3.6 9.1 6.1 6.8 7.7 8.0 8.2 不変価格表示の GDP (単位:10 億米ドル*) GDP 成長率(%) 出典:EIU、*1米ドル=45.56 インドルピー 貿易 インドの貿易は、過去5年間で大きく成長している。過去5年間において、非石油商品輸入の年 平均成長率(CAGR)は 27.6%となっている。産業用輸入の成長率は、全体的な輸入成長率を上 回っている。 (単位:10 億米ドル) 05 年度 06 年度 07 年度 08 年度 09 年度 輸出 84 103 126 163 185 輸入 112 149 186 252 304 非石油輸出 77 91 108 135 158 非石油輸入 82 105 129 172 210 出典: DGFT 09 年度 (単位:10 億米ドル) 輸入全体での シェア(%) (04-09 年度) 石油・原油・石油製品 93.67 30.8% 35.4% 電子製品 23.47 7.7% 25.6% 機械(電気・電子を除く) 21.75 7.2% 35.6% 金・真珠・貴石・半貴石 37.24 12.3% 22.2% 輸送機器 13.24 4.4% 32.6% その他 114.34 37.6% 32.1% 総計 303.70 100% 31.2% 商品輸入 出典: DGFT 出典:EIU 1 今後の成長 インドは 2009 年に、A.T.カーニー社の「グローバル・リテール・デベロップメント指標」にお いて、途上国 30 カ国中1位となっており、巨大な利益をもたらす国になる可能性があると目さ れている。可処分所得の急速な増加、ならびに、消費者金融やクレジットカードの普及および利 用増加が補完的要因となり、一般国民も積極的に世界的トレンドに順応・吸収しつつある。これ らの要因によって、インドの消費者基盤は急速に拡大し、製品・サービスの世界最大市場の一つ に成長している。マッキンゼーの調査によると、インド人の所得は今後 20 年間で3倍になると 見込まれる。また、2007 年に世界 12 位の規模であったインドの消費者市場は、2025 年までに世 界第5位の規模になる可能性が高い。 世界で7番目に広い国であるインドへの輸出を望む企業が直面する課題の一つは、インドの物流 分野にある。物流費用を管理しながら、輸出製品が確実に期限通り顧客に届くようにするために は、物流分野を正確に深く理解しておく必要がある。 インドの物流概要 市場規模 物流はインド経済の持続的成長の土台の一つであるが、これまでは二次的な活動とみなされ てきた。インド物流産業は、付加価値の低いものから順に大別して、貨物混載業者、輸送業者、 倉庫専門業者、ならびに、組織的な第三者物流(3PL)サービス業者で構成される。物流コスト の GDP に占める割合は、世界平均が 10~11%であるのに対し、インドでは 13%となっている。 この数字には、インド物流部門の非効率性が表れているが、インドの物流部門に対して1兆米ド ルという多額の投資が計画されている。 輸送は単独最大の物流機能であり、物品の物理的移動を伴う産業(主として製造業)のほとん どにおいて、物流コスト全体の~35%を占めている。 物流活動 支出(%) 輸送 35% 在庫 25% 包装 11% 荷役および倉庫作業 9% その他 20% 合計 100% 2 インドの物流市場は断片化されているが、その主な原因は、非組織的なサービス業者が多く存 在する事である。アウトソース物流は物流支出全体の 54%を占め、企業による自社物流活動が 残りの 46%を占めると推定される。54%のアウトソース物流の内、組織的な業者のシェアは僅 か 10%である。インドの物流産業は多くの課題に直面している。それらの課題とは、バリュー チェーンの複雑さ、情報の可視性の不足、自動化の水準の低さ、複雑な規制問題、インフラ施設 の不足などである。 インドの物流事情は変容を遂げつつある。企業は提供可能なサービス領域を拡大している。例え ば、小規模の通関業者(Customs House Agents[CHA])が貨物輸送業を始めたり、貨物輸送業者 が倉庫業を始めたりしている。第三者物流(3PL)業者のシェア拡大、より優れたインフラ施設 の建設、また、規制から生じるボトルネックを緩和するための提言によって、物流部門は今後効 率化されると予想される。 主要工業地帯 デリー コルカタ ムンバイ 主要工業地帯 チェンナイ インドには東西南北にそれぞれ1箇所、合計4箇所の主要工業地帯がある。これらの拠点は、イ ンドの GDP の 40%以上、また、製造場所が特定可能な工業製品の 70%以上に貢献している。ま た、道路および鉄道網との接続も良く、国内他地域への玄関口および中継地点としての機能を果 たしている。西部(ムンバイ拠点)と北部(NCR 拠点[デリー首都圏地域] )は、インド国内最 大の消費者市場でもある。 3 輸入のバリューチェーン 港湾 国内輸送第一 段階 CFS 流通センター/ 工場 国内輸送第二 段階 地域倉庫 国内輸送第三 段階 小売店 ICD 所要日数 (目安) 1-3日 2-4日 4-10日 5-7日 1-3日 5-10日 1日 ほとんどの貨物における典型的輸入バリューチェーンでは、貨物が港湾からエンドユーザーに届 くまでに6つの段階が存在する。貨物は港湾から「コンテナ貨物駅(CFS)」あるいは「内陸コ ンテナ基地(ICD)」へと移され、そこから流通センターに運ばれるか、あるいは、工場に運ば れて工業用に消費される。通常、インド企業のサプライチェーンにおいては、当該企業のインド 全国での業務展開規模にもよるが、1つ以上の親倉庫が存在している。これら親倉庫が、地域倉 庫のサポート的役割を果たす場合もある。最後に、物品は地域倉庫から小売店へと運ばれる。以 下の項では、このバリューチェーンの各段階(港湾、CFS/ICD、倉庫業、および輸送)の概要を 説明する。 港湾 インドには 12 の主要港と 187 の小規模港がある。西海岸の主要港は、カンドラ、ムンバイ、 JNPT、モルムガオ、ニューマンガロール、およびコーチンである。東海岸の主要港は、コルカタ /ハルディア、パラディープ、ヴィシャーカパトナム、エノール、チェンナイ、およびツチコリ ンである。コンテナ輸送の総取扱能力 836 万7千 TEU(2009 年3月 31 日現在)の内 70%近くを、 JNPT 港とチェンナイ港で取扱う事が可能である。 港 コンテナ取扱能力(単位:100 万 TEU) JNPT 4.31 チェンナイ 1.56 その他 2.47 合計 8.37 出典: インド運輸省 コンテナ貨物の輸入と輸出の比率は、おおよそ 50 対 50 である。取扱能力に限界があり、輸送量 も増えている事から、ほとんどの主要港湾は 100%近い稼働率で運営されている。インドの港湾 における船の平均ターンアラウンドタイム(TAT)は4日であるが、JNPT 港、エノール港および 4 コーチン港では2日前後である。現在、民間業者が海岸線沿いの戦略的地点に港湾を新設する計 画をしている。これらの港湾により、処理能力に関する障壁が緩和され、全体的な能率水準が向 上すると予想される。 CFS/ICD 貨物が港湾の税関で検査を受けない場合、荷主の要件に応じて「コンテナ貨物駅(CFS)」また は「内陸コンテナ基地(ICD)」へと運ばれる。そこで、輸入業者または輸入業者代理の通関業 者が通関手続きを行わなければならない。 CFS と ICD は機能面で同じであるが、CFS が玄関港の近くに位置する一方で、ICD は内陸地域に 位置する。CFS と ICD の主な機能は、コンテナ貨物の受取、発送および通関処理である。CFS と ICD のサービス業者は、コンテナの積み下ろし、荷詰め、および荷出しの設備以外にも、通関手 続き、LCL 混載、冷蔵倉庫、ハブ・アンド・スポークなどの付加価値サービスも提供している。 現在、インドには 190 以上の CFS/ICD が、南部と西部を中心に、国中の様々な地域に存在してい る。しかし、処理能力の点で言うと、主に西海岸に集中していると言える。CFS ビジネスにおけ る競争は激しく、主要業者の内 15 業者が JNPT を対象に、また、8業者がチェンナイ港を対象に サービスを提供している。ICD ビジネスの場合、いくつかの小規模業者が存在するが、全インド に 59 箇所ある ICD のネットワークを有する Container Corporation of India (Concor)が業界シェ アの大部分を占めている。インドの CFS/ICD ビジネスに携わる主要な事業体は、「Concor」、 「Gateway Distriparks Ltd. (GDL)」、「Allcargo Global Logistics (AGL)」、「Balmer Lawrie」、 「Hind Terminals Pvt. Ltd (HTPL)」,「Central Warehousing Corporation (CWC)」、および 「Sanco Trans Limited (STL)」である。 倉庫業 倉庫業は、公営部門と民間部門に分けられる。公営倉庫は主に、穀類、綿、肥料などのばら荷の 保 管 に 利 用 さ れ て お り 、 「 Central Warehousing Corporation (CWC) 」 と 17 の 「 State Warehousing Corporations (SWCs)」がシェアの大半を占めている。倉庫の貨物取扱能力は、CWC が約 1,000 万トン、SWC が約 1,900 万トンである。その内、穀物以外の商品の取扱能力は、CWC が約 650 万トン、SWC が約 1,100 万トンである。 インドにおいて、民間の倉庫業界は非常に分断化しており、明確な枠組みが欠如している。過去 3年間で、組織的な産業用倉庫業界は CAGR20%で成長している。ビジネス界の動態や租税構造 5 の変化、さらに、グローバルな第三者物流(3PL)業者の参入により、インドの組織的倉庫サー ビスの成長率が増加している。2008~09 年の期間に、組織的事業者が産業用倉庫業界に占める 割合は約7%と推定される。コストの点から見ると、非組織的事業者は組織的事業者にとって厳 しい競争相手となる。非組織的事業者は、オーバーヘッドコストが比較的低いので(人件費も安 く、自動化の程度も低い)、より競争力のある価格を提示する事が出来る場合が多い。過去数年 の間に、多くの企業が自社に物流部門を設立している。それらの物流部門は、自社のみならず、 他社も利用できるように作られている。この動きは、業界競争の激化および業界発展に繋がって いる。インドでは多層式倉庫は尐なく、ほぼ全ての施設は1階建てであり、都市郊外に位置する。 輸送 2009 年現在、インドの貨物輸送市場全体の 59%近くを道路部門が占め、次に鉄道部門(30%) が続く。 貨物輸送市場に 輸送形態 おけるシェア2 既存のインフラ (%) 道路 58.7% 全長 330 万 km 以上 71,000km の国道、132,000 km の州道、200km の高速道 路、470,000km の地方道 鉄道 30.4% インドの鉄道網は、ほぼ全国を網羅しており、路線全長 は 64,000km で、線路全長は 110,000 km を超える。 航空 5% インド空港局(AAI)は、124 の空港を管理している (12 の国際空港、8つの税関空港、23 の civil enclave{訳者注:軍の空港内で、民間航空サービスの ために割り当てられた場所}、81 の国内空港) インドの空港で取り扱われる国際輸送総量 115 万トンの 内、60%前後がムンバイ空港とチェンナイ空港で取り扱 われている 沿岸&内陸水路 3.8% 12 の主要港と 187 の小規模港 5つの内陸水路:5,200km の河川と 485km の運河が機械 船で利用可能 パイプライン 2.2% ~23,000km のパイプライン。主に、原油、石油製品、 天然ガスに利用される。 2 フロスト&サリバン 6 道路貨物輸送業界は、輸送サービス業者、運搬サービスを提供する中間業者(輸送請負業者/予 約代行業者)、および、機器や運転手を供給して手数料を受け取る仲介業者で構成される。実際 に二地点間の輸送サービスを提供するのは、道路輸送業者である。「Large fleet operator(大 規模道路運送業者)」(保有車両>20)が貨物自動車の 83%を管理しており、総輸送能力の 94%を占めている3。 インド鉄道はインドのインフラにおける重要な要素である。過去5年間で、インド鉄道の貨物輸 送は、2003-04 年の5億 5,700 万メートルトンから、2008-09 年には8億 3,300 万メートルトン に増加しており、CAGR8.3%で成長している。インドの貨物輸送全体において、道路輸送がシェ アの大半を占め続けているが、数種のばら荷の輸送については、鉄道輸送が大半のシェアを占め ている。需要に対してキャパシティーが不足しているため、鉄道は定格荷重 100%を超えて稼動 しており、鉄道インフラに負担がかかっている。 第三者物流 インドにおいて、第三者物流(3PL)形態による物流の専門的マネージメントは 10 年前から始 まっている。3PL サービス業者の成長により、ユーザー産業向けの物流機能に対するグローバル なプロセスの導入が促進されてきた。3PL サービス業者は、バリューチェーンに含まれる全ての 活動を管理するワンストップサービスを提供する事もできる。断片化した物流諸要件やスケール メリットを統合する事により、3PL 業者は競争力のある物流サービスを提供する事ができる。主 要な 3PL 業者のリストを「付録」に記載する。 主要ルートにおける標準的輸送時間 ムンバイ発のインド国内輸送での標準的ドアツードア輸送時間(単位:日) 3 輸送先 FTL 鉄道 LTL 陸上エクスプレス 航空 デリー 3.5 2 4.5 2 1 チェンナイ 3.5 4 4.5 2 1 コルカタ 5.5 4 7 3.5 1 バンガロール 2.5 - 3 1.5 1 CRISINFAC 7 諸段階における規制要求事項 税関 出荷品には、「品物の実際の市場価値」を申告する、印刷された「商業送り状」を添えなければ ならない。税関は、正確な市場価値を判定する権利を留保しており、そのように再評価された公 正価値に対して課税が行われる。 輸送 輸送者は、税法(直接税・間接税)、労働法、自治体法、および環境法など複数の規制に対応し なければならない。 また、複雑な諸手続きを行なったり、様々な検問所で頻繁に通行を中断し なければならない。このような状況の結果として、輸送業者は(できるだけ早く処理したいし) トラック運転手への嫌がらせを避けるために、いわゆる Facilitation fee(訳者注:物事が簡 便、穏便に処理されるために要求されるお金で、領収書は付かない)を支払わないといけないと いった経済的ロスを被ると同時に、輸送システムの効率性にも悪影響が及ぼされる。 倉庫業 「2007 年倉庫業法(開発および規制)」によって、倉庫の開発および規制、倉庫証券の譲渡性、 倉庫業開発規制当局の設立に関する事項が規定されている。 各段階において、中央政府および州政府に対する特定の書類の提出が要求される 8 インドの諸産業部門における外向き流通の平均コスト 諸産業部門における内陸流通(工場渡しから販売第一地点まで)の平均コストは、売上高の1~ 5%であるが、セメント部門は輸送費が極めて高いという性格上、14.8%と著しく高数値となっ ている。 部門 部門 流通コスト* (%) 流通コスト* (%) セメント 14.8% 電気 1.8% 日用消費財 4.1% 繊維・アパレル 1.8% 紙・文房具 3.4% 自動車 1.7% ゴム・プラスチック 3.2% 耐久消費財 1.4% 化学薬品・肥料 2.8% エンジニアリング 1.0% 鉱業・鉱物 2.6% 石油・ガス 1.0% 食品加工 2.6% 電気通信機器 0.7% 医薬品 2.6% IT ハードウェア 0.7% 金属・合金 2.4% 宝石 0.1% 自動車付属品 2.3% その他 2.1% 平均 2% 出典: キャピタルライン、 TSMG Analysis * 総売上高に占める内陸流通コストの割合 . サプライチェーンの諸段階における主要課題 港湾 船の平均ターンアラウンドタイムは4日で、他の国際港より大きく立ち遅れている。 コンテナ詰めされた貨物の滞留時間(貨物が港に留まる期間)は2~4日もあり、ほとんど の国際港では1日以内であるのに比べて遅い。 特に国有港において、事務処理や諸手続きにおけるボトルネックが生じている。 インド最大の港でさえも、世界のコンテナ船で現在大きな割合を占めている 6,000TEU のコ ンテナ船に対応できない。 CFS/ICD 9 IT 技術の浸透率が比較的低いため、ほとんどの CFS/ICD において、コンテナの追跡が課題と なっている。 貨物やコンテナを取り扱うための高性能な機械装置が不足している。 CFS/ICD の多くは冷蔵場所を持たないので、冷蔵が必要な腐敗性貨物の場合、目的地の CFS/ICD に適切な冷蔵場所があるかどうか事前に確認しなければならない。 CFS/ICD の多くでは鉄道への接続が無く、道路への満足な接続が無い場合もある。 道路輸送 インドの道路網は世界最大級であるが、舗装道路はその内半分に満たない。国道は全道路網 の2%に満たないが、交通量の 40%を運んでいる。この事実は、欧米における平均走行速度 が時速 60 マイル(約 97 キロ)であるのに対し、インドにおける平均走行速度が時速 20 マ イル(約 32 キロ)である事の理由の一つである。劣悪な道路状況は車両寿命の短さの直接 的原因となり、運営費の増加や効率の低下につながる。 業者の3分の2は保有車両が5台未満の業者であり、発送品を扱うのに必要な多数の輸送業 者を手配する事が荷主にとって困難になっている。 外国の車両オーナーは、自動車総重量(GWT)40~50 トンの車両を多く保有しているが、イ ンドの車両オーナーはそのような大容量車両をほとんど持たず、GWT25 トン以下のトラック を好んで保有している。 物品を他の州に運ぶ際には、州政府の許可(許可証)が必要であり、様々な州境で書類の検 査が行われる。これらの州境で、輸送車は通行を長時間中断して、手続きを行ったり、越境 料金を支払ったりしなければならない。このような規制構造によって、大きなボトルネック が生み出され、車両の実際走行時間の割合が大幅に減尐する。 公道に存在する複数の料金所により、効率が低下し、配送のリードタイムが増加する。また、 通行料金が不均一なため、コスト構造に規則性がない。 読み書きの出来ない運転手がいるなど、技能格差が存在しており、大きな問題となっている。 鉄道輸送 2006 年にコンテナ鉄道輸送サービスが民営化されたものの、「Adani Group」、「Dubai Ports World」、「Reliance」、および「Arshiya International」は、政府事業の「Concor」 になかなか追いつかず、鉄道輸送サービスにおける競争は限られたものになっている。 鉄道は政府事業の「Indian Railways」が運営している。コンテナ鉄道輸送サービスは 2006 年に民営化されており、15 社余りの民間コンテナサービス業者が業務を拡大すると予想され る。 10 NCR/JNPT の路線を除いて、国内全ての路線において往復所要時間が長く、それらの路線は経 済的観点から非実用的となっている。貨物輸送専用の路線が存在しないため、貨物輸送は旅 客輸送のコストの補完もさせられている上に、優先度も低く見られている。 倉庫業 最新技術を導入した物流パークが不足している。 インドの倉庫施設において貨物の盗難が大きな懸念となっている。 ほとんどの倉庫において、倉庫管理システムが整備されていない。 自動化があまり進んでいない上に、低賃金労働力が確保できるため、貨物取り扱いは手作業 が基本である。 ほとんどの倉庫では縦積みを行っていないため、スペースの利用が非効率的である。 3PL 分野 インドの第三者物流市場は未だ初期段階にあり、インフラの不足(倉庫やコールドチェーン 等)、スケールメリットの不足、規制による障害、また追跡システムの欠如などの問題に直 面している。 インドにおいて効率的なサプライチェーンを確保するための提案 インドでの事業設立を計画している場合、評価の高い 3PL サービス業者とパートナー関係を 築いておく事が有益である。 インフラが不足しており、IT 技術の浸透率も低いので、貨物の正確な位置を常に把握してお く事は出来ない可能性がある。このような場合、追跡機能を有する 3PL 業者が役立つだろう。 インドでの官僚主義によりバリューチェーンの様々な段階で時間的遅れが発生する場合があ る。従って、貨物を期限通りに届けるためには、当局と良い仕事関係を築いておく事が役立 つ。 諸事を迅速に処理し、明瞭なオペレーションをするためにも、可能であれば新規参入者はイ ンド現地事務所を戦略的な場所に(四大工業地帯が望ましい)設立する事を検討するべきで ある。 様々な段階で盗難リスクが存在するため、商品には保険をかけるのが望ましい。 将来の展望 港湾 11 主要港の貨物輸送取扱能力は過去5年で約 48%増加しており(3億 8,950 万トン[2003~04 年]から5億 7,477 万トン[2008~09 年])、2025~26 年までには、3倍の 15 億 9507 万トン になると予想される。 20 億米ドルを超える巨額の投資によって、今後3~5年に主要港のコンテナ取扱能力が 1,000 万 TEU 増加すると見込まれる。 大型港湾プロジェクトにおいて、資金注入、最新技術導入、マネージメント業務の向上、な らびに能力拡張のために、官民協力(PPP)が重視されている。また、港湾の建設および維 持のために、上限 100%の FDI(外国直接投資)が許可されている。 鉄道輸送 コンテナ鉄道輸送は競争が開放されており、これまで15の民間事業体が、インド鉄道所有線 路でコンテナ列車を運転する許可を得ている。これにより、今後コンテナの移動量が増加す る。 全長2,762kmの「Dedicated Freight Corridors(DFC)(貨物専用ルート)」が2017年に完 成予定。DFCの完成により、線路沿いの物流パークなどの、迅速で効率的なサプライチェー ンのためのインフラ構築が予想される。 道路輸送 今後5年間に、道路部門に対して 1,000 億米ドルを超える投資が見込まれる4。 今後5年間に、「National Highway Development Programme(NHDP)(国家道路開発プロジ ェクト)」の下で、18,000km の公道が建設される見込みである。 3PL 業者 M&A 活動:3PL 部門では M&A(合併・買収)活動が非常に活発である(例:DHL によるブル ー・ダートの買収、フェデックスによる PAFEX の買収など)。これにより、既存の組織的事 業者のスケールメリットが一層拡大し、コスト低下と効率向上につながる。 国内業者の拡大:今後3年の間に、Future Group、Gati Ltd、AFL、Safe Express は共同で、 倉庫業の拡大に向けて約 10 億米ドルを投入する。 「Free Trade and Warehousing Zones (FTWZ)(自由貿易倉庫地区)」:インド政府は「2004 ~09 年貿易政策」において、「Free Trade and Warehousing Zones (FTWZ)」の設立を発表し た。FTWZ 設立の目的は、自由交換可能通貨で商取引を行う自由のある、物品・サービスの輸出 4 CRISINFAC 12 入促進のための貿易関連インフラを構築することである。これらの地区は、鉄道や道路で容易に 移動できるように、海港、空港またはドライポートの近くに設立される。 物流パーク:今後5年で、全国に 110 の物流パークが設立される予定。総面積は 3,500 エーカー (約 1,416 万㎡)で、推定コストは 10 億米ドルである。これにより、全国に約 4,500 万平方フ ィート(約 418 万㎡)の追加倉庫スペースが開発される。 付録 インドの主要 3PL 業者 国内業者 航空 道路 海路 鉄道 Gati Om Logistics Drive India Logistics AFL TVS Logistics Xps (TCI) Blue dart Patel Logistics Safexpress 航空 道路 国際業者 海路 DHL – Exel supply chain ( ( ( Toll (India) Logistics Pvt. Ltd. ( ( ( Geologistics Pvt. Ltd. ( UPS Jetair Express Pvt. Ltd. ( Maersk India Pvt Ltd ( ( Panalpina India ( ( 鉄道 ( ( ( 13
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